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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12ネ54意匠権侵害差止等請求控訴事件 判例 意匠
関連ワード 意匠の実施 /  産業の発達 /  物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  部品 /  意匠の類似 /  意匠の類否 /  本意匠 /  先使用(29条) /  登録意匠 /  類似範囲 /  間接侵害 /  差止請求(差止) /  損害賠償 /  通常実施権 /  特許権 /  商標権 /  権利濫用(権利の濫用) /  実施料相当額 /  類似性(類否判断) /  損害額 / 
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事件 平成 7年 (ワ) 4285号 意匠権侵害差止等請求事件
原告 新興機械工業株式会社右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 中務嗣治郎
同 加藤幸江
同 中務尚子
被告 株式会社宝精密右代表者代表取締役 【B】 右訴訟代理人弁護士 井岡三郎
同 桑森ひとみ右井岡三郎訴訟復代理人弁護士 本渡諒一
同 鎌田邦彦
同 外川裕
同 「薫
同 許功右本渡諒一訴訟復代理人弁護士 木島喜一
同 伊藤孝江
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1999/11/30
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告は、別紙1ないし3各記載のばね製造機の線ガイドをそれぞれ製造、販売してはならない。
二 被告は、パンフレット(価格表)及び請求書に、ばね製造機の先端線ガイドの名称として、「FWG」の商標を付してはならない。
三 被告は、別紙4及び同5各記載のばね製造機のスプリングチャックをそれぞれ製造、販売してはならない。
四 被告は、原告に対し、金四六万三八四〇円及びこれに対する平成七年五月三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
五 原告のその余の請求を棄却する。
六 訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
七 この判決の第一ないし第四項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
一 被告は、別紙1ないし3各記載のばね製造機の線ガイドをそれぞれ製造、販売してはならない。
二 被告は、その発行するパンフレット及び請求書に、その販売する被告製品の名称として「FWG」の標章を付し、そのほか被告製品の広告として「FWG」なる標章を付してはならない。
三 被告は、別紙4及び同5記載のスプリングチャックを製造、販売してはならない。
四 被告は、原告に対し、金九〇〇万円及びこれに対する平成七年五月三日から支払済みに至るまで、年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、ばね製造機及びそのツールを製造、販売する原告が、被告に対し、
@被告の製造、販売するばね製造機の先端線ガイド(イ号ないしハ号物件)は原告が有する意匠権を侵害する、A被告が先端線ガイドに使用する標章は、原告が有する商標権を侵害する、B被告が製造、販売するスプリングチャックは、原告が有する特許権間接侵害に該当する、として、それぞれの製造販売又は使用の差止め及び損害賠償を請求している事案である。
一 当事者間に争いがない事実 1 意匠権 (一) 原告の権利 原告は、次の各意匠権(以下、(1)の意匠権を「本件第一意匠権」、その意匠を「本件第一意匠」と、(2)の意匠権を「本件第二意匠権」、その意匠を「本件第二意匠」という。)の権利者である。
(1) 登録番号 第八二二五四五号 出願日 昭和六三年一〇月一七日 登録日 平成三年八月八日 意匠に係る物品 ばね製造機の線ガイド 登録意匠 別紙原告意匠目録(一)記載のとおり (類似意匠) 登録番号 第八二二五四五の類似一 出願日 昭和六三年一〇月一七日 登録日 平成三年八月八日 意匠にかかる物品 ばね製造機の線ガイド 登録類似意匠 別紙原告意匠目録(一)の二記載のとおり (2) 登録番号 第八三四九九五号 出願日 昭和六三年一〇月一七日 登録日 平成四年一月一七日 意匠に係る物品 ばね製造機の線ガイド 登録意匠 別紙原告意匠目録(二)記載のとおり (二) 被告は、原告の製造にかかるばね製造機に取り付ける専用ツールとして、別紙1記載のばね製造機の線ガイド(以下「イ号物件」といい、その意匠を「イ号意匠」という。)、別紙2記載のばね製造機の線ガイド(以下「ロ号物件」といい、その意匠を「ロ号意匠」という。)及び別紙3記載のばね製造機の線ガイド(以下「ハ号物件」といい、その意匠を「ハ号意匠」という。
2 商標権 (一) 原告の権利 原告は、次の商標権(以下「本件商標権」といい、その商標を「本件商標」という。)の権利者である。
登録番号 第二五八九四九八号 出願日 平成三年五月二四日 登録日 平成五年一〇月二九日 登録商標 FWG(別添商標公報参照) 指定商品 産業機械器具、動力機械器具(電動機を除く)、風水力機械器具、事務用機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)その他の機械器具で他の類に属しないもの、これらの部品および附属品(他の類に属するものを除く)機械要素 (二) 被告は、自社が製造・販売する先端線ガイドについて、販売パンフレット(価格表)及び請求書に「FWG」なる表示をしている。
(三) 被告の使用する右表示「FWG」は、外観、称呼において原告の本件商標と同一である。
3 特許権 (一) 原告の権利 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明を「本件特許発明」という。)の権利者である。
発明の名称 ばね半製品のフック起こし装置 登録番号 第一四六六五三六号 出願日 昭和五八年二月二二日(特願昭五八-二七八九三号) 出願公告日 昭和六三年四月一二日(特公昭六三-一七〇一六号) 登録日 昭和六三年一一月一〇日 特許請求の範囲 【請求項1】 ばね製造機9より製造されたばね半製品1をテーブル12上方のフック起こし加工部10に移送する、先端にばね半製品挟持具20を有する上下揺動自在の揺動アーム17と、前記フック起こし加工部10に移動した状態のばね半製品挟持具20を挟持固定する一対の挟持片78、78を有する固定具75と、前記ばね半製品挟持具20に挟持されたばね半製品1を回転させてその位置を制御する位置制御具48と、フック起こし加工部10に向かって進退自在な一対の、フック起こし工具67、70用のスライド60、60とを有しており、前記位置制御具48にばね半製品1のフック4を引っ掛ける垂下突起49が設けられ、この位置制御具48がテーブル12に対して上下揺動自在の揺動体44に回転自在に設けられているばね半製品のフック起こし装置。
