• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ワ14355意匠権侵害差止等請求事件 判例 意匠
平成16ワ6262実用新案権侵害差止等請求事件 判例 意匠
平成16ネ2599意匠権に基づく差止請求権不存在確認請求控訴事件 判例 意匠
平成18行ケ10136審決取消請求事件 判例 意匠
関連ワード 意匠の実施 /  形状 /  3条1項3号 /  類似の意匠 /  意匠の類似 /  先使用(29条) /  先出願(29条の2) /  登録意匠 /  損害賠償 /  通常実施権 /  類似性(類否判断) /  損害額 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
事件 平成 16年 (ワ) 8657号 損害賠償請求事件
原告 株式会社大塚製薬工場
訴訟代理人弁護士 三山峻司西迫文夫井上周一
補佐人弁理士 藤本昇松井宏記
被告 ニプロ株式会社
被告 ニプロファーマ株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士 小野昌延滝井朋子
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2005/11/24
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求の趣旨
1 被告らは,原告に対し,連帯して3億6915万円及びこれに対する平成16年8月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
事案の概要
本件は,輸液バッグに関する後記意匠権を有する原告が,被告らが製造販売する輸液バッグの意匠が原告の前記意匠権に係る登録意匠に類似し,その製造販売は前記意匠権を侵害するとして,被告らに対し,意匠権侵害に係る共同不法行為に基づき,連帯して平成13年3月から平成16年6月までに原告が被った3億6915万円の損害賠償及びこれに対する平成16年8月13日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
1 前提事実(争いがないか弁論の全趣旨により認められる。) (1) 当事者 原告は,医薬品,医薬部外品等の製造販売等を業とする株式会社である。
被告ニプロ株式会社(以下「被告ニプロ」という。)は,医薬品,医薬部外品等の製造,販売及び輸出入等を業とする株式会社である。
被告ニプロファーマ株式会社(旧商号:菱山製薬株式会社。以下「被告ニプロファーマ」という。)は,医薬品,試薬,医薬部外品等の製造販売及び輸出入等を業とする株式会社である。
(2) 原告の意匠権 原告は,別紙意匠目録記載の意匠権を有している(以下,同目録記載の意匠権を「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件登録意匠」という。)。
(3) 被告らによる輸液バッグの製造販売 被告らは,共同して別紙イ号図面記載の輸液バッグ(商品名「フルマリンキット静注用1g」。以下,別紙イ号図面記載の輸液バッグを「イ号製品」といい,その意匠を「イ号意匠」という。)を製造販売していた。
(4) イ号意匠と本件登録意匠の類似性 本件登録意匠の要部は,製剤収納側の袋体と溶解液収納側の袋体の境界部の中央の帯状の部分とその両側に連続する溶解液収納側の袋体の上部両側に形成された下すぼまりのシール部分及び製剤収納側の袋体下部両側に形成された上すぼまりのシール部分(いわゆるダンベル形状のシール部)であり,イ号意匠は本件登録意匠に類似する。
2 争点 (1) 先使用等による通常実施権の成否 ア 先使用による通常実施権(意匠法29条) イ 先出願による通常実施権(意匠法29条の2) (2) 損害額 これらのうち,主たる争点は,先使用による通常実施権の成否である。
主たる争点に関する当事者の主張
【被告らの主張】 被告らは,本件登録意匠を知らないで,遅くとも平成11年5月10日までに,検乙第7号証の製品を事業として441個製造し,同日,これを有用性試験用に塩野義製薬株式会社(以下「塩野義」という。)に譲渡した。その後,被告らは,平成12年5月からはイ号製品を事業として製造し,平成13年1月以降,これを販売している。
上記検乙第7号証に係る意匠はイ号意匠と酷似しており,類似の範囲に属する。
したがって,被告らは,イ号意匠について,先使用による通常実施権を有する。
【原告の主張】 被告らの主張は争う。
