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関連審決 審判1997-9540
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10251審決取消請求事件 判例 意匠
平成17行ケ10227審決取消請求事件 判例 意匠
平成10行ケ42審決取消請求事件 判例 意匠
昭和55行ケ218 判例 意匠
平成19行ケ10390審決取消請求事件 判例 意匠
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  3条1項3号 /  意匠の類否 /  全体観察 /  動的意匠 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 275号 審決取消請求事件
原告 本多通信工業株式会社代表者代表取締役 A
原告 サンクス株式会社代表者代表取締役 B
原告両名訴訟代理人弁理士 C
同 D
被告 特許庁長官E
指定代理人 F
同 G
同 H
同 I
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/02/29
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成9年審判第9540号事件について平成11年7月21日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文と同旨の判決
前提となる事実(当事者間に争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 原告らは、平成7年7月24日、意匠に係る物品を「圧接結線用コネクタ」とし、形態を別紙審決書の理由写し(以下「審決書」という。)別紙第1とする意匠(以下「本願意匠」という。)につき、意匠登録出願(意願平7-21139号)をしたが、平成9年5月1日拒絶査定を受けたので、同年6月12日、拒絶査定不服の審判を請求した。
特許庁は、この請求を平成9年審判第9540号事件として審理した結果、平成11年7月21日、本件審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本は、平成11年8月4日原告らに送達された。
2 審決の理由 審決の理由は、審決書に記載のとおりであり、審決は、本願意匠は、意匠に係る物品を「電気コネクタ」とする登録第835401号意匠(審決書別紙第2。以下「引用意匠」という。)に類似するものであり、意匠法3条1項3号に該当し、意匠登録を受けることができない旨判断した。
(ただし、審決書7頁6行の「前方大きく」は「前方より大きく」の、同頁14行の「圧着端子」は「圧接端子」の誤記と認める。)
審決の取消事由
1 審決の認否 (1) 本願意匠(審決書2頁2行ないし6行)及び引用意匠(同2頁7行ないし13行)は認める。
(2) 両意匠の比較(同2頁14行ないし5頁8行)のうち、「両意匠は、意匠に係る物品が一致」すること(同2頁15行)、及び「図面の表現上、両意匠の態様は異なる」こと(同2頁末行ないし3頁1行)は認め、また、共通点の認定のうち、「両意匠は、電線を端子に圧接して接続する雄型コネクタであ(る)」こと(同3頁7行、8行)、及び差異点の認定(同4頁16行ないし5頁8行。ただし、差異点は他にもある。)は認め、その余は争う。
(3) 共通点、差異点の検討(審決書5頁9行ないし8頁2行)は争う。
(4) まとめ(審決書8頁3行ないし11行)のうち、両意匠は、意匠に係る物品が一致すること(審決書8頁3行、4行)は認め、その余は争う。
2 取消事由 審決は、本願意匠と引用意匠との類否の判断を誤ったものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。
(1) 取消事由1(構成態様の認定の誤り) ア 対比すべき形態の誤り 審決は、「本願意匠は、上方部材の圧接ブロックを仮止めした状態で表したものであるのに対して、引用意匠は上方部材の圧接ブロックを押し下げた状態で表したものであって、図面の表現上、両意匠の態様は異なるが、両意匠に係る物品及びその使用状態を勘案すると、本願意匠について、引用意匠と同様に、圧接ブロックを押し下げた状態の形態(本願の図面の「使用状態参考図」に表れている)を想定して比較しても差し支えないものである」旨(審決書2頁16行ないし3頁6行)判断するが、誤りである。
(ア) 本願意匠に係る圧接結線用コネクタは、6面図に表されている物品の形態、すなわち一端部側(先端部側)でヒンジ部により連結された圧接ブロックが端子ブロックに対して開脚状態に定着された全体形状が商取引の対象となる完成した物品の形態である。