【請求項2】 前記スライド60に工具保持具69が上下揺動自在に取付けられていて、その前端がスライド60の前進に伴って上昇するようになされている特許請求の範囲第1項記載のばね半製品のフック起こし装置。
(別添特許公報(以下「本件特許公報」という。)該当欄参照) (二) 本件特許発明の作用効果 本件公報には、本件特許発明の作用効果として、次のような記載がある。
(1) 上下揺動自在の揺動体に位置制御具が回転自在に設けられ、この位置制御具によってばね半製品のフックの向きを調整するので、フック起こし工具によるフック起こしを確実かつ正確に行うことができる。
(2) 半製品を保持した、半製品挟持具(ホルダー)を、一対の挟持片を有する固定具で保持して、フック起こしを行えるものであるから、すなわち、半製品の持ち替えを行う必要がないので、作業効率を高めることができる。
(三) 被告は、別紙4記載のスプリングチャック(以下「ニ号物件」という。)及び同5記載のスプリングチャック(以下「ホ号物件」といい、ニ号物件と併せて「被告スプリングチャック」という。)を製造、販売している。
被告スプリングチャックは、ばね製造機により製造されたばね半製品を挟持するばね製造挟持具であり、ばね半製品をフック起こし加工部に移送する誘導アームの先端に装着される。被告スプリングチャックは、本件特許発明の実施品である原告の製造にかかるばね半製品のフック起こし装置に装着されて使用されるものであり、他の機械に装着することはできない。
三 争点 1 意匠権侵害 (一) イ号意匠は本件第一意匠に類似するか。
(二) ロ号意匠は本件第一意匠に類似するか。
(三) ハ号意匠は本件第二意匠に類似するか。
(四) 被告は、本件各意匠権について、先使用に基づく通常実施権を有するか。
(五) 原告の損害額 2 商標権侵害 (一) 被告は、「FWG」の表示を商標として使用しているか。
(二) 本件商標は普通名称か。
(三) 被告は、本件商標権について、先使用に基づく通常実施権を有するか。
3 特許権侵害 (一) 被告スプリングチャックは、本件特許権の技術的範囲に属する物の製造にのみ使用される物であって、その製造が本件特許権間接侵害に当たるか。スプリングチャックは本件特許権の技術的範囲に含まれるか。
(二) 原告の損害額 四 当事者の主張 1 争点1(意匠権侵害)について (一) 争点1(一)(イ号意匠と本件第一意匠の類否)について 【原告の主張】 (1) 本件第一意匠の構成は、別紙6【原告の主張】欄記載のとおりである。
(2) イ号意匠の構成は、別紙7【原告の主張】欄記載のとおりである。
(3) 本件第一意匠とイ号意匠の構成を対比すると、その構成は同一であるから、イ号意匠は本件第一意匠と類似する。
【被告の主張】 (1) 本件第一意匠の構成は、別紙6【被告の主張】欄記載のとおりである。
(2) イ号意匠の構成は、別紙7【被告の主張】欄記載のとおりである。
(3) 本件第一意匠とイ号意匠は、ボルト挿通孔の位置と右半体の上側面の水平面の形状において異なる。すなわち、ボルト挿通孔の位置は、本件第一意匠では、右半体の右側端線と左半体の左側端線とを対辺として構成される四角形の内側に形成されているのに対し、イ号意匠では、右半体の右側端線と左半体の左側端線とを対辺として構成される四角形の外側にはみ出して形成されている。また、右半体の上側面の水平面は、本件第一意匠では、突合せ部側から右第二線を越えた位置まで伸びているのに対し、イ号意匠では、突合せ部側から右第二線の位置までで終っている。
(4) 線ガイドは、本件各意匠権の出願以前から、製造するばねの大きさや形状に応じて、ばねが線ガイドやカッター、曲げダイスなどの補助ツールに接触しないように、ばね製造機のユーザーにより臨機応変に削って加工して使用されていた。したがって、線ガイドをばね製造に際して加工、変形すること、段落としを形成することは自由技術の一つである。
被告は、原告の本件各意匠権出願以前の昭和六二年から別紙目録A記載の意匠(以下「A意匠」という。)及び同目録B記載の意匠(以下「B意匠」という。)を有する線ガイドを製造、販売し、公然実施してきたのであるから、A意匠及びB意匠は公知意匠である。本件各意匠は、公知公用であったA意匠及びB意匠に自由技術を使用した段落としを配置した形状の一つにすぎない。したがって、
本件各意匠は、A意匠及びB意匠の類似の範囲内にあり、意匠法3条1項3号17条1号48条1項1号により登録拒絶原因ないし登録無効原因を有する。
また、本件各意匠は、その出願前に各ユーザーの工夫により実施されていた意匠であるから、当業者により容易に創作できるものであり、意匠法3条2項17条1号48条1項1号により、登録拒絶原因ないし登録無効原因を有する。
このように、本件第一意匠権は無効原因を有するから、その類似範囲は意匠公報に示された意匠そのものに限定されるべきであり、右二点の違いを有するイ号意匠は本件第一意匠に類似しない。
【原告の反論】 確かに、従前の線ガイドの意匠は、上下左右対称の八角形のA意匠、B意匠の形状のものであった。ばね製造業者は、顧客の注文に応じて各種のばねを製造するが、右形状の線ガイドを使用する場合には、加工パーツの先端や線ガイドが干渉し合わないように切削して形状を整えた上でばね製造機に装着する必要があり、この作業には熟練を要し、均一のばねを製造することが困難であった。
原告は、右のような問題点を解消するために、ばね製造機に装着する各種成形ツールを開発するとともに、複数のツール相互あるいはツールと線ガイドが干渉しないような動きの順番、位置関係などの研究を重ね、線ガイドの段落としの角度、大きさ、位置など、ツールの相互関係が最も良い本件各意匠にたどり着いた。本件各意匠の線ガイドを用いることにより、ばね製造業者は、線ガイドを削らなくても、ばね半製品が送られてくる線ガイドと、その線ガイドの先端に向かうツールが干渉なくかみ合うことにより、従来とは種類の異なる切断の工法が正確かつ容易にされるよう工夫されたものである。
したがって、本件各意匠は、単に八角形を削ったものではなく、加工ツールなどとともに原告によって開発されたものであり、A意匠、B意匠から容易に考案できるものではないから、無効原因は存しない。
(二) 争点1(二)(ロ号意匠と本件第一意匠の類否)について 【原告の主張】 (1) 本件第一意匠の構成は、別紙6【原告の主張】欄記載のとおりであり、本件第一意匠の類似意匠の構成は、別紙8【原告の主張】欄記載のとおりである。
(2) ロ号意匠の構成は、別紙9【原告の主張】欄記載のとおりである。
