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関連審決 無効2000-35001
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  創作容易(容易の創作) /  広く知られた /  記載された意匠 /  意匠の属する分野 /  通常の知識を有する者 /  商慣行上の転用 /  登録意匠 /  無効審判 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 193号 審決取消請求事件
原告 株式会社マルエーニット
訴訟代理人弁理士 森本義弘
同 板垣孝夫
同 笹原敏司
同 原田洋平
被告 イイダ靴下株式会社
訴訟代理人弁理士 平井安雄
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/12/04
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が無効2000-35001号事件について平成13年3月27日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、意匠に係る物品を「温熱サポーター」とする登録第978059号意匠(平成6年10月11日意匠登録出願、同9年1月10日意匠登録、以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。被告は、平成12年4月3日に本件登録意匠について無効審判を請求し、特許庁は、これを無効2000-35001号事件として審理し、新たに発見した無効理由を通知(同年12月12日発送)して原告及び被告に対して意見を申し立てる機会を与えたうえ、同13年3月27日に「登録第0978059号の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は同年4月9日に原告に送達された。
2 審決の理由の要旨 審決の理由は、別紙審決書の理由写しのとおりである。その要点は、平成12年12月12日付けで通知された下記の無効理由(審決の理由欄の第三 当審の判断の「2.当審の無効理由」)のとおり、本件登録意匠は、日本国内において広く知られた形状を、当業者であれば極めて容易に着想し得る医療用の「温熱サポーター」とした程度のものというべきであり、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において広く知られた形状模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから、意匠法3条2項の規定に該当し、意匠登録を受けることのできない意匠であるというにある。
(無効理由) 本件登録意匠の形態は、全体が、厚手の伸縮性を有する布地を、略「く」の字状を呈する扁平な筒状体に形成し、その挿入部及び出口の縁部を細幅のゴム編み状に形成したものであり、その使用状態においては、足首、踵及び足の甲部を密着して被覆するいわゆる「つま先部をカットした靴下状の形状」を、温熱サポーターとしたものであるが、この種の物品の分野においては、甲第10号証(審決書添付の別紙第二参照)、甲第9号証(審判甲第6号証)、甲第6号証(審判甲第3号証)により認められる事実を総合すると、本件登録意匠の出願前に、各種のサポーターを医療に用いること、また、それを遠赤外線素材を用いた温熱サポーターとすることは、当業者において広く知られていたことが認められる。
本件登録意匠形状については、本件登録意匠の出願前、平成5年3月1日に特許庁が受け入れた早川繊維工業株式会社発行のカタログ「武道」(甲第11号証)の53頁に記載された「かかとサポーター」(意匠課公知資料番号HC05004201号、審決書添付の別紙第三参照)、及び、平成4年10月15日に特許庁が受け入れた台湾所在のHUNTEX CORPORATION発行のカタログ「SPORTING PROTECTORS」(甲第12号証)の13頁に記載された「運動用足首サポーター」(意匠課公知資料番号HD04016621号)に、本件登録意匠形状に酷似した「つま先部をカットした靴下状の形状」が所載されていることから、本件登録意匠形状は、日本国内において広く知られた形状といえる。
