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関連審決 不服2001-6539
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 物品 /  物品の形状 /  形状 /  意匠に係る物品 /  新規性 /  3条1項3号 /  頒布された刊行物 /  類似の意匠 /  部品 /  意匠の類否 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 422号 審決取消請求事件
原告 株式会社小財スチール
訴訟代理人弁理士 松尾憲一郎
同 内野美洋
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 遠藤京子
同 藤正明
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/02/24
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2001-6539号事件について平成14年6月11日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,意匠に係る物品を「道路用防獣さく」,その形態を別添審決謄本写し別紙第一「本願意匠」欄記載のとおりとする意匠(以下「本願意匠」という。)の登録出願人及び拒絶査定に対する不服審判の請求人であり,その経緯は次のとおりである。
平成12年4月19日 意匠登録出願(意願2000-10234号) 平成13年3月30日 拒絶査定 同 年4月24日 不服審判請求(不服2001-6539号) 平成14年6月11日 請求不成立の審決 同 年7月18日 原告への審決謄本送達 2 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願意匠は,その出願前に頒布された特許庁発行の登録実用新案公報(甲8,以下「登録実用新案公報」という。)に記載の実用新案登録第3041701号の図2(以下「引用図面」という。)に表された「防獣フェンス」の意匠であって,その形態を別添審決謄本写し別紙第二「引用意匠」欄記載のとおりとする意匠(以下「引用意匠」という。)と比較すると,意匠に係る物品が共通し,その形態についても,差異点は共通点をりょうがすることができず,両意匠は類似するから,本願意匠は,意匠法3条1項3号に該当し,意匠登録を受けることができないとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は,引用意匠の形態の認定を誤り,かつ,差異点を看過する(取消事由1)とともに,本願意匠と引用意匠の類否判断を誤った(取消事由2)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
2 取消事由1(引用意匠の形態の認定の誤り及び差異点の看過) 審決は,引用図面から支柱部材間の格子パネル体のみを抽出して引用意匠の形態を認定しているが,同図面は,当該実用新案登録の考案に係る「防獣フェンス」の一実施の形態を示すものであるから,引用意匠は,フェンス体を支柱部材や有刺鉄線により組み立てて実施した状態の防獣フェンス構造体全体の形状として把握すべきものである。また,その場合には,本願意匠と引用意匠との差異点として審決が認定した(イ)〜(ハ)(審決謄本2頁第2段落)以外に,本願意匠が引用意匠と対比して具備していない形状,すなわち,@垂直方向に建て込んである支柱部材,A支柱部材の上部側を所要長さ突出させた突出部,B突出部に所要間隔をもって水平方向に張設した張設部材である2本の有刺鉄線の各形状も,差異点を構成することとなる。したがって,審決には,引用意匠の形態の認定を誤り,かつ,差異点を看過した違法がある。
3 取消事由2(本願意匠と引用意匠の類否判断の誤り) (1) 審決は,格子パネル体の縦横(高さと幅)の構成比率の違いに関する差異点(イ)につき,引用意匠が横長に表されていることを前提にして類否判断をしているが,引用図面からは,格子パネル体の縦方向の長さは確定できるものの,横方向の長さは特定できないから,前提において誤りがある。また,上記構成比率は,その他の形状の差異点とのかかわりで総合的に判断すべきものであって,それのみを単独で論ずることには意味がない。
