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事件 |
令和
3年
(ネ)
10075号
意匠権侵害差止等請求控訴事件
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令和4年3月24日判決言渡 令和3年(ネ)第10075号 意匠権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方 裁判所令和2年(ワ)第14629号) 口頭弁論終結日 令和4年1月25日 5判決 控訴人クレア株式会社 同訴訟代理人弁護士 小林幸夫 10 同河部康弘 同 神田秀斗 被控訴人株式会社ミツキ 15 同訴訟代理人弁護士 平山博史 同 都筑康一 同 内田真央 同補佐人弁理士 森本聡 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/03/24 |
権利種別 | 意匠権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
20 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。 25 2 被控訴人は,別紙被告製品目録記載の製品を製造し,販売し,輸入し又は販 売の申出をしてはならない。 1 3 被控訴人は,別紙被告製品目録記載の製品及び半製品(別紙被告意匠目録記 載の構成態様を具備しているが製品として完成するに至らないもの)を廃棄せ よ。 4 被控訴人は,控訴人に対し,726万円及びこれに対する令和2年5月31 5 日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要等
1 事案の概要 (1) 本件は,意匠に係る物品をヘアキャッチャーとする意匠権(意匠登録第1 620963号。以下「本件意匠権」といい,本件意匠権に係る意匠を「本10 件意匠」という。)を有する控訴人が,被控訴人による別紙被告製品目録記載 の製品(以下「被告製品」という。)の販売等が本件意匠権を侵害すると主張 して,被控訴人に対し,意匠法37条1項に基づく被告製品の販売等の差止 め,同条2項に基づく被告製品及びその半製品の廃棄並びに民法709条に 基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。 15 (2) 原審は,被告製品の意匠は本件意匠に類似しているとはいえないとして, 控訴人の請求をいずれも棄却した。これを不服として,控訴人は,本件控訴 を提起した。 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補20 正し,後記3のとおり当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実 及び理由」の第2の2ないし4(原判決2頁14行目ないし9頁17行目)に 記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決6頁8行目の「及び時」を「及び9時」に改める。 (2) 原判決6頁16行目の「平成30年1月22日」 「令和2年6月12日」 を25 に改める。 (3) 原判決6頁24行目の「乙」の後に「8,11,」を加える。 2 (4) 原判決8頁13行目及び14行目の「過流生成部」をいずれも「渦流生成 部」に改める。 3 当審における補充主張(いずれも争点1(被告意匠は本件意匠と類似するか) に関するもの) 5 〔控訴人の主張〕 (1) 本件意匠の要部認定について ア 甲20及び21のヘアキャッチャーには,いずれも堰部が設けられてお り,かつ,当該堰部が垂直方向に突出している。また,公知意匠である乙 3ないし6のヘアキャッチャーにも,水の流れを調整する堰部が設けられ10 ている。加えて,これらの公知意匠においては,堰部が形成されているこ とによって渦流生成部が分割され,斜面体が形成されている。そうすると, これらの公知意匠も,斜面体と堰部それぞれによって二重の明確な渦状模 様を生じさせるという印象を与えるものである。 したがって,ヘアキャッチャーに接した需要者において,堰部の存在に15 着目するということはあり得ず,原審は,着目すべき要部を誤ったもので ある。 