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関連審決 無効2014-880017
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事件 平成 28年 (行ケ) 10167号 審決取消請求事件

原告 株式会社ケイジェイシー
訴訟代理人弁理士 佐藤英昭 丸山亮 林晴男
被告株式会社ナカノ
訴訟代理人弁護士 名越秀夫 生田哲郎 森本晋 佐野辰巳 中所昌司 吉浦洋一
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2017/01/24
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告が求めた裁判
特許庁が無効2014-880017号事件について平成28年6月17日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,意匠登録無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,類似性(意匠法3条1項3号)についての判断の是非である。
1 特許庁における手続の経緯 被告は,下記2の意匠(本件意匠)の意匠権者である。(甲1) 原告が,平成26年10月31日付けで本件意匠について意匠登録無効審判請求をしたところ(無効2014-880017号) 特許庁は, , 平成28年6月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月27日,原告に送達された。(甲9) 2 本件意匠 @ 登録番号 第1406731号 A 登録日 平成23年 1月 7日 B 出願日 平成21年 8月21日 C 意匠に係る物品 箸の持ち方矯正具 D 意匠に係る物品の説明 本物品は,箸の持ち方矯正具に関するものである。
矯正具は,箸に取付けた状態の参考斜視図に示すように,左右の箸に個別に挿 入される。使用者は,箸を持った状態の参考斜視図に示すように,人差し指と 薬指とを矯正具内に挿入することで,持ち方が矯正される。
E 図面 別紙意匠公報の【図面】のとおり 下記に, 「箸の持ち方矯正具の参考斜視図」 「箸に付けた状態の参考斜視図」 と を再掲する。
【箸の持ち方矯正具の参考斜視図】(枠付きの符号等は,本判決で付した。以下同じ。) B A A【箸に付けた状態の参考斜視図】 3 審決の理由の要点 (1) 本件意匠の認定(項番号は,本判決で付した。以下同じ。) 【基本的構成態様】 Aア 2本一対の箸のそれぞれに装着するための2つの構成部品から成るものである。
Aイ 2つの構成部品は共に箸を挿入して取り付ける取付部と指を挿入する円環状(リング)部によって形成されている。
Aウ 構成部品は,共に取付部とリング部が一体成形されているが,リング部と取付部の取付け向き,角度は異なっている。
【具体的構成態様】 aア 取付部は,通常の太さの箸を挿入する程度の内径のやや短い両端開口の肉薄の隅丸正方形角管状である。
aイ リング部は,やや細幅で若干肉厚の,指輪のような円環状(超扁平円筒状)である。
aウ 取付部とリング部の結合の態様は,構成部品Aは,取付部とリング部の穴の中心線の方向(指と箸の挿入方向)が直交する向きに,構成部品Bは,同2つの方向が概略同方向平行で,僅かに(左右方向約20度,上下方向数度)傾いて,円環状の外側が溶けて角管状に貼り付くように形成されている。
aエ 構成部品を構成する各部の主な構成比は,角管状の長さと円環状の外径の比は約2:3で,円環状の厚みは円環状の内径(直径)の約1/5で,円環状の幅については,構成部品Aが角管状の端面の一辺とほぼ同長の幅で,構成部品Bがその3/4強の細幅のものである。
(2) 引用意匠の認定 ア 引用意匠1 特許第3766831号公報(甲2)の図6に表された練習用箸に係る意匠(取り外し可能な追加付属部品を除く。。
) 第2箸部材 第1箸部材 B 上リング状部 A リング状部 B 下リング状部 【基本的構成態様】B1a 箸は2本一対の丸棒状のもので構成されている。
B1b その棒状には,持ち方を矯正するための,指を挿入する円環状部(リング部)が設けられている。
B1c また,2本の棒状を緩く連結させるための結合部(結合部)をそれぞれの棒状に形成している。
【具体的構成態様】b1a 2本の棒状は共に,先端に向けて緩やかに次第に縮径するテーパの付いた細長丸棒状(棒状)である。上端には円孔が軸方向に設けられており,下端は電気接続用のコネクター部となっている。
b1b リング状部は,第1箸部材には,1個,Aリング状部が,リングの穴の貫通方向が棒状の軸と直交する水平の向きに棒状に一体に形成されている。
第2箸部材には,2個,Bリング状部が,リングの穴の貫通方向が棒状の軸とほぼ同じ垂直の向きに,2個が上下(B上リング状部,B下リング状部)に,棒状を挟んで対向する位置に取り付けられている。