(イ) 被告は、本願意匠と引用意匠は、意匠法6条5項が規定する動的意匠である旨主張するが、少なくとも本願意匠は動的意匠には相当しないのであり、被告の上記主張は誤りである。
すなわち、意匠法6条5項(現行法では4項)にいう「その物品の有する機能に基(づ)いて変化する場合」とは、同じ動作を繰り返し行うことができ、しかも任意でかつ容易に行い得る場合をいうものである。
本願意匠に係る圧接結線用コネクタは、プライヤー等の治具を使用して圧接結線させるものであり、一旦圧接ブロックを端子ブロックに圧着させると、ほとんどの場合開くことはないのであり、同じ動作を任意でかつ容易に繰り返し行うことができないものである。
被告は、引用意匠のものも仮止めされた状態になり得る旨主張するが、仮止めされた状態になり得ることについては、図示されていないし説明もされていないから、引用意匠のものが仮止めされた状態になり得ると認定することは誤りである。
イ 基本的構成態様の共通点の認定の誤り 審決は、両意匠の基本的構成態様として、「その全体形状は、ほぼ中央上面に段差を設けて後方が大きい、大小の略扁平直方体を一体に形成して、奥行きのやや長いものとし、そのほぼ中央から前方を相手方コネクタとの接続部、後方を電線との接続部とし、端子ブロックは、左右端部上方に側板を形成し、圧接ブロックは、その端子ブロックの側面の内側に密接して、端子ブロックの上面前方端部寄りに端子ブロックから一体に連接された直線状のヒンジを支点として全体が上方に動くように形成した基本的構成態様が共通(する)」(審決書3頁11行ないし4頁1行)と認定するが、誤りである。
(ア) 前記アのとおり、本願意匠は圧接ブロックが開脚状態のものとしてとらえられるべきであるから、本願意匠においては、圧接ブロックが端子ブロックに対して後端部が浮き上がった開脚状態にあるのに対し、引用意匠は、圧接ブロックが端子ブロックに対して嵌合した閉脚状態になっているものであって、両者は、物品としての全体形状において、全く異なった形態を呈している。
(イ) しかも、本願意匠においては、電線との接続部はコネクタへの接続部よりも大きく形成されているのに対して、引用意匠においては、コネクタへの接続部の方が電線との接続部よりも大きく形成されているように看取できる点で、物品の形態として全体のイメージが相違している。
ウ 具体的態様の共通点の認定の誤り 審決は、両意匠の具体的な態様における共通点を認定する(審決書4頁1行ないし15行)が、誤りである。
(ア) 審決は、「後方の大きさにつき、上面の段差は、端子ブロックの厚みとほぼ同じ高さとし、両側面側及び底面側は前方より一回り大きく形成し、」(審決書4頁2行ないし5行)と認定しているが、その意味が不明である。
(イ) 審決は、「圧接ブロックにつき、前方は、端子ブロック側板の高さの約半分の厚みの平板状とし、」(同4頁5行、6行)と認定しているが、これも意味が不明である。 (ウ) 本願意匠と引用意匠には、次の点でも差異がある。
a 圧接ブロック前方の上面において、本願意匠は、ガイド用突起が平面部の長さのほぼ中央部まで延びて形成されているのに対して、引用意匠のガイド用突起は平面部の長さのほぼ1/3までしかない。
b 電線との接続部において、本願意匠は、圧接ブロックの両側面にストッパー用の爪部が突出形成されるとともに、切欠凹部の両側にガイドリブが形成されているのに対して、引用意匠は、そのようになっていない。
c 本願意匠は、電線との接続部の底部に、両側壁に近接して2個ずつの長穴を対称的に設けてあるのに対して、引用意匠は、これがない。
エ 差異点の認定の誤り 審決は、差異点@、Aを認定するが(審決書4頁16行ないし5頁8行)、次のように認定すべきである。
(ア) すなわち、差異点@は、上面段差部の態様において、本願意匠は、前面が平坦な垂直壁で直角の段差を形成しているのに対して、引用意匠は、下部側に4個の孔が横方向に等間隔で形成されている傾斜壁で傾斜面の段差に形成されている点とすべきである。
(イ) また、差異点Aとしては、圧接ブロック後方上面の態様において、
(あ)電線確認用孔部の態様において、本願意匠は、段差の直後の上面に浅い凹部を形成し、その凹部に4個の矢印状の切り欠き孔が等間隔で並列状態に設け、垂直壁を電線端部の当接壁としているのに対して、引用意匠は、圧接ブロック後方上面には電線確認用孔部はなく、傾斜壁の下部に設けた点、(い)圧接端子受け入れ口の態様において、本願意匠は、凹部に隣接して後方寄りに4個の孔が横1列に形成されているのに対して、引用意匠は、前方の傾斜壁に隣接して4個の孔を横1列に形成している点、(う)電線押さえ片受け用孔の態様において、本願意匠は、圧接端子受け入れ口に隣接して後端寄りに4個の電線押さえ片受け用孔を横1列に形成しているのに対して、引用意匠には、そのような孔はなく、横方向に2条の帯状の凸部が形成されている点とすべきである。