(2) 審決は,格子パネル体下端近傍の1本の横条線の有無に関する差異点(ロ)につき,これが顕著なものであるとしながら,当該横条線は使用の際には地面と接して目立たなくなるとして,看者に別異の意匠を構成したとの印象を与えるほどの効果を生ずるものとはなり得ないと判断している。しかし,意匠の類否判断は,意匠に係る物品の使用状態としての顕著性よりも取引の流通過程での顕著性に重きを置くべきであり,この物品の流通過程での意匠の特徴が大きな要素となるところ,上記横条線は,取引の流通過程においては顕著に識別されるものであるから,審決の上記判断は誤りである。すなわち,本願意匠は,下端近傍に1本の横条線が存在するため,櫛歯の形状が影響を受け,この下端の短い櫛歯状の形状が,上端の非突出形状とあいまって,看者にフェンス体の幾何学的な全体形状ないし略矩形形状の印象を与えるのに対し,引用意匠は,上記横条線がないため,櫛歯の存在が大きくクローズアップされ,しかも上端が突出しているため,全体としては上下に櫛歯が顕著に現れたフェンス体の意匠として認識されるから,上記横条線の有無によって両意匠は全体の印象が全く異なり,非類似と判断されるべきである。
なお,原告は,本件意匠登録出願より後に,本願意匠と同じく意匠に係る物品を「道路用防獣さく」とする4件の意匠登録出願(意願2000─37159〔甲2〕,意願2000─35208〔甲3〕,意願2000─35201〔甲4〕,意願2000─35200〔甲5〕)をし,いずれも公知意匠と非類似と判断されて意匠登録がされており,これによれば,フェンス体の基本形状が同じである限り,1本の横条線の位置次第で意匠の新規性が肯定されることとなるから,この点からしても,本願意匠は,引用意匠とは非類似の意匠として新規性があることは明らかである。
(3) 審決は,格子パネル体の上端の態様に関する差異点(ハ)に関して,本願意匠の最上段の横条線上端と縦条線の上端をそろえた態様が従来から普通に見られ,特徴とはなり得ないとして,引用意匠との差異はさほど注目されるものではなく,その類否判断に及ぼす影響は微弱であると判断したが,本願意匠は,格子パネル体の上端の上記態様のほか,他の差異点とを総合的に比較すると,フェンス体の全体の形状を縦長矩形状のすっきりとしたものに見せており,看者に引用意匠とは全く異なる印象を与える。甲2〜5の登録意匠の例からしても,本願意匠が引用意匠と非類似とされ,新規性が肯定されることは,上記(2)のとおりである。
(4) 審決は,引用意匠が格子パネル体の左右端にも横条線を突出させている点においても差異があるとの請求人(原告)の主張について,その差異は,類否判断にさしたる影響を及ぼすものではないと判断したが,横条線の突出部は,他の形状の差異を更に顕著なものにするための補助的な差異として認識すべき形状であり,他の形状との総合的な関係において対比すべきであるから,上記突出部のみを単独で対比判断したのは誤りである。
(5) 審決は,総合判断として,両意匠の差異点は共通点をりょうがすることができず,両意匠は類似すると判断したが,本願意匠は,フェンス体の周縁に突出の目立たない,縦長矩形状のすっきりとした形状であるのに対し,引用意匠は,突出の目立つ野性的な形状の印象を与えるものであって,全体として非類似であるから,審決の類否判断は誤りである。
被告の反論
1 審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由1(引用意匠の形態の認定の誤り及び差異点の看過)について 引用図面は,当該考案に係る防獣フェンス構造体の一実施の形態を示したものであって,支柱部材に,「防獣フェンス」を取着するとともに,張設部材(有刺鉄線)を張設して成る防獣フェンス構造体が図示されており,同図面において,「防獣フェンス」の意匠は,防獣フェンス構造体における構成部品として独立して把握することができるから,審決が,これを本件意匠登録出願前に国内において頒布された刊行物記載の引用意匠の形態として認定したことに誤りはない。
3 取消事由2(本願意匠と引用意匠の類否判断の誤り)について (1) 引用意匠の形態は,引用図面に記載のとおりのものであって,その横方向の長さは,同図面の記載により,同図面記載のとおりの長さのものとして特定できるから,差異点(イ)として,引用意匠が横長に表されているとした審決の認定に誤りはない。
