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関連審決 不服2002-4299
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  3条1項3号 /  類似する意匠 /  意匠の類否 /  本意匠 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 644号 審決取消請求事件
原告 元旦ビューティ工業株式会社
同訴訟代理人弁理士 福田賢三
同 福田伸一
同 福田武通
被告 特許庁長官太田信一郎
同指定代理人 伊勢孝俊
同 藤正明
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/06/25
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2002-4299号事件について平成14年11月11日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,平成13年5月22日,意匠に係る物品を「建築用構造材」とし,その形態を別紙審決書写し(以下「審決書写し」という。)別紙第1記載のとおりとする意匠(以下「本願意匠」という。)について、意匠登録出願をした(意願2001-14677。本意匠、意願2001-14674)が,同14年2月15日ころ,拒絶査定を受けたので、同年3月13日,これに対する不服の審判の請求をした。
(2) 特許庁は,同請求を審理した(不服2002-4299号)上、平成14年11月11日,「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決を行い,その謄本は,同月29日,原告に送達された。
2 審決の理由 審決は、審決書写し記載のとおり、本願意匠が、その出願前に頒布され、特許庁総合情報館が昭和47年10月19日に受け入れた内国カタログ「神鋼のアルミニウム合金押出型材」(株式会社神戸製鋼所発行、乙1、以下「引用文献」という。)の第76頁下段左欄に記載のNo.OT1800の「型材」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第49121741号)であって、その形態を審決書写し別紙第2記載のとおりとする意匠(以下「引用意匠」という。)に類似する意匠であるから、意匠法3条1項3号に該当し,同条同項柱書の規定により,意匠登録を受けることができないとしたものである。
原告主張の審決取消事由の要点
審決は、本願意匠と引用意匠の共通点の認定を誤り(取消事由1)、両意匠の差異点を看過し(取消事由2)、両意匠の差異点に関する認定判断を誤った(取消事由3)ものであるから、違法として取り消されなければならない。
1 取消事由1(本願意匠と引用意匠の共通点の認定誤り)について 審決は、本願意匠と引用意匠の共通点(イ)として、「一定の断面形状で長手方向に連続する長尺材であって」とした(このことは争わない。)上、「その断面形状が、水平上辺板と垂直板と水平下辺板とを略ユの字状に一体的に連結したものであること」と認定しているが、誤りである。
まず、片仮名文字「ユ」は、水平上辺、垂直辺、水平下辺とから成り立っており、それらが一体的に連結されたものであるところ、上記3つの構成部分の関係についてみれば、最も長いのが水平下辺であり、この水平下辺の中央からやや右側に寄った位置から垂直辺が起立し、垂直辺と水平上辺はほぼ等しい長さであり、その長さは水平下辺のほぼ半分である。
そして、引用意匠が「略ユの字状」であることは争わない。しかし、本願意匠は、上記3つの構成部分中、最も長いのが垂直辺であり、その長さは、水平下辺の約2倍、水平上辺の約4倍であるから、「略ユの字状」ではない。
つまり、本願意匠は、意匠全体の幅(これは、およそ水平下辺板の幅で決定される。)に比して、著しく高さを高くしたものであり、数字や文字にたとえるならば、明朝体による数字の「1」に近い形態を有すものである。
このように審決は、本願意匠の具体的形態を正しく把握せず、水平上辺板、
垂直板、水平下辺板という3つの構成部分を有することをもって、引用意匠と共通すると判断し、その認定判断による共通点を大前提としつつ、両意匠の類否判断を行い、最終的に本願意匠が引用意匠に類似するとの誤った判断に至ったものである。
2 取消事由2(本願意匠と引用意匠の差異点の看過)について 引用意匠は、水平上辺板と垂直板と水平下辺板の厚さをほとんど同じくし、
イメージとしては、ゴシック体で表した片仮名文字「ユ」であるのに対し、本願意匠は、垂直板の厚さを、水平下辺板の約5分の3にしている。すなわち、本願意匠は、唯一の高さ方向の構成部分であって、しかも、水平上辺板の約4倍、水平下辺板の約2倍の長さを有する垂直板の厚さを、敢えて薄くしたものであり、この差異は、意匠全体の差異をより明確にするものである。
