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関連審決 審判1998-17798
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  創作容易(容易の創作) /  公然知られた(3条1項1号) /  意匠の属する分野 /  願書の記載 /  意匠の要旨 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 6号 審決取消請求事件
原告 ペパーレット株式会社
訴訟代理人弁理士 中畑孝
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 秋間哲子
同 山田啓治
同 藤木和雄
同 茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/07/03
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が平成10年審判第17798号事件について平成12年11月22日にした審決を取り消す。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成9年2月27日、意匠に係る物品を「動物の寝床用又は排泄物処理用敷物」とする意匠(以下「本願意匠」という。)について、意匠登録出願(平成9年意匠登録願第5734号)をしたが、平成10年10月9日に拒絶査定を受けたので、同年11月11日、拒絶査定不服の審判を請求した。
特許庁は、同請求を平成10年審判第17798号事件として審理した結果、平成12年11月22日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年12月11日に原告に送達された。
2 審決の理由 別紙審決書の写し(以下「審決書」という。)のとおり、本願意匠は、願書及び願書に添付した図面代用見本によると、意匠に係る形態が、「意匠に係る物品の説明」の欄に「見本に従うと、巾が略10o、長さが略130oの帯状紙を巾方向の折線を以てジグザグ折りしつつ、端部を丸め込むようにして軸線方向の長さが略10o、直径が略5oの柱状形にしたものであり、その外周面には多数の軸線方向のヒダがジグザグ折りによって形成されており、このヒダ間に形成された多数の空隙を有している。」と記載があるところの見本のとおりのものであるが、
(1) 本願出願前より、猫犬等の小動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰めるための物品の分野では、その吸収率を高めるため、薄葉紙を多数重ね、それを細幅に裁断したり、それら薄葉紙を撚ったり絞ったり押圧したりなどして表面に多数のヒダと空隙とによる凹凸立体形状を設けることは極めて広くなされているところ(参照、実開平2-6447(甲第2号証)、実開昭59-110563(甲第3号証)、特開昭53-54580(甲第4号証)など)であって、
(2)猫犬等の小動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰める物品分野において、薄葉紙を巻き込んで短円柱状を形成することも広く知られているところ(参照、特開平5-223812(甲第5号証)の図2、実登3017490(甲第6号証)図1ないし4など)であり、
(3)その薄葉紙が巻回されて形成された円柱状が更に巻回方向に撚られることによって形成された凹凸を有する態様のもの、すなわち極めて軽度の撚りが与えられたものも出願前広く知られているところ(参照、実登3017490(甲第6号証)図1ないし4)であり、
以上のとおり、本願意匠の薄葉紙を折り込んで全表面に斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダを有する円柱状に形成することは、当業者が日本国内において周知の形状に基づいて容易に創作をすることができたものであるから、本願意匠は、意匠法3条2項の規定に該当し、意匠登録を受けることができないと判断した。
原告主張の審決取消事由の要点
審決は、本願意匠の形状の把握を誤り、周知形状の認定を誤ったものであって、
その判断の基礎となる事実認定において誤りがあり、本願意匠が周知の形状に基づいて容易に創作をすることができたものとした審決の判断は誤ったものであるから、取り消されるべきである。
本願意匠の願書添付の図面代用見本に現れているとおり、本願意匠における緩やかな斜行ヒダは、互いに折り重なって形成された斜行ヒダであり、斜行空隙は、この折り重なって形成された斜行ヒダ間の空隙を意味し、これが意匠に係る物品の外形を支配する、すなわち周面形状と端面形状を支配する要素となっている。
そして、この互いに折り重なった斜行ヒダと斜行空隙は、帯状紙を巾方向の折線を以ってジグザグ重ね折りしつつ、すなわち、波形状に重ね折りしつつ、捻りを与えることによって形成されているものであり、審決によって周知意匠として引用された甲第3号証ないし第6号証に記載されている形状とは、全く異質のものである。
