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関連審決 不服2002-4311
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成10行ケ42審決取消請求事件 判例 意匠
平成15行ケ565審決取消請求事件 判例 意匠
平成18行ケ10367審決取消請求事件 判例 意匠
平成16行ケ138審決取消請求事件 判例 意匠
平成18ワ8794不正競争行為差止等請求事件 判例 意匠
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  物品の形状 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  創作容易(容易の創作) /  公然知られた(3条1項1号) /  記載された意匠 /  意匠の属する分野 /  通常の知識を有する者 /  寄せ集め / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 97号 審決取消請求事件
原告 株式会社ウジケ
訴訟代理人弁理士 鈴木正 次,涌井謙 一,山本典 弘,鈴木一永
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 藤木和 雄,藤正 明,林栄 二,大橋信彦
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/08/26
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が不服2002-4311号事件について平成15年2月6日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
本件は,原告が,後記本願意匠の登録出願をしたところ,拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたところ,審判請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案である。
なお,本訴における準備書面,本願意匠に関する書証(甲2,甲3-1,2,甲5-2)及び審決において,「パット」と記載されているのは,「パッド(pad)」(甲7,8)の意味ではないかと推察されるが,本判決では,上記準備書面等に従い「パット」と表記する。
1 前提となる事実等 (1) 特許庁における手続の経緯 (1-1) 本願意匠 意匠登録出願人:株式会社ウジケ(原告) 意匠に係る物品:「ポリシングパット」 出願番号:意願2001-2892号 出願日:平成13年2月9日 形態:別紙審決書写しの別紙第1「本願の意匠」のとおり(審決書の別紙第1の写真部分はカラー写真であるが,写しとしてはモノクロームのものを添付した。)。
(1-2) 本件手続 拒絶査定日:平成14年2月12日(原告への送達日) 審判請求日:平成14年3月13日(不服2002-4311号) 審決日:平成15年2月6日 審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」 審決謄本送達日:平成15年2月18日 (2) 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書の写しのとおりである(ただし,前記のとおり,別紙第1の写真部分については,モノクロームのものを添付。)。要するに,本願意匠は,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるから,意匠法3条2項の規定に該当し,意匠登録を受けることができない,というものである。 2 原告の主張(審決取消事由)の要点 (1) 取消事由1 審決は,引用意匠(甲4,甲6ないし9)を誤って認定し,さらに,創作容易性の判断を誤ったものであるから,違法として取り消されなければならない。
(1-1) 審決は,実開平4-92769号公報(甲6)の図1,実開平7-17463号公報(甲7)の図4〜図6に「厚手のドーナツ状板を,薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨部本体」の意匠が表されているとし,「厚手のドーナツ状板を,薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨部本体の態様はごくありふれた態様であって,…この構成に格別の創作性は認められない」と判断したが,誤りである。
甲6の図1記載の意匠においては,下方の部分(ベース布4とその下面に植設されている繊維5)の厚さは,中間の弾性板2の厚さと同等以上のものとなっており,中間のドーナツ状板が厚く,その上下に積層されるドーナツ状板が中間のドーナツ状板に比較して薄いというものではない。
甲7の図4〜図6記載の意匠に関しては,上面にベルベット式ファスナ11が貼着されているリング状硬質基板,ドーナツ状の可撓性チューブ13(23),スポンジパッド14(24)からなる部分の全体を,中間に存在する「厚手のドーナツ状板」と把握したとしても,この部分の下側に「薄手のドーナツ状板」が積層されているものではない。スポンジパッド14(24)の下面には,甲7の図2に示されているように,間隔16,17を空けて,無数の研磨紙布15が貼着されている。側面図である図4〜図6においても,間隔17を空けて,複数の研磨紙布15がスポンジパッド14(24)の下面に配置されていることが表されている。当業者であれば,甲7の図2,図4〜図6及び図中に表されている「間隔」「研磨紙布」との記載をみれば,中間に存在する「厚手のドーナツ状板」の下側に存在するものが,「ドーナツ状板」でないことは直ちに認識できる。すなわち,甲7の図4〜図6記載の意匠は,中間に存在する「厚手のドーナツ状板」の下側に「薄手のドーナツ状板」が積層されているものではない。
