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事件 平成 23年 (ワ) 14336号 意匠権侵害行為差止等請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所 
判決言渡日 2013/09/26
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成25年9月26日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成23年(ワ)第14336号 意匠権侵害行為差止等請求事件

口頭弁論終結日 平成25年6月3日

判 決

原 告 株 式 会 社 o n e A

同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 藤 山 利 行

同 補 佐 人 弁 理 士 藤 本 昇

同 野 村 慎 一

同 浅 野 令 子

被 告 株 式 会 社 エ レ ク ス

同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 小 原 望

同 古 川 智 祥

同 飯 塚 一 雄

同 岡 井 加 女 代

同訴訟復代理人弁護士 赤 嶺 雄 大

同 増 田 哲 也

主 文

1 被告は,別紙イ号物件目録記載の遊技機用表示灯を製造し,販売し,輸

入し,又は広告宣伝してはならない。

2 被告は,その本店,営業所及び工場に存する前項の遊技機用表示灯及び

その半製品(別紙イ号物件写真に示される形態を具備しているが製品と

して完成に至らないもの)を廃棄せよ。

3 被告は,原告に対し,348万6111円及びこれに対する平成23年

11月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 原告のその余の請求を棄却する。





5 訴訟費用は,これを4分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の

負担とする。

6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 主文第1項に同旨

2 被告は,その本店,営業所及び工場に存する前項の遊技機用表示灯及びそ

の半製品並びに同遊技機用表示灯の製造に必要な金型を廃棄せよ。

3 被告は,原告に対し,1314万1500円及びこれに対する平成23年

11月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による

金員を支払え。

第2 事案の概要

本件は,原告が,被告において,原告の登録意匠(第1375128号,第

1375129号,いずれも部分意匠。)に類似する意匠を備える別紙イ号物

件目録記載の遊技機用表示灯を広告宣伝し,輸入又は製造し,販売していると

して,被告に対し,上記各登録意匠に係る意匠権に基づき,被告製品の製造,

販売,輸入又は広告宣伝の差止めを求めると共に,意匠権侵害の不法行為に基

づき,損害額5737万4572円の一部である1314万1500円及びこ

れに対する訴状送達の日の翌日である平成23年11月26日から支払済みま

で民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求した事案である。

1 判断の基礎となる事実

以下の各事実は当事者間に争いがないか,掲記の各証拠又は弁論の全趣旨

により容易に認められる。

(1) 当事者

原告は,電子応用機器や通信応用機器・周辺端末装置等の製造販売店装用

品の製造販売等を目的とする株式会社である。





被告は,アミューズメント周辺機器の製造及び販売等を目的とする株式会

社である

(2) 本件意匠部分1

原告は,以下の意匠登録(以下その意匠登録を受けた部分を「本件意匠部

分1」という。)に係る意匠権(以下「本件意匠権1」という。)を有して

いる。

登録番号 第1375128号

出願日 平成21年6月8日

登録日 平成21年11月6日

意匠に係る物品 遊技機用表示灯

登録意匠 別紙意匠目録1記載のとおり

(3) 本件意匠部分2

原告は,以下の意匠登録(以下その意匠登録を受けた部分を「本件意匠部

分2」という。)に係る意匠権(以下「本件意匠権2」という。)を有して

いる。

登録番号 第1375129号

出願日 平成21年6月8日

登録日 平成21年11月6日

意匠に係る物品 遊技機用表示灯

登録意匠 別紙意匠目録2記載のとおり

(4) 被告の行為

被告は,平成23年5月から,別紙イ号物件目録記載の製品(ただし,

「遊技機用表示灯」であることについては争いがある。以下「被告製品」と

いう。)を広告宣伝し,輸入又は製造し,販売しており,これまでの販売台

数は計3996台である。

被告製品の形態は,別紙イ号物件写真のとおりである(以下,その透明カ





バー中の上下面及び左右側を除く正面の外表面に係る意匠を「被告意匠部分

1」,上記透明カバーに覆われた表示部のうち正面視中央で2分された左側

の平面部分で上下面及び左右側を除く正面の外表面及び略8の字状に突出し

て配置されたセグメント部のうち左側2つの部分からなる意匠を「被告意匠

分2」という。)

(5) 原告の行為

原告は,本件意匠部分1及び本件意匠部分2の実施品である遊技機用表示

灯(商品名「超セグ」,「YSG―88」及びその末尾に附合を付した複数

の型番が存する。以下「原告製品」という。)を製造,販売している(甲1

11,129,137,138)。

(6) 大阪税関長による輸入差止申立ての受理

原告は,平成23年9月16日,大阪税関長に対し,本件意匠権1に基づ

き,被告製品1の輸入差止めを申し立てたところ(関税法69条の13第1

項),大阪税関長は,専門委員の意見(同条の14)も踏まえ,平成24年

2月3日に同申立てを受理し,同申立てが効力を有する期間を同月7日から

平成25年11月6日までとした(甲97〜99,109)。

(7) 本訴提起及び意匠登録無効審判請求

原告は,平成23年11月17日に本件訴訟を提起した。

被告は,平成24年3月1日,特許庁において,本件意匠部分1につき,

意匠登録無効審判請求をした。特許庁審判官は,平成24年11月27日,

本件意匠部分1の登録を無効とする審決をした(乙41)が,被請求人であ

る原告は,同審決の取消訴訟を知財高裁に提起した。

一方,被告は,本件意匠部分2に係る意匠登録無効審判請求はしていない。

2 争点

(1) 意匠権1侵害の有無

ア 被告意匠部分1は本件意匠部分1に類似するか (争点1−1)





イ 本件意匠部分1の登録は創作容易なため無効にされるべきか

(争点1−2)

(2) 意匠権2侵害の有無

ア 被告意匠部分2は本件意匠部分2に類似するか (争点2−1)

イ 本件意匠部分2の登録は創作容易なため無効にされるべきか

(争点2−2)

(3) 原告の損害 (争点3)

第3 争点に対する当事者の主張

1 争点1−1(被告意匠部分1は本件意匠部分1に類似するか)について

【原告の主張】

(1) 本件意匠部分1の構成態様

本件意匠部分1は,パチンコ店等のホール内においてパチンコ等の遊技機

上部に設置して表示灯として使用される遊技機用表示灯のうち,別紙意匠目

録1の実線で表された表示カバーに係る部分意匠であり,その構成態様は以

下のとおりである。

ア 基本的構成態様

(ア) 表示灯本体部の前方に取り付けられた表示カバーは,正面視,正
面中央が前方側(正面側)に突出形成され,平底面視扁平した略倒

「く」の字状を呈してなり,
(イ) しかも,該表示カバーは,正面視,上下辺が平行な略横長長方形
状を呈してなり,

(ウ) 側面視,下辺に対して上辺が前方側(正面側)に突出した傾斜面
状に形成されてなり,
(エ) さらに,カバー内の表示部が視認可能なように表示カバーが透明

に形成されてなる。
イ 具体的構成態様





(オ) 前記前方側(正面側)に突出形成されてなる略倒「く」の字状の
開き角度が平面視,大略150°に形成されてなり,
(カ) 正面視における表示カバーの縦横比率が大略1:6に形成されて

なり,
(キ) 正面視,表示カバーの上下辺が略同長さの直線状に形成され,左
右辺がやや凸出した弧状に形成されてなり,

(ク) しかも,該表示カバーは,全面がフラット状に形成されてなり,
(ケ) さらに,正面視,破線で表された表示灯本体部に対して,実線で

表された表示カバーの占める範囲が大略1/2からなる。

ウ 要部

本件意匠部分1の出願前,遊技機用表示灯の形態としては,表示カバ

ーの前面をフラット形状や曲面形状とするものが一般的であった。

これに対し,本件意匠部分1は,表示部と共に表示カバーを正面視左

右方向に延ばして横長長方形状とし,かつ,中央から左右に掛けて背面

側へ傾斜させる,つまり,表示カバーを正面視上下辺が平行な略横長長

形状で,平底面視扁平した略倒「く」の字状とすることによって,公

知意匠に比し,表示灯の正面方向からだけでなく,表示灯の左右方向か

らの視認性を高め,島(複数の遊技機を一列に配置した様をいう。)端

からでも表示内容を確認できる形態とした。

そのため,本件意匠部分1の基本的構成態様は,公知意匠にはない新

規な構成で,意匠に係る物品の用途,機能,使用態様等も考えれば,遊

技者や従業員等が必ず目にする表示部において,公知意匠に比し,表示

灯の正面方向からだけでなく,左右方向からの視認性が高いことを強く

印象付けるものであるから,この種の物品の需要者であるパチンコ店等

の注意を強く惹くものとして,本件意匠部分1の要部といえる。

このことは,表示カバーの正面中央や正面両端の形状等が異なってい





部分意匠についても,本件意匠部分1と基本的構成態様が共通してい

ることから類似しているとし,関連意匠として登録を受けていることか

らも明らかである。
(2) 被告意匠部分1の構成態様

被告意匠部分1は,遊技機用表示灯である被告製品の表示カバーのうち本

件意匠部分1に相当する部分であり,その構成態様は以下のとおりである。

ア 基本的構成態様

(ア) 表示灯本体部の前方に取り付けられた表示カバーは,正面視,正面

中央が前方側(正面側)に突出形成され,平底面視扁平した略倒「く」の

字状を呈してなり,

(イ) しかも,該表示カバーは,正面視,上下辺が平行な略横長長方形状

を呈してなり,

(ウ) 側面視,下辺に対して上辺が前方側(正面側)に突出した傾斜面状

に形成されてなり,

(エ) さらに,カバー内の表示部が視認可能なように表示カバーが透明に

形成されてなる。

イ 具体的構成態様

(オ) 前記前方側(正面側)に突出形成されてなる略倒「く」の字状の
開き角度が平面視,大略153°に形成されてなり,

(カ) 正面視における表示カバーの縦横比率が大略1:5.5に形成さ
れてなり,
(キ) 正面視,表示カバーの下辺に比して上辺がやや長い直線状に形成

され,左右辺が下方に傾斜した凸弧状に形成されてなり,
(ク) しかも,該表示カバーは,全面がやや緩やかな凸曲面状に形成さ
れてなり,

(ケ) さらに,正面視,本件意匠部分1の破線に相当する表示灯本体部





に対して,本件意匠部分1の実線に相当する表示カバーの占める範囲
が略全面からなる。
(3) 被告意匠部分1の類否

ア 共通点

本件意匠部分1と被告意匠部分1とは,意匠に係る物品を共通にし,本

件意匠部分1の要部である基本的構成態様において共通する。特に,この

種の物品において看者の注意を最も喚起する部分である表示部を覆う表示

カバーにおいて,正面中央を前方側(正面側)に突出させて平底面視扁平

した略倒「く」の字状を呈し,かつ,正面視,上下辺が平行な略横長長方

形状を呈している共通点は,本件意匠部分1と被告意匠部分1とが類似す

ると認定するに十分な共通点といえる。

イ 差違点

これに対し,両意匠の差違点は,以下のとおり,いずれも類否判断に影

響を及ぼすものではない。

(ア) 前方側(正面側)に突出形成されてなる略倒「く」の字状の開き

角度が,本件意匠部分1では平面視大略150°に形成されているの

に対し,被告意匠部分1では平面視大略153°に形成されているが,

わずか3°程度と一見して把握できないほどの差違でしかなく,正面

中央を前方側(正面側)に突出させて平底面視扁平した略倒「く」の

字状を呈してなる基本的構成に包摂される程度の微差である。

(イ) 正面視における表示カバーの縦横比率が,本件意匠部分1では大

略1:6に形成されているのに対し,被告意匠部分1では大略1:5.