すなわち、甲第3号証ないし第6号証に表示されている意匠は、いずれも、単なる螺旋巻き又は同芯円巻きしたものに、撚りを与えて円柱体にすることを教示しているのみである。
したがって、本願意匠のように、帯状紙を巾方向の折線を以ってジグザグ重ね折りしつつ、軽度な撚りを与えて、互いに折り重なった態様の斜行ヒダと斜行空隙を形成した異形柱状にし、これを物品の外観とする点については、これらの引用例から容易に予測し得るものではなく、本願意匠は、当業者が日本国内において周知の形状に基づいて容易に創作をすることができたものということはできないから、これと異なる判断をした審決は取り消されるべきである。
以下、審決が、その判断の理由として挙げた上記(1)ないし(3)の事項ごとに、その認定の誤りを挙げ、かつ、本願意匠の要部を明らかにして、審決の判断の誤りについて主張する。
1 審決の理由(1)の周知形状の認定の誤りについて (1) 審決は、周知形状と対比するに当たり、本願意匠の周面の形状について、単なる「ヒダ」と「空隙」が付加された形状ととらえた点で、意匠の把握を誤っている。
すなわち、本願意匠は、図面代用見本のとおり、多数の緩斜行ヒダと緩斜行空隙が重畳されて周面形状を形成している。換言すると、多数の緩斜行ヒダと緩斜行空隙が重畳されて短柱状体を形成している。この斜行ヒダと斜行空隙は、帯状紙を巾方向の折線を以てジグザグ折りしつつ、すなわち、波形状に重ね折りしつつ、捻りを与えることによって形成されているものである。
しかるに、審決は、これを単なる「ヒダ」と「空隙」ととらえて、審決が周知形状として引用した各意匠と本願意匠とを対比しているが、この対比は、誤りである。
(2) また、審決は、「ヒダ」と「空隙」が周知形状であると認定しているが、次のアないしウのとおり、この認定自体が誤っている。したがって、本願意匠のように、緩斜行ヒダと緩斜行空隙が重畳して成す形状が周知形状であるとは到底いい難い。
ア 審決が周知形状の認定の根拠としている実開平2-6447号(甲第2号証)の第1図は、表面に不連続の無数の「皺」を形成した薄用紙、いわゆるクレープ紙と呼称されるものを示しているのみであり、これら無数の「皺」は、「細く折り畳んである細長い折り目」(「広辞苑」参照)から成る「ヒダ」には当たらない。
加えて、この引用意匠は、これらヒダを重畳した形態に欠け、また、本願意匠のように、重畳したヒダが、短柱形状の一端から他端にわたって連続し、かつ斜行している形態を欠如している。まして、重畳した緩斜行ヒダと緩斜行空隙で短柱形状を形成する思想に関しては予測していない。
イ 同じく、実開昭59-110563号(甲第3号証)の第1図、第2図は、新聞紙や週刊誌のような平板紙を多数枚折り重ねたものを、細巾に断裁して成る短冊状の束、つまり短冊形紙を多数枚重ねた積載紙の束を示しているのみで、
本願意匠との意匠的な差異は、極めて顕著である。
この引用意匠は、本願意匠における緩斜行ヒダと緩斜行空隙が重畳して短柱形状(周面形状)を形成し、この緩斜行ヒダと緩斜行空隙が短柱形状の一端から他端に達するように延び、さらには、これら緩斜行ヒダと緩斜行空隙とが重畳して形成された短柱形状の両端面に渦巻状ヒダ形状を形成しているという意匠の構成要素を全く欠如している。
ウ 同じく、特開昭53-54580号(甲第4号証)は、平坦な表面を有する短冊形チップないし蛇腹状に屈曲した表面を有する短冊形チップを示しているのみであり、甲第3号証と同様に、本願意匠のような緩斜行ヒダと緩斜行空隙とを重畳して短柱形状にした形状、この緩斜行ヒダと緩斜行空隙が短柱形状の一端から他端に達するように延在する形状、これら緩斜行ヒダと緩斜行空隙とが重畳して形成された短柱形状の両端面の渦巻状ヒダ形状のいずれも欠如している。
(3) 以上のとおり、引用意匠(甲第2号証ないし甲第4号証)によって、
本願意匠の上記周面形状が周知形状であると判断することは誤っており、失当である。
2 審決の理由(2)の周知形状の認定の誤りについて 審決は、「薄用紙を巻き込んで短円柱状を形成することが広く知られている」と認定し、実登3017490号(甲第6号証)の図1ないし図4を示している。
なるほど薄用紙を巻き込んで短円柱形状にすることは周知形状であるかも知れない。しかしながら、本願意匠は、薄用紙を巻き込んで短柱形状にする周知形状を採用していない。
本願意匠は、長さ約12p、幅約1p程度の帯紙を、ジグザグ折りして短柱形状にまとめ、軽度の撚り(撚り角は約30度)を与えて、短柱形状の一端から他端に達する緩斜行ヒダと緩斜行空隙の重畳構造を形成したものであって、引用意匠のように薄用紙を同芯円に巻き込むか、スパイラルに巻き込む構造を一切有していない。
本願意匠は、上記のように、短尺帯紙をジグザグ折りして柱状にまとめ、軽度の撚りを与えた短柱形状を有するものであって、この構造から醸成される独特の周面形状(緩斜行ヒダと緩斜行空隙が柱状に重畳せる形状)を有し、同様にこの構造から醸成される端面形状(渦巻形状)を有するものであって、これを単に薄用紙を巻き込んで短円柱形状にした周知形状と同等視するのは論拠に欠ける認定といわざるを得ない。
