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関連審決 審判1998-18507
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  視覚性 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  3条1項3号 /  頒布された刊行物 /  意匠の類似 /  意匠の類否 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 275号 審決取消請求事件
原告 ギブソンギター コーポレーション
訴訟代理人弁護士 関根秀太
同 石村善哉
同 達野大輔
同 渡辺由美
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 伊藤晴子
同 藤木和雄
同 茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/11/13
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年審判第18507号事件について平成13年1月31日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成8年1月17日にアメリカ合衆国においてした意匠登録出願に基づく優先権に基づき、同年7月15日、意匠に係る物品を「ギター」とし、その構成態様を審決書添付の別紙第一「本願の意匠」欄記載のとおりとする意匠(以下、「本願意匠」という。)について意匠登録出願をしたが、平成10年8月28日、拒絶査定を受けたので、これを不服として、同年11月26日、拒絶査定不服の審判を請求した。特許庁は、これを平成10年審判第18507号として審理した結果、平成13年1月31日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年2月17日に原告に送達された。なお、出訴期間として90日間が付加された。
2 審決の理由 審決は、別紙審決書の理由写しのとおり、本願意匠は、本願出願前に頒布された刊行物である荒井貿易株式会社発行のカタログ「Aria Pro2」第13頁所載の電気ギターの本体の意匠(以下「引用意匠」という。別紙審決書の写しに添付された別紙第二記載のとおり。)に類似し、両意匠に係る物品が共通であるから、意匠法3条1項3号に該当し、意匠登録を受けることができないとしたものである。
原告主張の審決取消事由
審決の理由中、「1.本願意匠」及び「2.引用意匠」は認める。「3.当審の判断」のうち、差異点(ア)及び(イ)の認定は認め、その余は争う。審決は、本願意匠と引用意匠の類否の判断を誤ったものである。すなわち、審決は、本願意匠と引用意匠の共通点として、以下の(1)の@からDを挙げるが、それらの共通点はギターとしての性質上必然的な構成であり、ギター一般の特徴として認識されて、看者の注意を惹くものではないから、これらの点が共通していることが両意匠の類似性に結びつくものではない。このような同種商品であれば当然備えている形状は、意匠の類否の判断にあたっては、これを捨象し、相違点が見る者に異なる美感を与えるかどうかが検討されるべきであるのに、同種商品であれば当然備えている形状を類否の判断において考慮している審決は誤りである(取消事由1)。また、審決は、
両意匠の差異点として、「ネック部と胴体部の長さの比及び胴体部縦横比において、本願意匠の胴体部の方が引用意匠のそれよりやや短く扁平に形成されている点(差異点(ア))、及び、「ヘッド部の上辺において、本願意匠は、中央部分がやや隆起しているのに対して、引用意匠は、ほぼ水平状である点(差異点(イ))を挙げたうえ、これらの差異点は、類否を左右する要素としては微弱なものであると結論づけているが、これらの差異点に係る本願意匠の特徴は、後述のように顕著な差異を有する部分であり、見る者に異なる美感を与える部分であるから、これを微弱なものとした審決の判断は誤りである(取消事由2)。
