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関連審決 無効2000-35197
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成10行ケ42審決取消請求事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  3条1項3号 /  頒布された刊行物 /  記載された意匠 /  類似する意匠 /  意匠の類否 /  全体観察 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) /  無効審判 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 42号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁護士 神戸正雄
同 弁理士 恩田博宣
同 弁理士 小林徳夫
同 弁理士 中島恭久
同 弁理士 恩田誠
同 弁理士 桑垣衛
被告 シャープ産業株式会社
訴訟代理人弁理士 清水久義
同 高田健市
同 小林正樹
訴訟代理人弁護士 上田隆
同 下垣邦彦
同 下垣和久
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/07/23
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が無効2000-35197号事件について平成13年12月10日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、意匠に係る物品を「メガホン」とする登録第955082号意匠(平成6年4月25日登録出願、同8年3月12日設定登録。以下、「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
被告は、平成12年4月12日、本件登録意匠につき無効審判を請求した。特許庁は、この請求を無効2000-35197号事件として審理し、同13年12月10日、「登録第955082号の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本を同年12月20日原告に送達した。
2 審決の理由の要旨 審決は、別紙審決の理由写し(以下「審決書」という。)のとおり、本件登録意匠(審決書添付の別紙第一参照)は、甲第17号証(審判甲第12号証)に記載された甲号意匠(審決書添付の別紙第二参照)と意匠に係る物品が一致し、甲号意匠と類似する意匠であるから、意匠法3条1項3号に該当し、同法48条1項1号の規定により登録を無効とすべきものであると判断した。
原告の主張(審決取消事由)
1 証拠についての認定の誤り 審決は、甲号意匠が掲載されている甲第17号証の雑誌「福岡ダイエーホークス,1991,FAN BOOK」の紙面(168頁)が本件登録意匠の出願前に頒布されたものであるか否かが明らかでないのに、甲号意匠が本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物に記載された公知意匠であると認定した。かかる認定は許されない。
2 甲号意匠の認定の誤り 甲第17号証の168頁にKとして表された「ホークス Vメガホン」は、製品を斜めに撮影した写真であるため、製品の外形形状のほぼ半分程度しか写っておらず、製品の反対側の形状や内面の形状、細部の形状は把握することができない。
それにもかかわらず、審決が上記写真に表れた意匠(甲号意匠)を、写真からは把握ができない形状も含めて把握したことは誤りであり、甲号意匠の誤った認定に基づいて両意匠を対比して、次のとおり一致点及び差異点を認定していることも誤りである(甲第17号証の写真から把握することができない形態に下線を付して示す。)。
[共通点] 基本的構成態様(以下、本件登録意匠の正面図を正面視として対比する。)において、全体を、略縦長円錐台状の拡声部の上部に短い倒略円錐台状の歌口部を形成し 、その中央位置で左右対称に縦分割した2つの筒状の部材から成り 、拡声部側を合わせた状態において歌口部をV字状に拡開している点。
また、その各部の具体的態様について、
@正面視、拡声部と歌口部の長さ比を、略4:1とし、その境界のくびれ部において、互いに逆向きくの字状に屈折し、この屈折部の対抗部が互いに枢着されている点、
A拡声部の左右各部材の対向面には、中間仕切壁が設けられている点、
B拡声部の下端より外周面に、4条の線状リブが周方向に設けられている点、
C拡声部の上方寄り外周面、及び歌口部の略全外周面に、多数条の細かい線状リブ をいずれも周方向に形成している点、
D正面視、拡声部外周面の中央縦分割線寄りの左右に、上下に余地を残して3条の細い線状リブを、メガホンの軸線方向に形成している点。
[差異点] 拡声部の中間仕切壁において、本件登録意匠は、各部材の略中央から下方に扁平略台形状の凹陥面部が設けられ、また、その中間仕切壁の下端縁に、扁平な略コの字状の切欠部を形成しているのに対して、甲号意匠の写真からはそれらの形態が不明である点。
3 両意匠の対比判断の誤り 審決は、前記基本的構成態様が、両意匠の骨格を形成し、両意匠の大部分を占めるところであり、類否判断の支配的要素であると認定しているが、本件意匠登録出願前に、実公平3-20879号公報(甲第31号証)の第1ないし第3図に記載された意匠が公知意匠として存在していたから、上記基本的構成態様は意匠の要部ではなく、各部の具体的構成態様が意匠の要部である。