したがって,甲6の図1,甲7の図4〜図6の記載から,「厚手のドーナツ状板を,薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨部本体」の態様がごくありふれた態様であると認定することは誤りであり,この認定に基づき,上記構成に格別の創作性は認められないと判断したことも誤りである。
(1-2) 審決は,「間に挟まれたドーナツ状板については,側面視略台形状に形成することもごく一般的な態様であり(例えば,意匠登録第617966号(注:本訴甲4),特開平9-141558号(注:本訴甲8)図2参照),上方のドーナツ状板と同形の円孔を設けることも普通に見られる態様であるから(例えば,特開平9-141558号(上記甲8)図2参照),該ドーナツ状板の態様についても,格別の創作性があったと認めることはできない。」と認定判断しているが,誤りである。
甲4に表されている「砥石」の意匠において,側面視略台形状に表れている部分は,「砥石」そのものであって,この下面に研磨面が形成されているものであり,この「砥石」の下面に,更にドーナツ状板が積層されるものではない。本願意匠における中間部の「厚手のドーナツ状板」は,その下面に薄手のドーナツ状板が積層されるものであって,この中間部の「厚手のドーナツ状板」の下面に積層された薄手のドーナツ状板の下面が研磨面に形成される。下面に,更にドーナツ状板が積層されている形態における「間に挟まれたドーナツ状板」と比較すべきであるが,甲4の意匠は,これとは異なる。甲4の意匠をもって,上記のように認定判断することは誤りである。
甲8に記載されている「鏡面研磨用研磨体」の意匠における「スポンジ6」は,本願意匠における「間に挟まれたドーナツ状板」に相当すると認めることができる。しかし,この「鏡面研磨用研磨体」の意匠は,被研磨面への傷防止のため,複数の平行なディッチ4に対して直角方向の周縁部に,ディッチ4にそって切除した切欠部8を設けたことを特徴としているものである。すなわち,「被研磨面への傷防止」という目的を達成するため,甲8の図1,図4,図3,図6に表されているように,スポンジ6は,その周縁が切除されている特異な形態になっている。甲8に係る「鏡面研磨用研磨体」中のスポンジ6の意匠における切欠部8,8の存在は,観者の注目を引く部分であって,創作において重要な要点をなすものとなっている。したがって,このような甲8のスポンジ6の意匠の存在をもって,上記のように認定判断することは誤りである。
(1-3) 審決は,「下方のパットの態様について,やや厚手で一回り大径のパットとしてはみ出させることもごく普通の態様であり(例えば,実開平6-80555号(注:本訴甲9)参照),また,円孔の径を種々変えることも常套的になされるものであるから,下方のパットの態様について特に評価すべき創作性は認められない。」と認定判断するが,誤っている。
甲9の研磨用バフの意匠は,図3において「(複数枚の円盤状の布又は紙を重ねて縫い合わせてなる)バフ本体」(符号2)が示されているが,図3の上側のカップ金具3と下側のカップ金具4とに緊締されることによって,図1,図2図示のように,円盤状のバフ本体2の周縁が,斜め方向下側に向かっている上側のカップ金具3の周縁端の下から斜め方向下側に向かって,スカートのフレアー部のように広がって現れるものである。すなわち,甲9の研磨用バフの意匠は,側面視略台形状の中間の厚手のドーナツ状板の下側に,薄手のドーナツ状板が積層されているという形態の意匠ではない。何よりも,上側のカップ金具3の周縁端の下から,スカートのフレアー部のように広がって現れるものであるから,これをもって上記のように認定することは,誤りである。
また,甲9の研磨用バフの意匠は,上記のとおり,側面視略台形状の中間の厚手のドーナツ状板の下側に,薄手のドーナツ状板が積層されているという形態の意匠ではないので,中央に設けられている円孔が小径であるかどうかを検討する基礎になるものではない。
なお,甲6,甲7の意匠の場合を検討すると,前者の場合,中間の弾性板2の下面に積層されている下方の部分の中央に備えられている円孔の直径と,中間の弾性板2の中央に備えられている円孔の直径とは同一である。後者の場合,最内側に配備される複数個の研磨紙布15によって形成される中央の円孔の直径は,中間に存在する「厚手のドーナツ状板」(上面にベルベット式ファスナ11が貼着されているリング状硬質基板,ドーナツ状の可撓性チューブ13,スポンジパッド14からなる部分の全体)の中央に備えられている円孔の直径と同一である。また,甲8の意匠においても,基材2の中央に設けられている円孔の直径と,スポンジ6の中央に設けられている円孔の直径とは同一になっている。すなわち,中央に円孔が形成されている弾性体の下面に,研磨対象物に当接し研磨する研磨面が形成され,中央に円孔が形成されている下側部材が取り付けられる場合,当該下側部材の円孔の直径と,弾性体の円孔の直径とは同一にされるのが一般的である。
下方のパットの円孔の径を変えることも常套的になされるものであるとの審決の認定も誤りである。
以上のような誤った認定を前提として,下方のパットの態様について,特に評価すべき創作性は認められないとする審決の判断は,誤りである。
