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関連審決 審判1998-35274
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  創作容易(容易の創作) /  一意匠一出願(7条) /  広く知られた /  記載された意匠 /  通常の知識を有する者 /  登録意匠 /  無効審判 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 222号 審決取消請求事件
原告A
被告 株式会社ウチコン代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁理士 C
同 D
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/06/14
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年審判第35274号事件について平成11年5月11日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨の判決
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、意匠に係る物品を「側溝用溝ぶた」とする別添審決書写し別紙第一の意匠(平成6年9月5日出願、登録第1015721号。以下「本件意匠」という。)の意匠権者である。被告は、平成10年6月15日、本件意匠の無効審判を請求したところ、特許庁は、同請求を平成10年審判第35274号事件として審理し、平成11年5月11日、「登録第1015721号意匠の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は、平成11年6月17日、原告に送達された。
2 審決の理由の要旨 審決の理由は、別添審決書写し記載のとおりであり、本件意匠は、その登録出願(以下「本件出願」という。)の前にその意匠が属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内において広く知られた(以下「周知」という。)形状模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとして、本件意匠の登録を無効にすべきというものである。
審決の取消事由
1 公開実用新案公報の図面を引用意匠とした違法 審決に引用された意匠は、公開実用新案公報に掲載された図面のものであり、美的創作を対象とする意匠に関し引用されるべきではない。
2 引用意匠の形状についての認定の誤り 実開昭58-72286号公報には、長手方向が垂直のままで、短手方向が傾斜、くの字様、又は断面円弧状の溝蓋しか記載されておらず、また、実開昭62-3885号公報には、長手方向が垂直、短手方向の片方又は両方が丸面のものしか記載されておらず、さらに、実開平4-119884号公報には、短手方向が傾斜又は円弧状のものしか記載されていない。審決がこれらの意匠を引用して、短手方向、長手方向、すべての側面又は側面の下端縁を極く普通の傾斜面としたり、面取り様としたり、又は丸面様とすることが当業者に周知であったとするが、これは誤りである。
3 引用意匠の周知性についての認定の誤り 意匠が周知であるというためには、当該意匠が一般に知られ得る状態に置かれただけでは足りず、当業者の多くの者が当該意匠を現実に認識していることを要する。審決は、前記各公報に記載された意匠及び実開昭63-95790号公報の意匠が本件出願当時周知であったと認定しているが、これら意匠は、公開実用新案公報に掲載されていたものの、本件出願当時においては、当業者に周知ではなかった。
4 本件意匠の創作容易性についての認定判断の誤り 審決は、本件出願当時、短手方向又は長手方向のすべての側面又は側面の下端縁を傾斜、面取り又は丸面様とすることが当業者に周知であったと認定するが、このように、どの位置にあるどのような形状であってもすべて周知の形状であるということに等しい認定は不合理であり、このような認定に基づき、当業者が本件意匠を容易に創作することができたとする審決の判断は誤りである。
被告の反論
1 引用意匠の形状について 審決が引用する各公開実用新案公報には、下方角部の形状を傾斜形状又は曲面形状にした溝蓋が記載されている。実開昭62-3885号公報には、溝蓋の下縁の左右を丸く成形した溝蓋が記載されており、丸く成形する部位が溝蓋の下縁の左右であるならば、これが長手方向か短手方向かを問うものではない。また、実開昭63-95790号公報には、溝蓋の長手方向の下方角部が曲面形状となっている溝蓋が開示されている。
2 引用意匠の周知性について 公開実用新案公報は、実用新案登録出願に係る技術内容を広く一般公衆に知らせることを目的として、特許庁長官が刊行頒布するものであって、全国数十箇所の公衆閲覧所において閲覧可能であり、多くの団体にも頒布されている。また、実開昭58-72286号公報は本件出願の約11年前に、実開昭62-3885号公報及び実開昭63-95790号公報は約7年前に、実開平4-119884号公報は約6年前に、いずれも公開されている。さらに、溝蓋に関する当業者であれば、
平素その情報を調査収集していることは当然である。したがって、上記各公報は、
本件出願当時、当業者に周知であったことが明らかである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(実用新案公報の図面を引用意匠とした違法)について ある時点において意匠が当業者に周知であったかどうかを認定するに当たっては、当該時点の前に刊行されていた各種刊行物等の記載内容を参酌すべきことは当然であって、実用新案公報を除外すべき理由はない。原告の主張は理由がない。
2 取消事由2(引用意匠の形状についての認定の誤り)について (1) 平成3年4月5日に出願され名称を「側溝蓋」とする実開平4-119884号公報(甲第5号証)の考案の構成は、「側溝の両壁間に架け渡して配置される側溝蓋であって、この側溝蓋の他の側溝蓋との突当て面となる両側面の少なくともいずれか一側面の下面側をこの蓋体の閉蓋引起し時において他の側溝蓋の端面との突き当たりを防止する傾斜部を設けてなるものである。」というものであり、本考案に係る側溝蓋を側溝に配置した状態を示す斜視図である図3には、「全体形状を肉厚の横長長方形状板に表し、溝蓋の他短手方向の側面の少なくとも一側面の下面側に傾斜部を設け、一方の短手方向の側面中央に、上面縁から下面縁にかけて、
