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関連審決 審判1998-17802
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  物品の形状 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  意匠の説明 /  3条1項3号 /  記載された意匠 /  類似の意匠 /  物品の機能 /  部品 /  意匠の類否 /  願書の記載 /  意匠の要旨 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 411号 審決取消請求事件
原告 株式会社東芝
訴訟代理人弁理士 櫻木信義
同 外川英明
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 藤正明
同 藤木和雄
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/07/30
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が平成10年審判第17802号事件について平成13年7月25日にした審決を取り消す。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成4年12月17日に出願した特願平4-336901号を分割した新たな特許出願である平9-300090号を、平成9年12月25日、意匠に係る物品を「発光ダイオード」とする意匠(以下「本願意匠」という。)として、意匠登録出願(平成9年意匠登録願第79759号)に変更したが、平成10年10月9日に拒絶査定を受けたので、同年11月9日、拒絶査定不服の審判を請求した。
特許庁は、同請求を平成10年審判第17802号事件として審理し、平成13年4月13日に改めて拒絶理由通知を発し、平成13年7月25日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年8月13日に原告に送達された。
2 審決の理由 別紙1審決書の理由の写し(以下「審決書」という。)のとおり、本願意匠の形態について、審決書添付別紙第1に示すとおりとし、審判手続の拒絶理由通知において引用した平成2年実用新案出願公開第52463号公報(甲第2号証。以下「引用公報」という。)記載の第2図、第3図及び第5図に示された発光ダイオードの意匠(以下「引用意匠」という。)の形態について、審決書添付別紙第2に示すとおりとした上で、本願意匠と引用意匠とを対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、意匠全体の基調を成すところにおいて共通し、その差異点は微弱なものであるから、本願意匠は、引用意匠に類似しているものというほかないから、意匠法3条1項3号の意匠に該当し、意匠登録を受けることができないと判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
1 本願意匠の形態の認定の誤り (1) 審決は、本願意匠の形態について審決書添付別紙第1に示すとおりであると認定した(審決書1頁3行ないし5行)が、本願意匠の形態は、平成10年2月9日付けの手続補正書で補正された願書及び添付図面の記載(別紙2「本願意匠と引用意匠の対比図」中の「本願意匠」の図面参照)に基づいて認定されるべきであるのに、審決は、これを看過したものであって、審決の本願意匠の要旨の認定は、誤りである。
(2) 被告は、審決書添付別紙第1の図面は誤って添付したものであるが、
審決における本願意匠の要旨は、補正後の記載全体により認定したものであると主張し、審決書1頁14行ないし2頁11行を引用している。
しかしながら、審決書に添付された別紙第1は、本願意匠の形態を特定するものとして記載されており、審決の重要な一部を構成している。さらに、被告が指摘する審決書の記載部分には、本願意匠の特定ないし形態の認定に関する記載は見当たらない。
したがって、審決における本願意匠の形態は、審決書に添付された別紙第1の図面をもって特定されて認定されているのであり、本願意匠の要旨の認定は、補正書の記載全体に基づいてなされたものであるとする被告の上記主張は失当である。
2 引用意匠の形態の認定の誤り (1) 引用公報記載の第2図、第3図及び第5図の発光ダイオードには、いずれもリード線の記載がないにもかかわらず、審決は、「第5図には、半導体チップ及びリード線が図示されていないものの、第5図は、本考案の他の実施例であるから、図面上、第1図に示された半導体チップ及びリード線を省略したまでのものであって、それらを有するものとして認定する。」(審決書1頁9行ないし12行参照)として、引用意匠について、リード線が図示されたものと推認している。
(2) しかしながら、引用意匠は形態が具体的に特定されてはじめて、本願意匠との比較が可能となるものであり、特許や実用新案における引用例、あるいは意匠の創作性を判断するための先行意匠として引用する場合なら格別、本願意匠との具体的類否を判断するための対象として、リード線が図示されていない第2図、
第3図及び第5図に記載された意匠をもって引用意匠とすることは、引用意匠としての適格性を欠くものである。
また、審決が引用意匠について、上記のとおり、リード線が図示されているものとした認定には、以下のとおり、誤りがある。
(3) 被告は、引用の意匠に挙げた第5図は、本考案(引用公報記載の考案)の他の実施例であり、本考案の一実施例とした第1図と異なる本体の樹脂体の形状を変えた点を示したものであるから、それ以外の部分については、同時に記載されている他の図面を参酌し、リード線を補って認定することは図面上十分可能であり、実質上、本体の樹脂体の形状を第5図のようにした発光ダイオードの全体形状が表されているといって差し支えない旨主張している。