(1-4) 審決は,原告(請求人)の主張を排斥する理由として,「取付部を除いた研磨部の態様については,上記したようにありふれた態様の単なる寄せ集めにすぎないから,結局本願意匠について格別の創作性が認められず,請求人の主張は採用できない。」とするが,この判断は,誤りである。
前記のとおり,甲6の図1,甲7の図4〜図6に表されている意匠をもって,「厚手のドーナツ状板を,その上下の薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した」態様が「ありふれた態様」であるということはできず,甲4の意匠,甲8の図2の意匠をもって,「間に挟まれたドーナツ状板は,側面視略台形状に形成した」態様が「ありふれた態様」であるということはできず,甲9の意匠をもって,「下方のドーナツ状板は,やや厚手で一回り大径のパット」とした態様が「ありふれた態様」であるということはできず,また,下側のドーナツ状板の中央に形成されている円孔の直径の方が,上側のドーナツ状板の中央に形成されている円孔の直径よりも小さい形態を「ありふれた態様」ということはできず,「(下方のドーナツ状板は)小径の円孔を中央に設けた」態様であることが「ありふれた態様」であるということはできないのであって,「ありふれた態様」の組み合わせであると判断することは,間違いである。
前記のとおり,本願意匠の構成は,審決で指摘されている甲4,甲6ないし9に記載された意匠に表されていないのであるから,これらの書証の意匠を「単なる寄せ集めた」だけでは,本願意匠を創作することはできず,「(ありふれた態様の)単なる寄せ集めにすぎない」と判断することは,間違いである。
(1-5) 「厚手のドーナツ状板を,その上下の薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層したものであって」,「間に挟まれたドーナツ状板が側面視略台形状に形成」され,「下方のドーナツ状板は,やや厚手で一回り大径のパットとして小径の円孔を中央に設けた」態様の「研磨器の駆動部分を除いた研磨部」の意匠を,甲4,甲6ないし9の意匠に基づいて創作することは,当業者にとって容易ではない。
既に指摘したとおり,甲4に係る意匠は「砥石」に係るものであるから,当業者ならば,甲4の砥石部の下側に,更にドーナツ状板を取り付けて本願意匠の創作をすることは困難である。
また,甲8の「鏡面研磨用研磨体」の意匠を創作の基礎として本願意匠を創作するためには,少なくとも,周縁部に切欠部8,8が形成されていない状態にし,その上で,本願意匠における下側のドーナツ状板に相当する「繊維3で織った複数の平行のディッチ4が形成されている基材2」を一回り大径のパットにする必要がある。しかし,甲8の「鏡面研磨用研磨体」の意匠は,被研磨面への傷防止という目的のために,わざわざ前記切欠部8を設けたことを特徴としているものである。このような意義を正しく認識できる当業者であればあるほど,甲8に記載されている「鏡面研磨用研磨体」の意匠を創作の基礎として,スポンジ6の周縁部に切欠部8,8が形成されていない形態の意匠を創作することは困難であるといわざるを得ない。
したがって,上記のような本願意匠を創作することが容易であるとした審決は,誤りである。
(1-6) 「(下方のドーナツ状板は)小径の円孔を中央に設けた」態様の「研磨器の駆動部分を除いた研磨部」の意匠を,甲4,甲6ないし9の意匠に基づいて創作することは,当業者にとって容易ではない。
既に指摘したように,中央に円孔が形成されている弾性体の下面に,下面に研磨対象物に当接し研磨する研磨面が形成され,中央に円孔が形成されている下側部材が取り付けられる場合,当該下側部材の円孔の直径と,弾性体の円孔の直径とは同一にされるのが一般的である。
審決は,「円孔の径を様々に変化させることはこの分野で普通に行われていること」であるとするが,本願意匠は,一つの「研磨器の駆動部分を除いた研磨部」の意匠中に,中央に円孔が形成されている上側のドーナツ状板と,その上側のドーナツ状板の下面に,研磨対象物に当接し研磨する研磨面が形成され,中央に円孔が形成されている下側のドーナツ状板が取り付けられているものである。甲6,甲8のいずれも,下側のドーナツ状板の円孔の直径と,上側のドーナツ状板の円孔の直径とは同一であって,「円孔の径を様々に変化」したものにはなっていない。
以上のように,下側部材の円孔の直径と,弾性体の円孔の直径とが同一にされるのは,下側部材の研磨対象物に当接する下面のすべての領域において均一な当接圧力で研磨対象物表面に下側部材の研磨面を当接させたいという技術的要求,考えから必然的に生じるものであり,本願意匠に係る「ポリシングパット」のような研磨用具,研磨機器に関わる意匠が属する分野における通常の知識を有する者であれば当然のこととして理解し,認識しているものである。
しかるに,本願意匠のように,下側のドーナツ状板の中央に形成されている円孔の直径が,この下側のドーナツ状板が下面に取り付けられている弾性を有する中間の肉厚のドーナツ状板の中央に形成されている円孔の直径より小さい場合,下側のドーナツ状板には,上面が中間の肉厚のドーナツ状板の下面に支持されている部分と,上面が中間の肉厚のドーナツ状板の下面に支持されていない部分とが形成されてしまう。すなわち,下側のドーナツ状板の中央側(中央に形成されている円孔の周縁)の上面は,中間の肉厚のドーナツ状板の下面に支持されないようになる。この結果,下側のドーナツ状板の研磨対象物に当接する下面のすべての領域において均一な当接圧力で研磨対象物表面に下側のドーナツ状板の研磨面が当接しなくなり,特に,下側のドーナツ状板の中央側(中央に形成されている円孔の周縁)の部分は当接圧が小さくなる。
