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関連審決 無効2003-35015
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  3条1項3号 /  類似の意匠 /  意匠の類否 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 398号 審決取消請求事件
原告 タイコエレクトロニクスアンプ株式会社
訴訟代理人弁護士 松尾和子
同 弁理士 宍戸嘉一
同 松下満
同復代理人弁護士 吉田和彦
被告 日本圧着端子製造株式会社
訴訟代理人弁理士 稲岡耕作
同 川崎実夫
同 松井宏記
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/03/31
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が無効2003−35015号事件について平成15年8月1日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,意匠に係る物品を「コネクタハウジング」とし,その形態を別添審決謄本写し別紙第1記載のとおりとする登録第1105291号意匠(平成12年3月10日意匠登録出願,平成13年2月2日設定登録,以下「本件意匠」という。)の意匠権者である。
被告は,平成15年1月17日,原告を被請求人として,本件意匠の意匠登録を無効にすることについて審判を請求した。
特許庁は,同請求を無効2003-35015号事件として審理した上,同年8月1日に「登録第1105291号の登録を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同月13日,原告に送達された。
2 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件意匠は,その出願前に頒布された意匠登録第1018720号公報(審判甲2・本訴甲3)に記載された,意匠に係る物品を「コネクタハウジング」とし,その形態を同審決謄本写し別紙第2記載のとおりとする登録第1018720号意匠(平成8年11月28日意匠登録出願,平成10年6月12日設定登録,以下「引用意匠」という。)と比較すると,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,形態の類否については,差異点よりも共通点の与える影響が支配的であるから,意匠全体として互いに類似するものであり,本件意匠の意匠登録は,意匠法3条1項3号に違反してされたものであるから,無効とすべきであるとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は,本件意匠と引用意匠の差異点の判断及び共通点の判断を誤った結果,類否判断を誤った(取消事由)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(本件意匠と引用意匠の類否判断の誤り) (1) 本件意匠と引用意匠の差異点の判断の誤り ア 審決は,本件意匠と引用意匠の差異点として認定した,(1)「後端突出部の態様について,本件登録意匠(注,本件意匠)は,上端から下端に至るまで突出し,それぞれの上下面に前後方向の細溝を施しているのに対し,引用意匠は,中程に上下幅の略1/3の間隔を設け,それぞれの上下両面を平滑無模様としている点」(審決謄本4頁最終段落,以下「差異点(1)」という。),(2)「左右の脚部間の態様について,本件登録意匠は,前後同幅であって開脚部分より後方の上下面の基部後端寄りまでを開脚部分と同幅の凹溝状としているのに対し,引用意匠は,後端よりも前端がやや広がった平面視斜め状である点」(同4頁末行〜5頁第1段落,以下「差異点(2)」という。),(3)「脚部先端寄りの態様について,本件登録意匠は,それぞれ上面中央に平面視縦長長方形状のごく浅い凹部を,下面に前記段差と交差して縦長長方形状の小さな開口部をそれぞれ設けている点」(同5頁第1段落,以下「差異点(3)」という。)について,「差異点(1)については,本件登録意匠(注,本件意匠)の出願前より,この種物品分野において,後端突出部を本件登録意匠のものと略同様に上端から下端まで連続して形成した態様のものは,甲第8号証(注,本訴甲4〔平成11年5月17日被告作成のソケットハウジングの製作図面〕,以下「甲4図面」という。)に示す意匠(別紙第3参照),意匠登録第577695号(注,本訴甲5-1,以下「甲5-1公報」という。)及び同号の類似第1号(注,本訴甲5-2,以下「甲5-2公報」という。)に示す各意匠が見受けられるから,本件登録意匠のみに格別新規に形成したものとは言えず,また,上下面の細溝の有無は,形態全体からみれば限られた部位の態様についての差異にすぎず,前記のとおり,両意匠の後端突出部を細長い突出部と連続一体状であっていずれも左右対称状に形成している点が,いずれの方向から視た場合にも形態全体を特徴づける要素であるのに対し,これらの差異が形態全体に与える影響は小さいものであり,両意匠の類否判断に与える影響も微弱にとどまる」(同5頁最終段落),「差異点(2)については,本件登録意匠の出願前より,左右の脚部間の開脚部分を前後同幅に形成することは,請求人(注,被告)提出の甲第3号証(注,本訴甲6-2〔特開平9-120857号公報〕,以下「甲6公報」という。)