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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ワ5644意匠権侵害差止等請求事件 判例 意匠
平成10ワ11674意匠権及び実用新案権侵害差止等請求事件 判例 意匠
平成14ワ26828損害賠償請求事件 判例 意匠
平成15ネ1119意匠権侵害差止等請求控訴事件 判例 意匠
平成16ワ17501債務不存在確認請求事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  部分意匠 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  一意匠一出願(7条) /  新規性 /  公然知られた(3条1項1号) /  頒布された刊行物 /  記載された意匠 /  類似する意匠 /  意匠の類否 /  類似物品 /  非類似物品 /  登録意匠 /  出願変更(13条) /  差止請求(差止) /  損害賠償 /  実用新案権 /  類似性(類否判断) /  損害額 /  無効審判 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 6262号 実用新案権侵害差止等請求事件
原告 株式会社ラッキーコーポレーション
訴訟代理人弁護士 深井潔
補佐人弁理士 上野康成 辻本一義
被告 株式会社サンファミリー
訴訟代理人弁護士 千田適 奥村太朗 徳村初美
補佐人弁理士 浅谷健二
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2005/12/15
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,別紙イ号物件目録記載の物件を製造し,販売してはならない。
2 被告は,原告に対し,360万円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の金員請求を棄却する。
4 訴訟費用は,これを4分し,その3を被告の,その余を原告の各負担とする。
5 この判決の第2項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 主文第1項と同旨。
2 被告は,原告に対し,960万円及びこれに対する平成16年6月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,後記意匠権を有する原告が,被告の製造販売する別紙イ号物件目録記載の物件(ゲルマニウムシリコンブラシ)の本体部分の意匠は同意匠権に係る登録意匠と類似し,その製造販売は同意匠権を侵害すると主張して,被告に対し,意匠法37条1項に基づき,同物件の製造販売の差止めを求めるとともに,意匠権侵害の不法行為に基づき損害賠償を求める事案である(附帯請求は,損害賠償金に対する訴状送達日の翌日以降の民法所定年5分の割合による遅延損害金請求である。)。
1 争いのない事実 (1) 原告の有する意匠権 原告は,下記の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件登録意匠」という。)を有する。
ア 登録番号 第1187684号 イ 出願日 平成15年3月18日(意願2003-7159号) ウ 登録日 平成15年8月29日 エ 意匠に係る物品 化粧用パフ (2) 本件登録意匠形状 本件登録意匠は,別紙意匠公報掲載の図面において実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けた部分であり,その要部形状及び細部形状は次のとおりである。
ア 要部形状 楕円形の薄板状の本体の片面に,若干の幅の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや小径となる突起を多数設けて構成されるブラシ部を有している。
イ 細部形状 楕円形の本体は,その短軸の両端付近縁部が,背面側に少し突出した形状となっている。
(3) 被告の行為 被告は,平成16年2月から別紙イ号物件目録記載の物件(ゲルマニウムシリコンブラシ。以下「イ号物件」といい,その本体部分の意匠を「イ号意匠」という。)を業として製造販売している。
(4) イ号意匠の形状 イ号意匠の要部形状及び細部形状は,次のとおりである。
ア 要部形状 楕円形の薄板状の本体(ア)の片面に,若干の幅の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや小径となる突起(ウ)を多数設けて構成されるブラシ部(エ)を有している。
イ 細部形状 楕円形の本体(ア)は,全体的に一様な厚みとなっている。
2 争点 (1) イ号物件は本件意匠権に係る物品と類似するか。
(2) イ号意匠は本件登録意匠と類似するか。
(3) 本件意匠権に係る意匠登録は無効審判において無効とされるべきものか。
(4) 原告の損害額 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(意匠に係る物品の類否)について 【原告の主張】 本件登録意匠に係る物品の意匠分類「B7-11」には,本件登録意匠と同じ物品(化粧用パフ)であって,皮膚を清潔にしたり,化粧料を拭き取るために用いるものが意匠登録されている(意匠登録第787613号。甲13)。また,同意匠分類には,化粧用の拭き取りに使用される「化粧用コットン」(意匠登録第1172304号。甲14),皮膚の清浄に使用する「化粧用パッド」(意匠登録第1172099号。甲15)も意匠登録されている。
洗顔用具であるイ号物件は,これらの登録意匠に係る物品と同様の用途で使用されるものであり,本件登録意匠と同じ意匠分類「B7-11」に属する。また,「パフ」の意義については,これを洗顔用具を意味する用語として使用している例が多数あり(甲16〜18),化粧品の塗布に用いるものだけではなく,汚れの洗浄に用いる洗顔用具の意味をも含むものであることは明らかである。
したがって,「パフ」は,一般用語又は専門用語として洗顔用具をも意味するものであり,本件登録意匠とイ号物件とは意匠法上の物品が同一である。
【被告の主張】 本件登録意匠に係る物品とイ号物件の「物品」は,意匠法上の用途を異にする非類似物品であり,非類似物品間に類似する意匠はないから,イ号物件の製造販売は,イ号意匠と本件登録意匠との類否を検討するまでもなく,本件意匠権を侵害しない。
ア 本件登録意匠に係る物品 (ア) 本件登録意匠に係る物品は,「化粧用パフ」である。すなわち,本件登録意匠は,一物品一意匠出願主義(意匠法7条及び同施行規則7条)に基づく別表第1の「物品の区分」に例示される「パフ」を選定して出願されているのであり,その意匠に係る物品を「パフ(白粉を塗布するもの)」と特定して出願されたものである。