(2) 取消事由2(類否判断の誤り) ア 全体的類否の判断の誤り 審決は、「両意匠を意匠全体として考察すると、両意匠の前述した基本的構成態様において共通する態様は、意匠全体の基調を成し、両意匠の特徴を最も良く表出したところと認められるものであり、また、この種物品において、両意匠の共通するとした基本的構成態様のうち、とりわけ、圧接ブロックを端子ブロックの上面前方端部寄りに端子ブロックから一体に連接された直線上のヒンジを支点として全体が上方に動くように形成した態様は、引用意匠の出願前には見られない特徴のある態様と認められるから、それ相応の評価をすべきものとするのが相当であり、そうすると、両意匠の共通する基本的構成態様は、共通するとした具体的な態様と相俟って、類否判断を左右するところといわなければならない」旨(審決書5頁10行ないし6頁4行)判断するが、誤りである。
(ア) 登録第986298号意匠(甲第8号証資料3)のものも、圧接ブロックが端子ブロックに対してヒンジを支点として全体が上方に動く態様になっており、これが意匠として登録されている。この事実によれば、圧接ブロックがヒンジを支点として上方に動く態様を特徴のあるものと認め、類否判断を左右するとした審決の上記判断は誤りである。
(イ) また、両意匠の類否判断をする上で、公知の形態を除外して観察しなければ、引用意匠はその公知の形態までも権利範囲として含むことになり、不当に拡大したものになってしまうから、公知形状は当然除外して判断されなければならない。
本件において、基本的構成態様のうち、「その全体形状は、ほぼ中央上面に段差を設けて後方が大きい、大小の略扁平直方体を一体に形成して、奥行きのやや長い」(審決書3頁11行ないし14行)との態様は、実開昭62-145274号公報(甲第9号証)に開示されたコネクタプラグの輪郭形状とほぼ同じであり、公知の形状である。
したがって、審決には、右公知形状を含めた形状を基本的構成態様として類否判断した誤りがある。
イ 差異点@についての判断の誤り 審決は、差異点@上面段差部の態様の差異について、実開昭62-145274号公報(甲第9号証)を引用して、上面中央部に直角の段差部を設けたものが、本願の意匠の出願前にみられることから、本願意匠の段差部の態様は、本願の意匠独自の態様とはいえないものであるから、意匠上高く評価できない旨(審決書6頁5行ないし14行)、また、前記の基本的構成態様において共通する態様に吸収される程度の軽微なものといわざるを得ない旨(同6頁15行ないし7頁1行)判断するが、誤りである。
(ア) 甲第9号証に示されたコネクタプラグは、別体に形成したコネクタカバーを取り付けることにより、そのコネクタカバーの厚みに対応した段差が生じているにすぎない。
(イ) これに対し、本願意匠における圧接ブロックに設けた垂直な段差部は、垂直に切り立った壁部であって、カバーを取り付けることによって生ずる段差ではない。そして、垂直に切り立った壁部を設けている構成態様は、圧接ブロックの後面側から挿通させた接続線の端部がその壁部に突き当たって位置決めされる重要な構成態様である。
しかも、「ほぼ中央上面に段差部を設けて後方が大きい、大小の略扁平直方体を一体に形成して奥行きのやや長いものとした態様」は、本願意匠及び引用意匠にとって公知、周知形状なのであるから、その公知、周知形状において、本願意匠は、
前面が平坦な垂直壁部で段差部を形成している点に特徴があり、引用意匠は、4個の孔が横方向に等間隔で形成されている傾斜壁で傾斜面の段差部を形成している点に特徴があるものである。
したがって、本願意匠における垂直に切り立った壁部の構成態様を軽微とした審決の判断は誤りである。
(ウ) なお、被告は、甲第9号証の第1図及び第2図を引用して、本願意匠の段差部の態様は、本願意匠独自の態様とはいえないものであるから、意匠上高く評価できない旨主張するが、この主張は、引用の意匠との類否の判断ではなく、本願意匠の創作性について判断をしているものであり、誤りである。
ウ 差異点Aについての判断の誤り (ア) 審決は、差異点A(ア)の圧接ブロック後方上面の態様の差異について、基本的構成態様に包摂される程度の軽微な差異というほかない旨(審決書7頁1行ないし9行)と判断するが、誤りである。
本願意匠においては、垂直に切り立った壁部の直後の上面に浅い凹部を形成し、
その凹部に4個の矢印状の切り欠き孔が設けられていることによって、接続線を挿着した位置・状態を変えることなく、直ちに挿着した接続線の位置決めと接続線の存在とを一目で確認でき作業性を良好にしているのである。