(3) 本件第一意匠の類似意匠の構成とロ号意匠の構成を対比すると、ロ号意匠は、左右半体の後部上下に形成された側面形状L字状の段部を有する点において本件第一意匠の類似意匠と異なるのみである。右相違部分は全く軽微な差違にすぎないうえ、右部分のロ号意匠の構成は、そもそも基本意匠たる本件第一意匠の構成と同一であるから、ロ号意匠は本件第一意匠と類似する。
【被告の主張】 (1) 本件第一意匠の構成は、別紙6【被告の主張】欄記載のとおりであり、本件第一意匠の類似意匠の構成は、別紙8【被告の主張】欄記載のとおりである。
(2) ロ号意匠の各構成は、別紙9【被告の主張】欄記載のとおりである。
(3) 本件第一意匠の類似意匠とロ号意匠は、後部(背部)上下に配設されたL字状の段部の有無、形状において異なる。
本件第一意匠は、前記(一)で述べたとおり無効原因を有するものであるから、その類似範囲は意匠公報に示された意匠そのものに限定されるべきであり、右二点の違いを有するロ号意匠は本件第一意匠に類似しない。
(三) 争点1(三)(ハ号意匠と本件第二意匠の類否)について 【原告の主張】 (1) 本件第二意匠の構成は、別紙10【原告の主張】欄記載のとおりである。
(2) ハ号意匠の構成は、別紙11【原告の主張】欄記載のとおりである。
(3) 本件第二意匠の構成とハ号意匠の構成を比較すると、その構成要件は同一であり、両者は類似する。
【被告の主張】 (1) 本件第二意匠の構成は、別紙10【被告の主張】欄記載のとおりである。
(2) ハ号意匠の構成は、別紙11【被告の主張】欄記載のとおりである。
(3) 本件第二意匠とハ号意匠は、右半体の上側面の水平面は、本件第二意匠では突合せ部側から右第二線の位置まで伸びているのに対し、ハ号意匠では突合せ部側から右第二線の位置まで伸びていない。また、左半体の上側面の水平面は、
本件第二意匠では突合せ部側から左第一線まで伸びているのに対し、ハ号意匠では突合せ部側から左第一線を越えた位置まで伸びている。さらに、本件第二意匠とハ号意匠では各垂直線の幅が異なる。
本件第二意匠は前記(一)で述べたとおり無効原因を有するものであるから、その類似範囲は公報に示された意匠そのものに限定されるべきであり、右の違いを有するハ号意匠は本件第二意匠に類似しない。
(四) 争点1(四)(被告の先使用権の有無)について 【被告の主張】 被告は、本件各意匠権の出願日より前である昭和六二年五月二一日からA意匠を有する線ガイドを、昭和六三年九月一七日からB意匠を有する線ガイドを、それぞれ製造、販売し、公然実施してきた。被告の創作したA意匠及びB意匠は、線ガイドの両端をカットして八角形とした点において基礎的意匠であり、有用性のある意匠である。
一方、本件各意匠は、被告が創作したA意匠及びB意匠である八角形を基本意匠とし、これに段落としの形状を設けたにすぎない。すなわちA意匠と本件第一意匠との相違は、右半体の上下部分にL字形の切欠き段部があるか否かであり、B意匠と本件第二意匠との相違は、右半体の上下部分にL字形の切欠き段部があるか否かである。
先使用権の範囲は、単に実際に実施していた意匠に限定されるべきではなく、意匠思想が同一性を失わない範囲において変更した意匠にも及ぶものであるところ、前記のとおり、線ガイドは購入した各ユーザーがそれぞれの条件に従って加工することを予定している製品であって、これを意匠として見るとき、切欠き段部を設けたとしても基本的意匠を喪失させるものではなく、両意匠の本質は同じで類似意匠の関係にある。
したがって、被告は、本件各意匠権につき、先使用に基づく通常実施権を有する。
【原告の主張】 前記のとおり、本件各意匠は被告の主張するA意匠及びB意匠とは明らかに異なるから、被告の主張は失当である。
(五) 争点1(五)(損害)について 【原告の主張】 (1) 被告は、平成四年三月から平成七年二月までの間に、イ号ないしハ号物件を少なくとも合計一二〇〇個製造、販売した。
被告のイ号ないしハ号物件の販売による利益は、少なくとも一個当たり六〇〇〇円であるので、被告は右行為により合計七二〇万円の利益を得た。
右利益額は、原告の損害額と推定される。
(2) 被告が提出した帖簿及び納品書控えによっても、被告は、平成四年三月から平成七年二月までの間に、イ号ないしハ号物件を少なくとも四五五個、総額八八五万四六二〇円で販売した。本件各意匠権の実施料相当額は、売上高の五パーセントであるから、原告は、四四万二一三一円の損害を被った。
【被告の主張】 被告は、イ号ないしハ号物件を合計三二個、総額七〇万七〇〇〇円(一個当たり二万円が一八個、二万二〇〇〇円が一個、二万五〇〇〇円が一三個)で販売した。
被告の製造原価率は七二・三七四パーセントであるので、これにイ号ないしハ号物件の売上総額七〇万七〇〇〇円を乗じると、製造原価は五一万一六八四円である。
また、被告の販売及び一般管理費率は、二六・八六二パーセントであるので、これに線ガイドの売上総額七〇万七〇〇〇円を乗じると、販売及び一般管理費は一八万九九一四円である。
よって、被告のイ号ないしハ号物件の販売による利益は、売上総額から製造原価並びに販売及び一般管理費を控除した五四〇二円である。
2 争点2(商標権侵害)について (一) 争点2(一)(商標としての使用)について 【原告の主張】 被告は、その製造販売する先端線ガイドについて、顧客との間でFWGの名称で注文を受けて納品しており、原告の社名は記載されていない。すなわち、
被告はFWGを自社の商品の商標として使用している。
【被告の主張】 商標法の目的が、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の護持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することにある(同法1条)ことから考えると、商標の使用とは、商品の製造者が商標権者であるかのように誤信せしめ、商標権者の信用又は需要者の利益を損なうような形態による使用をいうものと解すべきである。
被告は、価格表に原告の特定の機種に適合する部品の価格表であることを明示して、部品を特定するために先端線ガイドと表示し、原告の先端線ガイドの呼び名である「FWG」を表示したものである。定価表には作成者が被告であることが明示されており、「FWG」の表示は原告のFWGで表示される部品と同じ役割を果たす部品を製造販売していること、及びその価格を示しているにすぎないのであるから、商標として使用しているということはできない。
(二) 争点2(二)(普通名称)について 【被告の主張】 本件商標「FWG」は、線送りガイドの最終部のツールを意味する英語表示「Final Wire Guide」の略語そのもののみからなる標章である。「ファイナルワイヤーガイド」という言葉は、我が国でも普通名称として使用されているし、輸出関係の書類では、「FWG」という略号が使われていた。また、日本では言葉の頭文字をとって省略するのは通常のことであり、「FWG」も先端線ガイドを表示する普通名詞といえる。
