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関連審決 審判1999-35268
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  一意匠一出願(7条) /  3条1項2号 /  3条1項3号 /  頒布された刊行物 /  記載された意匠 /  意匠の類否 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) /  無効審判 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 123号 審決取消請求事件
原告 大湖産業株式会社
訴訟代理人弁理士 楠本高義
被告 株式会社パロマワークス
被告 三宅製簾株式会社
両名訴訟代理人弁理士 宮崎伊章
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/11/28
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第35268号事件について平成13年2月13日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告らの負担とする。
2 被告ら 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、意匠に係る物品を「カーテン地」とし、その形態を別添審決謄本別紙第一記載のとおりとする登録第1005599号意匠(平成8年1月26日登録出願、平成9年12月19日設定登録、以下「本件意匠」という。)の意匠権者である。
被告らは、平成11年6月2日、上記意匠登録につき無効審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成11年審判第35268号事件として審理した上、
平成13年2月13日に「登録第1005599号の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は同月28日原告に送達された。
2 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件意匠と、その登録出願前に国内において頒布された刊行物である1996年(注、「1992年」の誤記と認める。)8月26日株式会社東急ハンズ発行の「HANDS SELECTION 創造素材カタログ」70頁に「和紙風すだれ」として所載のカーテン地の意匠(別添審決謄本別紙第二記載のとおりの形態。以下「引用意匠」という。)とは、意匠に係る物品が一致し、形態においても、その形態上の特徴を最もよく表す要部が共通するから、両意匠は類似するものであり、本件意匠は、意匠法3条1項3号の規定に違背して登録されたものとして、その意匠登録は無効とすべきものとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決の理由中、本件意匠及び引用意匠の認定(審決謄本2頁21行目〜3頁7行目)並びに本件意匠と引用意匠との共通点及び差異点の認定(同3頁9行目〜32行目)は認める。
審決は、本件意匠と引用意匠との類否の判断を誤り(取消事由)、両意匠が類似するとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(類否の判断の誤り) (1) 審決は、引用意匠を「上辺につり下げのための横桟状枠体とその左右寄りに吊り下げ金具などを取付けた上下方向に巻き上げ可能のロールカーテンに用いられているカーテン地の意匠であって、その形態は、水平方向に延びる細棒を上下に等間隔平行に配し、その水平細棒を吊り下げる上下方向に延びる細紐を左右に水平細棒間の略倍強の長さの等間隔で配して、複数等間隔の水平細棒と複数等間隔の垂下細紐の交差から成る格子状の簾に不織布を張り付けてなる態様のものである」(審決謄本3頁16行目〜22行目)が、「格子状の簾を張り付けた紙地が背面側1枚のみか否か、詳細には明らかではない」(同頁30行目〜31行目)として、
引用意匠を特定しないまま本件意匠との類否の判断をしている。
しかし、意匠の類否を判断するに当たって、引用意匠を特定することは必須というべきであり、引用意匠を特定することなく本件意匠との類否の判断をしたことは違法というべきである。
