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関連審決 不服2002-11413
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  意匠が具体的 /  創作容易(容易の創作) /  公然知られた(3条1項1号) /  広く知られた /  意匠の属する分野 /  通常の知識を有する者 /  登録意匠 /  具体的な意匠 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 17号 審決取消請求事件
原告 アイリスオーヤマ株式会社
同訴訟代理人弁護士 伊藤真
同 弁理士 福迫眞一
被告 特許庁長官今井康夫
同指定代理人 西本幸男
同 藤正明
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/04/22
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2002-11413号事件について平成15年12月2日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成13年6月1日、意匠に係る物品を「フェンス」(以下「本件物品」という。)とし、その形態を意匠登録願(甲9)に添付された図面代用写真に記載されたとおりとする意匠(以下「本願意匠」という。)について、意匠登録出願(意願2001-15926号)をしたが、同14年5月31日、拒絶査定を受けたので、同年6月21日、これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は、同請求を不服2002-11413号事件として審理した上、平成15年12月2日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)を行い、その謄本は、同月11日、原告に送達された。
2 本件審決の理由 本件審決は、別紙審決書写し(以下「審決書」という。)記載のとおり、平成15年9月17日付けの拒絶理由通知(甲15、以下「本件通知」という。)において、本願意匠が、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて、容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので意匠法3条2項の規定に該当すると判断したことが、妥当なものと認められるので、当該意匠登録出願を拒絶すべきものとした(なお、原告(審判請求人)は、本件審判において、本件通知に対する何らの応答もしていない。)。
原告主張の審決取消事由の要点
本件審決は、本件通知に記載された創作容易との判断を是認するものであるところ、同通知の判断の基礎とされたものは、具体的形態が特定されておらず、しかも、本願意匠の対応部位の形態とかけ離れた形態である(取消事由1、2)上、
その判断も、他の登録意匠の存在を無視したものである(取消事由3)から、本件審決は、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(矩形の枠体について) 本件通知(甲15)が、「矩形状の枠体の上方寄りで上下に分割して、上方部枠内に斜め格子を表したもの」を基礎として創作容易性を判断したことは、複数の意匠を包含する概括的上位概念を提示するものであり、具体的な美感を備えた意匠を提示するものではないことなどから、誤りである。
(1) すなわち、上記説示は、もっぱら形態形成に際しての「作業手順」又は「概念的な構造」を説明する文章であって、これに当てはまる意匠は様々に存在するものであり、当該文章からは、「形状模様若しくは色彩又はこれらの結合」も「意匠」も特定することはできない。
本願意匠は、具体的に特定された美感を備えた意匠であり、その創作容易性の判断の基礎となる意匠(出願人に提示されるべき意匠)も、同様に具体的な意匠としての美感を備えたものでなければならない。これを本件に即していえば、対象となる意匠は、枠体や斜め格子の寸法、形状(太さや数など)、配置などが具体的に特定されることで意匠としての美感が定まるのであり、異なる美感を生じさせる形状模様までを包含する上位概念をもって対比の対象とすることはできない。