b1c Aリング状部は,棒状の上から約1/3の周側面の位置に縦にリングの円環の上下が棒状と融合して,棒状にU字形状がR状に滑らかに貼り付くように形成され,リングの内径の円孔が棒状の中心軸の位置以上に食い込むように一体的に形成されている。
b1d Bリング状部は,棒状の略中央の,棒状よりごく僅かに径の太い取付部分の中央やや上寄りと中央やや下寄りの位置に,上下幅の細い,やや肉厚の円環状2つが棒状を挟んで相互に対向する位置(約180度開いて離れたベンゼン環の置換基のパラの位置)に,円筒状取付部分に円環状の外側が溶着して貼り付くように結合形成されている。2つの円環状は,細幅で肉厚の円環状(極扁平円管状)である。
また,円筒状取付部の中央の上下のリング状部分の間には,1本の水平方向の線 模様が表れている。
b1e 結合部は,第1箸部材の上部に形成した棹状の先の雄接続ボールが第2箸部材の上部に形成した棹状の先の雌接続穴に回動自在に係合し,両箸部材を所定の間隔で保持するものである。(取り外しも可能。) イ 引用意匠2 特許第3766831号公報(甲2)の図3〜5(図5は摘示省略)に表された練習用箸に係る意匠(取り外し可能な追加付属部品を除く。。
) 【基本的構成態様】 B2a B1aと同じ。
B2b B1bと同じ。
【具体的構成態様】 b2a 2本の棒状は共に,先端に向けて緩やかに次第に縮径するテーパの付いた細長丸棒状(棒状)である。
b2b b1bと同じ。
b2c b1cと同じ。
b2d b1dと同じ。
ウ 引用意匠3 引用意匠2において,その第2箸部材の中央に取り付けられた,箸の持ち方練習用箸の一部を構成する部品である, 「箸の持ち方練習用箸の指挿入」人差し指及び中指を挿入する保持ユニット(符号120,121及び122)に係る意匠 【基本的構成態様】B3a 2本一対の箸の一方に装着する構成部品である。
B3b 指を挿入する2つのリング(輪)部と箸を挿入して取り付ける取付部によって形成されている。
【具体的構成態様】b3a 取付部は,通常の太さの箸を挿入する程度の内径のやや短い両端開口の肉薄の僅かにテーパの付いた円筒状である。
b3b リング部は,やや細幅で若干肉厚の,指輪のような円環状(超扁平円筒状)である。
b3c リング部は,円筒状の取付部の中央やや上寄りと中央やや下寄りの位置に,上下円環状2つが取付部を挟んで相互に対向する180°の位置(ベンゼン環の置換基のパラの位置)に,かつ,円環状の面を水平より僅かに傾けて,円筒状 取付部に円環状の外側が溶着して貼り付くように結合形成されている。
(3) 対比及び類否判断 ア 引用意匠1【対比】 @ 意匠に係る物品 本件意匠は,箸に取り付ける取付部と指を挿入するリング部のみから成る「箸の持ち方矯正具」であるのに対して,引用意匠1は,箸の持ち方を矯正するための指を挿入するリング部が設けられている「練習用箸」又は「練習用箸の本体(部品)」であって,意匠に係る物品が異なる。
A 共通点 ・箸を持つ指を挿入する穴部を形成するリング状部を有する。
・一部のリング状部のリング状部分のみの形状がやや肉厚の細幅円環状である。
B 相違点 ・本件意匠は,一対の箸のそれぞれに取り付けて使用する,2つの独立した矯正具から構成されるものであるのに対して,引用意匠1は,2本一対の箸(棒状)それぞれに箸の持ち方を矯正するための指を挿入する部分が一体に備えられた態様のものである。一方の棒状には完全に一体に成形された指挿入部分が1つ形成され,もう一方には棒状とは別の構成部材から成る指挿入部分が2つ形成されている。
・上記Aの共通点を除く点。
類否判断】 @ 意匠に係る物品 本件意匠は,箸に取り付けて使用する箸という飲食用の道具の付属品的なもの(あるいは教育訓練用の補助具的なもの)である「持ち方矯正具」であるのに対して,引用意匠1は,その一部に箸の持ち方を矯正するための部分を一体的に成形しているとはいえ, 「箸」という飲食用の道具そのものであって,箸の持ち方を矯正する役割を持つという点で共通するところはあるとしても,意匠の類否判断が不能である といえるほどに,両意匠を対比する前提となる用途及び機能において全く次元が異なる。
A 形態 意匠全体の形態として見た場合には,本件意匠のリング部と取付部のみから成る,2つの小さな指輪様の小さな塊の構成部品は,引用意匠の細い丸棒状の箸の形状を主とする形態とは全く異なる形態である。
B 美観 本件意匠と引用意匠1とは,意匠に係る物品において異なるものであり,また,意匠全体の形態においても全く相違するものであり,共通の美感を与えるものではないから,本件意匠は,引用意匠1に類似するものとは認められない。
イ 引用意匠2 引用意匠1についての判断と同旨。