(2) 審決は,差異点(ロ)の判断において,本願意匠の格子パネル体下端近傍の1本の横条線が使用の際には地面と接して目立たなくなるものであることを考慮はしているが,それのみで差異点(ロ)の判断をしたわけではないし,意匠に係る物品の使用の際の状態について考慮したからといって,意匠の類否判断に際して物品の流通過程での意匠の特徴が大きな要素となることを否定したものでもない。確かに,本願意匠は,物品が使用されていない取引の流通過程においては,上記横条線は顕著に識別されるものとはいえるが,当該横条線は,格子パネル体全体の下端近傍に水平に配した1本の線状のものであり,形態全体の中では,その配置位置,配置態様及び形状自体によっても,両意匠の共通する形態全体の基調がもたらす強い共通感に圧倒される。また,原告は,上記横条線の有無によって櫛歯の形状が影響を受け,ひいては両意匠は全体の印象が全く異なる旨主張するが,両意匠とも,全体が方形状の格子パネル体で,地中に埋設するため,看者に下端側を櫛歯状に突出したものとの印象を与える点で軌を一にしており,形態全体を見ると,本願意匠が略矩形形状の印象を与えるものではなく,引用意匠も,全体としては上下に櫛歯が顕著に現れたフェンス体の意匠として認識されるものではないから,原告の主張は失当である。
(3) 原告主張のように,両意匠が全く異なる印象を与え,非類似であるとはいえないことは,上記のとおりであり,審決の差異点(ハ)の判断に誤りはない。なお,原告主張の登録意匠の存在は,本件の両意匠を非類似の意匠と判断すべきことの根拠となるものではない。
(4) 審決は,格子パネル体の左右端に見られる横条線の突出の差異について,それ自体を形態全体から切り離して類否判断をしているわけではなく,他の差異点とあいまった効果を考慮しても,類否判断にさしたる影響を及ぼすものではないと判断したものであるから,この点についても何ら誤りはない。
(5) 両意匠が全体的な形状として類似するものであることは,上記のとおりであり,審決の総合判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(引用意匠の形態の認定の誤り及び差異点の看過)について 審決が,引用意匠の形態を,引用図面,すなわち,本件意匠登録出願前に頒布された特許庁発行の登録実用新案公報に記載の実用新案登録第3041701号の図2に表された「防獣フェンス」の意匠であって,その形態を別添審決謄本写し別紙第二「引用意匠」欄記載のとおりとする意匠として認定していることは当事者間に争いがない。そして,登録実用新案公報(甲8)によれば,考案の名称を「防獣フェンス及び防獣フェンス構造体」とする実用新案登録に係り,「防獣フェンス」は,動物の侵入を防止するフェンスであって,線材から成り動物が通過できない隙間の幅をもって垂直方向に所要数並設されているフェンス部材と連結部材等から構成され(請求項1),「防獣フェンス構造体」は,所要間隔をもって建て込んである支持部材に防獣フェンスが取着手段により取着され,水平方向に所要数の張設部材を張設して成るものとして記載されている(請求項5)こと,図2(引用図面)は,図面の簡単な説明によれば,「本考案に係る防獣フェンス構造体の一実施の形態を示しており,フェンス部材の下部側を埋設した状態で施設してある説明図」であって,「防獣フェンス」(1,1a)のほか,フェンス部材,連結部材,支持部材等の構成部品から成る「防獣フェンス構造体」(100)を図示していること,同図面中には,「防獣フェンス」が支柱部材に取着された状態で表されており,その形態は,引用意匠に係る形状,すなわち,縦条線と横条線で格子状に形成した方形状の格子パネル体として独立して認識,把握し得るものであることが認められる。
原告は,引用図面は,当該実用新案登録の考案に係る「防獣フェンス」の一実施の形態を示すものであるから,引用意匠は,フェンス体を支柱部材や有刺鉄線により組み立てて実施した状態の防獣フェンス構造体全体の形状として把握すべきものであるとして,審決には,引用意匠の形態の認定を誤り,かつ,差異点を看過した違法があると主張する。しかし,登録実用新案公報は,意匠公報とは異なり,技術的思想の内容を表した刊行物であり,掲記される実施例の図示も,当該技術的思想の実施の形態を具体的に表したものであるから,そこに記載される物品の形状等の全部が当然に公知意匠である頒布刊行物記載の意匠となるものではない。本件においては,「防獣フェンス構造体」の構成部品である「防獣フェンス」の意匠が,刊行物である登録実用新案公報に記載された図面中に,他の構成部品である支柱部材等と組み合わさって「防獣フェンス構造体」を形成した状態で表されていても,「防獣フェンス」の意匠は,上記のとおり,「防獣フェンス構造体」の構成部品である,縦条線と横条線で格子状に形成した方形状の格子パネル体として独立して認識,把握し得るものであるから,そのような形状のものとして引用図面に表された「防獣フェンス」の意匠を刊行物記載の引用意匠の形態として認定した審決に誤りはなく,原告の主張は採用の限りではない。
