関連ワード | 意匠の創作 / 物品 / 形状 / 意匠に係る物品 / 組物の意匠(8条) / 意匠登録を受ける権利 / 冒認出願(冒認) / 新規性 / 公然知られた(3条1項1号) / 類似の意匠 / 意匠の同一 / 意匠の類似 / 本意匠 / 先使用(29条) / 登録意匠 / 差止請求(差止) / 損害賠償 / 通常実施権 / 権利濫用(権利の濫用) / 損害額 / 逸失利益 / |
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事件 |
平成
11年
(ワ)
12866号
意匠権侵害行為差止等請求事件
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原告 株式会社パラデック 訴訟代理人弁護士 和田秀治 補佐人弁理士 辻本一義 被告 服部製鏡株式会社 被告 株式会社ランリイ工業 被告ら訴訟代理人弁護士 喜治榮一郎 被告ら補佐人弁理士 鎌田文二 同 東尾正博 同 鳥居和久 同 田川孝由 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2002/02/26 |
権利種別 | 意匠権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告服部製鏡株式会社は、別紙イ号製品目録、ロ号製品目録、ハ−1号製品目録及びニ号製品目録記載の写真立てを製造し、販売し又は販売のために展示してはならない。 2 被告株式会社ランリイ工業は、別紙イ号製品目録、ロ号製品目録、ハ−1号製品目録及びニ号製品目録記載の写真立てを販売し又は販売のために展示してはならない。 3 被告服部製鏡株式会社は、原告に対し、金232万6028円及びこれに対する平成12年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告株式会社ランリイ工業は、原告に対し、金248万1833円及びこれに対する平成12年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は、原告に生じた費用の3分の1と被告服部製鏡株式会社に生じた費用の3分の2を被告服部製鏡株式会社の負担とし、原告に生じた費用の3分の1と被告株式会社ランリイ工業に生じた費用の3分の2を被告株式会社ランリイ工業の負担とし、原告に生じたその余の費用、被告服部製鏡株式会社に生じたその余の費用及び被告株式会社ランリイ工業に生じたその余の費用を原告の負担とする。 7 この判決は、第1ないし第4項に限り、仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 被告服部製鏡株式会社は、別紙イ号製品目録、ロ号製品目録、ハ-1号製品目録、ハ-2号製品目録及びニ号製品目録記載の写真立てを製造し、販売し又は販売のために展示してはならない。 (2) 被告株式会社ランリイ工業は、別紙イ号製品目録、ロ号製品目録、ハ-1号製品目録、ハ-2号製品目録及びニ号製品目録記載の写真立てを販売し又は販売のために展示してはならない。 (3) 被告らは、原告に対し、連帯して金1000万円及びこれに対する平成12年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (5) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁(被告ら) (1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 |
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当事者の主張
1 請求原因 (1)(意匠権) 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件登録意匠」という。)を有している。 登録意匠番号 第1055039号 意匠に係る物品 写真立て 出願年月日 平成10年10月21日 出願番号 10-030646 登録年月日 平成11年8月13日 登録意匠 別添意匠公報写し記載のとおり 原告は、本件登録意匠を本意匠とする次の類似意匠の意匠権を有している。 登録意匠番号 第1055039号の類似1 意匠に係る物品 写真立て 出願年月日 平成10年10月21日 登録年月日 平成11年8月13日 登録意匠 別添意匠公報写し記載のとおり (2)(原告製品の製造販売) 原告は、別紙原告製品目録一及び二記載の写真立て(以下、別紙原告製品目録一記載の写真立てを「原告製品一」、同目録二記載の写真立てを「原告製品二」といい、これらをまとめて「原告製品」という。)を、平成10年6月25日から製造販売している。 原告製品の製品番号は、次のとおりである。 原告製品一 サイズ大 ID301 原告製品一 サイズ中 ID201 原告製品一 サイズ小 ID101 原告製品二 サイズ大 ID300 原告製品二 サイズ中 ID200 原告製品二 サイズ小 ID100 (3)(被告服部製鏡の行為) 被告服部製鏡株式会社(以下「被告服部製鏡」という。)は、平成10年8月7日以降、別紙イ号製品目録、ロ号製品目録、ハ-1号製品目録、ハ-2号製品目録及びニ号製品目録記載の写真立て(以下、これらの写真立てを各目録の名称に従い「イ号製品」等といい、これらをまとめて「被告製品」という。)を製造し、これを被告株式会社ランリイ工業(以下「被告ランリイ」という。)に販売している。 被告製品の被告ランリイにおける製品番号は、次のとおりである。 イ号サイズ大 PC55 イ号サイズ中 PC53 イ号サイズ小 PC51 ロ号サイズ大 PC54 ロ号サイズ中 PC52 ロ号サイズ小 PC50 ハ-1号サイズ大 LC1001 ハ-1号サイズ大 PC1105 ハ-1号サイズ中 LC801 ハ-1号サイズ小 LC601 ハ-2号 PC1100 ハ-2号 PC1101 ニ号サイズ大 LC1000 ニ号サイズ中 LC800 ニ号サイズ小 LC600 (4)(被告ランリイの行為) 被告ランリイは、被告服部製鏡から被告製品を購入し、平成10年8月7日以降これを小売店等に販売している。 (5)(意匠の同一又は類似) 被告製品は、いずれも本件登録意匠と同一又は類似である。 (6)(形態模倣) ア イ号製品は、原告製品一と形態が同一であり、イ号製品は、原告製品一を模倣したものである。 イ ロ号製品は、原告製品二と形態が同一であり、ロ号製品は、原告製品二を模倣したものである。 ウ 原告製品一とハ-1号製品及びハ-2号製品を比較すると、支持部材を取り付けるねじの形状が、原告製品一では、周囲にすじを有する円柱形であるのに対し、ハ-1号製品及びハ-2号製品では先端が丸みを帯びた六角形である点で相違する。しかし、原告製品一、ハ-1号製品及びハ-2号製品の構成のうち観者の注意を引くのは、四辺を構成している金属製のフレームや支持部材の形状及びその取り付け位置であり、ねじの形状の相違は微差にすぎず、原告製品一とハ-1号製品及びハ-2号製品の形態は、実質的に同一である。そして、ハ-1号製品及びハ-2号製品は原告製品一を模倣したものである。 エ 原告製品二とニ号製品を比較すると、支持部材を取り付けるねじの形状が、原告製品二では、周囲にすじを有する円柱形であるのに対し、ニ号製品では先端が丸みを帯びた六角形である点で相違する。しかし、原告製品二及びニ号製品の構成のうち観者の注意を引くのは、四辺を構成している金属製のフレームや支持部材の形状及びその取り付け位置であり、ねじの形状の相違は微差にすぎず、原告製品二とニ号製品の形態は、実質的に同一である。そして、ニ号製品は原告製品二を模倣したものである。 被告らは、被告製品の意匠は被告服部製鏡代表者が創作したものであると主張して原告製品の模倣を否認するが、本件登録意匠は原告代表者が創作したものである。 (7)(故意過失) ア 被告服部製鏡には、被告製品の製造販売を始めたときから、原告製品一を模倣したイ号製品、ハ-1号製品及びハ-2号製品を製造販売すること、並びに原告製品二を模倣したロ号製品及びニ号製品を製造販売することにつき、故意又は過失があった。 イ 原告は、平成10年7月9日、大阪装粧品工業協同組合に対して、本件登録意匠及びその類似意匠と同一の形態の写真立て(商品名「シースルーアートフレーム」。以下、本件登録意匠及びその類似意匠と同一の形態の写真立てを「本件写真立て」という。)につき、同組合の登録品制度に基づく商品登録の申請を行い、本件写真立ては、同月中旬ごろ、同組合の広報誌に掲載され、同組合事務所に展示され、同年8月20日までの異議申立期間に異議申立てがなかったことから、 同年9月8日、登録が認定された。被告ランリイは、同組合の組合員であるから、 遅くとも、同日以降、被告ランリイには、原告製品一を模倣したイ号製品、ハ-1号製品及びハ-2号製品を販売すること、並びに原告製品二を模倣したロ号製品及びニ号製品を販売することにつき、故意又は重過失があった。 原告代表者と原告の専務取締役であるA(原告代表者の息子)は、平成10年9月21日、被告ランリイを訪れ、被告ランリイ代表者らに対し、本件写真立ては原告代表者が創作したものであり、被告ランリイも組合員である大阪装粧品工業協同組合に原告の商品として登録済みであることを説明し、本件写真立ての販売の中止を要請した。また、同年10月16日、大阪装粧品工業協同組合の担当者が被告ランリイの事務所を訪れ、組合で決まったことは守らなければならない旨述べ、本件写真立ての販売の中止を要請した。したがって、被告ランリイには、遅くとも、同日以降、原告製品一を模倣したイ号製品、ハ-1号製品及びハ-2号製品を販売すること、並びに原告製品二を模倣したロ号製品及びニ号製品を販売することにつき、故意又は重過失があった。 (8)(関連共同性) 被告服部製鏡は、本件写真立てを製造して被告ランリイのみに販売しており、本件写真立てのカタログは被告ランリイが費用をかけて製作しており、被告服部製鏡と被告ランリイは、前者が製造者、後者が独占的販売業者としての役割をもって、本件写真立てを共同して販売している。したがって、被告服部製鏡の製造販売行為と被告ランリイの販売行為との間には、共同不法行為の要件である客観的関連共同性がある。 (9)(損害額の計算方法) 原告は、被告らに対し、損害賠償として、原告の逸失利益(不正競争防止法4条)、意匠法39条1項に基づく損害額、被告らが受けた利益(不正競争防止法5条1項又は意匠法39条2項)のいずれか認められるもののうち最も多額のものを請求する。 (10)(原告の逸失利益) ア(原告製品1個当たりの利益) (ア)(販売価格) 原告が小売店に販売する際の原告製品の販売価格は、次のとおりである。 サイズ大 540円 サイズ中 441円 サイズ小 337.5円 (イ)(原価) a 原告は、原告製品の本体を協立製作所から購入しており、その価格は、次のとおりである。 サイズ大 275円 サイズ中 240円 サイズ小 185円 b 原告は、原告製品の中に入れる中紙を株式会社トーホーから購入しており、その価格は、次のとおりである。 サイズ大 8円 サイズ中 5.2円 サイズ小 4.6円 c 原告は、原告製品の上部アルミフレームの抜け落ちを防止するために本体の外部に貼付するストッパーシールを三宅実業株式会社から購入しており、 その価格は1枚1.65円である。 d 原告は、原告製品のサイズ大の外装箱(段ボール製)を佐藤紙器から購入し、サイズ中及びサイズ小の外装箱(ボール紙製)を株式会社西山印刷所から購入しており、1箱当たりの価格は次のとおりである。 サイズ大 16円 サイズ中 7.5円 サイズ小 7.5円 e 原告は、原告製品の小売店への運送を西濃運輸株式会社に依頼し、 その運送費を負担しており、その運送費は、平均で1ケース当たり600円である。各原告製品の1個当たりの運送費は、600円を1ケースに入り得る個数で除することにより求めることができる。各原告製品の1ケースに入り得る個数及び1個当たりの運送費は、次のとおりである。 サイズ大 72個 8.3円 (600円÷72個=8.3円) サイズ中 84個 7.14円 (600円÷84個=7.14個) サイズ小 120個 5円 (600円÷120個=5円) f 各原告製品の原価は、上記aないしeの本体、中紙、ストッパーシール、外装箱、運送費の価格の合計であり、次のとおりである。 サイズ大 308.95円 (275円+8円+1.65円+16円+8.3円=308.95円) サイズ中 261.49円 (240円+5.2円+1.65+7.5円+7.14円=261.49円) サイズ小 203.75円 (185円+4.6円+1.65円+7.5円+5円=203.75円) (ウ)(利益) 原告が原告製品の販売によって原告製品1個当たりにつき得る利益は、販売価格(前記(ア))から原価(前記(イ)f)を差し引くことにより求められ、その額は、次のとおりである。 サイズ大 231.05円 (540円-308.95円=231.05円) サイズ中 179.51円 (441円-261.49円=179.51円) サイズ小 133.75円 (337.5円-203.75=133.75円) イ(販売数量) (ア) 被告ランリイが平成12年7月末までに小売店等に販売した被告製品の数量は、別紙第1-1表のとおりであり、各被告製品ごとの合計は、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55) 1684個 イ号サイズ中(PC53) 4721個 イ号サイズ小(PC51) 2932個 ロ号サイズ大(PC54) 2412個 ロ号サイズ中(PC52) 5302個 ロ号サイズ小(PC50) 3254個 ハ-1号サイズ大(LC1001) 1134個 ハ-1号サイズ大(PC1105) 2051個 ハ-1号サイズ中(LC801) 3345個 ハ-1号サイズ小(LC601) 4881個 ハ-2号(PC1100) 1万0377個 ハ-2号(PC1101) 2740個 ニ号サイズ大(LC1000) 2178個 ニ号サイズ中(LC800) 6673個 ニ号サイズ小(LC600) 6547個 合計 6万0231個 (イ)a 被告製品のうち、原告製品のサイズ大に相当するものは、イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ハ-2号(PC1100、PC1101)、ニ号サイズ大(LC1000)である。 