なお、引用意匠に係る「和紙風すだれ」の現物を入手することはできなかったが、実際には、格子状の簾の両面に和紙を張り付けたものであり、このことは、原告の元従業員で、株式会社東急ハンズに対し引用意匠に係る「和紙風すだれ」を提供する業務に従事していたB作成の陳述書(甲第3号証)にあるとおりである。また、引用意匠のカタログの写真(乙第1号証)を子細に観察すれば、すだれ上部の横木の色彩と比較して、水平細棒の色彩が若干白くなっていること、すだれの一部を巻き取った下部においては、水平細棒が裏面側の厚みの厚い和紙に覆われていることを看取することができ、引用意匠が格子状の簾の両面に厚みの異なる和紙を張り付けたものであることは明らかである。
(2) また、審決は、「本件登録意匠(注、本件意匠)も、図面上背面側には正面側の格子状の簾が表されていないものの、紙地が和紙であることから、実施物の背面側に、正面側より強い光源を当てた場合には特に鮮明に、正面側の格子状の簾が透けて現れることは当然想定されるものであって、また甲号意匠(注、引用意匠)も、紙地が白色の不織布であることから、たとえ格子状の簾の背面側のみでなく正面側にも不織布が貼られているものであるとしても、透光性のある紙地であるから、使用時の明るい光源のもとで現れる態様においては、格別顕著な差異には現れないものでもあって、その差異点が類否判断に与える影響は微弱に過ぎない」(審決謄本3頁33行目〜4頁1行目)として、本件意匠と引用意匠との類否の判断に当たって特殊な条件を設定しているが、このような特殊な条件下で類否の判断を行うことは意匠の本質を見失うものであり、違法というべきである。
(3) さらに、審決は、本件意匠と引用意匠との共通点として、「両者は、共に上下方向に巻き上げ可能のカーテン地の意匠であって、意匠に係る物品が一致し、
その形態については、水平方向に延びる細棒を上下に等間隔平行に配し、その水平細棒を吊り下げる上下方向に延びる細紐を左右に水平細棒間の略倍強の長さの等間隔で配して、複数等間隔の水平細棒と複数等間隔の垂下細紐の交差から成る格子状の簾に紙地を張り付けてなる態様」(審決謄本3頁23行目〜28行目)を認定した上、「前記共通するとした点は、両意匠に係る形態の全体の基調を形成し、且つ、両意匠の特徴を表象する主要なものであって、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものと言うべきである」(同4頁6行目〜8行目)とするが、誤りである。
すなわち、審決の上記判断は、「複数等間隔の水平細棒と複数等間隔の垂下細紐の交差から成る格子状の簾」の片面に紙地を張り付けて成る態様も、両面に紙地を張り付けて成る態様も類似することをいうものであるが、簾の両面に紙地を張り付けて成る態様のカーテン地は、いわば提灯をイメージするものとして従来から存在していたところ、このようなカーテン地は、@水平細棒の表面地色が和紙の色と同化して、全体として和紙が主体となって看取されることになり、水平細棒と和紙とのコントラストがなくなる、A水平細棒を挟む部分の前後の和紙が十分接着されずにすき間が生じやすく、当該部分の水平細棒の水平方向の輪郭がぼやけてしまうなどの問題があり、純和風の日本建築の内装品には適していても、洋風の現代建築の内装品には不向きであった。そこで、原告は、試行錯誤の末、格子状の簾の片面にのみ和紙を配した本件意匠を創作したものであり、これによって洋風の現代建築の内装品に適したカーテン地が得られたのである。
このように、格子状の簾の片面に紙地を張り付けて成る態様か、両面に紙地を張り付けて成る態様かという点は、微差という程度のものではなく、水平細棒を直接看取することができるか否かに関わり、看者に大きなインパクトを与えるものである。
被告らの反論
1 審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(類否の判断の誤り)について (1) 原告は、引用意匠は、格子状の簾の両面に和紙を張り付けたものである旨主張するが、仮に、簾の両面に和紙又は不織布の紙地が張り付けられていた場合、
簾の巻いた部分(裏面)と巻かれていない部分(表面)とで、水平細棒の木質色に明暗の差がほとんど生じないはずであるところ、引用意匠のカタログの写真(乙第1号証)では、明らかにこの明暗の差が生じていること、同写真においては、簾の最上部の横木と表面の水平細棒とで明暗の差がほとんどないこと等から、引用意匠は簾の片面(裏面)のみに紙地が張られているものというべきである。このことは、写真撮影の専門家の立場から引用意匠のカタログの写真を分析したC作成の書面(乙第2号証)にあるとおりであり、また、簾の片面のみに紙地を張った態様のカーテン地の写真(乙第3号証、第5号証の2、第6号証の1、2)と、紙地が簾の両面に張られているカーテン地の写真(乙第4、第5号証の1)とを対比すれば、両者の違いは判然としており、引用意匠のカタログの写真が前者とほぼ一致していることからも基礎付けられるものである。