しかしながら、引用公報の第5図がその考案の他の実施例であるからといって、
直ちに第5図が第1図と異なる本体の樹脂体の形状を変えた点を示したものであるとの認定は、独断にすぎるというべきである。このことは、第1図に示されたリード線の具体的な態様が、発光ダイオードにおけるリード線の定型的な形態であることを示す証拠は示されていないことからも明らかである。
3 本願意匠と引用意匠との類否判断の誤り (1) 共通点の認定の誤り 審決は、本願意匠と引用意匠について、「その形態について、両意匠は、発光ダイオードチップとリード線の上方部を透光性樹脂材でモールドした本体とその本体から外方へ突出したリード線からなるものであって、本体は、平面視長円形状で、
上方先端部を正面視略半円弧状で側面視緩やかな円弧状とする凸曲面状に膨出させた略扁平長円柱体とし、その下面から2本の細いリード線を間隔を保持して垂直に延設した態様が共通しているものである。」(審決書1頁14行ないし2頁1行)と認定し、引用意匠は、本願意匠と同様に、発光ダイオード本体の「下面から2本の細いリード線を間隔を保持して垂直に延設」されており、この点も両意匠は共通するとしている。
しかしながら、前記2のとおり、引用公報の第2図、第3図及び第5図で示される引用意匠には、リード線は図示されていないことが明らかであって、共通点に関する上記の審決の認定は誤りである。
(2) 差異点の認定の誤り 審決は、リード線の態様について、「本願の意匠は、本体下面の短手方向から2本突出している(正面視において2本見える)のに対して、引用の意匠は、本体下面の長手方向から2本突出している(側面視において2本見える)点に差異が認められる。」(審決書2頁8行ないし11行)と認定している。
しかしながら、引用意匠には、前記2のとおり、リード線が図示されていないのであるから、審決の上記の認定には、明らかな誤りがある。
(3) 全体的考察における類否判断の誤り ア 仮に、審決が引用意匠について認定するように、引用公報の第1図に示されたリード線が第2図、第3図及び第5図にも配設されていると仮定したとしても、以下のとおり、審決は、本願意匠と引用意匠の共通点、差異点の類否判断に及ぼす影響の大きさに関する判断を誤り、その結果、本願意匠と引用意匠との類否判断を誤ったものであって、取消しを免れない。
なお、審決は、引用意匠のリード線の形状、配置等について推認に基づいて判断しているが、意匠の異同の比較は、具体的な構成に基づいて行われるべきものであるため、別紙2の「本願意匠と引用意匠の対比図」中の「引用意匠(推認)」の図面を原告において作図した。
イ 一般に、意匠を構成する各部の具体的形状の差異が、意匠全体の美感にどのような影響を与えるかを判断するときには、物品の特性あるいは特徴、物品の用途あるいは機能と形状の関係、またその物品の取引者又は需要者などを考慮してされるべきである。
しかるべきところ、本願意匠に係る物品「発光ダイオード」は、各種表示装置、
映像機器あるいは通信機器等の要素部品の一つとして用いられているものであり、
発光ダイオードをはじめ、これら装置や機器の開発・設計に携わる技術者あるいは購買担当者等が、主たる取引者、需要者である。いわゆる「専門家」と称されるこのような取引者、需要者は、外観に表れる製品特性や形態の差異を注意深く観察するのが普通である。
また、意匠の類否判断は、本願意匠と引用意匠を直接対比して、当該物品の外観を全体的、視覚的に観察して、両者が彼此混同する程度に類似するか否かが判断されるものであるから、当該物品の外観を形成し、肉眼によって視覚的に観察される形態である限り、類否判断の要素となり得るのであって、その形態が、当該物品の機能を果たすうえで必要な形態であり、あるいは、当該物品と同種の物品が一般的普遍的に備えている周知の形態であるとしても、これを捨象して判断すべきものでないことは当然である。
ウ 審決は、基本的構成態様の共通をもって、両意匠の類否判断を左右するところであるとし、一方、具体的構成態様の差異は類否判断に与える影響は微差であると評価して、両意匠は類似すると認定している(審決書2頁12行ないし3頁11行参照)。
しかしながら、本願意匠と引用意匠とは、審決が共通するとした基本的構成態様において共通するものの、審決が差異点とした具体的構成態様において顕著な相違が認められるものである。
すなわち、審決が共通するとした基本的構成態様は、本願意匠と引用意匠にのみ共通するものでなく、発光ダイオードの意匠において普通に認められるものであり、本願意匠と引用意匠との類否判断において、格別重視すべき部分ではない。
これに対し、両意匠間で認められる具体的構成態様の差異点は、次のとおり、それぞれの意匠の特徴を形成するものであって、類否判断において重視されるべき部分である。
(ア) 本願意匠の発光ダイオード本体は、透光材で構成され、その平面視形状は大円の上下から小円で上下に引っ張ったような態様をなし、その正面視形状は下方を略正方形上方を半円形とする縦長の逆さ「U」字状をなして、側面視形状は上方を扁平な凸弧状とする逆さ「U」字状からなっている。これを周側面より見ると、上下方向に垂直で周面方向に連続した曲面を形成した態様からなって、頂面を凸曲面状とする断面細長い楕円形をなす柱体を形成している。
また、透光材からなる本体の内部には、半導体チップ、ボンディングワイヤ及びリード線が配設・保持されて、外方からその態様を視認することができ、そのリード線は、対向した2本が本体の短手方向の中央部で短手方向に平行に形成され、その下部は本体下方に延設されている。