被告ランリイが販売したこれらの被告製品の合計は、2万2576個である。 (1684個+2412個+1134個+2051個+1万03 77個+2740個+2178個=2万2576個) b 被告製品のうち、原告製品のサイズ中に相当するものは、イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800)である。 被告ランリイが販売したこれらの被告製品の合計は、2万0041個である。 (4721個+5302個+3345個+6673個=2万00 41個) c 被告製品のうち、原告製品のサイズ小に相当するものは、イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600)である。 被告ランリイが販売したこれらの被告製品の合計は、1万7614個である。 (2932個+3254個+4881個+6547個=1万76 14個) ウ(逸失利益) 逸失利益は、原告が原告製品1個当たりにつき得る利益(前記ア(ウ))に、被告ランリイが販売した被告製品の数量(前記イ(イ)aないしc)を乗じることにより求められ、その額は次のとおりであり、その合計は1116万9617円である。 サイズ大 521万6184.8円 (231.05円×2万2576個=521万6184.8円) サイズ中 359万7559.91円 (179.51円×2万0041個=359万7559.91円) サイズ小 235万5872.5円 (133.75円×1万7614個=235万5872.5円) 合計 1116万9617円 (521万6184.8円+359万7559.91円+235万5872.5円=1116万9617円) (11)(意匠法39条1項に基づく損害額) 意匠法39条1項に基づく損害額は、原告が原告製品1個当たりにつき得る利益に、販売数量を乗じて求めることができるが、被告服部製鏡の販売数量と被告ランリイの販売数量を比較すると、被告ランリイの販売数量の方が少ないから、 被告ランリイに対する請求とともに、被告服部製鏡に対する請求においても、被告ランリイの販売数量を乗じた金額を請求する。 その合計は、前記(10)ウのとおり1116万9617円である。 (12)(被告服部製鏡の利益) ア(被告服部製鏡の被告製品1個当たりの利益) (ア)(販売価格) 被告服部製鏡の被告ランリイへの販売価格は、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ハ-2号(PC1100、PC1101)、ニ号サイズ大(LC1000) 275円 イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800) 220円 イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600) 165円 (イ)(原価) 被告服部製鏡における被告製品の原価は、別紙第2-1表のとおりであり、各被告製品につき、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ハ-2号(PC1100、PC1101)、ニ号サイズ大(LC1000) 171.18円 イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800) 137.74円 イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600) 110.68円 (ウ)(利益) 被告服部製鏡が被告製品1個当たりにつき得る利益は、販売価格(前記(ア))から原価(前記(イ))を差し引くことにより求められ、その額は、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ハ-2号(PC1100、PC1101)、ニ号サイズ大(LC1000) 103.82円 (275円-171.18円=103.82円) イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800) 82.26円 (220円-137.74円=82.26円) イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600) 54.32円 (165円-110.68円=54.32円) イ(被告服部製鏡の販売数量) 被告服部製鏡が平成12年7月末までに被告ランリイへ販売した被告製品の数量は次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55) 2252個 イ号サイズ中(PC53) 5626個 イ号サイズ小(PC51) 2973個 ロ号サイズ大(PC54) 2551個 ロ号サイズ中(PC52) 6110個 ロ号サイズ小(PC50) 3704個 ハ-1号サイズ大(LC1001) 3157個 ハ-1号サイズ大(PC1105) 672個 ハ-1号サイズ中(LC801) 4062個 ハ-1号サイズ小(LC601) 5441個 ハ-2号(PC1100) 9132個 ハ-2号(PC1101) 1706個 ニ号サイズ大(LC1000) 2604個 ニ号サイズ中(LC800) 6741個 ニ号サイズ小(LC600) 6542個 合計 6万3273個 ウ(被告服部製鏡の利益) 被告服部製鏡の利益は、被告服部製鏡が被告製品1個当たりにつき得る利益(前記ア(ウ))に、被告服部製鏡が販売した被告製品の数量(前記イ)を乗じることにより求められ、その額は次のとおりであり、その合計は、515万9392円である。 イ号サイズ大(PC55) 23万3803円 (103.82円×2252個=23万3803円) イ号サイズ中(PC53) 46万2795円 (82.26円×5626個=46万2795円) イ号サイズ小(PC51) 16万1493円 (54.32円×2973個=16万1493円) ロ号サイズ大(PC54) 26万4845円 (103.82円×2551個=26万4845円) ロ号サイズ中(PC52) 50万2609円 (82.26円×6110個=50万2609円) ロ号サイズ小(PC50) 20万1201円 (54.32円×3704個=20万1201円) ハ-1号サイズ大(LC1001) 32万7760円 (103.82円×3157個=32万7760円) ハ-1号サイズ大(PC1105) 6万9767円 (103.82円×672個=6万9767円) ハ-1号サイズ中(LC801) 33万4140円 (82.26円×4062個=33万4140円) ハ-1号サイズ小(LC601) 29万5555円 (54.32円×5441個=29万5555円) ハ-2号(PC1100) 94万8084円 (103.82円×9132個=94万8084円) ハ-2号(PC1101) 17万7117円 (103.82円×1706個=17万7117円) ニ号サイズ大(LC1000) 27万0347円 (103.82円×2604個=27万0347円) ニ号サイズ中(LC800) 55万4515円 (82.26円×6741個=55万4515円) ニ号サイズ小(LC600) 35万5361円 (54.32円×6542個=35万5361円) 合計 515万9392円 (23万3803円+46万2795円+16万1493円+26万4845円+50万2609円+20万1201円+32万7760円+6万9767円+33万4140円+29万5555円+94万8084円+17万7117円+27万0347円+55万4515円+35万5361円=515万9392円) (13)(被告ランリイの利益) 被告ランリイが被告製品の販売により得た粗利益(売上額から仕入額を差し引いた額)は、別紙第1-2表のとおりであり、その合計は559万0512円であって、この額が、被告ランリイの得た利益に当たる。 (14)(損害額のまとめ) 原告は、被告らに対し、損害賠償として、逸失利益額若しくは意匠法39条1項に基づく損害額として1116万9617円(前記(10)ウ又は(11))、又は被告服部製鏡の得た利益515万9392円(前記(12)ウ)及び被告ランリイの得た利益559万0512円(前記(13))の合計1074万9904円を連帯して支払うように求めることができる。原告は、この内金1000万円の支払を請求する。 (15) よって、原告は、次のとおり請求する。 ア 被告服部製鏡に対し、本件意匠権又は不正競争防止法2条1項3号、3条に基づき、被告製品の製造、販売及び販売のための展示の差止めを求める。 イ 被告ランリイに対し、本件意匠権又は不正競争防止法2条1項3号、3条に基づき、被告製品の販売及び販売のための展示の差止めを求める。 ウ 不正競争防止法4条に基づく損害賠償又は本件意匠権侵害による不法行為に基づく損害賠償の一部請求として、被告らに対し、連帯して、1000万円及びこれに対する不法行為(不正競争)の後である平成12年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否(被告ら) (1) 請求原因(1)の事実は否認する。 (2) 同(2)の事実のうち、原告が原告製品を販売していることは認め、その余は不知。 (3) 同(3)の事実のうち、被告服部製鏡が、平成10年8月7日以降、イ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品を製造し、これを被告ランリイに販売していること、被告製品の被告ランリイにおける製品番号が原告主張のとおりであることは認め、その余は否認する。 被告服部製鏡は、別紙ハ-2号製品目録記載の寸法と同じ寸法の写真立てを製造し、それを被告ランリイに販売しているが、その写真立ては、別紙ハ-2号製品目録添付の図面とは形態を異にする。 (4) 同(4)の事実のうち、被告ランリイが、被告服部製鏡からイ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品を購入し、平成10年8月7日以降、これを小売店等に販売していることは認め、その余は否認する。 被告ランリイは、別紙ハ-2号製品目録記載の寸法と同じ寸法の写真立てを販売しているが、その写真立ては、別紙ハ-2号製品目録添付の図面とは形態を異にする。 (5) 同(5)のうち、イ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品が、いずれも本件登録意匠と同一又は類似であることは認め、その余は否認する。 (6)ア 同(6)アのうち、イ号製品が原告製品一と形態が同一であることは認め、その余は否認する。 イ 同(6)イは否認する。 ウ 同(6)ウのうち、原告製品一とハ-1号製品を比較すると、支持部材を取り付けるねじの形状が、原告製品一では、周囲にすじを有する円柱形であるのに対し、ハ-1号製品では先端が丸みを帯びた六角形である点で相違することは認め、 その余は否認する。 エ 同(6)エのうち、原告製品二とニ号製品を比較すると、支持部材を取り付けるねじの形状が、原告製品二では、周囲にすじを有する円柱形であるのに対し、 ニ号製品では先端が丸みを帯びた六角形である点で相違することは認め、その余は否認する。 イ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品の意匠は、被告服部製鏡代表者が創作したものである (7)ア 同(7)アの事実は否認し、主張は争う。 イ 同(7)イの事実は否認し、主張は争う。 大阪装粧品工業協同組合の登録品制度に基づく商品登録は、民間の登録であり何らの法的効力もないことから、これを特許庁の意匠登録と同視することはできない。本件写真立てが同組合の広報誌に掲載されても、被告ランリイにはその広報誌について調査義務がなく、広報誌の記載を信頼すべきものでもないから、平成10年9月8日の時点で、被告ランリイについて、本件写真立てが原告代表者の創作によることを知っていたか、知らなかったことにつき過失があるとはいえない。また、同月21日、原告代表者らが被告ランリイに赴き、同年10月16日、 大阪装粧品工業協同組合の担当者が被告ランリイを訪れて、商品登録済みであることなどを説明したとしても、被告ランリイは、被告服部製鏡から、被告製品は被告服部製鏡代表者の創作によるオリジナル商品であり、被告ランリイと原告の2社に納入する旨の説明を受けており、この被告服部製鏡の説明を覆す合理的な説明を原告代表者らから受けていないから、本件写真立てが原告代表者の創作によるものであると信ずべき理由がなかった。そこで、被告ランリイは、平成10年10月16日の時点においても、被告製品が被告服部製鏡のオリジナル商品であると信じて被告製品の販売を行っていたものであり、本件写真立てが原告代表者の創作によることを知らなかったことについて過失はなかった。被告ランリイに過失があったとしても、その時期は、本件登録意匠の意匠公報の発行日である平成11年11月29日よりも前に遡ることはない。 (8) 同(8)の事実は否認し、主張は争う。 被告ランリイは、被告服部製鏡による被告製品の製造に関与していないから、被告服部製鏡の製造販売行為と被告ランリイの販売行為の間には、客観的関連共同性は認められない。被告ランリイが被告製品のカタログを作成したとしても、 客観的関連共同性は認められない。 (9) 同(9)の主張は争う。 (10)ア(ア) 同(10)ア(ア)の事実は認める。 (イ)a 同(10)ア(イ)aないしdの事実は認める。 