(2) また、本件通知が、上記説示に対応する上部枠内に関する例示として外国(ドイツ)カタログ「SilvanGartenholz 1997」第28頁所載の「さく」の意匠(甲14別紙3、4。以下「例示意匠」という。)のみを提示し、他の登録例や文献を提示することができないことからみて、上記上部枠内の形態は、周知とはいえず、せいぜい公知にすぎない。
(3) しかも、例示意匠の形態は、本願意匠の対応部位の形態とかけ離れており、被告の提示する周知意匠(乙1ないし6)も、本願意匠と具体的形態がかけ離れている。
すなわち、本願意匠の上部枠内の形態は、平板状で幅のある焼杉仕上げの枠体上方3分の1部位に、平板状で幅のある12本の斜め格子を施したものであって、シュロ縄で装飾された割竹を配する下部構成との調和を図るために、それ自体が「和風の美感」を備えるのに対して、例示意匠の対応する部位は、青色細幅角柱からなる枠体の上部4分の1部位に、白色細幅角柱18本による斜め格子を配したものであって、それ自体が「洋風の美感」を備えた意匠であり、意匠としての美感は截然として異なっている。
2 取消事由2(木賊垣について) 本件通知が、「木賊垣」を基礎として創作容易性を判断したことも、誤りである。
(1) すなわち、「木賊垣」には、様々に異なる美感を備えた意匠が存在している(甲16ないし20)から、例示も示さずに「木賊垣」と述べるのみでは、本願意匠と対比できるだけの具体的に特定された美感を有する意匠を示したことにはならない。
(2) しかも、上記のように「木賊垣」として示されている意匠又は特徴は、いずれも本願意匠の該当部位の形態とはかけ離れており、意匠としての美感が異なっている。
すなわち、本願意匠の該当部位は、風通しをよくするために割竹と割竹の間に明確な隙間が設けられており、上下対称2か所の位置のみに裏面側から胴縁が当てられていて、シュロ縄による加飾の態様も独自のものとなっている。これに対し、上記の「木賊垣」には、被告が本願意匠に酷似すると指摘する意匠(甲16)も含めて、本願意匠のような構成を示した意匠はなく、かえって割竹間の隙間がないなど、いずれも本願意匠とは明確に異なる形態のみが種々示されているのである。
3 取消事由3(他の登録意匠の存在等について) (1) 本願意匠と同種の構成を備える「フェンス」等の意匠が、既に多数登録されており(甲21ないし42)、その一部(甲21ないし23)は、原告が、本願意匠と同日に出願したものである。このことに照らしても、本件審決は、違法である。
(2) また、本願意匠の創作容易性の判断は、本願意匠に関してなされるべきものであり、本願意匠の各構成要素のそれぞれの容易性の判断により結論を導くことはできないのである。なぜなら、仮に複数の構成要素が個々に創作容易であるとしても、それら複数の要素を組み合わせた全体の意匠は、新たな美感を起こさせる新たな意匠となり得るのであり、そこに特徴があれば創作容易とはいえないのである。
被告の反論の要点
1 取消事由1について 意匠法3条2項に規定する創作容易性の判断は、対象となる意匠が、日本国内又は外国において公然知られた意匠の形態に基づいて当業者が容易に創作をすることができた意匠であるか否かである。そうすると、本願意匠の態様を認定するに当たって、その意匠の基になる周知又は公知の意匠から容易に創作することができたものであるか否かが判断できる範囲で認定すれば足りるものであり、各形態の仔細な点まで認定しなければならない理由はない。
そして、本願意匠についてみると、本件通知には、枠体の形態について、本願意匠の出願前に公然知られた例示意匠を具体的な例示として挙げており、本願意匠の「矩形状の枠体内をやや上方寄りで上下に分割し、上方部枠内に斜め格子を表したもの」という態様と共通するもので、本願意匠に格別の意匠の創作も認められず、当業者であれば容易に創作をすることができたものといえる。なお、斜め格子について、それらは、フェンスの間口や高さ(縦横の長さ)に応じて適宜変更することが普通に行われているところであり(乙6)、本願意匠の態様も、普通に見受けられる変更の範囲に止まるもので、格別の意匠の創作は認められない。