に記載の図1および図2に示す意匠(別紙第4参照)および甲第4号証(注,本訴甲7-2〔特開平10-125384号公報〕,以下「甲7公報」という。)に記載の図1および図3に示す意匠(別紙第5参照)のとおり広く知られ,左右の脚部間を凹溝状に形成した態様(意匠登録第577695号の意匠参照。)も知られているから,凹溝状に形成した部分を脚部間の全体としたか部分としたかの変更の範囲であって,形態全体からみれば限られた部位の軽微な差異にとどまり,その差異が両意匠の類否判断に与える影響は微弱にとどまる」(同5頁最終段落〜6頁第1段落),「差異点(3)について,この種物品分野においては,コネクタ相互の接続をより確実にするためコネクタハウジングの脚部など差込部分に適宜凹凸を施すことは普通に行われるところ,本件登録意匠の凹部は,脚部先端寄りに形成したごく浅いものであって,下面の開口部も小さいものであり,いずれも格別の態様に形成したものでもないから,形態全体の基調に影響を与えるほどの要素となり得ないものであり,両意匠の類否判断に与える影響は微弱にとどまる」(同6頁第1段落)と判断した。しかし,これらの判断は,認定した形態的差異が類否判断に与える影響を合理的な理由なしに不当に過小評価するものであり,誤りである(差異点(4)については,争わない。)。
イ 差異点(1)について,「甲第8号証(注,甲4図面)に示す意匠(別紙第3参照)」には,本件意匠と略同様に「上端から下端まで連続して形成した態様」の後端突出部は開示されていないし,また,「上端から下端まで連続して形成した後端突出部」それ自体は,審決が引用する上記甲5-1公報及び甲5-2公報から公知であるが,本件意匠の後端突出部は,側面図から明らかなように,上記先行公知意匠のものに比較して,幅広に形成されており,本件意匠に特有の形態をなしている。本件意匠は,このように後端突出部を幅広に形成することによって,これと連続して一体状をなす細長い突出部を相対的に短く見せているのであるから,この点の美感に関する本件意匠と引用意匠との差異の形態全体に与える影響が,小さいとはいえない。
ウ 差異点(2)について,本件意匠の深い凹溝は,平面視及び背面視において,脚部が基部をわずかに残してコネクタハウジングのほとんど全長にわたって延びる相当に長い外観を呈し,大変すっきりとしたスマートな印象を看者に与えている。そして,これら各脚部の上面には,長方形の凹溝を,下面には,これより小型の長方形の開口部分を有して,それらの縁が平行であるがために幾何学的にみて長さが強調されている。これに対して,引用意匠並びに甲6公報及び甲7公報記載の各意匠は,いずれも,脚部の長さは基部の長さとほぼ同じにすぎない,ずんぐりしたものであるから,差異点(2)が看者に与える意匠上の影響は極めて大である。特に,引用意匠の,平面視で基部から前方へV字状の隙間をもって左右二股状に延びる略四角柱状の脚部は,これに先行する公知意匠には全く見ることができないざん新な形態であり,引用意匠の顕著な特徴を構成するものである。これに対し,本件意匠の脚部は,このようなV字状形態とは異なり,真っ直ぐに開脚する形態であるから,この観点においても差異点(2)が意匠の類否判断に与える影響は大といわざるを得ない。
エ 差異点(3)について,本件意匠の脚部上面に形成された深い凹溝は,脚部の形態と調和のとれた幾何学的形状,すなわち,脚部の先端から後方に向かって配された長方形を有し,脚部間上側の深く顕著な凹溝とあいまって,看者に二等辺三角形の配列を印象付け,本件意匠において最も看者の目につきやすく,その存在を訴えるものとなっている。また,脚部下面に形成された開口部分も,脚部の形態と調和のとれた幾何学的形状,すなわち,脚部の先端と細長い突出部のほぼ中間で段差にまたがって配された長方形を有し,脚部間の下側凹溝とあいまって,看者に二等辺三角形の配列を印象付けている。これらは,正に視覚を通じて美感を起こさせる意匠であり,審決にいう「格別の態様に形成したもの」に該当し,意匠全体の基調にかなりの影響を与えるほどの要素となっている。
(2) 本件意匠と引用意匠の共通点の判断の誤り ア 審決は,本件意匠と引用意匠の共通点として認定した,「全体は,横幅よりも奥行きが長い扁平な筺体状であって,後方を電線接続側である基部とし,その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している点が認められ,各部の態様について,基部は,左右両側面の後端に基部の上下面と面一状に直方体状の突出部(以下,「後端突出部」という。)