したがって、被告が被告の製造した先端線ガイドの商品表示として「FWG」を使用したとしても、本来商標権の及ばない普通名称として使用したにすぎないものであるから、右使用について原告の商標権は及ばない。
【原告の主張】 商標法26条1項3号にいう「普通名称」とは、指定商品と同一の商標であるなど、商品の一般的名称と認識されるに至ったものであり、その名称が、商品の普通名称を表示するものとして、現実に使用されている場合である。
本件商標である「FWG」は、現実の取引において、一般的名称として使用されていない。
(三) 争点2(三)(被告の先使用権の有無)について 【被告の主張】 被告は、昭和六二年五月ころから先端線ガイドを製造、販売しているが、平成元年二月ころから平成三年四月ころまでの間に、同先端線ガイドを「FWG」いう商品表示で浅賀製作所及び【C】に対して受注し、製造・販売していた。
これにより、被告は自己の商品表示として「FWG」を不正競争の目的なく使用した結果、本件商標出願当時、被告の商品表示「FWG」は被告商品の商標として広く需要者間に認識されていた。
また、被告は、その後も現在まで被告は被告商品表示として「FWG」を継続して使用しているから、右商標権について先使用権がある。
【原告の主張】 先使用権者としての保護を受けるためには、当該商標を不正競争の目的なく使用していなければならないが、被告は、原告が線ガイドに「FWG」という標章を付していることを知りながら、これを利用して同じ商品表示を使用したのであるから、不正競争の目的なく使用したとはいえない。
また、それが被告商品の周知商標となったとはいえない。
3 争点3(特許権侵害)について (一) 争点3(一)(侵害の有無)について 【原告の主張】 (1) 本件特許発明は、ばね製造機本体で製造された片方のフック部分のみ起こされたばね半製品をスプリングチャックで掴んで二次加工機へ移送し、他方のフックを起こしてばねを完成させるまでの間、一貫してばねの半製品の持ち替えを要さずに作業を行う、ばね半製品のフック起こし装置に関するものである。多種類のフック形状を持つばねを製造するためには、ばね製造機とは別の機械へ移送してフックを形成する必要があるところ、移送に際して持ち替えが必要な場合には、持ち替えに必要な巻の長さが必要となり、コイル部分が短いばねは製造できないという欠点があった。本件特許発明は持ち替えを要さないという構成を採用することにより、右の問題点を解消したものである。また、スプリングチャックによって全工程にわたり確実にばね半製品を挟んでいるため、作業効率も高まり、フックを確実に歪みなく起こすことも可能となった。
したがって、本件特許発明において、全工程にわたりばね半製品を掴んでいるスプリングチャックは、最重要のツールである。
(2) 被告スプリングチャックは、原告の本件特許権の実施品であるばね半製品のフック起こし装置の一部分である揺動アームの自由端側に取り付けられた半製品挟持具が有する挟持片の先端に装着されるものである。
被告は、被告スプリングチャックを、原告の製造・販売にかかる特許実施品たる機械に装着する部品としてのみ販売しており、これは、特許法101条1号にいう物の生産にのみ使用する物である。
(3) スプリングチャックは、製造するばねの種類により複数必要であるが、摩耗するものではなく、消耗品ということはできない。
【被告の主張】 (1) 間接侵害について @ 特許法101条1号に規定する「その物の生産にのみ使用する物」とは、特許法70条に定める当該特許発明の「技術的範囲に属する物」を「生産する」こと、すなわち、技術的範囲がいくつかの構成要件から成立している場合において、その構成要件の一つ或いはいくつかを「生産する」ことをいう。
A 本件特許発明の特許請求の範囲には、「ばね半製品挟持具20を挟持固定する一対の挟持片78、78を有する固定具75」を構成要件の一つとする記載はあるが、「ばね半製品挟持具20」に設けられる「挟持片21、21」及びこの「挟持片21、21」の先端に突設する「半割り筒状のホルダー24、24」は構成要件とはなっていない。したがって、「半割り筒状のホルダー24、24」は、そもそも本件特許発明の技術的範囲に属するものではなく、本件特許発明の技術的範囲で示された技術思想を具現した完成物の存在を前提として、その完成物に付加して使用するものである。
B 被告の製造するニ号及びホ号物件は、前記半割り筒状のホルダー24、24に相当するものであるから、右半割り筒状のホルダー24、24を業として生産し、販売することは、本件特許権を侵害する間接侵害とはならない。
(2) スプリングチャックは消耗品である。このような消耗品の製造、販売までも特許権者に独占させることは、特許権の保護の範囲を逸脱し、特許権者を不当に優遇する結果となるから、仮にそれが特許発明を構成する部品であったとしても、その製造等は特許権の侵害行為とはならない。
(3) スプリングチャックを装着するフック起こし装置の価格が一台二五〇〇万円程度するのと比較して、一個わずか一万数千円のスプリングチャックの製造、販売について、特許権侵害であるとして差止めを請求することは、信義に反する行為であり、権利の濫用として許されない。
また、被告は、ばね製造業者から、具体的な形状の指示を受けてスプリングチャックの製造、販売をしている。したがって、被告の行為はばね製造業者の製造と同じく評価されるから、許されるものである。
(二) 争点3(二)(損害)について 【原告の主張】 (1) 被告は、平成四年三月から平成七年二月までの間に、被告スプリングチャックを少なくとも六〇〇個製造販売した。
被告スプリングチャックの販売による利益は、少なくとも一個当たり三〇〇〇円であるので、被告は合計一八〇万円の利益を得ている。
(2) 被告の自認するところに従っても、被告は、平成四年三月から平成七年二月までの間に、少なくともニ号及びホ号物件を九五個、総額一〇七万七〇〇〇円で販売した。この実施料相当額は、売上高の五パーセントであるから、原告は五万三八五〇円の損害を被った。
【被告の主張】 被告は、ニ号物件及びホ号物件を合計九五個、売上総額一〇七万七〇〇〇円(一個当たり九〇〇〇円が一個、一万円が三九個、一万二〇〇〇円が五〇個、
一万五〇〇〇円が二個、一万六〇〇〇円が三個)で販売した。
被告の製造原価率は七二・三七四パーセントであるので、これにスプリングチャックの売上総額一〇七万七〇〇〇円を乗じると、製造原価は七七万九四六八円である。
被告の販売費及び一般管理費率は二六・八六二パーセントであるので、
これにスプリングチャックの売上総額一〇七万七〇〇〇円を乗じると、販売費及び一般管理費は二八万九三〇四円である。
よって、被告のスプリングチャック販売による利益は、売上総額から製造原価並びに販売及び一般管理費を控除した八二二八円である。
当裁判所の判断
一 争点1(意匠)について 1 証拠(甲12、検甲10、乙8、証人【D】)によれば、本件各意匠にかかる物品及びイ号ないしハ号物件であるばね製造機の線ガイド(先端線ガイド)とは、
