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関連審決 審判1999-35645
関連ワード 物品 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  先願 /  一意匠一出願(7条) /  公然知られた(3条1項1号) /  3条1項2号 /  3条1項3号 /  頒布された刊行物 /  記載された意匠 /  類似する意匠 /  意匠の類似 /  意匠の類否 /  関連意匠(10条) /  本意匠 /  登録意匠 /  類似範囲 /  類似性(類否判断) /  無効審判 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 13号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁理士 亀井弘勝
同 稲岡耕作
同 川崎実夫
被告 ケージーパルテック株式会社
訴訟代理人弁護士 山上和則
同 西山宏昭
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/08/29
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第35645号事件について平成12年11月20日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、意匠に係る物品を「戸車用レール材」とする別添審決謄本写し【別紙1】の意匠(平成2年7月10日登録出願、平成7年5月12日設定登録、登録第930663号、以下「本件意匠」という。)の意匠権者である。原告は、本件意匠登録の無効審判の請求をし、特許庁は、同請求を平成11年審判第35645号事件として審理した結果、平成12年11月20日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年12月18日、原告に送達された。
2 審決の理由 審決の理由は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件意匠は、その出願前に外国において頒布された刊行物に記載され、意匠に係る物品が同一である、同写し【別紙2】の意匠( 1980年版コラム4の写真、審判甲第1号証の1、2・本訴甲第6号証の1、2、以下「引用意匠1」という。)及び同写し【別紙3】の意匠(レールカタログ「TROLA technic」、審判甲第2号証・本訴甲第7号証、以下「引用意匠2」という。)と対比すると、開口部両縁に外側に向かって水平に張り出すウイング状鍔を形成しレール側壁の大部分に長手方向に続く断面視鋸歯状の突条を数本形成して成る全体的構成等において共通するが、溝の開口端内縁部に側壁の肉厚程度の幅で溝中央に向かって傾斜する戸車転動面を設け溝全体を断面視略Y字状としているなどの相違点は、共通点に基づく類似性をしのぐものであるから、本件意匠が引用意匠1、2に類似するということはできず、また、本件意匠の類似1号意匠公報(審判、本訴とも甲第3号証)、同2号意匠公報(同じく甲第4号証)及び同3号意匠公報(同じく甲第5号証)(以下、これらに記載された意匠を「類似意匠1」などといい、これらを総称して「本件類似意匠」という。)は、いずれも本件意匠の後願に係るものであるから、本件意匠登録に何ら影響を及ぼすものではなく、本件意匠登録が意匠法3条1項3号に違反してされたということはできないというものである。
原告主張の審決取消事由
審決の理由中、1(手続の経緯及び本件登録意匠)、2(請求人の主張)及び3(被請求人の主張)については認める。4(当審の判断)のうち、本件登録意匠と引用意匠1、2の共通点及び相違点の認定は認め、その余は争う。
審決は、本件類似意匠を参酌して本件意匠と引用意匠1、2(以下、これらを総称して「引用意匠」という。)の類否を判断すべきであるのにこれを怠り(取消事由1)、本件意匠が引用意匠に類似しないとの誤った判断をした(取消事由2)ものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(類似意匠を参酌せずに類否判断をした違法) 本件登録意匠について本件類似意匠が登録されているにもかかわらず、審決は、「甲第3〜5号証として提出された意匠(注、本件類似意匠)は、いずれも本件登録意匠の後願に係るものであるため、本件登録意匠の登録に何等影響を及ぼすものではない。」(審決謄本5頁16行目〜18行目)と判断している。しかしながら、制度上、類似意匠が本意匠先願とならないことは当然であり、先願でないことが類似意匠を参酌しない理由とはならない。類似意匠の制度は、本意匠の意匠権の範囲を確認するものであり、類似意匠が登録されたということは、特許庁自らがこれを本意匠の類似範囲として認めたものであるから、本意匠である本件意匠の類似範囲を認定する上で参酌すべきである。
2 取消事由2(類否判断の誤り) (1) 本件類似意匠を参酌すると、以下のとおり、審決が本件意匠を特徴付けるものと認定した構成は、いずれもそのようなものではなく、これらの構成において本件意匠と引用意匠が相違することを理由として両意匠が類似しないとした審決の判断は、誤りというべきである。
ア 類似意匠1は、審決の認定する、本件意匠と引用意匠との相違点(2)(以下「相違点(2)」という。)に係る「断面視半円形の凹部」の構成を具備していない。