ウ 引用意匠3【対比】 @ 意匠に係る物品 本件意匠は,箸に取り付ける取付部と指を挿入するリング部のみから成る「箸の持ち方矯正具」であり,2本一対の箸のそれぞれに取り付けて,それぞれに人差し指と薬指を挿入して使用するものであるのに対して,引用意匠3は,箸の持ち方を矯正するための指を挿入するリング部が設けられている「練習用箸」又は「練習用箸の本体(部品)」用の,箸を持つ指を挿入するリング部の一部を構成する,箸に取り付ける取付部と指を挿入するリング部から成る構成部品であり,用途及び機能の一部は共通するが,2本一対の箸の1本にのみ取り付けて2つのリングに人差し指と中指を挿入して使用するものである点で,異なる。
A 共通点 ・箸に取り付ける取付部と指を挿入するリング部から成る。
・リング状部のリング状部分のみの形状が,やや肉厚の細幅円環状である。
・取付部とリング部の取り付け態様において,取付部とリング部の穴の中心線の方向(指と箸の挿入方向)が概略同方向平行である部分を有する。
B 相違点 ・本件意匠は,2本の箸のそれぞれに取り付けて使用する2つの構成部品から成るものであるのに対して,引用意匠3は,箸の1本に取り付ける,箸の持ち方を矯正する部分を備えた1つの構成部品のものである。
・取付部が,本件意匠は,隅丸四角形状の角筒状であるのに対して,引用意匠3は,円筒状である。
・リング状部の2つの円環状の幅が,本件意匠は異なるのに対して,引用意匠3は同幅である。
・リング状部の2つの円環状の取付部に対する取付向きが,本件意匠は,1つは取付部の筒状の軸とほぼ同方向の軸の向きであるが,もう1つは取付部の筒状の軸と直交する方向の軸の向きであるのに対して,引用意匠3は,取付部と筒状の軸とほぼ同方向の軸の向きである。加えて,取付部とリング部の結合部分の態様が,本件意匠は,それぞれの形状が独立的な形状を残しながらも接合部分が滑らかに結合形成されているのに対して,引用意匠3は,比較的滑らかに結合形成されている。
類否判断】 @ 意匠に係る物品 本件意匠と引用意匠3は,箸の持ち方を矯正するための指を挿入するリング部と,箸に取り付ける取付部とから成る構成部品であり,用途及び機能の一部は共通するが,本件意匠は,2本一対の箸のそれぞれに取り付けて,それぞれに人差し指と薬指を挿入して使用するものであるのに対して,引用意匠3は,2本一対の箸の1本にのみ取り付けて2つのリングに人差し指と中指を挿入して使用するものである点で,異なるものであるから,両意匠を対比する前提となる機能及び使用方法において異なる。
A 形態 本件意匠と引用意匠3は,箸に取り付ける取付部と指を挿入するリング部から成るものである点で共通するが,いまだ具体的な形状の共通点という以前の概念的な共通性にすぎず,また,指を挿入するリング状部の形状がやや肉厚の細幅円環状である点が共通することも,ごくありふれた形状であって両意匠にのみ共通するものではない。
一方,本件意匠は,箸に取り付けて使用する矯正具2つの構成部品から成るものであるのに対して,引用意匠3は,箸の持ち方を矯正する部分を備えた1つの構成部品である。また,リング状部の2つの円環状の取付部に対する取付向きが,本件意匠は,1つは取付部の筒状の軸とほぼ同方向の軸の向きであるが,もう1つは取付部の筒状の軸と直交する方向の軸の向きであるのに対して,引用意匠3は,取付部と筒状の軸とほぼ同方向の軸の向きである。さらに,リング部の結合部分の相違について,本件意匠は,それぞれの形状が独立的な形状を残しながらも接合部分が滑らかに結合形成されているのに対して,引用意匠3は,比較的滑らかに結合形成されている。
また,取付部の形状が,本件意匠は,隅丸四角形状の角筒状であるのに対し,引用意匠3は,円筒形状である点は,いずれもありふれた形状であるが,内部に雌ねじを切る場合の引用意匠3については円筒状が必須となるから,基本的な形態の相違である。そして,リング状部の2つの円環状の幅が,本件意匠では異なるのに対して,引用意匠3は同幅である点は,リング状部の取付角度の違いと相まって,両意匠の異なる印象を強める。
以上からすると,本件意匠と引用意匠3とは,全体の構成において,箸を持つ指を挿入する穴を形成するリング状部を有し,そのうちの一部のリング状部の,リング状部分のみの形状において,細幅で肉厚の円環状である点で共通するだけであって,意匠全体の形態として見た場合には,本件意匠の,リング部と取付部のみから成る2つの小さな指輪様の小さな塊の構成部品は,引用意匠の1つのまとまった形態の構成部品から成るものとは大きく異なり,さらに,取付部とリング部の取付向 き等において大きく異なる相違が,類否判断に大きな影響を及ぼす。
したがって,本件意匠の形態は引用意匠3の形態と全く異なる形態である。
なお,仮に引用意匠3の構成部品が,1つのまとまった形態のものではなく,上下2つに分離するものであったとしても,いずれも片方の箸に装着する点で変わるものではなく,取付部とリング部の取付向き等において大きく異なる相違点が,両意匠の類否判断において極めて大きな影響を及ぼすことに変わりはない。
