• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成13ネ5158意匠権侵害等に基づく差止請求控訴事件 判例 意匠
平成17ネ10079意匠権侵害差止等請求控訴事件 判例 意匠
平成14ワ457意匠権及び不正競争防止法に基づく差止等請求事件 判例 意匠
平成21ネ3051意匠権侵害差止等請求控訴事件 判例 意匠
平成21ワ2726意匠権侵害差止等請求事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  色分け /  意匠に係る物品 /  公然知られた(3条1項1号) /  記載された意匠 /  類似する意匠 /  登録意匠 /  差止請求(差止) / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
事件 平成 13年 (ワ) 26362号 意匠権侵害差止等請求事件
原告 株式会社サーメル
訴訟代理人弁護士 脇田輝次
補佐人弁理士 小野信夫
被告 株式会社萬丸
被告 ナカバヤシ株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士 白波瀬文夫
被告ら補佐人弁理士 濱田俊明
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/08/28
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告ナカバヤシ株式会社は,別紙物件目録記載の物件を輸入し,製造し,販売してはならない。
2 被告ナカバヤシ株式会社は,その占有する別紙物件目録記載の物件を,その仕掛品も含めて廃棄せよ。
3 被告株式会社萬丸は,別紙物件目録記載の物件を販売し,リースし,展示してはならない。
4 被告株式会社萬丸は,その占有する別紙物件目録記載の物件を廃棄せよ。
事案の概要
本件は,座いすについての意匠権を有する原告が,座いすを販売等している被告らに対して,当該意匠権に基づき,上記座いすの販売等の差止めを求めている事案である。
1 争いのない事実等 (1) 原告は次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その意匠を「本件登録意匠」という。)を有している。
登録意匠番号 第1038537号 意匠に係る物品 座いす 登録意匠の範囲 別紙意匠公報該当欄記載のとおり (2) 本件登録意匠の審査経過は,次のとおりである。
平成6年7月22日 本件意匠登録出願 平成7年7月14日 同年6月20日付け拒絶理由通知発送 平成7年8月22日 意見書提出(乙2) 平成7年10月27日 同年10月27日付け拒絶査定発送 平成7年11月27日 審判請求 平成8年4月17日 審判請求理由補充書提出(乙3) 平成11年3月5日 登録 (3) 被告ナカバヤシ株式会社(以下「被告ナカバヤシ」という。)は,業として,別紙物件目録記載の座いす(以下「被告製品」という。)を輸入し,製造し,販売しており,被告株式会社萬丸(以下「被告萬丸」という。)は,業として被告製品を販売している(ただし,被告ナカバヤシが被告製品を製造しているかどうかについては争いがある。)。
2 争点及び当事者の主張 被告製品の意匠(以下「被告意匠」という。)は,本件登録意匠に類似するか。
(原告の主張) (1) 本件登録意匠の要部は,次のとおりである。
A 平面視をほぼ逆T字状とした座部と,この側面の中程から立ち上がるアーチ状に形成した背もたれ部からなり, B この背もたれ部は,側面視において最初は一定の角度をもって立ち上がり,途中でこの角度よりゆるやかな傾斜角となるよう形成されており, C 必要に応じて背もたれ部が折り畳み可能となる。
