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関連審決 不服2001-19705
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  意匠登録を受ける権利 /  新規性 /  3条1項2号 /  3条1項3号 /  頒布された刊行物 /  記載された意匠 /  類似する意匠 /  新規性喪失の例外 /  意に反して /  特許権 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 360号 審決取消請求事件
原告A
被告 特許庁長官太田信一郎
同指定代理人 西本幸男
同 藤正明
同 大橋良三
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/10/09
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2001-19705号事件について平成14年5月21日にした審決を取り消す。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成12年3月7日、意匠に係る物品を「手帳」とする意匠(以下「本願意匠」という。)として、意匠登録出願(意願2000-4803号)したが、
平成13年9月18日に拒絶査定を受けたので、同年11月2日、拒絶査定不服の審判を請求した。
特許庁は、同請求を不服2001-19705号事件として審理した結果、平成14年5月21日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年6月14日に原告に送達された。
2 審決の理由 別紙審決書の理由の写し(以下「審決書」という。)のとおり、本願意匠の形態は、願書に添付された図面に記載されたとおりのものであり(審決書添付別紙第1の「本願意匠」参照)、本願意匠の出願前である平成8年(1996年)12月31日にコクヨ株式会社が発行したカタグ「Stationery Catalogue'97」(以下「引用カタログ」という。)の532頁に掲載されたメモ帳の意匠(特許庁意匠課公知資料番号HC08025503号。以下「引用意匠」という。)の形態は、同カタログに掲載されたとおりのものである(審決書添付別紙第2の「引用意匠」参照)とした上で、
本願意匠と引用意匠とは、意匠に係る物品が一致し、両意匠の形態についても、その差異点は類否判断に対して及ぼす影響が微弱なものであるといわざるを得ないのに対して、その共通点は、両意匠全体の基調を形成し、類否の判断に大きな影響を及ぼすものと認められ、共通点が差異点を凌駕する両意匠は、類似するものといわざるを得ないから、本願意匠は意匠法3条1項3号の意匠に該当し、意匠登録を受けることができないと判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
1(1) 引用意匠は、原告の創作によるものであり、引用カタログの発行社のコクヨ株式会社の創作によるものではない。
すなわち、原告は、特許第1654065号の特許発明の特許権者であるところ、その特許公報(特公平3-2677号、甲第5号証)に本願意匠の一部が明示されているとおり、本願意匠の創作者は原告である。そして、原告は、コクヨ株式会社に対し原告の上記特許発明につきライセンスしており(甲第6号証)、引用カタログにも、引用意匠に関して、「世界の発明王、ドクター中松こと中松義郎博士の特許商品をコクヨがデザイン・企画しました。」との記載があるとおり、引用意匠に係るメモ帳は、コクヨ株式会社が原告のライセンスを受けて製造販売するものであることをコクヨ株式会社が確認している。
以上から明らかなように、引用カタログ中の「コクヨ株式会社が引用意匠を作成(デザイン)した」旨の記載文は、間違いであり、引用意匠の創作者は原告である。
(2) この点について、被告は、「引用意匠のメモ帳は、表紙に表されている模様及び色彩について、コクヨ株式会社が創作したものと推認されるから、引用意匠は原告のみによって創作されたものとは考え難い」旨主張している。
しかしながら、原告が創作した意匠は、メモ帳の形状であり、表紙の模様や色彩についての意匠ではないのであって、被告の上記反論は、当を得ていない。
2 引用カタログには、引用意匠について、メモ帳の表面図のみが記載されていて、側面図、背面図、平面図及び底面図の記載がないから、引用カタログの記載からは、引用意匠の立体的構造が判らない。
したがって、引用カタログに掲載された引用意匠によっては、本願意匠を公知のものとすることはできない。
3 審決は、引用意匠が掲載されている引用カタログの発行日について、1996年12月31日であるとしているが、他方、本件の平成12年11月28日付けの拒絶理由通知書(甲第2号証)には、引用カタログについて、「特許庁総合情報館所蔵(受入1996年12月20日)」としており、引用カタログは、その発行日前に特許庁総合情報館へ受け入れられたという珍妙なことになっている。
