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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21ネ3051意匠権侵害差止等請求控訴事件 判例 意匠
平成14ネ4786意匠権侵害差止等請求控訴事件 判例 意匠
平成17ネ10079意匠権侵害差止等請求控訴事件 判例 意匠
平成21ネ2110損害賠償請求控訴事件 判例 意匠
平成17行ケ10135審決取消(意匠)請求事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  一意匠一出願(7条) /  公然知られた(3条1項1号) /  3条1項3号 /  類似する意匠 /  類似の意匠 /  意匠の類否 /  登録意匠 /  差止請求(差止) /  権利濫用(権利の濫用) /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 13年 (ネ) 5158号 意匠権侵害等に基づく差止請求控訴事件
控訴人 株式会社よこやま
訴訟代理人弁護士 相馬卓
補佐人弁理士 牛木護
被控訴人 明道株式会社
訴訟代理人弁護士 藤巻元雄
補佐人弁理士 庄司建治
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/06/27
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,別紙イ号物件目録記載の物品につき,製造も販売も使用もしてはならない。
(3) 被控訴人は,別紙イ号物件目録記載の物品を廃棄せよ。
(4) 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。
(5) 仮執行宣言 2 被控訴人 主文と同旨
当事者の主張
1 事案の概要等 本件は,登録第1031423号の登録意匠(平成8年7月23日出願,平成10年11月20日設定登録,以下「本件登録意匠」という。)の意匠権を有する控訴人が,@被控訴人の製造販売する別紙イ号物件目録記載の両手鍋(以下「イ号商品」という。)の意匠は,本件登録意匠に類似する,A本件登録意匠を採用した控訴人製品(以下「控訴人製品」という。)の形態等は周知となっており,かつ,イ号商品の形態等は控訴人製品の形態等と類似しているから,被控訴人によるイ号商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項1号に該当する,として,意匠法及び不正競争防止法に基づいて,イ号商品の製造・販売等の差止めを求めた事案である。
原判決は,本件登録意匠とイ号商品の意匠との類似性及び控訴人製品の形態等とイ号商品の形態等との類似性を,いずれも否定し,控訴人の請求を全部棄却した。
当事者双方の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」記載のとおりであるから,これを引用する。
2 当審における控訴人の主張の要点 (1) 意匠の類否判断の基準 意匠の類否の判断は,意匠の要部,すなわち意匠のうち看者の注意を最もよく引く部分はどこかを,意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様に基づいて認定した上で,要部が共通しているか否かを中心に,一致点が相違点を凌駕しているか否かを検討することによって行われるべき事柄である。すなわち,登録意匠とこれと比較される意匠の類否は,要部を中心とした全体的観察の結果,両意匠の一致点が相違点を凌駕し,両意匠が看者に同一の美感あるいは美的印象を与えるか否かによって,決められるべきである。
類似性を根拠に意匠権侵害が認められるのは,当該意匠に係る物品が流通に置かれ,取引の対象とされる場合において,取引者・需要者が,流通に置かれた物品の意匠と登録意匠とが類似していると判断し誤認混同を生ずる場合であるから,そこでの類否判断は,両意匠の構成を全体として観察した上,要部すなわち取引者・需要者の注意を最もよく引く意匠の構成部分を,当該物品の性質,目的,用途,使用態様等に基づいて認定し,その要部に現われた両意匠の形態が看者に異なった美観を与えるか否かにより判断すべきである(最判昭和49年3月19日・民集28巻2号308頁,最判昭和50年2月28日・取消集(昭和50年)521頁,東京高判平成7年4月13日・判例時報1536号10頁)。