したがって、審決は、本願意匠と引用意匠との類比判断に影響を与える程度の差異を看過したものである。
3 取消事由3(差異点に関する認定判断の誤り)について (1) 審決は、本願意匠と引用意匠の類比判断において、上記「共通点(イ)は、形態全体の骨格を成す態様であり」と認定しているが、この共通点(イ)は、
前述のとおり、本願意匠の態様を誤って理解した上でなされたものであり、誤りである。本願意匠と引用意匠の形態上の大きな共通点は、水平上辺板、垂直板、水平下辺板とから構成されるという極めて抽象的なものであるにすぎない。
本願意匠は、前述したとおり、明朝体による数字の「1」に近い形態を有するものであり、しかも、水平上辺板の約4倍、水平下辺板の約2倍の長さを有する垂直板の厚さを、敢えて薄くすることでスマートさを際立たせているから、その形態全体を一見した場合、高さ方向に細長く伸びるスマートさ、場合によってはある種の頼りなさを観者に与え、「上下方向の意匠」であることを印象づけるものである。
これに対して、「略ユの字状」である引用意匠は、がっちりとした堅牢な印象を与え、「左右方向の意匠」であることを観者に印象づけるものである。したがって、両意匠は、共通の視覚印象を観者に与えるものではない。
(2) 審決は、本願意匠と引用意匠の差異点として、「(ロ)水平下辺板の幅に対する垂直板の高さの比率について、本願の意匠は略2倍であるのに対して、引用意匠は略0.7倍であること」と認定した(このことは争わない。)上、「この種の物品において、その構成各部の長さ比率等を必要に応じて多少変更することは極普通に行われており、」としているが、誤りである。
本願意匠と引用意匠との関係についてみれば、「比率等を必要に応じて多少変更する」という程度を遙かに越えたものと認められ、しかも、本願意匠は、垂直板の厚さを水平下辺板の約5分の3に設定することで、垂直板の高さを強烈に際立たせているものである。つまり、本願意匠は、比率等を著しく相違させることで、引用意匠と共通の視覚印象を観者に与えるものではない。
ところで、本願意匠は、「建築物の梁、母屋等として使用する建築用構造材」であり、具体的には、願書に添付の「使用状態を示す参考図」記載の態様にて用いられ、建築工事が終了した後は建築物の外見に現れるものではない。したがって、この種の物品は、一般消費者ではなく、建築の専門家である建築工事業者を需要者とするものであるところ、この建築工事業者は、いわば専門家であり、実際の施工に携わるものであるから、機能的側面に基づき、形態の異同を直感的に見抜く能力を備えている。
例えば、本願意匠による物品を前記「使用状態を示す参考図」記載の態様で用いようとする場合、水平下辺部における垂直部を挟んだ左右の幅は他の部材との関係で適切であるか、水平上辺部の幅は保持部材との関係で適切であるか、垂直部の高さは適切であるか等、様々な項目をチェックして物品の採否を判断するものである。そして、そのような専門家において、本願意匠と引用意匠は、著しく相違したものであると一見して理解するものである。
したがって、審決が、「両意匠における長さ比率の差異も、本願意匠を特徴づけるものとして格別に評価することはできず、類比判断に及ぼす影響は微弱である」と認定判断したことは誤りである。
被告の反論の要点
1 取消事由1について 審決は、本願意匠と引用意匠の形態を比較するに当たり、各部の具体的な態様を認定する前段として、両意匠の形態について、形態全体の骨格といえるところを把握認定して、共通点(イ)としているのである。
すなわち、共通点(イ)は、両意匠の形態全体の骨格が共通するものとして、形態全体及びこの種物品においては最もその形態の特徴を表すところの断面形状の骨格についても把握し、「一定の断面形状で長手方向に連続する長尺材であって、その断面形状が、水平上辺板と垂直板と水平下辺板とを略ユの字状に一体的に連結したものであること」と認定したのである。
そして、両意匠の断面形状は、いずれも、水平上辺板、垂直板、水平下辺板とする各構成部が、ユの字を構成するような関係で一体的に連続して形成されているとし、その形態を端的に形容するために、「略ユの字状」と表現したものであって、字体としての「ユ」の字形や、その構成各部の長さ比率や、形成態様、肉厚までを考慮して認定しているわけではない。
2 取消事由2について この種軽量形鋼、あるいは、押出型材等からなる建築用構造材の物品分野において、その断面形状における構成各部の長さ比率や肉厚等を多少変えることは、
普通に行われており、1つの意匠の創作に関わるバリエーションの範囲内の事柄にすぎないものであり、そのような構成各部の肉厚の差異は、類比判断に与える影響が比較的小さいものと考えるのが妥当である。
本願意匠では、確かに、垂直板の肉厚が、水平上辺板や水平下辺板の肉厚よりもやや薄いのであるが、その差異は僅かであり、格別に目立つ程度の差異といえず、1つの意匠の創作に関わるバリエーションの範囲内にあって、格別評価することができないから、類比判断に影響を与えるほどのものではない。