当業者が,あえて,当接圧が小さくなる部分を,下側のドーナツ状板の中央側(中央に形成されている円孔の周縁)に形成しようと発想することは困難である。
したがって,「(下方のドーナツ状板は)小径の円孔を中央に設けた」態様の「研磨器の駆動部分を除いた研磨部」の意匠を,甲4,甲6ないし9の意匠に基づいて創作することは,当業者にとって容易ではなく,「円孔の径を様々に変化させることはこの分野で普通に行われていること」とした審決の判断は,誤りである。
なお,原告が,「(下方のドーナツ状板は)小径の円孔を中央に設けた」態様にしたのは,本願意匠に係るポリシングパットの上側のドーナツ状板の上面を研磨器の駆動部分に取り付け,下側のドーナツ状板の下面に粉体のコンパウンドをつけてポリシングパットを回転させ,前記コンパウンドが付着している下側のドーナツ状板の下面を研磨対象物表面に当接・摺接させて研磨対象物表面を研磨する際に,下側のドーナツ状板下面の中央側にコンパウンドが集まり,このコンパウンドが移動・集中してきた中央側が当接・摺接する研磨対象物表面に傷がつくことがあるので,下側のドーナツ状板の中央側(中央に形成されている円孔の周縁)における当接圧を小さくすることによって,これを解決しようとしたためである(原告は,この技術的知見に基づき,「回転研磨機用研磨盤」について特許出願している(特開2002-239920,甲10)。
本願発明の「(下方のドーナツ状板は)小径の円孔を中央に設けた」という態様は,前記技術的知見に基づいて採用されたものである。これに対して,甲6ないし8の意匠のように,中央に円孔が形成されている弾性体の下面に,下面に研磨対象物に当接し研磨する研磨面が形成され,中央に円孔が形成されている下側部材が取り付けられる場合,当該下側部材の円孔の直径と,弾性体の円孔の直径とは同一にされるのが一般的であり,研磨用具,研磨機器に関わる意匠が属する分野における通常の知識を有する者は,下側部材の研磨対象物に当接する下面のすべての領域において均一な当接圧力で研磨対象物表面に下側部材の研磨面を当接させる必要性を一般的に認識しているものであるから,「(下方のドーナツ状板は)小径の円孔を中央に設けた」態様の「研磨器の駆動部分を除いた研磨部」の意匠を,甲4,甲6ないし9の意匠に基づいて創作することは当業者にとって容易ではない。
(2) 取消事由2 審決は,審理不尽であり,その手続は,意匠法50条3項で準用する特許法50条(拒絶理由通知)の規定に違背するので,取り消されなければならない。
(2-1) 原告(請求人)は,審判において,審決の理由中「3.請求人の主張」に記載されている主張のほか,請求人は,(@)拒絶理由で引用された意匠(甲4)の砥石部の上面の取付部を,甲4の意匠に基づいて,面ファスナーの形態に変更することは当業者にとって容易でないこと,(A)甲4の意匠の砥石部の下面が研磨面であると認識できる当業者にとって,この砥石部の下面に更に円形板を重ねて配設する意匠の創作を行うことは容易でないこと,(B)拒絶理由で引用された意匠(甲4)を創作の基礎として本願意匠を創作することは当業者にとって困難であることを具体的に主張している。これは,拒絶理由に対して具体的に反論したものである。
しかし,上記原告の主張が審決の「3.請求人の主張」欄に記載されていない。
これは,審判における審理が不十分であったことを示すものにほかならない。
(2-2) 拒絶理由で創作容易性を判断する資料として引用された意匠は甲4のみであり,審決において創作容易性を判断する資料として引用された意匠中,甲6ないし9は,審決において初めて引用されたものであって,甲6ないし9を創作容易性を判断する資料として引用する拒絶理由に対しては,原告が意見を述べる機会は与えられていない。
拒絶理由から一貫して引用されている甲4が創作容易性を判断する資料として審決中で引用されたのは,「間に挟まれたドーナツ状板を側面視略台形状に形成する」態様に関してのみである。そして,これ以外の「厚手のドーナツ状板を,その上下の薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した」研磨本体部の態様,「上方のドーナツ状板の上面に面ファスナーを設ける」態様,「間に挟まれたドーナツ状板に上方のドーナツ状板と同形の円孔を設ける」態様,「下方のパットを,やや厚手で一回り大径のパットとしてはみ出させる」態様に関しては,原告(請求人)に意見を主張する機会を与えることもなく,甲6ないし9が創作容易性を判断する資料として,審決において初めて引用されたのである。
審決は,「取付部を除いた研磨部の態様については,上記したようにありふれた態様の単なる寄せ集めにすぎないから,結局本願意匠については格別の創作性が認められず,請求人の主張は採用できない。」としているのであるが,甲4,甲6ないし9の意匠に含まれている構成態様を組み合わせて本願意匠の創作を行うことが当業者にとって容易であるかどうかに関して,原告が意見を述べる機会は与えられていない。
このように,原告(請求人)が,甲4のみが創作容易性を判断する資料として引用された拒絶理由に対する意見の開陳を行った後に,甲6ないし9という創作容易性を判断する新たな資料が引用されるようになり,しかも,甲4,甲6ないし9の意匠に含まれている構成態様を組み合わせて本願意匠の創作をすることが当業者にとって容易であるという拒絶理由を構成するようになったにもかかわらず,原告(請求人)に,これらの新たな資料(甲6ないし9)に基づく拒絶理由及び甲4,甲6ないし9の意匠に含まれている構成態様を組み合わせて本願意匠の創作をすることが当業者にとって容易であるという拒絶理由に対する意見を開陳する機会を与えずに審決を下した特許庁の手続は,意匠法50条3項で準用する特許法50条(拒絶理由通知)の規定に違背するものである。