これに対し、引用意匠の発光ダイオード本体は、透光性樹脂からなり、その平面視形状は、矩形の前後から半円形で挟むようして小判形をなし、その正面視形状を本願意匠と同様に縦長の逆さ「U」字状をなし、また側面視形状は上辺を大きく弧状に膨らませて縦横比をほぼ同一とする逆さ「U」字状をなしている。これを周側面より見ると、左右両側は垂直の平坦面で前・後面は垂直な半円筒状をなして、その全体の形態は頂面凸曲面状で、断面小判形の柱体を形成している。
その本体は、透光性樹脂からなっているが、内部に配設・保持されたはずの半導体チップ、ボンディングワイヤ及びリード線を外部から視認・判読することは困難である。またリード線は、対向した2本が発光素子本体の長手方向の中央部で平行に配設され、上部半分は本体内にモールドで保持され、下部半分が本体下方に延設されていると推認される。
(イ) 上記(ア)の結果、本願意匠と引用意匠とは、次のような顕著な差異が認められる(別紙2「本願意匠と引用意匠の対比図」参照)。
(a) リード線の具体的形態において、本願意匠は、対向する2本のリード線を、本体の短手方向の中央で平行に配設されているのに対し、引用意匠は、長手方向に配設されている。
(b) 発光ダイオード本体の具体的形態において、本願意匠が頂面凸曲面状で断面細長い楕円柱体をなして、「薄く低い」態様をしているのに対し、引用意匠は頂面凸曲面で断面小判形柱体をなして、厚みがあり「ずんぐりむっくり」した形態を呈している。
(c) 本体部周側面の態様において、本願意匠は、大円の前後を小円で引っ張ったような柱体をなしている結果、左右側面は大弧面、前後は小弧面からなる垂直の弧状面が連続して形成されているのに対し、引用意匠は、四角柱体の前後から半円柱体をつなげて一体にしたように、左右両側が垂直な平坦面をなして、その前・後面が半円の弧状面となっている。
(ウ) 本願意匠と引用意匠との上記(イ)の具体的構成態様の差異点が、両者の類否判断に与える影響は、次のとおり極めて大きなものである。
本願意匠の物品である「発光ダイオード」は、甲第4号証からも明らかなとおり、自動車や家電機器、電気通信機器の光源用部品として使用され、さらには表示機器の構成部材としても使用されるものである。
一方、発光ダイオードの上面や周側面における両意匠の上記した形態の相違は、
レンズ効果の相違に伴う発光特性の相違となって表れる。
一般に、リード線を発光ダイオード本体内にモールドして製造する場合に、リード線に若干の傾きが生ずることは否めない。この場合、リード線の傾きは、リード線の傾きが同じ傾きであればレンズ曲率の大きい方が配向特性のずれ、すなわち発光強度のばらつきが大きくなる。一方、配向特性のばらつきは、発光ダイオードの品質の低下を招くことになり、需要者にとって、殊更、深刻な問題となる。それゆえ、需要者にとっては、配向特性のばらつきの小さいもの、すなわち、2本のリード線が発光素子本体の短手方向に平行に配設されているものが望ましいといえる。
このため、たとえ細い2本のリード線であったとしても、需要者にとって、その配設の方向は重大な関心事として認識される。
この結果、本願意匠と引用意匠に表れるリード線の延設される向きの相違は、物品選択において強い影響を与えるものとなり、看者に与える影響は大きいものである。
さらに、下方に延設されるリード線を短手方向に配するか長手方向に配するかは、発光特性の相違に伴って、これを用いた製品設計を行うに際して、発光ダイオードを基板等に植設するときの配列方向の相違に影響してくることとなる。
そして、「発光ダイオード」は、通常、その大きさが小さいため、下方に延設されるリード線部分を指に挟む等して、手に取って観察されるのが普通である。そうしたとき、下方に延設されるリード線が、本体の短手方向に配設されるか長手方向に配設されるかは、ダイオード本体の正面が短軸方向になって表れるか、長軸方向になって表れかという、看者にとって見える向きの相違となって表れるため、類否判断に与える影響は大きいといえる。
このため、この種物品の看者であるこれら機器や製品の設計者や購買者は、とりわけ、本願意匠の「薄く低い」態様と、引用意匠の「厚くて高くずんぐりむっくり」した態様となって表れる上面や周側面の形態、更には下方に延設されるリード線の形状に対し、格別の注意を払いその差異に注目することとなるのが必定である。
以上を踏まえて、本願意匠と引用意匠との間に認められる具体的構成態様の相違を考慮したとき、それは、単に部分的差異と評価されるべきものでなく、意匠の類否判断に極めて大きな影響を与える要部として評価されるべきである。
この結果、上記した各部の相違は、相乗してそれぞれ相異なる特徴を表出しているもので、意匠全体として観察するとき、当然に非類似の関係にあるとされるべきものである。
エ 以上のとおり、本願意匠と引用意匠は、基本的構成態様が共通するとしても、看者はかかる点を技術的必然形態からもたらされる当然の形態として重視せず、具体的構成態様が意匠の特徴を形成する部位であると認識して着目し観察するといえる。しかるときには、本願意匠と引用意匠の上記ウの(イ)の差異点は、それぞれの特徴を形成するもので、意匠全体として観察するとき、それぞれの差異点が相乗して、極めて異なる印象を与える非類似感を誘発するというべきである。
よって、引用意匠の図面にリード線が図示されていると仮定した場合であっても、本願意匠は引用意匠に類似せず、非類似の意匠であると認定されるべきであって、これを類似するとした審決の判断は、誤りである。
被告の反論の要点
1 取消事由1(本願意匠の形態の認定の誤り)に対して (1) 原告は、審決が本願意匠の形態として添付した審決書添付別紙第1の図面が、手続補正書提出前の図面であることをとらえて、審決の本願意匠の形態の認定は、手続補正書を看過したもので誤りである旨主張している。