(2) 本件登録意匠の要部(公知意匠部分と要部) 意匠の構成のうち,ある部分が,それ自体としては,公知であり,ありふれた形状であるとしても,当該意匠全体の支配的部分を占め,意匠的まとまりを形成し,看者の注意を強く引くときは,なおその公知部分も意匠上の要部となるというべきである。
この観点からするときは,本件登録意匠の要部は,「鍋本体と蓋体とが,胴部から底部にかけて湾曲して丸みを持った有底筒型となっているとともに,蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体の胴部とがほぼ直線的に連続していて,蓋体と鍋本体とが統一的な一体感を与える」点と,「蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体とのそれぞれ略半円状の取手が相互に近接して平行に取り付けられている」点との結合,すなわち,鍋本体と蓋体によって構成される円筒型の形状と取手の配置位置との結合,にあるものというべきである。
原判決は,「共通点である蓋体(判決注・被控訴人は,イ号商品のグリル部分は,鍋本体での調理のための蓋の機能を果たさないことを理由に,これを「グリル」と呼称している。しかし,本判決でも,便宜上,原判決と同様,「蓋体」と呼ぶこととする。)及び鍋本体がそれぞれ胴部から底部にかけて湾曲させ丸みを持たせた有底筒型である点は,両手なべとしてはごく一般的なものであり,公知の形状であると認められる。」(原判決7頁3行〜5行)として,要部ではないと判断しているが,公知意匠と意匠の要部との関係を誤解したために犯した誤りというべきである。
(3) 本件登録意匠及び控訴人製品とイ号商品との類似性 ア イ号商品の意匠は,細かくみれば,蓋体と鍋本体の接合部に蓋体の鍔部及びガラス製蓋による突部がある点,取手に取付基板が見えない点において本件登録意匠と相違するとはいえ,そこには,本件登録意匠の要部とされるべき上記の態様は十分に表れている。
イ 原判決は,本件登録意匠とイ号商品の意匠とを対比して,両意匠は,蓋体及び鍋本体に関し,「@本件登録意匠では,鍋本体と蓋体とを被せた状態で,両者の胴部は隙間なく連続しており,その接合部は細い線として表されているのに対し,イ号商品の意匠では,鍋本体と蓋体との接合部において,ガラス製蓋の縁材が,幅のある線(20p鍋,24p鍋とも高さ約7o)として表されている点,A本件登録意匠では,蓋体の開口部に鍔部はないのに対し,イ号商品では,蓋体の開口部に外方に突出した鍔部(同・高さ約4o)が設けられている点,B本件登録意匠では,鍋本体と蓋体の胴部の外周面は直線的に連続し,両者の接合部に突出はないのに対し,イ号商品では,接合部において,前記鍔部及び前記ガラス製蓋の縁材が,鍋本体と蓋体の胴部の外周面から左右に突出している(同・最大部分で左右各約4o)点において相違している。」(原判決6頁19行〜7頁2行)と認定した上,「本件登録意匠は,蓋体と鍋本体との接合部において,胴部を隙間なくかつ直線的に連続させることにより,看者に蓋体と鍋本体とが一体であるとのシンプルでスマートな美的印象を与える点が,最も看者の注意を惹く点であると認められるところ,イ号商品における前記@ないしBの相違点は,イ号商品の高さ(蓋体を被せた状態で20p鍋で約19.5p,24p鍋で約20.7p)及び直径(前記鍔部を除いて20p鍋で約20p,24p鍋で約24p)と対比して,看過しうるほど微細な差異であるとは認めがたい。」(原判決7頁11行〜18行)とする。
しかし,ガラス製蓋の縁材の幅は,@イ号商品の高さの4%未満に過ぎず,また,A蓋体の開口部の鍔部の高さも,イ号商品の直径の4%未満に過ぎない。いずれも微細な差異というべきである。
蓋体の鍔部は,もともと,ガラス製蓋を載置するなどの機能的な必要性があって形成されるものである。そこには意匠上の創作はない。
ウ イ号商品においては,蓋として使用されるのは,ガラス製蓋であって,蓋体ではない。この点において,イ号商品の意匠は,本件登録意匠とは異なる。しかし,両意匠は,2種類の鍋をコンパクトにまとめて,「煮る」,「蒸す」,「焼く」,「炒める」の機能をすべて有する1セットに組み合わせることに,共通のコンセプトを有する。
ガラス製蓋を用いるか否かは付加的要素である。控訴人製品でも,ガラス製蓋を別個用意して使用することは可能である。
機能的な必要性からわずかに変更を加えただけで非類似の意匠となる,などということはあり得ない。
原判決はガラス製蓋の縁材や蓋体の鍔部の形状について過大に評価している。上記相違が類否判断に影響するところは,微弱というべきである。