被告らが先使用の証拠として本件で提出するものは,@本件登録意匠の要部であるいわゆるダンベル形状のシール部が示されていないものである,A同形状が示されている場合には,その作成過程が不自然であったり,提出経過が不自然であるなどの問題があり,被告ら主張の事実を証するものではない。
当裁判所の判断
1 事実経過 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 被告ニプロは,分離型のダブルバッグタイプの輸液バッグ(同被告の社内では,「PLWキット」と呼んでいる。以下,これを「PLW」等ということもある。)について,平成7年に日本,アメリカ,欧州等に特許出願をした。(甲46,47) (2) 被告ニプロは,平成8年3月ころ,塩野義に対し,粉末抗生物質の収納部を有する袋体と溶解液の収納部を有する袋体を弱シール部で接続したダブルバッグタイプの輸液バッグの提案を行い,その後,塩野義が製造販売していた抗生剤フルマリン静注用1gと生理食塩水100mlを一体化したフルマリンキット静注用1gを共同開発することとした。
(3) 被告ニプロは,平成8年4月24日,分離型のダブルバッグタイプの輸液バッグの意匠について意匠登録出願をし,その後(平成10年5月22日)に意匠登録を受けた。(乙29) (4) 平成11年の4月22日及び5月2日に,被告ニプロファーマからPLW溶解液(生理食塩水)及びフルマリンキット静注用1gの試製指図がなされ(乙30の1,2),これを受けて被告ニプロの草津医薬研究所(以下「被告研究所」という。)において,平成11年5月6日から同月8日の間に有用性試験用の輸液バッグが製造され,不良品を含めて441バッグが完成した(乙4,26の8)。
(5) 被告ニプロは,平成11年5月10日,関連会社である被告ニプロファーマを通じて,フルマリンキット静注用1gの有用性試験用サンプル441バッグを塩野義に納入した(乙31)。
(6) 平成11年6月1日,被告ら及び塩野義は,フルマリンキット静注用1gについて共同開発契約を締結した(共同開発契約書は乙57)。
(7) 塩野義は,納入された有用性試験用サンプルに包装作業を行い,平成11年6月15日ころ,そのうち250バッグを医薬開発部に入庫した(乙58ないし60,61の1及び2)。
(8) 塩野義は,A大学病院薬剤部のB外1名にフルマリンキット静注用1gの有用性試験の実施を委託し,上記Bらにより,平成11年6月26日から同年7月13日までの間,前記サンプルを用いた有用性試験が行われた(乙32)。
(9) 被告ニプロからタックラベラーを受注していた株式会社岩田レーベル(以下「岩田レーベル」という。)は,平成12年3月8日と9日の両日にわたって,被告ニプロから提供を受けたフルマリンキット静注用1gのサンプルを用いてタックラベラー等の検収運転を実施した(乙17の1ないし3,18の1ないし6)。
(10) 被告ニプロは,平成12年3月30日,検乙第7号証と同一の分離型のダブルバッグタイプの輸液バッグに係る意匠を出願意匠として意匠登録出願をしたが,前記(3)の意匠と類似する(意匠法3条1項3号該当)として平成13年1月30日に拒絶され,その後,拒絶査定が確定した(乙6)。
(11) 平成12年9月の27日と28日の両日にわたって,三重テレビエンタープライズによって,被告ニプロファーマ伊勢工場におけるPLW製造ラインの稼働状況等の撮影が行われた(検乙5及び6)。
(12) 塩野義は,平成13年1月末に,イ号製品であるフルマリンキット静注用1gの販売を開始した。
2 意匠法29条によるいわゆる先使用による通常実施権が認められるためには,意匠登録出願の際に,出願に係る意匠と同一又は類似の意匠を完成し,又は少なくともそのような意匠が完成に近い状態にあり,それについて意匠の実施である事業をし,又は事業の準備をしている必要があるところ,検乙第7号証に係る意匠はイ号意匠と実質的に同一といって差支えないものであることが認められる。
3 そこで,検乙第7号証が,前記認定にかかる事実経過において,塩野義に納入されたフルマリンキット静注用1gの有用性試験用サンプル441バッグのうち,塩野義の医薬開発部に入庫された250バッグの一つと認められるか否かについて検討する。
(1) 被告らが先使用に関連して提出した証拠のうち,本件登録意匠の出願前に作成されたとされる図面で,本件登録意匠の要部と認められるいわゆるダンベル形状のシール部を備える意匠に係るものは,乙第8号証(平成8年2月8日付けの三菱重工〔名古屋機器製作所〕の押印のある製品外形図)のみである。