5に形成されている点も,表示カバー全体から見ればごくわずかな差

違に過ぎない。

(ウ) 正面視における表示カバーの外形形状が,本件意匠部分1では上





下辺が略同長さの直線状に形成され,左右辺がやや凸出した弧状に形

成されているのに対し,被告意匠部分1では下辺に比して上辺がやや

長い直線状に形成され,左右辺が下方に傾斜した凸弧状に形成されて

いる。しかし,この種の遊技機用表示灯では,その外形形状等を種々

変化させる実情があるため,この程度の差違は,前記共通点に埋没す

る程度の微差である。

(エ) 表示カバー前面の外表面が,本件意匠部分1では全面フラット状

に形成されているのに対し,被告意匠部分1では全面やや緩やかな凸

曲面状に形成されている点も,前記共通点に比してわずかな差違であ

り,また,表示カバー前面をフラット形状や曲面形状に形成すること

は,この種の物品分野においてごく一般的に行われてなる造形手法で

ある。

(オ) 破線に対する実線の占める範囲が,本件意匠部分1では正面視,

破線で表された表示灯本体部との関係で,実線で表された表示カバー

の占める範囲が大略1/2であるのに対し,被告意匠部分1では正面

視,本件意匠部分1の破線に相当する表示灯本体との関係で,本件意

匠部分1の実線に相当する表示カバーの占める範囲が略全面である。

しかし,この種の遊技機用表示灯では,表示灯本体部に対して表示カ

バーや表示部の大きさを種々に形成することはごく一般に行われてい

る上,他の物品分野において,破線に対する実線の占める範囲が大き

く相違しても類似とされていることも考えれば,類否判断に影響を与

える差違ではない。
【被告の主張】

(1) 物品の非類似性

原告は,本件意匠部分1と被告意匠部分1とで,意匠に係る物品が同一で





あることを前提にしているが,被告意匠部分1に係る物品である被告製品は,

本件意匠部分1に係る物品である遊技機用表示灯とは,用途も機能も異なっ

ており,物品として類似しない。

すなわち,遊技機用表示灯は,パチンコ機等の遊技機と通信可能に接続さ

れて,各種データ表示や報知を自身でなし得る物品でなければならない。し

かし,被告製品は,他の遊技機用表示灯と接続して信号を受信することで初

めて数字や文字等の表示が可能となるものに過ぎず,直接パチンコ等の遊技

機と通信可能に接続できる構造ではない。また,遊技機用表示灯は,遊戯者

が店員を呼び出す操作部を備えていなければならないが,被告製品は,表示

装置に過ぎず,そのような操作部を有していない。

(2) 要部及び形態の類否

ア 原告が本件意匠部分1の要部とする基本的構成態様は,後記2【被告の

主張】欄記載のとおり,新規性及び創作非容易性を欠いているため,要部

とはいえず,この部分で被告意匠部分1との共通性が認められても,類似

性の根拠とはならない。

イ 一方,両意匠は,@本件意匠部分1は,表示部の上底部の全長と下底部

の全長が等しく,正面視横長長方形状の形態をとっているのに対し,被告

意匠部分1は,表示部の下底部の全長が上底部の全長よりも短く,下底に

向けてしぼむようにデザインされており,逆台形に近い形態をとっている

点,A本件意匠部分1が直線と平面で構成されているのに対し,被告意匠

部分1は曲線と面を主体に構成されている点で相違している。本件意匠部

分1は,正面視横長長方形であることに顕著な特徴があり,そこが需要者

の注意を惹きやすい要部であるが,被告意匠部分1はこの点で形態を異に

するのである。

加えて,部分意匠においては,物品全体の形態の中での位置,大きさ,

範囲の共通性を検討すべきであるが,被告製品は,物品の一部ではなく独





立の物品であり,全体意匠として観念されるべきであるため,部分意匠

ある本件意匠部分1の比較対象となる相当箇所がない。

(3) 以上からすれば,本件意匠部分1と被告意匠部分1は,需要者に生じさ

せる美感を異にしており,類似しないといえる。

2 争点1−2(本件意匠部分1の登録は創作容易なため無効にされるべき

か)について

【被告の主張】

本件意匠部分1は,公然知られた意匠に基づいて容易に創作することがで

きた意匠であるにもかかわらず,意匠登録を受けたものであるから,その意

匠登録は,無効審判により無効とされるべきものであり(意匠法48条1項

1号,3条2項),原告は本件意匠権1に基づく権利行使をすることはでき

ない(意匠法41条,特許法104条の3)。

(1) 本件意匠部分1の形態

本件意匠部分1の形態は,以下のとおりである。

A1 正面視が略横長長方形状で,中央を縦方向の稜線として,その左右面

が平面視で偏平した略倒「く」の字状に背面側へ傾斜している。

B1 正面の略横長長方形の縦横比率が約1:6である。

C1 平面視で偏平した「く」の字状の開き角度が約150°である。

D1 側面視で前屈みに傾斜している。

E1 透明である。

(2) 乙7意匠との関係

ア 乙7意匠

本件意匠部分1の登録出願前である平成10年2月10日に公開された

発明の名称を遊技用表示装置とする特開平10−33819号公報(以下

「乙7文献」という。)には,図1,図2及び図5ないし図8において,

アナログ表示部51の意匠(以下「乙7意匠」という。他の引用意匠につ





いても同様の表記とする。)が開示されている。

イ 検討

(ア) まず構成態様A1を検討するに,本件意匠部分1に係る物品である

遊技機用表示灯と実質的に同一である遊技機用表示装置に係る乙7意匠の

表示面71は,8分割されている長方形が中央を縦方向の横線としてその

左右面が両一の傾斜面を構成するよう4つずつ連続されたもので,表示面

71の正面側の外表面が,中央を縦方向の稜線として,その左右面が平面

視で偏平した略倒「く」の字状をなすように背面側へ傾斜している。その

ため,本件意匠部分1の構成態様A1は,乙7意匠によって公然知られた

ものである。

(イ) 構成態様B1については,乙7意匠の表示面71の縦横比率が約1

:7であることを考慮すれば,本件意匠部分2の縦横比率を約1:6とす

ることは,当業者にとって特段の創作性はない。

(ウ) また,構成態様C1については,乙7意匠は本件意匠部分1よりや

や小さく約143°に形成されているが,原告が本件意匠部分1の特徴と

して強調する「表示灯の側面方向からの視認性を高めて島端からでも表示

部の表示内容を確認できる」形態を創作すること自体は,この種の物品

野において,既に公然知られた発想(乙7文献)である。この発想に基づ

いて,表示面71を山形に突出させた乙7意匠が創作され,既に公然知ら

れている以上,この角度を約143°から約150°に拡げることは,当

業者にとって特段の創作を要することではない。

(エ) 構成態様D1については,この種の遊技機用表示灯は,遊技機の上

方に設置されるのがごく一般的で,その場合,遊技者にとって遊技情報は

正面よりも上方に表示されるため,見上げた状態で視認しやすくなるよう

表示面を前屈みに傾斜させることは,従来からごく普通に行われていた

(乙5,6,9及び14の各意匠)のであり,本件意匠部分1もこの手法





をそのまま踏襲したに過ぎず,特段の創作を要することではない。

(オ) 構成態様E1についても,後方の発光部を視認できることは当該部

分が備えるべき必須の要件であることからして当然の選択であり,何らの

創作を要することではない。

ウ 原告の主張に対する反論

原告は,本件意匠部分1に係る物品と乙7意匠に係る物品とで,表示内

容の違いから機能及び用途が異なる旨主張するが,物品の機能及び用途を

左右させる事情とはいえないし,仮に機能に差異があったとしても,乙7

意匠が遊技機分野に属していることに違いはなく,創作容易の結論に影響

するものではない。また,乙7意匠に係る物品が遊技機の幕板以外に設置

できないとしても,遊技機に関する情報を表示するため遊技機上方に設置

されるという点で本件意匠部分1に係る遊技機用表示灯と何ら違いはなく,

やはり物品の同一性創作容易性についての判断に影響するものではない。

(3) 公然知られた意匠のありふれた手法による寄せ集め

本件意匠部分1は,その出願前に同一又は類似の物品について公然知られ

た意匠(乙5〜14の各意匠)をありふれた手法により寄せ集めることでも

容易に創作することができたといえる。

すなわち,本件意匠部分1の基本的構成態様は,(a)正面中央部を頂部と

して左右に背面側へ傾斜させたもの,各部の具体的構成態様は,(b-1)正面

視正面中央が前方側に突出形成され,平底面視扁平した略倒「く」の字状,

(b-2)正面視横長長方形状,(b-3)側面視下辺に対して上辺が前方側に突出し

た傾斜面状に形成されたものとも整理できるが,(a)は,単純な幾何的形状

にすぎず,極めてありふれたものであり,当業者であれば容易に創作できた

ものであることは明らかである。そして,(b-1)については乙5から12ま

での各意匠によって,(b-2)については乙7及び13の各意匠によって,(b-

3)については乙14意匠によって,同一又は類似の物品として公然知られた





意匠であり,本件意匠部分1はこれらを当業者にとってありふれた手法によ

寄せ集めた意匠に過ぎない。

【原告の主張】

本件意匠部分1が公然知られた意匠に基づき容易に創作することができた

との被告の主張は,以下のとおり理由がない。

(1) 本件意匠部分1の構成態様

被告による本件意匠部分1の特定は,被告の乙7意匠などとの差違点に関

わる構成態様が欠落している。乙7意匠などとの対比においては,以下のと

おり特定すべきである。

ア 基本的構成態様

(ア) 遊技機の情報表示やイルミネーション表示等の各種情報を表示す

る表示カバーを表示灯本体部の前方に具備し,遊技機の上方の任意の

位置に独立して設置することができる遊技機用表示灯であって,

(イ) 前記表示灯本体部の前方の表示カバーは,その外表面全面が表示

面で,しかも該カバーは上下辺と左右辺からなり,且つその全面が正

面視,正面中央が前方側(正面側)に突出形成され,平面視扁平した

略倒「く」の字状を呈してなり,

(ウ) しかも,該表示カバーは,正面視,上下辺が平行で略同長さの直

線状の略横長長方形状を呈してなり,

(エ) 側面視,下辺に対して上辺が前方側(正面側)に突出した傾斜面

状に形成されてなり,

(オ) さらに,表示カバー内の表示部が視認可能なように表示カバーが

無色透明に形成されてなる。

イ 具体的構成態様

(カ) 前記前方側(正面側)に突出形成されてなる略倒「く」の字状の





開き角度が平面視,大略150度に形成されてなり,

(キ) 正面視における表示カバーの縦横比率が大略1:6に形成されて

なり,

(ク) しかも,該表示カバーは,全面が平坦状に形成されてなる。
(2) 乙7意匠との関係について

公然知られた意匠ではないこと

被告は,その主張するところの構成態様A1につき,乙7意匠によって

公然知られたものであるとする。

しかし,「公然知られた」(意匠法3条2項)とは,頒布された刊行物

に記載されているだけでは足りず,不特定の者に秘密でないものとして現

実にその内容が知られたことをいう。この点,乙7意匠は,公開特許公報

で開示こそされているものの,その実施品は市場に実在しない。さらに,

遊技機用表示灯を扱っている者としては,新しい意匠の創作に当たって,

他社の意匠公報やカタログ等の調査こそするものの,公開特許公報の調査

をすることはない。そのため,乙7意匠は,本件意匠部分1の出願前に公

然知られた意匠であったとはいえず,本件意匠部分1が創作容易であった

ことの根拠とすることはできない。

仮に乙7意匠が公然知られた意匠であったとしても,本件意匠部分1の

出願時点で公報発行から10年以上も経過していたこと,その間一切製品

化されていなかったことは阻害要因と考えるべきである。

創作容易とはいえないこと

仮に乙7意匠が公然知られた意匠であったとしても,本件意匠部分1と

物品性,用途及び機能並びにその形態において相違しており,乙7意匠

に基づいて,本件意匠部分1を容易に創作できたとはいえない。

(ア) 本件意匠部分1の位置

まず,部分意匠の創作容易性を考えるに当たっては,当該部分意匠の物





品全体の形態の中において,その位置,その大きさ,その範囲とすること

が当業者にとってありふれた手法であるかの検討も必要である。この点,

意匠登録無効審判の審決においては,被告の引用意匠(乙5,6及び9の

各意匠)を例示して,本件意匠部分1の位置をありふれたものであると認

定しているが,それら引用意匠と本件意匠部分1とは,当該部分の用途及

び機能が異なり,その結果物品全体の形態の中での位置も異なっているの

であるから,特許庁の認定には誤りがあり,被告主張の根拠とはならない。

(イ) 機能

乙7意匠に係る部分は,遊技者の持ち点状況を把握するために点灯する

ランプを覆う着色されたカラーレンズからなるカバーであって,ランプか

らの光をカラー点灯化するだけであり,本件意匠部分1に係る物品のよう

に遊技機に係る情報等を表示する機能やイルミネーションの演出機能など

を有するものとは明らかに機能を異にしている。

(ウ) 形態

乙7意匠は,正面視で左右4つずつのランプ73が配置され,その表面

は8区画されてカラーレンズ74で覆われ,表示面71が縦枠によって8

分割されてなり,しかもその両側端部が弧状で全体がトラック形状からな

り,該トラック形状の表示部51の両側端部は幕板に取り付けられるよう

平坦面で,その内側部分(表示面71)のみが平面視山型状に突出してな

るものであり,本件意匠部分1に係る遊技機用表示灯とはその形態を明ら

かに異にしている。

さらに,乙7意匠はカバーの外表面の中央部にのみ表示面71を設けて

いるのに対し,本件意匠部分1は遊技機用表示灯本体の前面全てを表示カ

バーとし,その外表面全面が表示面で,かつその全面が平面視扁平した略

倒「く」の字状を呈してなるもので,明らかに形態が異なる。

(エ) 物品性(転用不可)





本件意匠部分1に係る物品は,独立した物品でどのような場所でも

壁面があれば設置可能であるが,乙7意匠に係る部分はそれ自体独立

した物品ではなく,幕板にのみ設置することができる付属品としての

表示板である。そのため,両意匠は物品の分野こそ同じであるが,自

由な位置に独立して取り付けられるか否かの点で,物品性を共通にし

ない。
(3) 公然知られた意匠のありふれた手法による寄せ集めであるとの主張につ

いて

そもそも被告による本件意匠部分1の特定が不正確であるが,これを前提

としても,被告の引用意匠をありふれた手法により寄せ集めることで本件意

匠部分1を容易に創作することができないことは明らかである。

ア 構成態様(a-1)

被告の主張は,引用意匠との論拠付けがなく,何ら根拠がない。

イ 構成態様(b-1)

乙7意匠については既に論じたとおりであるが,乙5,6及び8から1

2の各意匠も,本件意匠部分1のような上下辺が並行でかつ平底面視扁平

した略倒「く」の字状の形態を開示するものではない。

ウ 構成態様(b-2)及び(b-3)