を左右対称状に形成し,背面に左右対称状の小矩形状の孔部を設けている点,基部寄りの上面および下面の左右方向にそれぞれ後方よりも前方が低い段差を形成している点,脚部は,全体の奥行きの中程から開脚し,それぞれ正面視略正方形状であって先端四辺を面取りし,下面の先端寄りに,後方よりも前方が低い段差を形成し,そして,左側面および右側面は,それぞれ脚部先端寄りに平面視小さな略台形状の突起を有し,その後方から上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を後端突出部に連続一体状に形成し,細長い突出部よりも後端突出部がそれぞれさらに突出している点,そして,脚部の先端面に小矩形状の開口部を設けている点の各点」(審決謄本4頁下から第2段落)について,@「形態全体についての共通点は,両意匠の形態の骨格を構成する基本的な構成態様に係るものであり,形態全体の基調を左右するほどの影響を与えるものである」(同5頁第2段落,以下「共通点の判断@」という。),A「形態各部の態様において,共通するとした後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し,細長い突出部よりも後端の突出部がさらに突出している態様は,引用意匠の出願前には同様に形成した態様のものが見受けられず,いずれの方向から観察した場合にも形態全体を特徴づける要素であ」(同)る(以下「共通点の判断A」という。),B「共通するとした基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差は,両意匠の形態全体がいずれも扁平であって上下の面が広いため,比較的目立つ態様であると言えるから,形態全体に与える影響が大きいものであり,特に下面は先端寄りにも段差を形成しているため,踏み込み幅の長い階段状の態様を呈しており,側面視のみならず底面側から視た場合にも形態全体を特徴づける要素となりえるものである」(同,以下「共通点の判断B」という。),C「これら共通点は,いずれも左右対称状に形成している態様に係り,共通点が相まって生じる意匠的な効果は,両意匠の形態全体の基調を形成し,両意匠の類否判断を左右するほどのものと言える」(同,以下「共通点の判断C」という。)と判断した。しかしながら,これらの判断は,審決の認定する共通点が看者の注意を強くひくものではないことを看過したものであり,誤りである。
イ 共通点の判断@の「形態全体についての共通点」は,「横幅よりも奥行きが長い扁平な筐体状であって,後方を電線接続側である基部とし,その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している点」(審決謄本4頁下から第2段落)をいうものであるが,これは,意匠登録第520637号公報(甲8,以下「甲8公報」という。)及び実公昭62-145280号公報(甲9,以下「甲9公報」という。)に示されるように,そもそも引用意匠の出願日前において公知の形態にすぎない。すなわち,甲8公報記載の意匠は,意匠に係る物品を「電気接続器用ハウジング」とするものであるが,本件意匠及び引用意匠と同じく,「横幅よりも奥行きが長い扁平な筐体状であって,後方を電線接続側である基部とし,その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している」形態を有することは明らかである。また,甲9公報は,回路接続用コネクタに関する考案に係るものであり,その第3図(a)の右側に開示された回路接続用コネクタも,本件意匠及び引用意匠と同じく,「横幅よりも奥行きが長い扁平な筐体状であって,後方を電線接続側である基部とし,その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している」形態を有している。したがって,上記「形態全体についての共通点」は,この種の意匠における「骨格を構成する基本的な構成態様」にすぎず,意匠の類否判断に与える影響は,小さいことが明らかである。
ウ 共通点の判断Aの「後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し,細長い突出部よりも後端の突出部が更に突出している態様」は,意匠に係る物品を「コネクターハウジング」とする意匠登録第544665号公報(甲10,以下「甲10公報」という。)に,細長い突出部が一方の側面にしか形成されていない点を除き開示されているから,「引用意匠の出願前には同様に形成した態様のものが見受けられず」とした認定は誤りである。
エ 共通点の判断Bの「基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差」は,本件物品が相手方コネクタとはまり合うために機能上要求される形態にほかならない。したがって,例えば,意匠に係る物品を「電気コネクタ用ハウジング」とする意匠登録第711239号公報(甲11,以下「甲11公報」という。)には,「基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差」を有する形状が開示されているから,上記段差の共通点は,類否判断に与える影響が相対的に小さいといわなければならない。
なお,審決が挙げる,脚部の開脚,正面視におけるほぼ正方形状,先端四辺の面取り,下面の段差,脚部先端寄りの突出部などの共通点のうち,脚部の開脚の形状及び位置が異なることは上記のとおりであり,また,その他の共通点は,この種の物品の意匠として類否判断を左右するような点ではない。
オ 共通点の判断Cの「これら共通点は,いずれも左右対称状に形成している態様に係り,共通点が相まって生じる意匠的な効果は,両意匠の形態全体の基調を形成し,両意匠の類否判断を左右する」との点も,共通点に係る形態的特徴は,いずれも引用意匠に特有のものではなく,両意匠の類否判断を左右するほど重要なものということはできないから,誤りである。