イ 類似意匠2は、審決の認定する、本件意匠と引用意匠1との相違点(3)(以下「相違点(3)」という。)に係る「鍔の幅を溝の最小幅(側壁中間部付近)よりも多少大きくしている」という構成、本件意匠と引用意匠1との相違点(6)であり引用意匠2との相違点(5)(以下「相違点(6)」という。)に係る「レールの全高に対する全幅の比率について略1:2」の構成を、いずれも具備していない。
ウ 類似意匠3は、審決の認定する、本件意匠と引用意匠との相違点(1)(以下「相違点(1)」という。)に係る「開口端内縁部に側壁の肉厚程度の幅で溝中央に向かって傾斜する戸車転動面を設け」の構成、相違点(2)に係る「断面視半円形の凹部」の構成、本件意匠と引用意匠1との相違点(4)であり引用意匠2との相違点(3)(以下「相違点(4)」という。)に係る「側壁の肉厚を溝の最小幅と同程度の比較的厚めのものとし、底部の肉厚をその3分の1程度としている」構成を、いずれも具備していない。
エ したがって、相違点(1)ないし(4)及び(6)に係る構成を具備しない意匠が本件類似意匠として登録されているということは、これら相違点に係る構成が本件意匠において視覚上特徴的なものではないことを意味するから、本件意匠と引用意匠がこれらの相違点を有するからといって、両意匠が類似しないということはできない。
(2) 本件意匠及び引用意匠は、いずれも、断面視左右対称形の溝型鋼状レールにおいて、開口部両縁に外側に向かって水平に張り出すウイング状鍔を形成し、レール側壁の大部分に長手方向に続く断面視鋸歯状の突条を数本形成して成るという全体的構成を具備し、また、鍔の態様について、外側の隅を丸面に形成するという構成を具備する。これらの共通点に係る構成は、戸車用レール材の意匠において全体的な視覚上非常に特徴的なものであり、看者に十分な美感を強調して注意をひくから、相違点(1)ないし(6)をはるかにしのぐものであって、これらの構成において共通する本件意匠と引用意匠は、類似するというべきである。
(3) 被告は、溝中央に向かって傾斜する戸車転動面の独創性を主張するが、類似意匠3は、この構成を具備しないにもかかわらず、類似意匠として登録されているから、上記戸車転動面の構成が本件意匠を特徴付けるものということはできない。
被告の反論
1 取消事由1(類似意匠を参酌せずに類否の判断をした違法)について 類似意匠制度の存在理由は、本意匠の類似範囲を確認することにあるから、
類似意匠は、意匠権侵害訴訟において参酌されるべきであって、本意匠の登録の有効無効の判断に際して参酌されるべきではない。また、本意匠の登録の有効無効の判断に際しては、本意匠登録出願当時の公知意匠との類否だけが問題となるから、
本意匠の後願となる類似意匠を参酌することはできない。
2 取消事由2(類否判断の誤り)について (1) 本件意匠が引用意匠と類似しないとする審決の判断は正当である。
(2) 引用意匠は、相違点(1)に係る戸車転動面の構成を具備していないが、戸車転動面なくして脱輪防止機能を有する本件意匠のような戸車用レール材は存在しないものであり、審査の段階においてもこれが本件意匠の最も重要な構成要件であると認められて登録されたものであるから、この構成は本件意匠を特徴付ける重要な構成であって、その相違は本件意匠と引用意匠との共通点をしのぐものである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(類似意匠を参酌せずに類否判断をした違法)について 意匠法48条1項1号は、意匠登録が同法3条の規定に違反してされたときは当該意匠登録の無効審判を請求することができる旨を規定するところ、同法3条1項3号により意匠登録を受けることができないのは、意匠登録出願前に日本国内又は外国において、公然知られた意匠(同項1号)又は頒布された刊行物記載された意匠(平成11年法律第41号による改正前の意匠法3条1項2号)に類似する場合である。したがって、本意匠出願後にどのような類似意匠(平成10年法律第51号による改正前の意匠法10条)の登録がされたかは、意匠法3条1項3号に規定する事由の存否と関係がない。
審決が、「甲第3〜5号証として提出された意匠(注、本件類似意匠)は、
いずれも本件登録意匠の後願に係るものであるため、本件登録意匠の登録に何等影響を及ぼすものではない。」(審決謄本5頁16行目〜18行目)と説示するのは、このような趣旨をいうものと解されるから、この点で審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(類否判断の誤り)について (1) 類似意匠は、本意匠に類似することを要件として登録が認められるものであるから、類似意匠として登録されたということは、特許庁がこれを本意匠類似する意匠と認めたものである。したがって、ある意匠が本意匠と類似するかどうかを判断するに当たっては、登録された類似意匠を参酌すべきである。ただし、類似意匠の登録は、本意匠の類似範囲に関する特許庁の判断を示すものの、その判断が誤りである場合には、当該類似意匠登録に無効事由が存在することとなるのであって、無効事由のある類似意匠登録により本意匠の類似範囲が変動するわけではない。このことを前提として、以下、本件意匠と引用意匠の類否について判断する。