次のようなものであることが認められる(なお、書証は、枝番の全部を含むときは、その記載を省略する。)。
(一) 先端線ガイドは、ばね製造機において直線形状で送り出されてくるワイヤーを案内する部材であり、右ワイヤーがばね形状に加工される作業領域(以下、単に「作業領域」という。)の直前に取り付けられるものである。
(二) 作業領域には、直線形状で送り出されているワイヤーをばね形状に成形したり、ばねのフック部分を成形したりするため、あるいは、ワイヤーを切断するための様々なツールが放射状に配置されている。ばね製造機では、この作業領域において、これらのツールが交互に、あるいは同時に、先端線ガイドからワイヤーが排出される部分に押し出され、これらが単独で、あるいは相互にワイヤーに作用することによって、直線形状のワイヤーがばねの形状に成形される。
(三) これらの各種のツールは、形成するばねの形状により、種類、配置位置や移動方向が決定されるが、各ツールの種類や配置位置によっては先端線ガイドと各種ツールとが干渉し合うことにより、十分な作業スペースが確保されなくなる。
そこで、従前、先端線ガイドがいわゆるホームベース型の五角形、あるいは八角形であった当時は、ばね製造業者は、成形するばねの形状に合わせて、各種ツールと先端線ガイドが干渉し合わないように先端線ガイドを切削して、形状を整えることによって作業スペースを確保した上で作業を行っていた。
(四) 原告は、ばね製造機の製造業者として、ばね製造機及び各種ツール等を製造、販売しているが、右のような先端線ガイドの切削作業には熟練を要し、均一のばねを製造するのに困難が伴うことから、各種ツールの形状、作動順序、配置と先端線ガイドの形状について検討を重ねていた。その結果、成形するばねの形状によって先端線ガイドを切削しなくとも、各種ツールと先端線ガイドが相互にうまくかみ合い、互いに干渉し合うことなくばね成形作業を行うことが可能となるように段落ち部を形成した先端線ガイドの意匠を創作し、これが本件第一、第二意匠及び本件第一意匠の類似意匠として登録された。
2 右認定の事実からすると、本件各意匠は、段落とし部の位置、形状にその創作的な特徴があるものであり、従来の八角形の線ガイドとは根本的にその形状が異なるものというべきである。また、本件各意匠は、ユーザーであるばね製造業者が、成形するばねの形状に合わせて独自に切削した線ガイドの形状とも異なるものであるということができる。そうすると、本件各意匠は、単純な八角形の形状の線ガイドの意匠の類似の範囲に属するものではなく、また、各ユーザが切削して使用していた線ガイドの意匠とも類似するものではない(なお、本件各意匠と同一の形状に切削した線ガイドを本件各意匠の出願前にユーザーが使用していたと認めるに足りる証拠はない。)。
3 争点1(一)(イ号意匠と本件第一意匠の類否)について (一) 証拠(甲2)によれば、本件第一意匠の構成は、別紙12【本件第一意匠の構成】欄記載のとおりであると認められる。
(二) 別紙1(イ号物件目録)添付の図面、証拠(検甲2)及び弁論の全趣旨によれば、イ号意匠の構成は、別紙12【イ号意匠の構成】欄記載のとおりであると認められる。
(三) そこで、両意匠を比較すると、両者は、次の各点で共通するということができる。
(1) 全体形状において、左右一対の半体を突き合わせてなるもので、正面形状は上下方向に長い変形略八角形であり、正面図及び背面図は上下方向の中央を通る仮想水平線を対称軸として線対称である点 (2) 左右半体の基本形状において、左右半体各々は、これらの突合せ部の前側部に形成された相互に対向する上下方向に渡る線材溝と、ボルト頭が嵌まり込む段落ち部を有する前後方向(正面から背面へ)に貫通した上下方向に長い楕円状の上下一対のボルト挿通孔と、後部上下部に形成された側面形状L字状の段部とを有する点 (3) 前面の形状において、右半体の前面には、突合せ部から右側に垂直線(右第一線)及び更にその右側に垂直線(右第二線)が配設され、左半体の前面には、突合せ部から左側に垂直線(左第一線)及び更にその左側に垂直線(左第二線)が配設されている点 (4) 左半体の具体的構成において、左半体の左右側面は、背面に対し直角の垂直平面であり、左半体の上側面は、突合せ部側から左第一線までの狭い水平面と、次いで左側に向かって下り傾斜の傾斜平面とを有し、左半体の下側面は、突合せ部側から左第一線までの狭い水平面と、次いで左側に向かって上り傾斜の傾斜平面とを有し、左半体の前面は、突合せ部側から左第一線までの背面に対して平行な狭い垂直面と、次いで背面に対して緩やかな角度の垂直平面を有するという点 (5) 右半体の具体的構成において、右半体の左右側面は、背面に対して直角の垂直平面であり、右半体の上側面は、突合せ部側から狭い水平面と、次いで正面から見てL字状に表れる切欠き段部と、更に右側に向かって下り傾斜の傾斜平面とを有し、右半体の下側面は、突合せ部側から狭い水平面と、次いで正面から見て逆L字状に表れる切欠き段部と、更に右側に向かって上り傾斜の傾斜平面とを有し、右半体の前面は、突合せ部側の背面に対して平行な狭い垂直平面と、次いで背面に対して緩やかな角度の垂直平面とを有するという点 (四) 他方、両意匠は、右半体の上下側面の形状について、本件第一意匠は右第二線を越えた位置まで狭い水平面が形成され、次いで傾斜平面が形成されているのに対し、イ号意匠は右第二線の位置まで狭い水平面が形成され、次いで傾斜平面が形成されている点が異なるということができる。
(五) そこで検討するに、右の本件第一意匠とイ号意匠の相違点は、両者の全体形状、切欠き段部の位置及び形状、ボルト挿通孔の位置及び形状類似性、特に本件第一意匠の特徴というべき切欠き段部の位置、形状が酷似していることからすれば、これら類似性に埋没する程度の微差にすぎないというべきであって、右相違点をもって、両者が美感を異にするものということはできない。
また、被告は、ボルト頭が嵌まり込む段落ち部の位置について、本件第一意匠は左右端線を対辺とする四角形の内側に形成されているのに対し、イ号意匠は右四角形からはみ出した位置に形成されていることを両意匠の相違点として挙げるが、本件第一意匠においても、ボルト挿通孔は厳密には右四角形から若干はみ出した位置に形成されていることは、その図面上明らかであり、また、イ号意匠についても、右四角形からはみ出す部分はごく僅かであるということができるから、右相違点は一見して判別し難い程度の微差にすぎず、このことをもって、両意匠が美感を異にするものであるということはできない。
(六) よって、イ号意匠と本件第一意匠は類似するものというべきである。
4 争点1(二)(ロ号意匠と本件第一意匠の類否)について (一) 本件第一意匠の構成は、前記3(一)に述べたとおりであり、証拠(甲3)によれば、本件第一意匠の類似意匠の構成は、別紙13【本件第一意匠の類似意匠】欄に記載のとおりであると認められる。