(イ) そして,本件登録意匠に係る物品である「化粧用パフ」は,特許庁公報「意匠分類・分類一覧表」(以下「分類一覧表」という。)の「B7-11」に属している(具体的には,グループ「B 衣類及び身の回り品」の中の大分類「7 化粧用具または理容用具」の中の小分類「B7-10 化粧用具」の中の分類記号「B7-11 パフ」に配属されている。)。その「注」欄には,「カット綿入れ(C4-24)を除く」と明記されるとともに,「参考分類」として「C4-24(ティッシュペーパー容器等),J7-12(ガーゼ,包帯等)」が分類記号で特定されている。
(ウ) 特許庁公報「意匠分類・分類の定義」は,分類記号「B7-11」のパフを「カット綿等においてパフとして使用されるものを含む。」と定義している。また,分類一覧表には「用語は,一般用語又は専門用語を使用し,外来語をそのまま使用するときは片仮名を用いる」と明記されているところ,外来語辞典(乙7)及び化粧品辞典(乙8)によれば,パフとは,粉おしろい等の化粧品の塗布に用いる化粧用具であると定義されている。
原告は,甲第16ないし第18号証を挙げ,「パフ」とは一般用語又は専門用語として洗顔用具を意味すると主張する。しかし,同各号証は,いずれも商品販売のコマーシャルとして記述されているもので,物販業者が商品アピールを狙って造語的な観点から独自に命名し使用しているのにすぎないから,用語の定義とは無関係である。
イ イ号物件との対比 (ア) これに対し,イ号物件の「物品」は,別紙イ号物件目録から明らかなように「洗顔ブラシ」であり,分類一覧表のグループ「C 生活用品」の中の大分類「4 家庭用保健衛生用品」の中の小分類「C4-100 身体清浄用品」の中の分類記号「C4-12 洗顔器」の中の物品「洗顔ブラシ」に配属されており,「パフ」とは別個の分類番号が付されていて,意匠審査の範囲を特定するための基本枠組みである「グループ(物品分野)」が異なっている。その上,この分類記号「C4-12」には「注」及び「参考分類」各欄の記載がなく,「パフ」とは「参考分類(クロスサーチ)」の関係にもない。
(イ) さらに,イ号物件は,甲第3号証(被告の製品パンフレット)から明らかなように,シリコンゴムにより形成された「フェイス用ゲルマニウムシリコンブラシ」であって,手洗いでは落ちにくい毛穴の汚れや角質などをすっきり落とすのに使用される洗顔ブラシであり,甲第13ないし第15号証の登録意匠に係る物品(いずれも「化粧用」であって,肌を清潔にし,化粧料の拭き取りや塗布に使用される物品)とは,意匠法上の用途(具体的な用途)において根本的に異なり,分類一覧表の「B7-11」に属するものではない。
(ウ) このように,本件登録意匠に係る物品とイ号物件は,物品として類似しないから,その製造販売は本件意匠権を侵害しない。
(2) 争点(2)(意匠の類否)について 【原告の主張】 ア 本件登録意匠の要部形状は,「楕円形の薄板状の本体の片面に,若干の幅の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや小径となる突起を多数設けて構成されるブラシ部を有している」ところにあるところ,イ号意匠の要部形状は,本件登録意匠の要部形状をそのまま具備する。
イ 本件登録意匠の細部形状は,「楕円形の本体は,その短軸の両端付近縁部が,背面側に少し突出した形状となっている」というものである。これに対し,イ号意匠の細部形状は,「楕円形の本体(ア)は,全体的に一様な厚みとなっている」というものであり,両者は本体の縁部の形状が部分的に異なっている。しかし,本件登録意匠の本体の縁部における前記突出した形状の部分は,極めて小さな領域にすぎず,ほぼ全体的に一様の厚みを有しているから,この差異は全体形状の中においてごく部分的な微細なものでしかない。
ウ したがって,イ号意匠は,本件登録意匠に類似する。
【被告の主張】 争う。
(3) 争点(3)(無効理由の存否)について 【被告の主張】 仮に,イ号物件が本件登録意匠意匠に係る物品を同じくするものであるとすれば,以下のとおり,本件登録意匠の登録は,その出願日前,日本国内において新規性を喪失した無効理由を有する。
すなわち,原告の主張によれば,本件登録意匠の要部形状は,「楕円形の薄板状の本体の片面に,若干の幅の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや小径となる突起を多数設けて構成されるブラシ部を有している」ところにある。ところが,意匠に係る物品が「ブラシ(乙5の意匠分類C4-102,C4-110に属する。)すなわち洗顔ブラシと類似の入浴用ブラシ,ボディブラシ,洗髪ブラシなど」には,審判請求書(乙1)添付の審判甲第3,5,8号証等で示すように,「楕円形の薄板状の本体の片面に,若干の幅の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや小径となる突起を多数設けて構成されるブラシ部を有している」意匠が,本件登録意匠の出願日前に公知となっている。
【原告の主張】 本件登録意匠は,以下のとおり,その登録出願前に類似する意匠が公知であったということはなく,その意匠登録に無効理由はない。
すなわち,審判請求書(乙1)添付の各審判甲号証の意匠に係る物品は,審判甲第3,5号証が「ヘアーブラシ」であり,審判甲第8号証が「フットブラシ」であり,本件登録意匠に係る物品とはいずれも単に「ブラシ」である点で共通しているだけで,使用対象の部位や使用目的,使用態様が異なり,本件登録意匠に係る物品とは用途,機能が異なっていて,本件登録意匠に類似しないことが明らかである。
さらに,上記審判甲第3号証のヘアーブラシは,本体が楕円形ではなく,長径方向に直線状になった部分を有する陸上トラックのような外形であり,その内部にブラシのないU字状の弁体が形成されている。審判甲第5号証のヘアーブラシも,本体が楕円形ではなく陸上トラックのような外形であり,その内部にブラシのないU字状の指差込片が形成されている。審判甲第8号証のフットブラシは,本体が楕円形ではなく卵のような外形であり,ブラシ部は大きく周縁部を残して円形に設けられている。このように,上記各審判甲号証のブラシは,いずれも形状においても本件登録意匠と類似しない。
(4) 争点(4)(損害額)について 【原告の主張】 ア 被告は,遅くとも平成16年2月から平成17年1月31日までの間,イ号物件を少なくとも1か月当たり5000個(2個組),合計6万個製造販売した。その1個当たりの販売単価は,その小売価格が880円・同1180円・同2000円であることから推定して400円を下るものではなく,当業界の常識からして被告の粗利益率は40%と推定される。したがって,被告は,イ号物件の製造販売により,960万円の利益を得,原告は同額の損害を被った(意匠法39条2項)。