これに反して、引用意匠は、接続線の挿着作業の際に、圧接ブロックを持ち上げた状態に維持しながら、接続線を挿着し、その接続線の先端部が突き当たる部材が存在しないことから、その先端部がテーパー面に設けた穴の位置まで達しているか否かを、位置を変えて、穴を覗きながら挿着長さを順次調整しなければならないばかりでなく、接続線の先端部の位置にバラツキが生じ、特に、接続線の先端部が穴から少しでも突出していると、外部の金属と接触してスパークするなどの不都合も生ずるのである。
したがって、確認用孔部の態様についての差異は、極めて重要なものであって、
差異点の効果として看過されるべきものではない。
(イ) 審決は、差異点A(イ)の後端寄り部の態様について、「主として電線押さえ片受け用孔の有無であるが、本願意匠にみられる孔の大きさは、圧接端子受け入れ用口より小さいものであるから、意匠全体としてみた場合、前方の圧接端子受け入れ用口及び電線確認用孔の共通する態様に比して、意匠上高く評価することができず、軽微な差異というほかない」旨(審決書7頁10行ないし16行)判断するが、誤りである。
圧接端子受け入れ用口と電線押さえ片受け用孔とが2列8個存在するか否かは、
大きさの大小に関係なく引用意匠との差異として極めて重要な構成態様である。
(ウ) 審決は、「これらの差異点を総合し相俟った効果を考慮しても、前記した類否判断を左右するところの共通する態様を凌駕するものとは認められない」旨(審決書7頁19行ないし8頁2行)判断するが、誤りである。
上記に検討した点からすると、差異点を総合して考慮すれば、審決認定の共通する態様を凌駕することは明らかである。
審決の取消事由に対する認否及び反論
1 認否 原告ら主張の取消事由は争う。
2 反論 (1) 取消事由1(構成態様の認定の誤り)について ア 対比すべき形態について (ア) 両意匠は、共に電線を圧接ブロックの後方から挿入した後、圧接ブロックを前端のヒンジを支点として端子ブロック側へ押し下げることによって電線と端子とを接続するタイプの電気コネクタに係るものであって、意匠法6条5項が規定する動的意匠である。すなわち、本願意匠の6面図に現された仮止め状態(商取引状態)がプライヤー等を用いなければ押し下げられないほどしっかり止まっているとしても、圧接結線型のコネクタとして、電線を圧接ブロックの後方から挿入した後、圧接ブロックを上面前方端部寄りのヒンジを支点として端子ブロック側へ押し下げない限り使用することができないものであるから、この意味において、形状が変化する動的意匠である。
そして、動的意匠の類否判断に当たっては、物品及び使用状態を考慮して、意匠創作の中心となるその物品本来の機能、使用目的を果たす状態の形態を「主たる形態」として認定し、両意匠を同じ状態で比較、認定するのが至当である(例えば、
車であれば、ドアを開けた状態ではなく、走行するために閉めた状態の形態。)。
そうすると、両意匠の物品が電気コネクタで、その本来の機能、使用目的が電線を圧接して端子に接続し、最終的に相手方コネクタと接続することにあるから、圧接ブロックを端子ブロック側へ押し下げた状態の形態を主たる形態として認定するのが相当である。
(イ) したがって、審決が圧接した状態の主たる形態同士で両意匠を認定して両意匠を比較・検討したことに誤りはない。
イ 基本的構成態様の共通点の認定について (ア) 前記アのとおり、審決が圧接した状態の主たる形態同士で両意匠を認定して両意匠を比較・検討したことに誤りはない以上、本願意匠を開脚した状態で認定することを前提とする原告らの上記主張は理由がない。
(イ) 電線との接続部とコネクタへの接続部との大小は、基本的構成態様として認定されるべきものではない。
ウ 具体的態様の共通点の認定について (ア) 「後方の大きさにつき、上面の段差は、端子ブロックの厚みとほぼ同じ高さとし、両側面側及び底面側は前方より一回り大きく形成し、」(審決書4頁2行ないし5行)との認定は、段差の大部分を占めている圧接ブロック自体の段差の高さを認定したものであり、前端面に現れている下方の端子ブロックの厚みと比較し、ほぼ同じ高さであると認定したものである。
(イ) 「圧接ブロックにつき、前方は、端子ブロック側板の高さの約半分の厚みの平板状とし、」(審決書4頁5行、6行)との認定は、圧接ブロックの前方の厚みは、前方の側板の高さの約半分であることを認定したものである。
(ウ) 原告らが主張する審決認定以外の差異点は、意匠の類否の判断に影響を与えるものではなく、具体的態様における差異点として認定する必要のないものである。
エ 差異点の認定について 原告らは、審決の認定と異なる差異点@、Aを主張するが、それは、審決の認定した差異点をより具体的に述べているにすぎず、審決認定の差異点と実質的に異なるものではない。