また、本願意匠の出願前に、例示意匠と同様の態様のものが多数存在しており(乙1ないし5)、上記の態様を周知形状と認定した点に誤りはない。
しかも、本件物品において、材料として杉や竹を用いることはいうに及ばず、固着手段としてシュロ縄を用いることもごく普通に見受けられるところであり(乙8)、焼き杉仕上げとすることも、腐食を防ぐための技術的な常套手段にすぎないものであり、本願意匠に格別の意匠の創作は認められない。
2 取消事由2について 「木賊垣」とは、「竹垣の一。太めの丸竹を二つ割りとしたものを竪に密に平行して立て並べて胴縁に結び留めたもの。」とされ(乙7)、本願意匠の下方の区画に表された形状についてみれば、割竹を、竪に密に平行して立て並べて胴縁に結び留めた形状のものであって、まさに木賊垣そのものといえる。
そして、「木賊垣」は、本願意匠の出願前に多数見受けられ(甲16、18、乙3、8)、特にほとんど本願意匠の下方の枠内に表された形状のものと酷似したものもあり(甲16)、その他の例と照らし合わせても、本願意匠の下方の枠内に表された形状は、出願前に多数見受けられる木賊垣の範囲を出るものでもなく、この点に格別の意匠の創作は認められず、当業者であれば容易に創作することができたものといえる。
上記のとおりであるから、本件通知を引用する本件審決が、木賊垣について、広く知られた形状であるとして、特に例示を示さず創作容易性の判断をした点に誤りはない。
3 取消事由3について 他の登録事例の意匠は、枠体の構成等において、本願意匠とは異なるものであるから、本願意匠の創作容易性の判断に直ちに当てはまるとは一概にいえないものであり、その登録意匠の存在は、本件審決の正当な判断を左右するものではない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(矩形の枠体について) (1) 原告は、本件通知が、「矩形状の枠体の上方寄りで上下に分割して、上方部枠内に斜め格子を表したもの」を基礎として創作容易性を判断したことについて、この説示が形態形成に際しての「作業手順」又は「概念的な構造」を説明する文章であって、これに当てはまる意匠は様々に存在するものであり、当該文章からは、「形状模様若しくは色彩又はこれらの結合」も「意匠」も特定することはできないと主張する。
しかしながら、本件通知において、本願意匠の創作容易性の判断の基礎とされた「公然知られた形状模様若しくは色彩又はこれらの結合」の1つが、「矩形状の枠体の上方寄りで上下に分割して、上方部枠内に斜め格子を表したもの」という具体的な形状であることは、上記の説示及び例示意匠の形態から明らかに理解できるところであり、それが単に作業手順等を示したものでないことはいうまでもない。原告の上記主張は、上記説示を正解せずに論難するものであって、採用することができない。
(2) また、原告は、本願意匠が具体的に特定された美感を備えた意匠であるから、その創作容易性の判断の基礎となる意匠(出願人に提示されるべき意匠)も、
同様に具体的な意匠としての美感を備えたものでなければならないと主張する。
しかしながら、意匠の創作容易性の判断の基礎となる「公然知られた形状模様若しくは色彩又はこれらの結合」とは、図面や写真等によりその細部までが具体的に確定されたものに限られず、当該意匠の属する分野における当業者が、
名称や説明などによって、その「形状模様若しくは色彩又はこれらの結合」を具体的に認識することができるものも含まれると解されるところ、本件通知においては、前示のとおり、公然知られた形状等の1つとして、「矩形状の枠体の上方寄りで上下に分割して、上方部枠内に斜め格子を表したもの」という具体的な形状が理解できるのであるから、この形状に基づいて創作容易性を判断することに誤りはないというべきであり、原告の上記主張も、採用することができない。
(3) さらに、原告は、例示意匠の形態が、本願意匠の対応部位の形態とかけ離れているとし、より具体的に、本願意匠の上部枠内の形態は、平板状で幅のある焼杉仕上げの枠体上方3分の1部位に、平板状で幅のある12本の斜め格子を施したものであって、シュロ縄で装飾された割竹を配する下部構成との調和を図るために、それ自体が「和風の美感」を備えるのに対して、例示意匠の対応する部位は、