2 取消事由2(本願意匠と引用意匠の類否判断の誤り)について (1) 差異点(イ)について 審決が,差異点(イ)として,「格子パネル体の縦横(高さと幅)の構成比率につき,本願意匠は,縦(高さ)が横(幅)より若干長いのに対して,引用意匠は,横長に表されている点」(審決謄本2頁第2段落)を認定した上,「その差異は注目され得ず,類否判断に然したる影響を及ぼすものではない」(同第4段落)と判断したことについて,原告は,引用図面からは,格子パネル体の縦方向の長さは確定できるものの,横方向の長さは特定できないから,前提において誤りがあると主張する。しかし,登録実用新案公報に記載された「防獣フェンス」は,上記認定のとおり,線材から成り動物が通過できない隙間の幅をもって垂直方向に「所要数並設」されているフェンス部材等から構成されるものであって,引用図面に表された「防獣フェンス」の意匠において,その横方向の長さは,縦条線が「所要数並設」されている範囲内のものが表されていると認識,把握することが可能であり,そうとすれば,引用意匠は,同図面に記載のとおりの横方向の長さのものとして特定されていることになる。もっとも,登録実用新案公報の記載において格子パネル体の縦条線の具体的本数は限定されていないから,引用図面に表された「防獣フェンス」は,横に長く延びた連続するものの一部を記載したものと見る余地もあるが,そうであるとしても,同図面に表された「防獣フェンス」の意匠に,同図面に記載のとおりの横方向の長さのものが含まれないことにはならないし,この種物品分野において,格子パネル体の横方向の長さは,使用の場所,設置される長さ等に応じて適宜決定される事項にすぎないことは当裁判所に顕著であるから,その差異はさして類否判断に影響を及ぼすようなものではないとした審決の判断に誤りはない。原告は,構成比率は,その他の形状の差異点とのかかわりで総合的に判断すべきものであって,それのみを単独で論ずることには意味がないとも主張するが,審決を正解しないものというほかはなく失当である。
(2) 差異点(ロ)について 審決は,差異点(ロ)として,「格子パネル体の下端付近の態様につき,本願意匠は,櫛歯状に突出した縦条線の下端近傍に一本の横条線を水平に配しているのに対して,引用意匠は,その様な横条線を配していない点」(審決謄本2頁第2段落)を認定した上,「その差異は,共通点を凌いで看者に別異の意匠を構成したとの印象を与えるほどの効果を生じるものとはなり得ず,その類否判断に及ぼす影響はさほど大きなものではない」(同第4段落)と判断している。
この点について,原告は,まず,格子パネル体下端近傍の1本の横条線の有無に関し,審決が,当該横条線は使用の際には地面と接して目立たなくなるとして,看者に別異の意匠を構成したとの印象を与えるほどの効果を生じないとした点をとらえ,意匠に係る物品の使用状態としての顕著性よりも取引の流通過程での顕著性に重きを置くべき類否判断の手法を誤っている旨主張する。しかし,意匠の類否を判断するに当たっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等も参酌した上,意匠を全体として観察することを要するところ,本願意匠に係る物品は「道路用防獣さく」,引用意匠に係る物品は「防獣フェンス」であって,いずれも動物の侵入を防止するためのフェンス体であり,その下端部を地中に埋設して使用するものであることは,別添審決謄本写し別紙第一の「使用状態を示す参考図」及び同第二の引用図面から明らかであるから,審決が,このような物品の使用態様を参酌したこと自体を目して誤りということはできない。
原告は,また,意匠に係る物品が使用されていない状態にある取引の流通過程を前提にして,格子パネル体下端近傍の1本の横条線の有無により,櫛歯の形状等とあいまって,両意匠は全体の印象が全く異なる旨主張するところ,確かに,両意匠に表された格子パネル体の下端近傍の態様に着目し,下方の櫛歯等の形状も勘案するときは,その限りにおいて,看者の受ける印象に若干異なるものがあることは否定し難いところである。しかし,意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するところ,本願意匠と引用意匠が,全体の形態において,「縦条線と横条線で格子状に形成したものであり,縦条線は,多数本を幅狭の等間隔で垂直に配列し,横条線は,幅狭間隔の2本一組を一段として幅広の等間隔で水平に複数段配し,全体として方形状の格子パネル体を形成している点」で共通し,具体的には,「縦条線の間隔と一組の横条線2本の間隔を同幅とし,縦条線と一組の横条線で形成する格子目を正方形状に表している点」,「一組の横条線は,格子パネル体の上端から下端寄りにかけて5段配したものであり,縦条線と横条線段間で形成される格子目を細い縦長長方形状に表している点」及び「最下段の一組の横条線の下方に縦条線が櫛歯状に突出している点」で共通する(審決謄本1頁最終段落〜同2頁第1段落)ことは,当事者間に争いがない。