(400円×5000個×12月×40%=960万円) イ 被告は,イ号物件を5000個(2個組)を単価258円,合計129万円で仕入れ,金型代として37万4000円を支払い,仕入れたイ号物件は問屋に対し4661個販売しただけで,ネット販売等消費者に直接販売していない旨主張する。
しかし,被告の上記主張を裏付けるために被告が提出した文書(乙14〜27。以下「被告既提出文書」ともいう。)の記載内容は,下記(ア)ないし(ウ)の事情に照らして信用できない。そのため,原告の申立てにより,平成17年7月29日付けで,被告に対し,イ号物件の売上数量,売上金額,製品価格,製品販売経費の額が記載された売上元帳,売上伝票,請求書控え,納品書控え等の提出を命ずる文書提出命令がされたが,被告はこれに応じず,これらの書類を提出しない。
したがって,上記文書提出命令の対象となった文書には,上記アの販売数量,販売額,利益率が計算できる記載のあることが明らかであり,上記原告主張は真実として認められるべきである(民訴法224条1項)。仮にそうでないとしても,上記原告主張事実は,他の証拠により証明することが著しく困難であり,真実として認められるべきである(同条3項)。
(ア) イ号物件のような製品を製造するには金型製作費用のみでも約300万円を必要とするのであり,製造個数は最低でも3万個を下らないというのが当業者の常識である。したがって,被告の主張する販売数量は当業者の常識とかけ離れており,およそ信用し難い。
(イ) 被告は,イ号物件を問屋にのみ販売しており,小売店や一般消費者に販売していないと主張する。
しかし,イ号物件の説明書には,発売元として「兵庫県加古川市(以下省略)・株式会社ニーズ」と記載されているところ,同社の代表取締役は被告と同じAであり,上記「発売元」の記載等からして,株式会社ニーズが問屋業を営んでいるとは考えられない。そうだとすると,被告既提出文書には株式会社ニーズの存在が脱落していることになり,イ号物件の流通面の連続性が欠けることになる。
このことは,被告既提出文書の信用性に疑問を抱かせる。被告は,被告と株式会社ニーズとの間には商品の取引はないと主張するが,商品説明書に発売元と記載されている会社との間において,現実の取引はともかく帳簿上の取引も存在しないことなど通常考えられないことであり,まして税務対策上の会社であればなおさらである。
また,イ号物件は,ディスカウントショップ「ドン・キホーテ」,ディスカウントストア「ダイレックス」その他の量販店(ドラッグストア)で現に販売されている。その店舗数は,ドン・キホーテが70店舗,ダイレックスが92店舗,ダルマ薬局が78店舗,ハックドラッグが88店舗,ドラッグスパークが50店舗であり,これらの量販店は,大量・一括・廉価で仕入れるのが通常であり,たとえばダイレックスは100台紙分1200ケースを一括で仕入れており(甲34),他の量販店でも,その店舗数からして650ケースないし1200ケースが仕入れられているものと推定される。しかるに,被告の提出する商品別売上実績表(乙15の1〜13)によれば,1回の販売数量の最大が300ケースにすぎず,その他100セットを超える販売数量が9回あるのみである。したがって,同実績表には量販店向けの卸問屋に対する売上げが含まれていないと考えられ,同記載の売上数量はイ号物件の販売実績の一部にすぎないと推定される。ちなみに,インターネットの検索件数でイ号物件の約2分の1ないし4分の1にすぎない原告製品である「クレンジングパッド」の1回の販売数量は,666個(原告は,1個売りである。),1008個,3150個という大量の個数であり,月平均販売数量は,平成15年度で7万9226個,同16年度では2万6544個,同17年度では1万1131個である。また,平成17年10月17日時点においても卸売商株式会社岡本商会東京店でイ号物件がいまだに販売されていた(甲42)。
これらのことからすると,イ号物件は相当大量に販売されたものと推定される。
さらに,被告は,いわゆるネット販売をしていない旨主張するが,1セットの販売が20回もあり,数セットの販売も含めてこれらはネット販売と考えられるので,1200円の販売単価が記載されていないことも不自然である。
したがって,被告が1か月当たり5000ケース(2個組)販売していたと推定することは不合理ではない。
(ウ) また,被告は,次のとおり主張する。イ号物件の仕入先は日本国内の企業であるが,商品は中国で生産され,香港経由で香港の協力会社(商社)を通じて入荷した。そのため,商品代金は香港の協力会社に支払い,金型代など先行投資については日本国内の仕入先に支払った。そこで,商品代は米ドルで,金型代は日本円で支払った,と。
しかし,被告既提出文書のうちイ号物件の仕入れに関するもの(乙19〜23)の宛先はすべて被告であり,被告の上記主張と齟齬する。
また,被告は,乙第14号証に1米ドル110円で計算すべきところ100円として計算されている理由は単なる入力ミスと思われる旨主張するが,イ号物件の金型代金及びその他の商品代金についての仕入先から被告に対する請求書(乙25の1〜7)には,すべて明確に1米ドル110円である旨記載されており,この種の取引にとって重要な円換算レートであることを併せ考えると,入力ミスをすることなどおよそ考えられないところであり,これらの請求書が本件訴訟対策として作成されたのではないかとの疑いをぬぐい去れない。
【被告の主張】 ア 原告の損害に関する主張を否認する。
イ イ号物件の仕入先は日本国内の企業であるが,商品は中国で生産され,香港経由で香港の協力会社(商社)を通じて入荷した。被告は,イ号物件を単価258円で5000個仕入れた(乙14)。ただし,同単価には金型代が含まれており,代金95万円(単価1.9米ドル×100円×5000個)を米ドルで香港の協力会社に,金型代として37万4000円を日本国内の仕入先に日本円で支払った(金型代は乙14では34万円〔3400米ドル×100円〕であるが,実際の支払額は1米ドル110円で計算した37万4000円である。乙14では1米ドル100円に入力ミスしたものと思われる。)。
また,その売上げは,商品別売上実績表(乙15)記載のとおり,平成17年1月31日までに4661個販売し,494個返品されたため,差引き4167個である。よって,返品金額を差し引いた売上額は166万4740円である(乙15の13)。したがって,被告の粗利益は,58万9654円(1,664,740-258×4,167=589,654円)であり,粗利益率は約35.4%である。
また,被告は,イ号物件を問屋にのみ販売しており,小売店やネット販売を初めとして一般消費者に対してイ号物件を販売していない。なお,イ号物件の売れ行きが悪いため,被告は,これを当初の1回仕入れただけで,その継続販売に見切りをつけた。平成16年秋には,300円,240円等という販売単価でも販売困難な状態に陥り,赤売り処分をして今日に至っている。当然,新規仕入れはせず,当初仕入分を何とか完売しようとしている状態である。