(2) 被告意匠の構成は,次のとおりである。
A′ 平面視をほぼ逆T字状とした座部と,この側面の中程から立ち上がるアーチ状に形成した背もたれ部からなり, B′ この背もたれ部は,側面視において最初は一定の角度をもって立ち上がり,途中でこの角度よりゆるやかな傾斜角となるよう形成されており, C′ 座部と背もたれ部は色分けがされており, D′ 座部底面には回転板が取り付けられており, E′ 必要に応じて背もたれ部が折り畳み可能となる。
(3) 本件登録意匠の要部と被告意匠の構成との対比 ア 被告意匠の各構成は,本件登録意匠の要部AないしCをすべて具備し,看者をして共通の美観を与えるものといえる。
イ 本件登録意匠と被告意匠とは,本件登録意匠が単色であるのに対し,被告意匠が座部と背もたれ部が色分けされている点で相違する。しかし,本件登録意匠は,形状の意匠として登録を受けているのであり,色分けするか否かは要部とはいえない。したがって,色分けした被告意匠は本件登録意匠と美観において異ならない。
また,両者は,被告意匠において座部底面に回転板が取り付けられている点において,側方視,正面視,背面視及び底面視において相違する。しかし,被告意匠の回転板を取り除いた場合は本件登録意匠そのものであるから,被告意匠は本件登録意匠の本質的特徴を損なうことなく,本質的特徴を認識できる意匠ということができるから,両者は類似する。
なお,原告は,本件登録意匠の審査経過において意見書(乙2)及び審判理由補充書(乙3)を提出し,上記各書面において,公知意匠との対比に関して,本件登録意匠の要部は,座部の側面の中程から立ち上がり,途中でよりゆるやかな傾斜角となるよう形成されている背もたれ部の形態にあると主張した。本訴における主張は,上記各書面と整合する。
ウ したがって,被告意匠は本件登録意匠に類似する。
(被告らの反論) (1) 本件登録意匠の構成は,以下の(ア)AないしEのとおりであり,審査経過等に照らすと,要部は(イ)の@ないしBのとおりである。
(ア) 構成 A 平面視をほぼ逆T字状とした座部と,この側面の中程から立ち上がるアーチ状に形成した背もたれ部からなる。
B この背もたれ部は,側面視において,最初は細い付け根から徐々に太くしながら一定の角度をもって立ち上がり,途中座部のほぼ5分の1の長さで,残り背もたれ部がこの角度よりゆるやかな傾斜角に折れ曲がっているかのごとく低く形成されている。
C 背もたれ部を全倒した状態の平面視において,座部と背もたれ部の間に空隙部がない。
D 座部と背もたれ部は全体が単一色よりなる。
E 必要に応じて背もたれ部が折り畳み可能となる。
(イ) 要部 座部とその側面から立ち上がるアーチ状に形成した背もたれ部からなる座いすは,本件意匠登録出願時に数多く存在した(乙4ないし12)。これら多数の公知意匠の存在に鑑みれば,本件登録意匠における要部,すなわち看者の注意を引く部分は,公知意匠には存しない細部の形状模様の部分のみにあると見るのが相当である。
そうすると,本件登録意匠の要部は,本件登録意匠に類似している公知意匠が多数存在する(乙4,乙3の審判請求理由補充書の引用意匠)ことに照らすならば,細部の形状模様の中で,次の点のみにあるというべきである。すなわち, @ 背もたれ部が,最初は細い付け根から徐々に太くしながら一定の角度をもって立ち上がり,途中座部のほぼ5分の1の長さで,残り背もたれ部がこの角度よりゆるやかな傾斜角に折れ曲がっているかの如く低く形成されていること。
A 背もたれ全倒状態の平面視において,座部と背もたれ部の間に空隙部がないこと。
B 座部と背もたれ部の全体が単一色よりなること。
なお,以上の3点が本件登録意匠の要部であることは,原告自身も,意見書(乙2)及び審判理由補充書(乙3)において強調した。
(2) 被告意匠の構成は,次のとおりである。