b 同(10)ア(イ)eの事実のうち、原告が、原告製品の小売店への運送を西濃運輸株式会社に依頼していることは認め、その余は否認する。 証拠上(甲第27号証の1ないし7)明らかにされた原告の個別の取引の内容に基づき、運送費の総額に、総売上中に占める原告製品の売上の割合を乗じることによって原告製品についての運送費の合計を求め、それを原告製品の個数で除することにより、原告製品1個当たりの運送費を求めることができる。このようにして求めた原告製品1個当たりの運送費は、15.5円である。 c 原告は、原告製品の原価を求めるに当たり、運送費の他には販売費や一般管理費を控除していないが、カタログの作成費等の経費がかかっており、全国各地の小売店に対して多品種少量の卸売りを行う原告の運送費以外の販売費及び一般管理費は、業界の常識では、運送費並びに販売費及び一般管理費以外の原価(本体、中紙、ストッパーシール、外装箱の価格の合計)の15%を下らない。 原告製品の運送費並びに販売費及び一般管理費以外の原価(本体、 中紙、ストッパーシール、外装箱の価格の合計)は、次のとおりである。 サイズ大 300.65円 (275円+8円+1.65円+16円=300.65円) サイズ中 254.35円 (240円+5.2円+1.65円+7.5円=254.35円) サイズ小 198.75円 (185円+4.6円+1.65円+7.5円=198.75円) 運送費以外の販売費及び一般管理費は、運送費並びに販売費及び一般管理費以外の原価(本体、中紙、ストッパーシール、外装箱の価格の合計)の15%であり、次のとおりである。 サイズ大 45.0975円 (300.65円×15/100=45.0975円) サイズ中 38.1525円 (254.35円×15/100=38.1525円) サイズ小 29.8125円 (198.75円×15/100=29.8125円) d 同(10)ア(イ)fの事実は否認し、主張は争う。 原告製品の原価は、本体、中紙、ストッパーシール、外装箱、運送費、運送費以外の販売費及び一般管理費の価格の合計であり、次のとおりである。 サイズ大 361.25円 (275円+8円+1.65円+16円+15.5円+45.0975円=361.25円) サイズ中 308円 (240円+5.2円+1.65円+7.5円+15.5円+38.1525円=308円) サイズ小244.06円 (198.75円+15.5+29.8125円=244.06円) (ウ) 同(10)ア(ウ)の事実は否認する。 原告が原告製品の販売によって得る利益は、販売価格(請求原因(10)ア(ア))から、原告製品の原価(前記(イ)d)を差し引くことにより求められ、その額は次のとおりである。 サイズ大 178.75円 (540円-361.25円=178.75円) サイズ中 133円 (441円-308円=133円) サイズ小 93.44円 (337.5円-244.06円=93.44円)である。 イ(ア) 同(10)イ(ア)に対する認否は、次のとおりである。 別紙第1-1表のうち、ハ-2号(PC1100、PC1101)の部分は否認し、その余は認める。 各被告製品ごとの合計のうち、ハ-2号(PC1100)の数量が10377個であること、ハ-2号(PC1101)の数量が2740個であることは否認し、その余は認める。 ただし、被告ランリイが損害賠償責任を負うとしても、不正競争防止法2条1項3号、4条に基づく損害賠償責任を負うのは、重過失が認められた後についてであり、被告らが意匠権侵害による損害賠償責任を負うのは、意匠公報発行後であって、被告ランリイが小売店等に販売した被告製品の数量のうち、損害賠償の算定の基礎とされるのは、これらの期間に対応した販売数量のみであるから、請求原因(10)イ(ア)に示された被告製品の数量のすべてが損害賠償算定の基礎となることは争う。 (イ)a 同(10)イ(イ)aのうち、被告製品のうち原告製品のサイズ大に相当するものが、イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ニ号サイズ大(LC1000)であることは認め、その余は否認する。 ハ-2号(PC1100、PC1101)は原告製品のサイズ大に相当するものではない。 被告ランリイが販売したイ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ニ号サイズ大(LC1000)の合計は9459個である。 (1684個+2412個+1134個+2051個+2178個 =9459個) b 同(10)イ(イ)bの事実は認める。 c 同(10)イ(イ)cの事実は認める。 ウ 同(10)ウの事実は否認し、主張は争う。 各サイズごとに、原告が原告製品1個当たりにつき得る利益(前記ア(ウ))に、被告ランリイが小売店等に販売した被告製品の数量(前記イ(イ)a、請求原因(10)イ(イ)b、c)を乗じた金額は次のとおりであり、その合計は600万2101円であって、原告の逸失利益は、600万2101円を上回ることはない。 サイズ大 169万0796.25円 (178.75円×9459個=169万0796.25円) サイズ中 266万5453円 (133円×2万0041個=266万5453円) サイズ小 164万5852.16円 (93.44円×1万7614個=164万5852.16円) 合計 600万2101円 (169万0796.25円+266万5453円+164万5852.16円=600万2101円) (11) 同(11)の事実は否認し、主張は争う。 (12)ア(ア) 同(12)ア(ア)の事実のうち、被告服部製鏡の被告ランリイへの販売価格が、次のとおりであることは認め、その余は否認する。 ハ-1号サイズ大(LC1001)、二号サイズ大(LC1000)275円 ハ-1号サイズ中(LC801)、二号サイズ中(LC800) 220円 ハ-1号サイズ小(LC601)、二号サイズ小(LC600) 165円 被告服部製鏡の被告ランリイへの販売価格は、上記のほか、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54) 285円 ハ-1号サイズ大(PC1105) 270円 イ号中(PC53)、ロ号中(PC52) 235円 イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50) 175円 (イ) 同(12)ア(イ)のうち、別紙第2-1表の次の部分は認め、その余は否認する。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ニ号サイズ大(LC1000) アルミ枠材料費 46円 脚材料費 21円 脚曲げ加工費 3円 ガラス材料費 12円 ガラス切断加工費 8円 ガラス面取り加工費 10円 ネジ2本 20円 化粧箱 16円 イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC801)について アルミ枠材料費 37円 脚材料費 18円 脚型抜き加工費 5円 脚曲げ加工費 2円 ガラス材料費 6円 ガラス切断加工費 4円 ガラス面取り加工費 8円 ネジ2本 20円 化粧箱 13円 イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600)について アルミ枠材料費 28円 脚材料費 13円 脚型抜き加工費 5円 脚曲げ加工費 2円 ガラス材料費 4.5円 ガラス切断加工費 2.5円 ガラス面取り加工費 5円 ネジ2本 20円 化粧箱 12円 カートンケース 1.4円 被告製品の原価は、別紙第2-1表の争いのない部分を含め、別紙第2-2表のとおりであり、各被告製品につき、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(PC1105) 268.7円 ハ-1号サイズ大(LC1001)、ニ号サイズ大(LC1000) 265.7円 イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52) 214.9円 ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800) 210.9円 イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50) 166円 ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600) 161円 (ウ) 同(12)ア(ウ)の事実は否認する。 被告服部製鏡が被告製品1個当たりにつき得る利益は、販売価格(前記(ア))から原価(前記(イ))を差し引くことにより求められ、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54) 16.3円 (285円-268.7円=16.3円) ハ-1号サイズ大(PC1105) 1.3円 (270円-268.7円=1.3円) ハ-1号サイズ大(LC1001)、ニ号サイズ大(LC1000) 9.3円 (275円-265.7円=9.3円) イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52) 20.1円 (235円-214.9円=20.1円) ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800) 9.1円 (220円-210.9円=9.1円) イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50) 9円 (175円-166円=9円) ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600) 4円 (165円-161円=4円) イ 同(12)イの事実のうち、ハ-2号(PC1100、PC1101)については否認し、その余は認める。 ウ 同(12)ウの事実は否認し、主張は争う。 被告服部製鏡の利益は、被告服部製鏡が被告製品1個当たりにつき得る利益(前記ア(ウ))に、請求原因(12)イの販売数量(ハ-2号(PC1100、PC1101)を除く。)を乗じることにより求められ、その額は、次のとおりであり、その合計は57万4965円である。 イ号サイズ大(PC55) 3万6707.6円 (16.3円×2252個=3万6707.6円) イ号サイズ中(PC53) 11万3082.6円 (20.1円×5626個=11万3082.6円) イ号サイズ小(PC51) 2万6757円 (9円×2973個=2万6757円) ロ号サイズ大(PC54) 4万1581.3円 (16.3円×2551個=4万1581.3円) ロ号サイズ中(PC52) 12万2811円 (20.1円×6110個=12万2811円) ロ号サイズ小(PC50) 3万3336円 (9円×3704個=3万3336円) ハ-1号サイズ大(LC1001) 2万9360.1円 (9.3円×3157個=2万9360.1円) ハ-1号サイズ大(PC1105) 873.6円 (1.3円×672個=873.6円) ハ-1号サイズ中(LC801) 3万6964.2円 (9.1円×4062個=3万6964.2円) ハ-1号サイズ小(LC601) 2万1764円 (4円×5441個=2万1764円) ニ号サイズ大(LC1000) 2万4217.2円 (9.3円×2604個=2万4217.2円) ニ号サイズ中(LC800) 6万1343.1円 (9.1円×6741個=6万1343.1円) ニ号サイズ小(LC600) 2万6168円 (4円×6542個=2万6168円) 合計 57万4965円 (3万6707.6円+11万3082.6円+2万6757円+4万1581.3円+12万2811円+3万3336円+2万9360.1円+873.6円+3万6964.2円+2万1764円+2万4217.2円+6万1343.1円+2万6168円=57万4965円) 被告服部製鏡では、売掛金に対する返品及び歩引の割合は、約1.8%であり、被告服部製鏡が得る利益の割合は、これを差し引いた98.2%であるから、これを上記57万4965円に乗じた56万4615円が、被告服部製鏡が最終的に得た利益である。 (13) 同(13)の事実は否認し、主張は争う。 被告製品につき、被告ランリイの売上は、1473万5567円であり、 仕入額は1141万4860円であるから、被告ランリイの粗利益は、この差である332万0707円を上回らない。 (1473万5567円-1141万4860円=332万0707円) 被告ランリイの売上に対する販売費及び一般管理費の割合は15.42%であり、歩引の割合は2.99%であるから、被告ランリイの販売費及び一般管理費並びに歩引は、271万2817.8円である。 (1473万5567円×(15.42+2.99)/100=271万2817.8円) 被告ランリイが最終的に得る利益は、上記粗利益額332万0707円から上記販売費及び一般管理費並びに歩引の金額271万2817.8円を差し引いた60万7889円を上回らない。 (332万0707円-271万2817.8円=60万7889円) (14) 同(14)の主張は争う。 不法行為による損害賠償は、被害者の損害を賠償するものであり、被害者にそれ以上の利益を得させるものではない。損害賠償額は、原告の逸失利益額を上回ることはない。 3 抗弁(被告ら) (1)(出願前公知) 被告製品の意匠は、被告服部製鏡代表者が創作し、被告服部製鏡は、被告製品を商品化し、平成10年5月末ごろ、原告や被告ランリイに売り込みのために提示したものであり、そのころ公知となっていたから、被告製品の意匠と同一又は類似する本件登録意匠は新規性を欠き、本件意匠登録には、出願前公知の無効理由があることが明らかである(意匠法48条1項1号、3条1項1号、3号)。このような無効理由のあることの明らかな意匠権に基づく請求は、権利の濫用に当たり許されない。 (2)(冒認出願) 本件登録意匠は被告服部製鏡代表者が創作したものであり、原告による出願は、意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願であり、本件意匠登録には、冒認出願の無効理由があることが明らかである(意匠法48条1項3号)。このような無効理由のあることの明らかな意匠権に基づく請求は、権利の濫用として許されない。 (3)(先使用) 被告服部製鏡代表者は、意匠登録出願された本件登録意匠を知らないで自ら本件登録意匠と同一又は類似の意匠を創作し、本件登録意匠の出願前である平成10年5月ごろから、その意匠に係る被告製品を製造販売していたから、被告服部製鏡代表者は、本件意匠権につき先使用による通常実施権を有する(意匠法29条)。被告服部製鏡は、同被告代表者の先使用による通常実施権に基づいて被告製品を製造販売しており、被告ランリイは、被告服部製鏡から被告製品を購入しこれを販売しているものであるから、被告らによる被告製品の製造販売は、本件意匠権を侵害しない。 4 抗弁に対する認否 抗弁(1)ないし(3)の事実は否認し、主張は争う。本件登録意匠は、原告代表者が創作したものである。 理 由1 甲第1号証、第2、第3号証の各1、2によれば、請求原因(1)記載の内容の登録意匠(本件登録意匠)及びその類似意匠につき、原告を意匠権者とする意匠権の設定登録がされている事実が認められる。したがって、原告は本件意匠権を有しているものということができる。 2 上記事実と、甲第1号証、第2、第3号証の各1、2、第9号証、第10号証の1ないし3、第11ないし第14号証、第18、第19号証、第20号証の1、 2、第21号証、乙第1ないし第3号証、第4号証の1ないし3、第5号証の1ないし5、第6号証の1ないし6、第7号証、第10号証(後記の信用することができない部分を除く。)、第12号証の1、2、第16号証の1ないし8、証人Bの証言、原告代表者本人尋問の結果、被告服部製鏡代表者本人尋問の結果(後記の信用することができない部分を除く。)、検甲第1ないし第6号証及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。 (1) 原告は、鏡、日用雑貨等の製造、販売を行っている。従前の写真立ては、写真立ての裏面の板等を外し、そこから写真を入れるものがほとんどであった。原告代表者は、平成10年5月ころ、原告とアルミ枠の立て鏡の取引関係があった鏡、 写真立て等の製造販売業者である被告服部製鏡から納入された鏡の中に、四辺の金属枠のうち一辺が外れ、表面の鏡と裏面のアクリル板の間に挟まれていた紙が外に出てしまう不良品があるのを見て、写真立てにおいても、裏面の板等を外すのではなく、枠の一辺を外し、紙芝居のように横から写真を出し入れする写真立てができるのではないかと考え、本件登録意匠及びその類似意匠を考え出した。原告代表者は、そのような意匠の写真立てを被告服部製鏡に製造させることとし、その略図を、作図に長じていた原告の専務取締役であるA(原告代表者の息子)に描かせ、 Aは、その略図を持って、同年5月の終わりか6月初めころ、被告服部製鏡を訪れ、同被告に対し、サンプルの製作を依頼する旨伝えた。被告服部製鏡は、間もなくサンプルを製作して原告に提出した。そのサンプルの形態は、本件写真立てと同一の形態であった。原告代表者はサンプルに満足し、同年6月25日から同月27日まで東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催されるインターナショナルハウスウエアショウに出品展示するための本件写真立ての製作を被告服部製鏡に依頼した。原告は、インターナショナルハウスウエアショウに、本件写真立てを「シースルーアートフレーム」という商品名で出品し、展示及び商談を行った。 (2) 原告は、平成10年7月9日、大阪装粧品工業協同組合に対して、本件写真立て(商品名「シースルーアートフレーム」)につき、同組合の登録品制度に基づく商品登録の申請を行った。同組合の登録品制度は、模造類似品の流通の防止を図り、組合員の製品の保護、育成を図るために制定された制度であり、既存製品と形態が同一でないことが登録の要件であり(形態が同一ならば、サイズ、色彩、柄等が違っていても登録されない。)、登録が申請された製品は、申請者名を伏せて、 組合の広報誌「大装工(OSSK)スポットニュース」に、品名、特長、サイズ、 使用素材等が記載され、現物写真が掲載され、全組合員に公開通知され、その間組合事務所に展示される。公開期間中に異議申立てがない場合、定例役員会で審査され、登録が認定される。登録が認定されたことは、申請者に通知されるとともに、 組合の広報誌に掲載される。原告及び被告ランリイは、同組合の組合員である。本件写真立ては、同年7月中旬ごろ、組合の広報誌に掲載され、組合事務所に展示された。そして、同年8月20日までの異議申立期間に異議申立てがなかったことから、同年9月8日、登録が認定された。 (3) 原告は、平成10年9月2日から同月4日まで、東京のギフトショウに参加して、本件写真立てを展示し、商談を行った。原告は、被告服部製鏡に原告製品の製造を委託し、同被告から仕入れ、同月5日から、原告製品の販売を開始した。原告製品には、サイズ大(縦型は縦190mm横155mm、品番ID300。横型は縦142mm横202mm、品番ID301。)、サイズ中(縦型は縦156mm横129mm、品番ID200。横型は縦115mm横168mm、品番ID201。)、サイズ小(縦型は縦125mm横107mm、品番ID100。横型は縦94mm横137mm、品番ID101。)があった。 (4) 本件写真立て(商品名「シースルーアートフレーム」)は、平成10年9月17日、財団法人生活用品振興センターのデザイン保全制度により、デザイン寄託登録され、同センターの同月発行のデザイン公報に掲載された。 (5) 原告は、平成10年10月21日、本件写真立ての意匠(すなわち本件登録意匠)について意匠登録出願をした。原告は、その出願と同時に、意匠法4条2項の適用を受けようとする旨が記載された書面とともに、同法3条1項1号又は2号に該当するに至った意匠が同法4条2項の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面として、インターナショナルハウスウエアショウの出品者名簿の写し等を特許庁長官に提出した。本件意匠権は、平成11年8月13日、登録され、同年11月29日、意匠公報が発行された。原告は、平成10年10月21日、原告製品二の意匠について、本件登録意匠を本意匠とする類似意匠の出願をし、これについては、平成11年8月13日、本件登録意匠の類似意匠として登録され、同年11月30日、意匠公報が発行された。 (6) 被告服部製鏡は、平成10年5月終わりか6月初め、原告の依頼でサンプルを製作したが、同被告代表者は、そのうちの一つを取引先である被告ランリイの会長のBに渡し、販売を申し入れ、Bは、これを了解した。Bは、被告服部製鏡代表者に、更に大小種々のサイズにつき縦型、横型のサンプルをそろえるように依頼し、被告服部製鏡は、これを製作して被告ランリイに渡した。そのサンプルのねじは、周囲にすじを有する円柱形(丸形)であった。被告ランリイは、同年6月10日ごろ、これらのサンプルを写真に撮って現像し、その写真を用いて本件写真立てのチラシを100枚ほど作成した。そのチラシには、ハ-1号サイズ大(被告ランリイ品番LC1001)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ大(LC1000)、ニ号サイズ中(LC800)、 ニ号サイズ小(LC600)の被告製品の写真が掲載されていた。被告ランリイは、このチラシを全国の取引先に配布し、商談を進めた。被告服部製鏡は、ハ-1号製品及びニ号製品を製造し、同年8月7日から、これらの製品を被告ランリイに販売し、被告ランリイは、同日から、これらの製品の販売を開始した。被告服部製鏡が被告ランリイに販売した製品は、被告服部製鏡が原告に販売した製品と比較すると、原告に販売した製品は、枠の表面が若干湾曲し、クロームメッキを施されており、ねじが丸形であったのに対し、被告ランリイに販売した製品は、枠の表面が扁平であり、メッキが施されずアルマイトの地肌であり、ねじは先端が丸みを帯びた六角形であった。しかし、原告に販売した製品と被告ランリイに販売した製品の形態は、それ以外は同一であり、全体として同一の形態と評価できるものであった。被告服部製鏡が被告ランリイに販売した製品のねじは六角形であり、サンプルの丸形のねじとは異なっていたため、被告ランリイが販売する製品は、ねじの形が、サンプルを撮影したチラシと異なることとなった。そこで、被告ランリイは、 被告服部製鏡に抗議をした。 (7) Aは、平成10年9月18日、丸善書房で、原告製品と同一の形態の本件写真立てが販売されていることを発見し、原告はこれを入手した。同年9月19日、 原告代表者が被告服部製鏡代表者に電話をして問いただしたところ、被告服部製鏡代表者は、被告ランリイに売った写真立ては本件写真立てとは全然違う商品であると答えた。 そこで、原告代表者とAは、同年9月21日、被告ランリイを訪れ、被告ランリイ代表者、同被告の副社長であるCと面談し、本件写真立ては原告代表者が創作し、原告が被告服部製鏡に製作を依頼して販売していたこと、本件写真立ては、 被告ランリイも組合員である大阪装粧品工業協同組合に原告の商品として登録済みであり、財団法人生活用品振興センターにもデザイン寄託登録されていることを説明し、本件写真立ての販売の中止を要請した。被告ランリイの会長のBも途中から同席した。被告ランリイは、本件写真立ては被告服部製鏡が持ち込んだものであり、被告ランリイは無関係であって、原告と被告服部製鏡で話し合ってほしいと述べた。 (8) 平成10年9月22日、被告服部製鏡代表者が原告を訪れ、原告代表者、Aと面談した。被告服部製鏡代表者は、本件写真立てを被告ランリイに販売したことを認め、原告に販売している製品と被告ランリイに販売している製品とは、全然違うとして、原告の製品は枠が丸みを帯びているが被告ランリイの製品は枠が扁平である点、原告の製品は枠につやがあるが被告ランリイの製品は枠につやがない点、 原告の製品のねじは丸形であるが被告ランリイのねじは六角形である点で相違すると述べた。これに対し、原告代表者は、被告ランリイに販売された製品と原告に販売された製品は形態が同じである旨述べた。被告服部製鏡代表者は、被告ランリイの会長には世話になった恩義があり、昨今被告ランリイにヒット商品を提供していないので、ヒット商品になればと思って本件写真立てを提供したと述べた。原告代表者は、同月末までで被告ランリイに本件写真立てを販売するのをやめるよう求めたが、被告服部製鏡代表者は、被告ランリイでは本件写真立てを定番商品としてスーパーマーケットの業界に販売しており、平成11年2月まで商品の変更はできないからそれまで待ってほしいと述べた。原告代表者は、平成10年11月末まで待つという提案をしたが、被告服部製鏡代表者は、それに同意せず、本件写真立ての販売をやめることは難しいが、原告のみに売る商品を考案して埋め合わせをするから目をつぶってほしいと述べた。原告代表者は、これに同意しなかった。被告服部製鏡代表者は、被告ランリイに話をしてみると述べて帰ったが、被告服部製鏡は、 その後も本件写真立てを製造して被告ランリイに販売し、被告ランリイは販売を継続している。原告は、同年12月20日、被告服部製鏡との取引を中止し、他社へ本件写真立ての製造を依頼するようにして、原告製品を販売している。 (9) 平成10年10月16日、大阪装粧品工業協同組合の担当者が被告ランリイの事務所を訪れ、本件写真立てが同組合の登録品制度により商品登録されたことを示す同組合の広報誌を見せ、被告ランリイも組合員であり、組合で決まったことは守らなければならない旨述べ、本件写真立ての販売をやめるように要請した。これに対し、被告ランリイの会長であるBは、本件写真立ては販売先の定番商品となっているから、直ちに販売を中止することは難しく、半年ほど後に販売をやめるように努力すること、本件写真立ては、被告ランリイが被告服部製鏡から購入しているものであるから、被告服部製鏡と話をしてほしいことを述べた。 (10) 原告が被告服部製鏡との取引を中止した後、被告服部製鏡は、被告ランリイに販売するハ-1号製品及びニ号製品のねじを丸形に変更したが、品番は変更しなかった。被告服部製鏡は、平成11年5月から、従前より被告ランリイに販売していたハ-1号製品、ニ号製品に加え、イ号製品及びロ号製品を製造し被告ランリイに販売するようになり、被告ランリイは、同月から、ハ-1号製品及びニ号製品に加え、イ号製品及びロ号製品の販売を開始した。 以上の事実が認められる。 3(1)ア 被告服部製鏡代表者は、その陳述書である乙第10号証において、@本件写真立ては被告服部製鏡代表者が平成10年初めごろ考案した旨、A紙芝居のようにサイド面から出し入れできる構造のものは、他の業界でも利用されていて、決して斬新なものではない旨を記述している。 また、被告服部製鏡代表者は、その本人尋問において、@本件写真立ては、被告服部製鏡代表者が、Vカットマシーンを購入してからすぐに発案した旨、 A被告服部製鏡代表者は、鏡の4本のフレームのうちの1本につき接着剤を塗布する方向を間違えたため鏡の裏のアクリル板が抜けるようになっている不良品や、地下鉄、バスのスライド式の広告、食堂のメニュー立てなどを参考にして本件写真立てを考え出した旨を供述している。 そこで、これらの記述、供述の信用性について検討する。 イ(ア) 乙第8ないし第10号証、被告服部製鏡代表者本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。 被告服部製鏡は、平成10年2月、株式会社奥村機械製作所製造のVカットマシーンを購入した。Vカットマシーンを用いると、鏡や写真立てのフレームの角に当たる部分をV字状に切断することができる。