ウ 原告は,被告既提出文書の信用性を否定する事情として,上記【原告の主張】イ(ア)ないし(ウ)のとおり主張する。しかし,以下のとおり,これらの主張はいずれも失当である。
(ア) 原告のいう株式会社ニーズは,被告傘下の会社で人的にも重なっており,税務対策の意味合いもあって設立したものである。同社は被告の扱う商品についての顧客からの問合せ窓口となり,クレーム処理を行っている。そのため,被告の商品パッケージ等には発売元として株式会社ニーズの名前や連絡先が記してある。このように,被告は,株式会社ニーズとの間に商品の取引がないので,被告の帳簿上,取引先として同社の名前が出てこないのであって,被告既提出文書の信用性に疑いを差し挟むものではない。
(イ) また,そもそも,被告は,ドン・キホーテ及びダイレックス等の量販店と直接取引をしていない。これらの店舗に商品が置かれているとすれば,それは被告の販売先の問屋が同店舗に販売した分であると思われる。被告が取引している問屋が発注してくる際に,販売先を守る必要上,被告に販売先を提示することはない。そこで,被告としては,具体的な販売先を承知していないのが現状であるが,被告が取引している問屋が両社に販売したと推測される。
また,上記量販店は商品を大量・一括・廉価で仕入れるのが通常であるとの原告の主張には何らの根拠もない。両社は,全商品について全店一括納入の体制をとっているわけではない。例えば,数店舗で売れるかどうかのテスト販売を行い,販売が好調であれば商品を置く店舗数を増やす形態をとっている。よほど話題性のある商品や実績のある商品でない限り,売れるか売れないかわからない商品をすぐに全店に置くようなことはあり得ない。
なお,原告は,ダイレックスにおいてはイ号物件100台紙(1200ケース)を一括で仕入れられていると主張するが,これを裏付ける甲第34号証(原告担当者作成の報告書)は類型的に信用性が低い上,100台紙分は300個に相当するものであり,1200ケース(個)を意味するものではない。
さらに,被告は,ネット販売に限らず消費者への直接販売を行っていない。ちなみに,楽天市場のホームページ内にある「美的生活・健康百貨店」なる店舗は,株式会社ネビオスという会社が行っている(乙16,17)。すなわち,被告が直接ネット販売しているわけではなく,被告が商品を卸した問屋ないし問屋の販売先がネット販売しているのであって,そこでの価格設定に被告は関与していない。
争点に対する判断
1 争点(1)(物品の類否)について (1) 意匠とは,物品(物品の部分を含む。)の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるものをいい(意匠法2条1項),物品と一体をなすものであって,物品が異なれば意匠も異なることになるから,登録意匠と「類似する意匠」(同法23条)というためには,その意匠に係る物品が同一又は類似することを要する。そして,意匠の類否は,一般需要者を基準とし,登録意匠と類似の美観を生じさせ,両意匠に混同を生じさせるおそれがあるか否かによって決すべきものであることにかんがみると,意匠に係る物品の類否も,一般需要者を基準とし,両物品が同一又は類似の用途,機能を有すると解される結果,両物品間に混同を生じさせるおそれがあるか否かという観点からこれを決すべきものと解される。
本件登録意匠に係る物品は「化粧用パフ」であり,分類一覧表の「B7-11」に当たるものとして登録出願され,登録されている(甲10,11)。したがって,イ号意匠をその構成部分とするイ号物件が,本件登録意匠に係る物品である「化粧用パフ」と物品として同一又は類似しているか否かが検討されなければならないところ,その類否判断に当たっては,上記のとおり,イ号物件が本件登録意匠に係る物品「化粧用パフ」と同一又は類似の用途・機能を有するか否かを検討する必要がある。
(2) 証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば,イ号物件は,商品名を「ゲルマニウムシリコンブラシ」とし,材質をシリコン樹脂及びゲルマニウムとするものであって,クレンジングとマッサージの用途を有し,その広告宣伝(甲3)のとおり,「とっても柔らかいシリコンブラシは毛穴につまった化粧の汚れ,角質などをスッキリキレイに落とします。また,この柔らかさが極めの細かい泡を作ります。」「イボが適度に肌を刺激して血行を良くするマッサージ効果で,肌の弾性力を高め,引き締める効果があります。」というような機能を有するものであることが認められる。
(3) 次に,本件登録意匠に係る物品である「化粧用パフ」の意義について検討する。「パフ」は,角川書店発行「外来語の起源」(初版昭和54年6月30日発行,第7版昭和61年10月15日発行。乙7)では「おしろいたたき。粉おしろいを顔につけるのに使う,スポンジなどを芯にして布でつつんだ用具」などとされており,丸善株式会社発行「化粧品事典」(平成15年12月15日発行。乙8)では「ファンデーションや白粉(おしろい)などのベースメークアップ化粧品の塗布に用いる化粧用具の一つ。形態はスポンジ状のものと,表面が起毛したものの2種類に分類できる。形態を問わず,白粉やフェイスパウダーを塗布するために用いるものをパフ,ファンデーションを塗布するために用いるものをスポンジとよび分けることもあるが,明確な定義はない。使い方は,パフの形態によって異なる。」などとされている。このように,上記事典類において「パフ」は,スポンジ状又は表面が起毛したものであって,おしろいやファンデーション等を顔に塗布するためのものとされていることに加え,本件登録意匠においては「化粧用」とされていることからすれば,「化粧用パフ」は,本来,もっぱら「化粧」を用途とし,おしろいやファンデーション等を顔面等の皮膚に塗布する機能を有するものとされていたものということもできる。
(4) しかし他方,意匠に係る物品を「化粧用パフ」とし,分類番号も本件登録意匠と同様「B7-11」とする登録意匠には,物品の説明として,「本物品は,主として皮膚を清潔にしたり,皮膚に付いている化粧料を拭き取るなどに用いる。」(登録番号第787613号。甲13)とするものがあり,さらに,いずれも分類番号が「B7-11」で,意匠に係る物品を「化粧用コットン」とする登録意匠(登録番号第1172304号。甲14)の【意匠に係る物品の説明】に「本物品は,化粧品の拭き取りや塗布に使用される化粧用コットンである。」との記載のあるものや,意匠に係る物品を「二種の不織布からなる化粧用パッド」とする登録意匠(登録番号第1172099号。甲15)の【意匠に係る物品の説明】に「本物品は,…水に濡らして皮膚の清浄に使用するものである。」との記載があるものがある。
(5) また,洗顔用具等をインターネット販売しているホームページ(甲16〜18,20〜24,26〜28)には,次のような商品ないし洗顔方法が紹介されていることが認められる。
ア 「洗顔の新しいスタイル 京都シルク式インプルーブ『シルクパフ洗顔』」との表題の下に,「パフ」を用いて洗顔する方法が紹介されている(甲16)。