構成態様(b-2)につき,乙7意匠については既に論じたとおりである一方,

乙13意匠は,確かに正面視で上下辺が平行な略横長長方形状である。ま

た,構成態様(b-3)につき,乙14意匠は,側面視で下辺よりも上辺が前方

側に突出した傾斜面状を呈している。

しかし,乙13及び14の各意匠も,表示カバー前面はフラット形状で,

本件意匠部分1とは基本的形態を全く異にしており,単に一方向から見た

部分的形態のみを取り上げて本件意匠部分1の全体形態があらわれている

とすることはできず,創作性を否定する根拠にはなり得ない。





エ ありふれた手法による寄せ集めではないこと

以上のとおり,本件意匠部分1の各具体的構成態様は,乙5から14ま

での各意匠に表れていない又は表れていたとしても一方向から見た部分的

形態に過ぎないのであり,基本的構成態様が相違しているこれら意匠を組

み合わせたとしても,本件意匠部分1とほぼ同一になることは到底あり得

ない。

被告の主張は,正面視形状等一方向からの形態が共通するだけで基本構

成を大きく相違してなる意匠,概略的な形態の共通性に止まる概念的な点

だけがあらわれているに過ぎない意匠,表示灯本体部の前方に表示カバー

が設けられていない意匠,当該物品の形態を転用する実情がない意匠等か

ら部分的な形態を抽出して組み合わせるというものであるが,そのような

手法による意匠創作は当業者にとってありふれたものではなく,容易でな

いことは明らかである。

3 争点2−1(被告意匠部分2は本件意匠部分2に類似するか)について

【原告の主張】

(1) 本件意匠部分2は,パチンコ店等の店内においてパチンコ等の遊技機上

部に設置して表示灯として使用される遊技機用表示灯のうち,別紙意匠目録

2の実線で表された正面視中央で左右に2分された左側の表示部に係る部分

意匠であり,その構成態様は以下のとおりである。

ア 基本的構成態様

(ア) 正面視,表示灯本体部の前面左側の表示部は,アイコンシート面と

発光体とからなり,

(イ) 前記アイコンシート面は,正面視,左辺から右辺に掛けて正面側に

突出してなると共に,側面視,下辺に対して上辺が前方側(正面側)に突

出してなる傾斜面状に形成されてなり,

(ウ) しかも,該アイコンシート面は,正面視略横長長方形状を呈してな





り,

(エ) 前記発光体は,アイコンシート部に対して,7個のセグメントを略

8の字状に突出させて2個並列して配置されてなる。

イ 具体的構成態様

(オ) 前記アイコンシート面の左辺から右辺に掛けた正面側への傾斜角

度が,底面視,左右方向の直線ラインに対して大略15°に形成され

てなり,

(カ) 正面視におけるアイコンシート面の縦横比率が大略1:3に形成

されてなり,

(キ) しかも,該アイコンシート面は,上下左右辺が直線状からなり,

且つ,その全面がフラット状に形成されてなり,

(ク) さらに,正面視,破線で表された表示灯本体部に対して,実線で

表された表示部の占める範囲が略1/4からなる。

ウ 要部

本件意匠部分2の登録出願前,遊技機用表示灯の形態としては,アイ

コンシート面と発光体とで形成される表示部を,アイコンシート面が正

面視側に対面するフラット状にした上,発光体をアイコンシート部上に

設けられたデジタル表示によって形成するのが一般的であった。

これに対し,本件意匠部分2は,表示カバーと共に表示部を正面視左

右方向に延ばして横長長方形状とし,かつ,左右端から中央に向けて正

面側へ傾斜させる,つまり,表示部を正面中央で左右に2分し,2分さ

れた表示部を左右端から中央に掛けて正面側に突出した傾斜面状とする

ことで,公知意匠に比し,表示灯の正面方向からだけでなく,表示灯の

側面方向からの視認性を高め,島端からでも表示内容を確認できる形態

とした。





そのため,本件意匠部分2の基本的構成態様は,公知意匠には全く表

れていない新規な形態部分で,意匠に係る物品の用途,機能,使用態様

等も考えれば,遊技者やパチンコ店の従業員等が必ず目にする表示部に

おいて,公知意匠に比し,表示灯の正面方向からだけでなく,表示灯の

側面方向からの視認性が高いことを強く印象付けるものであるから,需

要者であるパチンコ店等の購入者の注意を強く惹く要部といえる。

(2) 被告意匠部分2の構成態様

被告意匠部分2は,遊技機用表示灯のうち表示灯本体部の前面で表示

カバー内の表示部のうち本件意匠部分2に相当する部分であり,その構

成態様は以下のとおりである。

ア 基本的構成態様

(ア) 正面視,表示灯本体部の前面左側の表示部は,アイコンシート面

と発光体とからなり,

(イ) 前記アイコンシート面は,正面視,左辺から右辺に掛けて正面側

に突出してなると共に,側面視,下辺に対して上辺が前方側(正面

側)に突出してなる傾斜面状に形成されてなり,

(ウ) しかも,該アイコンシート面は,正面視略横長長方形状を呈して

なり,

(エ) 前記発光体は,アイコンシート部に対して,7個のセグメントを

略8の字状に突出させて2個並列して配置されてなる。

イ 具体的構成態様

(オ) 前記アイコンシート面の左辺から右辺に掛けた正面側への傾斜角

度が,底面視,左右方向の直線ラインに対して大略13.5°に形成

されてなり,

(カ) 正面視におけるアイコンシート面の縦横比率が大略1:2.8に





形成されてなり,

(キ) しかも,該アイコンシート面は,上下辺及び右辺が直線状で,且

つ,左辺が下方に窄まる凸弧状からなるフラット状に形成されてなり,

(ク) さらに,前記アイコンシート面の左右辺寄りの中央には,略縦長

「コ」の字状を呈する開口部が形成され,セグメント下方のアイコン

シート面には,横長長方形状を呈する表示ランプが8個並列して配置

されてなり,

(ケ) しかも,正面視,本件意匠部分2の破線に相当する表示灯本体部

に対して,本件意匠部分2の実線に相当する表示部の占める範囲が略

1/2からなる。

(3) 被告意匠部分2の類否

ア 共通点

本件意匠部分2と被告意匠部分2とは,意匠に係る物品を共通にし,

本件意匠部分2の要部である基本的構成態様において共通する。特に,

この種の物品において看者の注意を最も喚起する部分である表示部にお

いて,正面視,表示灯本体部の前面左側のアイコンシート面が,左辺か

ら右辺に掛けて正面側に突出すると共に,側面視,下辺に対して上辺が

前方側に突出する傾斜面状で,かつ,アイコンシート面に対してセグメ

ントからなる発光体が突出して設けられているとの共通点は,本件意匠

部分2と被告意匠部分2とが類似と認定するに十分である。

イ 差違点

これに対し,両意匠の差違点は,以下のとおり,いずれも類否判断

影響を及ぼすものではない。

(ア) アイコンシート面の左辺から右辺に掛けた正面側への傾斜角度が,

底面視,左右方向の直線との関係において,本件意匠部分2では大略





15°であるのに対し,被告意匠部分2では大略13.5°であるが,

わずか1.5°程度と一見して把握できないほどの差違でしかなく,

左辺から右辺に掛けて正面側に突出するという基本的構成に包摂され

る程度の微差である。

(イ) 正面視におけるアイコンシート面の縦横比率が,本件意匠部分2

では大略1:3に形成されているのに対し,被告意匠部分2では大略

1:2.8に形成されている点も,表示部の共通点から見ればごくわ

ずかな差違に過ぎない。

(ウ) アイコンシート面が,本件意匠部分2では上下左右辺が直線状か

らなり,かつ,その全面フラット状に形成されているのに対し,被告

意匠部分2では上下辺及び右辺が直線状で,かつ,左辺が下方に窄ま

る凸弧状からなるフラット状に形成されている。しかし,この種の遊

技機用表示灯では,その外形形状やアイコンシート面の形状等を種々

変化させる実情があるため,前記共通点に埋没する程度の微差である。

その他被告が主張する差異点も,同様に共通点に埋没する程度の微

差でしかない。

(エ) 破線に対する実線の占める範囲が,本件意匠部分2では正面視,

破線で表された表示灯本体部との関係で,実線で表された表示部の占

める範囲が略1/4であるのに対し,被告意匠部分2では正面視,本

件意匠部分2の破線に相当する表示灯本体部との関係で,本件意匠部

分2の実線に相当する表示部の占める範囲が略1/2である。しかし,

この種の遊技機用表示灯では,表示カバーや表示部の大きさを種々に

形成することはごく一般的である上,他の物品分野において,破線に

対する実線の占める範囲が大きく相違しても類似とされていることも

考えれば,類否判断に影響を与える差違ではない。





【被告の主張】

(1) 物品の非類似性

前記1【被告の主張】欄記載のとおり,被告意匠部分2に係る物品であ

る被告製品は,本件意匠部分2に係る物品である遊技機用表示とは,用途

も機能も異なっており,物品として類似しない。

(2) 要部及び形態の類否

ア 原告が本件意匠部分2の要部とする基本的構成態様は,後記4【被告の

主張】欄記載のとおり,新規性及び創作非容易性を欠いているため,要部

とはいえず,この部分で被告意匠部分2との共通性が認められても,類似

性の根拠とはならない。

イ 一方,両意匠は,@本件意匠部分2は,アイコンシート面(「大当」

「スタート」等のアイコンが印刷されたフィルム)と発光部分からなるの

に対し,被告意匠部分2は,本体であるケースと発光部分からなる点,A

本件意匠部分2は,四隅がすべて直角で,上下辺と左右辺が直線で各々平

行かつ長さが等しい横長長方形の形態をとっているのに対し,被告意匠部

分2は,四隅がいずれも直角ではなく(一隅は曲線),上下辺及び左辺は

曲線で,左右辺が平行ではなく長さも異なり,平行四辺形が変形した形態

をとっている点,B本件意匠部分2では略8の字状のセグメントが垂直体

であるのに対し,被告意匠部分2では斜体である点で相違している。これ

らは,いずれも本件意匠部分2にとって,需要者の注意を惹きやすい要部

に関する差異である。