確かに、審決は、審決書作成に当たり、補正前の図面を誤って添付したものであるが、以下に述べるとおり、審決の本願意匠の形態の認定には誤りはない。
(2) 意匠の要旨は、 出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の記載に基づいて認定されなければならないが、出願後において出願人が手続補正書を提出した場合は、その補正が適法なものであれば、補正後の記載に基づいて認定されることとなるところ、本願意匠の出願は、出願当初の願書の記載及び願書添付の図面(乙第1号証)に示すとおりのものであり、その後に、平成10年2月9日付け手続補正書(乙第2号証)により添付図面及び願書の記載について補正がされている。
したがって、本願意匠の要旨の認定は、補正後の願書の記載及び願書添付の図面の記載に基づいてされなければならないところ、審決における本願の意匠の要旨は、これら補正後の記載全体により認定したものである(審決書1頁14行ないし2頁11行参照)。
(3) また、平成10年2月9日付け手続補正書は、出願当初の願書及び添付図面の要旨を変更するものでないから、本願意匠の要旨認定に影響はないというべきである。その理由は、次のとおりである。
ア 出願当初の願書及び添付図面と上記手続補正書を比較すると、手続補正書の図面は、各図に本体の内部部品が表れている点、当初省略されていた左側面図が追加されている点、拡大断面図の拡大率が小さくなっている点が異なる。その他の点、すなわち、外形形状、拡大断面図の形状、図面レイアウト、意匠の説明も同一である。
各図に本体の内部部品が表れている点については、出願当初の添付図面中の「内部機構を省略したA-A’拡大断面図」(審決書添付別紙第1参照)において、既に内部部品のほぼ全体の形状が明示されており、かつ、その形状自体は、格別新規なものでなく、ありふれた態様のものであり(例えば、乙第4、第5号証参照)、
また、出願当初の願書中の「意匠の説明」の欄には、「透光部を示す参考図中平行斜線を施した部分は透光部である。」との説明がある。
したがって、手続補正書の図面は、出願当初より開示されていた本体の内部部品形状を、「意匠の説明」の欄の「透光部」の説明に基づき、各図に反映したまでのものであり、出願当初の願書及び添付図面から読みとれない、全く新たな形状を追加したものでないことは明らかである(原告においても、同様の理由から、出願当初の願書及び添付図面の要旨を変更するものでないことを前提に、補正書として図面を補正したと思われる。)。
イ 本体の内部部品形状について更に付言すれば、本体自体がかなり小さなものであること(乙第6号証、第9号証参照)、また、その形状自体も、高度に技術的な目的に即したものであって意匠的創作の対象とはなり難いこと、使用時は発光することにより、その形状が判然としなくなること、及び、上記したように、その形状も本願意匠独自の特徴ある態様とは認められず、ごく一般的なものであること等を考え併せると、本体の内部部品形状が、本願意匠の要旨認定、なかんずく本願意匠と引用意匠の類否判断を目的とする本願意匠の要旨認定に及ぼす影響はごく微弱なものといわざるを得ない。
ウ 出願当初の願書中の「意匠の説明」の欄に記載された「透光部である。」については、本件の意匠出願は、特許出願(特願平9-300090号)から変更したものであるが、その特許出願は、原出願(特願平4-336901号)から分割したものであり、それらの図面には、既に内部部品が表れていること(乙第1号証の願書図面、乙第7、第8号証参照)、また、この種物品分野において、
本体が光を透すことは自明であるところ、本体の素材、着色等により、内部部品が子細に見れば見えるものから内部部品が見えにくいもの(乙第9号証参照)をも含めて「透光部」と称している事情があり、また、本体が光を透すことを前提に、本体の内部部品を表すように記載したり、そうでなかったり図面の表現も様々である(乙第10ないし第13号証参照)。
これらの事情を総合的に勘案すれば、出願当初の添付図面中の断面図に本体の内部部品形状が開示されている以上、六面図に本体内部部品が明示されているか否かは、本願意匠の要旨認定に格別の支障をきたすものでない。
エ 以上のとおり、出願当初の願書及び添付図面において開示された自明の範囲と手続補正書を比較検討し、この種物品の事情を併せて総合的に検討すれば、審決には、審決書添付の別紙第1の図面が出願当初の添付図面であるという不備はあるものの、本願意匠において手続補正書の前後で実質的に要旨の変更はないものである。
そして、審決において、本願意匠と引用意匠を認定する場合に、全ての共通点及び差異点について採り上げて認定しなければならないわけではなく、両意匠の全体的な類否の判断に影響を及ぼすようなものについて採り上げて認定すれば足りるものであり、殊更に細部のものや類否判断を左右するに至らないものまで認定する必要はない。
これを前提に、両意匠に係る物品である発光ダイオードについてみると、内部の構造は高度に機能的なものであり、また、当該物品の通常の大きさが小さいものであったり(乙第6号証)、本体の多くは半透明であるため、本体の内部部品が見えにくいものが一般的であることから、この種発光ダイオードの意匠としての創作は、全体の大部分を占める本体の形状が主要な部分であり、また、本体から外方へ突出したリード線は極めて細いから、視認できるとしても視覚的効果は弱く、本体に比べて、意匠全体に及ぼす影響は小さいものである。