イ 「ミクロパイルシルクシリーズ」との表題の下に,「洗顔用フェイスパフ」(商品名「フェイスパフ)や「ボディーパフ」などという顔や体を洗うための用途で,これを顔や体の皮膚にこすりつけてこれらの汚れ等を落とす機能を有する商品が紹介されている(甲17)。
ウ 「こんにゃくパフ『箔美人』」という商品名の「洗顔用パフ」が紹介されている(甲18)。
エ 「洗顔専科 パーフェクトパフ 携帯用 8枚入り」という商品名で「外出先で便利な携帯サイズのメーク落としパフ」として紹介されている(甲20)。
オ 「洗顔パフ」という商品名で「ソフトな肌触りの素肌にやさしい洗顔パフ」として紹介されている(甲20)。
カ 「Squalane products スクワラン・プロダクツ」という商品名で「泡立て洗顔,すすぎ洗顔の2通りに使える洗顔パフ」として紹介されている(甲21)。
キ 「ビューティ・パフ」という商品名で「毛穴の汚れ・化粧落とし,黒ずんだヒジ・ジザ(注:ヒザの誤記と思われる)・かかとの角質落としは,拭くだけの超簡単スキンケアアイテム」として紹介されている(甲22)。
ク 「絹の洗顔パフ」という商品名で「メイク落とし」「皮脂・汚れ落とし」との用途が紹介されている(甲23)。
ケ 「洗顔用シルクパフ」との商品名で「シルクのパフで洗顔することにより,古い角質がスムーズにはがれ落ち,くすみが取れ,お肌にツヤと潤いが出てきます。」と紹介されている(甲24)。
コ 「洗顔2ウェイパフ」との商品名で「洗顔後,きれいに洗ったパフに水をたっぷり含ませ,シルク面で数回パッティングすると,洗い上がりがすっきりします。」と紹介されている(甲26)。
サ 「丹後ちりめん 洗顔パフ」との商品名の洗顔用パフが紹介されている(甲27)。
シ 「スーパー洗顔パフ」という商品名の「カサカサ肌の憂鬱を解消 シルクのスーパー洗顔パフ」が紹介されている(甲28) (6) 上記(4),(5)の事実に弁論の全趣旨を併せて考慮すれば,従来,洗顔等は手を用いて行っていたところ,洗顔等の際の泡立てや汚れ除去の効果においてスポンジや布の有効性が認識され,その形状としては従前白粉やファンデーション等の塗布に使用していた「パフ」が最も使用に適すると判断されたことにより,上記の各商品が「パフ」として宣伝され,販売されるに至っているものと認められる。そして,このような物品の需要者(洗顔に少しでも関心を有する主として女性)において,「パフ」は,おしろいやファンデーション等を顔面等の皮膚に塗布するという本来的用途・機能のほか,洗顔用品としての用途・機能を有するものと認識されているということができ,イ号物件とその用途・機能が類似するものというべきである(上記(3)のとおり,「パフ」は洗顔以外の化粧においても使用され,むしろその方が本来的,伝統的な用途・機能であることからすれば,両者の用途・機能が同一ということはできない。)。
ちなみに,本件意匠権に係る意匠登録出願とほぼ同一時期に原告が出願した考案の名称を「クレンジングパッド」とする登録実用新案(登録番号第3099270号。なお,同考案は平成15年3月31日に出願されたが,その後同年7月16日に出願変更されたものである。)は,その出願時期及び願書に添付した図面との共通性等に照らして本件登録意匠に係る物品と同一の物を対象として出願されたものと解されるところ,その当初の願書(甲6)に添付した明細書の【発明の属する技術分野】に「この発明は,化粧落としの際に使用されるクレンジングパッドに関するものである。」との記載及び【発明が解決しようとする課題】に「そこで,この発明は,顔面の凹凸によくフィットし,毛穴の汚れや角栓までスムーズに落とすことが可能なクレンジングパッドを提供することを課題とする。」との記載があることが認められる。そうすると,原告は,本件登録意匠に係る物品「化粧用パフ」に上記化粧落としの用途・機能を有するものを含むものとして意匠登録出願をしたものと推認され,このことは,洗顔に少しでも関心を有する女性等の一般需要者の有する認識を反映しているものと考えられる。
(7) そうすると,イ号物件は,その用途・機能において本件登録意匠に係る物品である「化粧用パフ」と類似するものというべきであり,仮に,その本体部分の意匠であるイ号意匠が本件登録意匠と類似するとすれば,上記の一般需要者に混同を生じさせるおそれがあるものというべきである。以上の認定説示に反する被告の主張は採用できない。
2 争点2(意匠の類否)について (1) イ号意匠が,本件登録意匠の要部形状,すなわち「楕円形の薄板状の本体の片面に,若干の幅の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや小径となる突起を多数設けて構成されるブラシ部を有している」との点を具備することは,当事者間に争いがない。
(2) なお,本件登録意匠とイ号意匠との相違点は,証拠(甲10,検甲2)及び弁論の全趣旨によれば,@本件登録意匠では長軸対短軸が約5対4であるのに対し,イ号意匠では長軸対短軸が約5.5対4である点,A本件登録意匠では本体の短軸の両端付近縁部が背面側に少し突出した形状であるのに対し,イ号意匠では本体は均一の厚みを有する点であるが,いずれも微細な点であり,看者に格別の注意を惹くものとはいえず,上記要部形状における共通点を凌駕してその類否判断に格別の影響を及ぼすものとはいえない。
(3) したがって,イ号意匠は,本件登録意匠と類似する。
3 争点3(無効理由の存否)について 被告は,仮に,イ号物件が本件登録意匠意匠に係る物品を同じくするものであるとすれば,次の各引用例を挙げ,本件登録意匠の登録は,その出願日前,日本国内において新規性を喪失した無効理由を有する旨主張するので,以下検討する。
(1) 昭40-26096実用新案公報(乙1〔審判請求書〕添付の審判甲第3号証) 同公報に記載されている考案は,考案の名称を「ヘアーブラシ」とし,「軟質合成樹脂製にて成った人差指を入れて簡単に保持し,その裏側に小突刺状に設けたブラシで洗髪するとき及び撫でるに用いるヘアーブラシに係るものである。」この「ヘアーブラシ」は洗髪の際あるいは頭髪を撫で毛髪をとかすという用途に用いられ,洗髪ないし調髪の機能を有するものと認められる。これに対し,本件登録意匠に係る物品は,前記のとおり「化粧用パフ」であり,「化粧」及び「化粧落とし」ないし「洗顔」を用途とし,おしろいやファンデーション等を顔面等の皮膚に塗布するか,又はおしろい等の化粧や汚れを落とす機能を有するものである。「化粧用パフ」と「ヘアーブラシ」とは,身体の一部の汚れを洗い落とすものという限りで共通するが,その対象が顔面その他の皮膚か頭髪であるかによって,その用途・機能が著しく異なることはいうまでもない。