B 美観 本件意匠と引用意匠3とは,意匠に係る物品において,用途において共通するものの,その具体的な機能,それに伴う使用方法において相違するものであり,また,意匠全体の形態においても大きく相違するものであって,共通の美感を与えるものではないから,本件意匠は,引用意匠3に類似するものとは認められない。
エ 小括 本件意匠は,引用意匠1〜引用意匠3のいずれの意匠とも類似しないものであって,意匠法3条1項3号に該当しない。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(引用意匠の認定の誤り) 審決は,引用意匠1及び引用意匠2の第2箸部材のB上リング状部とB下リング状部とが,箸と別体であるのか不明であるとし,引用意匠1〜引用意匠3のB上リング状部とB下リング状部とが,分離できるものか一体のものであるのかについて不明であるとして,引用意匠1〜引用意匠3の形態を認定する。
しかしながら,甲2(特許公報)に係る公表特許公報である特表2004-538074号公報(甲8)の【図5】には,B上リング状部とB下リング状部とが上下に分離し,箸本体から取り外し可能であることが明示されている。
したがって,この点を加味して引用意匠を認定しなかった審決の引用意匠1〜引用意匠3の認定には,誤りがある。
2 取消事由2(相違点の認定の誤り) 上記1の引用意匠1〜引用意匠3の認定を前提にすれば,相違点(全体の構成に係るもの)は,次のとおりに認定されるべきである。なお,審決と異なる部分を下線で示す。
(1) 引用意匠1について「 本件意匠は,一対の箸のそれぞれに取り付けて使用する,2つの独立した矯正 具から構成されるものであるのに対して,引用意匠1は,2本一対の箸(棒状) それぞれに箸の持ち方を矯正するための指を挿入する部分が一体に備えられた態 様のものである。一方の棒状には完全に一体に成形された指挿入部分が1つ形成 され,もう一方には棒状とは別の2つの独立した構成部材からなる指挿入部分が (削除)形成されている。」 (2) 引用意匠2について 上記(1)と同じ。
(3) 引用意匠3について「 本件意匠は,2本の箸のそれぞれに取り付けて使用する2つの構成部品から成 るものであるのに対して,引用意匠3は,箸の1本に取り付ける,箸の持ち方を 矯正する部分を備えた『上リング状部』と『下リング状部』の2つの構成部品の ものである。」 3 取消事由3(類否判断の誤り) (1) 取消事由3-1(引用意匠1及び引用意匠2) ア 意匠に係る物品 審決は,本件意匠は「箸の持ち方矯正具」であり,引用意匠1及び引用意匠2は「箸」であるから,両者の意匠に係る物品が異なると判断する。
しかしながら,同一でない物品の類否については,両物品の用途・機能等から類 似性を検討しなければならないところ,引用意匠1及び引用意匠2の物品は, 「箸の持ち方矯正具付き箸」といえるから,その機能及び使用方法は,箸の持ち方矯正具の機能の部分において,本件意匠に係る物品と共通する。
そうすると,本件意匠の物品と,引用意匠1又は引用意匠2の物品とは類似する。
したがって,審決の上記判断には,誤りがある。
イ 形態 審決は,本件意匠を,引用意匠1又は引用意匠2の箸の形状と対比して,両者が類似しないと判断する。
しかしながら,上記アのとおり,本件意匠との類否が判断されるべきなのは,引用意匠1又は引用意匠2の「箸の持ち方矯正具」の部分であるから,審決の上記判断は誤りである。
ウ 小括 以上からみて,本件意匠と,引用意匠1又は引用意匠2とは,いずれも類似するから,両者を類似しないとした審決の判断には,誤りがある。
(2) 取消事由3-2(引用意匠3) ア 意匠に係る物品 審決は,本件意匠が2本一対の箸のそれぞれに取り付けて,それぞれに人差し指と薬指を挿入して使用するものであるのに対して,引用意匠3は,2本一対の箸の1本にのみ取り付けて2つのリングに人差し指と中指を挿入して使用するものである点で物品を異にすると判断する。
しかしながら,物品の類否の判断に当たっては,物品に表された形態の価値を評価する範囲において用途及び機能に共通性があるか否かを判断するのであって,物品の詳細な用途及び機能を比較すべきものではない。そして,どの指を挿入するリングであるかというような,審決が本件意匠と引用意匠3について上記に認定するところは,物品の詳細な用途及び機能を比較するものである。
そうすると,審決の上記判断には,誤りがある。
イ 形態 (ア) 構成部品の数に対する評価 審決は,本件意匠は,箸に取り付けて使用する矯正具2つの構成部品から成るものであるのに対して,引用意匠3は,箸の持ち方を矯正する部分を備えた1つの構成部品であるとの点を重視する。
しかしながら,前記1のとおり,B上リング状部とB下リング状部とは上下に分離し,箸本体から取り外し可能な物品であるから,審決の上記判断は誤りである。
そうすると,本件意匠と引用意匠3は,いずれも,2つの構成部品から成る点において基本的構成を同一とするものである。