青色細幅角柱からなる枠体の上部4分の1部位に、白色細幅角柱18本による斜め格子を配したものであって、それ自体が「洋風の美感」を備えた意匠であり、意匠としての美感が異なっていると主張する。
しかしながら、本件通知は、「矩形状の枠体の上方寄りで上下に分割して、上方部枠内に斜め格子を表したもの」という形状を例示するものとして、例示意匠(甲14別紙3、4)を示したものであるところ、本願意匠(甲9)も、同様の形状を有するものであり、両意匠を比較すると、例示意匠の方がわずかに細長いものの、両意匠は、縦横の長さ比率、上下分割の比率、枠材の太さにおいてほとんど共通するものであり、斜め格子の数の相違も、看者の美感に影響を及ぼすような意匠創作上の工夫とは認められない。また、本願意匠の枠体が焼杉仕上げになっている点は、腐食防止のための常套手段であることからみて、格別の意匠の創作は認められない。さらに、本願意匠がシュロ縄で装飾された割竹を配して「和風の美感」を備えるのに対して、例示意匠が「洋風の美感」を備えたものであるとの主張は、本件通知が例示意匠として認定していない、矩形状の枠内の下部の部位及びその色彩の相違等に由来するものと解される(なお、本願意匠中のシュロ縄で装飾された割竹からなる「和風」の部位に関しては、後記のとおり、「木賊垣」の形状から容易に創作できるものである。)から、本件通知の当該説示を正解せずに論難するものである。したがって、原告の上記主張を採用する余地はない。
なお、原告は、例示意匠としてはドイツの文献しか提示できないから、当該意匠は、周知とはいえずせいぜい公知にすぎないと主張するが、意匠法3条2項創作容易性の判断においては、当業者が、「日本国内又は外国において公然知られた形状模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた」ことが要件となるのであり、当該「形状模様若しくは色彩又はこれらの結合」が公知であれば、それが周知であるか否かは問題とならないから、原告の上記主張は、本件審決の取消事由としては、それ自体失当なものといわなければならない(しかも、被告の提示するフェンス及び垣根等の意匠(乙1ないし5)を参酌すれば、「矩形状の枠体の上方寄りで上下に分割して、上方部枠内に斜め格子を表したもの」という形状が周知であることは明らかといえる。)。
2 取消事由2(木賊垣について) (1) 原告は、「木賊垣」には、様々に異なる美感を備えた意匠が存在している(甲16ないし20)から、例示も示さずに「木賊垣」と述べるのみでは、本願意匠と対比できるだけの具体的に特定された美感を有する意匠を示したことにはならないと主張する。
しかしながら、三橋一夫著・社団法人家の光協会発行「カラー版庭のデザイン実例集2 生垣・竹垣」(甲16)によれば、「木賊垣」とは、「立子を並べ、押縁を使わない形式のものを木賊垣と呼びます。立子が並んでいるようですが、草の”トクサ“のように見えるところからこの名があります。つくり方にはふたとおりあります。いずれも太い真竹の半割りを使うのですが、胴縁が木のばあいには立子をクギ止めにし、唐竹を胴縁にするばあいはシュロ縄でからげます。縄のからげ方で模様をつくり出して仕上げます。」とされ、その実例が複数の写真により示されている。また、河原武敏著・財団法人東京農業大学出版会発行「日本庭園の伝統施設 鑑賞と技法の基礎知識」(甲17)によれば、「木賊垣」は、竹組みの塀状の垣根に分類され、「袖垣には本物のトクサを用いるが、葦や茅などを芯にして黒穂で10p内外に包み、トクサのように二三の節で銅線で巻き、これを立子として胴縁の前後交互に5〜6pの隙間をあけて立て並べた垣根。」とされ、中根史郎文・株式会社学習研究社発行「庭のデザインC 垣・塀」(甲18)では、
「伊勢神宮の木賊垣」として、「この木賊垣とは、丸竹を二ツ割とし、これを隙間なく胴縁に釘止めとし、表面には縄や押縁を少しも見せないようにしたもの」とされる。さらに、株式会社彰国社発行「建築大辞典」(乙7)によれば、
「木賊垣」は、「竹垣の一。太目の丸竹を二つ割りとしたものを竪に密に平行して立て並べて胴縁に結び留めたもの。」とされ、割竹を用いた木賊垣の形状のものは、本願意匠の出願前に周知であると認められる(甲16、乙3、8)。
したがって、本件物品に係る当業者であれば、「木賊垣」の語によって、