3 被告の主張の要点 (1) 取消事由1に対して (1-1) 原告主張の取消事由は,審決が,概括的態様である本願意匠の全体の構成について,創作性の有無を検討するに当たり,同様の概括的態様が本願前の意匠において既にありふれているかどうかを検討した部分である。
甲6の図1は,模式図であり,「構成」の欄に,「研磨布6はベース布4に所定長さの繊維5を植設し,あるいは細かい毛が起き立つ布から構成され」と記載されていることから,弾性板2にやや厚手の研磨布6を積層したものと理解すべきであり,その態様は,本願意匠とほぼ同程度の態様であると考えられる。したがって,審決に誤りはない。
仮に,研磨布6が弾性板2よりも厚いものであったとしても,厚みを適宜変更することは常套的手段というべきものであるから,結局,審決の認定判断に格別な誤りはない。
前記のとおり概括的態様としては,甲7の図4〜図6は,「厚手のドーナツ状板を,薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨本体部の態様」であるとみなして差し支えない。また,甲7の間隔16,17は,ごく細幅であって,多数の研磨紙布をごく細幅の関係を設けて敷き詰め,貼着した態様のものと考えられる。研磨体底面部は,むき出しの状態で露出し被研磨面と接触するのではなく,研磨体底面全体に敷き詰められた研磨紙布の面を介して被研磨面と接触するのであるから,研磨体の下面にドーナツ状研磨紙布面が積層されたものとしてとらえることに格別の問題はない。
また,図2は模式図であり,「構成」「請求項3」で「適宜間隔を存して」とされているように,間隔をごく微細にほとんど隙間が目立たないように貼着することも想定されるのであるから,審決に特に問題はない。
(1-2) 甲4は,初期の研磨盤であり,上方の取り付け盤は,本願意匠のファスナー部に相当し,砥石部については,その上方部分が本願意匠の中間のドーナツ状板に相当し,その下面部分が本願意匠の下部のドーナツ状板に相当する。本願意匠は,甲4の下面部分のみを切り離し,別体のドーナツ状板として貼着したまでであって,先行する周知意匠である甲4の基本的要素から何ら逸脱する意匠ではない。
この分野の通常の知識を有する者であれば,甲4の周知意匠の形態を基本的な知識とし,この周知の側面視略台形状のドーナツ状板に基づいて,本願意匠の中間のドーナツ状板の形態を同様の形態とすることは,容易である。そうであれば,中間のドーナツ状板と下方のドーナツ状板(パット)を含む略台形状の形態と,その一部である中間のドーナツ状板の略台形状の形態とを比較することは,何ら不合理ではない。
次に,甲8の切除部分は,図1ないし図3によれば,相対する位置に2か所設けられ,その幅は,直径の各45分の1程度を切除したにすぎず,スポンジ下部のわずかな垂直部分としてしか表れないものであり,全体からみればごくわずかなものである。よって,スポンジ6のドーナツ状板の側面視の態様を「側面視略台形状」と認定することに格別の誤りはない。
(1-3) 審決は,3つのドーナツ状板をサンドイッチ状に積層した全体の構成及び各部の態様についての認定を前提に,下方のドーナツ状板(パット)について,上方部分より一回り大きくはみ出させることもごく普通の態様であることを,甲9の参考例を挙げて述べたものであって,甲9の図1,図4には,バフ本体2がその上部構造体からはみ出している態様が示されているから,審決の認定に格別の誤りはない。
甲6ないし8の円孔の直径は,甲6及び7では,盤全体の直径に比してほぼ9分の1であるが,甲8のそれは,ほぼ3分の1(図3)又はほぼ9分の2(図9,図10)であり,その径を種々変化させることは普通のことである。そして,円孔の態様は,主として技術的理由によるものであり,意匠的にみる場合においては,ドーナツ状板における円孔を種々変化させた態様のものであることにとどまる。
本願意匠において,下側部材の円孔と弾性体の円孔の径が同一でないとしても,それは,技術的理由によるもので,使用状態では,上方の円孔は隠れてしまい,その径の大小は認識されないものであるから,意匠的にはさして大きく評価することはできず,周知の態様のバリエーションであり,常套的にされる変更にとどまる。
(1-4) 本願意匠は,ありふれた態様の単なる寄せ集めの域を出ないものであり,原告の主張は失当である。
(1-5) 既に主張したところから,甲4,甲6ないし9の意匠に基づいて本願意匠を創作することが当業者にとって容易ではないとの原告の主張は,失当である。
前記のとおり,本願意匠と甲4の周知意匠とは基本的要素に変わりはない。本願意匠を創作する際において,従来ある砥石部の下面の研磨部分だけを独立させて研磨部の交換の便を改善するなどということは,甲6ないし8で明らかなように,ありふれた態様であって,当業者にとって創作容易である。
また,甲8において切欠部が形成されているものは,実施例1及び2であり,従来例の図9,図10の課題を解決したものである。切欠部を形成しないこととすることは,従来例に戻るだけのことであるから,格別の創作の必要もなく,容易である。
(1-6) 円孔の態様について,原告主張のような技術的困難があるかどうかはともかく,意匠的には,円孔の径の変化については,既に述べたように,審決が挙げた例でも盤全体の直径に比してほぼ9分の1からほぼ3分の1の範囲の円孔が知られ,また,本願意匠の上方円孔と同程度の大径の円孔もありふれた態様であるから(実開昭63-97459号公報,乙3),本願意匠は,普通に知られている範囲内で,上方及び下方の円孔の径を変化させたにすぎないものであり,当業者であれば,常套的手法を用いて本願意匠の態様にすることは容易である。