カ 以上のとおり,審決は,本件意匠と引用意匠の共通点について意匠的評価を誤り,物品の基本的骨格を上位概念でとらえて共通性があるとし,かつ,原告が提出した先行公知意匠を全く考慮することなく,先行意匠にも存在する特徴を本件意匠及び引用意匠が有する共通点として挙げて,殊更共通性を強調するものであって,正当な判断をしていないものというべきである。
(3) 上記のとおり,審決は,本件意匠と引用意匠の共通点が看者の注意を強くひくものではないのに,その意匠的評価を誤り,かつ,差異点についても,それが客観的に見る者の美感に訴える影響を不当に過小評価した結果,類否判断を誤ったものである。
被告の反論
1 審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(本件意匠と引用意匠の類否判断の誤り)について (1) 本件意匠と引用意匠の差異点の判断の誤りについて ア 原告は,差異点(1)について,本件意匠の後端突出部は,側面視において,甲5-1公報及び甲5-2公報記載の公知意匠に比較して幅広であって,そうすることによって,細長い突出部を相対的に短く見せている旨主張する。しかしながら,審決が甲5-1公報及び甲5-2公報記載の意匠を引用したのは,意匠の大まかな骨格として上端から下端まで連続した後端突出部を形成している例は公知であり,本件意匠に特有のものでないことを示すためである。また,審決が,後端突出部の形状の差異を大きく評価せず,むしろ,両意匠の後端突出部と細長い突出部とが連続一体状であっていずれも左右対称状に形成されている点を大きく評価したのは,両意匠に係る物品がコネクタハウジングであって,縦横ともに1cm弱の極小の物品であることから,そのような物品の類否にあっては,後端突出部のわずかな違いよりも,後端全体で観察した場合の類似性を大きく評価したという,極めて妥当な判断手法に基づくものである。
イ 原告は,差異点(2)について,本件意匠の深い凹溝は,平面視及び背面視で,脚部が基部をわずかに残してコネクタハウジングのほとんど全長にわたって延びる相当に長い外観を呈し,大変すっきりとしたスマートな印象を看者に与えていると主張する。しかしながら,上記「深い凹溝」は,正しくは「基部中央の凹み」というべきである。その凹みの先端から脚部が延びているのであるから,引用意匠と同じく,脚部と基部との奥行きは同程度と認識され,本件意匠は脚部が相当に長い印象を与えるものではない。また,原告は,本件意匠の脚部上面の長方形の凹溝と下面の開口部分の縁が平行であるために幾何学的にみて長さが強調されていると主張するが,看者は,両意匠から,脚部と基部との奥行き(長さ)は同程度と認識するというべきである。さらに,原告は,引用意匠の脚部のV字状の隙間をもって,左右二股状に延びる略四角柱状の脚部は,公知意匠にないざん新な形態であるとも主張するが,引用意匠の脚部は,全体の奥行き(長さ)の中程から開脚し,平面視斜め状で後端よりも前端がやや広がっているという程度であり,V字状といえるほどには開脚していない。コネクタハウジングという極小の物品にあっては,看者は引用意匠の脚部間を「やや広がっている」程度としか認識しないのであり,引用意匠の脚部の広がりのさ細な差異より,「極間スリットがある」という両意匠の骨格における共通点の方が重視されるというべきである。
ウ 原告は,差異点(3)について,本件意匠の脚部上面の凹溝及び下面の開口部分は,脚部間の凹溝と上記上面凹溝と下面開口部分があいまって,二等辺三角形の配列を印象付け,意匠の類否判断に与える影響が大きいと主張する。しかしながら,原告のいう二等辺三角形の配列は,両意匠の類否判断において重視されない部分の配列であって,それが意匠の類否判断を大きく左右するとは到底いえない。その上,本件意匠の脚部上面の凹溝は浅く,下面の開口部分は小さいものであり,極小のコネクタハウジングにあって,そのような細かい部分が意匠の類否判断で重視されることはない。
(2) 本件意匠と引用意匠の共通点の判断の誤りについて ア 共通点の判断@について,原告は,「全体は,横幅より奥行きが長い扁平な筐体状であって,後方を電線接続側である基部とし,その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している点」を有するコネクタハウジングは,甲8公報及び甲9公報により出願前公知の形態であり,意匠の類否判断に与える影響は小さいことが明らかで,「形態全体の基調を左右するほどの影響を与えるものである」とした審決の判断は誤っている旨主張する。しかしながら,コネクタハウジングは,その用途に応じて種々の形態が存在し,用途が異なれば基本的な構成態様も全く異なるが,本件意匠と引用意匠とは,小型の2極ソケットコネクタハウジングとして,その基本的な構成態様が共通するものである。これに対し,甲8公報記載のコネクタハウジングは,基部に比べて前方へ左右二股状に延びる脚部の割合(前後方向長さ)が大きく,しかも,基部及び脚部は,その角が面取りされて丸められているから,本件意匠及び引用意匠と異なる印象を与えるものであり,また,甲9公報記載のコネクタハウジングは,基部と脚部とが一体状に形成された形態ではなく,基部の前端面から四角柱状の脚部が段差を有して突出した形態であるから,本件意匠及び引用意匠とは美感を異にする。