また,本件登録意匠の要部形状は,「楕円形の薄板状の本体の片面に,若干の幅の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや小径となる突起を多数設けて構成されるブラシ部を有している」点にあるところ,上記公報に図示されたヘアーブラシは,本体形状が長円形であり,突起の形状も明らかでない上,本体中央部にブラシのないU字状の弁体が形成されており,これらの要部形状における相違点が看者の注意を強く惹くものと認められるから,本件登録意匠とは全体として美観を異にし,類似しないというべきである。
このように,上記公報に記載された「ヘアーブラシ」は,そもそも本件登録意匠に係る物品とは非類似の物品である上,意匠としても本件登録意匠と非類似である。
(2) 昭53-110082公開実用新案公報(同審判甲第5号証) 同公報に記載されている考案は,考案の名称を「ヘアーブラシ」とし,「使用が簡単で掃除がし易く洋服のポケットまたはハンドバッグ等に収納して持ち歩くのに便利なヘアーブラシに関するものである。」したがって,上記アと同様,本件登録意匠とは意匠に係る物品とは非類似の物品に係るものである。
また,上記「ヘアーブラシ」の形状は,上記公報に図示されているところによれば,本体形状が長円形である上,その中央部にブラシのないU字状の指差込片が形成されており,これら要部形状における本件登録意匠との相違点が看者の注意を強く惹くものと認められるから,本件登録意匠とは全体として美観を異にし,類似しないというべきである。
このように,上記公報に記載された「ヘアーブラシ」は,そもそも本件登録意匠に係る物品とは非類似の物品である上,意匠としても本件登録意匠と非類似である。
(3) 意匠登録第1146718号意匠公報(同審判甲第8号証) 同公報に記載されている意匠は,意匠に係る物品を「フットブラシ」とするものであって,「主として足の裏を,ツボ押し刺激しながら洗えるようにしたものである。」したがって,上記「フットブラシ」は,前記認定説示したとおりの用途・機能を有する「化粧用パフ」とは非類似の物品であることが明らかである。
また,上記「フットブラシ」の形状は,上記公報に図示されているところによれば,本体が楕円形ではなく卵のような外形であり,ブラシ部は大きく周縁部を残して円形に設けられており,これらの要部形状における相違点が看者の注意を強く惹くものと認められるから,本件登録意匠とは全体として美観を異にし,類似しないというべきである。
このように,上記公報に記載された「フットブラシ」は,そもそも本件登録意匠に係る物品とは非類似の物品である上,意匠としても本件登録意匠と非類似である。
(4) 乙第1号証添付のその他の審判甲号各証について 乙第1号証(審判請求書)添付の審判甲号各証に記載されている意匠についてみても,いずれもそもそも物品が本件登録意匠に係る物品と類似しない(審判甲第4号証〔髪洗器〕,同第6号証〔挾んで持つヘアー・ブラシ〕,同第7号証〔洗髪用ブラシ〕)上,いずれも意匠としても本件登録意匠とは要部形状を異にし,類似しないというべきである。
(5) 以上のとおり,これらの引用例をもって,本件登録意匠が登録出願前において公然知られた意匠又は頒布された刊行物記載された意匠又はこれらに類似する意匠ということはできない。したがって,本件登録意匠に係る意匠登録が意匠法48条1項1号の無効理由を有するということはできない。他に同意匠登録に同条1項各号所定の無効理由があるとの主張立証はない。
4 争点4(損害額) (1) 以上のとおり,被告のイ号物件の製造販売は,原告の有する本件意匠権を侵害するものであるところ,原告は,これにより原告が被った損害の額は被告が上記販売行為によって得た利益の額と同額であり(意匠法39条2項),その額は,被告によるイ号物件の販売数量(1か月5000ケースで合計6万個)に単価400円を乗じた額に利益率40%を乗じた960万円と主張する。
これに対し,被告は,イ号物件の販売数量は4167個であり,売上額は166万4740円であり,被告の得た粗利益の額は58万9654円である(粗利益率約35.4%)と主張する。
(2) 被告は,上記主張を裏付ける証拠として,次の被告既提出文書を提出した。
ア 「ゲルマニウムシリコンブラシフェイス用 入荷状況」と題する書面(乙14)は,イ号物件の仕入数量(5000セット〔2個〕),仕入単価(258円)及び仕入金額(129万円)を,月別の内訳等を区分せずに,下記乙第15号証の1〜13記載の数値を集計した結果のみを記載したものであり,「商品別売上実績表<数量>」と題する書面(乙15の1〜13。以下「売上実績表」という。)は,1か月単位で,イ号物件の販売数量(セット),販売単価,返品数量及び売上金額を得意先ごとに集計したものである。同実績表によれば,1回当たりの販売数量は,少ないもので1個,多いもので300個であるが,その大半は数個ないし数十個である。販売単価もまちまちであり,300円から660円程度である。
イ 被告既提出文書中,上記乙第14号証,第15号証の1〜13に記載されている販売数量等を裏付けるものとしては,@イ号物件の仕入先である香港の商社からイ号物件4896セットを単価1.9米ドル,合計9302.40米ドルで被告に送付した旨が記載された被告宛の平成15年12月30日付けのインボイス(乙19),A上記インボイスに対応し,1カートン当たり96セット入りのイ号物件51カートン,合計4896セットを納品した旨が記載されているパッキングリスト(乙20),B平成16年1月6日香港から神戸港に被告が輸入したイ号物件が他の商品と合わせて154カートン入荷されたことが記載されているアライバルノーティス(乙21),C上記アライバルノーティスと対応して,被告が香港から輸入したイ号物件が他の商品と合わせて154カートン入荷したこと,そのうちイ号物件の入荷個数が51カートンあることが記載されている船荷証券(乙22,23)があり,さらに,D被告の経理担当者が銀行ごとに毎日1枚ずつ振込額を手書きで記した早見表の抜粋とされる被告作成の振込み控えであって,被告が10月15日仕入先の取引銀行に277万1999円(振込手数料210円)を振り込んだことが記載されているもの(乙24),Eイ号物件の金型代が37万4000円であり(乙25の1。3400米ドルに1米ドル110円を乗じた額である。),その他の商品の代金(乙25の2〜7)と合わせて合計277万1999円を被告に請求する旨が記載されている国内の仕入先作成の平成15年10月10日付け請求書(乙25の1〜7),F平成15年10月15日に被告から277万1999円の振込送金を受けたことが記載されている仕入先の預金通帳(乙26)及びG平成15年10月15日に277万1999円が被告の取引銀行である株式会社三井住友銀行加古川支店から出金されたことが記載されている当座勘定の「ご利用明細」(乙27)である。
ウ そこで,被告既提出文書の信用性等について検討する。