被告服部製鏡では、従前は、 4本のフレームを別個に製作して鏡に接着していたが、そのような方法によると、 接着の方向を間違えて不良品が生じたり、角が手を切るような状態になるという不都合があった。Vカットマシーンを用いることにより、1本のフレームを3か所で曲げることになり、接着の方向を間違えて不良品が生じることがなくなり、角も丸くできるようになり、良い製品が量産できるようになった。 以上の事実が認められる。 (イ) しかし、このようなVカットマシーンを導入することによる利点は、 鏡を製作する場合にも発揮され、鏡ではなく写真立てを製作する場合にのみ特に発揮されるものではない。また、乙第11号証の1、2によれば、被告服部製鏡は、 株式会社ケイカンパニーに、平成10年1月31日及び同年5月2日に「ST700恋人」という鏡を販売したことが認められ、この鏡の製造工程が、Vカットマシーンの導入によって改善されたことは推認されるが、同年2月にVカットマシーンを導入した直後に被告服部製鏡が写真立てを製造したことを裏付ける証拠はない。 したがって、Vカットマシーンの購入の事実により本件写真立ての製造が裏付けられるとは認められない。 ウ 被告服部製鏡代表者は、その本人尋問において、平成10年9月22日、 原告代表者に対し、本件写真立ての販売をやめることは難しいが、原告のみに売る商品を考案して埋め合わせをするから目をつぶってほしい旨言ったと供述している。 しかし、もし被告服部製鏡代表者が本件写真立てを創作したのだとすれば、本件写真立てを被告ランリイに販売するかどうかは、被告服部製鏡が自由に決められるはずである。それにもかかわらず、被告服部製鏡代表者の前記供述は、本件写真立ての販売が原告との関係で制限されることを前提としている。そうすると、被告服部製鏡代表者の前記供述は、本件写真立てを同人が創作したという主張に相反するものと認められる。むしろ、被告服部製鏡代表者の前記供述は、原告の創作した本件写真立てを被告服部製鏡が無断で被告ランリイに販売したことを責められ、そのことを容赦してもらうために述べられたものであると考える方が自然である。 エ 被告服部製鏡代表者は、その本人尋問において、平成10年9月22日、 原告から、本件写真立てを見本市に出すと聞いた旨、及び自分の開発したものを原告のものとして見本市に出されると困る旨供述している。 しかし、もし被告服部製鏡代表者が本件写真立てを創作したのだとすれば、平成10年9月22日、原告から、本件写真立てを見本市に出すと聞いたときに、強く反対するはずであり、そのように反対した旨の供述がないところからすると、本件写真立ては被告服部製鏡代表者が創作したものではないと考えられる。 オ(ア) 被告服部製鏡代表者は、その本人尋問において、鏡の4本のフレームのうちの1本につき接着剤を塗布する方向を間違えたため鏡の裏のアクリル板が抜けるようになっている不良品に言及し、乙第10号証の陳述書には、電車内のスライド式の掲示板の写真が添付されている。 (イ) しかし、乙第10号証の陳述書には、そのような不良品を参考にした旨の記述はなく、弁論の全趣旨によれば、被告らの提出する準備書面にも、そのような不良品を参考にした旨の記載はなく、電車内のスライド式の掲示板が指摘されているにとどまる(被告ら平成12年7月3日付け第二準備書面3頁)ことが認められる。そうすると、不良品を参考にしたという被告服部製鏡代表者の前記供述は、にわかに信用し難い。 また、乙第10号証の陳述書に写真が添付された電車内のスライド式の掲示板は、枠はすべて固定されており、掲示物の前にある透明板が横にスライドするものであり、枠のうちの一本が裏板に固定されていて裏板とともにスライドする本件写真立てとは構造を異にするものであるから、電車内のスライド式の掲示板を参考にして本件写真立てを考え出したという供述も、直ちには信用し難い。被告服部製鏡代表者の供述にいう食堂のメニュー立ては、その構造が明らかでない。 さらに、電車内の掲示板のようなものをも含めて、横方向から出し入れするという構造を広くとらえれば、そのようなものは他の業界でも利用されているという余地も否定し得ない。しかし、前記のとおり、電車内の掲示板のようなものは、本件写真立てと構造を異にするというべきであり、本件写真立てと構造の同じものが他の業界でも利用されていたことを認めるに足りる証拠はない。また、被告服部製鏡代表者は、その本人尋問において、写真立てには、枠とともに裏板がスライドするものがなかった旨述べているから、写真立てとしては、本件写真立ての構造及び意匠は斬新なものであったと推認される。 カ 甲第1号証、第2、第3号証の各1、2、第10号証の1ないし3、第11、第12号証及び原告代表者本人尋問の結果によれば、原告は、本件写真立てについて、意匠登録出願、大阪装粧品工業協同組合への商品登録、財団法人生活用品振興センターへのデザイン寄託登録を行っていたことが認められ、これに、前記イないしオの事情を合わせ考えるならば、前記アの被告服部製鏡代表者の記述及び陳述は、信用することができないというべきである。 (2) 被告服部製鏡代表者は、その陳述書(乙第10号証)において、本件写真立ては、被告服部製鏡代表者が見本を原告に提供し、被告服部製鏡が積極的に原告に売り込んだ旨を記述している。しかし、前記2の認定事実のとおり、本件写真立ては原告代表者が創作したものであるから、被告服部製鏡代表者のこの記述は、信用することができない。 (3)ア 被告服部製鏡代表者は、その陳述書(乙第10号証)において、原告に対して本件写真立ての見本を提供する際、同じ商品を被告ランリイにも販売する旨明言したと記述している。 また、被告服部製鏡代表者は、その本人尋問において、次のように供述している。@被告服部製鏡代表者は、原告に、本件写真立てを被告ランリイにも販売すると言った。A被告服部製鏡代表者は、平成10年6月10日ごろ、Aから、被告ランリイへ出荷している製品と全く同じ製品を原告へ出荷されると価格競争を受けて困るから、製品を変えてくれと言われた。そこで、被告服部製鏡は、原告にはビスが丸形の製品を販売したが、被告ランリイには、同月下旬ごろから、ビスが六角形の製品を販売した。B被告服部製鏡代表者は、平成10年9月22日、原告へ赴いた際、原告に対し、Aにサンプルを渡したときに本件写真立てを被告ランリイにも販売すると言った旨、及び本件写真立てを被告服部製鏡代表者が考案して作ったものである旨を述べた。原告からは、本件写真立てを被告ランリイに売るのはやめてくれということしか言われなかった。 イ しかし、証人Bは、その証言において、平成10年9月、原告代表者と原告専務取締役のAが被告ランリイを訪れ、本件写真立てにつき、「大阪装粧品工業協同組合に登録されており、原告が考えた商品なので、被告ランリイは販売を中止してくれ。」と申し入れた旨供述している。また、被告服部製鏡代表者は、その本人尋問において、同月22日、原告代表者から、本件写真立てを被告ランリイに売らないように言われたと供述している。もし、被告服部製鏡代表者が、本件写真立てのサンプルを原告に渡す際、原告に対し、本件写真立てを被告ランリイにも販売することを述べていたとすれば、平成10年9月に至ってから、原告が、被告ランリイ及び被告服部製鏡代表者に対し、被告ランリイによる本件写真立ての販売の中止を申し入れるはずはないと考えられる。それにもかかわらず、原告がこのような申し入れをしているところからすると、被告服部製鏡代表者が、原告に対し、本件写真立てを被告ランリイにも販売すると述べたということは、信用できない。 被告服部製鏡代表者が、原告に対し、本件写真立てを被告ランリイにも販売すると述べていなかったとすると、「Aから、被告ランリイへ出荷している製品と全く同じ製品を原告へ出荷されると価格競争を受けて困るから、製品を変えてくれと言われた。そこで、被告服部製鏡は、原告にはビスが丸形の製品を販売したが、被告ランリイには、平成10年6月下旬ごろから、ビスが六角形の製品を販売した。」という被告服部製鏡代表者の供述も、信用することができない。 ウ 前記2の認定事実のとおり、原告代表者が本件写真立てを創作したものであることからすると、もし、被告服部製鏡代表者が、平成10年9月22日、原告へ赴いた際、原告に対し、本件写真立てを被告服部製鏡代表者が考案して作ったものである旨を述べたとすれば、原告代表者は強く反発したものと推認される。しかし、原告代表者が強く反発したという事実は、原告代表者本人尋問及び被告服部製鏡代表者本人尋問の各結果からうかがうことはできない。そうすると、被告服部製鏡代表者が、平成10年9月22日、原告に対し、本件写真立てを被告服部製鏡代表者が考案して作ったものである旨述べたということは、信用できない。 (4) その他、乙第10号証の記述及び被告服部製鏡代表者本人尋問の結果のうち、前記2の認定事実に反する部分は、前記2掲記の各証拠に照らして、信用することができず、他に前記2の認定を左右するに足りる証拠はない。 4(1)(抗弁の検討) 以上の認定に基づき、本件意匠権に関する被告らの抗弁(1)ないし(3)について検討する。 被告らが主張する出願前公知、冒認出願の抗弁は、本件写真立ての意匠(本件登録意匠)を被告服部製鏡代表者が創作したことを前提とするものであり、また、先使用の抗弁は、被告服部製鏡代表者が、本件登録意匠を知らないで自ら同一又は類似の意匠を創作したことを前提とするものである。しかし、前記2の認定事実のとおり、本件写真立ての意匠(本件登録意匠)は原告代表者が創作したものであり、被告服部製鏡は、原告から本件写真立ての製造を委託されたものであって、 本件写真立ての意匠(本件登録意匠)を被告服部製鏡代表者が創作したこと、及び被告服部製鏡代表者が本件登録意匠を知らないで自ら同一又は類似の意匠を創作したことは、いずれも認められない。したがって、出願前公知、冒認出願の抗弁は認められず、また、先使用の抗弁も認められない。 (2)(原告製品の製造販売) 請求原因(2)の事実のうち、原告が原告製品を製造販売していることは、当事者間に争いがない。 前記2の認定事実のとおり、原告は、平成10年6月25日から同月27日まで開催されたインターナショナルハウスウエアショウ及び同年9月2日から同月4日まで開催された東京のギフトショウに原告製品を出品し、展示及び商談を行ったことが認められるが、同日までに原告製品を販売したとは認められず、同月5日から、原告製品の販売を開始したものと認められる。 甲第21号証及び弁論の全趣旨によれば、原告製品の製品番号が原告主張のとおりであることが認められる。 (3)(被告服部製鏡の行為) 請求原因(3)の事実のうち、被告服部製鏡が、平成10年8月7日以降、イ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品を製造し、これを被告ランリイに販売していること、被告製品の被告ランリイにおける製品番号が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。 別紙ハ-2号製品目録記載のサイズは、縦190mm横145mm及び縦185mm横142mmである。乙第16号証の1ないし8は、被告ランリイの写真立てのパンフレットであるが、その中で、サイズが縦190mm横145mmの写真立てとしては、品番PC84(乙第16号証の3)、PC1201(乙第16号証の4)、PC1200(乙第16号証の7)が掲載されている。しかし、これらはいずれも、写真立ての左上及び右下に、脚止め用の円形のねじ部材が付されており、右下のねじ部材の裏面に棒状の脚を取り付けることによって写真立てを立てる構造のものであり、別紙ハ-2号製品目録とは構造及び形態を異にすることが認められる。また、原告は、請求原因において、品番PC1100、PC1101をハ-2号製品として主張するところ、乙第16号証の4、6によれば、品番PC1100、PC1101は、いずれもサイズが縦185mm横142mmで、別紙ハ-2号製品目録記載のサイズと一致するが、いずれも横にねじがなく、別紙ハ-2号製品目録とは形態を異にすることが認められる。乙第16号証の1ないし8には、 その他にサイズが縦185mm横142mmの写真立ては掲載されていない。その他、別紙ハ-2号製品目録記載の写真立てを、被告服部製鏡が製造販売し、又は被告ランリイが販売していたことを裏付ける証拠はない。したがって、被告服部製鏡が別紙ハ-2号製品目録記載の写真立てを製造販売していたこと及び被告ランリイがこれを被告服部製鏡から購入して販売していたことは、いずれも認めることができない。 (4)(被告ランリイの行為) 請求原因(4)の事実のうち、被告ランリイが、被告服部製鏡からイ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品を購入し、平成10年8月7日以降、これを小売店等に販売していることは、当事者間に争いがない。 前記(3)のとおり、被告ランリイが別紙ハ-2号製品目録記載の写真立てを被告服部製鏡から購入し販売していたことは、認めることができない。 (5)(意匠の同一又は類似) 請求原因(5)のうち、イ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品が、いずれも本件登録意匠と同一又は類似であることは、当事者間に争いがない。 (6)(形態模倣) ア 請求原因(6)アのうち、イ号製品が原告製品と形態が同一であること、 同(6)ウのうち、原告製品一とハ-1号製品を比較すると、支持部材を取り付けるねじの形状が、原告製品一では、周囲にすじを有する円柱形であるのに対し、ハ-1号製品では先端が丸みを帯びた六角形である点で相違すること、同(6)エのうち、原告製品二とニ号製品を比較すると、支持部材を取り付けるねじの形状が、原告製品二では、周囲にすじを有する円柱形であるのに対し、ニ号製品では先端が丸みを帯びた六角形である点で相違することは、いずれも当事者間に争いがない。 検甲第2号証、第4号証及び弁論の全趣旨によれば、ロ号製品は、原告製品二と形態が同一であることが認められる。 