そうすると、上記のとおり、本体の内部部品については、本来意匠の対象としてはなじまない性質のものであり、また、その態様も、本願意匠及び引用意匠独自の特徴あるものでなく、極く普通の態様であること、内部部品は極く細かな薄片状あるいは極細線状でその視覚的な注目度が低いこと、使用状態では形状がはっきりと視認することはできないこと等から、意匠全体から見ればほとんど目立たない微細な構成にすぎないというべきであって、本願意匠と引用意匠の外形形状、すなわち、本体及び本体から外方へ突出したリード線の形状に比べて、意匠的価値の低いものであり、両意匠の意匠的効果をもとに、その全体的、相対的評価を行う類否判断において、その判断に影響を及ぼすようなものでないことは明らかであるから、
殊更採り上げるまでもないものである。
したがって、審決において、両意匠の類否判断に格別の影響を及ぼさない本体の内部部品の態様について、両意匠の要旨認定において採り上げなかったとしても、
格別誤りではなく、審決の結論に影響を及ぼすことはない。
(4) さらに、審決書に図面を添付している趣旨は、次のとおりである。
すなわち、審決における本願意匠の要旨の認定は、願書の記載及び願書に添付した図面の記載に基づいてされるところであるが、意匠は物品の形態に係わるものであるから、文章のみによる意匠の要旨の認定には、理解、認識が十分に得られない面があるから、意匠の要旨の明確化及び審決の理由の明確化等を図る目的で、審決書に願書添付の図面を使用し、添付することとしているものである。
(5) 上記(2)、(3)のとおり、審決における本願意匠の要旨の認定には、審決の結論に影響を及ぼすような誤りはないと認められるものであり、また、
審決書に図面を添付する趣旨は、上記(4)のとおりであるから、審決が審決書作成に当たり添付図面を誤ったことについて、審決を取り消すべき事由であると解されることはない。
2 取消事由2(引用意匠の形態の認定の誤り)に対して (1) 公開実用新案公報は、技術的な内容を表した文献であるから、その図面も自ずから意匠図面とは異なり、最も技術的、機能的内容を示すのにふさわしい表現方法をとるものであることから、技術的常識に係る部分や、本考案の創作に無関係の部分を省略して、技術的に重要な特定の部分のみを表すことは、普通に行われていることである(乙第14、第15号証)。このように、技術的な文献を、意匠的にとらえ、引用意匠として引用する場合は、他の実施例と同じものとして省略されている部分等は、それを補って認定する必要がある。公開実用新案公報に示された考案の他の実施例は、その考案の技術的な面を表せば足りるため、その他の考案と直接関係のない部分については、省略して表すことが普通に行われている。その場合、他の実施例について意匠として形態を認識するために、省略された部分を、その考案を示す図面、あるいは同時記載の文章から補って認定することは、技術的文献を意匠的観点から把握し直す以上、当然許されることである。
本件の場合においても、引用公報(甲第2号証)には、本考案の一実施例として第1ないし第4図が記載され、第1図には本体、半導体チップ、リード線等が表されているが、第2図及び第3図はリード線等が省略されている。しかし、発光ダイオードの全体形状としては、本体、半導体チップ、リード線等が表されたものであることは当然であり、それは、従来例として挙げられた第7図でも明らかである。
引用意匠に挙げた第5図は、本考案の他の実施例であり、本考案の一実施例の第1図と異なる本体の樹脂体の形状を変えた点を示したものであるから、それ以外の部分については、同時に記載されている他の図面を参酌し、リード線を補って認定することは図面上十分可能であり、実質上、本体の樹脂体の形状を第5図のようにした発光ダイオードの全体形状が表されているといって差し支えない。
したがって、審決が、引用意匠として、本考案を示す第1図に示されたリード線を補って認定したことに何ら誤りはない。
(2) 以上のとおり、審決の引用意匠の形態の認定には、誤りはない。
3 取消事由3(本願意匠と引用意匠との類否判断の誤り)に対して (1) 原告は、審決が共通するとした基本的構成態様は、本願意匠と引用意匠にのみ共通するものでなく発光ダイオードの意匠において普通に認められるものであり、本願意匠と引用意匠との類否判断において格別重視すべき部分ではなく、
これに対し、両意匠間で認められる具体的構成態様の差異点は、それぞれの意匠の特徴を形成するものであって、類否判断において重視されるべき部分である旨主張している。
しかしながら、意匠の類否判断は、物品の外観の全体にわたって、その形態を観察する全体的、視覚的な判断であるから、共通する態様が普通に認められるとしても、意匠全体に占める割合が大きく、またその物品意匠の創作の主要な部分であれば、差異点がそれらを凌駕しない限り、共通する態様が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいとして評価せざるを得ない。
審決は、意匠全体の大部分を占める本体とその本体の下面から延設した細いリード線の共通する態様を両意匠の類否判断に影響を及ぼす範囲で認定しているものであって、差異点として取り上げた点は、いずれも共通する態様に比べて、更に細部における差異である。したがって、意匠全体として観察した場合、それらの差異点は、いずれも微弱なものであって、それらの差異点を総合しあいまった効果を考慮しても、類否判断を左右する共通する態様を凌駕するものと認められないとした審決の判断に誤りはない。
原告は、両意匠の共通する態様は、技術的必然形態からもたらされる当然の形態であり看者により重視されない旨主張しているが、本体の形状について、他の形状のものが本願意匠の出願前に種々見受けられること(乙第6号証参照)からすれば、原告主張のように、技術的必然形態とはいえないものである。