審決には、本件登録意匠の要部認定を誤り、ひいては甲号意匠との類否判断を誤った違法がある。
4 手続の瑕疵 審判手続においては、平成13年8月10日に、被告(審判請求人)から特許庁に対して、原告(審判被請求人)の答弁書に対する弁駁書(甲第30号証)が提出されていたにもかかわらず、特許庁は、この弁駁書を原告に送付することなく、審理を終結し(審理終結通知の発送日平成13年11月22日)、審決の日(平成13年12月10日)よりも後に(平成13年12月11日発送)原告に対して弁駁書を送付した。そのため、原告は、被告の弁駁書に対する意見を述べる機会を失った。かかる手続は、原告に対する求意見手続を欠くものであって、違法である。
被告の反論の要点
1 証拠の認定の誤りに対して 審決は、甲第17号証(審判甲第12号証)が福岡ダイエーホークス球団のファン向けに発行され一般に広く販売されたことが明らかな雑誌であることに鑑み、その雑誌に記載された発行日(1991年3月1日)に頒布されたものと推認して公知資料であることを認定したものであるから、その認定に何ら誤りはない。
2 甲号意匠の認定の誤りに対して 甲第17号証のKの写真に表された物品は「Vメガホン」であるから、看者は、
メガホンに通有の基本的形態として、略縦長円錐台状の拡声部の上部に短い倒略円錐台状の歌口部を形成したものであることを観念する。そして、競技の応援用に使用される「V型」であることから、軸線方向の中央位置で左右対象に縦分割した2つの筒状の部材からなり、両部材の歌口部を合わせたときには拡声部がV字形に開き、外拡声部を手で打ち合わせることにより打撃音を生じさせて、拍子木を打ち鳴らすごとくに応援時に好都合に使用し得るものであることを観念する。
このような観念をもって写真を見る者は、写真で見えない部分も含めて、甲号意匠を審決が認定したとおりの基本的構成態様及び具体的構成態様を有するものとして感得する。ましてや、上記基本的構成態様及び具体的構成態様を有する応援用の「Vメガホン」は、甲第17号証の頒布前に既に広く知られていたのであるから、
看者が甲第17号証の写真から審決認定のとおりの基本的及び具体的構成態様を把握することは明白である。
したがって、審決における甲号意匠の認定及びこれに基づく両意匠の一致点、差異点の認定に何ら誤りはない。
3 両意匠の対比(類否判断)の誤りに対して 甲第31号証の図面に記載された意匠が公知であることは原告指摘のとおりであるが、意匠の骨格が審決の認定のとおりであることに変わりはない。審決における両意匠の対比の判断に誤りはない。
4 手続の瑕疵に対して 審判手続における必要的求意見手続は、審判請求書の送達による被請求人の答弁書の提出までであり、それ以降の反論等は何ら必要的手続とされているものではない(意匠法52条の準用する特許法134条1項)。また、本件審判手続において請求人(被告)が提出した弁駁書は、審判請求書で主張した無効事由及びそれを証明するための立証の範囲を超える主張、立証を行っているものではなく、被請求人(原告)の答弁書に対する反論をしたにすぎないものであって、この弁駁書に対する求意見手続は必要性を欠くものである。したがって、審判の手続に原告の主張するような手続上の不備による違法はない。
当裁判所の判断
1 本件意匠及び甲号意匠 (1) 本件登録意匠は、意匠に係る物品を「メガホン」とし、その形態を別紙審決の理由写しの別紙第一のとおりとするものである。
(2) 甲第17号証(乙第8号証)によれば、「福岡ダイエーホークス 1991 FANBOOK」と題する雑誌の168頁には、「福岡ダイエーホークス CHARACTER GOODS」の大見出しの下に、ダイエーホークスのファン向けの各種キャラクターグッズ(球団旗、ハッピ、応援棒、メガホン、野球帽、うちわ等)の品目が@からまでの番号と売価を付して記載され、その品目「KホークスVメガホン ¥618」に対応するメガホンの写真(同頁下段中央の写真K)が掲載されていることが認められる。
審決は、上記「ホークスVメガホン」の写真(写真K)に表れたメガホンの意匠を甲号意匠と認定したものである(審決の理由写しの別紙第二参照)。
2 甲号意匠の公知性について 甲第17号証は、その表紙頁に記された題号「福岡ダイエーホークス 1991 FANBOOK」、記事見出し及び売価(210円)からみて、福岡ダイエーホークスのファン向けに発行、頒布された雑誌であることが明らかであり、その発行日は、背表紙に「福岡ダイエーホークスのファンブック’91年版 1991年3月1日発行 編集・製作-(株)福岡ダイエーホークス」と記載されているところから、1991年(平成3年)3月1日ころであり、そのころ一般に頒布されたものであると推認される。この推認を覆すに足りる証拠はない。
原告は、審決取消事由の1として、「ホークスVメガホン」が掲載された紙面(第168頁)が真に1991年3月1日に頒布されたものであるか否かが明らかでないと主張するが、上記紙面が甲第17号証の雑誌の一部であることは明らかであり、また、同誌が1991年(平成3年)3月1日ころに発行され一般に頒布されたと認められることは上記のとおりである。
したがって、甲号意匠は、本件意匠登録出願(平成6年4月25日)の約3年前に国内において頒布された刊行物記載された意匠と認められる。
甲号意匠の公知性が立証されていないとの原告の主張は、理由がない。