原告製品一とハ-1号製品を比較すると、支持部材を取り付けるねじの形状が、原告製品一では、周囲にすじを有する円柱形であるのに対し、ハ-1号製品では先端が丸みを帯びた六角形である点で相違する。しかし、検甲第1号証、第5号証及び弁論の全趣旨によれば、原告製品一とハ-1号製品は、表面ガラス、裏板、四辺を構成しているフレーム、支持部材の各形状及び取り付け位置が、いずれも同一で、ねじの形状が異なるだけであることが認められ、ねじの形状の相違は、 原告製品一とハ-1号製品の構成全体の比較の中でわずかな差にとどまるというべきであるから、原告製品一とハ-1号製品の形態は、同一ということができる。 原告製品二とニ号製品についても、これらを比較すると、支持部材を取り付けるねじの形状が、原告製品二では、周囲にすじを有する円柱形であるのに対し、ニ号製品では先端が丸みを帯びた六角形である点で相違する。しかし、検甲第2号証、第6号証及び弁論の全趣旨によれば、原告製品二とニ号製品は、表面ガラス、裏板、四辺を構成しているフレーム、支持部材の各形状及び取り付け位置が、 いずれも同一で、ねじの形状が異なるだけであることが認められ、ねじの形状の相違は、原告製品二とニ号製品の構成全体の比較の中でわずかな差にとどまるというべきであるから、原告製品二とニ号製品の形態は、同一ということができる。 イ このように、原告製品一とイ号製品、ハ-1号製品は形態が同一であり、 原告製品二とロ号製品、ニ号製品は形態が同一である。そして、前記2の認定事実によれば、被告服部製鏡は、原告代表者が創作した意匠に係る本件写真立てのサンプルを製作し、更に原告製品を製造し、他方、被告ランリイに同サンプルを提示して受注し、被告ランリイに販売するためにイ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品を製造していたものである。したがって、イ号製品及びハ-1号製品は、 原告製品一を模倣したものであり、ロ号製品及びニ号製品は、原告製品二を模倣したものというべきである。 原告が原告製品の販売を開始したのは平成10年9月5日であり、被告服部製鏡及び被告ランリイが被告製品の販売を開始したのはそれ以前の同年8月7日であるが、上記の事情に照らせば、このような販売時期の先後は、イ号製品及びハ-1号製品が原告製品一の模倣であり、ロ号製品及びニ号製品が原告製品二の模倣であるという認定を妨げるものではないと解されるし、原告製品の販売開始前に販売された被告製品の販売数量も、不正競争防止法に基づく損害賠償の算定の基礎となし得るものと解される。 ウ なお、不正競争防止法2条1項3号に基づく請求は、他人の商品が最初に販売された日から起算して3年を経過したものについては認められないところ、前記2の認定事実によれば、原告は、平成10年9月5日に原告製品の販売を開始したものであるから、原告は、同日から起算して3年後の平成13年9月4日まで、 不正競争防止法2条1項3号、3条に基づき差止請求権を行使することができ、同法4条に基づき、同日までに行われた同法2条1項3号に該当する行為につき損害賠償を請求することができるものと解される。 (7)(故意過失) 請求原因(7)について検討する。 ア 前記2の認定事実によれば、被告服部製鏡は、本件写真立ての意匠を原告代表者が創作したことを知りながら、被告ランリイのために本件写真立てと同一の意匠のイ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品を製造販売したものと認められ、被告服部製鏡には、製造販売を始めたときから、原告製品一を模倣したイ号製品、ハ-1号製品を製造販売すること、並びに原告製品二を模倣したロ号製品及びニ号製品を製造販売することにつき、故意があったものと認められる。 また、被告服部製鏡は、上記行為により、本件意匠権がその設定登録により発生した平成11年8月13日以降は、本件意匠権を侵害したことになるところ、他人の意匠権を侵害した者はその侵害行為について過失があったものと推定される(意匠法40条本文)。このように過失が推定されるのは、意匠権が公示されることに根拠を有するものであるところ、前記のとおり、本件登録意匠の意匠公報が発行されたのは平成11年11月29日であるから、それ以前は過失を推定する根拠を欠くものというべきであり、同日以前に、被告服部製鏡において、本件意匠権が存在することを知っていたか、知り得たことを首肯させるような事情はうかがわれない。したがって、平成11年11月29日以前の本件意匠権侵害行為については、過失は推定されず、被告服部製鏡の過失を認めることはできない。 イ 被告ランリイは、被告服部製鏡から、原告製品を模倣した被告製品を譲り受けた者であるから、不正競争防止法2条1項3号が適用されるためには、譲受時に、他人の商品の形態を模倣したものであることを知らなかったことにつき少なくとも重過失がなければならない(不正競争防止法11条1項5号)。 前記2の認定事実によれば、原告は、平成10年7月9日、大阪装粧品工業協同組合に対して、本件写真立て(商品名「シースルーアートフレーム」)につき、同組合の登録品制度に基づく商品登録の申請を行い、本件写真立ては、同月中旬ごろ、その内容の説明や現物写真が同組合の広報誌に掲載され、同組合事務所に展示され、同年8月20日までの異議申立期間に異議申立てがなかったことから、 同年9月8日、登録が認定されたものであり、被告ランリイは、同組合の組合員であったものである。しかし、同組合の広報誌の発行部数や配布の範囲、登録品制度の実績などが明らかとなっていないことから、これらの事実をもって、同年9月8日から、被告ランリイに、原告製品一を模倣したイ号製品及びハ-1号製品を販売すること、並びに原告製品二を模倣したロ号製品及びニ号製品を販売することにつき、故意又は少なくとも重過失があったものと認めることはできないし、その他、 同日から、被告ランリイに故意又は重過失があったことを認めるに足りる証拠はない。 前記2の認定事実によれば、原告代表者とAは、平成10年9月21日、 被告ランリイを訪れ、原告代表者が本件写真立てを創作したことを説明し、本件写真立ての販売の中止を要請したものであるから、被告ランリイには、その翌日である同月22日以降は、原告製品一を模倣したイ号製品及びハ-1号製品を販売すること、並びに原告製品二を模倣したロ号製品及びニ号製品を販売することにつき、 故意又は少なくとも重過失があったものと認められる。仮に被告ランリイが、被告服部製鏡から、本件写真立ては被告服部製鏡代表者が創作したオリジナル商品である旨の説明を受けていたとしても、原告代表者らの説明よりも被告服部製鏡の説明を信ずべきであるとする相当の根拠があったことを認めるに足りる証拠はないから、被告ランリイの故意又は重過失が否定されることはない。 被告ランリイについても、前記アの被告服部製鏡についてと同様に、意匠権の侵害行為について過失があったものと推定されるが、本件登録意匠の意匠公報が発行された平成11年11月29日以前には、本件意匠権が存在することを知っていたか、知り得たことを首肯させるような事情はうかがわれないから、同日以前の本件意匠権侵害行為については、過失は推定されず、過失を認めることはできない。 (8)(関連共同性) 請求原因(8)について検討する。 被告服部製鏡が被告製品を製造しこれを被告ランリイに販売する行為と、被告ランリイが被告製品を販売する行為は、その時、場所、相手方等を異にする別個の行為であり、これらの行為を行っているというだけでは、共同不法行為の成立要件である関連共同性は認められないが、被告らが意思を通じた上一体となって製造行為及び販売行為を分担しているとか、資本的、人的又は取引上の密接な関係を有するような場合は、関連共同性が認められる場合があるといえる。 ところで、前記2の認定事実によれば、被告服部製鏡は、本件写真立てを原告と被告ランリイにのみ販売し、平成10年12月20日、原告が被告服部製鏡との取引を中止した後は、本件写真立てを被告ランリイのみに販売しているものと認められる。そして、前記(7)イのとおり、被告服部製鏡及び被告ランリイには、原告製品を模倣した被告製品の製造又は販売、本件意匠権の侵害につき、故意、重過失又は過失があったものと認められる。しかし、前記2の認定事実によれば、本件写真立ては、被告服部製鏡代表者が被告ランリイにサンプルを渡して販売を申し入れたものであり、平成10年9月21日に原告代表者らが被告ランリイを訪れた際、 及び同年10月16日に大阪装粧品工業協同組合の担当者が被告ランリイを訪れた際、被告ランリイ代表者や被告ランリイの会長のBは、本件写真立ては被告服部製鏡から購入しているものであるから被告服部製鏡と話し合ってほしい旨述べたものである。これらの事実に照らせば、被告服部製鏡と被告ランリイが、原告製品を模倣した被告製品を製造販売すること、本件意匠権を侵害することにつき、意思を通じた上一体となって製造行為及び販売行為を分担しているとは認められない。乙第2、第3号証、第7号証、第16号証の1ないし8及び証人Bの証言によれば、被告ランリイは、その費用により、被告製品のパンフレット、カタログを製作したことが認められるが、これらのパンフレット等には、被告ランリイの名称住所等のみが記載され、被告服部製鏡については何ら記載されておらず、これらのパンフレット等は、被告ランリイが自らの営業のために製作したものと認められ、これらのパンフレット等を被告ランリイがその費用で作成したことをもって、関連共同性を裏付ける証拠とすることはできないと解される。その他に、被告らが意思を通じた上一体となって製造行為及び販売行為を分担していることを認めるに足りる証拠はなく、被告らが資本的、人的又は取引上の密接な関係を有することを認め得る証拠もない。 そうすると、本件において、被告らの行為の間に関連共同性は認められず、 共同不法行為の成立は認められない。原告は、被告ごとに損害賠償を請求することができるにとどまる。 (9)(損害額の計算期間) これまで検討したところによると、被告服部製鏡は、被告製品の製造販売を始めたときから、不正競争防止法2条1項3号、4条に基づく損害賠償責任を負い、平成11年11月29日からは、本件意匠権侵害に基づく損害賠償責任も負う。また、被告ランリイは、平成10年9月22日から、不正競争防止法2条1項3号、4条に基づく損害賠償責任を負い、平成11年11月29日からは、本件意匠権侵害に基づく損害賠償責任も負う。 なお、前記(6)ウのとおり、原告は、不正競争防止法2条1項3号、4条に基づき、原告製品が最初に販売された日から起算して3年を経過した平成13年9月4日までの被告らの行為につき損害賠償を請求し得るものと解される。 (10)(逸失利益) 原告は、不正競争防止法に基づき、原告製品1個当たりにつき得る利益に被告ランリイが販売した被告製品の数量を乗じることによって算出される逸失利益の請求をする。 しかし、乙第16号証の1ないし8、証人Bの証言、被告服部製鏡代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件意匠の写真立ては原告製品と被告製品しかなかったことが認められるものの、被告服部製鏡は、被告製品以外の写真立てを製造販売していたこと、被告ランリイも、被告製品と同サイズ等の他の種類の写真立てを販売していたこと、その他の業者により多くの種類の写真立てが製造販売されていたことが認められ、これらの事実に照らすと、被告らによる被告製品の製造販売がなかったとしても、その販売数量分だけ原告の販売数量の減少が生じたとは認められないし、被告らによる被告製品の製造販売により原告の販売数量がどの程度減少したかを認定できる的確な証拠もない。 したがって、不正競争防止法に基づく逸失利益の請求は、認めることができない。 (11)(意匠法39条1項に基づく損害額) 前記(9)のとおり、被告らは、平成11年11月29日から本件意匠権侵害に基づく損害賠償責任を負うから、意匠法39条1項に基づく損害額は、原告が原告製品1個当たりにつき得る利益に、同日以降の被告ランリイの販売数量を乗じて求めることができる。 ア(原告製品1個当たりの利益) (ア)(販売価格) 原告製品の販売価格につき、請求原因(10)ア(ア)の事実は、当事者間に争いがない。 (イ)(原価) a 原告製品の原価につき、請求原因(10)ア(イ)aないしdの事実は当事者間に争いがない。 b 請求原因(10)ア(イ)eの事実のうち、原告が、原告製品の小売店等への運送を西濃運輸株式会社に依頼していることは、当事者間に争いがない。 原告は、1ケース当たりの運送費600円を、各原告製品が1ケースに入り得る個数で除した額をもって、各原告製品1個当たりの運送費である旨主張する。しかし、甲第27号証の1ないし7及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件写真立てとその他の原告の製品を取り混ぜて取引先に送付しており、取引先に送付される製品の個数は、1ケースに入り得る原告製品の個数よりも少ない場合がかなりあるものと認められるから、原告製品1個当たりの運送費は、原告の主張する額よりも多いものと認められる。 他方、被告らは、証拠上(甲第27号証の1ないし7)明らかにされた原告の個別の取引の内容に基づき、運送費の総額に、総売上中に占める原告製品の売上の割合を乗じることによって原告製品についての運送費の合計を求め、それを原告製品の個数で除することにより、原告製品1個当たりの運送費を求める旨主張する。しかし、甲第27号証の6によれば、原告が、取引先から、製品の代金とは別に運送費を徴収している場合があることが認められるから、利益の計算に当たり、運送費のすべてを経費として原告製品の販売額から差し引くのも相当とはいえず、運送費は、被告の主張する額よりは少ないものと認められる。 これらの事情を含め、本件訴訟に提出された全証拠及び弁論の全趣旨により認められる諸般の事情を考慮すると、原告製品の運送費は、1個当たり10円と認めるのが相当である。 