してみると、本件登録意匠は、日本国内において広く知られた形状を、当業者であれば、極めて容易に着想し得る医療用の「温熱サポータ」とした程度のものであるというべきであり、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において広く知られた形状模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるといわざるを得ないから、意匠法3条2項の規定に該当し、その登録は無効とすべきものである。
原告主張の取消事由の要点
審決は、甲第11及び第12号証に掲載されたサポーターの形状が日本国内において広く知られた形状(以下「周知の形状」ということがある。)であるとした点に認定の誤りがあり(取消事由1)、仮にその形状が周知であったとしても、これに基づいて本件登録意匠が容易に創作することができるものであるとした点において創作性の判断を誤ったものである(取消事由2)から、違法として取消しを免れない。
1 取消事由1(周知形状についての認定の誤り) 甲第11、第12号証は、私企業の商品カタログにすぎず、これらのカタログが本件登録意匠の出願前に特許庁に受け入れられたということのみをもってしては、
そこに掲載されたサポーターの形状が周知であったということはできない。
審決は、「私企業の商品カタログであっても、それが当業者間に広く頒布されて広く知られているものであれば、創作容易性の判断の根拠となり得るものであり、
また、そのカタログが周知のものとまではいえないものであったとしても、それらが多数集積する場合には広く知られた状態となり得るものであるから、そこに記載されている形態は、当業者において、「日本国内において広く知られた形状」というべきである。」として、「つま先部をカットした靴下状の形状」が周知の形状であると認定した(審決書「4.当審の無効理由について」)。しかし、カタログが特許庁に所蔵されている事実のみをもっては、それらが「広く頒布されて広く知られた」とも「多数集積した」ともいうことはできないから、カタログに記載された「つま先部をカットした靴下状の形状」が周知であると認めることはできない。
2 取消事由2(創作容易性についての判断の誤り) 審決は、本件は靴下(サポーター)を医療目的に供することがごく普通に行われる業界において周知の靴下(サポーター)の形状に温熱効果を付加して医療目的に転用したものであり、商慣行上の転用の場合に該当する旨判断した(審決書「4.当審の無効理由について」)。しかし、本件登録意匠に係る物品である「温熱サポーター」は医療用サポーターであり、治療の必要性に応じてその形態を創作するものであるから、靴下(サポーター)の形態を単に転用(借用)して創作されたものではない。本件登録意匠は、冬場における踵のひび割れを治すために、踵部分に通気を遮断するナイロン製の布を挟み込むなどの構成を有する医療用サポーターであり、スポーツ用のサポーターとは用途、機能が全く異なる。 甲第11号証に示された「剣道かがとサポーター」(人が履いている状態で撮影されている。)は、実際には、甲第13号証の2(「剣道かがとサポーター」が包装された状態で撮影した写真)が示すとおり、筒状に形成され中央に分厚いスポンジが縫い込まれているものである。この意匠から本件登録意匠が容易に創作することができたなどと到底言えるものではない。また、甲第12号証の商品カタログは台湾で印刷されたもので、欧米用の販売活動のために制作されたものと考えられ、
掲載された「運動用足首サポーター」が日本国内において販売されて、医療用サポーターにかかわる当業者の間で周知になっていたとは考えられない。
被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であり、審決を取り消すべき理由はない。
1 取消事由1に対して 「つま先部をカットした靴下状の形状」は、甲第6ないし第9号証、甲第11、
第12号証のいずれにも示されている。上記甲号各証はいずれも私企業のカタログであるが、このような商品カタログが多数集積されているという事実から、上記形状が当業者において「日本国内において広く知られた形状」と認めた審決の認定は正しい。
判例は、公知の形状についての複数の証拠が合わされることによって当該形状を周知形状と推認し得ること、引用された形状登録意匠の出願の相当前から公知になっている事実から当該形状を周知形状と認め得ること、を認めている。本件において、上記要件は十分認められるから、甲第10、第11号証に記載された意匠が周知の形状を表しているとした審決の認定に誤りはない。
2 取消事由2対して 本件登録意匠は、温熱サポーターの物品の一般的な形態として意匠公報(甲第2号証)に具体的に表されているのみである。原告が主張するような用途、機能は、