3 審決の理由(3)の周知形状の認定の誤りについて 審決は、「その薄葉紙が巻回されて形成された円柱状が更に巻回方向に撚られることによって形成された凹凸を有する態様のもの、すなわち極めて軽度の撚りが与えられたものも出願前広く知られているところ(参照、実登3017490(甲第6号証)図1ないし4)である」と認定している。
しかしながら、上記2のとおり、本願意匠は薄用紙を巻回して円柱状にする構造を採用していないから、薄用紙を巻回して円柱状にした上で撚りを与える構造を採用しておらず、この構造を採用していることを前提としている審決は誤りであり、
失当である。 4 本願意匠の要部について (1) 本願意匠の上記の形状は、物品(動物の寝床用又は排泄物処理用敷物)の周面と端面、すなわち、全表面を支配する形状となっており、物品全体の外観として看者の注意を強く喚起する意匠要素となっている。
また、本願意匠の上記の形状は各引用意匠の周知形状を採用したものではなく、
これらの組み合わせによって容易に得られるものでもない。
(2) 本願意匠の上記の形状は、クッション性と蓄熱性と排泄物吸収性を富有せしめる作用効果があり、その物品目的からいって極めて合目的的であって、この機能的形状こそ利用者の注意を強く喚起するのである。この機能面における引用意匠との弁別性は明白である。
5 被告の主張に対する反論 (1) 被告は、「本願意匠は、広く知られている「荷造り用紙紐」の形状と同様に、長い帯状紙を巾方向にジグザグ折りして幾重かに重ねた後、長手方向(軸線方向)に何回か撚って断面形状略円形の長い柱状の紐を形成し、その紐を、その撚り1回分以下の長さで極小に短く切断した形状と略同じ形状であって、斜行ヒダ及び斜行空隙は、長手方向(軸線方向)の撚りによって当然生じるものであるから、周知形状とした、審決に誤りはない。」と主張している。
しかしながら、荷造り用紙紐(甲第17号証に例示)において周知な形状とは、
第一に、単一本の長尺線材から成ること、第二に、引っ張り強度や表面強度の技術的要求から、ヒダと空隙がない密着撚りされた周面形状であることである。
これに対し、本願意匠は上記荷造り用紙紐の周知形状である単一本の長尺線材から構成されておらず、更にはヒダと空隙がない周面形状を採用していないことは明らかである。
また、仮に、被告が主張するように、上記形状の荷造り用紙紐を短く切断したとしても、ヒダと空隙のない密着撚りされた周面形状を固有することとなり、周面に粗なる多数の緩斜行ヒダと緩斜行空隙が重畳された短柱状体を得ること、すなわち、本願意匠を得ることはできないものである。
よって、荷造り用紙紐の上記第一と第二の形状が意匠法3条2項に規定する「日本国内において公然知られた形状」に当たるとしても、本願意匠はこの形状を採用しておらず、本願意匠が荷造り用紙紐の周知形状を転用したにすぎないものとする被告の主張は誤りである。
さらに、敷えんするならば、上記荷造り用紙紐は荷物を結縛する目的に供される物品であり、この結縛目的から支配される、上記のとおりの長尺で、かつ、固く強く撚られた周面形状であることが要求され、反面、ヒダや空隙の存在は有害とされている。
他方、本願意匠は、動物の寝床又は排泄物を処理する目的に供される物品であり、この目的に適合させるべく、多数の粗なる緩斜行空隙と緩斜行ヒダとが重畳する周面形状を与え、かつ、粗なる渦巻き形状の端面形状を与え、上記荷造り用紙紐とは背反するクッション性と保温性と排泄物吸水性を富有せしめたものである。
そして、本願意匠のこの構成が、この物品を扱う需要者の最も注意を喚起する要素となるのであり、この需要者の視点からいって、物品の目的機能が全く異なり、
物品と意匠が顕著に相違し、更に製造・販売・使用ルートの乖離が顕著で、意匠の属する分野が全く異なる荷造り用紙紐から、本願意匠の構成を容易に創作し得たものとするのは、公知例参酌の範囲を越える判断といわざるを得ない。
(2) 甲第2号証ないし第6号証に関する被告主張に対して ア 被告は、甲第2号証(実開平2-6447号)は、敷物の表面に多数のヒダと空隙を設ける一例として挙げたものであると主張している。
しかしながら、甲第2号証には、クレープ紙に当たる無数の皺を形成した薄用紙を示しているが、ヒダ(細く折り畳んである細長い折り目)を示しておらず、ヒダと空隙の重畳構造を示していない。
したがって、被告の上記主張は誤りである。
イ 被告は、空隙を形成する一例として甲第3号証(実開昭59-110563号)を挙げたものであると主張している。
しかしながら、甲第3号証は、短冊形の平紙を多数枚重ねた束を示しているのみで、そこには本願意匠に相当する空隙が形成される余地が全くない。
したがって、被告の上記主張は誤りである。
ウ 被告は、表面に多数のヒダと空隙を設ける一例として甲第4号証(特開昭53-54580号)を挙げたものであると主張している。
しかしながら、甲第4号証には、ジグザグに屈曲した形状の短冊形チップを示しているのみであり、ジグザグ折りし、かつ、折り畳んで形成したヒダと空隙の重畳構造を全く示していない。
甲第4号証のジグザグに屈曲した形状の短冊形チップは、本願意匠に係る緩斜行ヒダと緩斜行空隙が柱状に重畳している重畳柱状体を展開した形状を示しているにすぎない。