イ 共通点の判断Aについて,原告が甲10公報に開示されていると主張する「後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し,細長い突出部よりも後端の突出部が更に突出している態様」は,甲10公報には開示されていない。上記態様は,本件意匠及び引用意匠の形態の「骨格を構成する基本的な構成態様」の上に立って,両意匠のみに共通する特有の形態であり,形態全体を特徴付ける構成要素である。
ウ 共通点の判断Bについて,原告は,「基部寄りの上面および下面の左右方向にそれぞれ後方よりも前方が低い段差」は,本件物品が相手方コネクタとはまり合うために機能上要求される形態にほかならず,甲11公報にに開示されていると主張する。しかしながら,甲11公報記載のコネクタハウジングは,本件意匠及び引用意匠とは基本的構成(上記「骨格を構成する基本的な構成態様」)が異なるものであるから,同形態は,本件意匠と引用意匠の類否判断において考慮されるべきものではない。甲11公報記載のコネクタハウジングの段差は,相手方コネクタに挿入される部分と,挿入されない部分との境界部に形成されているが,他方,本件意匠及び引用意匠においては,上記態様のみならず,「脚部は・・・下面の先端寄りに,後方よりも前方が低い段差」(審決謄本4頁下から第2段落)が形成されており,機能上必然的な形態としての段差ではなく,本件意匠及び引用意匠に共通の形態全体を特徴付ける要素の一つとなっている。
エ 共通点の判断Cについて,原告は,共通点に係る形態的特徴は,いずれも引用意匠に特有のものではなく,両意匠の類否判断を左右するほど重要なものということはできないと主張するが,原告が特有のものではないとして引用する甲8公報ないし甲11公報に,共通点に係る形態的特徴は開示されていない。
オ 本件意匠及び引用意匠は,共に,小型の2極ソケットコネクタハウジングであり,両者の形態を判断するに当たっては,上記「骨格を構成する基本的な構成態様」に係る共通点を前提とし,その機能及び用途上,看者が注目すべき構成要件としての各共通点に着目しなければならない。そして,各共通点から把握される本件意匠及び引用意匠は,共に,平面視及び底面視で,前方から後方に向かって,両脚先端の面取り,両脚先端寄り側方の台形小突起,側面の細長い突出部,後端突出部と,段階的に全長にわたって広がりを形成している。同様に,側面視においても,上面及び下面が,共に,前方から後方に向かって,段階的に全長にわたっている広がりを形成し,これら広がる程度,段差の位置及び対称性がほとんど一致している。審決は,これら共通点が,本件意匠と引用意匠との差異点をしのぐと判断したものであり,極めて適切な判断というべきである。
当裁判所の判断
1 取消事由(本件意匠と引用意匠の類否判断の誤り)について (1) 本件意匠と引用意匠の差異点の判断の誤りについて ア 審決は,差異点(1),すなわち,「後端突出部の態様について,本件登録意匠(注,本件意匠)は,上端から下端に至るまで突出し,それぞれの上下面に前後方向の細溝を施しているのに対し,引用意匠は,中程に上下幅の略1/3の間隔を設け,それぞれの上下両面を平滑無模様としている点」(審決謄本4頁最終段落)について,「本件登録意匠(注,本件意匠)の出願前より,この種物品分野において,後端突出部を本件登録意匠のものと略同様に上端から下端まで連続して形成した態様のものは,甲第8号証(注,甲4図面)に示す意匠(別紙第3参照),意匠登録第577695号(注,甲5-1公報)及び同号の類似第1号(注,甲5-2公報)に示す各意匠が見受けられるから,本件登録意匠のみに格別新規に形成したものとは言えず,また,上下面の細溝の有無は,形態全体からみれば限られた部位の態様についての差異にすぎず,前記のとおり,両意匠の後端突出部を細長い突出部と連続一体状であっていずれも左右対称状に形成している点が,いずれの方向から視た場合にも形態全体を特徴づける要素であるのに対し,これらの差異が形態全体に与える影響は小さいものであり,両意匠の類否判断に与える影響も微弱にとどまる」(同5頁最終段落)と判断したが,これに対し,原告は,甲4図面記載の意匠には,「上端から下端まで連続して形成した態様」の後端突出部は開示されていないし,また,「上端から下端まで連続して形成した後端突出部」それ自体は,公知であるが,本件意匠の後端突出部は,先行公知意匠のものに比較して,幅広に形成されており,本件意匠に特有の形態をなし,このように後端突出部を幅広に形成することによって,これと連続して一体状をなす細長い突出部を相対的に短く見せているのであるから,この点の美感に関する本件意匠と引用意匠との差異の形態全体に与える影響が小さいとはいえないと主張するので,検討する。
