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関連審決 不服2001-9873
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16行ケ138審決取消請求事件 判例 意匠
平成17行ケ10083審決取消(意匠)請求事件 判例 意匠
平成18行ケ10367審決取消請求事件 判例 意匠
平成11行ケ321審決取消請求事件 判例 意匠
平成20ワ8761意匠権侵害差止等請求事件 判例 意匠
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  創作非容易性 /  創作容易(容易の創作) /  公然知られた(3条1項1号) /  置換 /  寄せ集め /  配置の変更 /  構成比率の変更 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 229号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁理士 広瀬文彦
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 西本幸男
同 藤正明
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/01/29
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2001-9873号事件について平成14年3月14日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,意匠に係る物品を「そばいなり」,その形態を別添審決謄本別紙第一「本願の意匠」欄記載のとおりとする意匠(以下「本願意匠」という。)の登録出願人及び拒絶査定に対する不服審判の請求人であり,その経緯は次のとおりである。
平成12年3月 3日 意匠登録出願(意願2000-4623号) 平成13年5月14日 拒絶査定 同 年6月13日 不服審判請求(不服2001-9873号) 平成14年3月14日 請求不成立審決 同 年4月 8日 原告への審決謄本送達 2 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願意匠は,出願前に当業者が日本国内において公然知られた形状である別紙公知意匠一覧表記載の各意匠(以下,同表左欄の記載に従って「公知意匠1〜6」と表記し,これらを「本件公知意匠」と総称する。)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから,意匠法3条2項に該当するものであり,意匠登録を受けることができないとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は,本願意匠について,本件公知意匠に基づく創作容易性の判断を誤った(取消事由)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(創作容易性の判断の誤り) (1) 本願意匠は,以下の特徴を備える点で今までにない形状を有するものである。
第一の特徴は,本願意匠では,おいなりさんの口が上方を向いて開いている点にある。これは油揚げの中に入っている具を見せるためである。すなわち,通常のいなりずしは油揚げの中にご飯を入れて口を閉じてあるが,本願意匠ではそばを使用しており,これを強調するために中身が見える状態にしたものである。さらに,本願意匠では,開口部から,そばのほかにそばの上に乗せた薬味が見えるため,茶色一色のいなりずしにはない,生姜の黄色と刻んだねぎの緑色及び白色を配したカラフルな彩りのあるいなりずしを演出することができる点で,創作性が高いものである。
第二の特徴は,本願意匠では,帆立貝のひも(外とう膜)でおいなりさん全体を結んでいる点にある。上記のとおり,おいなりさんの口を開けて中身が見えるようにしたため,そのままでは口が広がってしまい,おいなりさんの形を成さない。そこで,口が広がるのを防ぐために,おいなりさんの中央を帆立貝のひもで結んだものである。また,帆立貝のひもの結び目を開口部の横に持ってくることにより,帆立貝のひもであることを強調している。さらに,そばの濃い茶色,それよりやや薄い茶色の油揚げの色,肌色の帆立貝のひもの色,帆立貝のひもで分けられた左右に,黄色い生姜と緑色及び白色の刻んだねぎの色が配され,おいなりさん全体にアクセントを与える美的な処理が施されている。
(2) 上記第一の特徴に関し,審決は,公知意匠1〜3について「開口部から見えるご飯および具は特定の位置に配置する等の美的処理がなされていないと解すべき根拠はな」い(審決謄本5頁第2段落末尾)として,上記特徴に係る形態の創作非容易性を否定するが,誤りである。
本願意匠では,開口部から見える具の配置を考慮して美的な処理がされているのに対して,公知意匠1〜3では,特定の位置に具を配する等の処理がされていないことは明らかである。