エ 原判決は,取手の握部に関し,取手の取付状態が,本件登録意匠では蓋体と鍋本体の取手握部が正面から見て平行であるのに対し,イ号商品では蓋体の取手の握部はわずかに上向きに傾斜しており,また,本件登録意匠の取手は金属製取付腕の帯板状の取付基板に合成樹脂製の握部を上下から挾み付けており,握部において金属製取付腕の取付基板が見える状態であるのに対し,イ号商品においては,握部はすべて合成樹脂製である点で正面及び側面から見た形状が異なっている点において相違しており,両者は非類似である,と判断した。確かに,蓋体と鍋本体の取手握部は,本件登録意匠では,ほぼ平行であり,また,上下から合成樹脂製の握部に挾みつけられた金属製取付腕の取付基盤が見える状態にあるのに対し,イ号商品では,蓋体の取手の握部はわずかに上向きに傾斜しており,また,すべて合成樹脂製である。
しかし,これらの相違点は,いずれも,共通点を凌駕して意匠の類否に影響を与えるほどのものではない。両意匠は,基本的形状が共通しており,平面形状も酷似している。握部が若干上下に傾斜するのは,製造上の誤差の範囲に属することである。
原判決の上記判断は,上記相違を過大視するものである。
オ 本件登録意匠は,色彩について何ら限定していないから,ガラス製蓋の縁金の光沢やスカイブルー色の本体は,類似性の判断に影響しない。
(7) 不正競争防止法違反 ア 上に述べたところによれば,控訴人製品とイ号商品とは,形態が類似していることが明らかである。
イ 色彩は,商品のカラーバリエーションから選択されるべきものであって,形態の共通性を打ち消すほどのものではなく,これが需要者の第一印象を大きく左右することはない。
両者とも商品名が欧文字の「D」で始まる,という共通性は,大きな意味を有する。控訴人製品もイ号商品もアルミダイカスト製であり,製造プロセスもほぼ同じであるという共通性も,同様である。
ウ 以上のとおりであるから,イ号商品は,不正競争防止法2条1項1号の要件である類似性(混同性)を十分有している。むしろ,同項3号の要件である模倣性(実質的同一性)を有するといってよいくらいである。
エ 控訴人製品は,販売開始以来爆発的に売れ,開始後間もなく,その形態は,需要者の間に広く知られるに至った。この状況は現在も続いている。
オ よって,イ号商品を製造・販売する被控訴人の行為は,不正競争防止法2条1項1号に規定する不正競争行為に該当する。
3 当審における被控訴人の主張の要点 (1) 要部認定について 控訴人が本件登録意匠の要部であるとするもののうち,「鍋本体と蓋体とが胴部から底部にかけて湾曲して丸みを持った有底筒型となっている点」は,本件登録意匠の出願前に,既に,両手鍋としてごく当たり前のこととなっており,この形状は,看者の注意を余り引くことのない一般的なものである。
「蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体の胴部とがほぼ直線的に連続していて,蓋体と鍋本体とが統一的な一体感を与える点」(鍋本体と蓋体をコンパクトにまとめて1セットとする基本的形態)も,同じく本件登録意匠の出願前に既によく知られていた。これらは,何人も自由に使用できるものであり,これらが意匠の要部となることは,あり得ない。
蓋体と鍋本体とのそれぞれ略半円状の取手が相互に近接して平行に取り付けられている点も,公知のものであり,ごくありふれた形状であり,看者の注意を引くことはない。したがって,この点も,意匠の要部とはなり得ない。
本件登録意匠の要部は,原判決摘示のとおり,蓋体と鍋本体をかぶせた状態において,蓋体と鍋本体の胴部がほぼ直線的に連続していて,蓋体と鍋本体とが統一的な一体感を与える点にあるというべきである。
(2) 相違点について ア 蓋体と鍋本体の接合部分は,本件登録意匠においては,細い線としか表現できないのに対し,イ号商品の意匠では,ぴかぴか光る太い帯状部分であり,著しく相違している。
イ 蓋体の鍔部も,本件登録意匠においては,存在しないのに対し,イ号商品の意匠においては,突出していることがはっきり見られる。
ウ 胴部の外周面の突出部も,本件登録意匠においては,存在しないのに対し,イ号商品の意匠においては,ガラス製蓋の太い帯状部と一体となって,光の当たり具合によっては,より一層ぴかぴかと光輝する度合を増すものであって,看者の注意を極めてよく引くものである。
エ 本件登録意匠を体現する物品においては,ガラス製蓋はなく,蓋体が文字どおり鍋本体の蓋として使用されるものとされている。イ号商品においては,ガラス製蓋があって,これがなければ蓋体と鍋本体を組み合わせることは不可能であり,蓋体を鍋本体の蓋として使用することはできない。両者の使用状態は著しく相違している。