A′ 平面視を底辺が円弧状に形成された略台形状とした座部と,この側面の中程から立ち上がるアーチ状に形成した背もたれ部からなる。
B′ この背もたれ部は,側面視において,太い付け根から立ち上がり先端までほぼ均一の太さで,背もたれ部全体がなだらかな円弧状に形成されている。
C′ 背もたれ部を全倒した状態の平面視において,座部と背もたれ部の間に背もたれ部の径と同程度の空隙部がある。
D′ 座部のうち左右端部を除く主要部は淡色とし,背もたれ部を含むその他の部分は濃色とする濃淡2色よりなる。
E′ 正面視,背面視,側面視,底面視において,座部底面に回転板が不可分に取り付けられている。
F′ 必要に応じて背もたれ部が折り畳み可能となる。
(3) 本件登録意匠と被告意匠の対比 被告意匠は,本件登録意匠と個々の構成を対比してみても相違しているのみならず,本件登録意匠の要部を具備しないので,いずれの理由からも類似しない。
ア 各構成の対比 (ア) 本件登録意匠の構成Aと被告意匠の構成A′ 本件登録意匠の構成Aでは,座部は平面視をほぼ逆T字状であるのに対し,被告意匠の構成A′では,座部は平面視を底辺が円弧状に形成された略台形状である点で相違する。
(イ) 本件登録意匠の構成Bと被告意匠の構成B′ 側面視において,本件登録意匠の構成Bでは,背もたれ部は,最初は細い付け根から徐々に太くしながら一定の角度をもって立ち上がり,途中座部のほぼ5分の1の長さで,残り背もたれ部がこの角度よりゆるやかな傾斜角に折れ曲がっているかの如く形成されているのに対し,被告意匠の構成B′では,背もたれ部は,太い付け根から立ち上がり,先端まで均一の太さで,背もたれ部全体がなだらかな円弧状に形成されている点で相違する。
(ウ) 本件登録意匠の構成Cと被告意匠の構成C′ 背もたれ部の平面視において,本件登録意匠の構成Cでは,座部と背もたれ部の間に空隙部がないのに対し,被告意匠の構成C′では,座部と背もたれ部の間に背もたれ部の径と同程度の空隙部がある点で相違する。
(エ) 本件登録意匠の構成Dと被告意匠の構成D′ 本件登録意匠の構成Dでは,座部と背もたれ部の全体が単一色よりなるのに対し,被告意匠の構成D′では,座部のうち左右端部を除く主要部は淡色とし,背もたれ部を含むその他の部分は濃色とする濃淡2色よりなる点で相違する。
(オ) 本件登録意匠の構成E 被告意匠では,正面視,背面視,側面視,底面視において,座部底面に回転板が不可分に取り付けられているが,本件登録意匠には回転板は存しない点で相違する。
(カ) なお,本件登録意匠の構成Fと被告意匠の構成F′は共通する。
イ 本件登録意匠の要部と被告意匠の構成との対比 (ア) @の背もたれ部の形状 側面視において,本件登録意匠の背もたれ部は,最初は細い付け根から徐々に太くしながら一定の角度をもって立ち上がり,途中座部のほぼ5分の1の長さで,残り背もたれ部がこの角度よりゆるやかな傾斜角に折れ曲がってるかの如く低く形成されているのに対し,被告意匠の背もたれ部は,太い付け根から立ち上がり,先端までほぼ均一の太さで,背もたれ部全体がなだらかな円弧状に形成されている点で,両意匠は相違する。
(イ) Aの座部と背もたれ部の空隙部の有無 背もたれ全倒状態の平面視において,本件登録意匠は,座部と背もたれ部の間に空隙部がないのに対し,被告意匠は,座部と背もたれ部の間に背もたれ部の径と同程度の空隙部がある点で,両意匠は相違する。
(ウ) Bの座部と背もたれ部の色彩 本件登録意匠は,座部と背もたれ部の全体が単一色よりなるのに対し,被告意匠は,座部のうち左右端部を除く主要部は淡色とし,背もたれ部を含むその他の部分は濃色とする濃淡2色よりなる点で,両意匠は相違する。
ウ 結論 本件登録意匠と被告意匠とは,本件登録意匠と個々の構成を対比してみても相違するのみならず,本件登録意匠の要部を具備しない。したがって,両意匠は,看者に異なる美観を与えるものであり,類似しない。