(二) 別紙2(ロ号物件目録)添付の図面、証拠(検甲4)及び弁論の全趣旨によれば、ロ号意匠の構成は、別紙13【ロ号意匠の構成】欄記載のとおりであると認められる。
(三) そこで、本件第一意匠の類似の範囲にある本件第一意匠の類似意匠とロ号意匠を比較すると、両者は、次の各点で共通するということができる。
(1) 全体形状において、左右一対の半体を突き合わせてなるもので、正面形状は上下方向に長い変形略一〇角形であり、正面図及び背面図は上下方向の中央を通る仮想水平線を対称軸として線対称である点 (2) 左右半体の基本形状において、左右半体各々は、これらの突合せ部の前側部に形成された相互に対向する上下方向に渡る線材溝と、ボルト頭が嵌まり込む段落ち部を有する前後方向(正面から背面へ)に貫通した上下方向に長い楕円状の上下一対のボルト挿通孔とを有し、また、左半体は上下部に左右方向に貫通するねじ孔を有し、右半体は上下部に左右方向に貫通する前記左半体のねじ孔の軸芯と軸芯を同一とする、ボルト頭が嵌まり込む段落ち部を有するボルト挿通孔を有する点 (3) 前面の形状において、右半体の前面には、突合せ部から右側に垂直線(右第一線)及び更にその右側に垂直線(右第二線)が配設され、左半体の前面には、突合せ部から左側に垂直線(左第一線)及び更にその左側に垂直線(左第二線)が配設されている点 (4) 左半体の具体的構成において、左半体の左右側面は、背面に対し直角の垂直平面であり、左半体の上側面は、突合せ部側から左第一線までの狭い水平面と、次いで左側に向かって下り傾斜の傾斜平面と、更に傾斜の終わったところから左に向かって狭い水平面とを有し、左半体の下側面は、突合せ部側から左第一線までの狭い水平面と、次いで左側に向かって上り傾斜の傾斜平面と、更に傾斜の終わったところから左に向かって狭い水平面とを有し、左半体の前面は、突合せ部側から左第一線までは背面に対して平行な狭い垂直平面と、次いで背面に対して緩やかな角度の狭い垂直平面を有する点 (5) 右半体の具体的構成において、右半体の左右側面は、背面に対して直角の垂直平面であり、右半体の上側面は、突合せ部側から右第二線を越えた位置までの狭い水平面と、次いで正面から見てL字状に表れる切欠き段部と、更に右側に向かって下り傾斜の傾斜平面とを有し、右半体の下側面は、突合せ部側から右第二線を越えた位置までの狭い水平面と、次いで正面から見て逆L字状に表れる切欠き段部と、更に右側に向かって上り傾斜の傾斜平面とを有し、右半体の前面は、突合せ部側から右第一線までの背面に対して平行な狭い垂直平面と、次いで背面に対して緩やかな角度の垂直平面とを有する点 (四) 他方、ロ号意匠は左右半体各々が後部上下部に形成された側面L字状の段部を有するのに対し、本件第一意匠の類似意匠はそのような段部を有しない点において、両意匠は相違するということができる。
(五) そこで、本件第一意匠の構成をみると、ロ号意匠が本件第一意匠の類似意匠と構成を異にする右(四)の点は、本件第一意匠の構成と同一であるということができる。
したがって、ロ号意匠と本件第一意匠の類似意匠の右(四)の相違点をもって、両意匠が美感を異にするものということはできない。そして、その余の点については、ロ号意匠の構成は本件第一意匠の類似意匠と同一の構成であるということができ、特に本件第一意匠の特徴というべき切欠き段部の位置、形状が酷似していることからすれば、本件第一意匠の類似意匠が本件第一意匠に類似する以上は、
ロ号意匠は本件第一意匠に類似するものというべきである。
5 争点1(三)(ハ号物件と本件第二意匠の類否)について (一) 証拠(甲5)によれば、本件第二意匠の構成は、別紙14【本件第二意匠の構成】欄に記載のとおりである。
(二) 別紙3(ハ号物件目録)添付の図面、証拠(検甲6)及び弁論の全趣旨によれば、ハ号意匠の構成は、別紙14【ハ号意匠の構成】欄に記載のとおりである。
(三) そこで、両意匠を比較すると、両者は、次の各点で同一である。
(1) 全体形状において、左右一対の半体を突き合わせてなるもので、正面形状は変形略八角形であり、正面図及び背面図は上下方向の中央を通る仮想水平線を対称軸として線対称である点 (2) 各半体の基本形状において、左右半体各々は、これらの突合せ部の前側部に形成された相互に対向する上下方向に渡る線材溝と、ボルト頭が嵌まり込む段落ち部を有する前後方向(正面から背面へ)に貫通した上下方向に長い楕円状の一つのボルト挿通孔と、後部上下部に形成された側面形状L字状の段部とを有する点 (3) 前面の形状において、右半体の前面には、突合せ部から右側に垂直線(右第一線)及び更にその右側に垂直線(右第二線)が配設され、左半体の前面には、突合せ部から左側に垂直線(左第一線)及び更にその左側に垂直線(左第二線)が配設されている点 (4) 左半体の具体的構成において、左半体の左右側面は、背面に対して直角の垂直平面であり、左半体の上側面は、突合せ部側からの狭い水平線と、次いで左側に向かって下り傾斜の傾斜平面とを有し、左半体の下側面は、突合せ部側からの狭い水平面と、次いで左側に向かって上り傾斜の傾斜平面とを有し、左半体の前面は、突合せ部側から左第一線までの背面に対して平行な狭い垂直平面と、次いで背面に対して緩やかな角度の垂直平面を有する点 (5) 右半体の具体的構成において、右半体の左右側面は背面に対して直角の垂直平面であり、右半体の上側面は、突合せ部側からの狭い水平面と、次いで正面から見てL字状に表れる切欠き段部と、更に右側に向かって下り傾斜の傾斜平面とを有し、右半体の下側面は、突合せ部側からの狭い水平面と、次いで正面から見て逆L字状に表れる切欠き段部と、更に右側に向かって上り傾斜の傾斜平面とを有し、右半体の前面は、突合せ部側から右第一線までの背面に対して平行な狭い垂直平面と、次いで背面に対して緩やかな角度の垂直平面を有する点 (四) 他方、両意匠は、左半体の上側面及び下側面の突合せ部側の狭い水平面が、本件第二意匠は左第一線までであるのに対し、ハ号意匠は左第一線を越えて左第二線に至らないまでの範囲である点、及び、右半体の上側面及び下側面の突合せ部側の狭い水平面について、本件第二意匠は右第二線までなのに対して、ハ号意匠は右第一線を越えて左第二線に至らないまでの範囲である点が相違する。
(五) そこで検討するに、両意匠の右相違点は、両者の全体形状、切欠き段部の位置及び形状、ボルト挿通孔の位置及び形状類似性、特に本件第二意匠の特徴というべき切欠き段部の位置、形状が酷似していることからすれば、その類似性に埋没する程度の微差にすぎないというべきであって、右相違点をもって、両者が美感を異にするものということはできない。
(六) よって、ハ号意匠は本件第二意匠に類似する。