そして,上方と下方の円孔の径が異なる点も,前記のように,使用状態では上方の円孔は隠れてしまうものであるから,意匠上は格別重視することはできない。
(2) 取消事由2に対して (2-1) 審決は,請求人の主張の要旨としてその概略を記載したのであり,原告主張のような具体的記載がないからといって審理上遺脱があったということではないし,その主張を検討せずに判断したものではない。
(2-2) 甲4は,本件出願の17年前に発行された意匠公報であり,甲6ないし9も,本件出願のほぼ4年ないし9年前に発行された実用新案又は特許の公報であり,その記載内容は,本願意匠の属する分野の研磨盤又は研磨バフ等に係るものであり,これら資料は広く公開されている。したがって,当業者であれば,本願意匠の属する分野のこれら資料について了知していることは通常であると考えられるので,甲6ないし9について当業者にとっての周知の資料であると判断したことに格別の誤りはない。
そして,拒絶理由通知及び審決は,本願意匠の創作容易と結論づけるに当たって,当業者が通常有する知識としての周知状況,又はその創作水準を示す例示として,上記資料を示したにすぎないので,本願意匠と特定の引用意匠との美感の異同を検討する場合とは異なり,本願意匠の創作性の有無を検討する本件の場合は,当業者にとって不意打ちとはならないから,上記周知例について,改めて請求人の意見を聞かなければならないというものではない。
原告の主張は失当である。
当裁判所の判断
1 取消事由1について (1) 審決が「厚手のドーナツ状板を,薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨部本体の態様はごくありふれた態様であって,…この構成に格別の創作性は認められない。」と認定判断した点について 甲6によれば,弾性板2の下面に研磨布6を固着した構成が示されている。甲6の図1をみれば,原告主張のように,ベース布4に繊維5を植設してなる研磨布6の厚さが,繊維部分をも含めれば,弾性板2の厚さと比べ,同等以上の厚さがあるかのように記載されている。しかし,甲6によれば,図1は模式図であって,厳密な縮尺の下に作成されたものではないこと,そもそも,弾性板2の下面に固着されたベース布4の厚みは弾性板よりも薄手であると認められる上,繊維5の厚み(繊維の長さ)については,「所定長さの」とされ,限定されていないこと(実用新案登録請求の範囲等),「表面に細かい毛が起り立つ布を研磨布として直接に弾性板2に取り付けることもできる。」(段落【0013】)とされ,この構成の研磨布は弾性板2よりも薄手であると認められることなどに照らせば,甲6には,弾性板の下面にこれよりも薄手の研磨布を固着した態様のものが示されているものといえる。
この点に関する原告の主張は採用の限りではない。
また,甲7によれば,可撓性チューブ13(23)の下側に,直接又はスポンジパッド14(24)を介して,無数の小研磨紙布を適宜間隔を空けて貼着したものが示されている。この無数の小研磨紙布は,被研磨面の湾曲,凹凸などの形状に沿って変形して馴染み性を良好とし,被研磨面の全面を均一な研磨圧で研磨することができるようにするため,可撓性チューブを採用したのに伴い,従来,一枚の円板状パッドなどであったのを,無数の小研磨紙布に分けて適宜の間隔をおいて貼着したものであるものと認められる。もとより,甲7には,上記間隔をどのようにするかの限定はなく,小研磨紙布同士が極めて近接したものも含まれるほか,もともと一枚の円板状のものに一定の規則正しい切れ目を入れたような形状を呈しており,すべての小研磨紙布及び間隔が全体として一体となっているドーナツ状の紙布であると認識することも不可能であるとはいえない。
よって,審決が,甲6を参照として,さらに甲7をも掲げた上で,「厚手のドーナツ状板を,薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨本体部の態様がごくありふれた態様であって,この構成に格別の創作性は認められない。」と認定判断したことに誤りがあるとはいえない。
(2) 審決が「間に挟まれたドーナツ状板については,側面視略台形状に形成することもごく一般的な態様であり,上方のドーナツ状板と同形の円孔を設けることも普通に見られる態様であるから,該ドーナツ状板の態様についても,格別の創作性があったと認めることはできない。」と認定判断した点について 審決は,側面視略台形状に形成する点につき甲4及び8を参照として掲げている。
甲4によれば,既に昭和55年に出願されたもので,図面からすると,本願意匠における中間部の厚手のドーナツ状板とその下面の薄手のドーナツ状板に相当する部分が一体となった砥石が記載されており,その形状は側面視略台形状となっていることが認められる。しかし,甲4の出願後,甲6ないし8などにみられるように,被研磨体に接して研磨する部分(上記の下面部分)が独立した形状とされたものが周知となっている。そして,審決の上記認定判断は,前に説示した「厚手のドーナツ状板を,薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨部本体の態様はごくありふれた態様であること」(この点は前記(1)のように是認し得る。)を前提に説示していることが明らかである。以上にかんがみれば,審決が甲4を参照として掲げて上記のように認定判断した点に誤りがあるとはいえず,原告の非難は当たらない。