当裁判所の判断
1 本件登録意匠について (1) 本件登録意匠の構成 証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば,本件登録意匠の構成は,次のとおりであると認められる(以下,座いすの正面側を「前方」,背面側を「後方」という場合がある。)。なお,意匠に係る物品は,「座いす」であるが,その背もたれ部を倒すことができるものである。
A 平面視において,形状をほぼ上下逆T字状とした座部(以下,逆T字状の横棒に相当する部分を「座部前方部分」,縦棒に相当する部分を「座部後方部分」という。また,本件登録意匠に限らず,略逆T字状の座部を有する座いすの意匠についても同様に表す。)と,座部前方部分の後方側辺の両端部分から立ち上がる太さがほぼ均一のアーチ状に形成した背もたれ部からなる。
B 背もたれ部を立てた状態の側面視において,背もたれ部は,所定の角度をもって立ち上がり,立ち上がり部から背もたれ部全体の約3分の1の長さの位置で水平方向に折れ曲がり,立ち上がり部の角度よりゆるやかな傾斜角になるように形成されている。
C 背もたれ部は,側面視において,立ち上がる付け根部が細く,折れ曲がり部まで徐々に太くなり,折れ曲がり部から先端までの太さはほぼ均一である。
D 背もたれ部を立てた状態での平面視において,座部前方部分の前後方向の長さと左右方向の長さの比が約3対7であり,座部前方部分の前後方向の長さと座部後方部分の左右方向の長さの比は約3対4である。平面視における座部後方部分の形状は略正方形である。
E 背もたれ部を全倒した状態での平面視において,座部後方部分は背もたれ部の内側に収まり,座部後方部分と背もたれ部との間には,左右方向にわずかな空隙部があり,前後方向には,それよりわずかな空隙部がある。
F 背もたれ部を全倒した状態での側面視において,背もたれ部は,座部の中程から上方にわずかに傾斜して分かれ出て,同分離部分から背もたれ部全体の約3分の1の長さの位置で下方に傾斜し始め,背もたれ部の先端部は,座部と同じ高さに位置する。
G 座部と背もたれ部は全体が濃色の単一色よりなる。
(2) 本件登録意匠の要部 ア 証拠(甲6,乙2,3,4の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 本件登録意匠の登録出願前に株式会社オレンジページが発行した雑誌「オレンジページ」には,背もたれ部が全倒可能な座いすが掲載されていた。
(イ) 上記座いすの意匠(以下「本件公知意匠」という。)における構成は,次のとおりである。
@ 平面視において,形状をほぼ逆T字状とした座部と,座部前方部分の後方側辺の両端部分から立ち上がる全体の太さがほぼ均一のアーチ状に形成した背もたれ部からなる。
A 背もたれ部を立てた状態の側面視において,背もたれ部は所定の角度をもって,真直ぐに立ち上がっている。
B 背もたれ部は,側面視において,付け根部から先端までの太さがほぼ均一である。
C 背もたれ部を全倒した状態の平面視において,座部後方部分が背もたれ部の内側に収まり,背もたれ部と座部後方部分との間に空隙部がある。
D 背もたれ部を全倒した状態の側面視において,座部及び背もたれ部は一直線上にある。
イ 要部の認定判断 意匠登録出願前に公然知られた意匠,刊行物に記載された意匠又はこれらと類似する意匠は意匠登録を受けることができないのであるから,本件登録意匠の要部を認定する際には,本件公知意匠の存在を斟酌すべきである。そして,本件登録意匠の基本的な構成は,平面視において,形状をほぼ逆T字状とした座部と,座部前方部分の後方側辺の両端部分から立ち上がるアーチ状に形成した背もたれ部からなるという構成であると解されるところ,本件公知意匠の基本的な構成もこれと同じであるから,同構成は本件登録意匠の要部ということはできない。