イ 本件意匠の実施品である控訴人の製品(以下「原告製品」という。)の需 要者の各種レビュー(甲22の1ないし15)には,渦流生成部を形成す る斜面体が段差構造のみによって境界を形成するものであるという点に20 着目したものは全く見当たらず,かえって,渦流生成部を形成する堰部又 は構造体がフランジ部よりも上方に張り出していないという点に着目し, 凹凸が少ない点を評価するものが複数存在する。 したがって,需要者は,本件意匠について,段差構造のみで境界を形成 しているという点を要部として認識していないといえる。 25 ウ 被告製品の需要者の各種レビュー(甲23の1ないし5)にも,堰部に 着目したものは一切見当たらない。また,被告製品の販売元も,顧客に対 3 して堰部に着目した訴求は行っていない。 したがって,需要者は,被告製品について,堰部には一切着目していな いといえる。なお,甲23の5のレビューにおいては, 「セットした姿もす っきり」という表題の下で, 「見た目もシンプルですっきりとしています。」 5 と評価されているが,これは,需要者が被告製品から受ける印象が,上記 イのとおり凹凸のない原告製品から受ける印象と共通していることを示 している。 エ 以上によれば,ヘアキャッチャーについて,堰部の有無は要部とはなり 得ない。 10 (2) 類否判断について ア 原審は,乙16の公知意匠のみから,需要者は渦流生成部を区分けする 構造体がフランジ部よりも上方に張り出していない形態には全く着目し ないと判断したが,飽くまでも公知意匠は,需要者が着目すべき要部を特 定する判断資料でしかない。 15 翻って,甲22の1等の原告製品のレビューにおいては,凹凸がないと いう点に着目されており,これは,前記のとおり,構造体がフランジ部よ りも上方に張り出していない点を強調するものと考えられる。そうすると, 本件意匠及び被告意匠のいずれについても,斜面体(の堰部)がフランジ 部よりも上方に張り出していない結果として,凹凸がないという評価がさ20 れているものといえる。 イ また,被告意匠における堰部は,各公知意匠と比較しても,突出の程度 も面積も小さいから,当該堰部を重視することはできない。 ウ 以上によれば,本件意匠及び被告意匠のいずれについても,フランジ部 よりも上方に張り出す凹凸がない結果として,需要者は平板な印象を受け25 るものであり,美感が共通するものである。 〔被控訴人の主張〕 4 (1) 本件意匠の要部認定について ア 公知意匠に係る控訴人の主張は,公知意匠を参酌して被告意匠の要部を 特定しようとするものであるが,公知意匠を参酌することで把握される意 匠の要部とは,登録意匠の要部であって被疑侵害意匠の要部ではないから, 5 失当である。 イ ブログ記事等のレビューは,誰がどのような意図で書いたものかが不明 であるから,その内容は一般需要者の客観的な意見であるとは全くいえな いことなどからすれば,ブログ記事等に基づいて本件意匠の要部を特定し ようとする控訴人の主張は,失当である。 10 (2) 類否判断について ア 意匠の類否判断において,公知意匠に係る部分は,創作の実質的価値が 低いために当該部分が要部から除外される。そして,渦流生成部を区分け する構造体がフランジ部よりも上部に張り出していない形状は,乙16の 公知意匠に開示されているのであるから,本件意匠及び被告意匠の類否判15 断に当たって,当該形状が共通することを大きく取り扱うことは相当でな い。 イ 原審は,本件意匠及び被告意匠の斜面体の形状の差異は大きなものとは いえないと判断したが,本件意匠においては,斜面体を区画する3本の区 画線のうち2本が直線状であるのに対し,被告意匠においては,3本の区20 画線の全てが湾曲線で区画されているから,両意匠の斜面体の形状は全く 異なるものであり,また,当該差異が類否判断に与える影響は非常に大き いというべきである。 |
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当裁判所の判断