甲8における「スポンジ6」が本願意匠における「間に挟まれたドーナツ状板」に相当することは原告も争わない。そして,確かに,原告主張のとおり,甲8のスポンジ6は,図1,図4,図6のように,2か所において周縁が切除され,切欠部が存在する。切欠部を通る線での断面図は図2,図5のとおりであり,これを厳密にみると,台形ではなく,長方形に台形を乗せたような形となっている。しかしながら,切欠部は円盤の中心部分に大きく食い込んだものとは認められず,切欠部を通る線での断面図である図2,図5により断面形状をみても,上記長方形部分の高さはほとんど目立たないほどに低く,その上に乗った台形部分と合わせてスポンジ6の断面全体をみれば,ほぼ台形状であると認識されるものと認められる。また,切欠部を通らない線での断面は台形の形状をしていることはいうまでもない。以上によれば,審決が甲8をも参照として掲げて,「側面視略台形状」などと上記のように認定したことが直ちに誤りであるとはいえない。この点に関する原告の主張も採用の限りではない。
(3) 審決が「下方のパットの態様について,やや厚手で一回り大径のパットとしてはみ出させることもごく普通の態様であり,また,円孔の径を種々変えることも常套的になされるものであるから,下方のパットの態様について特に評価すべき創作性は認められない。」と認定判断した点について (3-1) 審決は,上記の前段の点につき甲9を参照として掲げている。
甲9の図1,図2によれば,確かに,原告主張のように,円盤状のバフ本体2の周縁が,斜め方向下側に向かっている上側のカップ金具3の周縁端の下から斜め方向下側に向かって,スカートのフレアー部のように広がっている状況が認められる。
しかしながら,審決の上記認定判断は,前に説示した「厚手のドーナツ状板を,薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨部本体の態様はごくありふれた態様であること」(この点は前記(1)のように是認し得る。),「間に挟まれたドーナツ状板については,側面視略台形状に形成することもごく一般的な態様であり,上方のドーナツ状板と同形の円孔を設けることも普通に見られる態様であること」(この点は前記(2)のように是認し得る。)など,既になした認定判断を前提に説示していることが明らかである。したがって,審決の標記説示は,既に以上のような構成,各部の形態であることを前提に,甲9におけるバフ本体が,その上部の構造体よりも大きく,はみ出しているとの点のみを参照する趣旨で説示しているものと解される。このような趣旨の下に甲9を参照すれば,「下方のパットの態様について,やや厚手で一回り大径のパットとしてはみ出させることもごく普通の態様である」とした審決の認定判断に誤りはない(なお,甲8においても,基材2から繊維3がはみ出す構成となっている。)。この点に関する原告の主張は採用することができない。
(3-2) 円孔の径についてみるに,本願意匠では,厚手のドーナツ状板の円孔はやや大きめ(上方のドーナツ状板の円孔と同形)であり,その下方のドーナツ状板の円孔は,小径となっている。そして,原告の主張するとおり,甲6ないし8において上記のドーナツ状板に相当する部材における円孔をみると,同一例における円孔同士は同じ大きさとされている。
しかしながら,甲6ないし8の円孔を相互に比較しても明らかなように,ドーナツ状板の大きさと比べた円孔の大きさは,まちまちであり,「円孔の径を種々変えることも常套的になされるものである」との審決の認定判断に誤りはない。そして,上記各証拠及び甲10によれば,同じ研磨器の研磨部の各部材において,どの程度の大きさの円孔とするかは,主として技術的理由から決せられているものと認められ,下側のドーナツ状板の円孔の大きさをその上面のドーナツ状板の円孔よりも小さくしたとしても,意匠としては,ドーナツ状板における円孔の大きさを種々変化させるという域を出ないものであって,格別の創作性があり創作困難であるとはいい難い。この点に関する原告の主張も直ちに採用の限りではない。
(4) 審決が,原告(請求人)の主張を排斥する理由として,「取付部を除いた研磨部の態様については,上記したようにありふれた態様の単なる寄せ集めにすぎないから,結局本願意匠について格別の創作性が認められず,請求人の主張は採用できない。」と説示した点について この点に関する原告の主張は,既に判示したところに照らせば,採用することができないことが明らかである。
(5) 取消事由1(1-5)における原告の主張について 「厚手のドーナツ状板を,その上下の薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した態様」,「間に挟まれたドーナツ状板が側面視略台形状に形成された態様」,「下方のドーナツ状板は,やや厚手で一回り大径のパットとして小径の円孔を中央に設けた態様」については,既に判示したとおりである。そして,審決の説示をみると,上記各態様につき,甲4,甲6ないし9を参照として掲げつつ,いずれもごくありふれた,一般的で普通にみられる態様であるか,常套的手段によりわずかな改変を加えた程度の部分にすぎず,格別の創作性は認められないとした上で,これら各部分の態様を組み合わせることは,当業者であれば容易なことというべきであるから,上記各態様を合わせもった「研磨器の駆動部分を除いた研磨部」の意匠を創作をすることは容易であったということができ,この認定判断は是認し得るものである。
原告の上記主張は,採用の限りではない。