ウ 加えて,部分意匠においては,物品全体の形態の中での位置,大きさ,

範囲の共通性を検討すべきであるが,被告製品は,物品の一部ではなく独

立の物品であり,全体意匠として観念されるべきであるため,部分意匠

ある本件意匠部分2の比較対象となる相当箇所がない。

(3) 以上からすれば,本件意匠部分2と被告意匠部分2は,需要者に生じさ





せる美感を異にしており,類似しないといえる。

4 争点2−2(本件意匠部分2の登録は創作容易なため無効にされるべき

か)について

【被告の主張】

(1) 本件意匠部分2の形態

本件意匠部分2の形態は,以下のとおりである。

A2 正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜し

ている。

B2 正面の略横長長方形の縦横比率が約1:3である。

C2 平面視で右辺から左辺に傾斜する角度が上下方向の直線に対して約7

5°である。

D2 側面視で前屈みに傾斜している。

E2 7個のセグメントを略8の字状に2個突出させて配置する。

(2) 乙7意匠との関係

ア 乙7意匠

乙7意匠は,前記2【被告の主張】欄記載のとおりである。

イ 検討

(ア) まず構成態様A2を検討するに,本件意匠部分2に係る物品である

遊技機用表示灯と実質的に同一である遊技機用表示装置に係る乙7意匠の

表示面71は,正面側の左外表面が平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜

している点において,本件意匠部分2と同一の態様を備えており,構成態

様A2は乙7意匠によって公然知られるに至ったものである。

(イ) 構成態様B2については,乙7意匠の表示面71の左外表面の縦横

比率が約1:3.5であることを考慮すれば,本件意匠部分2の縦横比率

を約1:3とすることは,当業者にとって特段の創作性はない。

(ウ) また,構成態様C2については,乙7意匠は本件意匠部分2よりや





や小さく約71.5°に形成されているが,原告が本件意匠部分2の特徴

とする「表示灯の側面方向からの視認性を高めて島端からでも表示内容を

確認できる」形態を創作すること自体は,この種の物品分野において,既

公然知られた発想(乙7文献)である。この発想に基づいて,表示面7

1を山形に突出させた乙7意匠が創作され,既に公然知られている以上,

この角度を約71.5°から約75°に拡げることは,当業者にとって特

段の創作を要することではない。

(エ) 構成態様D2については,この種の遊技機用表示灯は,遊技機の上

方に設置されるのがごく一般的で,その場合,遊技者にとって遊技情報は

正面よりも上方に表示されるため,見上げた状態で視認しやすくなるよう

表示面を前屈みに傾斜させることは,従来からごく普通に行われていた

(乙5,6,9及び14の各意匠)のであり,本件意匠部分2もこの手法

をそのまま踏襲したに過ぎず,特段の創作を要することではない。

(オ) 構成態様E2についても,遊技機用表示灯の表示部において数字を

表現するために,7個のセグメントを略8の字状に複数個配置させること

は,従来から極めて一般的に行われていた(乙9,10及び13〜15の

各意匠)もので,特段の創作を要することではない。また,上記セグメン

トが突出して形成されていることについては,本件意匠部分2と同一の物

品である呼出ランプに係る乙15意匠によって公然と知られていたのであ

り,公然と知られた意匠の単なる寄せ集めに過ぎない。

ウ 原告の主張に対する反論

原告は,乙7意匠の表示面71が,本件意匠部分2に係る部分と機能及

び用途を異にしているため,これに基づいて本件意匠部分2の創作を容易

とすることはできない旨主張する。

しかし,本件意匠部分2に係る部分は,ケース前面部分に配置された発

光部を外部から視認可能とするものであり,乙7意匠の表示面71が,後





方に配置されたランプの明滅を視認できるようにしていることと機能及び

用途を共通にする。しかも,遊技機用表示灯における表示カバーは,それ

が覆う対象部分と形状をあわせなければならないのであるから,ケース前

面部分の意匠の創作容易性を論じるに当たって,表示カバーに係る公知意

匠を引用し得ないとする理由はない。

また,乙7文献の図5には,表示カバーのみならず,それが覆っている

対象部分の傾斜形態も点線で表されているのであり,この意匠に基づいて,

本件意匠部分を創作することが容易であることは明らかである。

その他は,前記2【被告の主張】欄記載のとおりである。

(3) 公然知られた意匠のありふれた手法による寄せ集め

本件意匠部分2は,その出願前に同一の物品について公然知られた意匠

(乙5〜7及び13〜15の各意匠)をありふれた手法により寄せ集めるこ

とでも容易に創作することができたといえる。

すなわち,本件意匠部分2の基本的構成態様は,(a)正面中央部を頂部と

して左に背面側へ傾斜させたもの,各部の具体的構成態様は,(b-1)正面視

左辺から右辺に正面側に突出形成,(b-2)正面視横長長方形状,(b-3)側面視

下辺に対して上辺が前方側に突出した傾斜面状に形成,(b-4)7個のセグメ

ントを略8の字状に突出させて2個並列して配置したものとも整理できるが,

(a)は単純な幾何的形状に過ぎず,極めてありふれたものであり,当業者で

あれば容易に創作できたことは明らかである。そして,(b-1)については乙

5から7までの各意匠によって,(b-2)については乙7及び13の各意匠に

よって,(b-3)については乙14意匠によって,(b-4)については乙15意匠

によって,同一又は類似の物品として公然知られた意匠であり,本件意匠部

分2はこれらを当業者にとってありふれた手法により寄せ集めた意匠に過ぎ

ない。

【原告の主張】





本件意匠部分2が公然知られた意匠に基づき容易に創作することができた

との被告の主張は,以下のとおり理由がない。

(1) 本件意匠部分2の構成態様

本件意匠部分2の構成態様に関する被告の主張は,正面視,表示灯本体部

の前面左側の表示部がアイコンシート面と発光体からなることを前提としな

い点において,正確な特定とはいえない。この点は,本件意匠部分2と被告

の引用意匠との差違点に関わる構成態様であるため,容易創作性に関する被

告の主張は,その前提に誤りがあるといえる。

(2) 乙7意匠との関係について

公然知られた意匠ではないこと

前記2【原告の主張】欄(2)ア記載のとおりである。

創作容易とはいえないこと

仮に被告による構成態様の特定を前提とし,乙7意匠が公然知られた

匠であったとしても,本件意匠部分2とは物品性,用途及び機能並びにそ

の形態において相違している上,本件意匠部分2はいずれの引用意匠にも

開示されていない構成態様も備えており,乙7意匠及び他の引用意匠に基

づいて,本件意匠部分2を容易に創作できたとはいえない。

(ア) 構成態様A2

構成態様A2に係る部分は,表示灯本体部の前面左側表示部であるケー

ス前面及び発光体からなり,遊技機に係る情報等を表示する機能やイルミ

ネーションの演出機能などを有するのに対し,乙7意匠の表示面71又は

カラーレンズ74の正面側左外表面は,本件意匠部分2の波線で表示され

た表示カバーの外表面部分の形態に対応する部分であり,両意匠は,当該

部分の物品全体における位置,大きさ,範囲,用途及び機能を全く異にし

ている。そして,遊技機用表示灯において,ケース前面部分と表示カバー

部分との形状が同じでなければならない理由はなく,現に両部分で形状





異にする遊技機用表示灯は多数存在する。

そのため,乙7意匠によって,本件意匠部分2の構成態様A2が公然知

られるに至った形態ということはできない。

(イ) 構成態様D2

乙5,6及び9の各意匠において側方視での前屈み傾斜部分は,いずれ

も表示灯本体の前方に被せてランプを覆い,ランプからの光を凹凸面状の

外表面によって拡散させるカバー部であり,本件意匠部分2の構成態様D

2に係る部分とは用途及び機能を異にする。そのため,これら意匠によっ

て,本件意匠部分2の構成態様D2が公然知られていたということはでき

ない。

乙14意匠に基づく被告の主張が失当であることは,前記2【原告の主

張】欄(4)記載のとおりである。

(ウ) 構成態様E2

乙9,10,13及び14の各意匠は,いずれも液晶表示画面で数字が

突出していない態様であり,かかる状況下で,乙15意匠に基づき,7個

のセグメントを略8の字状に2個突出させることが,単なる公知意匠の寄

せ集めに過ぎないとする理由はない。さらにいえば,他の構成態様A2か

らD2までの形態に,7個のセグメントを略8の字状に2個突出させて配

置する形態を組み合わせて本件意匠部分2を創作することが,当業者にと

ってありふれた手法によるものであるとする理由も一切ない。

また,乙7意匠の表示面71に乙15意匠におけるセグメントを突出し

形状を設けると,表示カバーの外表面にセグメントが配されることとな

り,本件意匠部分2とは全く異なる形態となる。

(3) 公然知られた意匠のありふれた手法による寄せ集めであるとの主張につ

いて

そもそも被告による本件意匠部分2の特定が不正確であるが,これを前提





としても,被告の引用意匠をありふれた手法により寄せ集めることで本件意

匠部分2を容易に創作することができないことは明らかである。

ア 構成態様(a-1)

被告の主張は,引用意匠との論拠付けがなく,何ら根拠がない。

イ 構成態様(b-1)

乙7意匠については既に論じたとおりであるが,乙5,6及び13の各

意匠では,ケース前面を表示カバーによって視認することはできず,その

形態を開示するものではない。

ウ 構成態様(b-2)

乙7意匠については既に論じたとおりである一方,乙13意匠は,確か

に正面視略横長長方形状であるが,基本的形態が本件意匠部分2とは全く

異なっており,容易創作性の根拠にはなり得ない。

エ 構成態様(b-3)及び(b-4)