当裁判所も,原審と同様に,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断25 する。 その理由は,次のとおりである。 5 1 争点1(被告意匠は本件意匠と類似するか)について (1) 類否判断の基準 意匠権者は,業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利 を専有しているところ(意匠法23条本文) 登録意匠とそれ以外の意匠が類 , 5 似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて 行うものとされており(意匠法24条2項),この類否の判断は,登録意匠に 係る物品の性質,用途,使用態様を考慮し,更には公知意匠にはない新規な 創作部分の存否等を参酌して,当該意匠に係る物品の看者となる需要者の視 覚を通じて最も注意を惹きやすい部分(意匠の要部)を把握し,この部分を10 中心に,両意匠の構成を全体的に観察・対比して認定された共通点と差異点 を総合して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かによって判断する のが相当である。 以上を前提に,本件意匠及び被告意匠が類似するといえるか否かについて 検討する。 15 (2) 本件意匠及び被告意匠の各構成 ア 本件意匠の構成は,前提事実(3) 原判決3頁1行目ないし4頁13行目) ( のとおりである(別紙本件意匠及び別紙本件意匠説明図も参照)。 イ 被告意匠の構成は,前提事実(5)(原判決4頁20行目ないし6頁15行 目)のとおりである(別紙被告意匠目録及び別紙被告意匠説明図も参照)。 20 (3) 本件意匠の要部認定 ア 意匠に係る物品の性質,用途,使用態様 本件意匠に係る物品はヘアキャッチャーであるところ,ヘアキャッチャ ーは,排水内の毛髪等を捕捉するために,浴室の排水口等の上に設置され て使用される生活用品である。 25 そうすると,本件意匠の需要者は,個人消費者であると認められる。そ して,個人消費者がヘアキャッチャーを観察する場合には,排水口の上に 6 設置された状態で,上方又は斜め上方から視認するのが通常であるといえ るから,本件意匠に係る物品の需要者は,毛髪等を捕捉するための渦流生 成部及び捕捉部の形状等に注意を惹かれやすいといえる。 イ 公知意匠 5 (ア) 本件意匠の出願当時において,次の公知意匠が存在したことが認め られる。 a 意匠登録第1554062号公報(乙3(各枝番号を含む。以下同 じ)。平成28年7月19日公報発行)に記載された意匠(以下「公知 意匠1」という。)10 b 意匠登録第1570084号公報(乙4。平成29年2月20日公 報発行)に記載された意匠(以下「公知意匠2」という。) c 意匠登録第1531898号公報(乙5。平成27年8月24日公 報発行)に記載された意匠(以下「公知意匠3」という。) d 意匠登録第1544259号公報(乙6。平成28年2月22日公15 報発行)に記載された意匠(以下「公知意匠4」という。) e 公開実用昭和51-105866号(乙16。昭和51年8月24 日公開)に記載された意匠(以下「公知意匠5」という。) (イ) 公知意匠1ないし4は,いずれもヘアキャッチャーに係る意匠であ り,次のとおりの構成を有する。 20 a 平面視において全体が円形状かつ有底の灰皿状に形成されており, その中心に位置する円形状の捕捉部と,その外側に形成されて捕捉部 に向かう水流を生成する渦流生成部と,その外側に形成されて排水口 への装着を担う円環状のフランジ部とで構成されており,捕捉部は, 平面視において円形上に形成された底壁と,底壁の外周縁から上方に25 伸びる筒壁とからなり,上方開口を有する椀状に形成され,渦流生成 部は,捕捉部の上端外縁から水平外方向に向かって張り出し形成され, 7 フランジ部は,渦流生成部の上端外縁から水平外方向に向かって張り 出し形成されている。 b 渦流生成部に,捕捉部に向かう渦状模様が現出されている。 c 捕捉部と渦流生成部に多数個の排水孔が形成されている。 5 d 正面視において,捕捉部がおおむね隅丸矩形状である(公知意匠1 及び2のみ)。 e 渦流生成部が,捕捉部を中心とする等角度位置に配置された複数(公 知意匠1が3個ずつ,公知意匠2が2個ずつ,公知意匠3が4個ずつ, 公知意匠4が2個ずつ)の斜面体及び渦状壁で構成されており,平面10 視において,渦状壁が斜面体に類する面積を占め,正面視において, 渦状壁の上部がフランジ部よりも上方に張り出している。 f 各斜面体が,隣接して形成された渦状壁によって区分けされている。 (ウ) 公知意匠5は,排水口に装着するための排水誘導具の意匠である。 この排水誘導具は,中くぼみ状の円形皿形であり,その表面には,外15 縁から中心に向かい,かつ,中心には達しない複数のらせん状山形が突 設形成されており,これらのらせん状山形以外の谷部分には,複数の流 水孔が穿設されている。また,正面視において,各らせん状山形の上部 が外縁部よりも上方には張り出していない(乙16の第1図及び第2図)。 ウ 本件意匠の要部20 (ア) 上記ア及びイを基に,本件意匠の要部について検討するに,上記ア のとおり,本件意匠に係る物品の性質,用途,使用態様を考慮すると, 本件意匠の構成のうち需要者の注意を惹きやすい部分は,渦流生成部及 び捕捉部の形状等であるといえる。 (イ) そして,上記イの各公知意匠において開示されている構成を考慮す25 ると,本件意匠の渦流生成部及び捕捉部の形状等のうち,公知意匠には ない新規な創作部分であるといえるのは,渦流生成部が,斜面体のみで 8 構成され,各斜面体の境界を区切る構造体がなく,段差構造のみによっ て境界が形成されている形状であること(本件意匠の具体的構成態様@ 及びAに係る部分)といえる。 そうすると,需要者が本件意匠の実施品を観察する場合には,上記の 5 形状に着目することになるといえるところ,このような形状は,各斜面 体が,反時計回り及び時計回りいずれに向かっても漸次幅寸法が小さく なる二つの曲線及び一つの概ね直線で囲まれた形状であり,捕捉部を中 心として等角度位置に計6個配置されていることとも相まって,需要者 に対し,渦流生成部において水が渦を巻くように整然と流れるような構10 造であるという印象を与えつつ,渦流生成部に斜面体以外の構造体が設 けられていないことにより,全体として凹凸が少なくシンプルですっき りとした印象を与えるものとして,需要者の注意を特に惹きやすい形状 であるといえる。 (ウ) 以上によれば,本件意匠の構成のうち,渦流生成部が,斜面体のみ15 で構成され,各斜面体を区切る渦流壁等の構造体がなく,段差構造のみ によって各斜面体の境界が形成されている形状は,需要者の最も注意を 惹きやすい部分であるといえ,この部分が本件意匠の要部であると認め られる。 (4) 対比20 ア 共通点 本件意匠及び被告意匠は,基本的構成態様@ないしBが共通するほか, 次の各点において,具体的構成態様が共通する。 @ 渦流生成部が捕捉部を中心とする等角度位置に配置された複数の斜 面体で構成されている点25 A 各斜面体が反時計回り及び時計回りいずれに向かっても漸次幅寸法 が小さくなる三つの線で囲まれた形状である点 9 B フランジ部の外周縁の12時,3時,6時及び9時の位置に略円弧状 の凹み部が形成されている点 C フランジ部の12時及び6時の位置に爪が形成されている点 D フランジ部の裏面に易破断用の薄肉部が形成されている点 5 イ 差異点 本件意匠及び被告意匠においては,次の各点において,具体的構成態様 に差異がある。 @ 被告意匠においては各斜面体の反時計方向側の外周部に堰部が形成 されているのに対し,本件意匠には堰部が存在しない点10 A 本件意匠の斜面体の数が6個であるのに対し,被告意匠の斜面体の数 は4個である点 B 各斜面体の形状 C 被告意匠においては捕捉部の中心部に整流体が形成されているのに 対し,本件意匠には整流体が存在しない点15 D 被告意匠においてはピンがフランジ部の裏面の1時,4時,7時及び 10時の位置に下方に向かって突設されているのに対し,本件意匠には ピンが存在しない点 E 本件意匠のフランジ部の1時,4時,7時及び10時の位置には「コ」 字状の切り欠きが形成されているのに対し,被告意匠には切り欠きが存20 在しない点 ウ 共通点及び差異点の検討 (ア) 前記(3)及び上記イで検討したところによれば,本件意匠及び被告 意匠においては,被告意匠には各斜面体の反時計方向側の外周部に堰部 が形成されているのに対し,本件意匠には堰部が存在しない点に差異が25 あるところ,これは,本件意匠の要部(渦流生成部が,斜面体のみで構 成され,各斜面体を区切る渦流壁等の構造体がなく,段差構造のみによ 10 って各斜面体の境界が形成されている形状)における差異点であるとい える。 