なお,仮に,原告の主張が,甲4の砥石部又は甲8の鏡面研磨用研磨体そのものに他の部分の態様を付加することによる本願意匠への創作困難性をいう趣旨であるとすれば,審決に対する非難としては前提に誤解がある。また,甲4,甲8を参照することにより,本願意匠の「間に挟まれたドーナツ状板が側面視略台形状に形成された態様」がごく一般的な態様であると認められるとした審決に誤りはないことは,既に判示したとおりである。
(6) 取消事由1(1-6)における原告の主張について 「円孔の径を種々変えることも常套的になされるものである」との審決の認定判断が是認し得ることは,既に判示したとおりであり,審決が「円孔の径を様々に変化させることはこの分野で普通に行われている」との認定判断についても同様に是認し得るものである。そして,前記(3)で判示したように,原告の標記主張もまた直ちに採用の限りではない。
なお,原告は,下側部材の円孔の直径と,弾性体の円孔の直径とが同一にされるのは,技術的要求から必然的に生じるものであり,当業者であれば,当然のこととして理解し,認識しているものであるが,これに反し,本願意匠においては,「(下方のドーナツ状板は)小径の円孔を中央に設けた」という態様にしたものであり,これは,原告の特許出願に係る技術を理由とするものであり,したがって,このような態様の「研磨器の駆動部分を除いた研磨部」の意匠を,甲4,甲6ないし9の意匠に基づいて創作することは,当業者にとって容易ではないと主張する。
しかしながら,原告の特許出願に係る発明が想到容易であるか否かは別として,特許出願された技術の想到容易性と,物品の形状などに関する意匠の創作容易性とは直結するものではない。そこで,円孔の大きさという意匠の問題として検討するならば,円孔というありふれた形状のものであり,前記のとおり,従来例においても円孔の大きさ自体はまちまちであり,円孔の径を種々変えることが常套的になされるものであることが明らかであって,下側のドーナツ状板の円孔の大きさをその上面のドーナツ状板の円孔よりも小さくしたとしても,ドーナツ状板における円孔の大きさを種々変化させるという域を出ないものであって,円孔の大きさを変えることに意匠としての格別の創作性があり創作容易でないとはいい難い。この点に関する原告の主張も直ちに採用の限りではない。
2 取消事由2について (1) 審決の理由中における「請求人の主張」の欄に,請求人がした主張についてこれを構成する個別具体的な事由をすべて網羅しなければならないわけではなく,網羅しないことが直ちに審理不尽となるものではない。また,原告が主張する点についても,審決の理由中において,少なくとも実質的にみて審理判断がされているものと解されるのであって,いずれにしても,審決に原告主張のような違法はない。
(2) 本願意匠の審査段階における拒絶理由通知書では,甲4のみが示されていることが認められる(甲3-1)。審決は,これに加え,甲6ないし9をも理由中に記載している(甲1)。
しかし,証拠(甲1,甲3-1,2,甲4,甲6ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,本願意匠については審査段階から意匠法3条2項の要件が問題となっていること,審決は,甲6ないし9を引用意匠としているものではなく,意匠法3条2項の公知の形状などを認定する証拠としているものでもないこと,審決は,甲6ないし9を「厚手のドーナツ状板を,その上下の薄手のドーナツ状板でサンドイッチ状に積層した研磨本体部の態様」,「間に挟まれたドーナツ状板が側面視略台形状に形成された態様」,「上方のドーナツ状板の上面に面ファスナーを設ける態様」,「下方のドーナツ状板は,やや厚手で一回り大径のパットとしてはみ出させる態様」などが周知であると認定する際に,参照として掲げたにすぎないこと,甲6は実開平4-92769号公報,甲7は実開平7-17463号公報,甲8は特開平9-141558号公報,甲9は実開平6-80555号公報(ちなみに,甲4は意匠登録第617966号公報)であること,本願意匠の登録出願日は平成13年2月9日であるところ,甲6は平成4年8月12日に,甲7は平成7年3月28日に,甲8は平成9年6月3日に,甲9は平成6年11月15日にそれぞれ公開されたものであって,さらに平成11年3月からは,特許庁ホームページ上の特許電子図書館サービスとして,誰でもコンピュータからアクセスが可能な状態とされており,平成12年1月からは,独立行政法人工業所有権総合情報館とその地方閲覧室及び都道府県に設けられた知的所有権センターなどの公衆閲覧施設の専用端末から特許電子図書館サービスにアクセスが可能となっていること,甲6ないし9は,特許又は実用新案に関するものであるが,本願意匠の属する分野である研磨盤又は研磨バフなどに係るものであることが認められる。
以上の事情に照らせば,審決が認定した上記の各部分の態様は,本願意匠の登録出願前において,本願意匠の属する分野における通常の知識を有する者の間において,周知となっていたものと認めることができるのであり,各部分の態様が周知である以上,いずれも本願意匠の属する分野におけるものであるから,それらを組み合わせることに支障がないことも明らかであり,甲6ないし9は,これらの周知事実ないし創作水準の認定に関しての例示的な参照として使用されたものであって,事前に原告に示して意見を述べる機会が付与されなかったからといって,手続上の違法があるとまではいえない。
原告の主張は採用することができない。
3 結論 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 田中昌利
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