(ア) まず,「ゲルマニウムシリコンブラシフェイス用 入荷状況」と題する書面(乙14)は,上記のとおり,月別の内訳等を区分せずに結論となる数値のみを記載したものであり,それ自体高度の信用性を有するとはいえない。また,売上実績表(乙15の1〜13)は,1か月単位で,イ号物件の販売数量(セット),販売単価,返品数量及び売上金額を得意先ごとに集計したものであるが,これも日々の取引経過が逐一記載されているようなものではなく,あくまでこれらの集計結果が記載されているのみであり,それ自体の信用性もさほど高いものと評価することはできない。
したがって,上記各号証の記載された数値が正確であるか否かは,その余の被告既提出文書を検討し,これらが上記数値を具体的に裏付けるに足りるか否かを慎重に検討しなければならない。
(イ) そこで上記イ記載の各文書を検討すると,これらの文書によれば,被告が,平成15年10月ころ,国内の仕入先に対しイ号物件の金型の製作を代金37万4000円(3400米ドル×110円)で依頼し,同月15日,上記金型代金に他の商品代金を合わせた277万1999円を同仕入先に振込送金したこと,そして,1カートン当たり96セット入りのイ号物件51カートン(合計4896個)を単価1.9米ドル,合計9302.4米ドルで仕入れ(その際,他の商品と合わせて合計154カートンを入荷している。),香港の協力会社(商社)に同額の代金を支払ったことが認められる。
もっとも,被告既提出文書によって認められるイ号物件の仕入数量4896個と被告の主張する仕入数量5000個との104個の個数差について,被告は,これ以前に8個を手持ちで持ち込んだもの及び梱包や外装箱の確認のため1カートン(96個)をEMSで送付してもらったものである旨主張するが,これを裏付ける証拠はない。
他方,被告は,上記仕入数量5000個がイ号物件の仕入数量のすべてであると主張するが,被告が上記以外に仕入れ,販売したイ号物件が全く存在しないことをうかがわせる文書が提出されているわけでもない。
(ウ) 原告は,イ号物件のような製品を製造するには金型製作費用のみでも約300万円を必要とし,製造個数は最低でも3万個を下らないというのが当業者の常識であるとし,このことを根拠に,被告の主張する販売数量は当業者の常識とかけ離れており,およそ信用し難い旨主張する。しかし,原告のいう上記当業者の常識を裏付ける的確な証拠はなく,他に,被告既提出文書によって認められる金型代金37万4000円が低額に過ぎて不自然であると認めるべき証拠はない(金型代金が1米ドル100円とした場合の34万円であるとしても同様である。)。
したがって,金型代金が被告の主張する上記金額よりも高額であることを根拠に,イ号物件の仕入数量が被告の主張するそれより大量であったと断定することはできない。ただし,イ号物件の金型代金が被告主張のとおりであったとしても,これとの対比において,イ号物件の販売数量が5000個弱にとどまり,粗利益の額が被告主張の58万9654円であったとすれば,やはり少額にすぎるのではないかという疑いはなお払しょくするに足りないともいえる。
(エ) 次に,原告は,イ号物件の説明書(検甲2参照)に発売元として記載されている株式会社ニーズの存在が被告既提出文書から脱落しており,イ号物件の流通面の連続性が欠けることになり,被告既提出文書の信用性に疑問を抱かせる旨主張する。確かに,上記説明書(乙11)には,「発売元」として「株式会社ニーズ 兵庫県加古川市(以下省略)」との記載がある。そして,弁論の全趣旨によれば,株式会社ニーズは,被告と代表者を同じくし,被告の主張によれば,同社は税務対策の意味合いもあって設立されたものであり,被告の扱う商品について顧客の問合せ窓口となり,クレーム処理を行っているとのことである。そして,被告は,被告と株式会社ニーズとの間に取引がないので被告の帳簿上取引先として同社の名前が出てこない旨主張する。しかし,被告のいうように同社が税務対策上設立されたものであれば,通常,被告の利益を圧縮する等の目的で,帳簿上,販売先に同社を介在させ,少なくとも外観上同社に対する売上げを立てるのが自然であるが,被告既提出文書にはそのような記載がない。このことは,被告既提出文書にすべての販売先に対するイ号物件の販売数量が記載されず,その一部しか記載されていないのではないかと疑わせるものというべきである。
(オ) 次に,原告は,売上実績表(乙15)には量販店向けの卸問屋に対する売上げ及びネット販売に係る売上げが含まれておらず,同記載の売上数量はイ号物件の販売実績の一部にすぎないと推定される旨主張する。これに対し,被告は,量販店と直接取引をしていること及びネット販売をしていることを否定し,被告既提出文書の記載に誤りはない旨主張している。
そこで検討すると,証拠(甲29,30〜32)及び弁論の全趣旨によれば,原告従業員が調査したところ,以下のとおり,イ号物件が下記各量販店で販売されていたことが認められる。
a 平成16年6月24日 ドラッグスパーク長浜店 b 平成17年1月24日 ドン・キホーテ渋谷店 c 平成17年1月25日 ハックドラッグアトレ大井町店 d 平成17年2月4日 ダルマ薬局盛岡西長橋台店 e 平成17年4月4日 ダイレックス木瀬店 また,証拠(甲33)によれば,上記各量販店の店舗数は,ドラッグスパークが50店舗,ドン・キホーテが70店舗,ハックドラッグが88店舗,ダルマ薬局が78店舗,ダイレックスが92店舗であることが認められる。
もっとも,これらの各量販店の全店舗すべてが一律にイ号物件を仕入れているという確証はなく,かつ,上記各量販店の全仕入数量も正確には不明である。しかし,証拠(甲34)によれば,原告従業員が商談のためダイレックスの本部である株式会社サンクスジャパンを訪問した際,同社仕入担当者にイ号物件の仕入数量を尋ねたところ,同担当者から「100台紙(1200ケース)を一括で安く仕入れた。」との回答を得たことが認められる(このこと自体の信用性を否定すべき事情はない。)。ただし,証拠(乙28)によれば,各台紙にはイ号物件以外の商品(ゲルマニウムシリコンブラシ・ボディ用,ゲルマニウム入りつるつるシート,ゲルマニウムパワースリムリング)も付いていて,原告のいう1200ケースのすべてがイ号物件かどうか疑わしく,イ号物件を含む上記4種類の商品が同数だけ付いているとすれば,被告のいうようにイ号物件は100台紙で300ケースであるとも考えられないではない。しかし,被告の上記主張を考慮しても,ダイレックスだけでも上記個数のイ号物件が仕入れられているのであり,かつ,上記のとおり,イ号物件は上記量販店で長期間にわたり継続的に販売されているのであるから,他の量販店でもこれに匹敵する数量のイ号物件が仕入れられていると推認することができる(なお,甲42によれば,卸売商においては平成17年10月17日の時点でイ号物件がいまだ販売されていたことが認められる。)。したがって,イ号物件を上記量販店に直接には販売していないという被告の主張を採用するとしても,被告既提出文書中の売上実績表記載の販売数量は,上記量販店等を通じて流通していると推定されるイ号物件の数量に対していかにも少量というべきである。さらに,被告自身が行っているか否かはともかく,イ号物件がインターネットを通じて相当大量に販売されていることは明らかであり(甲29,35,37),これによるイ号物件の流通量を考慮すると,なおさら,被告の主張するイ号物件の販売数量はいかにも少量というべきであって,売上実績表記載の販売数量が過少であるとの疑いを払しょくできない。