1 取消事由1(両意匠の共通点についての判断の誤り) 審決は、両意匠に共通する点として、@「両意匠の本体は、(中略)、ヘッド部、ネック部及び胴体部を結合してなる」ものであること、A-@「胴体部は、略瓢箪形状の肉厚板を基本とし、その上方左右を同形の略円弧状に等間隔に切り欠くことにより、上方左、中央、右に同長(同高)で先端を丸くした3本のホーン(角)部と、それらの間に2つの半円弧状の窪み部とを有する」こと、A-A「正面板のくびれ部(ウエスト部)の下方左右寄りに所謂「f字孔」状の模様を、正面視ハの字状に配設した」こと、B「ネック部を、胴体部中央ホーン部位置から、胴体部の縦幅より長い細幅の縦長方形板状に垂設した」こと、C「ヘッド部を、ネック部上辺に略縦長台形で下方を小弧状にえぐった形状に連設し、その上辺を波状としたものものであ(る)」点を挙げ、さらに、D「本体全体はその正面視を略左右対称に形成したものとした構成態様が主に共通する」と認定している。
しかし、@はギターを含む弦楽器すべてに共通する形状であり、A-@は、ギターを座って演奏する際にギターを足に載せて安定させ(瓢箪形状、胴体部左右の半円弧状の窪み部)、高い音を出すための胴体部分に近い位置の弦を押さえやすくする(胴体部上方の左右の切り欠き)るために必要な形状であり、A-A、Bも弦楽器であるギターに共通する形状であり、Cの「略縦長台形のヘッド部」及びヘッドの「下方を小弧状にえぐった形状」も多くのギターにおいて採用されている形状であり(上辺の形については、後記のように顕著な差異がある。)、さらに、Dもギターに共通の特徴である。
したがって、両意匠に共通する@ないしDの形状を類否の判断において考慮し、
これらの点が類否判断を支配するとした審決の判断は、誤りである。
2 取消事由2(両意匠の差異点についての判断の誤り) 上記の共通点がギターとしての一般的な特徴であって看者の注意を惹くものではない以上、従来のものとは異なる、(@)胴体部が、従来のものと異なり、ネック部の長さに比して低く形成され、ボディーが扁平になっているというデザイン(差異点(ア))、及び(A)ヘッド部の上辺を波形とし、かつこれを山形に上部に大きく突き出した形状としたデザイン(差異点(イ))の2点が一体として醸し出す印象が、引用意匠とは異なる印象を与える点として、重視されなければならない。審決がこれらの差異を「いずれの差異点も類否を左右する要素としては微弱なもの」と結論づけていることは誤りである。
そもそも、ギターについては、前述のとおり、その弦楽器としての性質上その形状が制限されており、このような制限の枠内で新たなデザインの開発に労力が注がれているのであり、上記性質とは関係なくデザインを行える部分についてはわずかな差異であっても、ギターを演奏する者にとっては重要な違いとして認識されるのであって、両意匠の差異点を過小評価してはならない。
差異点(ア)について、審決は、「請求人の主張によりはじめて気づく程度」であり視覚性が低いというが、胴体部の縦横比及び胴体部とネック部の長さの比を数値化すると、本願意匠の胴体縦:胴体横:ネック部の長さが1:0.89:1.43であるのに対し、引用意匠は、1:0.78:1.22であって、本願意匠は胴体縦に対して胴体横の長さが長く、したがって扁平であり、またネック部に比して胴体縦が短いという明らかな違いがあるのであって、この差異を微弱と評価するのは誤りである。
また、差異点(イ)について、審決は、「両意匠ともヘッド部自体を略同形としてその上辺を波状としたという強い共通感及び本体全体の骨格態様における強い共通感の中にあっては、この差は埋没してしまい目立たなくなる」と結論づけているが、ギターの胴体部から突き出したネック部のさらに先端に位置する上辺部は、見る者に強く印象を与える部分である。そして、骨格全体が共通することはすべてのギターについていえるのであって、共通部分の多さによって、かえって、ヘッド部の上辺のように比較的機能と関係なくデザインし得る箇所の差異は、強く認識されるのである。
したがって、差異点(ア)及び(イ)は、本願意匠と引用意匠の顕著な美感の差異を生じさせていることが明らかである。