すなわち、甲第16号証は緩斜行ヒダと緩斜行空隙が柱状に重畳した構造の本願意匠を展開した状態を示す写真である。この展開写真からも明らかなように、本願意匠は、単に薄用紙を同芯円に巻回し、撚りを加えて形成された形状のものではない。
エ 被告は、甲第5号証(特開平5-223812号)と甲第6号証(実用新案登録第3017490号)を示し、薄用紙を同心円に巻回し撚りを与えて短円柱状にした例示であると主張しているが、この主張のとおりであるとしても、本願意匠を構成している緩斜行ヒダと緩斜行空隙を柱状に重畳せる柱状構造が周知形状の採用に当たるとする証拠には当たらない。上記ウのとおり、本願意匠は、単に薄用紙を同芯円に巻回して撚りを加えて凹凸を形成した形状のものではなく、甲第5、第6号証の周知形状との意匠的差異は、極めて明白である。
6 結論 以上のとおり、審決は、本願意匠の形状の把握を誤り、周知形状の認定を誤ったものであって、この周知形状を短円柱形状に再現したにすぎないとする判断は、その判断の基礎となる事実認定において誤りがある。本願意匠の上記の形状は、各引用意匠の周知形状を採用したものではなく、これら周知形状の組み合わせによって容易に得られるものでもない。
したがって、審決の判断は誤りであるから、取り消されるべきである。
被告の反論の要点
原告は、審決について、本願意匠の形状の把握を誤り、周知形状の認定を誤ったものであって、その判断の基礎となる事実認定において誤りがあり、本願意匠が周知の形状に基づいて容易に創作をすることができたものとした審決の判断は誤ったものであると主張し、審決が理由とした(1)ないし(3)の認定、判断について誤りであると主張しているが、原告の主張は、以下のとおり、いずれも失当である。
1(1) 原告は、本願意匠は、願書添付の図面代用見本のとおり、多数の緩斜行ヒダと緩斜行空隙が重畳されて短柱状体を形成しており、これを、審決のように、単なる「ヒダ」と「空隙」ととらえ、引用意匠と対比するのは誤りである旨主張している。
また、原告は、本願意匠について、薄用紙を巻回して円柱状にし撚りを与える構造を採用しておらず、この構造を採用していることを前提としている審決は失当である旨主張している。
(2) しかしながら、本願意匠は、出願当初の願書及び添付の図面代用見本によって現されているところのものであって、本願意匠の要旨は、審決が認定し、
また、原告自ら意匠に係る物品の説明の欄で記載したように、「巾が略10mm、
長さが略130mmの帯状紙を巾方向の折線を以てジグザグ折りしつつ、端部を丸め込むようにして軸線方向の長さが略10mm、直径が略5mmの柱状形にしたものであり、その外周面には多数の軸線方向のヒダがジグザグ折りによって形成されており、このヒダ間に形成された多数の空隙を有している」もので、審決が本願意匠について、「薄葉紙を折り込んで全表面に斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダを有する円柱状に形成」されたものと認定し、判断したとおりのものであって、かつ、
原告も、審判請求の理由において、審決中にその要旨を記載したように、「斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダとは物品の全表面を支配する形状となっており」と主張したところのものである。原告の上記主張は、単なる表現上の差異に基づくものと認められるから、これをもって審決の認定が誤りであるとすることはできない。
2(1) 原告は、審決が「ヒダと空隙が周知形状である」と認定したこと自体、誤りである旨主張している。
(2) しかしながら、古来より、紙を、折り重ね、且つ畳むこと、皺をつくること、円柱状又は円筒状に丸めること、撚ること等は紙の性質から当然可能な加工手段であることは周知の事実である。そして、上記の加工手段は、紙に凹凸形状、すなわちヒダ及び空隙を作ることによって、紙の吸水性、可燃性、保温性等をより高めるために古来より用いられる周知の手法でもあり、紙を、折り畳んだり、
皺を作ったり、円筒状に丸めたり、撚るなどして当然できるヒダと空隙を周知形状とした審決に誤りはない。
また、本願意匠は、広く知られている「荷造り用紙紐」の形状と同様に、長い帯状紙を巾方向にジグザグ折りして幾重かに重ねた後、長手方向(軸線方向)に何回か撚って断面形状略円形の長い柱状の紐を形成し、その紐を、その撚り1回分以下の長さで極小に短く切断した形状と略同じ形状であって、斜行ヒダ及び斜行空隙は、長手方向(軸線方向)の撚りによって当然生じるものであるから、これを周知形状とした、審決に誤りはない。
3(1) 原告は、本願意匠は、審決が周知意匠として引用した甲第2ないし第6号証に記載の各形状とは全く異質のものである旨主張している。
(2) しかしながら、次のアないしオのとおり、甲第2号証ないし第6号証は、いずれも審決が認定した事実との間に齟齬はなく、審決の認定に誤りはない。
ア 甲第2号証(実開平2-6447)の第1図について 原告は、同図について、表面に不連続の無数のしわを形成した薄葉紙、いわゆるクレープ紙と呼称されるものを示しているのみで、ヒダに当たらない旨主張している。