3 取消事由3について (1) 本願意匠は、確かに、垂直板部が他の構成部に比してやや長く、明朝体による数字の「1」も、やはり垂直辺部が他の構成部に比してかなり長いので、把握する観点を垂直板部の長さだけに限定して対比すれば、本願意匠が明朝体による数字の「1」に近い形態であるといえる。しかし、明朝体による数字の「1」は、傾斜上辺、垂直辺、水平下辺とから成り立っており、それらが一体的に連結されたものであって、垂直辺部が最も長く、上辺部は鋭角に傾斜して短く、下辺部は水平上に短く表されている。すなわち、垂直辺は主役的意味をもって、太く長く強調して表され、上辺と下辺は、これらが表すべき数字体を、数字形状として全体的に整えるために補助的に付加される程度に小さく表されている。
これに対し、本願意匠は、上辺部も下辺部もいずれも水平状であって、上辺部の長さは下辺部の半分であり、下辺部の長さが垂直辺部の半分であって、この上辺と下辺とは垂直辺と一体となって、同程度に強調されて表されている。
したがって、本願意匠と明朝体による数字の「1」とは、上辺部、下辺部について、その態様が全く異なるのであるから、全体としてみれば、その形態は明らかに異なるのである。
(2) この種軽量形鋼、あるいは、押出型材等からなる建築用構造材の物品分野においては、その使用場所での制約、相手材の寸法、必要強度、設置箇所等に応じて、その断面形状における構成各部の長さ比率を変更することは普通に行われている。
そうすると、本願意匠の垂直板についても、必要に応じて適宜なされる変更の範囲内にあるものと認識して差し支えないものであり、本願意匠と引用意匠との関係についても、「比率等を必要に応じて多少変更する」という程度を遙かに越えたものとはいえないから、垂直板が本願意匠を特徴づけるものとはいえず、その差異が類比判断に及ぼす影響は微弱である。
また、建築工事業者等の専門家であれば、当然に、この種建築用構造材等の機能や形態に強い関心を持っており、様々な形態があることも把握しており、その様々な形態の個々の建築用構造材についても、その使用条件、相手材の寸法、必要強度等の制約を考慮に加えて、多少の寸法比率等の変更をしたものが必要になることも心得ている。 そうすると、審決において、差異点(ロ)として採り上げた、本願意匠と引用意匠の垂直板の高さの差異は、この種物品において常套的になされる改変範囲の変更と認められ、本願意匠を特徴づけるものでない以上、建築工事業者等の専門家は、その分野の通常の知識に照らし、垂直板の態様を格別の特徴を有しないものとみなすから、格別注目されるものではない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本願意匠と引用意匠の共通点の認定誤り)について 原告は、審決が、本願意匠と引用意匠の共通点(イ)として、「断面形状が、水平上辺板と垂直板と水平下辺板とを略ユの字状に一体的に連結したものである」と認定したことについて、引用意匠が「略ユの字状」であることは認めるが、
本願意匠は、水平上辺、垂直辺、水平下辺の3つの構成部分中、最も長い垂直辺の長さが、水平下辺の約2倍、水平上辺の約4倍であるから、「略ユの字状」ではなく明朝体による数字の「1」に近い形態を有すると主張する。
しかし、審決は、本願意匠と引用意匠の形態を比較するに当たり、まず、両意匠に共通する基本的な構成態様を把握することを目的として、「一定の断面形状で長手方向に連続する長尺材」であることを認定した上で、両意匠の断面形状において、いずれも、水平上辺板、垂直板、水平下辺板とする各構成部が、ほぼユの字を構成するような関係で一体的に連続して形成されていることから、その形態を概括的に把握して「略ユの字状」と表現したものであり、各構成部が厳密に「ユ」の字形を構成していると認定したものではない。そして、より詳細に両意匠の具体的な構成態様を検討し、その構成各部の長さ比率や形成態様の類否において、差異点(イ)として、「水平上辺板と垂直板が連接した角部の外角(270度)について、本願意匠のみ角丸状としていること」と、差異点(ロ)として、「水平下辺板の幅に対する垂直板の高さの比率について、本願意匠は略2倍であるのに対して、
引用意匠は略0.7倍であること」を認定した(この点は当事者間に争いがない。)ものである。
すなわち、審決は、本願意匠が、前記「略ユの字状」の基本的構成態様を有することを前提とした上で、より具体的に、上記差異点(ロ)として認定された「水平下辺板の幅に対する垂直板の高さの比率が略2倍」の構成を有すると認定したものであり、これが本願意匠の構成を正確に表現したものであることは明らかである。そうすると、本願意匠と引用意匠の共通点の認定を誤ったとする原告の主張は、審決の行った前記差異点の認定を無視して、基本的、概括的に把握すべき構成態様の認定を論難するものであるから、それ自体失当なものといわなければならない。