以上のとおり、相違点に関する審決の判断は誤っており、両意匠が類似するとした審決は誤っている。
被告の反論の要点
1 取消事由1(両意匠の共通点についての判断の誤り)に対して 原告は、審決が挙げる本願意匠と引用意匠の共通点は、「ギターとしての性質上いわば必然的な構成であり、その弦楽器としての性質上形状が一定のものに制限されている」と主張するが、甲第2ないし第7号証及び乙第1ないし第11号証で明らかなように、本願意匠と引用意匠の共通点であるヘッド部、ネック部及び胴体部とは異なる様々な態様のものがある(特に、ヘッド部及び胴体部の態様において顕著である。)のであるから、原告の主張は失当である。ギターの分野において、ヘッド部、ネック部及び胴体部の形状について様々な態様のものが制作され、知られている中にあって、本願意匠と引用意匠のヘッド部、ネック部及び胴体部の形状が共通しているということは、両意匠の形態上の緊密性をより明らかにするものであり、両意匠が類似であることを免れないものであることを裏付けるものである。
また、原告は、両意匠が共通する構成態様は周知であり、「看者の注意を惹くものではないから、これらの点が共通していることが両意匠の類似性に結びつくものではない。このように同種物品であれば当然備えている形状は捨象し、これ以外で当該商品が有している形状に着目し、この相違点が見る者に異なる美感を与えるかどうかが検討されなければならない」と主張し、また、該共通する構成態様を「類否の判断において考慮している審決の判断は誤りである。」と主張する。
しかし、両意匠の共通する構成態様が、細部に関わる場合はともかく、本件の場合のように、正面部の態様に係る全体の基本的な骨格ともいうべき態様である場合は、看者が気が付かないとか注意を惹かれないなどということはあり得ず、さらに、たとえ、その部分が周知であるとしても、その部分が意匠の支配的部分を占め、意匠的まとまりを形成し、看者の注意を惹くときは、類否判断上の要部足りうることは、過去の多くの判決の示すところである。(平成12年(行ケ)第317号、昭和59年(行ケ)第134号、平成9年(行ケ)第138号、平成10年(行ケ)第207号参照) したがって、原告の主張は失当であり、審決の「両意匠において共通する前記構成態様をみると、そのほとんどが主要部の正面側の態様に係り、その骨格を形成していることから、意匠全体の基調を決定づけるところとなり、両意匠の類否判断を支配するといわなければならない。」とした判断に誤りはない。
審決は、一貫して両意匠の共通する構成態様(共通点@からD)の全体を、類否判断の対象と捉えて認定判断しているにもかかわらず、原告は、該共通する構成態様を個々の構成要素に分割してそれぞれを類否判断の対象から除外すべきと主張するが、個々の構成要素を総合した構成態様全体に言及していない点で失当である。
(1) 原告は、「両意匠の本体は、ヘッド部、ネック部及び胴体部を結合してなるものである」点(共通点@)について、「弦楽器すべてに共通する特徴であるから、ギターが弦楽器である以上これらの形状を有することは必然的であるから、かかる形状を類否の判断において考慮している審決の判断は誤りである。」旨主張する。
しかし、ヘッド部、ネック部及び胴体部それぞれが有する機能は、弦楽器として欠くべからざるものであるとしても、審決は、単にそれらの結合を共有することのみをもって、両意匠の類否を判断しているわけではなく、その有り様について、すなわち、両意匠の骨格ともいうべき大づかみな構成の認定を基に、より具体的な態様の認定を通じて、両意匠を比較検討し、両意匠の類否を判断しているのであるから、原告の主張は失当である。
(2) 原告は、胴体部において、「略瓢箪形状である点、即ち胴体部分の左右に窪みが設けられている点」(共通点A-@)は、「ギターという楽器の性質上当然に備わる形状である。」と主張する。