しかし、薄葉紙を、撚ったり絞ったり押圧したりなどして表面に多数のヒダと空隙とによる凹凸立体形状を設けることは、紙本来の吸水性や保温性をより高める効果があり、広く知られているところで、犬猫等の小動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰めるための物品分野においても、その手法が広く知られているところであって、その一例として甲第2号証を挙げたものであって、審決に誤りはない。
イ 甲第3号証(実開昭59-110563)について 薄葉紙を多数枚重ね、それを細幅に裁断することは、それによって生じる空隙が、その紙本来の吸水性や保温性をより高める効果があり、広く知られているところで、猫犬等の小動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰めるための物品分野においても、その手法が広く知られているところであって、その一例として甲第3号証を挙げたものであって、審決に誤りはない。
ウ 甲第4号証(特開昭53-54580)について 薄葉紙をジグザグ折りして表面に多数のヒダと空隙とによる凹凸立体形状を設けることは、紙本来の吸水性や保温性をより高める効果があり、広く知られているところで、犬猫等の小動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰めるための物品分野においても、その手法が広く知られているところであって、その一例として甲第4号証を挙げたものであって、審決に誤りはない。
エ 甲第5号証(特開平5-223812の図2)について 薄葉紙を巻き込んで短円柱状を形成することは、紙本来の吸水性を高める効果があり、広く知られているところで、動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰めるための物品分野においても、その手法が広く知られているところであって、その一例として甲第5号証を挙げたものであって、審決に誤りはない。
オ 甲6号証(実登3017490)について 薄葉紙を巻き込んで短円柱状を形成すること、及び、その薄葉紙が巻回されて形成された円柱状が更に巻回方向に撚られることによって周面が凹凸を有する態様のもの、すなわち極めて軽度の撚りを与えられるものは、それによって他物との接触面が減少し、紙本来の吸水性、及び保温性が高まる効果があり、広く知られているところであって、猫犬等の小動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰めるための物品分野においても、その手法が広く知られており、その一例として甲第6号証を挙げたものであって、審決に誤りはない。
4(1) 原告は、本願意匠の形状は、各引用意匠の周知形状を採用したものではなく、組み合わせによって容易に得られるものでもない旨主張している。
(2) しかしながら、審決は、本願意匠は、「紙片を折り込んで、外周面形状に斜行ヒダと斜行空隙が現れ、両端面に渦巻状ヒダが現れている周知形状である円柱状に形成」したものを、単に動物用寝床敷物材にしたにすぎず、格別の意匠の創作をしたものと認められないと結論づけたものであって、原告のいう引用意匠のものは、斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダの各態様が、周知の態様であることを裏付ける例示であって、審決の認定、判断に誤りはない。
また、審決が引用した周知形状の各態様(甲第2号証ないし第6号証)は、上記のとおり、古来より紙全般における周知の加工手段及びその態様であって、本願意匠と同種の物品分野に現れているその周知の手法及び態様を例示することによって立証しているもので、本願意匠の各態様は、いずれも周知の手法及び態様と認められるのであって、当業者にとってより創作が容易なものであることから、審決の認定、判断に誤りはない。
5(1) 原告は、本願意匠は、クッション性と蓄熱性と排泄物吸収性を富有せしめる作用効果があり、この機能的形状こそ利用者の注意を強く喚起するので、引用意匠との弁別性は明白である旨主張する。
(2) しかしながら、原告が引用意匠とするところのものは、全て、周知の形状及び態様が個々の具体的な物品分野の物品に現れた周知の形状及び態様を例示したものであって、審決は、本願意匠と個々の引用した周知形状との弁別性を対比判断しているものでないから、原告の主張は当を得ないものである。
6 結論 以上のとおり、審決が理由とした認定、判断に誤りはなく、「本願意匠の薄葉紙を折り込んで全表面に斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダを有する円柱状に形成することは、当業者が日本国内において周知の形状に基づいて容易に創作をすることができたもの」として、本願意匠は、意匠法3条2項の規定に該当し、意匠登録を受けることができないと判断した審決に誤りはない。