また、種々見受けられる本体の形状のうち、円柱体状又は角柱体状のものが一般的で多く見られること(同号証参照)を考慮すると、審決が両意匠の本体について共通する態様として採り上げた、「平面視長円形状で、上方先端部を正面視略半円弧状で側面視緩やかな円弧状とする凸曲面状に膨出させた略扁平長円柱体とし」た態様は、両意匠の特徴となり得るものであり、両意匠に強い共通感を与えるものといえる。
(2) また、原告は、上面や周側面の形態の相違は、レンズ効果の相違に伴う発光特性の相違となって表れるから、看者は格別の注意を払いその差異に注目することとなり、類否判断に極めて大きな影響を与える要部として評価されるべきである旨主張している。
しかしながら、発光特性の相違は、機能上の相違であって、意匠の類否は、物品の形状模様、色彩を判断するものであるから、意匠の観点から評価すべきものではない。そして、審決で述べているとおり、本願意匠のようにやや細長い楕円形状のものが本願の出願前に見受けられることから(乙第16、第17号証参照)、本願意匠独自の態様といえないこと、また、上記のとおり、本体の形状が種々見られる中で、両意匠が平面視長円形状とした点が共通しており、また、上方先端部を凸曲面状とした態様も共通していることを考慮すると、本体の平面視の形状の差異は、それらの共通する範囲内での差異にすぎないものである。
(3) また、原告は、両意匠の顕著な差異として、本体の周側面が、本願意匠は、左右側面は大弧面、前後は小弧面からなる垂直の弧状面が連続して形成されているのに対し、引用意匠は、左右側面が垂直な平坦面をなして、その前・後面が半円の弧状面となっている点を採り上げているが、両意匠ともに上方先端部を凸曲面状とし、前後面も弧状面であるから、大部分が曲面で形成されていること、当該物品が小さいこと、また、本願意匠の態様も周知のものであって(乙第17号証参照)、格別のものでないことを考慮すると、全体として観察した場合、その差異は部分的で微弱なものというべきである。
したがって、審決がこの差異点を微弱なものとした点に誤りはない。
(4) さらに、原告は、リード線の延設される向きの相違は、発光特性、基板に植設するときの配列方向の相違に影響し、類否判断に与える影響は大きい旨主張している。
しかしながら、発光特性、基板に植設するときの配列方向の相違は、機能上の相違であるところ、意匠の類否は、物品の形状模様、色彩を判断するものであるから、係る相違点は、意匠の観点からすると、評価に値するものではない。また、リード線の態様は、リード線が細いものであり、意匠全体に占める割合も小さいことから、本体に比べて意匠的価値が低いものである。
以上を前提として本願意匠に見られるリード線の態様をみると、そのリード線の向きは、既に本願意匠の出願前に見受けられ(乙第18号証参照)、本願意匠独自の新規な態様とは認められないものであり、しかも両意匠のリード線が本体下面から2本平行に垂下させるという共通している中での差異であるから、意匠全体に及ぼす影響は微弱なものである。
したがって、審決がこの差異点を部分的で微弱なものとした点に誤りはない。
(5) 原告は、本願意匠が「薄く低い」態様をしているのに対し、引用意匠は厚みがあり「ずんぐりむっくり」した形態を呈しているから、看者は格別の注意を払いその差異に注目することとなり、類否判断に極めて大きな影響を与える要部として評価されるべきである旨主張している。
しかしながら、この種物品において、本体の高さ、厚みは、技術的な観点等から多少異なるものが普通に見受けられ(乙第6号証参照)、本願意匠の本体の高さ、
厚みも格別なものといえず、両意匠の差異は、通常の高さ、厚みの範囲内での差異にすぎないものであるから、看者はその差異に注目をするとはいえないものである。
したがって、審決がこの程度の差異を微弱なものと判断した点に誤りはない。
(6) 以上のとおり、審決がした本願意匠と引用意匠との類否判断について、原告が誤りであるとして主張する点は、いずれも理由がなく、審決が本願意匠について引用意匠と類似するとした判断には、誤りがない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本願意匠の形態の認定の誤り)について (1) 本願意匠の出願は、出願当初の願書の記載及び願書添付の図面(乙第1号証)に示すとおりにされ、その後に、平成10年2月9日付け手続補正書(乙第2号証)によって添付図面及び願書の記載について補正がされていることが認められる。
原告は、審決が本願意匠の形態として添付した審決書添付別紙第1の図面が、上記手続補正書提出前の図面であることから、審決の本願意匠の形態の認定は、この手続補正書を看過したもので、誤りである旨主張している。
確かに、上記認定によれば、審決は、その審決書を作成するに当たり、上記手続補正書による補正後の図面ではなく、補正前の図面を誤って添付したことが認められる(このことは、被告も自認するところである。)。
しかし、このように審決が本願意匠を現す図面として誤って補正前の出願当初の願書添付の図面を添付したとしても、上記手続補正書は、もともと出願当初の願書及び添付図面の要旨を変更するものとは認められず(このことは、当事者間に争いがない。)、本願意匠の構成態様を実質的に変更するものとは認められないから、
審決書に補正後の図面ではなく、補正前のものを添付したという過誤のみでは、直ちに審決がした本願意匠の要旨の認定に実質的な影響を及ぼすものということはできず、審決が本願意匠と引用意匠のそれぞれの構成態様を認定、対比してする両意匠の一致点及び差異点の認定に誤りがない場合には、その過誤は、審決の結論に影響を及ぼす違法がないものとして、審決の取消事由にならないものと解すべきである。
(2) これを本件についてみると、審決が本願意匠と引用意匠の形態を対比して、それぞれの構成態様の一致点及び差異点として認定したところ(審決書1頁14行ないし2頁11行)には、何ら誤りはないものと認められるから(原告は、