甲4図面は,平成11年5月17日被告作成のソケットハウジング(コネクタハウジングと同様の物品であると認められる。)の製作図面であり,ソケットハウジングの背面図(左側上段),平面図(左側中段),正面図(左側下段)及び右側面図(右側)が図示され,平面図及び右側面図によれば,甲4図面記載のソケットハウジングには,本件意匠と同様,後端突出部が形成されているが,右側面図によれば,その後端突出部は,中ほどに上下幅の略1/3の間隔が設けられており,上端から下端まで連続して形成した態様とは認められず,この点に係る審決の上記認定は誤りである。また,甲5-1公報及び甲5-2公報には,「上端から下端まで連続して形成した後端突出部」が開示されているが,同記載の意匠の後端突出部は全長の略1/10幅であるのに対し,本件意匠の後端突出部は全長の略1/5弱の幅広に形成され,これが甲5-1公報及び甲5-2公報記載の意匠にはない美感ないし美的印象を与え,意匠的効果をもたらすというべきである。
被告は,両意匠に係る物品がコネクタハウジングであって,縦横ともに1cm弱の極小の物品であることから,そのような物品の類否にあっては,後端突出部のわずかな違いよりも,後端全体で観察した場合の類似性を大きく評価するのが,妥当な判断手法であると主張する。しかしながら,甲6公報の「従来,複数のピンコンタクトを収容しているピンヘッダを持つコネクタにおいては,・・・ピンコンタクトのピッチ間隔を大きくするようにしていた。・・・ピンコンタクトのピッチ間隔を大きく設定すると,どうしてもピンヘッダのサイズを大きくせねばならず,コネクタが全体的に大型化になる」(段落【0002】〜【0003】),甲7公報の「コネクタを小型化した場合には,高電圧に耐えることができず,これらランス間で放電が起きる可能性が高くなり,正負のコンタクトの間の絶縁を有効に行うことが困難であった」(段落【0006】)との記載によれば,コネクタハウジングには,大型のものも存在することが認められ,本件意匠に係る物品は,「電気コンタクトを収容し,相手コネクタと嵌合して電気的に相互接続するためのもの」(甲2,「意匠に係る物品の説明」の項)であって,このような大型のコネクタハウジングを除外するものではないから,意匠に係る物品が縦横ともに1cm弱の極小の物品であるということはできず,被告の上記主張は,前提において誤りであり,失当というほかない。
イ 審決は,差異点(2),すなわち,「左右の脚部間の態様について,本件登録意匠(注,本件意匠)は, 前後同幅であって開脚部分より後方の上下面の基部後端寄りまでを開脚部分と同幅の凹溝状としているのに対し,引用意匠は,後端よりも前端がやや広がった平面視斜め状である点」(審決謄本4頁末行〜5頁第1段落)について,「本件登録意匠の出願前より,左右の脚部間の開脚部分を前後同幅に形成することは,請求人(注,被告)提出の甲第3号証(注,甲6公報)に記載の図1および図2に示す意匠(別紙第4参照)および甲第4号証(注,甲7公報)に記載の図1および図3に示す意匠(別紙第5参照)のとおり広く知られ,左右の脚部間を凹溝状に形成した態様(意匠登録第577695号の意匠参照。)も知られているから,凹溝状に形成した部分を脚部間の全体としたか部分としたかの変更の範囲であって,形態全体からみれば限られた部位の軽微な差異にとどまり,その差異が両意匠の類否判断に与える影響は微弱にとどまる」(同5頁最終段落〜6頁第1段落)と判断したが,これに対し,原告は,本件意匠の深い凹溝は,平面視及び背面視において,大変すっきりとしたスマートな印象を看者に与え,これら各脚部の上面の長方形の凹溝及び下面の小型の長方形の開口部分の縁が平行であるがために幾何学的にみて長さが強調されているから,看者に与える意匠上の影響は極めて大であり,引用意匠のV字状の脚部は,ざん新な形態であり,意匠の類否判断に与える影響は大きいと主張する。
甲6公報記載の意匠及び甲7公報記載の意匠において,いずれも左右の脚部は,本件意匠と同様,左右の脚部間の開脚部分を前後同幅に形成され,甲6公報記載の脚部上下面及び甲7公報【図3】記載の脚部上面には,相手方コネクタに接続するための嵌合部が形成されているが,コネクタ相互の接続をより確実にするためにコネクタハウジングの脚部の差込部分に適宜凹凸を施すことは普通に行われるところであり,特徴的なものではなく,また,甲7公報【図1】記載の脚部上面は凹凸はなく平坦である。これに対し,本件意匠の左右の脚部の上面には長方形の凹溝を,下面にはこれより小型の長方形の開口部分を有している。そして,本件意匠は,各脚部の上下面の先端部から基部にかけて脚部上面の長方形の凹溝と略同様の長方形の深い凹溝が形成され,平面視においては,左右の脚部上面の長方形の凹溝と長方形の深い凹溝が,また,底面視においては,左右の脚部の小型の長方形の開口部分と長方形の深い凹溝が,それぞれ二等辺三角形状に配列された外観を呈し,これが引用意匠,甲6公報記載の意匠及び甲7公報記載の意匠にはない美感ないし美的印象を与え,意匠的効果をもたらすことは明らかである。他方,引用意匠の平面視で基部から前方へV字状の隙間をもって左右二股状に延びる略四角柱状の脚部は,ありふれたものとは認められず,引用意匠の形態における顕著な特徴を構成するものというべきである。
被告は,引用意匠の脚部は,V字状といえるほどには開脚しておらず,また,コネクタハウジングという極小の物品にあっては,引用意匠の脚部の広がりのさ細な差異より,「極間スリットがある」という両意匠の骨格における共通点の方が重視されるというべきであると主張する。しかしながら,引用意匠の脚部がV字状の開脚を有することは,平面図及び底面図から一見して明らかであり,また,コネクタハウジングが極小の物品であるとの前提が誤りであることは上記のとおりである。