周知のサポーターの形状に温熱効果を付与して「温熱サポーター」とすることが創作容易性であるとした審決の判断の正当性を揺るがすものではない。
当裁判所の判断
1 本件登録意匠について 甲第2号証(本件登録意匠の意匠公報)によれば、本件登録意匠は、(1)意匠に係る物品を「温熱サポーター」とし、(2)その形態は、審決書添付の別紙第一に示されたとおりのものであって、全体が、厚手の伸縮性を有する布地を略「く」の字状を呈する扁平な筒状体に形成し、両端部(サポーターの挿入側とつま先側)に細幅のゴム編み状の収縮部を設けてなり、使用状態(同公報中の使用状態を示す参考図参照)において、足首、踵及び足の甲部を密着して被覆するいわゆる「つま先部をカットした靴下状の形状」であることが認められる。
2 証拠により認められる事実 本件証拠によれば、本件登録意匠の意匠登録出願前に知られたサポーターの形状について、次の各事実が認められる。
(1) 甲第11号証によれば、平成5年3月1日に特許庁が受け入れた早川繊維工業株式会社発行のカタログ「武道」(審決の引用意匠(4)、審決書添付の別紙第三参照)の53頁には、足首、踵及び足の甲部を密着して被覆する「つま先部をカットした靴下状の形状」の足首用サポーター(「剣道かがとサポーター」)が掲載されていることが認められる。同サポーターは、伸縮性のあるニット地を筒状体に形成して成り、サポーターの両端部(挿入側とつま先側)に所定幅の収縮部を有するものであって、その形状は、本件登録意匠に酷似しているものと認められる。なお、甲第13号証の1、2及び弁論の全趣旨によれば、同サポーターは、全体が筒状をなしており、畳み方によっては全体を略「く」の字状の扁平な筒状体とすることができることが認められる。
(2) 甲第12号証によれば、平成4年10月15日に特許庁が受け入れた台湾所在のHUNTEX CORPORATION発行のカタログ「SPORTING PROTECTORS」の13頁(審決の引用意匠(5))には、足首、踵及び足の甲部を密着して被覆する「つま先部をカットした靴下状の形状」の足首用サポーター(「ANKLE BRACE」)が掲載されていることが認められる。同サポーターは、伸縮性のあるニット地を筒状体に形成して成り、サポーターの両端(挿入側とつま先側)の一端側に所定幅の収縮部を有するものであって、その形状は、本件登録意匠に酷似していると認められる。
(3) 甲第6号証(審判甲第3号証)によれば、1987年に西独パルデス・コンプレッション・ストッキング製造会社日本総代理店日本パルデス社が発行したカタログには、医療用のサポートストッキング類が掲載されており、その11頁に「つま先部をカットした靴下状の形状」の「かかと用ソックス」(審決の引用意匠(3))が掲載されていることが認められる。
(4) 甲第7号証(審判甲第4号証)によれば、1981(昭和56)年7月3日に特許庁に受け入れられた資料(内国カタログNO.50・JMI医科器械図録1981・日本医科器械学会)には、全体が略「く」の字状に屈曲し、本体の開放された両端に所定の幅のゴム編み状収縮部を有する「ヒールボー(ひじ・かかとプロテクター)」が掲載されていることが認められる。
(5) 甲第8号証(審判甲第5号証)によれば、1981(昭和56)年12月4日に特許庁に受け入れられた資料(資料番号P95 56052665)には、
「Seventeen」なる名称で、伸縮性のある布地で形成された「つま先部をカットした靴下状の形状」のサポーターが掲載されていることが認められる。
(6) 甲第9号証(審判甲第6号証)及び弁論の全趣旨によれば、砂山靴下株式会社によって平成6年8月1日以降遅くとも本件意匠登録出願前に公然と販売されていたと推認される足首サポーター(審決の引用意匠(2))は、その商品シール(「遠赤外線素材+天然シルク100% 足首サポーター 足元をやさしくあたためます」との表示と共に製品が図示されている。)に示されるとおり、全体がニット地で形成され、両端部及び中央部に所定幅のゴム編み状収縮部を有し、「つま先部をカットした靴下状の形状」のものと認められる。
(7) 甲第10号証によれば、平成2年12月19日に発行された実開平2-149257号公報(審決の引用意匠(1))には、第1図に「酸化マグネシウムからなる遠赤外放射層と、該遠赤外放射層を担持する布地とからなる遠赤外線サポータ」の実施例が記載されていることが認められる(同公報は、審決書に別紙第二として添付されている。) 3 取消事由1についての判断 (1) 前記2で認定した各事実によれば、甲第11、第12号証に示されたサポーターの「つま先部をカットした靴下状の形状」が日本国内において広く知られた形状であるとした審決の認定は、正当であり、誤りがあるとは認められない。