そして,@本件登録意匠に係る物品は,その性質から,背もたれ部を立てて,床の上に置いて使用されるため,使用状態における形態は特に重要であると考えるべきであること,A収納等のために全倒状態にする場合,平面視における形状も,看者の注意を引く部分と解すべきであること,B部屋全体及び他のインテリアとの調和という観点から,色彩も看者の注意を引く要素であると解すべきことなど総合考慮して判断すると,本件登録意匠における要部は,以下のとおりとなる。
(ア) 背もたれ部を立てた状態の側面視において,背もたれ部は,所定の角度をもって立ち上がり,立ち上がり部から背もたれ部全体の約3分の1の長さの位置で水平方向に折れ曲がり,立ち上がり部の角度よりゆるやかな傾斜角になるように形成されている。
(イ) 背もたれ部は,側面視において,立ち上がる付け根部が細く,折れ曲がり部まで徐々に太くなり,折れ曲がり部から先端までの太さはほぼ均一である。
(ウ) 背もたれ部を立てた状態の平面視において,座部前方部分の前後方向の長さと左右方向の長さの比が約3対7であり,座部前方部分の前後方向の長さと座部後方部分の左右方向の長さの比は約3対4である。
(エ) 背もたれ部を全倒した状態の平面視において,座部後方部分は背もたれ部の内側に収まり,座部後方部分と背もたれ部との間には,左右方向にわずかな空隙部があり,前後方向には,それよりもわずかな空隙部がある。
(オ) 座部と背もたれ部は全体が濃色の単一色よりなる。
2 被告意匠の構成 証拠(検甲1)及び弁論の全趣旨によれば,被告意匠の構成は,次のとおりであることが認められる(なお,被告製品は,背もたれ部が全倒可能な座いすである。)。
A′ 平面視において,形状をほぼ逆T字状とした座部と,座部前方部分の後方側辺の両端部分から立ち上がる全体の太さがほぼ均一のアーチ状に形成した背もたれ部からなる。
B′ 背もたれ部を立てた状態の側面視において,背もたれ部は,所定の角度をもって立ち上がり,立ち上がり部から背もたれ部全体の約2分の1の長さのところで水平方向に折れ曲がり,立ち上がり部の角度よりゆるやかな傾斜角になるように形成されている。
C′ 背もたれ部は,側面視において,付け根部から先端までの太さがほぼ均一である。
D′ 背もたれ部を立てた状態の平面視において,座部前方部分の前後方向の長さと左右方向の長さの比が約1対4であり,座部前方部分の前後方向の長さと座部後方部分の左右方向の長さの比は約4対9である。平面視における座部後方部分の形状は略正方形である。
E′ 背もたれ部を全倒した状態の平面視において,座部後方部分は背もたれ部の内側に収まり,座部後方部分と背もたれ部の間には,左右方向に空隙部があり,前後方向にはそれよりも大きな背もたれ部の径の約2分の1ほどの空隙部がある。
F′ 背もたれ部を全倒した状態の側面視において,背もたれ部は,座部の中程から上方にわずかに傾斜して分かれ出て,同分離部分から背もたれ部全体の約2分の1の長さの位置で下方に傾斜し始め,背もたれ部の先端部は,座部と同じ高さに位置する。
G′ 平面視において,座部後方部分及び座部前方部分の左右両端部を除く部分の淡色と,座部前方部分の左右両端部及び背もたれ部の濃色との濃淡2色からなる。
H′ 座部底面に回転板が取り付けられている。
3 本件登録意匠と被告意匠の対比 (1) 本件登録意匠の要部と被告意匠の構成とを対比検討する。
ア 被告意匠は,背もたれ部を立てた状態の側面視において,背もたれ部が所定の角度をもって立ち上がり,途中でよりゆるやかな傾斜角になるように形成されている点において本件登録意匠と共通する。しかし,水平方向に折れ曲がる箇所が,本件登録意匠では,立ち上がりの部分から背もたれ部全体の約3分の1の長さに位置するのに対し,被告意匠では,立ち上がりの部分から背もたれ部全体の約2分の1の長さに位置し,そのため,本件登録意匠は被告意匠に比べてより姿勢の低い平たい印象を看者に与える点で相違する。