前記(3)イ及びウに記載のとおりである。

オ ありふれた手法による寄せ集めではないこと

以上のとおり,本件意匠部分2の各具体的構成態様は,乙5から7及び

13から15までの各意匠に表れていない又は表れていたとしても一方向

から見た部分的形態に過ぎず,基本的構成態様が相違しているこれら意匠

を組み合わせたとしても,本件意匠部分2とほぼ同一になることはあり得

ない。

本件意匠部分2について,ケース前面が視認不可能な意匠,正面視形状

等一方向からの形態が共通するだけで基本構成が大きく相違する意匠等に

基づき,ありふれた手法による寄せ集めとするのはあまりに無理がある。

5 争点3(原告の損害)について

【原告の主張】

被告は,本件意匠部分1及び同2の登録後である平成23年5月以降,本





件意匠権1及び同2を侵害する被告製品を3996台販売した。一方,以下

のとおり,本件意匠部分1及び同2の実施品である原告製品の利益は1台当

たり1万3357円であり,また,本件意匠部分1及び同2の寄与度は10

0%で,意匠法39条1項但し書の適用も認められない。そのため,原告が

受けた損害額は,5337万4572円(=13,357 円×3,996 台)と算定さ

れ(意匠法39条1項),これに弁護士費用400万円をあわせた5737

万4572円が,被告による本件意匠権1及び同2の侵害によって原告が被

った損害である。

(1) 原告製品の1台当たりの利益

原告製品の1台当たりの販売価格は2万3619円,原価である材料費は

1万0262円であり,1台当たりの利益は1万3357円である。

また,仮に販売費及び一般管理費のうち変動費を控除するとすれば,決算

書上,旅費交通費,広告宣伝費,発送配達費及び振込手数料の総売上高に対

する各割合は,1.7%,0.3%,0.7%,0.1%及び0.1%で,

その合計は2.9%であるため,原告製品1台当たりの変動費は685円

(=23,619 円×2.9%),1台当たりの利益は1万2672円(=13,357 円

−685 円)と算定される。この場合,原告の損害は,5463万7312円

(=12,672 円×3,996 台+4,000,000 円)である。

ところで,原告は訴状において,原告製品の1台当たりの販売価格を1万

8948円であると主張したが,これは値引きを反映させた金額である。原

告は,本件意匠権1及び同2を侵害する被告製品が大量に市場で販売された

ため,原告製品の販売価格を引き下げざるを得なかったのであるから,損害

額の算定に当たっては,侵害行為がなければ本来維持することができたはず

である値引き前の販売価格を基礎とすべきである。また,仮に値引き後の金

額を基礎にすべきとしても,同額は代理店に対する販売価格であり,取付工

事費,代理店手数料及び消費税は含まれていないのであるから,被告が主張





するように,同額からそれら費用等を控除するのは誤りである。

(2) 寄与度

ア 本件意匠部分1及び同2の寄与

本件意匠部分1及び同2は,部分意匠であって,その本質的部分は遊技

機用表示灯の前面を平底面視扁平した略倒「く」の字状に形成して,表示

灯の正面方向からだけではなく左右方向からの視認性を高め,島端からで

も表示内容を確認できる形態としたことにあり,かかる基本的形態が需要

者の注意を著しく喚起するものである。この点は,原告製品の広告宣伝で

も強調されているほか,業界紙の記事などによっても裏付けられる。

一方,被告製品も本件意匠部分1及び同2の本質部分によって需要者の

注意を喚起している上,それら意匠が製品の略全体を占めている。

また,原告製品が備えるその他の機能や形態などは,いずれも原告製品

だけが備える特徴ではなく,同種製品で一般的に採用されてきたものであ

り,本件意匠部分1及び同2の寄与度を低く評価する理由にはならない。

したがって,本件意匠部分1及び同2の寄与度は100%である。

イ 被告の主張に対する反論

被告は,原告製品と被告製品とでは,商品性,設置目的及び機能面で相

違しており,そのため本件意匠部分1及び同2の損害に対する寄与度は低

い旨主張する。

しかし,原告製品と被告製品は,いずれもパチンコ等の遊技機用の表示

灯であり,パチンコ等の島上や遊技機の上部壁面に設置されるのであるか

ら,使用状態,使用目的,用途等が共通することは明白である。また,原

告製品及び被告製品は,遊技機の大当等の情報を文字や数字によって表示

し,遊技者だけでなく他の来場者や従業員に情報伝達すると共に,イルミ

ネーションとしての演出表示をするもので,機能も同一である。さらに,

原告製品及び被告製品は,遊技機の正面方向からだけでなく,左右方向か





らの視認性を高め,島端からでも表示内容が確認できるようにすることを

目的として設置される点も共通する。

したがって,被告の上記主張は失当である。

ウ 本件意匠部分2のみの寄与度

被告製品は,本件意匠権1及び同2のいずれをも侵害するものであるが,

本件意匠部分1と本件意匠部分2とは,その基本的形態において一部共通

している上,その共通部分は意匠の骨格を成す部分である。そのため,仮

に本件意匠部分1が無効であったとしても,本件意匠部分2の寄与度は1

00%であることに変わりはない。

(3) 意匠法39条1項但し書

遊技機用表示灯の新規購入や買替えに際し,遊技機の正面方向からだけ

でなく,左右方向からの視認性を高め,島端からでも表示内容を確認でき

る形態を備えた製品を需要者が必要とするのであれば,原告製品を購入す

るほかなかった。ところが,被告製品の出現により,被告製品によっても

上記目的を達成できることとなり,現に被告製品の販売開始後,原告製品

の売上げは大幅に減少した。

また,遊技機の入替えは平均5か月程度と極めて早く,表示灯等の設備

についても頻繁に入れ替えされることがある点も考慮すべきである。

したがって,被告製品が販売されていなければ,原告は,被告製品の販

売台数と同じ台数分の原告製品をさらに販売できたといえ,意匠法39条

1項但し書の適用は認められない。
【被告の主張】

(1) 原告製品の1台当たりの利益

ア 原告製品の販売価格

原告製品は,消費税,取付工事費及び代理店手数料を含めて2万円で販

売されているのが実態である。そして,取付工事費及び代理店手数料は各




1000円と考えられることから,これを控除し,さらに消費税分を差し

引いた1万7048円を損害算定の基礎とすべきである。

また,訴状における1万8948円との原告の主張を基礎とすれば,同

様に取付工事費,代理店手数料及び消費税を控除した1万6046円が販

売価格である。

イ 原告製品の製造原価

原告製品1台当たりの製造原価は,1万3981円と算定され,その内

訳は材料費1万0731円,労務費2680円,経費570円である。

原告による原価計算は,実装費用,検査費用,組立費用などが欠落して

いる上,原告製品の原価率を43.4%とするものであり,原告全体にお

ける原価率が64.8%であることと比べ,異常な乖離がある。

ウ 販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費中の変動費としては,原告の挙げる費目のほか,

販売員給与の2分の1と貸倒償却費も該当する。そのため,総売上高に対

する販売費及び一般管理費中の変動費の割合は4.7%であり,原告製品

1台当たりでは801円(=17,048 円×4.7%)となる。

エ 小括

よって,原告製品の1台当たりの利益は,2266円(=17,048 円−

13,981 円−801 円)である(原告製品1台当たりの販売価格を1万604

6円とすれば,1264円である。)。

(2) 寄与度

以下の事情に照らせば,本件意匠部分1及び同2又はその類似意匠が需要

者の購入決定に与える影響はなく,損害への寄与度は0である。

ア 本件意匠部分1及び同2の寄与

本件意匠部分1及び同2は部分意匠であり,原告製品全体に占める範囲

は半分以下である上,原告製品は,「でか+光るスイッチ」,「マルチス





イッチ部」,「ワンタッチオーダー機能」,「ランプネット」といった特

徴を備え,広告宣伝においても強調されている(乙24)。

これらの事情だけからしても,本件意匠部分1及び同2の寄与度はせい

ぜい20%といえる。

イ 原告製品と被告製品の商品性及び設置場所・目的の違い

原告製品は呼出ランプと称されるもので,遊技機と通信可能に接続され,

大当・確変の回数や履歴,獲得玉数や持ち玉数等の各種データ表示を行う

機器であり,ホール従業員を呼び出すための呼出ボタンを備えている。一

方,被告製品は島装飾品と呼ばれるもので,遊技機と呼出ランプが複数台

並べられた島の上部に設置され,呼出ランプに表示されるデータの一部を

表示したり,イルミネーションとして発光する機器である。呼出ランプが

遊技機において必須の機器であるのに対し,島装飾品は呼出ランプのいわ

ばオプション商品に過ぎず,需要者の購入選択に与える影響は極めて小さ

い。実際,被告が呼出ランプを販売する際に,被告製品が同時に購入され

る割合は1割程度に過ぎない。

したがって,原告製品と被告の呼出ランプが競合することはあっても,

原告製品と被告製品は市場で競合するものではない。

ウ 原告製品と被告製品の機能の違い

呼出ランプである原告製品は,大当,確変の回数や履歴,獲得玉数や持

ち玉数等の各種データ表示が可能であるのに対し,被告製品は,接続した

呼出ランプに表示されるデータの一部を表示するに過ぎない。また,原告

製品では,左右で異なる表示を行うことができるのに対して,被告製品は

左右同じ表示しかできず,桁数も異なる。被告製品が,原告製品よりもイ

ルミネーションのパターンが多いことも両製品の違いである。

エ 本件意匠部分2のみの寄与度

本件意匠部分2が原告製品の表面上占める割合は,本件意匠部分2は正





面視上半分のうち,さらに左面のみであること,本件意匠部分2のみだと

外観上の特徴も本件意匠部分1及び同2の双方が有効に存在する場合と比

べて半減することだけを考えても, 本件意匠部分2のみの寄与度は,本件

意匠部分1及び同2を合わせた場合のせいぜい4分の1である。

しかも,本件意匠部分2の本質的特徴部分は,2分された表示部を左端

から中央に掛けて傾斜面状に形成した形態とし,表示灯の左側面方向から

の視認性を高め,左側の島端からでも表示内容を確認できる点にあるが,

このような形態は乙7意匠により公然と知られていたものであるから,高

い寄与度の根拠にはならない。この特徴部分を除くと,本件意匠部分2で

寄与度を主張し得るのは,7個のセグメントを略8の字状に2個突出させ

て配置していることのみであるが,この点もまた乙15意匠等によって公

然と知られていたのであるから,やはり高い寄与度の理由にはならない。

以上から,本件意匠部分2のみの寄与度は,本件意匠部分1が有効と認

められる場合に本件意匠部分1及び同2をあわせた場合の寄与度をはるか

に下回る。

(3) 意匠法39条1項但し書

被告製品は,呼出ランプのオプション商品であり,その購入者は,被告

製呼出ランプの購入者又は既に購入済みの者に限られる。そのため,被告

が被告製品3996台を販売していなかったとしても,呼出ランプである

原告製品の販売数量が増えることはなかったといえる。

したがって,意匠法39条1項但し書の適用により,同条第1項に基づ

く原告の損害額は全て控除される。

第4 当裁判所の判断

1 争点1−2(本件意匠部分1の登録は創作容易なため無効にされるべき

か)について

事案に鑑み,本件意匠権1侵害の有無について,争点1−2から判断する





に,以下(1)ないし(3)で述べる理由により,本件意匠部分1は,その登録出

願前に公然知られた意匠である乙7意匠に基づき,当業者が容易に創作する

ことができた(意匠法3条2項)もので,意匠登録無効審判により登録無効