また,被告の援用する乙3の公知意匠において,美的な処理を意識的にしたトッピングを備えることは認めるが,そのトッピングの内容において,本願意匠とは美的処理の態様が異なるのであるから,本願意匠の開口部の具の配置が容易に創作し得たものとはいえない。乙6の公知意匠では,刻んだ紅生姜がトッピングとして使用されているが,本願意匠は,すりおろした生姜をトッピングとして使用するものであるから,色彩も形状も異なるものである。
(3) 上記第二の特徴に関し,審決は,「当業者であれば,いなりずしであったとしても,それが,型くずれを起こしそうな場合に,紐状の食品で結ぶということに想到することは,前記引例4〜5(注,公知意匠4〜6)に照らして容易といわざるをえない」(審決謄本6頁第1段落),「型くずれを防止するために捲く紐状の状食材(注,「食材」の誤記と認める。)には,かんぴょう,海草,総菜等があり,帆立貝のひもを選択したことに,格別の創作性が認められ」ない(同頁第3段落)と判断するが,誤りである。
公知意匠4〜6は,いずれも巻き寿司に関するものである。巻き寿司にあっては,巻きが解けることを防止するのは当然の問題であるのに対し,本願意匠のおいなりさんは袋状の油揚げを使用しているので,ひもで結ぶことが一般的であるとも必然的であるともいえない。おいなりさんをひもで結ぶという点で,すでに独創性が認められるべきである。また,ひも状の食材の選択に関しても,公知意匠4〜6に表れているのはいずれもかんぴょうであり,それ以外の食材を使用することは,むしろ極めてまれであり,被告が本訴で追加した書証(乙4,5)を含め,帆立貝のひもで結んだものはない。
(4) また,上記各特徴に共通する色彩の点について,審決は,「本件意匠登録出願には,色彩は現されておらず,色彩に関する請求人(注,原告)の主張は採用することができない」(審決謄本6頁第2段落)と判断するが,誤りである。
本願意匠は,図面代用写真によって出願されたものであり,その写真に白黒写真が用いられていることは確かであるが,白黒写真で表された物品には色彩がないものと確定的に判断されるべきではない。本願意匠が黒色のそばいなりを意図するものと解するとすれば,常識に反する判断といわざるを得ない。また,白黒写真においても,その色彩が濃淡をもって表されることは当然である。
(5) 意匠法3条2項創作容易性の判断に係る特許庁の意匠審査基準は,同一の形状を含む公知意匠についての置換,寄せ集め,配置の変更,構成比率の変更等を創作性のない意匠であるとしているところ,本件では,類似の形状を含むにすぎない6件もの公知意匠に基づいて創作容易性を判断しており,これは上記審査基準に適合しないというべきである。また,このような多数の公知意匠を挙げなければならないということ自体,本願意匠の創作非容易性を示すというべきであり,多数の公知意匠を組み合わせれば創作が容易であるとするのは,創作容易性の判断の手法としては誤りである。
被告の反論
1 審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(創作容易性の判断の誤り)について (1) 上部を開口したいなり寿司は,公知意匠1〜3で例示したとおり,本件出願前に公知のものである。そして,その開口部に種々の具をトッピングすることも普通に行われていることであり(例えば,平成3年10月1日株式会社光文社発行の「JJジェイジェイ」17巻10号272頁中央左に所載の「遊洛花いなり・いくら」の意匠〔乙2〕,平成4年6月10日株式会社グラフ社発行の「マイライフシリーズ・281,世界で愛される日本食の粋,手作りおすし」34頁中段所載の「三色いなり」の意匠〔乙3〕,平成8年度きのこ料理コンクール全国大会林野庁長官賞受賞作品「きのこのきんぴら・そば・いなり」〔乙6〕),本願意匠において開口部に薬味をトッピングしたことが格別のものとはいえない。
(2) いなり寿司をひもで結ぶことは,本件出願前に公知の意匠にすぎず(例えば,昭和45年6月20日図書印刷株式会社発行の「家庭料理全書」275頁所載の「いなりずし」の意匠〔乙4〕,平成3年10月1日株式会社光文社発行の「JJジェイジェイ」17巻10号273頁中央右に所載の「志乃多寿司総本店 特製志乃多」の意匠〔乙5〕),また,巻き寿司の型くずれを防止するためのひもから容易に転用することができるものでもある。そして,帆立貝のひもを使用したからといって,食感や味はともかく,意匠上の創作性に影響を与えるものではない。
(3) 色彩に関する原告の主張は,本件出願の願書に添付した図面代用写真が色彩の付されていないものである以上,失当である。なお,明暗調子のコントラストについて,本願意匠に格別の創作性があるともいえない。
(4) 意匠審査基準では,同一の形態を有する公知意匠に基づく創作非容易性を例に挙げているが,その判断に供される公知意匠が同一の形態を有することを要するというものではなく,原告の主張は失当である。
当裁判所の判断