(2) 取消事由2(類否判断の誤り)について ア 全体的類否の判断について (ア) 甲第8号証資料3の意匠は、本願意匠が「雄型コネクタ」であるのに対して、「雌型コネクタ」であり、しかも、全体形状に相当特徴があることから登録されたと思われ、本件と事案を異にするものである。
(イ)a 意匠の類否判断においては、あくまでも両意匠の形態を全体として対比観察しつつ、総合的に評価すべきであって、公知形状部分については、その類否判断における影響力の評価を下げることはあっても、公知形状部分を単純に除いてしまって残った部分の態様のみを採り上げて判断すべきものではない。その理由は、両意匠の共通する構成態様が公知であるからといって、それらを除外して判断すると、形態のほとんどが公知の構成態様からなる出願意匠の場合は、引用意匠とのわずかな差異が評価され登録されることになり、意匠的創作性のほとんど認められない意匠が登録保護されることになって、意匠法の趣旨に反することになるからである。
b そして、原告が主張する公知形状は、両意匠が共通するとした基本的構成態様のうちの全体形状(ほぼ中央上面に段差を設けて後方が大きい、大小の略扁平直方体を一体に形成して、奥行きのやや長いもの)のみであって、公知形状が基本的構成態様のすべてではないのである。
c 審決は、公知形状である全体形状を含めて、その他の共通する基本的構成態様、特に、圧接ブロック全体が前方のヒンジを支点として上方に動く態様が極めて特徴のある態様であるとして、その態様を中核として高く評価したものである。
また、圧接の態様が、引用意匠の出願前には、甲第9号証(後方のカバーが分離する。)及び乙第3号証(ヒンジが中間部にある。)に示されるようなものは見受けられるが、本願意匠と引用意匠の特徴とした態様(圧接ブロック全体が前方のヒンジを支点として上方に動く態様)のものは、他に全く見受けられないものであるから、この態様は、引用意匠の出願時点で嚆矢であり、また、その態様は形態全体の基調を決定づけているものであるから、全体観察において、最も看者の注意を惹きつける部分であり、両意匠に共通した最も強い印象を与えるところといえるものである。
イ 差異点@についての判断について (ア) 原告は、主として本願意匠と甲第9号証の意匠について、その段差部に係る機能の差異を主張しているが、審決は、本願意匠の上面の段差部の形態上の態様、すなわち、「全体形状において、上面中央部に直角の段差部を設けたもの」(審決書6頁7行、8行)として、段差部の外観形状が直角のものが本願出願前にみられることの一例として、「本願の意匠と圧接の態様が異なるが、」(同6頁6行、7行)と断り書きをした上で、甲第9号証の意匠を挙げたものである。
したがって、段差部に係るその内部の機能面の差異を根拠とする軽微なものではないとの主張は、審決の論旨と次元を異にする当を得ないものである。
(イ) また、原告は、本願意匠の壁部は、圧接ブロックの後面より挿入された電線が突き当たって位置決めされるためのものであるから、機能的に重要な構成態様である旨主張するが、電線を位置決めするために電線が突き当たるように壁部を形成しているものが、この種物品において、例えば、実開平4-72553号公報(乙第4号証)の第1図及び第2図に示された電線接続用コネクタの意匠(10ハウジングの18電線受け面)、特開平4-277471号公報(乙第5号証)の【図1】及び【図3】に示された電線用コネクタの雄ハウジング8の意匠に見られるように、本願の出願前に見られることから、本願意匠の壁部の態様は、本願の意匠独自の態様とはいえないものであり、意匠上高く評価できないものである。
そして、機能上の差異はあるとしても、形態上の差異については、本願意匠の壁部が、意匠全体からみれば、後方の大きいほぼ扁平直方体の前端部という一部分を形成しているにすぎないものであることから、その意匠的効果はさほどのものではないというほかなく、その差異は部分的なものといわなければならない。
ウ 差異点Aについての判断について (ア) 一般に、意匠の類否判断は、単に各部を個別に比較・評価することのみによって判断するものではなく、各部の比較を踏まえた上で、もう一度全体観察に戻し、そして共通点の評価と差異点の評価を衡量・集積することによって、総合的に判断するものである。したがって、原告らの主張は、単に差異点からのみする評価・判断であって、意匠全体として、共通する基本的構成態様及び具体的な態様との比較において衡量がなされているものでないから、説得力に欠け、妥当とはいえないものである。
そして、審決は、意匠全体として見た場合として、差異点A(ア) 電線確認用孔部の態様の差異として、両意匠の共通する基本的構成態様のうち、「全体を後方を前方より大きく形成し、圧接ブロックを前端部寄りのヒンジを支点として上方へ動くように形成した態様」(審決書7頁6行ないし8行)を高く評価し、上記差異は、