そして,前記(3)で検討したとおり,本件意匠の要部である上記形状は, 各斜面体が,反時計回り及び時計回りいずれに向かっても漸次幅寸法が 5 小さくなる二つの曲線及び一つのおおむね直線で囲まれた形状であり, 捕捉部を中心として等角度位置に計6個配置されていることとも相まっ て,需要者に対し,渦流生成部において水が渦を巻くように整然と流れ るような構造であるという印象を与えつつ,渦流生成部に斜面体以外の 構造体が設けられていないことにより,全体として凹凸が少なくシンプ10 ルですっきりとした印象を与えるものといえる。 これに対し,被告意匠において各斜面体の反時計方向側の外周部に形 成されている堰部は,別紙被告意匠目録及び別紙被告意匠説明図の平面 図及び斜視図のとおり,需要者が上方又は斜め上方から観察した場合に おいて,容易に看取される程度の高さや幅を有するものであり,各斜面15 体を区切るために独立して設けられた構造体であると認識される形状及 び大きさであるといえる上,堰部が斜面体と共に明確な渦状模様を顕出 させることにより,需要者に対し,斜面体に何らの構造体が設けられて いない場合と比較して,より勢いのある水流が生じる構造であるという 印象を与えるものといえる。 20 以上の事情を考慮すると,本件意匠及び被告意匠における上記差異点 は,需要者に対して大きく異なる美感を生じさせるものというべきであ る。 (イ) そして,上記アのとおり,本件意匠及び被告意匠は,基本的構成態 様@ないしBが共通するほか,上記アの@ないしDの点において具体的25 構成態様が共通するものの,前記(3)イによれば,これらは公知意匠にお いて開示されている構成であるか,又は需要者が観察する際に特に着目 11 しない部分であるといえるから,いずれも需要者の注意を惹きやすい部 分における共通点ではないというべきであるばかりか,上記イのとおり, 具体的構成態様において差異点AないしEも存するところである。 そうすると,本件意匠及び被告意匠の全体を観察したとしても,両者 5 は要部において顕著な相違があり,上記共通点を考慮しても,全体とし て差異点が共通点を凌駕しており,両意匠が視覚を通じて起こさせる全 体としての美感を異にするものであるというべきである。 (ウ) したがって,本件意匠及び被告意匠は,全体として美感を共通にす るものとはいえない。 10 エ 小括 以上検討したところによれば,被告意匠は,本件意匠と類似するものと は認められない。 (5) 控訴人の主張に対する判断 ア 控訴人は,本件意匠及び被告意匠は堰部の有無にかかわらず内側に向か15 う渦の流れという美感が共通するから,堰部の有無は美感に係る判断に影 響しない旨主張する(原審における控訴人の主張)。 しかしながら,前記(3)イのとおり,捕捉部に向かう渦状模様が現出され ている渦流生成部の形状については公知意匠(公知意匠1ないし4)が存 在することからすれば,そのような形状は,需要者の注意を惹きやすい部20 分であるとはいえないから,本件意匠の要部であると認めることはできな い。そして,本件意匠については,渦流生成部が,斜面体のみで構成され, 各斜面体を区切る渦流壁等の構造体がなく,段差構造のみによって各斜面 体の境界が形成されている形状を要部として認定すべきであること,本件 意匠及び被告意匠における堰部の有無の差異は,上記要部に係る差異点で25 あり,需要者に対して大きく異なる美感を生じさせるものであることは, 前記のとおりである。 12 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 イ 控訴人は,公知意匠1ないし4はいずれも正面視において渦流壁がフラ ンジ部よりも上方に張り出しているものであるのに対し,本件意匠及び被 告意匠はいずれもこのような形状ではなく,全体的に平面的な美感を共通 5 にする旨主張する(原審における控訴人の主張)。 しかしながら,前記(3)イ(ウ)によれば,渦流生成部を区分けする構造体 がフランジ部よりも上部に張り出していない形状については,公知意匠 (公知意匠5)が存在することからすれば,そのような形状は,需要者の 注意を惹きやすい部分であるとはいえないから,本件意匠の要部であると10 認めることはできない。