しかし、乙第5ないし第9号証で明らかなように、胴体部が略瓢箪形状とはいえない種々の形状のギターがあるのであるから、略瓢箪形状の態様は、ギターという楽器の性質上当然に備わる形状であるとはいえない。また、原告は、胴体部の「上方を略円弧状に切り欠くのもギターの演奏のために必要な形状である。」とも主張するが、この点に関しても、甲第2、第5号証、及び、乙第5号ないし第8号証で明らかなように、胴体部の上方を円形に切り欠いた態様でないものがあることから、原告の主張は失当である。
(3) 原告は、「f字孔」状の模様(共通点A-A)は、「弦楽器においてはこれらの特徴を必ず備えているものであり、同じく弦楽器としてのギターにも採用されている特徴である。」から、類否の判断において考慮するのは誤りであると主張する。
しかし、甲第4ないし7号証、及び、乙第1ないし第3号証、乙第5ないし第10号証で明らかなように、「f字孔」状の模様を有しないギターも種々あるのであり、「f字孔」状の模様は、ギターという楽器に必ず備わる特徴であるとはいえないから、原告の主張はその前提において失当である。
(4) 原告は、審決のいうネック部(共通点B)は、「すべてのギターに共通する形状である。」から、類否の判断において考慮するのは誤りであると主張する。
しかし、たとえ、ネック部が、ギターが備える当然の形状であるとしても、意匠を全体として観察し、両意匠の類否判断を検討する場合に、該部分を除外して類否判断をすることは許されず、ただ、そのような部分は、他のそうでない部分に比較して相対的に低い比重のものとして判断されるのである。そして、本件のネック部のように、全体の骨格を形成する基本的な構成に係わるような部分については、それを含めて類否判断をすべきであるから、原告の主張は失当である。
(5) 原告は、審決のいうヘッド部の形状(共通点C)は、「多くのギターにおいて採用されている形である。」から、類否の判断において考慮するのは誤りであるとし、ヘッド部の上辺は顕著な差異を有すると主張する。
しかし、たとえ、ヘッド部の形状が、多くのギターにおいて採用されている形状であるとしても、その部分を除外して類否判断をするべきでないことは上記(4)で述べたとおりであり、また、その差異点については、別途認定評価しているところ、
意匠全体を観察する場合は、その限られた部位のわずかな変形に係る差異がもたらす効果は、相対的に低いものといわざるを得ないから、原告の主張は失当である。
(6) 原告は、審決の言う本体全体を左右対称にした態様(共通点D)は、「ギターに共通の特徴であり」、類否の判断において考慮するのは誤りであるとも主張するが、甲第3、第4号、第7号証及び乙第1、第3ないし第6、第9、第10号証で明らかなように、全体が左右対称でないギターも種々みられるところ、たとえ、本体の全体を左右対称とすることが周知の態様であるとしても、その部分を除外して類否判断をするべきでないことは上記で述べたとおりであるから、原告の主張はその前提において失当である。
(7) さらに、原告は結論的に、「上記共通点に係る構成態様はギターとしての性質上いわば必然的な構成であり」、「弦楽器の性質上形状が一定のものに制限されている」と主張するが、既に述べたとおり、両意匠の形状について、一定の機能的制約は考えられるとしても、必然的というようなただ一つの形状に限定されない種々の態様がみられるのであるから、原告の主張はその前提において失当であり、
また、審決で認定する両意匠に共通する構成態様は、両意匠の大部分を占め、両意匠の基本的骨格と意匠的まとまりを形成しているものであるから、類否判断を支配する態様といわざるを得ない。
2 取消事由2(差異点についての判断の誤り)に対して (1) 原告は、両意匠の共通点が一般的で看者の注意を惹かない以上、両意匠の差異点が従来とは全く異なった印象を与える特徴であるとして、胴体部とネック部との比率及びヘッド部上辺の態様を挙げ、重視すべきであると主張する。
しかしながら、胴体部とネック部との比率については、審決が認定したように、
本願意匠の方がやや扁平である程度のものであり、この程度の扁平な胴体部は乙第4、第10及び第11号証(特に、左下掲載の4本のギター)で明らかなように本願独自の特徴ではなく、指摘され数値化してそれと分かる範囲の視覚性の低い差異であることから、両意匠の共通する構成態様による強い共通性と比較する場合、いまだ異質な印象を与えるまでに至らず、類否判断を左右しない微弱なものといわざるを得ない。