1 取消事由(創作容易性の判断の誤り)について (1) 原告は,本願意匠の第一の特徴は,いなり寿司の口が上方を向いて開いている点にあるとした上,開口部から見える具の配置を考慮して美的な処理がされている点で,公知意匠1〜3とは異なる旨主張する。
しかし,まず,いなり寿司の口が上方を向いて開いている形態は,公知意匠1〜3(乙1の第二〜第四)に見られるとおり,本件出願前に普通に見られるものにすぎないというべきところ,これら公知意匠においては,いなり寿司に開口部を設けたことにより,当該開口部から油揚げに包まれた内容物及び具材を見せるという美的効果を奏するものであることは明らかである。加えて,平成3年10月1日株式会社光文社発行の「JJジェイジェイ」17巻10号272頁中央左に所載の「遊洛花いなり・いくら」の意匠(乙2),平成4年6月10日株式会社グラフ社発行の「マイライフシリーズ・281,世界で愛される日本食の粋,手作りおすし」34頁中段所載の「三色いなり」の意匠(乙3)及び平成8年度きのこ料理コンクール全国大会林野庁長官賞受賞作品「きのこのきんぴら・そば・いなり」(乙6)においても,上方を向いたいなり寿司の開口部に,明らかに具の配置を考慮した美的な処理を行ったトッピングが施されていることが認められ,原告の主張する上記差異点は,いなり寿司の形態における常とう的な処理にすぎず,当業者にとってありふれた手法というべきである。
また,原告は,上記乙号各証の意匠に見られるトッピングの内容が本願意匠と異なる点を主張する。しかし,本願意匠で使用されているおろし生姜と刻みねぎが,いわば定番の薬味として,そばを始めとする各種の料理にトッピング等として添えられるものであることは当裁判所に顕著であるから,意匠に係る物品を「そばいなり」とする本願意匠において,開口部に使用するトッピングとしておろし生姜と刻みねぎを使用したことに当業者にとっての格別の創作性を肯定することはできないというべきである。
(2) 次に,原告は,本願意匠の第二の特徴は,帆立貝のひもでいなり寿司全体を結んでいる点にあるとした上,いなり寿司をひもで結ぶとともに,ひも状の食材として帆立貝のひもを選択したことに独創性が認められべきである旨主張する。
しかし,いなり寿司をひもで結ぶ意匠は,昭和45年6月20日図書印刷株式会社発行の「家庭料理全書」275頁所載の「いなりずし」の意匠(乙4),平成3年10月1日株式会社光文社発行の「JJジェイジェイ」17巻10号273頁中央右に所載の「志乃多寿司総本店 特製志乃多」の意匠(乙5)に見られるとおり,本件出願前において普通に採用されていた常とう的なものにすぎないというべきであるし,ひも状の食材として帆立貝のひもを選択した点も,食味や食感等の問題は別として,意匠としての美感という観点からは,かんぴょう等を使用した慣用的な形態と選ぶところはなく,当業者にとっての格別の創作性を肯定することはできない。
(3) また,原告は,本願意匠の色彩に関し,そばの濃い茶色,それよりやや薄い茶色の油揚げの色,肌色の帆立貝のひもの色,帆立貝のひもで分けられた左右に,黄色い生姜と緑色及び白色の刻んだねぎの色が配され,おいなりさん全体にアクセントを与える美的な処理が施されていると主張するが,原告も自認するとおり,本願意匠は意匠登録を受けようとする意匠を白黒の図面代用写真をもって現わして出願されているものであり(甲4),同写真によっては上記主張に係る色彩を認識することはできないから,失当というべきである。なお,白黒写真であっても,濃淡が表現され得ることは原告の主張するとおりであるが,本願意匠の図面代用写真に見られる濃淡の表現において,当業者が本件公知意匠に基づいて意匠の創作をすることを困難とするような格別の創作性は認められない。
(4) さらに,原告は,意匠法3条2項創作容易性の判断に係る特許庁の意匠審査基準は,同一の形状を含む公知意匠についての置換,寄せ集め,配置の変更,構成比率の変更等を創作容易性のない意匠であるとしているとの前提で,審決の創作容易性の判断は特許庁の審査基準に適合しない旨主張する。しかし,意匠審査基準は,特許庁における意匠登録出願審査事務の便宜と統一のために定められた内規にすぎず,法規としての効力を有するものではないのみならず,意匠法3条2項に定める創作容易性の判断において,原告主張の「同一の形状を含む公知意匠」の存在が前提となると解すべき根拠はないから,上記主張は採用することができない。
また,原告は,多数の公知意匠を組み合わせれば創作が容易であるとするのは,創作容易性の判断の手法として誤りである旨主張するが,本件において,本願意匠の特徴として原告の主張する点が,いずれもいなり寿司における慣用的な形態にすぎないものであり,かつ,それらの組合せに当業者にとっての格別の創作性が認められないことは前示のとおりであるから,審決が本件公知意匠として6件の意匠を引用したこと自体が,本願意匠の創作非容易性を基礎付けるものとはいえない。
2 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利
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