この図面には,幅5oの弱シール部と思われる帯状の部分とその両側に幅広で略四角形状の強シール部と思われる部分が表現されている。そして,甲第13号証及び弁論の全趣旨によれば,上記図面は,ダブルバッグタイプの輸液バッグの製造機械に関し,機械メーカーである三菱重工との間の見積もり段階で作成されたものであること,上記図面は,上記押印等からみて,三菱重工によって作成されたものであることがうかがわれるが,原告と三菱重工との取引自体は,価格面等の折り合いが付かなかったために成立せず,したがって,現実に,同図面に基づく製品が製造されることはなかったことが認められる。
(2) 乙第64号証の3(作成日平成11年4月5日。なお,同号証は,同年3月22日作成の乙第64号証の2を修正したものである。)は,検乙第7号証と同一の輸液バッグに係る印刷見本図面である。
上記印刷見本図面には,意匠の要部となるダンベル形状のシール部は図示されていないが,その余の形状等は,細部の形状を除けば,検乙第7号証ともおおむね符合するといえる。そして,甲第14号証に対する乙第41号証の記載に照らせば,上記図面に係る作成日等の信憑性も肯定することができる。
(3) 乙第9号証(作成日平成9年5月22日)は,検乙第7号証の製作に使用した金型の図面である。
そして,乙第9号証に図示された金型は,その凸部の形状が検乙第7号証のシール部の形状とほぼ一致すると認められるものであって,現実に金型代金も原告から有限会社中川製作所に支払われ,原告の総合研究所内に設置されたものであることが認められる(乙10及び11)。
(4) 乙第1号証の1及び2,乙第2号証は,検乙第7号証と同一のサンプルを被告研究所において平成11年5月6日から同月8日にかけて製造した際に,これをデジタルカメラで撮影し,その後,被告ニプロのコンピュータ内に保管されていた写真である。
デジタルデータは改変することが容易であるが,上記写真との関係で被告らの提出した証拠(乙3ないし5,乙26の1ないし9,乙27の1ないし5,乙28の1ないし3)を総合すれば,上記写真から認められる輸液バッグの形状,色彩等と他の各写真に撮影された輸液バッグのそれとは酷似しているということができるから,上記各証拠が撮影日時等を改変したものと認めることはできない。
(5) 乙第18号証の1ないし6は,岩田レーベルにおける平成12年3月9日実施のタックラベラーの試運転状況を撮影した写真であり,乙第18号証の7は,その試運転用にその際提供されたサンプルの写真であり,そのときの実物が検乙第18号証(フルマリンキット静注用1g 実生産試運転2000.3.9by岩田レーベル フジキカイ)である。
同サンプルの製剤収納側の袋体と溶解液収納側の袋体の境界部には,ダンベル形状のシール部が形成されていることが認められる。
(6) 検乙第5号証は,被告ニプロファーマ伊勢工場PLW製造ラインのビデオテープであり,証拠説明書によると,その撮影年月日は平成12年9月の27日及び28日とされている。そして,上記テープ中でダンベル形状の部分の写っている画像を抽出したとする証拠が検乙第6号証であるが,これによると,製造中の「フルマリンキット静注用1g」のキットの境界部分にダンベル形状が明瞭に写っていることが認められる。
以上の各証拠及び前記認定の経緯によれば,検乙第7号証は,塩野義に納入されたフルマリンキット静注用1gの有用性試験用サンプル441バッグのうち,塩野義の医薬開発部に入庫された250バッグの一つであると認めるのが相当である。
4 以上によれば,検乙第7号証に係る意匠は,有用性試験が行われた平成11年7月当時までに創作され,本件登録意匠に係る意匠登録出願当時,完成され若しくは完成に近い状態にあったものと認められる。
そうすると,被告らは,本件登録意匠に係る意匠を知らないで,自らこれに類似する検乙第7号証に係る意匠を創作し,本件登録意匠に係る意匠登録出願の際,現に日本国内において,本件登録意匠に類似する検乙第7号証に係る意匠の実施である事業をし,ないしその準備をしていたと認められるから,その実施ないし準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において,本件登録意匠について通常実施権を有するというべきである。
したがって,検乙第7号証に係る意匠と実質的に同一であるイ号意匠に関する被告らの先使用の主張は理由がある。
5 よって,原告の本件請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 高松宏之
裁判官 西森みゆき
  • この表をプリントする