にされるべきものである(意匠法48条1項1号)から,意匠権1に基づく

原告の権利行使は認められない(意匠法41条,特許法104条の3)。

(1) 本件意匠部分1

本件意匠部分1は,意匠に係る物品を遊技機用表示灯とし,その形態は,

別紙意匠目録1の実線で表された部分意匠である。つまり,本件意匠部分

1は,波線で表された遊技機用表示灯の正面やや上寄りに形成された発光

部を覆う透明カバー中の上下面及び左右側面を除く正面の外表面であり,

その形態は,概ね以下のとおりである。

A1 正面視が略横長長方形状で,中央を縦方向の稜線として,その左右

面が平面視で偏平した略倒「く」の字状に背面側へ傾斜している。

B1 正面の略横長長方形の縦横比率が約1:6である。

C1 平面視で偏平した「く」の字状の開き角度が約150°である。

D1 側面視で前屈みに傾斜している。

E1 透明である。

この点,部分意匠においては,創作容易性及び類否の判断において,部

分意匠の形態のみでなく,当該意匠に係る部分の物品全体における位置,

大きさ及び範囲も参酌すべきことは原告の主張するとおりであるが,部分

意匠の構成の特定そのものにまで位置,大きさ及び範囲を取り込むことは,

部分意匠の制度趣旨に反して相当ではない。

(2) 乙7意匠

ア 乙7文献は,平成10年2月10日に公開された公開特許公報であり,

「遊技用表示装置」の発明に関するものであるが,乙7文献には,以下の

とおり,遊技用表示装置のアナログ表示部51に係る意匠(乙7意匠)が





開示されている。

「【解決手段】 遊技機49の上方位置に得点をランプの点灯量により表示

可能なアナログ表示部51を設けるとともに,該アナログ表示部は取付面

より前面に突出させた形状に構成することにより遊技場内の島通路を通行

する遊技客の視線に入りやすくした。」

「【0054】図5は,アナログ表示部51の断面図であり,図6は,そ

の正面図である。図5および図6を参照して,アナログ表示部51の構成

について詳細に説明を行なう。アナログ表示部51は,遊技機設置島1の

幕板部2表面の所定の取付面72に取付けられている。アナログ表示部5

1は,取付面72より山型に突出する態様で構成されており,図5に示す

ように取付面72に対して所定の傾斜をもって2つの表示面71が設けら

れている。2つの表示面71には,それぞれ4つずつランプ73が配置さ

れており,各ランプ73は長方形のカラーレンズ74に覆われている。カ

ラーレンズ74は色付きの透明なプラスチック樹脂でできたものである。

また,2つの表示面71は,図6に示すように,左右対称に構成されてい

る。」

「【符号の説明】

1は遊技機設置島,2は幕板部,31は入賞玉検出器,33は打込玉検出

器,49は遊技機,50はカードユニット,51はアナログ表示部,60

は持点用制御基板,62は持点表示部,66は持点制御用マイクロコンピ

ュータ,67は遊技制御用マイクロコンピュータ,70はアナログ表示設

定ユニット,70aはレベル設定キー,70bはレベル表示部,71は表

示面,72は取付面,73はランプ,74はカラーレンズ,75は取付部,

76は可動表示部,80は島アナログ表示装置,81は台番号表示器,8

2は持点アナログ表示器,83は状態表示器,84は回数表示器,84a

は大当り回数表示器,84bは確率変動回数表示器,85はアナログ表示





設定部,86は設定モニタ,87は設定キー,88はリターンキー,89

はテンキー,91はアナログ表示マイクロコンピュータ,93は情報入力

回路,94は島管理装置である。」




【図1】遊技機設置島1に設けられた遊技機49とこれに対応して設けら

れたアナログ表示部51の全体構成図である。





【図2】遊技機49およびこれに対応して設けられたアナログ表示部51

の全体正面図である。




【図5】アナログ表示部51の断面図である。




【図6】アナログ表示部51の正面図である。





【図7】アナログ表示部51の表示状態を説明するための説明図である。




【図8】アナログ表示部51の表示状態を説明するための説明図である。



イ 本件意匠部分1の登録出願日(平成21年6月8日)は,乙7意匠の

公開日(平成8年7月19日)から10年以上を経ているところ,乙7意

匠は,上記出願前には,公然と知られるに至っていたものと認められる。

また,乙7意匠に係る物品は,発明の名称である遊技機用表示装置その

もので,遊技機に関する数値情報等を表示し,遊技者などに伝達するもの

であるところ,本件意匠部分1に係る物品である遊技機用表示灯と用途及

び機能を共通にしている(乙7意匠に係る物品の設置箇所が,遊技機正面

上部の幕板部に限定されていることや,表示される情報の違いが,この判

断を左右するものではない。)。

(3) 創作容易性の判断

ア 構成態様A1

本件意匠部分1の構成態様A1は,乙7意匠の表示面71の形態として





公然知られていたものといえる。

すなわち,表示面71正面の外表面は,色付きの透明なプラスチック樹

脂でできたカラーレンズ74であり,情報表示機能を有する後方のランプ

73を覆うカバーであるから,遊技用表示灯の透明カバーとして後方の表

示発光部を覆う本件意匠部分1に係る部分と用途及び機能を共通にする。

そして,表示面71正面の外表面は,正面視で略横長長方形状な上,中央

を縦方向の稜線として,その左右面が平面視で偏平した略倒「く」の字状

に背面側へ傾斜しており,構成態様A1と同一の態様を開示するものとい

える。

イ 他の構成態様

乙7意匠の表示面71の縦横比率は約1:7であるが,これを約1:6

(構成態様B1)とすること,表示面71の「く」の字状の開き角度は約

143°であるが,これを約150°(構成態様C1)とすることは,当

業者にとってありふれた手法による変更に過ぎない。

また,本件意匠部分1は,側面視で前屈みに傾斜しており(構成態様D

1),乙7意匠にこのような構成は開示されていないが,本件意匠部分1

に係る遊技機用表示灯は,遊技者の目線よりも上方に設置されるのが一般

的であるため,見上げた状態で視認しやすいよう表示面を前屈みに傾斜さ

せることはごく自然な発想で,他の遊技機用表示灯にも見られる形態であ

る(平成18年4月4日発行の意匠公報で開示された乙5意匠,遅くとも

平成19年(2007年)12月末日までに公表されたと認められる

「THE GUIDE 2007」[乙6]記載の商品「シーガル」に係る乙6意匠,平

成21年3月30日発行の意匠公報で開示された乙9意匠,遅くとも平成

20年12月末日までに公表された[乙53]と認められる商品「オーシ

ャンネオ」に係る乙14意匠)から,この点が創作性の根拠となるもので

はない。





本件意匠部分1が透明である(構成態様E1)点も,遊技用表示灯の表

示カバーとして,後方の発光部を視認できるようすべきことに由来するご

く当然の選択であり,創作性の根拠とならない。

ウ 位置,大きさ及び範囲の創作性

本件意匠部分1に係る部分は,別紙意匠目録1の波線で表されているよ

うに,遊技用表示灯の正面上方の広範囲を占めるものであるが,このよう

な位置,大きさ及び範囲は,遊技機用表示灯の発光部分を覆うカバーとし

てごく当然な選択であり,この点に創作性を見出すことはできない。

エ 小括

以上によれば,本件意匠部分1の形態は,同一の用途及び機能を有する

乙7意匠に係る表示部71正面外表面の形態を,ありふれた手法によって

わずかに変更した上,遊技機用表示灯のカバー部として特段創作性のない

態様並びに位置,大きさ及び範囲を選択したにとどまるものであるから,

公然知られた意匠である乙7意匠に基づき,当業者が容易に創作すること

ができたといえる。

したがって,本件意匠部分1は,意匠登録無効審判請求により登録無効

にされるべきものと認められる。

2 争点2−2(本件意匠部分2の登録は創作容易なため無効にされるべき

か)について

事案に鑑み,本件意匠権2侵害の有無について争点2−2から判断するに,

以下(1)ないし(3)で述べるとおり,本件意匠部分2については,その登録出

願前に公然知られた意匠に基づき当業者が容易に創作することができた(意

匠法3条2項)とは認められない。

(1) 本件意匠部分2

本件意匠部分2は,意匠に係る物品を遊技機用表示灯とし,その形態は,

別紙意匠目録1の実線で表された部分意匠である。つまり,本件意匠部分





2は,波線で表された遊技機用表示灯の正面やや上寄りの位置に透明カバ

ーで覆われた表示部のうち正面視中央で2分された左側部分で上下面及び

左右側を除く正面の外表面並びに同面に略8の字状に突出して配置された

セグメント部のうち左側2つの部分であり,その形態は,概ね以下のとお

りである。

A2 正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜

している。

B2 正面の略横長長方形の縦横比率が約1:3である。

C2 平面視で右辺から左辺に傾斜する角度が前後方向の直線に対して約

75°である。

D2 側面視で前屈みに傾斜している。

E2 正面視で左寄り部分に,7個のセグメントが略8の字状に2個横並

びで突出して配置され,周囲の6個のセグメントは略横長台形状で,残

りの1個のセグメントは略横長六角形状である。

(2) 乙7意匠

前記1(2)のとおりである。

(3) 創作容易性の判断

ア 構成態様A2

本件意匠部分2の構成態様A2は,乙7意匠の表示面71の形態として

公然知られていたものといえる。

すなわち,表示面71正面の外表面は,色付きの透明なプラスチック樹

脂でできたカラーレンズ74であり,情報表示機能を有する後方のランプ

73を覆うカバーである。一方,本件意匠部分2に係る部分は,透明カバ

ーで覆われた表示部であるため,カバーである表示面71正面の外表面と,

個々具体的に見ると機能が同一なわけではないが,遊技機用表示灯におけ

る表示部とそのカバーは,表裏一体のものとして遊技者及び周囲の者に対





して情報を表示するものであり,その意味において,両者は用途を共通に

するといえる。そして,表示面71正面の外表面は,正面視中央で2分さ

れた左側部分が正面視が略横長長方形状な上,平面視で右辺から左辺に背

面側へ傾斜しているのであるから,構成態様A2と同一の態様を開示する

ものといえる。

また,乙7意匠に係る遊技機用表示装置は,表示部を取付面より前面に

突出させることで遊技場内の島通路を通行する遊技客の視線に入りやすく

するものであるから,表示面71のカバーで覆われ,カラーレンズ73が

配置されている後方部分も,カバー部分と同様の傾斜形状であることを前

提にしているといえる(一般に,遊技機用表示灯において,カバー部分と

カバーで覆われる部分との形状が異なり得ること[甲156〜161]が

この判断を左右するものではない。)。かかる観点からも,構成態様A2

は,公然知られていたというべきである。

イ 構成態様B2,C2及びD2

乙7意匠の表示面71の正面視中央で2分された左側部分の縦横比率は

約1:3.5であるが,これを約1:3(構成態様B2)とすること,表

示面71正面の外表面は,平面視で右辺から左辺に傾斜する角度が前後方

向の直線に対して約71.5°であるが,これを約75°(構成態様C

2)とすることは,当業者にとってありふれた手法による変更に過ぎない。

また,本件意匠部分2は,側面視で前屈みに傾斜している(構成態様D

2)が,この点も創作性の根拠となるものでないことは前記1(3)イで論

じたとおりである。

ウ 構成態様E2

しかし,公然知られた乙7意匠に基づくとしても,その表示面71に配

置されたランプ73を,「7個のセグメントが略8の字状に2個横並びで

突出して配置(され,周囲の6個のセグメントは略横長台形状で,残りの