審決がした両意匠の一致点及び差異点の認定につき、引用意匠のリード線が審決認定のとおり延設されている点についてのみ争い、本願意匠の構成態様に関しては争わないものであり、また、審決がした引用意匠のリード線に係る認定に誤りがないことは、後記2に判示のとおりである。)、審決が審決書の作成に当たり上記の補正前の図面を誤って添付したことは、審決を取り消すべき事由には該当しないものと認められる。
(3) 以上のとおり、原告の取消事由1は、理由がない。
2 取消事由2(引用意匠の形態の認定の誤り)について (1) 原告は、審決が引用意匠とした引用公報(甲第2号証)記載の第2図、第3図及び第5図の発光ダイオードには、いずれもリード線の記載がないにもかかわらず、審決が、図面上、同第1図に示されたリード線を省略したまでのものであるとして、引用意匠について第1図に示されたリード線を有するものとして認定したこと(審決書1頁9行ないし12行)は、誤りである、また、かかる図面を引用意匠とすることは、引用意匠としての適格性を欠くことになる旨主張している。
(2) しかしながら、一般に、実用新案公報は、意匠公報とは異なり、技術的思想内容を表した文献であり、そこに掲記される図面は、技術的思想、技術的事項を端的に表すのに十分な表現方法を採用するものであるから、例えば、複数の実施例を図示するに当たり、共通する構成部分については、一つの実施例の図面のみに記載して、他の実施例においてはその記載を適宜省略したり、物品の全体の構造を示す図面に現した構成部分の一部を適宜省略して、部分構造を図示するという手法は、慣用される表記方法であり(乙第13、第14号証参照)、その物品に係る当業者も、このことは当然のこととして認識していることは、明らかである。
そして、甲第2号証によれば、引用公報には、考案に係る発光ダイオードについて、審決書添付の別紙第2の第1図のとおりの図面が、「第1図」として記載され、発光ダイオードの本体の他に、半導体チップ及びリード線が記載されており、
その説明として、「第1図は本考案に係る発光ダイオードの一実施例を示す断面図」であると記載されていること、引用意匠に係る第5図については、「第5図は本考案の他の実施例を示す断面図」と記載されており、本体及び半導体チップは記載されているが、リード線の記載は省略されていることが認められる。この引用公報の記載内容と、本願意匠に係る発光ダイオードの物品において、リード線は必須の構成要素であることが顕著な事実であることを併せて考慮すると、引用公報に接する当業者は、引用意匠に係る引用公報の第2図、第3図及び第5図について、発光ダイオードのリード線の構成態様の記載が省略されていて、図示されていないものの、当然に、これを第1図に記載された態様のものとして補って把握するであろうことは、明らかである。
したがって、審決が、引用意匠として、引用公報の第2図、第3図及び第5図の記載に第1図に示されたリード線を補って認定して、係る形態を引用意匠としたことに何ら誤りはなく、また、審決の引用意匠の形態の認定に誤りはないものと認められる。
(3) 以上によれば、原告の取消事由2の主張も、理由がない。
3 取消事由3(本願意匠と引用意匠との類否判断の誤り)について (1) 原告は、審決が本願意匠と引用意匠の一致点及び差異点として、いずれも、引用意匠に引用公報の第1図のリード線が示されたものとして認定したことについて、明らかな誤りがある旨主張しているが、この原告の主張が採用し得ないことは、前記2に判示したとおりである。
(2) 全体的考察における類否判断について ア 原告は、仮に引用意匠のリード線について審決が認定するとおりに認められるとしても、審決が本願意匠と引用意匠とに共通するとした基本的構成態様は、本願意匠と引用意匠にのみ共通するものでなく、発光ダイオードの意匠において普通に認められるものであり、また、技術的必然形態からもたらされる当然の形態であり、看者により重視されないから、本願意匠と引用意匠との類否判断において格別重視すべき部分ではない旨、これに対して、両意匠間で認められる具体的構成態様の差異点は、それぞれの意匠の特徴を形成するものであって、類否判断において重視されるべき部分である旨、それぞれ主張している。
イ しかしながら、審決が認定する本願意匠と引用意匠に共通する基本的構成態様(審決書1頁15行ないし2頁1行)についてみると、乙第4ないし第6号証、第10号証、第12、第13号証、第15号証によれば、本願出願前に、
発光ダイオードの「本体」の形態として、本願意匠及び引用意匠のように「平面視長円形状で、上方先端部を正面視略半円弧状で側面視穏やかな円弧状とする凸曲面状に膨出させた略扁平長円柱体」とする構成態様とは異なる形状のものが、種々あることが認められ、その中でも、円柱体状又は角柱体状の形状のものが一般的であり、数多く見られることが認められる。
上記認定事実によれば、本願意匠及び引用意匠に共通する基本的構成態様として審決が認定した「平面視長円形状で、上方先端部を正面視略半円弧状で側面視穏やかな円弧状とする凸曲面状に膨出させた略扁平長円柱体」とする「本体」の形状は、原告が主張するように、発光ダイオードにおける技術的必然形態とはいえないものであることが明らかであるばかりか、発光ダイオード物品の意匠において、主要な部分を占め、その特徴を基礎づける基本的な構成となり得るものであると認められるから、この共通点を凌駕するような特徴的な差異点が認められない限り、看者に両意匠について、強い共通感を与えるものであると認められる。
また、本願意匠と引用意匠の「リード線」が、いずれも本体の「下面から2本の細いリード線を間隔を保持して垂直に延設した」ものであるという審決が認定した両意匠に共通する構成態様(審決書1頁末行、2頁1行)については、前掲各証拠によれば発光ダイオードの意匠において普通に見られるものではあるが、上記「本体」の基本的構成態様と併せて、発光ダイオードの物品の形態全体にかかるものとして意匠全体の基調を形成し、看者に両意匠の共通感を与えるものということができる。