(イ) 用途及び機能に対する評価 審決は,リング状部の2つの円環状の取付部に対する取付向きが,本件意匠は,1つは取付部の筒状の軸とほぼ同方向の軸の向きであるが,もう1つは取付部の筒状の軸と直交する方向の軸の向きであるのに対して,引用意匠3は,取付部と筒状の軸とほぼ同方向の軸の向きであるとの点を重視する。
しかしながら,引用意匠3に係る物品に表された用途及び機能は, 「箸の持ち方を矯正するという使用目的」 「リング部に指を挿入し,取付部を箸に取り付けるという使用状態」 「指が正しい位置からずれないように保持するという機能」というものであり,矯正具をどこに取り付けるか,どの指をどのリングに入れるかという審決が上記に認定するところは,不必要に限定された用途及び機能に基づく判断である。
矯正具をどこに取り付けるか,どの指をどのリングに入れるかということは,本件意匠に係る公報(甲1)の【参考斜視図】に基づくものであるが,参考図は,意匠の理解を助けるための図面にすぎず,意匠を表した図面そのものではない(意匠法施行規則3条,様式第6の備考14参照)。
(ウ) 物品の構造に対する評価 審決は,内部に雌ねじを切る場合の引用意匠3については,取付部の形状が円筒状となっている点が必須の形状となると判断する。
しかしながら,甲2の【図3】 【図6】を見れば,内部に雌ねじを切る態様(甲2の【図4】)は,引用意匠3の一部にのみ当てはまるものであって,この点を有することを対比判断の内容に含めることは,この態様が引用意匠3の全てに当てはまるとしたに等しく,審決の上記認定は,誤りである。
(エ) 取付向き等に対する評価 審決は,本件意匠と引用意匠3とが,取付部とリング部の取付向きについて相違していることを重視する。
しかしながら,取付部とリング部の取付向きの相違は,極めて限定的な相違にすぎないから,類似性を左右しない。すなわち,本件意匠は,2つの小さな指輪様の小さな塊の構成部品と評すべきものであり,その取付部とリング部の相対的な向きの相違の美観に与える影響は,極めて限定的なものである。
ウ 小括 以上からみて,本件意匠と引用意匠3とは,美観を共通にし,類似する意匠であるから,両者を類似しないとした審決の判断には,誤りがある。
取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1に対して 原告は,B上リング状部とB下リング状部とは,上下に分離し,箸本体から取り外し可能であると主張する。
しかしながら,B上リング状部とB下リング状部とが分離するものであったとしても,類否判断には影響しないから,上記の点の認定の是非は,審決取消事由を構成しない。
もっとも,引用意匠1及び引用意匠2が記載された刊行物として特定されたのは,甲2の特許公報であり,これに他の刊行物である甲8の公表特許公報の記載内容を組み合わせて引用意匠を認定することは許されない。
仮に,甲8の記載内容を参酌することができるとしても,甲8の【図5】は補正 により削除され甲2には記載されていないものであり,しかも,甲8には,【図5】について,「本発明の一つの実施態様による練習用箸の調節手段を示す詳細図である」【0066】 ( )との説明があるのみであり,他の図面や明細書の記載内容とどのような関係にあるのか,甲8を見ても不明である。そうすると,甲8の【図5】が甲2に記載された引用意匠1〜引用意匠3を表したものとはいえない。かえって,甲8の【図5】が削除されたという事実は,出願人が同図の内容を意識的に除外したことを意味するものであり,これによれば,B上リング状部とB下リング状部は一体の部材であると解するべきである。
したがって,審決の引用意匠1〜引用意匠3の認定には,誤りがない。
2 取消事由2に対して 取消事由2は,取消事由1が成り立つことを前提とするところ,上記1のとおり取消事由1が成り立たない以上,取消事由2も成り立たない。
3 取消事由3に対して (1) 取消事由3-1に対して ア 意匠に係る物品 原告は,本件意匠の物品と,引用意匠1又は引用意匠2の物品とは類似すると主張する。
しかしながら,仮に,引用意匠1及び引用意匠2が「箸の持ち方矯正具付き箸」であるといえるとしても,引用意匠1及び引用意匠2の「箸の持ち方矯正具」は,完成された主たる製品の一部となっているから,本件意匠に係る物品とは非類似である。
イ 形態 原告は,本件意匠と,引用意匠1又は引用意匠2の「箸の持ち方矯正具」の部分との類否が判断されるべきであると主張する。
しかしながら,意匠の形態の類否判断は,両意匠の全体同士を対比することにより行うべきである。
また,仮に,引用意匠1及び2に係る物品を「箸の持ち方矯正具付き箸」であるとしても,引用意匠1又は引用意匠2の全体を,本件意匠の全体と対比することによって意匠の形態の類否判断を行うべきである。
ウ 小括 以上からみて,本件意匠と,引用意匠1又は引用意匠2とは,いずれも類似しないとした審決の判断には,誤りはない。
(2) 取消事由3-2に対して ア 意匠に係る物品 原告は,審決が不必要に詳細に物品の用途及び機能を認定したと主張する。