そして,本願意匠が,格子パネル体下端近傍に1本の横条線を配していることによっても,下端側に縦条線が櫛歯状に突出していることに変わりはなく,その櫛歯状の突出の程度は,当該部分を地中に埋設するに十分であるとの印象を看者に与えるものであり,一方,引用意匠も,縦条線上端が突出し,横条線先端も突出した態様で表されているものの,ごく小さなものであり,極端に大きく突出した縦条線下端の櫛歯状の突出の効果により相対的に目立つものではない形態となっている。そうすると,両意匠に共通する上記認定の格子パネル体としての形態全体の基調,すなわち,「多数本を幅狭の等間隔で垂直に配列した縦条線の上端から下端寄りにかけて,幅狭間隔の2本一組を一段として幅広の等間隔で水平に5段配した,全体として方形状の格子パネル体で,最下段の一組の横条線の下方に縦条線が櫛歯状に突出したもの」を基礎として,この全体としての形態の中に,本願意匠の格子パネル体下端近傍に存在する1本の横条線を位置付けて見ると,この点について引用意匠との間に若干の差異があるからといって,意匠を全体として見る限り,看者に異なった美観ないし美的印象を与えるものとはいえず,両意匠の強い類似性の中に埋没してしまう程度のものと認めるのが相当であり,その類否判断に及ぼす影響はさほど大きなものではないとした審決の判断に誤りはないというべきである。
なお,原告は,本件意匠登録出願より後に,本願意匠と同じく意匠に係る物品を「道路用防獣さく」とする4件の意匠登録出願をし,いずれも公知意匠と非類似と判断されて意匠登録がされていることを,本願意匠と引用意匠が非類似と判断されるべきことの根拠として主張するが,他の登録意匠の存在は,本件の類否判断を左右するものではない。
(3) 差異点(ハ)について 審決が,差異点(ハ)として,「格子パネル体の上端の態様につき,本願意匠は,最上段の一組の横条線の上端と縦条線の上端を揃えているのに対して,引用意匠は,最上段の一組の横条線の上方に縦条線の上端が若干突出している点」(審決謄本2頁第2段落)を認定した上,その類否判断に及ぼす影響は微弱であると判断したことについて,原告は,本願意匠は,格子パネル体の上端の上記態様のほか,他の差異点とを総合的に比較すると,フェンス体の全体の形状を縦長矩形状のすっきりとしたものに見せており,引用意匠と全く異なる印象を与え,非類似であると主張する。しかし,審決は,本願意匠に係る格子パネル体の上端の上記態様は,従来から普通に見られ,特徴的なものではないこと,引用意匠の縦条線上端の突出の程度もごくわずかなものにすぎず,意匠全体として見ると,その差異はさほど注目されるものではなく,両意匠の共通する基調の中に包摂される程度のものにとどまることを認定判断した上,差異点(ハ)につき,上記のとおり説示したものであって,その前提となる上記認定判断は,首肯するに足りるというべきである。なお,審決が他の差異点を含めた総合的な類否判断をしていることは明らかであり,また,原告主張の他の登録意匠の存在が本件の類否判断を左右するものでないことは,上記(2)のとおりである。
(4) その余の差異点について 原告は,審決が,引用意匠が格子パネル体の左右端にも横条線を突出させている点の差異について,上記突出部のみを単独で対比判断した誤りがある旨主張する。しかし,審決は,引用意匠は,格子パネル体の右端では横条線が突出した態様で表されているが,その左端では横条線が突出しているかは必ずしも明確ではないとした上,たとえ左端も横条線を突出させた態様のものであるとしても,本願意匠における左右端の横条線突出の形状,その使用態様を勘案して,その差異が両意匠の類否判断にさしたる影響を及ぼすものではないと判断したものであって,その判断過程に不合理な点はなく,誤りは認められない。原告の主張は,審決を正解しないでこれを論難するものであり失当というほかはない。
(5) 以上の認定判断によれば,本願意匠と引用意匠は,意匠に係る物品が共通し,その形態も,差異点については,いずれも意匠の細部にわたるものであるか,両意匠の強い類似性の中に埋没してしまう程度のものであって,両意匠の構成を全体的に観察するときは,看者に異なる美観ないし美的印象を与えるものではなく,類似の意匠と認めるべきであるから,これと同旨をいう審決の判断に誤りはなく,原告の主張は採用することができない。
3 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 長沢幸男
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