c 原告製品についての利益を算出するに当たり売上から差し引くべき運送費以外の販売費及び一般管理費は、乙第24(原告の損益計算書)、第25号証(原告の販売費及び一般管理費内訳書)その他本件訴訟に提出された全証拠及び弁論の全趣旨により認められる諸般の事情を考慮し、販売価格の5%と認めるのが相当である。そうすると、運送費以外の販売費及び一般管理費は、次のとおりである。 サイズ大 27円 (540円×5/100=27円) サイズ中 22円 (441円×5/100=22円) サイズ小 16.8円 (337.5円×5/100=16.8円) d 原告製品の原価は、本体、中紙、ストッパーシール、外装箱、運送費、運送費以外の販売費及び一般管理費の価格の合計であり、次のとおりである。 サイズ大 337.65円 (275円+8円+1.65円+16円+10円+27円=337.65円) サイズ中 286.35円 (240円+5.2円+1.65円+7.5円+10円+22円=286.35円) サイズ小 225.55円 (185円+4.6円+1.65円+7.5円+10円+16.8円=225.55円) (ウ)(利益) 原告が原告製品の販売によって原告製品1個当たりにつき得る利益は、 請求原因(10)ア(ア)の販売価格から前記(イ)dの原価を差し引くことにより求められ、その額は、次のとおりである。 サイズ大 202.35円 (540円-337.65円=202.35円) サイズ中 154.65円 (441円-286.35円=154.65円) サイズ小 111.95円 (337.5円-225.55円=111.95円) イ(販売数量) (ア)(総販売数量) a 被告ランリイの販売数量につき、請求原因(10)イ(ア)のうち、別紙第1-1表(ハ-2号(PC1100、PC1101)を除く。)、及び被告ランリイが小売店等に販売した各被告製品ごとの数量の合計(ハ-2号(PC1100、 PC1101)を除く。)が次のとおりであることは、当事者間に争いがない。 イ号サイズ大(PC55) 1684個 イ号サイズ中(PC53) 4721個 イ号サイズ小(PC51) 2932個 ロ号サイズ大(PC54) 2412個 ロ号サイズ中(PC52) 5302個 ロ号サイズ小(PC50) 3254個 ハ-1号サイズ大(LC1001) 1134個 ハ-1号サイズ大(PC1105) 2051個 ハ-1号サイズ中(LC801) 3345個 ハ-1号サイズ小(LC601) 4881個 ニ号サイズ大(LC1000) 2178個 ニ号サイズ中(LC800) 6673個 ニ号サイズ小(LC600) 6547個 b ところで、後記(12)イのとおり、被告服部製鏡が被告ランリイへ販売した被告製品の数量が請求原因(12)イのとおり(ただしハ-2号(PC1100、 PC1101)を除く。)であることは、当事者間に争いがない。その数量を示すと、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55) 2252個 イ号サイズ中(PC53) 5626個 イ号サイズ小(PC51) 2973個 ロ号サイズ大(PC54) 2551個 ロ号サイズ中(PC52) 6110個 ロ号サイズ小(PC50) 3704個 ハ-1号サイズ大(LC1001) 3157個 ハ-1号サイズ大(PC1105) 672個 ハ-1号サイズ中(LC801) 4062個 ハ-1号サイズ小(LC601) 5441個 ニ号サイズ大(LC1000) 2604個 ニ号サイズ中(LC800) 6741個 ニ号サイズ小(LC600) 6542個 c 被告ランリイは被告製品を被告服部製鏡のみから仕入れていたことから、被告ランリイの販売数量は被告服部製鏡の販売数量と同数かそれより少ないはずである。そこで、前記aの被告ランリイの販売数量と、前記bの被告服部製鏡の販売数量を比べると、ハ-1号サイズ大(PC1105)について、前者が2051個であるのに対し、後者は672個であり、前者が後者より多くなっている。しかし、乙第16号証の1、7、証人Bの証言、被告服部製鏡代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告ランリイは、LCという品番の写真立てを廃版とした後、同じ形態の写真立てをPCという品番で販売していたこと、LC1001とPC1105は寸法も形態も同一であったことが認められる。そこで、被告服部製鏡から被告ランリイへLC1001として納入された写真立てが、被告ランリイにより、PC1105の品番で販売されたことが推認される。そうすると、被告ランリイが小売店等に販売した被告製品の数量と、被告服部製鏡が被告ランリイに販売した被告製品の数量の間に矛盾がないかを検討するに当たっては、LC1001とPC1105の数量の合計を比較する必要があるものと認められる。LC1001とPC1105の合計は、前記aの被告ランリイの販売数量において3185個(1134個+2051個=3185個)であり、前記bの被告服部製鏡の販売数量において3829個(3157個+672個=3829個)であり、前者の方が後者より少ない。したがって、これらの数量の間に矛盾はない。 d 前記aの被告ランリイの販売数量と、前記bの被告服部製鏡の販売数量を比べると、ニ号サイズ小 (LC600)について、前者は6547個、後者は6542個で、前者は後者より多い。ところで、甲第18、第19号証、第20号証の1、2及び弁論の全趣旨によれば、別紙第1-1表記載の数量及び前記aの被告ランリイの販売数量は、甲第20号証の1、2(被告ランリイ工業の商品別売上順位表)に基づいて算出されたものであり、他方、前記bの被告服部製鏡の販売数量は、甲第18号証(被告服部製鏡の被告ランリイ工業に対する売上帳)、第19号証(被告服部製鏡の被告ランリイ工業に対する請求書)に基づいて算出されたものであり、これらの数量は、いずれも相当の根拠に基づき算出されていることが認められる。ニ号サイズ小(LC600)について、前者(6547個)が後者(6542個)より多い理由は明らかではなく、前者のみが誤りであると断定することはできないが、前者が後者より多いのは矛盾ともみられるから、前者も後者と同数とするのが相当である。したがって、被告ランリイによるニ号サイズ小(LC600)の販売数量は、合計6542個と認めるのが相当である。 (イ)(平成11年11月29日以降の販売数量) a 被告らは、平成11年11月29日から本件意匠権侵害につき損害賠償責任を負うから、意匠法39条1項に基づいて損害額を算出するに当たっては、 同日以降の被告ランリイの販売数量を基礎とすべきである。 b 別紙第1-1表によれば、イ号サイズ大(PC55)、イ号サイズ中(PC53)、イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ大(PC54)、ロ号サイズ中(PC52)、ロ号サイズ小(PC50)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ大(LC1000)、ニ号サイズ小(LC600)は、平成11年11月に販売されているが、同月29日以降に販売された数量は明らかではない。そこで、同日以降販売された数量は、日割りによって算出するのが相当である。同月の被告ランリイの販売数量のうち、同月29日以降の2日間の販売数量は、次のとおり認めるのが相当である。 イ号サイズ大(PC55) 8個 (131個×2日/30日=8個) イ号サイズ中(PC53) 35個 (533個×2日/30日=35個) イ号小(PC51) 15個 (231個×2日/30日=15個) ロ号サイズ大(PC54) 10個 (150個×2日/30日=10個) ロ号サイズ中(PC52) 38個 (581個×2日/30日=38個) ロ号サイズ小(PC50) 15個 (234個×2日/30日=15個) ハ-1号サイズ中(LC801) 4個 (68個×2日/30日=4個) ハ-1号サイズ小(LC601) 4個 (61個×2日/30日=4個) ニ号サイズ大(LC1000) 0個 (14個×2日/30日=0個) ニ号サイズ小(LC600) 1個 (24個×2日/30日=1個) c 上記販売数量を含め、平成11年11月29日以降の被告ランリイの販売数量をまとめると、別紙第1-3表のとおりとなる。なお、前記(ア)dのとおり、被告ランリイによるニ号サイズ小(LC600)の販売数量は、第1-1表及び前記(ア)a記載の6547個よりも5個少ない6542個と認められるから、この差の5個についても、ニ号サイズ小(LC600)の販売数量の算出に当たり差し引くこととする。そうすると、平成11年11月29日以降の被告ランリイの販売数量は、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55) 607個 イ号サイズ中(PC53) 1728個 イ号サイズ小(PC51) 1013個 ロ号サイズ大(PC54) 937個 ロ号サイズ中(PC52) 2228個 ロ号サイズ小(PC50) 1364個 ハ-1号サイズ大(PC1105) 24個 ハ-1号サイズ中(LC801) 71個 ハ-1号サイズ小(LC601) 99個 ニ号サイズ大(LC1000) 31個 ニ号サイズ小(LC600) 241個 d@ 上記cの被告製品のうち原告製品のサイズ大に相当するものは、イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(PC1105)、ニ号サイズ大(LC1000)であり、平成11年11月29日以降のこれらの被告製品の販売数量の合計は、1599個である。 (607個+937個+24個+31個=1599個) A 上記cの被告製品のうち原告製品のサイズ中に相当するものは、イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52)、ハ-1号サイズ中(LC801)であり、平成11年11月29日以降のこれらの被告製品の販売数量の合計は、4027個である。 (1728個+2228個+71個=4027個) B 上記cの被告製品のうち原告製品のサイズ小に相当するものは、イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600)であり、平成11年11月29日以降のこれらの被告製品の販売数量の合計は、2717個である。 (1013個+1364個+99個+241個=2717個) ウ(損害額) 各サイズごとに、原告が原告製品1個当たりにつき得る利益(前記ア(ウ))に、平成11年11月29日以降の被告ランリイの販売数量(前記イ(イ)d@ないしB)を乗じた金額は次のとおりであり、その合計は125万0500円である。 サイズ大 32万3557円 (202.35円×1599個=32万3557円) サイズ中 62万2775円 (154.65円×4027個=62万2775円) サイズ小 30万4168円 (111.95円×2717個=30万4168円) 合計 125万0500円 (32万3557円+62万2775円+30万4168円=125万0500円) したがって、原告は、意匠法39条1項に基づき、125万0500円を請求することができる。 (12)(被告服部製鏡の利益) ア(被告服部製鏡の被告製品1個当たりの利益) (ア)(販売価格) 請求原因(12)ア(ア)の事実のうち、被告服部製鏡の被告ランリイへの販売価格が次のとおりであることは、当事者間に争いがない。 ハ-1号サイズ大(LC1001)、二号サイズ大(LC1000)275円 ハ-1号サイズ中(LC801)、二号サイズ中(LC800) 220円 ハ-1号サイズ小(LC601)、二号サイズ小(LC600) 165円 甲第19号証及び弁論の全趣旨によれば、被告服部製鏡の被告ランリイへの販売価格は、上記のほか、次のとおりであると認められる。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54) 285円 ハ-1号サイズ大(PC1105) 270円 イ号中(PC53)、ロ号中(PC52) 235円 イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50) 175円 (イ)(原価) a 請求原因(12)ア(イ)につき、別紙第2-1表のうち、次の部分は当事者間に争いがない。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ニ号サイズ大(LC1000)について アルミ枠材料費 46円 脚材料費 21円 脚曲げ加工費 3円 ガラス材料費 12円 ガラス切断加工費 8円 ガラス面取り加工費 10円 ネジ2本 20円 化粧箱 16円 イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC801)について アルミ枠材料費 37円 脚材料費 18円 脚型抜き加工費 5円 脚曲げ加工費 2円 ガラス材料費 6円 ガラス切断加工費 4円 ガラス面取り加工費 8円 ネジ2本 20円 化粧箱 13円 イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600)について アルミ枠材料費 28円 脚材料費 13円 脚型抜き加工費 5円 脚曲げ加工費 2円 ガラス材料費 4.5円 ガラス切断加工費 2.5円 ガラス面取り加工費 5円 ネジ2本 20円 化粧箱 12円 カートンケース 1.4円 b 乙第17ないし第19号証、第22号証その他本件訴訟に提出された全証拠及び弁論の全趣旨により認められる諸般の事情を考慮すると、前記aの争いのない部分以外の被告製品の原価は、次のとおり認めるのが相当である。