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関連審決 不服2001-13427
関連ワード 意匠の実施 /  意匠の創作 /  物品 /  物品の形状 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  創作容易(容易の創作) /  一意匠一出願(7条) /  新規性 /  公然知られた(3条1項1号) /  広く知られた /  意匠の属する分野 /  通常の知識を有する者 /  手続違背 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 389号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁護士 石川幸吉
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 江塚尚弘
同 藤木和雄
同 藤正明
同 大橋良三
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/11/28
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が不服2001-13427号事件について平成14年6月25日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成11年2月26日に,意匠に係る物品を「濾過機液槽内装着用濾過板」として,別紙審決書写しの別紙第一の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠登録出願(平成11年意匠登録願第4937号。以下「本願出願」という。)をしたところ,平成13年7月23日に拒絶査定を受けたので,同年8月1日,これに対する不服の審判を請求した。特許庁は,これを不服2001-13427号事件として審理し,その結果,平成14年6月25日「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同年7月5日にその謄本を原告に送達した。
2 審決の理由 審決は,別紙審決書の写しのとおり,本願意匠は,本願出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下この公然知られた意匠を「3条2項公知意匠」という。)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められ,意匠法3条2項の規定に該当し,意匠登録を受けることができない,と判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
審決は,何らの根拠もなく,長方形状及び直角二等辺三角形状を本願意匠についての3条2項公知意匠であると誤って認定し(取消事由1),また,審決書別紙第二の意匠(国際事務局意匠公報第9巻4680頁所載のプール用濾過機の意匠(意匠課公知資料番号HH08050475号),以下「本件公知意匠」という。)を,審判手続に現れなかった証拠であるにもかかわらず,引用するとの手続違背を犯しており(取消事由2),これらの誤りがそれぞれ結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(3条2項公知意匠の認定の誤り) (1) 審決は,「本願意匠は,(1)全体の基本的構成態様を縦幅と横幅との比を略2:1とした長方形状の平板とし,(2)その正面視左上隅角部に等辺の長さを横幅の約1/10とした直角二等辺三角形状の切り欠き部を形成したものであるが,(1)の基本的構成態様については,周知の長方形状を平板に表したにすぎないものであり,評価すべき創作が認められない。また,(2)の切り欠きの形成についても,・・・隅角部を切り取りその部分を目印とすることは常套的な手法であり,その態様も周知の直角二等辺三角形状を切り欠き部として表したにすぎないものであるから,当業者であれば,容易に想到する形態といわざるを得ない。」(審決書2頁第3段落)と判断した。
しかし,意匠法3条2項は,当業者の立場からみた意匠の着想の新しさ又は独創性が,意匠の創作性を裏付けることを規定したものであるから,ある意匠が3条2項公知意匠と認められるためには,それぞれの技術分野における物品の意匠として公然と知られているものでなければならない。審決の上記判断は,本願意匠に係る物品が属する分野を全く無視して,何らの証拠を示すこともなく,長方形状と直角二等辺三角形状を,本願意匠についての3条2項公知意匠であると誤って認定したものである。審決は,この誤った認定に基づいて,当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたものであると誤って判断したものであるから,違法として取り消されるべきである。
(2) 審決は,「請求人は,「当時の濾過機業界における意匠の実施状況からして,濾過板の本体形状を長方形としたこと自体,極めて画期的なものである。」と主張するが,この種の物品,すなわち,濾過機液槽内に装着され使用される濾過機能をもった板状の物品にあっては,例えば,本願意匠の出願前,平成7年(1995年)11月30日世界知的所有権機関国際事務局発行の国際事務局意匠公報第9巻4680頁所載のプール用濾過機の意匠(意匠課公知資料番号HH08050475号,別紙第二参照)における濾過機に装着された濾過板の意匠に見られるように全体形状を長方形状の平板としたものは既に存在しており,極めて画期的なものであるという請求人の主張は採用できない。」(審決書2頁第4段落)と判断した。
しかし,本件公知意匠に係る物品は,「プール用ろ過機」であり,本願意匠に係る物品は,「濾過機液槽内装着用濾過板」であるから,両者は,物品として明らかに異なるものである。また,本願意匠は,食用油の濾過を想定しており,「スイミングプール」の水を濾過する本件公知意匠とは,その技術分野を異にする。
本件公知意匠は,外箱の形状を示しており,外箱に格納されている内容物の形状は不明である。また,その外箱の形状から内容物の形状を推定するとしても,外箱の形状は正方形に近いのであるから,縦幅と横幅の比を2:1とした本願意匠の長方形の形状とは異なるものである。
したがって,審決の上記認定判断は,誤っており,審決は,これにより,本願意匠の分野において,長方形状及び直角二等辺三角形状3条2項公知意匠であると認定し,これに基づいて,当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたものであると誤って判断したものである。
2 取消事由2(本件公知意匠についての手続違背) 本件公知意匠は,審判手続中に出願人に示されていない証拠であるにもかかわらず,審決は,上記のとおり,本件公知意匠を採用して請求人(原告)の主張を排斥している。したがって,審決には,重大な手続違背がある。