(2) また、原告は、審決が引用意匠を特定することなく本件意匠との類否判断をした違法及び特殊な条件下で類否判断をした違法をいうが、審決は、透光性を有する紙地の素材上の特殊性に基づき、当該紙地が片面か両面かにかかわらず、意匠の類否判断に与える影響は微弱であると判断しているのであるから、審決の判断を誤りということはできない。
(3) さらに、原告は、格子状の簾の片面に紙地を張り付けて成る態様か、両面に紙地を張り付けて成る態様かという点は看者に大きなインパクトを与える旨主張するが、この主張は、引用意匠が後者の態様であることを前提とするものであるところ、引用意匠が前者の態様であることは上記のとおりであるから、その前提において失当というべきである。
当裁判所の判断
1 取消事由(類否の判断の誤り)について (1) 原告は、審決が、引用意匠は格子状の簾の両面に紙地を張り付けたものか、片面のみに紙地を張り付けたものかを特定することなく、本件意匠との類否の判断をしたのは違法である旨主張する。
しかし、意匠の類否判断に際して、判断対象となる意匠との対比のために引用された意匠が、その具体的な記載態様等によって、形状模様又は色彩の一部を確定し得ない場合があることは当然であって、その場合に、当該引用に係る意匠として特定し得る限度で類否判断を行ったとしても、直ちに違法ということはできない。なお、意匠の形態の一部を特定することなくした類否判断が、その具体的な判断内容において誤りがあるかどうかは別論であるが、この点は後述するとおりである。
(2) 次に、原告は、引用意匠は、格子状の簾の両面に和紙を張り付けた態様である旨主張するので、引用意匠のカタログの写真及び説明の記載(乙第1号証)に基づいて、この点を検討する。
まず、同カタログには、引用意匠に係る「和紙風すだれ」について、「和紙を思わせる不織布は、ソフトなイメージながらも丈夫で長持ち。和風、洋風どちらの部屋にもマッチします」との説明の記載があり、引用意匠に係る「和紙風すだれ」には不織布が用いられていることは明らかであるが、当該記載からは、これが簾の両面に張られているのか、片面だけであるかは明らかでない。
そこで、同カタログの写真を見るに、この写真は比較的小さい上、写真印刷の精度上の限界もあり、厳密に色彩等を確定することは困難であるが、上記写真では、カーテン地の下部は一部巻き上げられた状態で撮影されているところ、巻き上げられていない上部、すなわち表面が見えている部分の13本の水平細棒を見ると、上から2本目のもの及び13本目のものはやや不鮮明ながら、それ以外の水平細棒については、最上部の幅広の横木(横桟状枠体)と同様、その色彩及び素材の質感から、木材又は竹材であることが容易に看取し得るものであり、その上から和紙又は不織布を張ったもの(例えば、乙第4号証、同第5号証の1)と比較して、
木材又は竹材の色彩及び質感が明りょうで、輪郭もぼやけることなく比較的鮮明に現れている。また、上記表面の水平細棒と、巻き上げられている下部、すなわち裏面が見えている部分の水平細棒を比較すると、裏面側の水平細棒よりも表面側の水平細棒の方が、シートの白い地色との色彩のコントラストが明りょうに現れていることが認められる。
そして、このような水平細棒の見え方の特徴を、簾の両面に不織布を張り付けた参考品の写真(乙第5号証の1)及び簾の裏面にのみ不織布を張り付けた参考品の写真(同号証の2)との対照において検討すると、明らかに後者に近いものということができる。なお、上記のとおり、引用意匠のカタログの写真(乙第1号証)において、上から2本目及び13本目の水平細棒はやや不鮮明であるが、特定の水平細棒のみが不鮮明であることは、簾の表面の全面に紙地が張られているかどうかとは直接関係のないことであって、単に光線の反射の影響等によるものにすぎないものと解される。
以上の認定判断を総合すると、乙第1号証のカタログの写真から見る限り、引用意匠は、木材又は竹材の水平細棒及び垂下細紐から成る格子状の簾の裏面に不織布を張り付けたものとして特定されるべきものであって、更にその表面にも不織布等の紙地が張り付けられているかどうかは必ずしも明らかでないが、仮に、
これが存在するとしても、簾の色彩及び質感が損なわれないようなごく薄い特殊な紙地が用いられているものと推認するのが相当である。
なお、原告は、B作成の陳述書(甲第3号証)は、引用意匠が簾の両面に和紙を張り付けたものであることを立証するものであると主張するが、その記載に係る「和紙調スクリーン」が引用意匠に係る「和紙風すだれ」と同一のものかどうか明らかでなく、仮に、同一のものであるとしても、甲第3号証中の「ヒゴ(注、
水平細棒に相当するものと解される。)の美しさを強調するため、表側の紙のみを可能なかぎり薄くし、新鮮なイメージを強調したいとのことでした。・・・紙を薄くしてヒゴに色をつけたり、紙をぬらしてできるだけヒゴが強調するよう努力したものです」との記載は、上記認定と矛盾するものではない。
