元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|---|
元本PDF | 裁判所収録の別紙1PDFを見る |
元本PDF | 裁判所収録の別紙2PDFを見る |
元本PDF | 裁判所収録の別紙3PDFを見る |
事件 |
令和
3年
(ネ)
10078号
意匠権侵害差止等請求控訴事件
|
---|---|
令和4年3月22日判決言渡 令和3年(ネ)第10078号 意匠権侵害差止等請求控訴事件 (原審 東京地方裁判所令和2年(ワ)第11491号) 口頭弁論終結日 令和4年1月25日 5判決 控訴人プラスワン株式会社 同訴訟代理人弁護士 小林幸夫 10 同河部康弘 同 神田秀斗 被控訴人 株式会社ショーエイコーポレーション 15 同訴訟代理人弁護士 白木裕一 同補佐人弁理士 藤本昇 同 野村慎一 同 石井隆明 |
|
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/03/22 |
権利種別 | 意匠権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
20 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
---|---|
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。 25 2 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の製品を製造し,販売し,輸入し, 又は販売の申出をしてはならない。 3 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の製品及び半製品(原判決別紙被 告意匠(原告)目録@又はA記載の構成態様を具備しているが製品として完成 するに至らないもの)を廃棄せよ。 4 被控訴人は,控訴人に対し,2200万円及びこれに対する令和2年7月7 5 日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 |
|
事案の概要等(略称は原判決のそれに従う。)
1 本件は,意匠に係る物品を「排水口用ゴミ受け」とする原告意匠権(意匠登 録第1651754号)を有する控訴人が,被控訴人に対し,被告製品の製造, 販売,輸入及び販売の申出が原告意匠権を侵害する旨を主張して,意匠法3710 条1項及び2項に基づき,被告製品の製造,販売,輸入及び販売の申出の差止 め及び廃棄(被告製品の半製品の廃棄を含む。)を求めるとともに,民法70 9条に基づき,損害賠償金2200万円及びこれに対する令和2年7月7日 (訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延 損害金の支払を求める事案である。 15 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却する原判決をした。控訴人は,これを 不服として控訴した。 2 前提事実及び争点は,原判決「事実及び理由」「第2」の2及び3(原判決 2頁16行目ないし4頁8行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 |
|
当事者の主張
20 1 争点に関する当事者の主張は,後記2のとおり当審における新たな主張を付 加するほかは,原判決「事実及び理由」「第3」(原判決4頁9行目ないし2 2頁8行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における新たな主張 〔控訴人の主張〕25 被告製品を開発・製造して被控訴人に販売したダイセンが,被控訴人の主張 のとおり,平成31年4月には被告製品の意匠を創作又は知得していたとして も,下記?ないし?の事実によれば,ダイセンは,当該時点において原告意匠 の存在について悪意であった。また,仮に悪意でなかったとしても,悪意で創 作した者から知得したというべきであるから,ダイセンに先使用権は成立しな い。 5 ? 控訴人は,その親会社を通じて,中国の協力会社(工場)との間で,平成 30年11月から平成31年3月までの間に,洗面台用ごみ受けの新商品に 係る打合せを行っていた。その打合せ資料(甲19,22)には,新商品の 意匠として次の図面A及びBが表示されていた(以下,併せて「本件出願前 意匠」という。)。 10 (図面A) (図面B)15 ? 本件出願前意匠は原告意匠に類似し,原告意匠は被告製品の意匠に類似す る。 ? ダイセンが,Wuxi社から被告製品の意匠の開示を受けたのは,平成3 1年4月である。 20 ? Wuxi社も中国の会社である。 ? 上記のようなきわめて近接した時期において,しかも洗面台用ごみ受けと いう限定された分野において,原告意匠及び本件出願前意匠と類似する被告 製品の意匠が突然製作・開発されることは偶然では考え難いから,少なくと も,Wuxi社は,本件出願前意匠の存在について悪意であったと考えられ25 る。そして,ダイセンは,Wuxi社との打合せにおいて,本件出願前意匠 と同一又は類似する意匠について開示を受け,悪意となった可能性が極めて 高い。 〔被控訴人の主張〕 本件出願前意匠が原告意匠と類似するとの点は争う。また,そもそも,ダイ セン及びWuxi社は,本件出願前意匠を全く知らないし,同社らの悪意を裏 5 付ける資料は何一つ存在しない。 |
|
当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は, 後記2のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」「第4」の1(原判決 22頁10行目ないし31頁19行目)に記載のとおりであるから,これを引10 用する。 2 当審における控訴人の新たな主張について ? 控訴人は,ダイセン又はWuxi社が本件出願前意匠の存在について悪意 であったから,本件出願前意匠に類似する原告意匠についても悪意であった といえ,原告意匠と類似する被告製品の意匠についてダイセンに先使用権は15 成立しない旨主張する。 しかしながら,当時ダイセンの営業部長であったCの陳述書(乙38)に よれば,ダイセン及びWuxi社は,被告製品の開発に当たって,本件出願 前意匠に接する機会はなく,既に市販されていた洗面台用ごみ受けの構成 (原判決別紙公知意匠目録1ないし3)を参考としつつ,打合せの最中に,20 つまみ部分があったほうが取り外しやすいという意見が出たことから,取り 外しの便宜のためにつまみ部を付加することにしたことが認められる。かか る開発の経緯は,排水口のごみ受けの分野全般において,円状のフィルタの 周囲につまみ部を設ける構成が珍しくなかったこと(同目録4〜13)に照 らしても,何ら不自然ではない。 25 他方,前記第3の2?の控訴人の主張が事実であったとしても,被告製品 の開発の過程でWuxi社が本件出願前意匠に接し得たことをうかがわせる 事情(例えば,Wuxi社と控訴人の中国の協力会社との間に人的つながり や地理的近接性があったこと等)は,本件証拠上全くうかがわれない。控訴 人の主張は,ほぼ同じ時期に,同じ中国で製品の開発が行われていたという だけの事実に基づいて,Wuxi社は本件出願前意匠の存在を知ったはずだ 5 とするものであり,到底採用することができない。 ? 以上によれば,本件出願前意匠と原告意匠との同一性や,原告意匠と被告 製品の意匠との類似性を問うまでもなく,ダイセン又はWuxi社は,意匠 登録出願に係る意匠(原告意匠)「を知らないで」被告製品の意匠を創作し たと認められるから,この点において先使用権の成立要件は充足されている。 10 第5 結論 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし て,主文のとおり判決する。 |