この態様に包摂される程度のものとして衡量し、軽微な差異と判断したのである。
(イ) また、差異点A(イ)後端寄り部の態様の差異について、主として電線押さえ片受け用孔の有無の差異として、その孔の大きさが、圧接端子受け入れ用口より小さいことと、前方の圧着端子受け入れ用口及び電線確認用孔の態様が共通することとを衡量し、その孔を意匠上高く評価することができないとして、その差異を軽微なものと判断したのである。
(ウ) 以上によれば、審決の差異点を総合し相俟った効果を考慮しても、前記した類否判断を左右するところの共通する態様を凌駕するものとは認められないとした審決の判断にも誤りはない。
理 由1 物品の一致等 (1) 本願意匠及び引用意匠 審決の理由のうち、本願意匠(審決書2頁2行ないし6行)及び引用意匠(同2頁7行ないし13行)は、当事者間に争いがない。
(2) 物品の共通等 両意匠の比較(審決書2頁14行ないし5頁8行)のうち、両意匠は、電線を端子に圧接して接続する雄型コネクタであり(同3頁7行、8行)、意匠に係る物品が一致すること(同2頁15行)は、当事者間に争いがない。
2 取消事由1(構成態様の認定の誤り)について (1) 比較すべき対象 前記説示の本願意匠の形態によれば、本願意匠の物品は、圧接ブロックを仮止め状態(開脚状態)に保つためのストッパを有することが認められ、この事実に、甲第11号証及び弁論の全趣旨によれば、本願意匠の物品は、販売時を含む使用前は、開脚状態(仮止め状態)にあり、電線を端子に接続する際には、プライヤー等を使用して圧接するものであり、圧接後は、閉脚状態のまま使用されるものであり、再度開脚状態に戻すことは困難であることが認められる。
他方、前記説示の引用意匠の形態によれば、仮止めのためのストッパのようなものは見いだせないから、販売時を含む使用前は、通常、閉脚状態にあるが、開脚状態にしてみることもできるものであり、電線と端子との接続作業時には、指で押さえるなどして開脚状態にし、その後、圧接ブロックを押し下げて電線と端子とを接続させるものであることが認められる。
以上の事実によれば、本願意匠と引用意匠とは、販売段階から接続作業の前までの段階においては、通常、開脚状態にあるか閉脚状態にあるかの差異があるが、圧接後の使用状態においては、両者とも閉脚状態にあるものである。
したがって、両意匠の比較は、本来の使用状態である圧接状態、すなわち閉脚状態における状態を比較して行うのが相当であり、これと同旨の審決の判断に誤りはない。
(2) 基本的構成態様の共通点の認定について ア 前記説示の両意匠の形態によれば、両意匠は、「その全体の構成は、電線挿入口を設けた電線接続部を有する上方部材の圧接ブロックと雌型端子を装着した下方部材の端子ブロックとの2部材からなり、その全体形状は、ほぼ中央上面に段差を設けて後方が大きい、大小の略扁平直方体を一体に形成して、奥行きのやや長いものとし、そのほぼ中央から前方を相手方コネクタとの接続部、後方を電線との接続部とし、端子ブロックは、左右端部上方に側板を形成し、圧接ブロックは、その端子ブロックの側板の内側に密接して、端子ブロックの上面前方端部寄りに端子ブロックから一体に連接された直線状のヒンジを支点として全体が上方に動くように形成した基本的構成態様が共通(する)」(審決書3頁8行ないし4頁1行)ものと認められる。
イ 原告らは、圧接ブロックが開脚状態のものとして本願意匠をとらえるべきことを前提として、両意匠の基本的構成態様の相違を主張するが、その前提自体が容れられないことは、前記(1)のとおりであり、この点についての原告らの主張は理由がない。
また、原告らは、本願意匠においては、電線との接続部とコネクタへの接続部との大小関係も基本的構成態様の相違として認定すべきである旨主張するが、この点は具体的態様における相違であり、基本的構成態様の相違に当たるとまで認めることはできないから、原告らの主張は採用することができない。
(3) 具体的態様の共通点の認定について 前記説示の両意匠の形態によれば、両意匠は、具体的態様において、全体形状中の後方の大きさにつき、圧接ブロックの段差の高さは、前端面に現れている端子ブロックの厚みとほぼ同じ高さとし、両側面側及び側面側は前方より一回り大きく形成し、圧接ブロックの前方上面は、端子ブロック側板の高さの下から約3/4の高さに位置する平板状とし、その前端寄り部の中央部に平面視矩形状の切り欠きを設け、後方は、端子ブロック側板の高さとほぼ同じ高さで、後端を端子ブロックの後端と一致するように形成し、後面に電線挿入口を横一列に4個配設し、上面の前方側から順次電線確認用孔、圧接端子受け入れ用口を横一列に各4個設け、端子ブロックにつき、前面に矩形状の相手方端子受入れ口を横一列に4個設けた態様が共通していることが認められる。