(3) そこで、以上の認定に基づいて、本件意匠と引用意匠との類否について検討する。
原告は、格子状の簾の片面に紙地を張り付けて成る態様か、両面に紙地を張り付けて成る態様かという点は、水平細棒を直接看取することができるか否かに関わり、看者に大きなインパクトを与える旨主張するところ、確かに、乙第4号証及び同第5号証の1の写真のように、格子状の簾の両面に通常の和紙や不織布を張り付けた態様のものであれば、原告の主張するように「いわば提灯をイメージするもの」であって、簾を構成する水平細棒は和紙又は不織布を通してしか看取することができず、そのため、簾の色彩や質感を感得することは困難となり、簾が表面に露出している本件意匠とは、その受ける美感を異にすると考えられる。
しかしながら、前示のとおり、引用意匠は、木材又は竹材の水平細棒及び垂下細紐から成る格子状の簾の裏面に不織布を張り付けたものとして特定されるべきものであって、仮に、その表面に不織布等の紙地が張り付けられているとしても、簾の色彩及び質感が損なわれないようなごく薄い特殊な紙地が用いられているものであるから、上記乙第4号証及び同第5号証の1の写真のような形態のものとは異なり、格子状の簾を構成する水平細棒の色彩や質感を看者に感得させることができる点において、本件意匠との差異は微細なものにとどまるというべきである。
他方、本件意匠と引用意匠とは、審決の認定するとおり、「共に上下方向に巻き上げ可能のカーテン地の意匠であって、意匠に係る物品が一致し、その形態については、水平方向に延びる細棒を上下に等間隔平行に配し、その水平細棒を吊り下げる上下方向に延びる細紐を左右に水平細棒間の略倍強の長さの等間隔で配して、複数等間隔の水平細棒と複数等間隔の垂下細紐の交差から成る格子状の簾に紙地を張り付けてなる態様」との共通点(審決謄本3頁23行目〜28行目)を有し、このことは原告も自認するところであって、このような両意匠に共通する形態に基づき、意匠を全体として観察すると、水平細棒と垂下細紐から成る格子状の簾が裏地の表面に現れて、その色彩や質感が強調されることになり、この点が看者の注意を最も惹く特徴的な部分であると認めるのが相当である。
そうすると、両意匠の差異点は、このような特徴的な部分の共通点をしのぐものではなく、この部分を中心に意匠の全体を観察して両意匠が看者に異なった美感を与えるものではないというべきである。
なお、本件において、引用意匠とされる意匠法3条1項2号所定の「刊行物に記載された意匠」に該当するものは乙第1号証のカタログの写真のものであって、その被写体の現実の構造ではないから、上記構造が、格子状の簾の片面に紙地を張り付けて成るものか、両面に紙地を張り付けて成るものかは、直ちに本件の結論に影響を及ぼすものではなく、表面に上記のような紙地が張り付けられているものであるとしても、その差異は、意匠全体の美感において微差というに妨げない。
また、原告は、審決が、本件意匠と引用意匠との類否の判断に当たって特殊な条件を設定しているとして、その判断手法の違法を主張するところ、確かに、
審決の本件意匠と引用意匠との類否の判断中には、「実施物の背面側に、正面側より強い光源を当てた場合」(審決謄本3頁34行目〜35行目)、「使用時の明るい光源のもとで現れる態様においては」(同頁38行目〜末行)との前提に基づいて判断している部分がある。しかしながら、意匠の類否を判断するに当たっては、
意匠に係る物品の性質、用途、使用態様等も参酌した上、意匠を全体として観察することを要するところ、本件意匠及び引用意匠の意匠に係る物品はいずれもカーテン地であって、これを強い太陽光を背面側から受ける窓際等に吊して用いるのは通常の使用態様であると解される。そうすると、審決の上記判断は、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様等を参酌した観察として合理的なものであって、原告の主張するように「特殊な条件」ということはできない。加えて、審決は、上記のような使用態様での観察を踏まえつつ、両意匠を全体として観察した上で類否判断をしていること(同4頁6行目〜8行目)が明らかであるから、審決の判断手法において原告の主張するような誤りがあるとはいえない。
したがって、「本件登録意匠(注、本件意匠)と甲号意匠(注、引用意匠)とは、意匠に係る物品が一致し、形態においても、その形態上の特徴を最もよく表す要部が共通するものであるから、両意匠は類似する」(同4頁9行目〜11行目)とした審決の判断に誤りはない。
2 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利
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