1個のセグメントは略横長六角形状である。)」(構成態様E2)との態

様に置換することは,当業者にとって容易に創作することができたとはい

えない。

すなわち,遊技機用表示灯の表示部において,7個のセグメントを略8

の字状に配置し,数字等の情報表示を可能とすることは,ありふれた手法

であったといえる(遅くとも平成17年10月末日までに公表されたと認

められる商品「データイリス」に係る乙4意匠,乙9意匠,遅くとも平成

20年8月に公表されたと認められる商品「デダマン」に係る乙10意匠,

遅くとも平成18年12月末日までに公表された[乙53]と認められる

商品「スクエア」に係る乙13意匠,乙14意匠)ところ,乙7文献にお

いて,表示面71に数字を表示する態様が実施の変形例として記載されて

いること(段落【0080】【0081】,図15,16)も考慮すれば,

当業者が乙7意匠のランプ74を,7個のセグメントを略8の字状に2個

横並びに配置する形態へ置換することまでは創作容易といい得る。

しかし,略8の字状のセグメントを突出させることは,遅くとも平成2

0年10月18日に公表された(乙54の1・2)と認められる商品「プ

リセグ」に係る乙15意匠として公然知られていたことこそ認められるも

のの,当該態様に係る証拠はこの1つにとどまり,ありふれた態様であっ

たことを認定するに十分ではない上,上記他の公知意匠(乙4,9,10,

13及び14の各意匠)に照らせば,液晶表示などでセグメントを突出さ

せない態様こそがありふれたものであったとうかがわれる。

したがって,乙7意匠に係る表示面71に配置されたランプ73を,

「7個のセグメントが略8の字状に2個横並びで突出して配置」(構成態

様E2)との態様に置換することは,乙15意匠を考慮しても,ありふれ

た手法ということはできない。

エ 小括





以上によれば,本件意匠部分2の形態のうち,構成態様A2からD2ま

では,乙7意匠に基づき,容易に創作することができたといえるものの,

さらに表示面71に配置されたランプ73を構成態様E2の態様に置換

ることについては,遊技機用表示灯の当業者にとってありふれた手法であ

ったということはできず,その容易性を認めることはできない。

また,被告は,本件意匠部分2は,乙5から7及び13から15までの

各意匠のありふれた手法による寄せ集めであるとも主張するが,上記同様

の理由により採用できない。

したがって,本件意匠部分2は,その登録出願前に公然知られた意匠に

基づき,当業者が容易に創作することができた(意匠法3条2項)とは認

められず,意匠登録無効審判により登録無効にされるべきものとはいえな

い。

3 争点2−1(被告意匠部分2は本件意匠部分2に類似するか)について

以下のとおり,被告意匠部分2は,本件意匠部分2に類似するものと認め

られる。

(1) 意匠に係る物品について

本件意匠部分2に係る物品は遊技機用表示灯であり,パチンコ等の遊技機

に接続され,遊技機に関する数値情報等を表示し,遊技者などに伝達すると

の用途及び機能を備えるものである。その実施品である原告製品は,いわゆ

る呼出ランプであり,遊技者が店員を呼び出すための呼出スイッチが備わっ

ている(乙24)が,本件意匠部分2に係る物品として,かかる用途及び機

能を必須と解すべき理由はない。

一方,証拠(乙25〜27)によれば,被告製品は,パチンコ等の遊技機

に直接接続されるものではなく,被告が別に販売する呼出ランプに接続され,

そこに表示される遊技機の情報を連動表示するものであるが,他機器を介し

てとはいえパチンコ等の遊技機に接続され,その数値情報等を表示し,遊技





者などに伝達するとの用途及び機能を有することに違いはなく,本件意匠部

分2に係る物品と類似することは明らかである。

(2) 本件意匠部分2の構成態様

別紙意匠目録2の波線で表された遊技機用表示灯の正面やや上寄りの位置

に透明カバーで覆われた表示部のうち正面視中央で2分された左側部分で上

下面及び左右側を除く正面の外表面並びに同面に略8の字状に突出して配置

されたセグメント部のうち左側2つの部分に係る本件意匠部分2の構成態様

は,以下のとおりである(被告意匠部分2との類否判断における必要性から,

前記2よりも詳細な特定としてF2を付加した。)。

A2 正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜

している。

B2 正面の略横長長方形の縦横比率が約1:3である。

C2 平面視で右辺から左辺に傾斜する角度が前後方向の直線に対して約

75°である。

D2 側面視で前屈みに傾斜している。

E2 正面視で左寄り部分に,7個のセグメントが略8の字状に2個横並

びで突出して配置され,周囲の6個のセグメントは略横長台形状で,残

りの1個のセグメントは略横長六角形状である。

F2 正面視で上下辺及び左右辺はいずれも直線で,向かいの辺と長さが

等しく,かつ,平行で,四隅の角度は全て略直角である。

(3) 本件意匠部分2の要部

登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を

通じて起こさせる美感に基づいて行うものである(意匠法24条2項)。そ

のため,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない

新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意を惹き付ける部分を要部

と把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心





に観察し,全体としての美感を共通にするか否かを判断すべきであり,これ

部分意匠においても異なるものではない。

そして,本件意匠部分2に係る物品である遊技機用表示灯は,パチンコ店

等の事業主によって購入されるものであるから,意匠の類否判断における

「需要者」(意匠法24条2項)は,パチンコ店等の事業主である。

以下,かかる需要者の観点から,本件意匠部分2の要部について検討する。

意匠に係る物品の性質,用途,使用態様など

本件意匠部分2に係る物品である遊技機用表示灯は,遊技機周辺に設置

され,その正面に数値情報等を表示し,遊技者等に伝達するものであるが,

本件意匠部分2は,「正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺から左辺

に背面側へ傾斜」(構成態様A2)し,その「傾斜する角度が前後方向の

直線に対して約75°」(構成態様C2)であることにより,正面からだ

けでなく,左側面からもその表示を視認しやすい点に特徴があるといえる。

また,正面視で左寄り部分に,略8の字状に配置されたセグメントは,

数値等の情報を表示する部分であり,遊技機用表示灯の使用時に遊技者等

が最も注意を払う箇所といえるが,これが「突出」(構成態様E2)して

いることで,平坦な場合とは違った美感をもたらしている。

これらに比べ,正面視における上下左右辺の形状,角度,縦横比率等

(構成態様B2,F2)は,格別特徴のある形態ではないし,また,側面

視で前屈みに傾斜している(構成態様D2)点も,遊技機用表示灯の使用

時に格別遊技者等の注意を惹き付ける箇所とは言い難い。

したがって,本件意匠部分2に係る物品の需要者であるパチンコ店等の

事業主は,顧客である遊技者等が注意を払う箇所も念頭に,「正面視が略

横長長方形状で,平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜」(構成態様A

2)し,その「傾斜する角度が前後方向の直線に対して約75°」(構成

態様C2)であること,「正面視で左寄り部分に,7個のセグメントが略





8の字状に2個横並びで突出して配置」(構成態様E2)していることに

最も注意を惹かれるものと認められる。

イ 公知意匠

前記2で論じたとおり,「正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺か

ら左辺に背面側へ傾斜」(構成態様A2)との態様は,本件意匠部分2の

登録出願前に乙7意匠によって公然知られていた形態であり,また,構成

態様C2で特定された傾斜角度も,乙7意匠における傾斜角度を,当業者

にとってありふれた手法で若干変更したものにとどまる。構成態様B2及

びD2が,創作性の根拠となるものでないことも前記2記載のとおりであ

る。また,「7個のセグメントが略8の字状に2個横並びで突出して配

置」(構成態様E2)していることについても,本件意匠部分2の登録出

願前に乙15意匠として公然知られていた形態である。

ただ,構成態様A2及びCと構成態様Eを組み合わせた形態は,本件意

匠部分2の登録出願前の公知意匠ではないし,また,公然知られた意匠に

基づき,容易に創作することができたものでもない。

ウ 本件意匠部分2の要部の認定

以上の事情に照らせば,本件意匠部分2のうち,「正面視が略横長長方

形状で,平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜」(構成態様A2)し,そ

の「傾斜する角度が前後方向の直線に対して約75°」(構成態様C2)

であることは,乙7意匠によって公然知られていた形態をありふれた手法

で若干変更したにとどまるものであるから,この部分のみをもって,本件

意匠部分2の要部とすることはできないし,また,「7個のセグメントが

略8の字状に2個横並びで突出して配置」(構成態様E2)との形状につ

いても,同様にこれのみを要部とすることはできないが,これら各構成態

様を組み合わせた態様については,本件意匠部分2の要部と認めることが

できる。





(4) 被告意匠部分2の構成

別紙イ号物件写真の被告製品において,透明カバーに覆われた表示部のう

ち正面視中央で2分された左側の平面部分で上下面及び左右側を除く正面の

外表面並びに略8の字状に突出して配置されたセグメント部のうち左側2つ

の部分からなる意匠(被告意匠部分2)の構成は,以下のとおりである(乙

21の1・2)。

a2 正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜

している。

b2 正面の略横長長方形の縦横比率が約1:2.8である。

c2 平面視で右辺から左辺に傾斜する角度が前後方向の直線に対して約

76.5°である。

d2 側面視で前屈みに傾斜している。

e2 正面視で左寄り部分に,7個のセグメントが若干右に傾いた略8の

字状に2個横並びで突出して配置され,周囲の6個のセグメントは略横

長台形状で,残りの1個のセグメントは略横長六角形状である。

f2 正面視で,上下辺は,上辺が下辺よりもやや長い互いに平行な略直

線で,右辺は直線で下辺との角度が88°で右上角では上辺にかけて円

弧を描き,左辺は左側に若干膨らむ凸弧状で,下辺との角度は104.

6°,上辺との角度86.7°である。

(5) 類否

ア 共通点

本件意匠部分2と被告意匠部分2は,正面視が略横長長方形状で,平面

視で右辺から左辺に背面側へ傾斜している上,正面視で左寄り部分に,7

個のセグメントが略8の字状に2個横並びで突出して配置され,周囲の6

個のセグメントは略横長台形状で,残りの1個のセグメントは略横長六角

形状である点のほか,側面視で前屈みに傾斜している点で共通する。また,





正面視で上下辺が互いに平行な略直線で,右辺が直線であることも共通で

ある。

イ 差違点

本件意匠部分2は,平面視で右辺から左辺に傾斜する角度が前後方向の

直線に対して約75°であるのに対し,被告意匠部分2では対応する傾斜

角度が約76.5°である。また,本件意匠部分2は,正面の略横長長方

形の縦横比率が約1:3であるのに対し,被告意匠部分は同比率が約1:

2.8である。

加えて,本件意匠部分2は,正面視で四隅の角度は全て略直角で,上下

辺の長さが等しく,また,左辺も直線であるのに対し,被告意匠部分2で

は,左右辺が上下辺と直角に交わらず(右上角は円弧を描いている。),

若干左寄りに傾いており,上辺が下辺よりもやや長く,また,左辺が左側

に若干膨らむ凸弧状である点でも相違する。被告意匠部分2において,略

8の字状に配置されたセグメントが若干右に傾いている点も,本件意匠部

分2との差違である。

類否判断

(ア) 以上を踏まえて検討するに,本件意匠部分2と被告意匠部分2は,

前記(3)で認定の要部において,その態様を共通とするものである。す

なわち,両意匠部分は,いずれも,正面視において略横長長方形状で,

平面視で右辺から左辺に背面側へ傾斜している上,正面視で左寄り部分

に,7個のセグメントが略8の字状に2個横並びで突出して配置され,

周囲の6個のセグメントは略横長台形状で,残りの1個のセグメントは

略横長六角形状である点を共通にしている。この点,平面視での傾斜角

度及び正面視での縦横比率に若干の違いはあるものの,その程度は微少

で,美感を異ならせるような差違ではなく,かえって,傾斜角度及び縦

横比率にこの程度の違いしかないことは,両意匠部分の類似性を根拠付





けるものといえる。そして,要部でこそないものの,側面視で前屈みに

傾斜している点が同じであることも,両意匠部分の美感の共通性を補強

するものである。

(イ) 一方,被告意匠部分2は,左右辺が上下辺と直角に交わらず(右上

角は円弧を描いている。),若干左寄りに傾いており,上辺が下辺より

もやや長く,また,左辺が左側に若干膨らむ凸弧状であるが,この点で

も,四隅が全て略直角で,左辺も直線である本件意匠部分2との差違が

ある。しかし,要部に係る差違ではない上,その範囲及び差違の程度か

らしても,上記共通点に埋没する程度の違いでしかなく,美感を異にさ

せるようなものではない。被告意匠部分2における略8の字状に配置さ

れたセグメントの傾きについても同様である。

(ウ) また,本件意匠部分2は,部分意匠であるため,類否判断に当たっ

ては,その形態のみでなく,部分意匠に係る部分の物品全体における位

置,大きさ及び範囲も参酌すべきと解されるが,本件意匠部分2及び被

告意匠部分2は,いずれも表示本体部分の正面視中央で2分された左側

の広範囲にわたり,正面を透明カバーで覆われた部分の意匠である点で

共通している以上,本件意匠部分2がほぼ上半分のみを占めるのに対し,

被告意匠部分2が上下ほぼ全面を占めているという違いは,部分意匠

しての美感を異にさせるほどのものではない。

(エ) したがって,本件意匠部分2と被告意匠部分2は,需要者の視覚を

通じて起こさせる美感が共通しているといえ,類似するものと認められ

る。

(6) 小括

以上検討したところによれば,本件意匠部分2の登録は無効にされるべ

きものではなく,被告意匠部分2は本件意匠部分2に類似するから,被告

製品の製造販売等は,本件意匠権2の侵害となる。





(7) 差止めの必要性

ア 弁論の全趣旨によれば,現在被告は被告製品の製造,販売,輸入を中止

していることが認められるが,本件訴訟における被告の主張などに照らせ

ば,被告製品の販売等による侵害のおそれはなお存在しており,また,在

庫品の存在もうかがわれるため,被告製品の製造,販売,輸入又は広告宣

伝の差止め並びに被告製品及びその半製品(別紙イ号物件写真に示される

形態を具備しているが製品として完成に至らないもの)の廃棄の必要性が

認められる。

イ 一方,被告が被告製品の製造のみに用いる金型を有していることを認め

るに足りる証拠はなく,廃棄の必要性は認められない。

4 争点3(原告の損害)について

(1) 被告製品の販売数量

本件意匠部分2の登録以降,その類似意匠に係る被告製品の販売台数が3

996台であることは当事者間に争いがない。

(2) 原告製品の単位数量当たりの利益

本件意匠部分2の実施品である原告製品の1台当たりの利益は,以下のと

おりである。

ア 原告製品の販売価格

原告は,原告製品1台当たりの販売価格につき,値引きも反映させると

平均に して1 万8 948 円( 取付工 事費 及び代 理店手 数料 は含ま れな

い。)であると主張していること(ただし,この価格を直接示す証拠は提

出されていない。),被告は,原告製品購入者からの聴取により,原告製

品の顧客への販売価格は取付工事費及び代理店手数料を含めて2万円であ

り,そこから取付工事費及び代理店手数料を控除すれば1万8000円に

なると考えられる旨主張していること,証拠(甲130,132〜13

5)によれば,原告製品は,最も高い場合2万4500円で販売されてい





たものと認められるが,原告及び被告の主張する上記価格帯は,値引き後

の額として整合性を有すること,原告製品の値引きが被告製品によって引

き起こされたことを認めるに足りる証拠はないことからすれば,意匠法3

9条1項によって原告の損害額を算定するに当たっては,原告製品1台当

たりの販売価格を1万8000円と認めるのが相当である。

イ 費用

(ア) 製造原価

被告は,原告製品1台当たりの利益を算定するに当たり,製造原価を控

除すべきである旨主張し,原告もこのこと自体を争うものではない。

そこで検討するに,証拠(甲131)によれば,原告製品1台当たりの

材料費は,平均して1万0262円であることが認められ,この認定を妨

げるに足りる証拠はない。

また,製造原価を構成する費用である労務費及び経費について,原告製

品に係る額を直接示す証拠はないが,原告の決算報告書(甲136)によ

れば,原告の製造する全製品の集計として,労務費及び経費の合計は,材

料費の約4分の1,つまり,製造原価全体としては材料費の約4分の5

(1.25倍)で推移していることが認められるところ,原告製品1台当

たりの材料費が1万0262円であることに照らし,原告製品1台当たり

の製造原価は1万2500円と認めるのが相当である。

(イ) 販売費及び一般管理費

意匠法39条1項によって損害額を算定するため,原告製品1台当たり

の利益を求めるに当たっては,販売費及び一般管理費につき,変動費のみ

を控除するのが相当である。

この点,原告は,販売費及び一般管理費のうち変動費に当たるのは旅費

交通費,広告宣伝費,発送配達費,振込手数料及びその他の販売費である

とし,その合計は原告製品1台当たり685円である旨主張する。





これに対し,被告は,それら費用のほか,販売員給与及び貸倒償却費も

変動費に当たるとし,変動費の合計を原告製品1台当たり801円である

旨主張するが,原告製品との関係において,販売員給与及び貸倒償却費を

変動費と認めることは相当でない。

したがって,原告の主張する額が,原告の決算報告書(甲136)にお

けるそれら費用の売上高に対する比率と整合することも考慮し,販売費及

び一般管理費のうち変動費の額は,原告製品1台当たり685円と認める

のが相当である。

(ウ) 小計

以 上 よ り , 原 告 製 品 1 台 当 た り の 利 益 は , 4 8 1 5 円 ( = 18,000-

12,500-685)と算定される。

(3) 意匠法39条1項本文による算定

以上より,意匠法39条1項本文に従えば,原告の損害額は1924万

0740円(=4,815 円×3,996 台)と算定される。

(4) 寄与度減額等

しかし,意匠法39条1項を適用して損害額を算定するに当たっては,侵

害品の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を意匠権者が販売することが

できないとする事情があるときは,当該事情に相当する数量に応じた額を控

除するものとされる(意匠法39条1項但し書)上,意匠権者の実施品の利

益に対する登録意匠の寄与した度合によっては,損害額の全部又は一部を減

額すべきものと解される。

ア そこで検討するに,前記3において,本件意匠部分2の要部に関して論

じたとおり,原告製品は,「正面視が略横長長方形状で,平面視で右辺か

ら左辺に背面側へ傾斜」(構成態様A2)し,その「傾斜する角度が前後

方向の直線に対して約75°」(構成態様C2)であることにより,正面

からだけでなく,左側面からもその表示を視認しやすい点に特徴があり,





その広告宣伝においても,「横から見てもこんなに見やすい!!」「横顔

に自信アリ。」などと強調されている(甲141,乙24)。

しかし,前記2及び3で論じたとおり,構成態様A2及びC2は,乙7

意匠によって公然知られた形態をありふれた手法で若干変更したにとどま

るもので,この部分が原告製品の売上げや利益に寄与していたとしても,

これをもって本件意匠部分2の寄与と見ることはできない。本件意匠部分

2の創作性が肯定されるのは,あくまで上記態様に,「7個のセグメント

が略8の字状に2個横並びで突出して配置」(構成態様E2)(構成態様

E2)との形状を組み合わせているからであり,本件意匠部分2の寄与度

としても,このような組み合わせの形態であることによる寄与度を考える

べきである。

この点,構成態様A2及びC2に,略8の字状のセグメントが突出する

形状を組み合わせることで,数値等の情報表示部の視認性がより高められ

ており(甲141,乙24),一定の需要喚起効があるものといえるが

(甲111),上記のとおり,構成態様A2及びC2は公然知られた形態

をありふれた手法で若干変更したにとどまること,本件意匠部分2は正面

視で左側部分のみの部分意匠であること,原告製品の広告宣伝(甲141,

乙24)において,本件意匠部分2に係る部分とは異なるスイッチ部や液

晶のデータ表示部の機能なども強調されており,意匠のみを差別化要因と

する製品ではないことからすれば,本件意匠部分2の寄与度は,相当限定

的に見ざるを得ない。

イ また,被告製品は,遊技機に関する数値情報等を表示し,遊技者などに

伝達するとの用途及び機能を備える点において,原告製品と共通するとは

いえ,被告の販売する呼出ランプ「エレクスランプ」が遊技機に接続され

ていることを前提として設置される付属品である(乙3,25〜27,3

7)。この点において,他の機器を前提とすることなく遊技機と接続可能





な呼出ランプである原告製品(甲141,乙24)との違いがあり,被告

製品3996台の販売がなかったとしても,その前提となる「エレクスラ

ンプ」の販売台数も同台数だけ連動して減少し,同じく呼出ランプである

原告製品の販売が同台数増加することまではなかったといえる。

ウ 以上の事情に照らし,意匠法39条1項による原告の損害額算定として

は,同項本文に従って求められた1924万0740円から,その85%

に当たる1635万4629円を控除するのが相当であり,288万61

11円と算定される。

(5) 弁護士費用

本件における諸般の事情を考慮すると,本件意匠権2の侵害と因果関係の

ある原告の弁護士費用は60万円であり,これを損害と認めるのが相当であ

る。

(6) 小括

したがって,被告による本件意匠権2の侵害によって原告が被った損害は,

348万6111円(=2,886,111+600,000)である。

5 結論

以上の次第で,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるから,これを

認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,主文第2項に係

る仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととし,主文の

とおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部



裁判長裁判官 谷 有 恒




裁判官 松 阿 彌 隆





裁判官 松 川 充 康





別紙意匠目録1

意匠の説明】実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようと

する部分である。斜視図及び端面図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特

定している。透明部分を示す各参考図において薄墨を施した部分は透明である。

【拡大斜視図】




【正面図】




【背面図】





【平面図】




【底面図】




【右側面図】




【左側面図】





【内部機構を一部省略したA−A拡大端面図】




【内部機構を一部省略したB−B拡大端面図】




【透明部分を示す参考正面図】





【透明部分を示す参考A−A拡大端面図】




【透明部分を示す参考B−B拡大端面図】




【透明状態を示す参考拡大斜視図】





【透明状態を示す参考正面図】




【透明状態を示す参考拡大左側面図】





別紙意匠目録2

意匠の説明】実線であらわした部分が、部分意匠として意匠登録を受けようと

する部分である。斜視図及び端面図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特

定している。透明部分を示す各参考図において薄墨を施した部分は透明である。

透光性を有する部分を示す各参考図において薄墨を施した部分は透光性を有する。

【拡大斜視図】




【正面図】





【背面図】




【平面図】




【底面図】




【右側面図】




【左側面図】





【内部機構を一部省略したA−A拡大端面図】




【内部機構を一部省略したB−B拡大端面図】




【透明部分を示す参考正面図】





【透明部分を示す参考A−A拡大端面図】




【透明部分を示す参考B−B拡大端面図】




【透光性を有する部分を示す参考正面図】





【透光性を有する部分を示す参考A−A拡大端面図】




【透光性を有する部分を示す参考B−B拡大端面図】





別紙

イ号物件目録


別紙イ号物件写真に示す「ハイパーイルミネーションランプ」と称する型番E

L−D1の遊技機用表示灯