被告の反論の要点
1 取消事由1(3条2項公知意匠の認定の誤り)について 意匠法3条2項創作容易性についての判断の基礎となる資料は,3条1項新規性等の判断の資料となる意匠とは異なり,物品と切り離され,独立に観念される形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であり,公知の物品の形状等はいうに及ばず,物品と関わりのない形状等も,3条2項創作容易性の判断の資料となり得る。
2 取消事由2(本件公知意匠についての手続違背)について 本件公知意匠は,拒絶の理由となるものではないので,これについて拒絶理由通知をする必要はない。原告の主張は理由がない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(3条2項公知意匠の認定の誤り)について (1) 意匠法3条2項は,「意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは,その意匠・・・については・・・意匠登録を受けることができない。」と規定している。ここでいう「日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」とは,文字どおり,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合のことであり,したがって,意匠法3条1項の判断の資料となる意匠とは異なり,出願意匠に係る物品とかかわりのない形状等であっても,これに含まれると解すべきである(出願意匠に係る物品とかかわりのない形状等である場合,例えば,出願意匠に係る物品とは別の物品の形状等である場合に,そのことが,出願意匠の創作容易性の判断において,出願人に有利に働くことはあり得る。)。単なる「長方形状」及び「直角二等辺三角形状」が物品を離れて広く一般に知られた形状であることは明らかであるから,これらを3条2項公知意匠と認定した審決の判断に誤りはない。
審決は,その上で,本願意匠の属する分野における当業者が,日本国内又は外国において,広く知られた形状である「長方形状」及び「直角二等辺三角形状」に基づいて,長方形状の平板及びその一つの隅角部を直角二等辺三角形状に切り欠いた本願意匠の形状を容易に創作することができるものである,と判断したものである。この審決の判断に何ら誤りはない。
(2) 原告は,3条2項公知意匠とは,それぞれの技術分野における物品の意匠として公然と知られているものでなければならない,として,審決の上記認定判断は,本願意匠の技術分野を全く無視して,何らの証拠を示すこともなく,本願意匠についての3条2項公知意匠を誤って認定したものであり,これに基づいて,当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたものであると誤って判断した,と主張する。しかし,3条2項公知意匠は,出願意匠の分野に属する物品等の意匠に限定されるものではないことは前示のとおりである。また,本願意匠における「長方形状」及び「直角二等辺三角形状」が日本国内において広く知られている形状であることは明らかであるから,これについて証拠を示す必要はない。したがって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。
(3) 原告は,本件公知意匠に係る物品は,「プール用ろ過機」であり,本願意匠に係る物品は,「濾過機液槽内装着用濾過板」であるから,両者は,物品として明らかに異なる,と主張する。しかし,審決は,プール用濾過機に装着された濾過板を本件公知意匠と認定しているのであり,本件公知意匠と本願意匠に係る物品とは,異なるものではない。なお,原告は,本願意匠の濾過板の技術分野は,食用油の濾過である,とも主張する。しかし,本願意匠の意匠に係る物品は,濾過機液槽内装着用濾過板である。原告の上記各主張は,そもそもその前提において誤っており,主張自体として失当である。
原告は,本件公知意匠は,外箱の形状を示しており,外箱に格納されている内容物の形状は不明である,また,その外箱の形状から内容物の形状を推定するとしても,外箱の形状は正方形に近い,とも主張する。しかし,審決は,請求人が,審判請求書において,「当時の濾過機業界における意匠の実施状況からして,濾過板の本体形状を長方形としたこと自体,極めて画期的なものである。」との主張をしたため,そのような請求人の主張が理由がないことを示すために,念のため本件公知意匠を一例として示したものである。したがって,本件公知意匠に示されるプール用濾過機の濾過板が,原告が主張するように,縦幅と横幅の比が本願意匠のものとは異なるとしても,請求人である原告の上記反論に理由がないことを示すには十分なものである。また,本件公知意匠に示されるプール用濾過板の下部の形状が,外箱からは明瞭ではないとしても,外箱の形状により,これを四角形と推定することは十分に合理的であり,審決が,本件公知意匠を1例として示して,原告の主張を排斥したことについて,誤りはない。
2 取消事由2(本件公知意匠についての手続違背)について 本件出願を担当した審査官(合議体)は,意匠法19条で準用する特許法50条に基づき,平成12年3月8日に,出願人(原告)に対し,「本願の意匠は,周知形状である長方形をした板状体の任意の一角に切り欠きを設けたまでのものですので,この程度では特段の創作があるものとは認められません。」との拒絶理由通知書を発送した(乙第4号証)。審決の理由も,前記のとおり,これと同一である。そうである以上,審判体が,新たな拒絶理由通知を発送しないままで審決をしたことには,何らの手続的な違背もあり得ない。審決は,請求人(原告)が,審判請求書において,「当時の濾過機業界における意匠の実施状況からして,濾過板の本体形状を長方形としたこと自体,極めて画期的なものである。」との主張をしたため,そのような請求人の主張が理由がないことを示すために,補助的な資料として,本件公知意匠を示したにすぎないのであり,このような補助的な資料は,新たな拒絶の理由を構成するものではないのであるから,これについて新たな拒絶理由通知を発送しなかったとしても,審決には何ら手続違背はないのである(意匠法50条3項,52条,特許法158条)。原告の主張は採用することができない。
3 結論 以上に検討したところによれば,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,その他,審決には,これを取り消すべき誤りは見当たらない。そこで,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 阿部正幸
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