6 争点1(四)(被告の先使用権の有無)について 前記2で認定判断したとおり、本件各意匠は、原告が自社で製造、販売するばね製造機のツールである先端線ガイドの形状として、ばね製造機に使用する各種成形ツールの形状、配置位置等とともに、独自に創作したものであり、従前から使用されていた八角形形状のA意匠及びB意匠とは、その基本形状が異なるものというべきである。したがって、仮に、被告が、本件各意匠の出願前に八角形形状のA意匠及びB意匠を実施していたとしても、このことをもって、本件各意匠について、先使用に基づく通常実施権が成立するものではない。
したがって、被告の主張は採用できない。
7 争点1(五)(損害)について (一) 意匠法39条2項による原告の損害額の推定について (1) 証拠(乙26ないし28、36)によれば、被告が製造、販売したイ号ないしハ号物件の個数は合計三二個、売上総額は七〇万七〇〇〇円であると認められ、
これを覆すに足りる証拠はない。
(2) ところで、意匠法39条2項にいう「利益の額」とは、侵害者が侵害行為によって得た売上額から侵害者において当該侵害行為たる製造、販売に必要であった諸経費を控除した額であると解するのが相当である。
(3) そこで、右の点について検討すると、証拠(乙31ないし33)によれば、被告の平成四年から平成六年までの各事業年度における売上高、製造原価及びその売上高に占める割合並びに荷造運賃及びその売上高に占める割合は、それぞれ、次のとおりであると認められる。
@ 第一〇期(平成四年五月一日から平成五年四月三〇日まで) 売上高 一億五九三三万一〇〇五円 製造原価 一億一六二〇万八三六七円(七二・九四パーセント) 荷造運賃 一四三万四一七五円( 〇・九〇パーセント) A 第一一期(平成五年五月一日から平成六年四月三〇日まで) 売上高 一億五〇一二万三五六一円 製造原価 一億〇九六三万五七三四円(七三・〇三パーセント) 荷造運賃 一六七万〇二四一円( 一・一一パーセント) B 第一二期(平成六年五月一日から平成七年四月三〇日まで) 売上高 一億八三八二万二八四七円 製造原価 一億三四九一万六五一九円(七三・三九パーセント) 荷造運賃 一八六万五六九三円( 一・〇一パーセント) 右各事実によれば、被告における売上高に占める製造原価の割合は概ね七三パーセント前後、荷造運賃は約一パーセントであると認められるから、被告の製造、販売したイ号ないしハ号物件についても、その売上高に占める製造原価の割合は、七三パーセント、売上高に占める荷造運賃の割合は一パーセントと認めるのが相当である。そうすると、被告がイ号ないしハ号物件を製造、販売することにより得た利益は、売上高の二六パーセントであると認められ、これを覆すに足りる証拠はない。右以外に、被告がイ号ないしハ号物件を製造、販売するために経費を要したことを具体的に認めるに足りる証拠はない。
なお、証拠(乙35)によれば、被告は、運送業者との間で、北陸、中部、関西、中国地域に発送する場合、二キログラムまでは六〇〇円、五キログラムまでは七〇〇円などの料金設定による継続的な運送契約を締結していることが認められるが、証拠(乙26、29)からも明らかなとおり、被告の顧客に対する納品は、
他の商品と一括してされることが多いものと認められ、イ号ないしハ号物件をそれぞれ個別に顧客に送付したと認めるに足りる証拠はないから、右設定料金に販売個数を乗じて荷造運賃を算定するのは妥当ではない。
(4) よって、被告がイ号ないしハ号物件を製造、販売することにより得た利益は、イ号ないしハ号物件の売上高七〇万七〇〇〇円の二六パーセントに相当する一八万三八二〇円であると認められ、右金額は、意匠法39条2項により、原告が受けた損害の額と推定される。
(二) 原告は、意匠法39条3項に基づき、実施料相当損害金の請求もするが、本件各意匠の実施料相当損害金について、右(一)で認定判断した金額を上回ると認めるに足りる証拠はないから、採用することはできない。
二 争点2(商標)について 1 争点2(一)(商標としての使用)について 証拠(甲10、11、13及び14)によれば、被告は、自らが発行する価格表、
納品書等に、その製造、販売する先端線ガイドの製品名として、「FWG」との標章を使用していることが認められる。
被告は、右表示は、原告の「FWG」で表示される部品と同じ役割を果たす部品であることを示すためのものにすぎないから、商標としての使用には当たらないと主張する。しかし、商標法は、「商品又は役務に関する広告、定価表又は取引書類に標章を付して展示し、又は頒布する行為」を標章の使用として定義しているところ(2条3項7号)、商品の価格表や取引書類等に、自らの商品について、
ある標章を付している場合には、当該標章が、他社製品に適合する部品であることの説明として付記されているものであることが明白である場合はともかくとして、
そうでない場合には、商標としての使用に該当するものというべきである。この点を被告の価格表及び取引書類についてみると、証拠(甲13、14)によれば、被告製品のバネツールについての価格表には、原告の会社名、ばね製造機の製品番号を欄外上部に記載し、右バネ製造器の各種部品、ツールの一般的な名称や金額等を記載した一覧表中において、「先端ガイド」という部品名称と並べて「FWG」との表記がされているものの、それ以外に右「先端ガイド」に関する被告製品の製品名、
製品番号等は明示されていないことが、また、証拠(甲10)によれば、被告の納品書には、「品名」の欄に「VF830 FWG」と表記され、その他、被告製品の製品名、製品番号等は記載されていないことがそれぞれ認められる。右事実によれば、これらで使用されている「FWG」の表示が、被告製品の商品表示ではなく、
原告の「FWG」で表示される部品と同じ役割を果たす部品であることを示すためのものであることが明らかであるということはできないから、被告の主張を採用することはできない。
したがって、被告は「FWG」の標章を、商標として使用しているということができる。
2 争点2(二)(普通名称)について 「FWG」との表示が、ばね製造機の先端線ガイドを示す普通名称であると認めるに足りる証拠はない。
なお、証拠(乙9、10)によれば、ばね製造機械の分野において、本件商標の出願前より、線ガイドについて「ワイヤーガイド(wire guide)」、あるいは「ファイナルワイヤーガイド」と表示されていたことが認められるが、右事実を超えて、「FWG」との表示が、これらの部品(パーツ)の普通名称として使用されていたと認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告の主張は採用できない。
3 争点2(三)(被告の先使用権の有無) 証拠(乙11ないし20)によれば、被告は、本件商標の登録出願前から、先端線ガイドについて、「FWG」との標章を使用していたことが認められる。しかし、右各証拠により認められる「FWG」との標章の使用例は、いずれも、原告が製造、販売するばね製造機に適合する部品の名称にかかるものであり、右使用の事実のみをもって、「FWG」なる表示が、被告の業務にかかる商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されていたということはできず、その他、