しかしながら,本件意匠が2本一対の箸のそれぞれに取り付けて,それぞれに人差し指と薬指を挿入して使用するものであるのに対して,引用意匠3は,2本一対の箸の1本にのみ取り付けて2つのリングに人差し指と中指を挿入して使用するものであるとの審決の認定に誤りはなく,その認定が不必要に詳細であるということはない。
イ 形態 (ア) 構成部品の数に対する評価 原告は,B上リング状部とB下リング状部とは上下に分離し,箸本体から取り外し可能な物品であると主張する。
しかしながら,前記1のとおり,B上リング状部とB下リング状部は一体の部材である。
(イ) 用途及び機能に対する評価 原告は,審決が不必要に詳細に物品の用途及び機能を認定したと主張する。
しかしながら,意匠の類否判断においては,物品単体で個別に美観を評価するほか,使用状態における配置等も考慮して,美観を評価し,総合的に意匠全体の類否 判断をするべきである。したがって,その範囲で,物品の用途及び機能における差異を評価することも当然許される。審決における物品の用途及び機能における差異の評価が,不必要に詳細なものであるとはいえない。
(ウ) 物品の構造に対する評価 原告は,審決が,内部に雌ねじを切る態様を引用意匠3に含めたことは誤りであると主張する。
しかしながら,審決は,原告の指摘する部分において,内部の雌ねじを引用意匠3の全てに当てはまるかのように判断したわけではなく,同部分は,取付部が四角筒状(本件意匠)か円筒状(引用意匠3)かという相違点の評価をしているにすぎないと理解すべきである。
(エ) 取付向き等に対する評価 原告は,本件意匠と引用意匠3との取付部とリング部の取付向きの相違の美観に与える影響は,極めて限定的なものであると主張する。
しかしながら,本件意匠及び引用意匠3は,基本的には取付部とリング部のみからなる意匠であるから,この2つの部材の相対的な向きの相違は,美観上,極めて大きな相違である。
ウ 小括 以上のとおり,本件意匠が引用意匠3とは類似しないとした審決の判断には,誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(引用意匠の認定の誤り)について (1) 検討 原告は,B上リング状部とB下リング状部とが,上下に分離し,箸本体から取り外し可能であると主張する。
B上リング状部とB下リング状部(いずれも,リング部と円筒状取付部分から成 るものとして認定されている。 から成るBリング状部は, ) 引用意匠3そのものであり,甲2においては,保持ユニット120(人差し指挿入穴121と中指挿入穴122を有する。)とされている。そして,保持ユニット120は,甲2に記載された発明としては,箸本体とは別体の部品として構成されている。しかしながら,甲2の記載内容を見ても,保持ユニット120が位置調節に用いられるものであることは認められるとしても,B上リング状部とB下リング状部とが2つに分離し,また,第2箸部材から取り外せることができるか否かを,甲2の図面から読み取ることができず,更に進んで明細書の記載を参酌しても,この点は不明である。したがって,B上リング状部とB下リング状部とが,上下に分離し,箸本体から取り外し可能であるか否か不明であるとした審決の認定に誤りはない。
(2) 原告の主張について 原告は,甲2(特許公報)に係る公表特許公報である甲8(特表2004-538074号公報)の記載内容を斟酌すれば,B上リング状部とB下リング状部とが上下に分離し,箸本体から取り外し可能であることが分かると主張する。
しかしながら,本件において意匠が記載された「頒布された刊行物」とされたのは甲2のみであり,これとは異なる刊行物である甲8に記載された意匠が,甲2に記載された意匠になるものでないことは明らかであり,原告の上記主張は,失当である(なお,甲8は,明細書と図面とが対応していないなど多数の齟齬を含み,その記載内容は不明確である。。仮に,甲8の【図5】と題する図面が,B上リング )状部とB下リング状部とが上下に分離し,取り外し可能であることを示すものと理解するとしても,甲8に記載された発明の特徴的部分とは認められない構成を,甲2に記載された特許発明が有する必然性もなく,結局,上記の点が甲2に記載されているとは認められない。
したがって,いずれにせよ,原告の上記主張は,失当である。
(3) 小括 以上から,取消事由1は理由がなく,また,これを前提とする取消事由2も理由 がない。
2 取消事由3(類否判断の誤り)について (1) 取消事由3-1(引用意匠1及び引用意匠2) ア 類否について 意匠における美観とは,需要者による通常の使用状態を前提とするものであるところ,本件意匠は,意匠に係る物品の説明によれば,2本一対の箸にそれぞれ取り付けて使用するものである。そうであれば,本件意匠と対比すべきものも,2本一対の箸のそれぞれに設けられたものでなければならず,引用意匠1又は引用意匠2において,本件意匠と対比とすべき部分は,Aリング状部とBリング状部の双方である。