(2) 原告は、ヘッド部の形状について、形状の制限があるところ、両意匠には明らかな差異があり、強い印象を与えると主張する。
しかし、乙第1ないし第10号証で明らかなように、ヘッド部の形状についても本願意匠及び引用意匠の態様とは異なる多種多様な形状がみられるから形状の制限があるとはいいきれず、そうした中にあって、両意匠のヘッド部上辺は、上下に波打った波状の態様をしている点で共通し、その差異は、結局のところ両意匠の大部分を占め、その意匠的まとまりを形成する他の共通する構成態様に埋没してしまう程度のわずかな部分的変形にすぎず、類否判断を左右しない微弱なものにとどまるから、各差異点についての原告の主張はいずれも失当である。
(3) 以上に述べたとおり、本願意匠と引用意匠の共通する構成態様が、周知の態様を含むものであったとしても、前述の差異点がそれを凌ぐ意匠的効果を有さず、類否判断を左右しない微弱なものである以上、共通する構成態様が意匠全体の基調を決定づけるところとなり、両意匠の類否判断を支配するといわなければならず、結局、両意匠は類似するものというほかない。
当裁判所の判断
本願意匠及び引用意匠が、意匠に係る物品及びその構成をそれぞれ審決記載のとおりとするものであること、両意匠が、@「両意匠の本体(なお、引用意匠はペグ、弦、ピックガイド、ピックアップ、ブリッジ及びコントロールボタン等を除いた本体を対象とする。)は、ヘッド部、ネック部及び胴体部を結合してなる」こと、A-@「胴体部は、略瓢箪形状の肉厚板を基本とし、その上方左右を同形の略円弧状に等間隔に切り欠くことにより、上方左、中央、右に同長(同高)で先端を丸くした3本のホーン(角)部と、それらの間に2つの半円弧状の窪み部とを有する」ものとし、A-A「正面板のくびれ部(ウエスト部)の下方左右寄りに所謂「f字孔」状の模様を、正面視ハの字状に配設した」こと、B「ネック部を、胴体部中央ホーン部位置から、胴体部の縦幅より長い細幅の縦長方形板状に垂設した」こと、C「ヘッド部を、ネック部上辺に略縦長台形で下方を小弧状にえぐった形状に連設し、その上辺を波状としたものものであ」ること、D「本体全体はその正面視を略左右対称に形成したものとした構成態様」において共通し(以下、共通点@などということがある。)、両意匠の間に審決記載のとおりの差異点(ア)及び(イ)が存在することは、当事者間に争いがない。
1 取消事由1について (1) 原告は、共通点@からDは、いずれも意匠に係る物品であるギターの性質上いわば必然的な構成であり、ギターに一般的な特徴であるから、看者の注意を惹くものではなく、意匠の類否の判断に当たっては、これらの同種物品であれば当然備えている形状を捨象し、これ以外で当該物品が有している形状に着目して、両意匠の差異点が看者に異なる美感を与えるかどうかを検討するべきであると主張する。
しかしながら、意匠が類似するか否かは、全体的観察に基づいて両意匠が看者に対して異なる美感を与えるか否かによって判断すべきであり、両意匠に共通する構成の中に、当該物品に一般的な形状が含まれているとしても、そのことから当然に、意匠を観察する場合にその一般的な形状を除外ないし捨象して意匠の類否を判断すべきであるということにはならない。意匠法にいう意匠とは、意匠の創作として秩序立てられた1つの全体形態としてのまとまりをいうのであるから、たとえ、
当該物品に一般的な形状であっても、その部分を含めた全体が意匠としてのまとまりを形成している場合には、当該部分を含めた全体としての両意匠の構成態様を対比し、類否の判断を行うべきである。
(2) 本件についてみると、本願意匠と引用意匠に共通する前記@からDの構成は、ほとんどがギターの正面側の形態に関わり、両意匠において意匠の全体としてのまとまりを形成しているものであって、意匠の支配的要素をなしているものと認められる。したがって、審決が、前記共通する構成を含めた両意匠の全体としての構成態様を対比して意匠の類否を判断したことに誤りはないというべきである。両意匠に共通する構成であるギターに一般的な形態は除外ないし捨象して類否判断をすべきであるとの原告の主張は、これと異なる見解に立つものであって、採ることができない。