イ 側面視において,本件登録意匠では,背もたれ部の立ち上がり付け根部が細く,折れ曲がり部まで徐々に太くなり,そこから先端まではほぼ均一の太さであるのに対し,被告意匠では,背もたれ部の太さは付け根部から先端まで均一である。
ウ 本件登録意匠では,背もたれ部を立てた状態の平面視において,座部前方部分の前後方向の長さと左右方向の長さの比が約3対7であり,座部前方部分の前後方向の長さと座部後方部分の左右方向の長さの比が約3対4であるのに対し,被告意匠では,それらが約1対4と約4対9であり,このため,本件登録意匠では,看者に対し,座部が横長の略長方形と略正方形とからなる略逆T字状の形状を有し,どっしりと安定感のある印象を与えるのに対し,被告意匠では,座部が横長の棒形状と略正方形とからなる略逆T字状の形状を有し,座部前方部分が窮屈な印象を与える。
エ 背もたれ部を全倒した状態の平面視において,本件登録意匠では,座部後方部分と背もたれ部との間の空隙部がわずかしか存在しないため,極めて機能的な印象を与えるのに対し,被告意匠では,座部後方部分と背もたれ部の間に,左右方向の空隙部と前後方向のそれよりも大きな背もたれ部の径の約2分の1ほどの空隙部があり,余裕のある印象を与える。
オ 平面視において,本件登録意匠は,全体が濃色の単一色であるのに対し,被告意匠は,座部後方部分及び座部前方部分の左右両端部を除く部分の淡色と,座部前方部分の左右両端部及び背もたれ部の濃色との濃淡2色からなる。
カ 被告意匠では,座部底面に回転板が取り付けられているが,本件登録意匠では回転板は取り付けられていない。
(2) 以上のとおり,被告意匠を本件登録意匠の要部(前記1(2)イ(ア)ないし(オ))と対比すると,被告意匠は,本件登録意匠の要部を具備しないといえる。さらに,前記のとおり,被告製品の座部底面には回転板が取り付けられているのに対し,本件登録意匠には回転板がないことを併せ考慮すると,本件登録意匠と被告意匠とは全体として看者に与える美観を異にするものと認められるから,被告意匠は本件登録意匠と類似しない。
これに対し,原告は,被告意匠は,本件登録意匠においては,背もたれ部が座部の側面の中程から立ち上がり,途中でよりゆるやかな傾斜角となるよう形成された点が本質的特徴であり,被告意匠はこの特徴を損なうことなく,看者がその特徴を認識できる状態で存在するので類似すると解すべきであり,色彩及び回転板の有無という相違点は,類否の判断に影響を与えないと主張する。しかし,本件登録意匠の要部は前記1(2)イ(ア)ないし(オ)のとおりであるから,単に,被告意匠において,座部の側面の中程から立ち上がり,途中でよりゆるやかな傾斜角となるよう形成された背もたれ部があるという共通点が存在するだけでは,被告意匠が本件登録意匠と類似するということはできない。したがって,原告の上記主張は採用できない。
4 よって,原告の本訴請求はいずれも理由がないから,これを棄却する。
追加
別紙物件目録別紙写真のとおり,平面視をほぼ逆T字状とした座部と,この側面の中程から立ち上がるアーチ状に形成した背もたれ部からなり,この背もたれ部は,側面視において最初は一定の角度をもって立ち上がり,途中でこの角度よりゆるやかな傾斜角となるよう形成されており,座部と背もたれ部は色分けがされており,座部底面には回転板が取り付けられており,必要に応じて背もたれ部が折り畳み可能となる座椅子平面、底面、正面図背面、左側面、右側面図
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 榎戸道也
裁判官 佐野信
  • この表をプリントする