ウ 次に、本願意匠と引用意匠の差異点についてみると、両意匠に審決認定の差異点(1)ないし(3)(審決書2頁2行ないし11行)があること自体は、原告は争っていない(原告は、審決が認定した差異点(3)に関して、引用意匠におけるリード線の構成について前記2のとおり争うにすぎず、原告が本訴において主張する差異点(前記第3の3(3)ウ(イ)(本判決書7頁、8頁)の(a)ないし(c)の点)も、審決が差異点(1)ないし(3)として認定した点について、順序、表現等を変えて、別に整理し直したものであり、同様の趣旨のものということができる。)。
(ア) 原告は、審決が認定した差異点(1)「本体の平面視直円形状において、本願意匠は、やや細長い楕円形状であるのに対して、引用意匠は、両端部を円弧状とするやや細長い長円形状である点」(これは、原告主張の上記差異点の(b)、(c)に概ね相当する。)に関して、「本体」の周側面ないし上面の形態の相違について、類否判断における要部として評価されるべきである旨主張している。
しかしながら、乙第16、第17号証及び弁論の全趣旨によれば、本願意匠のように、「本体」を平面視やや細長い楕円形の構成態様とする発光ダイオードは、広く知られていたことが認められ、この周知の平面形状の本体の周側面の形状として、本願意匠のように、平面視やや細長い楕円形のものを、先端部にかけて、正面視略半円弧状で、側面視穏やかな円弧状として凸曲面状に膨出させて柱状とする構成態様のものは、当業者が通常採用する設計事項のものとして当然存在しており、
広く知られていたことが推認されるから、この形状の構成態様は、本願意匠独自のものではなく、看者が殊更注視するものではないものと認められる。
そして、本願意匠に係る「発光ダイオード」の物品は小さなものであり、その「本体」として種々の形状がある中で、本願意匠と引用意匠とは、上記イのとおり、平面視長円形状として、上方先端部を凸曲面状とするなどの基本的な構成態様が共通しており、看者に強い共通感を与え得るものであることを併せて考慮すると、本願意匠と引用意匠との上面ないし周側面における具体的な構成態様における差異は、それらの共通する範囲内での微差にすぎず、看者に与える印象は微弱なものであると認められる。
(イ) また、原告は、審決が認定した差異点(2)「本体の構成比において、まず、側面視横幅に対する高さの比率において、本願意匠の方が引用意匠よりその比率がやや小さい点、また、側面視横幅に対する平面横幅の比率(厚み)において、本願意匠の方が引用意匠よりその比率が小さい点」(これは、原告主張の上記差異点の(b)に概ね相当する。)に関して、本願意匠が「薄く低い」態様をしているのに対し、引用意匠は厚みがあり「ずんぐりむっくり」した形態を呈しており、看者は格別の注意を払いその差異に注目することとなり、この差異点は類否判断に極めて大きな影響を与える要部として評価されるべきであるとも主張している。
しかしながら、被告が主張するとおり、この種物品において、本体の高さ、厚みは、技術的な観点等から多少異なるものが普通に見受けられ(乙第6号証参照)、
本願意匠の本体の高さ、厚みも格別なものといえず、両意匠の差異は、通常の高さ、厚みの範囲内での差異にすぎないものと認められるから、看者がその差異に注目をするとはいえないものである。
(ウ) さらに、原告は、審決が認定した差異点(3)「本体から外方へ突出したリード線の態様において、本願意匠は、本体下面の短手方向から2本突出しているのに対して、引用意匠は、本体下面の長手方向から2本突出している点」(これは、原告主張の上記差異点の(a)に相当する。)に関して、リード線の延設される向きの相違が類否判断に与える影響は大きい旨主張している。
しかしながら、乙第18号証及び弁論の全趣旨によれば、本願意匠のリード線のように、発光ダイオードの本体下面の短手方向から2本突出しているというリード線の構成態様は、本願意匠の出願前に広く知られていたことが認められ、本願意匠独自のものであるとは到底認めることができず、本願意匠を特徴づけるものとして看者の注意を惹くものとみることは困難なものであること、リード線は、小さな発光ダイオード物品の構成の中で、更に本体に比べて小さいものであることからすると、当該リード線の向きの構成態様は、本願意匠と引用意匠のリード線が、いずれも本体の「下面から2本の細いリード線を間隔を保持して垂直に延設した」ものであるという審決が認定した両意匠に共通する基本的構成態様(審決書1頁末行、2頁1行)に包摂される差異にすぎず、意匠全体に及ぼす影響は微弱なものであると認められる。
エ 以上認定の本願意匠と引用意匠の共通する基本的構成態様と差異点である具体的構成態様を総合して検討すれば、審決が「共通する態様が類否判断を左右するところといわざるを得ない。」とし、差異点は「いずれも微弱なものであるから、類否判断に影響を及ぼすものとは認められない」(審決書2頁12行ないし20行)とした判断には、誤りがないものと認められる。
(3) 以上のとおり、審決がした本願意匠と引用意匠との類否判断について、原告が誤りであるとして主張する点は、いずれも採用することができず、審決が本願意匠について引用意匠と類似するとした判断に誤りはない。
したがって、原告の取消事由3も、理由がない。
4 結論 以上の次第で、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史
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