審決が認定するとおり(前記第2,3(2)ア,イ参照),Aリング状部は, 「縦にリングの円環の上下が棒状と融合して,棒状にU字形状がR状に滑らかに貼り付くように形成され,リングの内径の円孔が棒状の中心軸の位置以上に食い込むように一体的に形成されている。」との形態と,Bリング状部は,「上下幅の細い,やや肉厚の円環状2つが棒状を挟んで相互に対向する位置(約180度開いて離れたベンゼン環の置換基のパラの位置)に,円筒状取付部分に円環状の外側が溶着して貼り付くように結合形成されている。2つの円環状は,細幅で肉厚の円環状(極扁平円管状)である。」との形態をそれぞれ有するものと認められる。一方,本件意匠は,前記第2,3(1)のとおり,構成部品A及び構成部品Bが,「共に取付部とリング部が一体成形されている。取付部は,通常の太さの箸を挿入する程度の内径のやや短い両端開口の肉薄の隅丸正方形角管状である。リング部は,やや細幅で若干肉厚の,指輪のような円環状(超扁平円筒状)である。円環状の外側が溶けて角管状に張り付くように形成されている。」との形態を有する。
このように,引用意匠1又は引用意匠2において,Aリング状部は箸本体と融合するよう一体的に形成され,Bリング状部は2つの円環が箸本体を挟んで対抗する 位置に形成されているのに対し,本件意匠において,構成部品A及び構成部品Bは,いずれも,箸本体とは別体の角管状の取付部に1つの円環が結合する形状である。
そうであれば,構成部品A又は構成部品Bのいずれもが,それらのリング部の数(1つであるか複数であるか)又は形状(箸本体と融合するよう形成されているか,そうでないか)において,Aリング状部又はBリング状部のいずれとも一見して異なる美観を生じさせており,本件意匠と,引用意匠1又は引用意匠2とがいずれも類似する意匠ではないことは明らかである。
イ 原告の主張について (ア) 意匠に係る物品 原告は,本件意匠の物品と,引用意匠1又は引用意匠2の物品とは類似すると主張する。
本件意匠の物品は, 「箸の持ち方矯正具」であり,引用意匠1及び引用意匠2の物品は, 「練習用箸」であるが,ここでいう「練習」とは箸の持ち方の練習,すなわち,箸の持ち方の矯正にほかならないから,本件意匠の物品と引用意匠1及び引用意匠2の物品は,箸の持ち方を矯正するという限度において用途及び機能を共通にする。
そうすると,これらの意匠の物品は,類似すると解される。
したがって,審決が,引用意匠1及び引用意匠2の物品を,単に,飲食用の道具である「箸」と認定した上, 「意匠の類否判断が不能といえるほどに,両意匠を対比する前提となる用途及び機能において全く次元が異なる」としたことは,引用意匠1及び引用意匠2の特徴的部分の用途及び機能を十分に考慮していないといわざるを得ず,物品類似性について誤った評価を加えたものである。
しかしながら,上記アのとおり,本件意匠は,引用意匠1又は引用意匠2のいずれとも明らかに類似しないから,審決は,結論において正当であり,この評価の誤りに基づいて審決を取り消すべきものではない。
(イ) 形態 原告は,本件意匠との類否が判断されるべきなのは,引用意匠1又は引用意匠2 の「箸の持ち方矯正具」の部分であると主張する。
意匠は,物品と形態とが一体不可分であって,その創作の単位も一般的には物品を単位として顕れるから,引用意匠の選択に当たり,刊行物に記載された物品を単位とすることは,相当といえ,審決が,甲2から認められる引用意匠を「箸」を単位とする引用意匠1又は引用意匠2としたことには誤りはない。しかしながら,引用意匠に係る物品と出願された意匠に係る物品とが同一又は類似し,両者の用途及び機能が同一又は類似する場合において,当該引用意匠の一部に,出願された意匠における意匠の創作の単位が対比の対象となり得る程度に顕れる関係になっているときには,出願された意匠の全体に相当する引用意匠の一部と,出願された意匠の全体とを対比して類否判断をすることが,当然に認められる。このことは,たとえ当該引用意匠の一部が物品,部品などとして独立の取引単位になっていないとしても,妨げられるものではなく,また,意匠登録無効審判手続においても妥当するものである。
したがって,審決が, 「意匠全体の形態として見た場合には,本件意匠のリング部と取付部のみから成る,2つの小さな指輪様の小さな塊の構成部品は,引用意匠の細い丸棒状の箸の形状を主とする形態とは全く異なる形態であって,類似しない。」としたことは,箸の持ち方矯正具である本件意匠に,引用意匠1又は引用意匠2の中の箸本体という用途及び機能の異なる部分を殊更に対比させるものといわざるを得ず,形態の類似性の評価を誤ったものである。
しかしながら,上記アのとおり,本件意匠は,引用意匠1又は引用意匠2のいずれとも明らかに類似しないから,審決は,結論において正当であり,この評価の誤りに基づいて審決を取り消すべきものではない。