すなわち、足首用サポーターやサポートストッキング等における「つま先部をカットした靴下状の形状」は、甲第11、第12号証のカタログに示されているのみならず、本件登録意匠の意匠登録出願より10年以上前である昭和56年に特許庁が受け入れた資料(甲第7、第8号証)にも既に示されており、このことと、「つま先部をカットした靴下状の形状」のサポーターを図示したカタログ等が他にも複数存在したこと(甲第6、第9号証)を併せ考慮すると、「つま先部をカットした靴下状の形状」は、サポーターに関する意匠の分野において、日本国内において広く知られた形状であると認められる。
(2) 原告は、甲第11、第12号証のカタログが特許庁に受け入れられたという事実だけをもってしては、これらの私企業のカタログに掲載されたサポーターの形状が周知であると認めることはできないと主張する。しかし、甲第11、第12号証の各カタログの他にも、本件登録意匠の出願よりも相当前から、足首用サポーターの形状を「つま先部をカットした靴下状の形状」としたものがカタログに掲載されており、実際の商品として国内で販売されていたものもあったことは、前記認定のとおりである。甲第6ないし第9号証及び第11、第12号証から認められる事実を総合すると、「つま先部をカットした靴下状の形状」が日本国内において広く知られた形状であることは、十分推認し得るというべきであり、これを覆すに足りる証拠はない。よって、原告主張の取消事由1は、理由がない。
4 取消事由2についての判断 (1) 甲第6、第9、第10号証及び弁論の全趣旨によれば、各種のサポーターを医療に用いること、また、それを遠赤外線素材等を用いた温熱サポーターとすることは、本件登録意匠の出願前に、当業者において広く知られていたことが認められる。また、「つま先部をカットした靴下状の形状」のサポーターにおいて、全体を、厚手の伸縮性を有する布地で略「く」の字状を呈する扁平な筒状体に形成し、
その開放端部にゴム編み等で所定幅の収縮部を設けることは、甲第8、第9号証に示されたサポーターにも見られるとおり、ごく普通に行われることであると認められる。
そうすると、本件登録意匠は、足首用サポーターやサポートストッキング等において周知の形状である「つま先部をカットした靴下状の形状」を、当業者であれば極めて容易に着想し得る医療用の「温熱サポーター」とした程度のものというべきであり、前記周知の形状に基づいて当業者が容易に意匠の創作をなし得た意匠(平成10年改正前の意匠法3条2項の規定に該当する意匠)であるといわざるを得ない。
(2) 原告は、スポーツ用のサポーターと本件登録意匠に係る物品である「温熱サポーター」(医療用)とは用途及び機能が異なるものであるから、審決の「本件は、靴下(サポーター)を医療目的に供することがごく普通に行われる業界において、周知の靴下(サポーター)の形状に温熱効果を付加して医療目的に転用したものである。」旨の認定は誤りであると主張する。しかしながら、本件登録意匠は、
意匠に係る物品を「温熱サポーター」とし、意匠の形態を本件意匠公報(甲第2号証)の図面(図面代用写真)に示したとおりとしたものであって、同公報の図面からは、本件登録意匠が「医療用」のサポーターであることに由来する特別な形態を有するものとは認められず、サポーターが、スポーツ用・医療用の別を問わず、その形態及び機能において基本的に共通するものであることをも考慮すると、サポーターにおいて周知の形状と認められる「つま先部をカットした靴下状の形状」のものに温熱効果を付加して「温熱サポーター」とすることは、当業者が極めて容易になし得ることと認められる。してみると、本件登録意匠は、周知の形状に基づいて当業者が容易に創作し得た意匠と評価せざるを得ず、原告の主張は理由がない。
5 結論 以上のとおりであるから、原告の取消事由1及び2はいずれも理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見いだすことができない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実
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