理 由1 本願意匠の構成について 本願意匠が意匠に係る物品を「動物の寝床用又は排泄物処理用敷物」とするものであることは争いがなく、甲第7号証(本願意匠の意匠登録願)によれば、本願意匠は、願書に添付した図面代用見本によって現されたものであること、意匠に係る形態に関して、願書の「意匠に係る物品の説明」の欄には、「見本に従うと巾が略10o、長さが略130oの帯状紙を巾方向の折線を以てジグザグ折りしつつ、端部を丸め込むようにして軸線方向の長さが略10o、直径が略5oの柱状形にしたものであり、その外周面には多数の軸線方向のヒダがジグザグ折りによって形成されており、このヒダ間に形成された多数の空隙を有している。」と記載されていることが認められる。
上記願書の記載内容を参酌して、願書(甲第7号証)に添付の図面代用見本及びこれと同じものとして原告が提出する検甲第1号証をみると、本願意匠は、「巾が略10o、長さが略130oの帯状紙を、巾方向の折線をもってジグザグ折りしつつ、幾重にか重ねて折り込んだ後、軽度の撚りを上記の長さ方向に加えて、巾方向の長さ(高さ)が略10o、端面(上面及び下面)の直径が略5oの略円形ないし略楕円形の柱状の形状にしたものであり、上記ジグザグ折りと捻りにより形成された外観として、外周面は、多数の高さ方向のヒダとヒダ間の多数の空隙とが、緩い斜行形状を呈して、両端面の一端(上面)から他の端面(下面)に達しており、また、両端面は、略渦巻状のヒダ模様を呈している」形状であることが認められる。
2 審決の本願意匠の認定の誤りの存否について (1) 原告は、審決が本願意匠につき周知形状と対比するに当たり、本願意匠の形状について、単なる「ヒダ」と「空隙」が付加された形状ととらえた点で誤っており、また、審決が周知意匠として引用した甲第3号証ないし第6号証に表示されている意匠は、本願意匠の構成とは異なり、いずれも、単なる螺旋巻き又は同芯円巻きにしたものに、撚りを与えて円柱状にすることを教示するものである旨主張している。
(2) 確かに、本願意匠は、上記認定のとおり、帯状紙をジグザグ折りしつつ、幾重にか重ねて折り込んだ後、軽度の撚りを加えて成る略円形ないし略楕円形の柱状の形状であって、ジグザグ折りした帯状紙を螺旋巻き又は同芯円巻きにして柱状とした後に、撚りを加えた形状とは異なることが認められるところ、前記第2の「前提となる事実」の2のとおり、審決は、本願意匠の容易創作性を判断するに当たって、(1)猫犬等の小動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰めるための物品の分野では、薄葉紙を撚ったり、絞ったりして、表面に多数のヒダと空隙とによる凹凸立体形状を設けること、(2)猫犬等の小動物の尿を吸収するために床に多数敷き詰める物品分野において、薄葉紙を「巻き込んで短円柱状」を形成すること、及び(3)その薄葉紙が「巻回されて形成された円柱状が更に巻回方向に撚られる」ことによって形成されたものがあることが、いずれも本願意匠の出願前に広く知られていることを認定していることが認められる。
(3) 審決が周知の形状に関して、上記のとおり「巻き込んで短円柱状」、
「薄葉紙が巻回されて形成された円柱状が更に巻回方向に撚られる」と説示したのは、次の理由によるものと認められる。
すなわち、甲第1号証(審決書)、第8号証(拒絶理由通知書)、第10号証(拒絶査定の謄本)、第11号証(審判請求書)、第12号証(審判請求理由補充書)及び弁論の全趣旨によれば、(ア)本願意匠の意匠登録出願に対して、特許庁の審査官は、平成9年12月12日、本願意匠は、「紙片を折り込んで」、周知形状である「円柱状に形成したもの」を単に動物用寝床敷物材としたにすぎず、格別の意匠の創作をしたものとは認められず、周知形状に基づいて容易に創作をすることができたものであり、意匠法3条2項の規定に該当するとの理由により拒絶理由通知書を発し、また、平成10年9月18日、上記の通知理由により、拒絶をすべきものと認めるとして拒絶査定したこと、(イ)原告(請求人)は、本件審判請求の理由として、本願意匠は、全体の周面形状として多数のヒダと空隙とによる立体形状を具備し、左右端面にはこれによる渦巻状ヒダ模様があり、全周において極めて軽度の撚りが与えられ、これによって、多数のヒダと空隙に緩い斜行形状が与えられ、これら斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダとは物品の全表面を支配する形状となっており、周知の円柱状と同視したのは意匠の要部を見誤った判断である旨主張したこと、(ウ)この主張に対して、審決は、本願意匠につき、願書の「意匠に係る物品の説明」の欄に「見本に従うと巾が略10o、長さが略130oの帯状紙を巾方向の折線を以てジグザグ折りしつつ、端部を丸め込むようにして軸線方向の長さが略10o、直径が略5oの柱状形にしたものであり、その外周面には多数の軸線方向のヒダがジグザグ折りによって形成されており、このヒダ間に形成された多数の空隙を有している。」と記載されているところの見本のとおりのものであると認定し、上記のとおり周知の形状を認定した上で、「本願意匠の薄葉紙を折り込んで全表面に斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダを有する円柱状に形成することは、当業者が日本国内において周知の形状に基づいて容易に創作をすることができたものであるから、本願意匠は、意匠法3条2項の規定に該当し、意匠登録を受けることができない」旨判断したことが認められる。