そして,本件意匠及び被告意匠が上記のような形 状を共通にすることを考慮しても,両意匠が全体として美感を共通にする ものとはいえないことは,前記のとおりである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ 控訴人は,本件意匠の要部認定に関し,各公知意匠においては,斜面体15 と堰部それぞれによって二重の明確な渦状模様を生じさせるという印象 を与えるから,ヘアキャッチャーに接した需要者において,堰部の存在に 着目するということはあり得ない旨主張する(当審における控訴人の補充 主張(1)ア)。 しかしながら,前記(3)ウで検討したところに照らせば,斜面体に堰部が20 存在する公知意匠が存在するからといって,そもそも斜面体に堰部その他 の構造体が設けられていない本件意匠の要部の認定に係る前記の判断が 左右されるものではないというべきである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 エ 控訴人は,本件意匠の要部認定に関し,原告製品及び被告製品に係るブ25 ログ等におけるレビューの内容を基に,需要者は渦流生成部を形成する堰 部又は構造体がフランジ部よりも上方にないという点に着目するもので 13 あり,堰部の有無には着目しない旨主張する(当審における控訴人の補充 主張(1)イ及びウ)。 しかしながら,前記(3)イ(ウ)で検討したとおり,渦流生成部を区分けす る構造体がフランジ部よりも上方に張り出していない形状については公 5 知意匠(公知意匠5)が存在することからすれば,そのような形状は,需 要者の注意を惹きやすい部分であるとはいえないから,本件意匠の要部で あると認めることはできない上,ブログ等におけるレビューの内容のみを もって,本件意匠の要部の認定に係る前記の判断が左右されるものではな いというべきである。 10 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 なお,控訴人は,意匠の類否判断に関しても同様の主張をするが(当審 における控訴人の補充主張(2)ア),採用することができない。 オ 控訴人は,意匠の類否判断に関し,被告意匠における堰部は突出の程度 も面積も小さいから,当該堰部を重視することはできない旨主張する(当15 審における控訴人の補充主張(2)イ)。 しかしながら,上記(4)ウ(ア)で検討したとおり,被告意匠において各斜 面体の反時計方向側の外周部に形成されている堰部は,需要者が上方又は 斜め上方から観察した場合において,容易に看取される程度の高さや幅を 有するものであり,各斜面体を区切るために独立して設けられた構造体で20 あると認識される形状及び大きさであるといえるから,被告意匠における 堰部の突出の程度や面積について,類否判断において重視することができ ない程度に小さなものであるということはできない。そして,本件意匠及 び被告意匠における堰部の有無の差異は,上記要部に係る差異点であり, 需要者に対して大きく異なる美感を生じさせるものであることは,前記の25 とおりである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 14 2 結論 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はい ずれも棄却すべきであるから,これと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決 5 する。 |
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追加 | |
10裁判長裁判官東海林保15裁判官中平健20裁判官都野道紀15(別紙)被告製品目録5「おふろのまとまる排水口カバー」と称するヘアキャッチャー16(別紙)本件意匠【斜視図】51015【下方から見た参考斜視図】202517【正面図】510【左側面図】152018【平面図】510【底面図】15202519【A-A断面図】520(別紙)本件意匠説明図【平面図】【正面図】21【捕捉部】5【平面図】(拡大)22【斜面体】【斜視図】23【底面図】24(別紙)被告意匠目録【斜視図】51015【下方から見た参考斜視図】202525【正面図】51015【左側面図】202526【平面図】51015【底面図】2027(別紙)被告意匠説明図【平面図】【正面図】28【捕捉部】【平面図】(拡大)29【斜面体】【斜視図】30【底面図】531 |