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(PC1105)について アルミ枠切断費 10円 脚型抜き加工費 6円 透明裏板切断費 10円 接着剤 7円 カートンケース 2.3円 ビニール袋 3.4円 両面テープ 1円 組立等工賃 30円 ゴムワッシャー 6円 営業経費 12円 ハ-1号サイズ大(LC1001)、ニ号サイズ大(LC1000)について アルミ枠切断費 10円 脚型抜き加工費 6円 透明裏板切断費 10円 接着剤 7円 カートンケース 2.3円 ビニール袋 3.4円 両面テープ 1円 組立等工賃 28円 写真代 8円 営業経費 12円 イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52)について アルミ枠切断費 8円 透明裏板切断費 7円 接着剤 5円 カートンケース 2.2円 ビニール袋 2円 両面テープ 0.7円 組立等工賃 25円 ゴムワッシャー 6円 営業経費 9円 ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800)について アルミ枠切断費 8円 透明裏板切断費 7円 接着剤 5円 カートンケース 2.2円 ビニール袋 2円 両面テープ 0.7円 組立等工賃 23円 写真代 7円 営業経費 9円 イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50)について アルミ枠切断費 6円 透明裏板切断費 5円 接着剤 3円 ビニール袋 1.1円 両面テープ 0.5円 組立等工賃 18円 ゴムワッシャー 6円 営業経費 7円 ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600)について アルミ枠切断費 6円 透明裏板切断費 5円 接着剤 3円 ビニール袋 1.1円 両面テープ 0.5円 組立等工賃 15円 写真代 6円 営業経費 7円 c 以上の被告製品の原価をまとめると別紙第2-3表のとおりとなり、 各被告製品の原価(合計)は、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54)、ハ-1号サイズ大(PC1105) 223.7円 (46円+10円+21円+6円+3円+12円+8円+10円+10円+20円+7円+16円+2.3円+3.4円+1円+30円+6円+12円=223.7円) ハ-1号サイズ大(LC1001)、ニ号サイズ大(LC1000) 223.7円 (46円+10円+21円+6円+3円+12円+8円+10円+10円+20円+7円+16円+2.3円+3.4円+1円+28円+8円+12円=223.7円) イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52) 177.9円 (37円+8円+18円+5円+2円+6円+4円+8円+7円+20円+5円+13円+2.2円+2円+0.7円+25円+6円+9円=177.9円) ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800) 176.9円 (37円+8円+18円+5円+2円+6円+4円+8円+7円+20円+5円+13円+2.2円+2円+0.7円+23円+7円+9円=176.9円) イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50) 140円 (28円+6円+13円+5円+2円+4.5円+2.5円+5円+5円+20円+3円+12円+1.4円+1.1円+0.5円+18円+6円+7円=140円) ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600) 137円 (28円+6円+13円+5円+2円+4.5円+2.5円+5円+5円+20円+3円+12円+1.4円+1.1円+0.5円+15円+6円+7円=137円) (ウ)(利益) 被告服部製鏡が被告製品1個当たりにつき得る利益は、販売価格(前記(ア))から原価(前記(イ)c)を差し引くことにより求められ、次のとおりである。 イ号サイズ大(PC55)、ロ号サイズ大(PC54) 61.3円 (285円-223.7円=61.3円) ハ-1号サイズ大(PC1105) 46.3円 (270円-223.7円=46.3円) ハ-1号サイズ大(LC1001)、ニ号サイズ大(LC1000) 51.3円 (275円-223.7円=51.3円) イ号サイズ中(PC53)、ロ号サイズ中(PC52) 57.1円 (235円-177.9円=57.1円) ハ-1号サイズ中(LC801)、ニ号サイズ中(LC800) 43.1円 (220円-176.9円=43.1円) イ号サイズ小(PC51)、ロ号サイズ小(PC50) 35円 (175円-140円=35円) ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ小(LC600) 28円 (165円-137円=28円) イ(被告服部製鏡の販売数量) 請求原因(12)イの事実は、ハ-2号(PC1100、PC1101)を除き、当事者間に争いがない。 ウ(被告服部製鏡の利益) 被告服部製鏡が被告製品の販売により得た利益は、被告製品1個当たりにつき得る利益(前記ア(ウ))に、被告製品の販売数量(請求原因(12)イ。ただし、 ハ-2号(PC1100、PC1101)を除く。)を乗じることにより求められ、その合計は232万6028円である。 イ号サイズ大(PC55) 13万8047円 (61.3円×2252個=13万8047円) イ号サイズ中(PC53) 32万1244円 (57.1円×5626個=32万1244円) イ号サイズ小(PC51) 10万4055円 (35円×2973個=10万4055円) ロ号サイズ大(PC54) 15万6376円 (61.3円×2551個=15万6376円) ロ号サイズ中(PC52) 34万8881円 (57.1円×6110個=34万8881円) ロ号サイズ小(PC50) 12万9640円 (35円×3704個=12万9640円) ハ-1号サイズ大(LC1001) 16万1954円 (51.3円×3157個=16万1954円) ハ-1号サイズ大(PC1105) 3万1113円 (46.3円×672個=3万1113円) ハ-1号サイズ中(LC801) 17万5072円 (43.1円×4062個=17万5072円) ハ-1号サイズ小(LC601) 15万2348円 (28円×5441個=15万2348円) ニ号サイズ大(LC1000) 13万3585円 (51.3円×2604個=13万3585円) ニ号サイズ中(LC800) 29万0537円 (43.1円×6741個=29万0537円) ニ号サイズ小(LC600) 18万3176円 (28円×6542個=18万3176円) 合計 232万6028円 (13万8047円+32万1244円+10万4055円+15万6376円+34万8881円+12万9640円+16万1954円+3万1113円+17万5072円+15万2348円+13万3585円+29万0537円+18万3176円=232万6028円) 被告らは、被告服部製鏡では、売掛金に対する返品及び歩引の割合は、約1.8%であり、被告服部製鏡が得る利益の割合は、これを差し引いた98.2%であるから、これを乗じた金額が、被告服部製鏡が最終的に得た利益である旨主張する。しかし、乙第23号証及び弁論の全趣旨によれば、ここでいう返品及び歩引の割合は、売掛金に対するものであり、この割合を、被告製品の販売額から原価を差し引いて得た利益額から更に差し引くのは相当ではない。また、本件訴訟に提出された全証拠及び弁論の全趣旨により認められる諸般の事情を考慮すると、ここでいう返品及び歩引は、利益を算出する過程で売上から差し引いた経費の中において既に評価されているものと認めるのが相当である。したがって、この点に関する被告らの主張は、採用することができない。 (13)(被告ランリイの利益) ア(ア) 甲第20号証の1、2及び弁論の全趣旨によれば、被告ランリイの粗利益(売上額から仕入額を差し引いた額)は、別紙第1-2表(ハ-2号(PC1100、PC1101)を除く。)のとおりであったことが認められる。 前記(9)のとおり、被告ランリイは、平成10年9月22日から、不正競争防止法2条1項3号、4条に基づく損害賠償責任を負う。 (イ) 別紙第1-1表、第1-2表によれば、ハ-1号サイズ大(LC1001、PC1105)、ハ-1号サイズ中(LC801)、ハ-1号サイズ小(LC601)、ニ号サイズ大(LC1000)、ニ号サイズ中(LC800)、ニ号サイズ小(LC600)は、平成10年9月に販売されているが、同月22日以降に販売された分についての粗利益は明らかではない。そこで、同日以降販売された粗利益は、日割りによって算出するのが相当である。平成10年9月の被告ランリイの粗利益のうち、同月22日以降の9日間の粗利益は、次のとおり認めるのが相当である。 ハ-1号サイズ大(LC1001) 1万0121円 (3万3740円×9日/30日=1万0121円) ハ-1号サイズ大(PC1105) 4374円 (1万4580円×9日/30日=4374円) ハ-1号サイズ中(LC801) 2万1823円 (7万2744円×9日/30日=2万1823円) ハ-1号サイズ小(LC601) 1万2191円 (4万0638円×9日/30日=1万2191円) ニ号サイズ大(LC1000) 1万8391円 (6万1305円×9日/30日=1万8391円) ニ号サイズ中(LC800) 2万1328円 (7万1096円×9日/30日=2万1328円) ニ号サイズ小(LC600) 1万6944円 (5万6481円×9日/30日=1万6944円) (ウ) 上記粗利益を含め、平成10年9月22日以降の被告ランリイの粗利益をまとめると、別紙第1-4表のとおりとなる。なお、前記(11)イ(ア)dのとおり、ニ号サイズ小(LC600)の販売数量は、第1-1表及び前記(11)イ(ア)a記載の6547個よりも5個少ない6542個と認められるから、この差の5個分についても、ニ号サイズ小(LC600)の粗利益の算出に当たり差し引くこととし、ニ号サイズ小(LC600)の平成10年9月22日から平成12年7月末日までの粗利益合計の35万3994円の5/6547に当たる270円を差し引くこととする(35万3994円×5/6547=270円)。 そうすると、平成10年9月22日以降の被告ランリイの各被告製品ごとの粗利益は、次のとおりであり、その合計は354万5476円である。 イ号サイズ大(PC55) 17万9740円 イ号サイズ中(PC53) 42万8841円 イ号サイズ小(PC51) 22万5730円 ロ号サイズ大(PC54) 25万9985円 ロ号サイズ中(PC52) 491001円 ロ号サイズ小(PC50) 25万5468円 ハ-1号サイズ大(LC1001) 7万5451円 ハ-1号サイズ大(PC1105) 17万2039円 ハ-1号サイズ中(LC801) 21万2043円 ハ-1号サイズ小(LC601) 23万3774円 ニ号サイズ大(LC1000) 15万6196円 ニ号サイズ中(LC800) 50万1484円 ニ号サイズ小(LC600) 35万3724円 合計 354万5476円 (17万9740円+42万8841円+22万5730円+25万9985円+491001円+25万5468円+7万5451円+17万2039円+21万2043円+23万3774円+15万6196円+50万1484円+35万3724円=354万5476円) イ 本件訴訟に提出された全証拠及び弁論の全趣旨により認められる諸般の事情を考慮すると、被告ランリイの粗利益から変動経費を控除した利益は、上記粗利益の70%に当たる248万1833円と認めるのが相当である。 (354万5476円×70/100=248万1833円) (14)(損害額のまとめ) 以上によれば、原告が被告服部製鏡に対して請求し得る損害賠償の額は、意匠法39条1項に基づき125万0500円又は不正競争防止法5条1項に基づき232万6028円であると認められるところ、原告は多額の方を請求する趣旨であるから、原告の被告服部製鏡に対する請求は、232万6028円につき認められる。 原告が被告ランリイに対して請求し得る損害賠償の額は、意匠法39条1項に基づき125万0500円又は不正競争防止法5条1項に基づき248万1833円であると認められるところ、原告は多額の方を請求する趣旨であるから、原告の被告ランリイに対する請求は、248万1833円につき認められる。 5 よって、本訴請求は、次の請求の限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条、64条本文、65条1項を、仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 (1) 被告服部製鏡に対する本件意匠権に基づくイ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品の製造、販売及び販売のための展示の差止めの請求 (2) 被告ランリイに対する本件意匠権に基づくイ号製品、ロ号製品、ハ-1号製品及びニ号製品の販売及び販売のための展示の差止めの請求 (3) 被告服部製鏡に対する不正競争防止法2条1項3号、4条、5条1項に基づく損害賠償232万6028円及びこれに対する不法行為(不正競争)の後である平成12年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払の請求 (4) 被告ランリイに対する不正競争防止法2条1項3号、4条、5条1項に基づく損害賠償248万1833円及びこれに対する不法行為(不正競争)の後である平成12年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払の請求 |
裁判長裁判官 | 小松一雄 |
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裁判官 | 中平健 |
裁判官 | 田中秀幸 |