(4) 差異点の認定について ア 前記説示の両意匠の形態によれば、@上面段差部の態様において、本願意匠は、直角の段差を形成しているのに対して、引用意匠は、傾斜面を形成している点、A圧接ブロック後方上面の態様において、(ア)電線確認用孔部の態様において、
本願意匠は、後方の上面を浅い凹状に形成して、その部位に4個の矢印状の切り欠き孔が等間隔で並列状態に設け、前端を当接壁としているのに対して、引用意匠は、傾斜面の先端部に孔を設けた点、(イ)圧接端子受け入れ用口の態様において、本願意匠は、後方の上面の凹状部に隣接して後端寄りに形成されているのに対して、
引用意匠は、前端の傾斜面に隣接して形成している点、(ウ)電線押さえ片受け用孔又は後方の上面後端寄り部の態様において、本願意匠は、圧接端子受け入れ用口に隣接して後端寄りに4個の電線押さえ片受け用孔を横一列に形成しているのに対して、引用意匠にはそのような孔はなく、横方向に2条の帯状の凸部が形成されていることが認められる(一部は、当事者間に争いがない。)。
イ さらに、原告らが指摘する差異点として、
(ア) 圧接ブロック前方の上面において、本願意匠においては、ガイド用突起が平面部の長さのほぼ中央部まで延びて形成されているのに対して、引用意匠のガイド用突起は平面部の長さのほぼ1/3までしかない、
(イ) 電線との接続部において、本願意匠は、圧接ブロックの両側面にストッパー用の爪部が突出形成されるとともに、凹状部の両側にガイドリブが形成されているのに対して、引用意匠は、そのようになっていない点で異なる、
(ウ) 本願意匠は、電線との接続部の底部に、両側壁に近接して2個ずつの長穴を対称的に設けてあるのに対して、引用意匠は、これがない、
点があることが認められる。
3 取消事由2(類否判断の誤り)について (1) 全体的類否の判断について ア 両意匠の基本的構成態様において共通する態様は、意匠全体の基調をなし、両意匠の特徴を最もよく表出したところと認められ、特に、圧接ブロックを端子ブロックの上面前方端部寄りに端子ブロックから一体に連接された直線上のヒンジを支点として全体が上方に動くように形成した態様は、引用意匠の出願前には見られない特徴のある態様と認められるから、両意匠の類否の判断において重視されるべき点であると認められる。
イ 原告らは、登録第986298号意匠(甲第8号証資料3)においても、
圧接ブロックが端子ブロックに対してヒンジを支点として全体が上方に動く態様になっており、これが意匠として登録されている事実を考慮すると、圧接ブロックがヒンジを支点として上方に動く態様を特徴のあるものと認め、類否判断を左右するとした審決の上記判断は誤りである旨主張する。
しかしながら、甲第8号証によれば、原告ら指摘の登録第986298号意匠は、本件意匠とは異なり、ヒンジが端子ブロックの前端からかなり内部に入った位置にあり、圧接されると全体として直方体の形状となり、かつ、左右側面部に比較的太い5本の縦線が入れられているなどの点でも特徴があることが認められるから、上記登録第986298号意匠が登録されたことをもって、「圧接ブロックを端子ブロックの上面前方端部寄りに端子ブロックから一体に連設された直線上のヒンジを支点として全体が上方に動くように形成した態様」が両意匠の類否の判断において重視することができないものということはできない。
また、原告らは、公知形状は当然除外して判断されなければならないところ、本件において、基本的構成態様のうち、「その全体形状は、ほぼ中央上面に段差を設けて後方が大きい、大小の略扁平直方体を一体に形成して、奥行きのやや長い」との態様は、実開昭62-145274号公報(甲第9号証)に開示されたコネクタプラグの輪郭形状とほぼ同じであり、公知の形状であるから、右公知形状を含めた形状を基本的構成態様として類否判断した審決には誤りがある旨主張する。
しかしながら、公知の形状であるからといって、基本的構成態様から当然に除外して類否を判断をすべきものと解することはできないから、この点についての原告らの主張は採用することができない。
(2) 差異点@についての判断について 審決は、差異点@上面段差部の態様の差異について、上面中央部に直角の段差部を設けたものが、本願の出願前にみられることから、本願意匠の段差部の態様は、
本願意匠独自の態様とはいえず、意匠上高く評価できない旨(審決書6頁7行ないし14行)また、前記の基本的構成態様において共通する態様に吸収される程度の軽微なものといわざるを得ない旨判断する。
ア しかしながら、上面段差部の態様が直角か傾斜面を形成しているかの差異点@は、両意匠の基本的構成態様についての差異ともいうべきものであり、両意匠が角張ったものか、滑らかな形状のものかという美感の相違に影響するものと認められ、両意匠の類否の判断において相当の評価を与えるべきものと認められる。