3 甲号意匠の形態について (1)甲第17号証(乙第8号証)の168頁の写真Kによれば、同写真に表れたメガホンの形態は、審決が両意匠の[共通点](審決書5頁下から5行〜6頁13行)として認定したとおりの基本的構成態様及び具体的構成態様のものと認められる。 (2)原告は、審決取消事由の2として、写真Kは、製品を斜めに撮影した写真であるため、製品の外形形状のほぼ半分程度しか写っていないので、製品の反対側の形状や内面の形状、細部の形状は把握することができないと主張し、写真から把握ができない形状の例として、@基本的構成態様において、メガホン全体が略長円錐台状の拡声部や歌口部からなる点、及び2つの筒状部材からなる点、具体的構成態様において、Aメガホンの拡声部の対向面に中間仕切壁が設けられているとする点、BないしD拡声部や歌口部の外周面に線状リブが設けられている点、を挙げる。
しかしながら、写真Kがメガホンの写真であることを念頭において観察するとき、このメガホン全体が略長円錐台状の拡声部や歌口部を形成したものであることは一見して明白であり、また、写真のメガホンにおいては歌口部から拡声部に続く軸線方向に看取される線を中心として上側が緑色、下側がオレンジ色の部材に分割されていることが明瞭に看取されるから、このものが色の異なる2つの筒状部材から成り、拡声部の対向面には中間仕切壁が存在するであろうと理解されることも明らかである。なお、甲第17号証(乙第8号証)の6頁には、Vメガホンが実際の応援に使用されているところを撮影した写真が掲載されており、このVメガホンが緑色とオレンジ色の2つの筒状部材を合わせた形態のものであることが分かる。この同じ雑誌に掲載されたVメガホンの写真の存在も考慮すると、写真Kを見た者は直ちに2色の2つの筒状部材からなるメガホンを感得するということができるのであって、審決がメガホンの全体形状(前記@及び、Aの中間仕切壁の存在)についてした認定に誤りはないというべきである。
また、審決が認定した線状リブ(前記BないしD)も、写真Kから看取し得るものと認められる。
そして、原告が、写真Kから看取し得ないとして主張するその他の具体的形状は、審決中に本件登録意匠と甲号意匠の[差異点](審決書6頁14行〜19行)として摘示されているところであるから、審決の甲号意匠の認定に誤りはなく、また、審決における両意匠の共通点及び相違点の認定にも誤りはないというべきである。 したがって、審決における甲号意匠の認定並びに両意匠の共通点及び相違点の認定に誤りがあるという原告の主張は、理由がない。
4 対比(類否判断)の誤りについて (1)本件登録意匠と甲号意匠とを全体観察により対比すると、前者は、一見して、甲号意匠とほとんど同一といって程度の強い類似性を有しているものと認められ、両意匠の主な相違点は、写真Kに表われていないメガホン内部の中央仕切壁の形状に存するにすぎないことが認められる。この中央仕切壁は、メガホンの内側にあって、特に注目される部位ということはできないうえ、本件登録意匠における中央仕切壁の形状に格別の創意があるとも認められないから、その形態に差異があるとしても、その差異が看者に与える印象が両意匠に共通する構成からくる類似感を凌駕するものとは言い難く、両意匠の類否判断を左右する程のものではない。
よって、審決が意匠を類似する意匠と認定したことに誤りは認められない。
(2)原告は、審決取消事由の3として、審決が両意匠の類否判断における支配的要素であるとした基本的構成態様に係る形態は、本件意匠登録出願前に公知となっていたから、上記形態は両意匠の類否判断における支配的要素(要部)とはなりえず、両意匠の要部は上記公知の形態以外の具体的構成態様にあるところ、審決は要部認定を誤り、類否判断を誤った旨主張する。
しかし、意匠の類否判断において、公知の形態が考慮されるのは、その形態が当該物品におけるありふれた形態であれば看者の注意を惹くことのない場合があるという限りでのことにすぎず、公知の形態であるというだけの理由でその形態が意匠の要部たり得ないことになるわけではない。意匠の類否は、意匠を全体観察することによって得られる美感の共通性を基本に判断されるべきものであるから、公知の形態であっても、それが意匠の要部たり得る場合はあるというべきである。原告の主張は採用することができない。
5 手続の瑕疵について 原告は、審決取消事由の4として、審判請求人の弁駁書に対する意見を述べる機会が与えられなかった旨主張する。一般的には、審判被請求人が審判請求書に対する答弁書を提出して反論した後であっても、さらに審判請求人から弁駁書が提出されたときには、これを遅滞なく、審判被請求人に送付し、これに対する反論の機会を事実上保障することは、手続的公正という観点からすると、確かに望ましいということはできるが、常に反論の機会を与えなければならないものではなく、その機会を与えなかったことをもって直ちに違法とまでいうことはできない。そして、甲第4号証、甲第30号証及び弁論の全趣旨によれば、本件審判手続においては、被告(審判請求人)の審判請求書に対し、原告(審判被請求人)は、平成12年6月30日付け及び同年10月10日付けの二通の答弁書を提出して被告の主張を争い、本訴におけると同様の主張をし、これに対し被告は、平成13年8月10日付けの弁駁書を提出し、原告の答弁書に対する反論を記載しているのであって、格別新たな主張立証について記載しているものではないことが認められる。そうすると、被告の弁駁書に対し、原告に反論の機会が与えられなかったことをもっては、審決を取り消すべきほどの手続上の瑕疵があったとすることはできない。
原告の主張は採用することができない。
6 結論 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がない。よって原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実
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