2 取消事由2(本願意匠と引用意匠の差異点の看過)について 原告は、引用意匠が、水平上辺板と垂直板と水平下辺板の厚さをほとんど同じくしているのに対し、本願意匠は、垂直板の厚さを、水平下辺板の約5分の3にしており、審決がこの差異点を看過していると主張する。
確かに、引用意匠では、水平上辺板、垂直板及び水平下辺板の厚さが、いずれもほぼ同一である(水平上辺板だけが僅かに薄い。)のに対し、本願意匠では、
垂直板の厚さが水平上辺板及び水平下辺板の約5分の3であるものと認められる。
しかし、本願意匠における上記各板の厚さの相違は、意匠の細部を注視して始めて認識できる程度の僅かなものであって、意匠全体に及ぼす影響も軽微なものであり、観者に与える印象を左右するようなものではないと認められるから、この点を引用意匠との差異として敢えて採り上げるまでもないものといえる。
したがって、原告の上記主張を採用する余地はない。
3 取消事由3(差異点に関する認定判断の誤り)について (1) まず、原告は、審決が、本願意匠と引用意匠の類比判断において、上記「共通点(イ)は、形態全体の骨格を成す態様であり」と認定したことが、本願意匠の態様を誤って理解した上でなされたものであるから誤りであると主張する。しかし、審決における共通点(イ)の認定に誤りがないことは、前述したとおりであるから、この点に関する原告の主張は採用できない。
(2) 次に、原告は、本願意匠が、明朝体による数字の「1」に近い形態を有するものであり、垂直板の厚さを敢えて薄くすることでスマートさを際立たせているから、高さ方向に細長く伸びるスマートさ等を観者に与え、「上下方向の意匠」であることを印象づけるのに対し、「略ユの字状」である引用意匠は、がっちりとした堅牢な印象を与え、「左右方向の意匠」であることを観者に印象づけるから、両意匠は、共通の視覚印象を観者に与えるものではないと主張する。
しかし、原告の主張するような「上下方向の意匠」である本願意匠と「左右方向の意匠」である引用意匠との差異は、両意匠の間で前記1記載の差異点(イ)、(ロ)の他に大きな差異点がない以上、結局、その垂直板の高さの比率を若干相違させたことに由来するものにすぎない。そして、押出型材や軽量軽鋼などの建築用構造材の物品分野において、その使用状況、他の部材との組み合わせ、必要強度などの要請に応じて、適宜、L字型(不等辺アングル)、溝型(チャンネル)、T字型、特殊T字型、H字型などの断面形状における各構成部分の長さの比率を適宜変更することは、極めて一般的に行われていることであると認められる(乙1,2。枝番号の書証を含む。)。例えば、引用文献の第76頁中段右欄に記載のNo.OT1798の「型材」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第49121739号)は、引用意匠との関係において、その垂直板を水平上辺板及び水平下辺板より僅かに薄くして長手方向に引伸させたにすぎないもの(ただし、水平上辺板の端部が水平下辺板の同一側の端部より若干長い。)と認められる。したがって、この種物品の意匠において、その構成部分中の垂直辺部の高さの比率のみを多少変更したとしても、意匠全体の類比判断に及ぼす影響は微弱であり、観者に格別異なった印象を与えるものではなく、審決の認定した両意匠の共通点を凌駕するものではないといわざるを得ない。
なお、原告は、本願意匠が明朝体による数字の「1」に近い形態を有するものであることを強調するところ、確かに、両者の形態は、その基本的構成を概括的に見れば近似するものといえる。しかし、本願意匠と明朝体による数字の「1」の形態とを対比した場合に近似する面があることが、本願意匠と引用意匠とが類似するという前記の判断に影響を及ぼすものではない。
いずれにしても、原告の主張は採用できない。
(3) さらに、原告は、この種の物品が、建築の専門家である建築工事業者を需要者とするものであり、この建築工事業者は、実際の施工に携わるから、機能的側面に基づき、形態の異同を直感的に見抜く能力を備えており、様々な項目をチェックして物品の採否を判断し、本願意匠と引用意匠を著しく相違したものと理解する旨主張する。
しかし、押出型材や軽量軽鋼などの建築用構造材の物品分野において、その使用状況、他の部材との組み合わせ、必要強度などの要請に応じて、当該部材の断面形状における各構成部分の長さの比率を適宜変更することが、極めて一般的に行われていることは、前述のとおりである。したがって、これらの物品の主たる需要者である建築工事業者は、その構成部分の垂直板の高さの比率のみを多少変更したとしても、通常の改変の範囲内にすぎないと理解し、意匠全体が大きく相違するとの印象を持つことはないものと推認されるから、この点に関する原告の主張も採用できない。
4 結論 以上のとおり,原告主張の各取消事由はいずれも理由がなく,その他審決には取り消すべき瑕疵はない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青柳馨
裁判官 清水節