上記認定事実によれば、審決は、本願意匠の構成について、願書の「意匠に係る物品の説明」の欄に、「見本に従うと・・・帯状紙を・・・ジグザグ折りしつつ、
端部を丸め込むようにして・・・直径が・・・の柱状形にしたものであり、その外周面には多数の軸線方向のヒダがジグザグ折りによって形成されており、このヒダ間に形成された多数の空隙を有している。」と記載されていること、及び、原告も審判請求の理由の中で、本願意匠について、上記認定(イ)のように主張しているものの、本訴におけるように、ジグザグ折りした帯状紙の端部を丸め込んで円柱状にするもの又は帯状紙を螺旋巻き若しくは同芯円巻きにして円柱状にするものとは、異なっているという趣旨の主張はしていないことから、周知の形状の認定としては、上記のとおり、「巻き込んで短円柱状」、「薄葉紙が巻回されて形成された円柱状が更に巻回方向に撚られる」と表現して説示したことが認められる。
(4) しかしながら、審決は、本願意匠について、上記のとおり、願書の図面代用見本のとおりのものであると認定しており、また、上記拒絶理由通知書及び拒絶査定の理由における本願意匠に関する認定の要旨(「紙片を折り込んで・・・円柱状に形成したもの」)に加えて、原告の審判請求の理由をも考慮して、本願意匠は「薄葉紙を折り込んで全表面に斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダを有する円柱状に形成する」形状であると認定しているのであり、この認定は、前記1に判示の本願意匠の認定と概ね合致するものであり、格別に誤っている点はないものと認められる。
したがって、審決のした本願意匠の認定には、誤りはないというべきであり、これに反する原告の主張は失当であり、採用することができない。
3 本願意匠と対比される周知意匠について (1) 本願意匠の意匠登録出願時(平成9年2月27日)の以前から、我が国において、紙を材料として使用し、これを加工した物品の意匠の分野において、@帯状の紙を、ジグザグ折りすること、A更にジグザグ折りをしつつ、折り込んでいき、この折り込みの方法として、ジグザグ折りする帯状紙を幾重にか重ねる方法や、端部を丸め(巻き)込むようにする(螺旋ないし同芯円巻きする)方法があること、及びBこれらの加工の後、更に撚るという加工手段があることが、いずれも周知となっていたことは顕著な事実であると認められる。そして、上記の加工手段は、紙をジグザグ折りして、凹凸形状、すなわちヒダ及び空隙を作り、また、これを重ねることによって、紙の吸水性、可燃性、保温性等をより高め、さらに、一枚の紙のままであるのと比較した場合、紙をジグザグ折りして折り込んで、幾重にか重ねるか、丸め込んで螺旋状とし、かつ、これらを撚ることによって、その形状を維持し易く、また、より強度を高めるものとして、採用されていることも自明のことと認められる。
上記の@ないしBの加工手段によれば、本願意匠のように、全周面に斜行ヒダと斜行空隙を有し、両端面に渦巻状ヒダの模様を有する略円形ないし略楕円形の柱状のものが形成されるのであり、また、その撚りの程度(強さ、角度)により、斜行の程度が緩急様々となるものであり、本願意匠の意匠登録出願前に、これらの外観を呈する物品が周知のものとなっていたことが認められる。
(2) 以上の各周知事実の存在については、@ないしBの点に関して、例えば、被告が主張するように我が国において古くから広く知られている「荷造り用紙紐」や、「紙製の買い物用手提げ袋(バッグ)の取手用紙紐」の形状が、長い帯状紙を巾方向にジグザグ折りしつつ、幾重かに重ねた後、何回か撚って、端面が略円形の長い柱状の紐を形成して成るものであること(なお、本願意匠の形状は、この長い柱状の紐を、その撚り1回分以下の長さで極小に短く切断した形状と略同じ形状であると認められる。)によって顕著に示されている。
動物の排泄物処理材や床敷材料の分野でも、紙の加工物の意匠として、@の点に関して、例えば、甲第2号証(実開平2-6447)に、「紙材を不規則な形状を有する波形のものにすること」(明細書4頁7行ないし15行及び第1図参照)、
A、Bの点に関して、例えば、甲第5号証(特開平5-223812)に、「シート状パルプ状繊維体が撚られて棒状の小片に形成されているものがあること」(段落【0016】及び図2参照)、甲第6号証(実登3017490)に、「薄葉紙を丸め込んで短円柱状を形成すること、及びその円柱状に撚りが与えられるものがあること」(【構成】欄参照)が、それぞれ示されている。
(3) 以上判示の本願意匠の意匠登録出願前の周知の事実によれば、審決が本願意匠の構成につき「薄葉紙を折り込んで全表面に斜行ヒダと斜行空隙と渦巻状ヒダを有する円柱状に形成する」と認定した上で、この構成は、当業者が日本国内において周知の形状に基づいて容易に創作をすることができたものと判断したことは、相当であると認められから、審決の判断に誤りはないというべきである。
(4) 審決は、この判断をするに当たり、周知の形状に関して、前記2のとおり、「巻き込んで短円柱状」、「薄葉紙が巻回されて形成された円柱状がさらに巻回方向に撚られる」と説示しており、さらに、これに対応する公知文献(甲第6号証)を引用していることが認められる。