(2) 当事者間に争いのない本件意匠の構成及び本件類似意匠1、2の構成(甲第3、4号証)によれば、本件意匠及び類似意匠1、2が以下の構成を具備するものと認められる。
ア 本件意匠及び類似意匠1、2は、いずれも、断面視左右対称形の溝型鋼状レールにおいて、開口部両縁に外側に向かって水平に張り出すウイング状鍔を形成し、レール側壁の大部分に長手方向に続く断面視鋸歯状の突条を数本形成して成るという全体的構成を具備する。
イ 類似意匠1は、相違点(2)に係る「断面視半円形の凹部」の構成を具備しないが、相違点(1)及び(3)ないし(6)に係る本件意匠の構成を具備する。
ウ 類似意匠2は、相違点(3)に係る「鍔の幅を溝の最小幅(側壁中間部付近)よりも多少大きくしている」という構成及び相違点(6)に係る「レールの全高に対する全幅の比率について略1:2」の構成を、いずれも具備しないが、相違点(1)、(2)、(4)及び(5)に係る本件意匠の構成を具備する。
(3) 以上のように、類似意匠1、2は、いずれも、上記アの基本的構成態様を具備する上、相違点(1)ないし(6)に係る本件意匠の6点の具体的構成のうち4点及び5点の構成を具備しているのであって、本件意匠に類似すると認められる。類似意匠として登録されるためには、本意匠と類似することを要するが、このことは、
必ずしも、具体的構成態様のすべてについて本意匠の構成を具備することを要しないから、その一部の構成を具備しないからといって、類似意匠1、2が本意匠と類似するということの妨げとはならない。
これに対し、引用意匠1は相違点(1)ないし(6)のすべてについて、また、
引用意匠2は相違点(3)に係る構成を除くすべてについて、いずれも本件意匠と構成を異にしているのであって、看者の注意を強くひく本件意匠に特徴的な具体的構成態様のほとんどについて構成が相違する以上、引用意匠が本件意匠と類似するものではない。
したがって、相違点(1)ないし(4)及び(6)に係る構成の一部を具備しない類似意匠1、2が本件意匠の類似意匠として登録されているからといって、これら相違点に係る構成が看者の注意を強くひく本件意匠に特徴的なものであることと矛盾するものではない。これらの相違点が存在することに基づいて、本件意匠と引用意匠とが類似しないものとする審決の判断に誤りはない。
(4) 原告は、本件意匠と引用意匠とは、断面視左右対称形の溝型鋼状レールにおいて、開口部両縁に外側に向かって水平に張り出すウイング状鍔を形成し、レール側壁の大部分に長手方向に続く断面視鋸歯状の突条を数本形成して成るという全体的構成を具備する点で共通し、また、鍔の態様について、外側の隅を丸面に形成するという具体的構成を具備する点でも共通すると主張するところ、当事者間に争いがない本件意匠及び引用意匠の構成は、いずれも原告主張のとおりである。
確かに、上記全体的構成及び具体的構成の共通点は、戸車用レール材の意匠において看者の注意をひく特徴的なものではあるが、相違点(1)ないし(6)に係る本件意匠と引用意匠の構成の相違点をしのぐ程のものということはできない。特に、相違点(1)に係る「開口端内縁部に側壁の肉厚程度の幅で溝中央に向かって傾斜する戸車転動面」の構成、相違点(2)に係る「溝底部両隅の側壁内面に長手方向に続く断面視半円形の凹部」の構成及び相違点(4)に係る「側壁の肉厚を溝の最小幅と同程度の比較的厚めのものとし、底部の肉厚をその3分の1程度とする」構成は、いずれも看者の注意を特にひく本件意匠に特徴的な構成であって、これらの構成を全く具備しない引用意匠が本件意匠に類似するということはできない。
(5) また、原告は、相違点(1)に係る「開口端内縁部に側壁の肉厚程度の幅で溝中央に向かって傾斜する戸車転動面」の構成を具備しない類似意匠3が登録されていることを根拠として、上記戸車転動面の構成が本件意匠を特徴付けるものではないと主張する。
類似意匠3(甲第5号証)は、相違点(3)、(5)及び(6)に係る本件意匠の構成を具備するものの、相違点(1)に係る「開口端内縁部に側壁の肉厚程度の幅で溝中央に向かって傾斜する戸車転動面を設け」の構成、相違点(2)に係る「断面視半円形の凹部」の構成及び相違点(4)に係る「側壁の肉厚を溝の最小幅と同程度の比較的厚めのものとし、底部の肉厚をその3分の1程度としている」構成を、いずれも具備しない。そうすると、類似意匠3は、相違点(1)ないし(6)の6点の具体的構成中3点の構成を具備するにとどまり、本件意匠の具体的構成において特に看者の注意を強くひく特徴的な相違点(1)、(2)及び(4)に係る構成を具備しないので、本件意匠の類似意匠として登録されることには疑問の余地がある。しかしながら、仮に特許庁が類似範囲に関する判断を誤って類似意匠の登録をしても、無効事由のある当該類似意匠登録により本意匠の類似範囲が変動するわけではないことは、上記のとおりであるから、類似意匠3が登録されたことから、直ちに、上記戸車転動面の構成が本件意匠に特徴的な構成であることが否定され、ひいては本件意匠が引用意匠に類似しないとする上記判断が左右されるべきものではない。
3 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、
他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 長沢幸男
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