このように、引用カタログの発行日と特許庁の受入日は逆転しており、引用カタログの真実の発行日は不明であるというべきであるから、引用カタログは、公知刊行物としての資格に欠けるものである。
被告の反論の要点
1 取消事由1に対して (1) 原告は、引用意匠は原告の創作によるものであり、コクヨ株式会社の創作によるものではない旨主張している。
しかしながら、原告提出の「覚書」(甲第6号証)には、「丙(コクヨ株式会社)は、本製品およびパッケージのデザインやネーミングについて事前に甲(原告)の承認を要するものとする。」との記載があり、この記載内容と、原告が発明者である特許公報(甲第5号証)の記載内容及び引用カタログ中の「世界の発明王、ドクターAことA博士の特許商品をコクヨがデザイン・企画しました。」との記載内容とを照らし合わせると、引用意匠のメモ帳は、表紙に表されている模様及び色彩について、コクヨ株式会社が創作し、原告の了承を得た上で製品化し、引用カタログに掲載して発売したものと推認される。
したがって、引用意匠は、原告のみによって創作されたものとは考え難く、原告の上記主張は失当といわざるを得ない。
(2) なお、原告は、引用意匠は、原告の創作である旨主張するにとどまっており、審決の違法性の有無についての具体的な主張をしていない。
仮に、原告の主張が、原告が本件審判請求時に主張していた「引用意匠は、請求人(原告)が創作者であり、創作者の意に反して発表された刊行物であるから、本願意匠は、意匠登録を受けられるべきである。」との趣旨であるとして、この点に触れる。
そもそも、意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して意匠法3条1項2号に該当するに至った意匠について、同法4条1項の適用を受けようとするためには、
その該当するに至った日から、6月以内に意匠登録出願することを要する。
そうすると、本願意匠は、引用意匠掲載の刊行物が発行・頒布された時期から、
約3年を経過した後に出願されているため、審決が説示するとおり(1頁25行ないし2頁8行)、同法4条1項に規定する新規性喪失の例外の適用を受けることができないものである。
2 取消事由2に対して 原告は、引用カタログの記載では、引用意匠について立体的構造が判らず、したがって本願意匠について公知とすることはできない旨主張している。
しかしながら、本願意匠に係る物品は手帳であるから、その表紙に、それと同形同大の多数枚の紙が綴られているものが一般的であること、また、引用カタログに掲載された正面から写した引用意匠の写真をみると、引用意匠に係るメモ帳が短辺側一方の端部寄りにスパイラルワイヤにより綴られていること、さらに、その写真の右方に掲載された、パッケージ(箱)の中に積み上げられた引用意匠の写真を見ると、その厚みが見えることから、表紙以外の引用意匠の態様は、極く普通の手帳の態様であることが認められ、引用意匠の全体形状を把握することができるものである。
そうすると、引用意匠の形態は、審決で認定したとおりのものであり(審決書2頁9行ないし21行)、引用意匠の立体的構造が不明である旨の原告の上記主張は失当であり、引用意匠は、本願意匠と対比して類否判断をする意匠としての適格性を欠くものでないから、審決に違法はない。
3 取消事由3に対して 原告は、引用カタログの発行日が不明であり、公知刊行物としての資格に欠けるものである旨主張している。
しかしながら、引用カタログの656頁には、平成8年12月発行と記載されていることが認められる(乙第1号証)。そして、本件の拒絶理由通知書(甲第2号証)においては、引用カタログの発行日として1996年(平成8年)12月31日と記載しているが、これは、特許庁の意匠審査基準(乙第2号証)に従って、刊行物の発行日として年月しか記載がない場合に、その月の末日までには遅くとも発行されているとみなして、その末日を発行日として記載したものである。また、内国雑誌等においては、発行日を先付けする習慣があり、発行日と受入日が逆転することは普通に見受けられることである。 以上によれば、拒絶の理由に記載した引用カタログの発行日と特許庁の受入日とが逆転していることのみをもって、直ちに引用カタログが公知刊行物としての資格に欠けるものであるとはいえない。
そして、引用カタログが、平成8年12月に発行され、特許庁が、平成8年12月20日に受け入れている事実(乙第1号証)から、遅くとも、この日には日本国内において頒布された刊行物であることは明白である。
そうすると、本願意匠に係る出願は、引用カタログの頒布時期から3年以上経過した後の出願であるから、引用意匠は、当然に本願出願前に日本国内において頒布された刊行物記載された意匠に該当するものであり、審決に違法はない。