(カ) また,証拠(甲39〜41,43)及び弁論の全趣旨によれば,イ号物件を同種製品とする原告の製造販売するクレンジングパッドの1回当たりの販売数量は,666個(甲39),1008個(甲40),3150個(甲41)というようなものであるのに対し,売上実績表記載の1回当たりの販売数量は少ないもので1個,多いもので300個にすぎず,両者の用途・機能が類似しており,その販売数量に大差が出るとは考えられないことにかんがみれば,このことも,上記の売上実績表記載の販売数量が過少に記載されているのではないかと疑わせる事情であるといえる。
(キ) 上記(エ),(オ)及び(カ)の各事情に照らせば,売上実績表(乙15)記載の販売数量及びこれを集計した乙第14号証記載の販売数量は,いずれもイ号物件の他の販売数量を除外するなどして,販売数量を過少に記載している疑いがあり,その正確性を検証するためには,上記記載の基となったイ号物件に関する売上元帳等の帳簿書類のほか,イ号物件以外の被告の全製品に係る帳簿書類等をも合わせて照合し,売上実績表記載の数値の整合性を精査することが必要であると解される。そのため,当裁判所は,原告の申立てにより,被告に対して上記各文書の提出を命じたが,被告は正当な理由がないのにこれに応じない。
(3) そこで,被告が文書提出命令に従わない場合の効果として,民訴法224条1項又は3項に基づき,当該文書に関する原告の主張ないし当該文書によって証明すべき事実に関する原告の主張を真実と認めるべきか否かについて検討するに,原告は,被告が遅くとも平成16年2月から平成17年1月31日までの間イ号物件を少なくとも1か月当たり5000個(2個組),合計6万個製造販売したと主張するところ,イ号物件に関する売上元帳等の帳簿書類及びイ号物件以外の被告の全製品に係る帳簿書類等に正確にはどのような記載がされているのかについて具体的な主張をすることは,帳簿書類等の性質上著しく困難であり,かつ,同文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるというべきである。そして,前示認定のとおり,原告主張のイ号物件の販売数量は,上記認定事実によってある程度裏付けられており,それ自体合理性を欠くものではないというべきであるから,民訴法224条3項に従い,原告の上記主張を真実と認めることとする。
(4) また,証拠(甲3,乙15の1〜13,28の1)及び弁論の全趣旨によれば,その1個当たりの販売平均単価が原告主張の400円を下るものではないことが認められ,これを下回るとする証拠はない。
そして,利益率について,原告は,当業界の常識からして40%(粗利益率)を下るものではない旨主張するが,これを裏付ける具体的な証拠は全くなく,かえって,被告主張の粗利益率約35.4%は,原告の主張する上記粗利益率とさほどの乖離がない上,被告既提出文書により認められる販売数量は,すべての販売数量を表すものではなく,その一部を除外している疑いがあるとはいえ,そこに記載されている販売数量(販売価額)及びこれに対応する仕入原価等の額自体にはその信用性を疑わせるような事情は証拠上見いだし難い。これらの事情に加え,イ号物件に係る販売費及び一般管理費その他一切の事情を考慮すると,イ号物件の販売による利益率は30%と認めるのが相当である。
(5) ところで,本件登録意匠は,意匠に係る物品の部分をもって意匠登録されているもの(部分意匠)であって,これと類似するイ号意匠はイ号物件の一部を構成するものにすぎない。したがって,本件意匠権侵害により原告が被った損害と推定される被告が受けた利益の額とは,イ号物件のうちイ号意匠に係る部分の製造販売により被告が受けた利益の額ということになるところ,その額は,同部分のイ号物件全体に占める価額の割合等を基準に,イ号物件全体の利益に対する同部分の寄与度を考慮して定めるべきである。そこで,同部分のイ号物件全体に占める寄与度を検討すると,イ号物件は,「根元から先端に向かってやや小径となる突起を有する板状」の部分と「半球状の突起を有する板状」とに分けられ,イ号意匠は,前者に係る部分のみであることその他の事情にかんがみ,寄与率は50%とするのが相当である。
(6) 損害額の結論 以上の検討結果に従えば,被告が原告に対して支払うべき意匠権侵害に基づく損害賠償額は,次の算式により360万円となる。
400円×60,000個×0.3×0.5=3,600,000円 5 結論 以上の次第で,原告の本件請求中,被告に対しイ号物件の製造販売等の差止め及びイ号物件の廃棄を求める部分はすべて理由がある。そして,意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は,360万円の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。なお,附帯請求について検討するに,原告は,損害賠償金に対する訴状送達の日の翌日以降の民法所定割合による遅延損害金の支払を求めるところ,記録によれば,原告は,実用新案権に基づくイ号物件の製造販売の差止め及び損害賠償を求める訴えを提起して平成16年6月9日被告に訴状が送達された後,本件意匠権に基づくイ号物件の製造販売の差止め及び損害賠償を求める訴えを選択的に追加し,さらにその後,被告のイ号物件の販売行為の最終日を平成17年1月31日として損害賠償請求額を拡張する申立てをしたことが認められる。そして,被告のした本件意匠権侵害行為は,多数回にわたるイ号物件の販売行為から構成されており,これに基づく損害賠償請求権も厳密にはそれぞれの販売行為の日からそれぞれ個別に遅滞に陥ることになる。したがって,訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求めることは,いまだ遅滞に陥っていない損害賠償請求権についての遅延損害金を求める部分を一部含むことになるから失当である。そして,原告は,上記損害賠償請求権のうち,いずれの部分がいつの販売行為によって発生したものかについて何ら主張立証しない。もっとも,本件においては,遅くとも被告によるイ号物件の販売日の最終日である平成17年1月31日には,本件意匠権侵害行為によるすべての損害賠償請求権が遅滞に陥るといえるから,同日を遅延損害金の起算日とし,上記360万円に対する同日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の限度で認容するのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 松宏之
裁判官 西森みゆき
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