イ 次に、上面中央部に直角の段差部を設けたものが、本願の出願前にみられることから、本願意匠の段差部の態様は、本願意匠独自の態様とはいえず、意匠上高く評価できないとの点については、甲第9号証によれば、実開昭62-145274号公報の第1図及び第2図には、審決認定のとおり、全体形状において、上面中央部に直角の段差部を設けたケーブル接続用コネクタプラグが示されていることが認められる。しかしながら、このコネクタプラグは、審決が自認するとおり、本願意匠のように、圧接ブロックを端子ブロックの上面前方端部寄りに端子ブロックから一体に連接された直線上のヒンジを支点として全体が上方に動くように形成した態様のものとの組合せにおいて、中央部に直角の段差を設けたものではなく、コネクタベースに別体に形成したコネクタカバーを上部から取り付けることにより形成される態様のものにおける上面中央部の直角の段差部を示すものにすぎず、本願意匠における上記の点が本願の出願前にみられていたことを認めるに足りる他の証拠もないから、本願意匠の段差部の態様は、審決が説示するよりは、意匠上高く評価されるべきものである。
(3) 差異点Aについての判断について ア 審決は、差異点A(ア)の電線確認用孔部の態様の差異について、基本的構成態様に包摂される程度の軽微な差異というほかない旨判断する。
しかしながら、本願意匠においては、垂直に切り立った壁部の直後の上面に浅い凹部を形成し、その凹部に4個の矢印状の切り欠き孔を設けたものであるが、上記矢印状の切り欠き孔は、圧接ブロック後方上面を前後方向の長さで半分程度を占める大きさのものであり、しかも、その形状も特徴のあるものであるから、両意匠の類否の判断において相当の評価が与えられるべき点であると認められる。
イ また、差異点Aのうち、本願意匠においては、圧接端子受け入れ用口に隣接して後端寄りに4個の電線押さえ片受け用孔を横一列に形成しているのに対し、
引用意匠にはそのような孔がないという点は、それのみを取り上げれば、審決が説示するように意匠全体からみて軽微な差異ともいえるが、上記アの電線確認用孔の態様の差異と相まって、両意匠の圧接ブロック後方上面の態様が看者に与える美感を異ならせる要素となっているものと認めることができる。
ウ 原告ら主張のその余の差異点は、意匠全体として見た場合、両意匠の類否判断を左右する要素とするほどのものとは認められない。
(4) 総合的判断について 以上に検討した点を総合して判断すると、両意匠の基本的構成態様において共通する態様は、意匠全体の基調をなし、両意匠の特徴を最もよく表出したところと認められ、特に、圧接ブロックを端子ブロックの上面前方端部寄りに端子ブロックから一体に連設された直線上のヒンジを支点として全体が上方に動くように形成した態様は、引用意匠の出願前には見られない特徴のある態様と認められるから、両意匠の類否の判断において重視されるべき点であることは、審決が判断するとおりである。
しかしながら、上面段差部の態様が直角か傾斜面を形成しているかの差異点@は、両意匠の基本的構成態様における相違というべきものであり、両意匠が角張った形状のものか、滑らかな形状のものかという美感の相違に影響しているものであり、両意匠の類否の判断において相当程度評価されるべき点である。
さらに、差異点Aのうち、本願意匠において、電線確認用孔部として、垂直に切り立った壁部の直後の上面に浅い凹部を形成し、その凹部に4個の矢印状の切り欠き孔を設けた点は、上記矢印状の切り欠き孔は圧接ブロック後方上面を前後方向の長さで半分程度を占める大きさのものであり、その形状も特徴のあるものであるから、やはり両意匠の類否の判断において相当の評価が与えられるべきものである。
そして、この点の差異は、本願意匠において、圧接ブロック上面後端寄りに4個の電線押さえ片受け用孔が横一列に形成されていることと相まって、圧接ブロックの後方上面の態様が看者に与える美感を引用商標のそれと異ならせているものということができる。
これらの点を総合して判断すると、上記差異点は、前記基本的構成態様及び具体的態様における共通点が醸し出す共通感を凌駕し、両意匠の美感の相違をもたらすものと認められる。
これに反する被告の主張は採用することができない。
(5) まとめ 以上によれば、審決のした両意匠の類否判断は誤りであり、原告ら主張の取消事由2は理由がある。
4 結論 よって、原告らの請求を認容することとし、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成11年12月21日)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 市川正巳
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