当裁判所の判断
1 取消事由1について (1) 原告は、引用意匠の形状は原告の創作によるものであり、引用カタログの発行社のコクヨ株式会社の創作によるものではない旨主張している。
(2) しかしながら、審決が本願意匠について登録することができないとした理由は、本願意匠が、「意匠登録出願前に日本国内・・・において頒布された刊行物記載された意匠」(意匠法3条1項2号)に当たる引用意匠に類似する意匠であり、意匠法3条1項3号に該当すると判断したものであるところ、同項2号の「意匠登録出願前に日本国内・・・において頒布された刊行物記載された意匠」との条項は、その意匠が、意匠登録出願に係る意匠を創作した者の創作によるものであるか否かを区別することなく規定されており、たとえ自らが創作した意匠であっても、それが出願前に頒布された刊行物に記載された場合には、同法4条が定める新規性の喪失の例外規定に該当しない限り、同法3条1項2号が適用される。
しかるところ、本願意匠は、後記3のとおり引用意匠が記載された刊行物(引用カタログ)が日本国内において頒布されたと認めることができる平成8年12月から、3年以上経過した平成12年3月7日に意匠登録出願されたものであるから、
同法4条1項、2項所定の「第3条第1項第1号又は第2号に・・・該当するに至った日から6月以内に・・・した意匠登録出願」との要件を充たさず、この新規性喪失の例外規定の適用を受けることができない。
(3) 以上によれば、引用意匠の形状が原告の創作によるものであるとしても、引用意匠が同法3条1項2号に該当するとして、これと本願意匠とを対比して同項3号の類否判断をした審決には誤りがなく、原告の上記(1)の主張は明らかに失当であって、原告の取消事由1は、理由がない。
2 取消事由2について (1) 原告は、引用カタログには、引用意匠についてメモ帳の表面図のみが記載されていて、側面図、背面図、平面図及び底面図の記載がないから、引用カタログからは、引用意匠の立体的構造が判らないため、引用意匠によって本願意匠を公知のものとすることはできない旨主張している。
(2) しかしながら、被告が主張するとおりのメモ帳が通常具備する形状と、引用カタログに掲載されている正面から写した引用意匠の写真及びパッケージの中に積み上げられた引用意匠の写真(乙第1号証参照)とを総合すると、引用意匠の立体的構造を容易に把握することができ、これによると、審決の引用意匠の形態の認定(審決書2頁9行ないし21行)に誤りはないものと認められる。
(3) したがって、引用意匠の立体構造が判らない旨の原告の上記(1)の主張は失当であり、原告の取消事由2も理由がない。
3 取消事由3について (1) 原告は、引用カタログの発行日が不明であり、公知刊行物としての資格に欠けるものである旨主張している。
(2) しかしながら、乙第1号証によれば、引用カタログには、引用カタログについてコクヨ株式会社が発行所として、平成8年12月に発行したものであることが記載されていること、及び日本デザイン保護協会が平成8年12月13日に引用カタログを受け入れ、さらに特許庁が同月20日にこれを受け入れたことが認められる。
以上によれば、引用カタログは、平成8年12月13日以前に発行され、同月中に日本国内において頒布された刊行物であることは明らかである(なお、甲第2号証によれば、本件の拒絶理由通知書には、引用カタログの発行日として、1996年(平成8年)12月31日と記載されたことが認められ、また、審決書には、引用カタログの発行日について、これと同じ記載がされているが、上記認定の各事実及び弁論の全趣旨によれば、これは、引用カタログの発行日について、上記のとおり、年月の記載しかないために、特許庁審査官及び審判官は、特許庁の意匠審査基準(乙第2号証)に従い、刊行物の発行日として年月しか記載がない場合として、
その月の末日までには発行されていると推定して、その末日を発行日として上記通知書及び審決書に記載したものにすぎないことが認められ、このような推定は、相当であるということができる。)。
(3) したがって、引用カタログの発行日が不明である旨の原告の上記(1)の主張は、採用することができず、引用意匠は、本願意匠の意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物記載された意匠(意匠法3条1項2号)に該当すると認められるから、これと本願意匠と対比して同項3号の類否判断をした審決に違法はないものと認められる。
以上のとおり、原告の取消事由3も理由がない。
4 結論 以上の次第で、原告主張の審決の取消事由はいずれも理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 橋本英史
裁判官 絹川泰毅
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