(2) 取消事由3-2(引用意匠3)について ア 類否について 引用意匠3は,2本一対の箸の片方に設けられた形態にすぎず,2本一対の箸のそれぞれに取り付けて使用する本件意匠の創作の単位と対応していないから,類否 判断に当たり本件意匠と対比すべき意匠としては不適当なものである。
しかしながら,事案にかんがみて,原告の主張に対して,一応,判断を示す。
イ 原告の主張について (ア) 意匠に係る物品 原告は,審決が,本件意匠と引用意匠3について不必要に物品の詳細な用途及び機能を比較していると主張する。
しかしながら,審決が, 「本件意匠は,2本一対の箸のそれぞれに取り付けて,それぞれに人差し指と薬指を挿入して使用するものであるのに対して,引用意匠3は,2本一対の箸の1本にのみ取り付けて2つのリングに人差し指と中指を挿入して使用するものである点で,異なるものであるから,両意匠を対比する前提となる機能及び使用方法において異なる」と説示したところは,趣旨は明瞭ではないものの,本件意匠と引用意匠3の物品が異なるとしたものではなく,そのような機能及び使用方法の下においては,通常の使用時において,両者の美観に大きな差異が生じることをいうものと一応理解できるから,原告の上記主張は,審決を正解するものとはいえず,採用することができない。
(イ) 構成部品の数に対する評価 B上リング状部とB下リング状部とが上下に分離するものでないことは,前記1に認定判断したとおりであるから,B上リング状部とB下リング状部とが上下に分離することを前提とする原告の主張は,採用することができない。
(ウ) 用途及び機能に対する評価 原告は,審決が,不必要に限定された用途及び機能に基づいて本件意匠と引用意匠3の類否を判断していると主張する。
しかしながら,審決が, 「具体的な態様においても,リング状部の2つの円環状の取付部に対する取付向きが,本件意匠は,1つは取付部の筒状の軸とほぼ同方向の軸の向きであるが,もう1つは取付部の筒状の軸と直交する方向の軸の向きであるのに対して,引用意匠3は,取付部と筒状の軸とほぼ同方向の軸の向きであるであ る点の相違は,この物品の用途及び機能に極めて大きな影響を及ぼす」と説示したところは,趣旨は明瞭ではないものの(審決の説示のように,物品の形態によって用途及び機能が限定されるのではなく,一般に,特定の用途及び機能を果たすよう物品の形態を構成するものである。,本件意匠と引用意匠3の用途及び機能の相違 )から,両者の形態に大きな差異が生じていることをいうにすぎないものと一応理解できるから,原告の上記主張は,審決を正解するものとはいえず,採用することができない。
また,原告は,参考斜視図を参酌して意匠の用途及び機能を認定することは許されないと主張する。
しかしながら,構成部品A及び構成部品Bをどのように取り付け,どの指を挿入するかという使用目的や使用状態は,本件意匠に係る公報(甲1)の「意匠に係る物品の説明」中に記載されていることであって,審決は,参考斜視図のみに基づいて本件意匠の用途及び機能を認定したものではない。原告の上記主張は,前提を誤るものであって,採用することができない。
(エ) 物品の構造に対する評価 原告は,審決が内部に雌ねじを切る態様を引用意匠3の構成に含めたことは誤りであると主張する。
確かに,審決は, 「引用意匠3のものは,内部に雌ねじを切る場合には必須の円筒形状である点の違いにも繋がる基本的な形態の相違でもあるので,両意匠の類否判断において一定程度の影響を及ぼす」と説示するところ,引用意匠3は,雄ねじと螺合させて固定するものと,環状溝と係合させて固定するものの双方を含む上位概念化されたものとして認定されているから,一方にしか該当しない形態は引用意匠3を構成する要素ではなく,審決の上記説示はその限度で誤りといえる。しかし,引用意匠3は,いずれにせよ円筒状であるから,原告の上記主張は,審決の結論を左右するものではなく,採用することができない。
(オ) 取付向き等に対する評価 原告は,本件意匠と引用意匠3とが取付部とリング部の取付向きについて相違する点は,美観の相違を導くものではないと主張する。
しかしながら,2つの小さな指輪様の構成部品という簡易な形態をとる本件意匠において,取付部とリング部の取付向きは,その構成の重要な部分を占め,看者がその差異に着目することは明らかであり,異なる美観を生じさせるものといえる。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(3) 小括 以上のとおりであり,本件意匠が,引用意匠1〜引用意匠3といずれも類似しないとした審決の結論に誤りは認められず,そのほか,原告のるる主張するところは,いずれも当裁判所において採用することができない。
したがって,取消事由3-1及び3-2は,いずれも,理由がない。
結論
よって,取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 清水節
裁判官 中村恭
裁判官 森岡礼子
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