ウ 審決は,差異点(3),すなわち,「脚部先端寄りの態様について,本件登録意匠は,それぞれ上面中央に平面視縦長長方形状のごく浅い凹部を,下面に前記段差と交差して縦長長方形状の小さな開口部をそれぞれ設けている点」(審決謄本5頁第1段落)について,「差異点(3)について,この種物品分野においては,コネクタ相互の接続をより確実にするためコネクタハウジングの脚部など差込部分に適宜凹凸を施すことは普通に行われるところ,本件登録意匠の凹部は,脚部先端寄りに形成したごく浅いものであって,下面の開口部も小さいものであり,いずれも格別の態様に形成したものでもないから,形態全体の基調に影響を与えるほどの要素となり得ないものであり,両意匠の類否判断に与える影響は微弱にとどまる」(同6頁第1段落)と判断したが,本件意匠は,平面視においては,左右の脚部上面の長方形の凹溝と長方形の深い凹溝が,また,底面視においては,左右の脚部の小型の長方形の開口部分と長方形の深い凹溝が,それぞれ二等辺三角形状に配列された外観を呈し,これが意匠的効果をもたらすことは上記のとおりである。
被告は,二等辺三角形の配列は,両意匠の類否判断において重視されない部分の配列であり,また,本件意匠の脚部上面の凹溝は浅く,下面の開口部分は小さいものであり,極小のコネクタハウジングにあって,そのような細かい部分が意匠の類否判断で重視されることはないと主張するが,二等辺三角形状の配列が意匠的効果をもたらすことは上記のとおりであり,また,コネクタハウジングが極小の物品であるとの前提が誤りであることも上記のとおりである。
(2) 本件意匠と引用意匠の共通点の判断の誤りについて ア 審決の共通点の判断@,すなわち,「形態全体についての共通点は,両意匠の形態の骨格を構成する基本的な構成態様に係るものであり,形態全体の基調を左右するほどの影響を与えるものである」(審決謄本5頁第2段落)との判断について,原告は,上記「形態全体についての共通点」は,この種の意匠における「骨格を構成する基本的な構成態様」にすぎず,意匠の類否判断に与える影響は小さいと主張するので,検討する。
審決の指摘する上記「形態全体についての共通点」は,「横幅よりも奥行きが長い扁平な筐体状であって,後方を電線接続側である基部とし,その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している点」(同4頁下から第2段落)をいうものであるが,引用意匠の出願日前に頒布された甲8公報(昭和55年1月8日発行)及び甲9公報(昭和62年9月12日公開)には,「横幅よりも奥行きが長い扁平な筐体状であって,後方を電線接続側である基部とし,その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している」形態を有するコネクタハウジングが開示されており,同形態は,コネクタハウジングの形態としてごくありふれたものと認められ,看者の注意をひくものとはいえない。
被告は,本件意匠と引用意匠とは,小型の2極ソケットコネクタハウジングとして,その基本的な構成態様が共通するものであるのに対し,甲8公報記載のコネクタハウジングは,基部に比べて前方へ左右二股状に延びる脚部の割合(前後方向長さ)が大きく,しかも,基部及び脚部は,その角が面取りされて丸められているから,本件意匠及び引用意匠と異なる印象を与えるものであり,また,甲9公報記載のコネクタハウジングは,基部と脚部とが一体状に形成された形態ではなく,基部の前端面から四角柱状の脚部が段差を有して突出した形態であるから,本件意匠及び引用意匠とは美感を異にすると主張する。しかしながら,本件意匠及び引用意匠が小型の2極ソケットコネクタハウジングに係るものであるとの点は,本件意匠及び引用意匠に係る意匠登録出願の願書及び願書に添付した図面に何ら記載されていないから,主張自体失当というほかない。また,甲8公報記載のコネクタハウジング及び甲9公報記載のコネクタハウジングの上記形態は,「形態全体についての共通点」に係る形態が,コネクタハウジングの形態としてごくありふれたものであり,看者の注意をひくものとはいえないとの上記判断を何ら左右しない。
イ 審決の共通点の判断A,すなわち,「形態各部の態様において,共通するとした後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し,細長い突出部よりも後端の突出部がさらに突出している態様は,引用意匠の出願前には同様に形成した態様のものが見受けられず,いずれの方向から観察した場合にも形態全体を特徴づける要素であ」(審決謄本5頁第2段落)るとの判断について,原告は,「後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し,細長い突出部よりも後端の突出部が更に突出している態様」は,甲10公報に開示されているから,「引用意匠の出願前には同様に形成した態様のものが見受けられず」とした認定は誤りであると主張する。しかしながら,甲10公報記載のコネクタハウジングは,細長い突出部が一方の側面にしか形成されていない点で,本件意匠及び引用意匠とは異なるから,審決の上記認定を誤りであるということはできない。