上面視略倒台形状に切り欠いた浅い凹状の手掛部を設けた」形態のものが図示されている。
(2) 昭和56年11月5日に出願され名称を「取外しの容易な溝蓋」とする実開昭58-72286号公報(甲第2号証の2)の考案の構成は「溝7方向を横切る側壁部3,5が上方から下方にかけて切欠いた如き断面形状を有して成ることを特徴とする溝蓋」というものであり、本考案の実施例の斜視図である第7図には、
「短手方向の両側面に斜傾部を設け、その下端縁を丸面様とした」形態のものが図示されている。
(3) 昭和60年6月22日に出願され名称を「みぞ蓋」とする実開昭62-3885号公報の考案(甲第2号証の3)の構成は、「下が丸くなっているコンクリート製みぞ蓋」というものであり、本考案の実施例を示す第2ないし第4図には、
「短手方向の1側面又は両側面の下端縁を丸面様とした」形態のものが図示されている。
(4) 昭和61年12月6日に出願され名称を「道路側溝用蓋」とする実開昭63-95790号の考案(乙第1号証)の構成は、「4角形状板に形成されたコンクリート側溝用蓋において、中心から任意の1辺側に偏した位置に適宜形状の穴3を貫設すると共に、穴3に近接する1辺側の下面角部を欠除してなる道路側溝用蓋。」というものであり、本考案の実施例の断面図である第3図には、「長手方向の両側面の下端縁を丸面様とした」形態のものが図示されている。
(5) したがって、これらの意匠の形態が、側溝用溝蓋につき、短手方向又は長手方向の側面又は側面の下端縁を極く普通の傾斜面としたり、面取り様としたり、
又は丸面様としたりするものであるとする審決の認定は、是認することができる。
原告の主張は理由がない。
3 取消事由3(引用意匠の周知性についての認定の誤り)について (1) 実開平4-119884号公報(甲第5号証)の考案は平成4年10月27日に、実開昭58-72286号公報(甲第2号証の2)の考案は昭和58年5月16日に、実開昭62-3885号公報(甲第2号証の3)の考案は昭和62年1月10日に、実開昭63-95790号公報(乙第1号証)の考案は昭和63年6月21日に、それぞれ公開された。
(2) ところで、ある意匠が周知であるというためには、当該意匠が一般に知られ得る状態に置かれただけでは足りず、当業者の多くが当該意匠を現実に認識していることを要すると解すべきであるが、他方、公開実用新案公報がその出願に係る技術内容を一般公衆に知らせることを目的として広く頒布されていることは明らかであり、また、上記各公開実用新案公報の公開日は、前記認定のとおり、本件出願の約6年ないし11年前であるうえ、その考案は、いずれも本件意匠の分野に属する溝蓋に関するものであって、溝蓋に関する当業者の目に触れることの多い文書というべきである。
(3) したがって、上記各考案の意匠が側溝用溝蓋としてありふれたものであることも考え併せると、これら意匠が本件出願当時、当業者に周知の形態であったとする審決の認定に誤りはない。この点に関する原告の主張は理由がない。
4 取消事由4(本件意匠の創作容易性についての認定判断の誤り)について (1) 当事者間に争いのない本件意匠の形態は、「全体形状を肉厚の横長長方形状板に表し、一方の短手方向の側面中央に、上面縁から下面縁にかけて、上面視略倒台形状に切り欠いた浅い凹状の手掛部を設け、長手方向の両側面の下端縁を丸面様とした構成態様のものとし、上面を詳細に観ると、周縁は、細く面取りしているもの」である。
(2) そこで、本件意匠の形態のうち、「全体形状を肉厚の横長長方形状板に表し、一方の短手方向の側面中央に、上面縁から下面縁にかけて、上面視略倒台形状に切り欠いた浅い凹状の手掛部を設けた」点について検討する。
前記のとおり、実開平4-119884号公報(甲第5号証)の考案に係る側溝蓋を側溝に配置した状態を示す斜視図には、「全体形状を肉厚の横長長方形状板に表し、溝蓋の他短手方向の側面の少なくとも一側面の下面側に傾斜部を設け、一方の短手方向の側面中央に、上面縁から下面縁にかけて、上面視略倒台形状に切り欠いた浅い凹状の手掛部を設けた」形態のものが図示され、また、実開昭58-72286号公報(甲第2号証の2)の考案の実施例の斜視図には、「短手方向の両側面に斜傾部を設け、その下端縁を丸面様とした」形態のものが図示されている。さらに、実開昭62-3885号公報(甲第2号証の3)の考案の実施例には、「短手方向の1側面又は両側面の下端縁を丸面様とした」形態のものが図示され、実開昭63-95790号公報(乙第1号証)の考案の実施例には、「長手方向の両側面の下端縁を丸面様とした」形態のものが図示されている。
したがって、これら各公報の記載に加え、本件登録意匠における上記の形態自体が側溝用溝蓋のものとして極くありふれたものであることを考え併せると、本件意匠の上記形態は、本件出願当時、当業者に周知の形態であったことが明らかである。
(3) 次に、本件意匠の形態のうち、「上面を詳細に観ると、周縁は、細く面取りしている」という点については、一般に、物品の周縁を細く面取りする構成が意匠の構成として極くありふれたものであることは明らかであり、本件意匠の物品及びその形態に照らしても、本件登録意匠の形態のうち、この点に格別の意匠の創作があったものということはできない。
(4) そうすると、本件意匠は、登録出願前に当業者が周知の形状模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたものということができ、その旨の審決の認定判断は、正当というべきである。原告の主張は理由がない。
5 以上のとおり、審決の取消事由についての原告の主張はいずれも理由がなく、他に審決を取り消すべき事由は認められない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中康久
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利
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