オ 仮に,控訴人の主張するとおり「蓋体と鍋本体の胴部とがほぼ直線的に連続していて,蓋体と鍋本体が統一的な一体感を与える点」が,本件登録意匠の要部であると解しても,イ号商品の意匠においては,前記のとおり,鍋本体とガラス製蓋と蓋体との三つの部材を重ね合わせたとき,ガラス製蓋のぴかぴかに光沢を有するステンレス製の縁金と,縁金の上方部の蓋体の外側方に突出する鍔部とが一体となった太い帯状部となるので,本件登録意匠とは著しく異なる。
(3) 不正競争防止法違反について (2)で述べたところによれば,イ号商品と控訴人製品との間には,類似性が存在しないことが明らかである。なお,イ号商品は,被控訴人が平成7年から販売してきた製品の欠点を是正した独自の開発製品である。
(4) 禁反言について 控訴人は,本件登録意匠が登録されるに至る過程において,「特に,本願意匠は,蓋体を鍋容体に被せた際,蓋体と鍋容体の胴部を直線的に連続させて一体感を与え,かつ,単純な円筒型を基調としたシンプルな印象を与える点が意匠上の要部となっているのに対して引用意匠は,鍋容体の載置段部に蓋体に鍔部を嵌合させて蓋体を鍋容体に被せることから,蓋体を鍋容体との間に載置段部が突出し,この載置段部によって鍋容体と蓋体が別れ,蓋体と鍋容体とに連続的な一体感はない。」(乙第1号証5頁22行〜28行)と主張した。
控訴人が,本訴において,蓋体と鍋本体との間に連続的な一体感のないイ号商品を,本件登録商標と要部において類似すると主張することは,禁反言の原則に反する。
(5) 権利濫用について 本件登録意匠は,その出願日(平成8年7月23日)前において,日本国内で公然知られた意匠(乙第12号証の2中の商品番号1264-044・万能調理両手鍋24p,商品番号1264-052・万能調理両手鍋22p,乙第13号証の3中の商品番号1 432-17・万能調理両手鍋(20p),外2点6,000円,7,000円の計3種類の万能調理両手鍋,乙第16号証中の商品番号96D-048-08・PM-26万能調理鍋26p,商品番号96D-048-06・PM-22万能調理鍋22p,商品番号96D-048-07・PM-24万能調理鍋24p,のそれぞれにおいて,鍋容体と蓋体との胴部を直線的に連続させて一体感を与える意匠部分)に類似する意匠(意匠法3条1項3号)に該当し,その登録は,意匠法48条1項1号により無効になる蓋然性が著しく高い。
4 控訴人の反論 (1) 原判決及び被控訴人は,本件登録意匠とイ号商品の意匠の対比において,個々の部分のみを取り上げて比較して,両者は類似しないとしている。全体的に考察することが必要であることを忘れた議論であり,相当でない。
(2) 被控訴人が掲げる意匠と本件登録意匠は類似しない。本件登録意匠の登録に無効事由はない。
当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。
1 本件登録意匠の要部について 本件登録意匠を体現する物品とイ号商品は,いずれも,蓋体と鍋本体を同時に調理に使用でき,収納時にはそれらを重ねてきっちりと一体的に組み合わせることができる両手鍋である。
控訴人は,本件登録意匠の要部(意匠のうち看者の注意を強く引く部分)は,「鍋本体と蓋体とが,胴部から底部にかけて湾曲して丸みを持った有底筒型となっているとともに,蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体の胴部とがほぼ直線的に連続していて,蓋体と鍋本体とが統一的な一体感を与える」点と,「蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体とのそれぞれ略半円状の取手が相互に近接して平行に取り付けられている」点との結合,すなわち,鍋本体と蓋体によって構成される円筒型の形状と取手の配置位置との結合,である,と主張する。