ウ 審決の共通点の判断B,すなわち,「共通するとした基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差は,両意匠の形態全体がいずれも扁平であって上下の面が広いため,比較的目立つ態様であると言えるから,形態全体に与える影響が大きいものであり,特に下面は先端寄りにも段差を形成しているため,踏み込み幅の長い階段状の態様を呈しており,側面視のみならず底面側から視た場合にも形態全体を特徴づける要素となりえるものである」(審決謄本5頁第2段落)との判断について,原告は,「基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差」は,甲11公報に開示されているように,本件物品が相手方コネクタとはまり合うために機能上要求される形態にほかならないから,類否判断に与える影響が相対的に小さいと主張する。
原告が引用する甲11公報記載のコネクタハウジングのみならず,甲6公報及び甲7公報記載のコネクタハウジングにおいても,「基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差」が開示され,同形態は,相手方コネクタとはまり合うために機能上要求される公知の形態と認められるが,審決の指摘する「下面は先端寄りにも段差を形成している」点については,上記各公報にも開示されておらず,この点は機能上要求される公知の形態とは認められない。
エ 審決の共通点の判断C,すなわち,「これら共通点は,いずれも左右対称状に形成している態様に係り,共通点が相まって生じる意匠的な効果は,両意匠の形態全体の基調を形成し,両意匠の類否判断を左右するほどのものと言える」(審決謄本5頁第2段落)との判断について,原告は,共通点に係る形態的特徴は,いずれも引用意匠に特有のものではなく,両意匠の類否判断を左右するほど重要なものということはできないと主張するところ,「これら共通点は,いずれも左右対称状に形成している態様に係」るとの点については,甲10公報のものを除き,甲8公報,甲9公報及び甲11公報記載のコネクタハウジングは,いずれも左右対称であり,2極のコネクタハウジングが左右対称であることは,ごくありふれたものと認められ,そうである以上,共通点に係る部分が左右対称に形成されることも当然のことであり,この点が看者の注意をひくものとはいえない。
(3) 以上を前提に,本件意匠と引用意匠の類否について検討すると,差異点(1)の「後端突出部の態様について,本件登録意匠(注,本件意匠)は,上端から下端に至るまで突出し,それぞれの上下面に前後方向の細溝を施しているのに対し,引用意匠は,中程に上下幅の略1/3の間隔を設け,それぞれの上下両面を平滑無模様としている点」について,本件意匠の後端突出部は全長の略1/5弱の幅広に形成され,これが甲5-1公報及び甲5-2公報記載の公知意匠にはない美感ないし美的印象を与え,意匠的効果をもたらし,さらに,差異点(2)及び差異点(3)に係る形態についても,本件意匠は,各脚部の上下面の先端部から基部にかけて脚部上面の長方形の凹溝と略同様の長方形の深い凹溝が形成され,平面視においては,左右の脚部上面の長方形の凹溝と長方形の深い凹溝が,また,底面視においては,左右の脚部の小型の長方形の開口部分と長方形の深い凹溝が,それぞれ二等辺三角形状に配列された外観を呈し,これが引用意匠,甲6公報記載の意匠及び甲7公報記載の意匠にはない美感ないし美的印象を与え,意匠的効果をもたらし,他方,引用意匠の平面視で基部から前方へV字状の隙間をもって左右二股状に延びる略四角柱状の脚部は,引用意匠の顕著な特徴を構成するものであるから,両意匠は,意匠全体として異なった美感ないし美的印象をもたらすものと認められる。これに対し,両意匠の「形態全体についての共通点」に係る形態は,コネクタハウジングの形態としてごくありふれたものであり,共通点に係る部分が左右対称に形成されることも当然のことであって,いずれも看者の注意をひくものとはいえず,また,両意匠の共通点に係る「後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し,細長い突出部よりも後端の突出部が更に突出している態様」及び「下面は先端寄りにも段差を形成している」点は,公知の形態とは認められないが,特段の美的特徴を有するものとも認められず,いずれも上記差異点の類否判断に及ぼす効果をしのぐものとまでは認められない。
したがって,本件意匠と引用意匠は,看者に全体として異なった美感ないし美的印象をもたらす非類似の意匠というべきであるから,差異点よりも共通点の与える影響が支配的であるとして,両意匠が意匠全体として互いに類似するとした審決の判断は誤りであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
2 以上のとおり,原告の取消事由の主張は理由があるから,審決は違法として取消しを免れない。
よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴
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