しかしながら、上記のように説示した理由は、前判示2の(3)のとおりであると認められる。そして、我が国における紙を材料として使用し、これを加工した物品の意匠の分野における周知の事実として、「帯状の紙を、ジグザグ折りしつつ、
折り込んでいくこと」、この折り込みの方法として、「ジグザグ折りする帯状紙を幾重にか重ねる方法」や「丸め込む方法」があること、及びこれらの後に撚ることによって、略円形ないし略楕円形の両端面となる柱状の形態の物品を形成するという加工手段があることは、上記(1)のとおりである。
そこで、審決は、この周知の「帯状の紙を、ジグザグ折りしつつ、折り込んでいく方法」について、本願意匠の願書の「意匠に係る物品の説明」の欄の「見本に従うと・・・帯状紙を・・・ジグザグ折りしつつ、端部を丸め込むようにして・・・直径が・・・の柱状形にしたもの」との記載に対応して、「ジグザグ折りする帯状紙を幾重にか重ねる方法」ではなく、「丸め込む方法」として、上記のとおり、周知の形状として、「巻き込んで短円柱状」、「薄葉紙が巻回されて形成された円柱状が更に巻回方向に撚られる」方法と表現したものであり、また、この記載がある公知文献をその例示として引用したにすぎず、前記2の(3)の事実経過のとおり、特許庁では、審査の段階から一貫して、周知の意匠に関して、「帯状の紙(紙片)を、(ジグザグ折りしつつ)折り込んでいく方法」の存在について指摘していたこと、そして、原告(請求人)においても、審判請求理由補充書(甲第12号証)で、「拒絶理由及び拒絶査定に対する抗弁」として、周知の「撚り紐」、「撚り線材」について触れて、本訴におけると同様に(後記(5)参照)、これらのものは、「高密度ピッチの撚りが不可欠且つ必然的形態であり、その場合には本願意匠のようなヒダも空隙も見かけ上皆無である」(4頁15行ないし18行)との反論をしていたことが認められるのである。
したがって、上記の審決の周知の形状の説示及びその例示のみをとらえて、審決を取り消すべき誤りがあるということはできず、これを違法であると評することはできない。
(5) 原告は、被告が「本願意匠は、広く知られている「荷造り用紙紐」の形状と同様に、長い帯状紙を巾方向にジグザグ折りして幾重かに重ねた後、長手方向(軸線方向)に何回か撚って断面形状略円形の長い柱状の紐を形成し、その紐を、
その撚り1回分以下の長さで極小に短く切断した形状と略同じ形状であって、斜行ヒダ及び斜行空隙は、長手方向(軸線方向)の撚りによって当然生じるものであるから、周知形状とした審決に誤りはない。」旨主張しているのに対して、甲第17号証を例示として、荷造り用紙紐において周知な形状とは、第一に、単一本の長尺線材から成ること、第二に、引っ張り強度や表面強度の技術的要求から、ヒダと空隙がない密着撚りされた周面形状であることであり、仮に、被告が主張するように、上記形状の荷造り用紙紐を短く切断したとしても、ヒダと空隙のない密着撚りされた周面形状を固有することとなり、周面に粗なる多数の緩斜行ヒダと緩斜行空隙が重畳された短柱状体から構成される本願意匠を得ることはできない旨主張している。
しかしながら、審決は、周知の意匠の構成と本願意匠の構成とが同一であると判断するものではなく、かつ、上記の紙の加工物の意匠の分野において、長尺の物品の意匠から短尺の物品の意匠を創作することは、当業者にとって容易であるというべきであるから、原告が上記の第一として主張する点は、理由がない。
また、原告が上記の第二として主張する点についても、一般に、紙の加工物として技術的に要求される引っ張り強度や表面強度の程度は、それぞれの物品の用途によって異なってくるものであり、それぞれの紙の加工方法(撚りの程度等)は、用途や費用対効果等を考慮して採用されるものであることは自明のことであるところ、前判示のとおり、我が国において周知の「荷造り用紙紐」や「紙製の買い物用手提げ袋の取手用紙紐」の形状として、帯状紙をジグザグ折りしつつ、幾重かに重ねた後、何回か撚ることによって、斜行のヒダと空隙を有する周面形状で端面が略円形の柱状のものが存在することは顕著な事実であると認められ、これに照らすと、原告の上記主張は、「紙紐」の中で引っ張り強度や表面強度につき比較的高度のものが要求され、それに応じた加工方法が採られた物品について、本願意匠とは周面形状におけるヒダと空隙の密疎という差異があることを主張しているにすぎず、これをもって本願意匠の創作容易性が否定されるものとは到底いえないから、
採用することができない。
なお、原告代表者は、陳述書(甲第18号証)を作成して、本願意匠の開発の経緯等について詳しく述べているが、この記載内容を斟酌しても、上記(3)の判断は左右されるものではない。
4 本願意匠の要部について 前判示2のとおり、審決の本願意匠の構成の認定に誤りはないから、原告の本願意匠の要部に関して審決の判断の誤りを主張する点も、その前提を欠き、失当である。
5 結論 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史
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