(3) なお、原告は、共通点@からDはギターに当然備わる一般的な形状ないし多く採用されている形状であると主張するが、共通点@及びBについては原告主張のとおりとしても、共通点A-@、A-A、C及びDは、ギターが一般に備える形状ないし多用されている形状であると認めることはできない。すなわち、共通点A-@については、ギターの胴体部が略瓢箪状とはいえない多種多様な形状のギターが存在することが認められ(乙第5ないし第9号証)、共通点A-Aについては、
「f字孔状の模様」を有しないギターも種々あることが認められ(甲第4ないし第7号証、乙第1ないし第3号証、乙第5ないし乙第10号証)、共通点Cについては、「ヘッド部を、ネック部上辺に略縦長台形で下方を小弧状にえぐった形状に連設し、その上辺を波状とした」形状が必ずしも一般的なものではなく、これと異なる多種多様なヘッド部の形状を採用したギターが存在することが認められ(甲第2ないし第8号証、乙第1ないし第11号証)、共通点Dについても、本体が略左右対称でない各種のギターが存在することが認められる(甲第3、第4、第7号証及び乙第1、第3ないし第6、第9、第10号証)。したがって、両意匠に共通する構成は、ギターに一般的ないし多く採用されている形状であるから、これらを除外した残りの形態を対比し類否の判断をするべきであるという原告の主張は、その前提を欠くものであって、この点からも採用することができない。
2 取消事由2について (1) そこで、上記観点に立って、上記共通点及び差異点を総合して両意匠をその構成全体について対比検討すると、両意匠に共通する前記の構成態様は、ギターの全体形態を統括し意匠的なまとまりを示すものであって、看者に与える印象を大きく支配するものであると認められる。
これに対し、差異点(ア)の胴体部とネック部の比率の違いは、指摘されて初めて気付く程度の視覚性の低い微弱な差異であり、また、差異点(イ)のヘッド部が上辺において、中央部分でやや隆起しているか(本願意匠)、ほぼ水平の波状形状(引用意匠)かという差異も、共通の形状を有するヘッド部における部分的な変形にすぎないと認められるものであって、いずれの差異点も、看者に与える美感を異ならしめ、類否判断を左右し得る程度のものとは認められない。
(2) 原告は、胴体部とネック部の比率(差異点(ア))及びヘッド部上辺の形状(差異点(イ)))が本願意匠における従来とは全く異なった印象を与える特徴であると主張する。
しかしながら、胴体部とネック部との比率における差異が看者に与える美感を異ならしめ、類否判断を左右するほどものと評価することができないことは、前記(1)で判断したとおりであり、原告の主張は採ることを得ない。また、ヘッド部の形状は、ギターの構成部分の中でもデザイン的な工夫の余地が比較的多くあり、実際にも、多種多様な形状のものが存在すると認められるところ(乙第1ないし第10号証)、そのような多種多様な形状の中にあって、両意匠のヘッド部は、両斜辺をやや内側に湾曲させた略縦長台形で下方を小弧状にえぐった基本的形状において共通しており、原告主張の上辺部における形状の差異は、この基本的形状を前提として上辺部の形状を変化させた程度のものであって、独立した創作的価値を見い出すことのできる程度のものであると評価することはできない。そして、ヘッド部の基本的形状における上記共通性は、ヘッド部の上辺部分における差異を凌駕するものと認められるのであって、このことと、両意匠の全体的な形態における強い共通性にかんがみると、原告の主張するヘッド部の差異は、意匠の類否判断を左右するに足りるものとはいえないというべきである。
3 結論 以上のとおりであるから、本願意匠が引用意匠に類似するとした審決の判断に誤りはなく、原告の主張はいずれも理由がない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 橋本英史
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