丸竹を二つ割りとしたものを立子とし、平行して立て並べ、竹か木材の胴縁にシュロ縄で結び留めたか、あるいはクギ止めした竹垣として、その形状を具体的に認識することができるものといえる。そして、シュロ縄を用いた木賊垣の竹垣の意匠を形成する際、使用される割竹の形態や、シュロ縄による結び方、割竹の間のわずかな隙間の設け方などにより、その形状に多少の相違が生じるとしても、その竹の形態や結び方などに意匠創作上の格別の工夫がなされていない場合には、これらの意匠は、従来から周知の木賊垣の形状に基づいて、当業者が容易に創作することができたものといわなければならない。
これを本願意匠についてみると、その下方の区画に表された、割竹の間にわずかに隙間を設けて平行して並べ、胴縁の割竹にシュロ縄で結び留めた形状は、
極めてありふれた形態であって、そのシュロ縄による結び方などに、看者の美感に影響を及ぼすような意匠創作上の工夫をした箇所は認められないから、周知の「木賊垣」の形状に基づいて、当業者が容易に創作することができたものといえる。したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(2) また、原告は、「木賊垣」として示されている意匠又は特徴は、いずれも本願意匠の該当部位の形態とはかけ離れており、意匠としての美感が異なっているとし、より具体的に、本願意匠の該当部位が、風通しをよくするために割竹と割竹の間に明確な隙間が設けられており、上下対称2か所の位置のみに裏面側から胴縁が当てられていて、シュロ縄による加飾の態様も独自のものとなっているのに対し、「木賊垣」には、本願意匠のような構成を示した意匠はなく、かえって割竹間の隙間がないなど、いずれも本願意匠とは明確に異なる形態のみが示されていると主張する。
しかしながら、前示のとおり、割竹を胴縁にシュロ縄で結び留めた「木賊垣」の場合、割竹の間にわずかな隙間を設けることは、極めて一般的であり、胴縁を上下対称2か所とした点及びシュロ縄を斜めに交差させた結び方にも、格別の意匠創作上の工夫があるとは認められないから、原告の上記主張を採用する余地はない。
3 取消事由3(他の登録意匠の存在等について) (1) 原告は、本願意匠と同種の構成を備える「フェンス」等の意匠が、既に多数登録されている(甲21ないし42)ことに照らしても、本件審決が違法であると主張する。
しかしながら、原告主張の登録意匠のうち、本願意匠と同様に、平成10年法律第51号により意匠法3条2項が改正されてから後の出願に係るものについて検討すると、これらの登録意匠には必ずしも本願意匠と同種の構成とはいえないものが含まれている上、このような登録意匠の存在により、当裁判所の前示判断が左右されるものでもないから、原告の上記主張は、採用することができない。
(2) また、原告は、本願意匠の創作容易性の判断において、仮に複数の構成要素が個々に創作容易であるとしても、それら複数の要素を組み合わせた全体の意匠は、新たな美感を起こさせる新たな意匠となり得るのであり、そこに特徴があれば創作容易とはいえないと主張する。
しかしながら、本願意匠においては、前示のとおり、「矩形状の枠体の上方寄りで上下に分割して、上方部枠内に斜め格子を表したもの」及び「木賊垣」のいずれの構成要素についても、本件物品の分野において周知の形状であって、これに基づいて当業者が当該部位の意匠を容易に創作できたものと認められるのみならず、矩形状のフェンス及び垣根等を上方寄りに分割した下部に、上部の斜め格子とは異なる周知の形状をそのまま配置することも周知のことと認められる(乙1ないし5)から、上記の複数の構成要素を組み合わせて1つの形態を創作することについても困難性が認められず、新たな美感を起こさせるような意匠の創作上の特徴はない。
したがって、原告の上記主張は、その前提に誤りがあり、これを採用することはできない。
4 結論 以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、その他本件審決に、これを取り消すべき瑕疵はない。
よって、原告の本訴請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 清水節
裁判官 沖中康人
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