これを認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告の主張は採用できない。
4 なお、原告は、被告製品全般について、本件商標権の使用差止めを請求しているが、本件全証拠によっても、被告が先端線ガイド以外の商品について、本件商標を使用していると認めることはできない。
したがって、原告の被告に対する本件商標の使用差止請求は、先端線ガイドに係る部分以外は、被告が「本件商標権の侵害をする者又は侵害をするおそれがある者」であると認めることはできないから、原告の主張を採用できない。
三 争点3(特許権侵害)について 1 争点3(一)(侵害の有無)について (一) 被告スプリングチャックが、本件特許発明の実施品である原告製造にかかるばね半製品のフック起こし装置にのみ使用されるものであることは、当事者間に争いがない。
(二) 原告は、本件特許発明において、「半割り筒状ホルダー24、24」に該当するスプリングチャックは、本件特許発明の構成要件に含まれると主張し、他方、被告は、構成要件には含まれないものであると主張する。
右について検討するに、本件特許権の特許請求の範囲には、「前記フック起こし加工部10に移動した状態のばね半製品挟持具20を挟持固定する一対の挟持片78、78を有する固定具75と、」との構成が記載されているが、ここにいう「一対の挟持片78、78を固定する固定具75」との構成部分に、スプリングチャックに相当する「半割り筒状のホルダー24、24」が含まれるとは、明示的には記載されていない。
そこで、この点について本件公報の記載を見ると、証拠(甲9)によれば、本件公報には、発明の詳細な説明においては、「半製品挟持具20」は、「一対の挟持片21、21」を有しており、当該「挟持片21、21」の先端には半製品を保持する「半割り筒状のホルダー24、24」が突設されていると説明されており(三欄一八行ないし二六行)、「半製品挟持具20」の構成については、他の実施例の記載はないこと、また、発明の効果を記載した部分には、「半製品1を保持した、半製品挟持具20(ホルダー24、24)を、一対の挟持片78、78を有する固定具75で保持して、
フック起こし作業を行なえるものであるから、即ち、半製品1の持ち変えを行なう必要がないので、作業効率を高めることが出来る。」と記載されていること(七欄一一行ないし八欄二行)、さらに、別の場所においては、「これと同時に固定具75の挟持片78、78が閉じホルダー24、24を強固に保持する。」(六欄三五ないし三七行)、「開かれた状態の挟持具20のホルダー24、24を半製品1に被せるべく起立途中の揺動アーム17が完全に起立する。その後、ホルダー24、24が閉じて半製品1を挟持すると、…半製品1をフック起こし加工部10に移動させる」(六欄一六行ないし二三行)等と記載されていることが認められる。
これらの記載を総合すると、特許請求の範囲における「半製品挟持具20」とは、「半割り筒状ホルダー24、24」を備えた「挟持片21、21」をまとめて表現したもの、すなわち、両者の構成を備えたものを表現するための用語であると解するのが妥当であり、「半製品挟持具20」には、「半割り筒状ホルダー24、24」を少なくとも含むものと解するのが妥当である。このように解さなければ、本件特許発明において、「半製品挟持具」は、「ばね」という半製品を挟持することができないし、また、持ち替えが必要ないという効果を奏することもできないことになり、不合理というべきである。
(三) 前記のとおり、本件特許発明において、スプリングチャックに該当する「半割り筒状ホルダー24、24」は、持ち替えを要さずにフック起こし機に移動させることができるということから生じる本件特許発明の作用効果を生じさせる中核を担う部品であって、これを本件特許発明の付加的な構成部分ということはできない。また、本件特許発明において、「半割り筒状ホルダー24、24」は、成形するばねの大きさによって複数種類を用意する必要があると考えられるが、容易に摩耗するものとはいえず、これを当初より交換が予定されている消耗品の供給と同視することはできないというべきである。
被告は、スプリングチャックの製造、販売を差し止めるのは権利濫用に当たると主張するが、スプリングチャックの本件特許発明における右のような性質に鑑みれば、これを採用することはできない。
(四) そうすると、被告スプリングチャックは、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された「半製品挟持具20」という構成の一部であり、その挟持作用を担うものと解されるから、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成要件の一部に相当する部品であるということができる。
前記のとおり、被告スプリングチャックは、本件特許発明の実施品にのみ使用されるものであるから、これを製造、販売する行為は、本件特許発明の技術的範囲に属する物の生産にのみ使用する物を生産し、又は譲渡をする行為に該当し、本件特許権を侵害するものとみなされる(特許法101条1号)。
2 争点3(二)(損害)について (一) 特許法102条2項による損害額の推定について (1) 証拠(乙29、30)によれば、被告が製造、販売したニ号及びホ号物件の個数は合計九五個、売上総額は一〇七万七〇〇〇円であると認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(2) 前記一7(一)で認定判断したとおり、被告における売上高に占める製造原価の割合は七三パーセント前後、荷造運賃は約一パーセントであると認められるから、被告の製造、販売したニ号ないしホ号物件についても、その売上高に占める製造原価の割合は、七三パーセント、売上高に占める荷造運賃の割合は一パーセントと認めるのが相当である。そうすると、被告がニ号及びホ号物件を製造、販売することにより得た利益は、売上高の二六パーセントであると認められる。
(3) よって、被告がニ号及びホ号物件を製造、販売することにより得た利益は、その売上総額一〇七万七〇〇〇円の二六パーセントに相当する二八万〇〇二〇円であると認められ、右金額は、特許法102条2項により、原告が受けた損害の額と推定される。
(二) 原告は、特許法102条3項に基づき、実施料相当損害金の請求もするが、本件特許権の実施料相当損害金について、右(一)で認定判断した金額を上回ると認めるに足りる証拠はないから、採用することは出来ない。
四 結論 よって、本訴請求は、主文第一項ないし第四項の限度で理由がある。
(平成一一年八月二三日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 渡部勇次
裁判官 水上周
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