しかしながら,控訴人が要部と主張する点のうち,「鍋本体と蓋体とが,胴部から底部にかけて湾曲して丸みを持った有底筒型となっている点」は,両手鍋を含む鍋一般の形状として格別のものとは考えにくく,「蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体とに形成する略半円状の取手が相互に近接して平行に取り付けられる点」についても,略半円状の取手を,胴部に対して垂直に取り付けることが,両手鍋の形状としては特別なものであるとも考えにくい(このような取手をこのように取り付けた蓋体を鍋本体にかぶせた場合,これらがほぼ平行となるのは当然である。)。これらが組み合わされたからといって,そのことによって,格別の美感が生じるとも認められない。また,現に,本件登録意匠出願時(平成8年7月23日),控訴人製品(平成9年2月)ないしイ号商品(平成11年6月)の各市場投入時のいずれにおいても,上記の2点を兼ね備えた両手鍋は,市場に存在していたから,この2点は,たといそれらが組み合わされたとしても,特に看者の注意を引くものではないと認められる(甲第1号証の1ないし3,第3号証,第10号証の1,乙第12号証の1及び2,第13号証の2及び3,第15号証。第16号証,弁論の全趣旨)。
上に述べたところを前提に本件登録意匠を全体的に観察すると,収納時に,蓋体と鍋本体を重ねてきっちりと一体的に組み合わせることができるという使用形態に鑑み,その要部は,蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体の胴部が直線的に連続していて,蓋体と鍋本体とが統一的な一体感を与える点にあるというべきである。
2 本件登録意匠とイ号商品の意匠との類似性 (1) イ号商品は,蓋体の鍔部が突出している。また,蓋体と鍋本体を組み合わせた際には,その間にガラス製蓋が挟み込まれ,その銀色に光る縁金と蓋体の鍔部が一体となって,蓋体と鍋本体の接合部を形成する。これは,物理的な形状としては,それぞれ幅がイ号商品の高さの数%,突出部の高さも直径の数%に過ぎないとはいえ,一見して看者の注意を強く引く特徴的なものということができる。
これと,本件登録意匠の要部と認められる上記特徴とを対比した場合,両者の違いは顕著であり,これを微細な差異ということはできない(甲第1号証,第3号証)。
(2) 本件登録意匠の取手は,蓋体のものと鍋本体のものがそれぞれ相互に近接して,ほぼ平行に向かい合うよう取り付けられているのに対し,イ号商品では,蓋体の取手は,その先端がやや上方に,鍋本体のものは同様に下方に傾いた状態で取り付けられている。
本件登録意匠では,取手の一部分である金属製取付基板の一部が,握部にこれを上下から挟み込むように取り付けられている樹脂の間に,帯状となって露出しているが,イ号商品ではそのような露出はない(甲第1号証,第3号証)。
(3) 本件登録意匠とイ号商品は,「蓋体と鍋本体が,これらを組み合わせた際,それぞれの略半円状の取手が相互に近接して平行に取り付けられている」点,「鍋本体と蓋体とが,胴部から底部にかけて湾曲して丸みを持った有底筒型となっている」点,「蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体の胴部とがほぼ連続して一体となる点」において一致するとはいえ,前記のとおり,「蓋体を鍋本体にかぶせた状態において,蓋体と鍋本体の胴部が直線的に連続していて,蓋体と鍋本体とが統一的な一体感を与える」という要部において相違があり,また,これ以外に,取手握部の外見,取手の取付角度においても異なる。これらを総合すると,両意匠を類似するものと認めることはできないというべきである。
3 不正競争防止法違反について イ号商品と控訴人商品の形態を比較した場合,看者である需要者の注意を強く引く部分において異なるものであることは,既に述べたところから明らかというべきである(甲第3号証,第11号証参照)。また,色彩も前者は空色,後者は光沢のある淡い灰色である。
イ号商品は,煮炊き用の鍋として,別途ガラス製蓋を備えているのに対し,控訴人商品にはそのようなものはない。
イ号商品の名称は「ディジョーネ(DIGIONE)」,控訴人商品の名称は「Duo Cook(デュオ クック)」であり,頭文字は同じであるものの,異なるものである。
以上の事実を前提にすると,イ号商品と控訴人商品は,大きさ,価格が同一又は近似であるとの事実を考慮しても,両者に類似性を認めることはできないというべきである。
4 結論 以上検討したところによれば,控訴人の本訴請求は理由がないことが明らかであるから,これを棄却すべきであり,原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。そこで,これを棄却することとし,控訴費用の負担について民事訴訟法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久
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