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関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  類似する意匠 /  物品の機能 /  不可欠な形状のみ(5条3号) /  部品 /  意匠の類似 /  類似範囲 /  差止請求(差止) /  実用新案権 /  損害額 / 
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事件 平成 11年 (ネ) 1542号 意匠権侵害差止等請求控訴事件
控訴人 新和機械工業株式会社右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 神谷巖
同 吉武賢次右補佐人弁理士 【B】
被控訴人 日東鐵工株式会社 右代表者代表取締役 【C】 右訴訟代理人弁護士 鈴木和夫
同 鈴木きほ右補佐人弁理士 【D】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1999/11/30
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
二 被控訴人の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の申立て
一 控訴人(一審被告) 主文と同旨の判決 二 被控訴人(一審原告) 控訴棄却の判決 (ただし、原判決主文第一、第二項の請求は、当審において被控訴人により取り下げられた。)
被控訴人の請求内容
被控訴人は、控訴人に対し、次の第三記載の意匠権侵害又は第四記載の実用新案権侵害による損害金として、九〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成六年一月二一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
意匠権侵害について
一 請求原因 1 当事者 (一) 被控訴人は、土木機械器具等各種機械器具の製造、販売及び修理を目的とする株式会社である。
(二) 控訴人は、土木建築用機械器具の製造、販売、輸出入、リース業等を目的とする株式会社である。
2 本件意匠権 被控訴人は、次の意匠権(以下、「本件意匠権」といい、その登録に係る意匠を「本件意匠」という。)を有する。
(一) 意匠登録 第六二八三三六号 (二) 意匠に係る物品 土留用プレート (三) 出願年月日 昭和五七年六月一八日 (四) 登録年月日 昭和五九年三月二九日 (五) 意匠の構成 原判決別紙意匠公報写し(以下「本件公報」という。)記載のとおり 3 本件意匠の構成(一) 物品及び説明 本件意匠は、土留用プレートに係り、下水管等を埋設する際に利用される土留装置に関するものであり、管体を地中に敷設するときの溝の土留めを行う土留装置として用いる。
(二) 全体の態様(1) 横長長方形状の薄幅のプレート本体 (2) プレート本体の両端に固定され、上方にわずかに突出した連結金具を有する二本の角筒状の縦梁 (三) 各部の態様 (1) プレート本体 ア 一枚の外板で構成した平坦な横長長方形状の外面 イ 両端を両縦梁の両内側面に接して板を継なぎ合わせて構成した平坦かつ横長長方形状の内面 ウ 内面の上端から下端やや上方にわたる平坦な横長長方形状の上面部 エ 上面部の下端から外板下端へ向けて緩やかに傾斜した横長長方形状のテーパー状面 オ 内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境の水平な稜線及び板の継ぎ目の三本の水平な横線 カ 内面中央上端の吊下用のUリング (2) 縦梁 ア プレート本体の上下端に一致した高さ イ プレート本体の板厚より大きい幅を有する角筒状 ウ プレート本体の外板に接して固定された外面 エ プレート本体の内面より内方に張り出した前方部 オ 内面に表れた切梁取付用の上下二個の角穴及び下端に表れたボルト取付用の丸穴 カ 上方にわずかに突出して設けられた半角筒状の小さな角形連結金具 キ 連結金具の内外面に表れたボルト取付用の丸穴及び吊下用の角穴 4 イ号物件の製造・販売 (一) 控訴人は、業として、「クリングススーパーツインパネル・ライト」(以下、その土留用プレートを「イ号物件」という。)の名称で原判決別紙物件目録一記載の土留用プレートを製造・販売している。
(二)(1) イ号物件には、プレートの本体内面の板の継ぎ目に水平な横線のある旧型と、このような構成のない新型のプレートがあり、また、それぞれにプレート内面下部のテーパー状面中央に空洞が形成されていないプレートと、右空洞が形成されたプレートの二種類がある。
(2) 旧型で空洞のないタイプは、甲第六号証及び甲第一九号証に合計二枚のプレートが撮影されており、また、控訴人の旧型プレートに関するパンフレットにおける部品図(甲第五号証)には、下段のプレートに中央下端に空洞がないタイプのプレートが記載されている。また、新型で下段のプレート中央下端に空洞のないタイプは、控訴人パンフレット(乙第二六号証)の部品図に記載されている。
控訴人は、「空洞」の技術的意義について述べるが、イ号物件を土留装置の最下段で使用する場合に「空洞」があると、そこから泥等が侵入して使い勝手が悪くなるため、「空洞」が存在しないタイプのプレートが存在するものである。
5 イ号意匠の構成 (一) 物品及び説明 イ号物件の意匠(以下「イ号意匠」といい、旧型か、新型かで区別する場合は、
「イ号旧型意匠」、「イ号新型意匠」という。)は、土留用プレートに係り、下水管等を埋設する際に利用される土留装置に関するものであり、管体を地中に敷設するときの溝の土留めを行う土留装置として用いる。
(二) 全体の態様 (1) 横長長方形状の薄幅のプレート本体 (2) プレート本体両端に固定され、上方にわずかに突出した連結金具を有する二本の角筒状の縦梁 (三) 各部の態様 (1) プレート本体 ア 一枚の外板で構成した平坦な横長長方形状の外面 イ 両端を両縦梁の両内側面に接して板を継ぎ合わせて構成した平坦かつ横長長方形状の内面 ウ 内面の上端から下端やや上方にわたる平坦な横長長方形状の上面部 エ 上面部の下端から外板下端へ向けて緩やかに傾斜した横長長方形状のテーパー状面 オ 内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境界の水平な稜線及び中央の二本の縦線 (2) 縦梁 ア プレート本体の上下端に一致した高さ イ プレート本体の板厚より大きい幅を有する角筒状 ウ プレート本体の外板に接して固定された外面 エ プレート本体の内面より内方に張り出した前方部 オ 内面に表れた切梁取付用の上下三個の角穴、下端に表れたボルト取付用の丸穴及び上端に表れた蝶ボルト カ 外側面上端に表れた吊下用の角穴 キ 上方にわずかに突出して設けられた角筒状の小さな角形連結金具 ク 連結金具の内面に表れたボルト取付用の丸穴 (3) 連結金具 本件意匠は連結金具を含み、また、プレートは連結金具を介して上下に連結されるから、イ号意匠においても、着脱可能な連結金具は蝶ボルトにより縦梁に固定され、土留用プレートと一体となったものとして特定することができる。
6 本件意匠とイ号意匠との対比 (一) 本件意匠の要部 (1) 本件意匠は、いくつかの部分的な形態が集まって全体として意匠的まとまりを形成し、一つの意匠として統一的な美感を創出しているものであるから、
要部認定に当たっては、これらの要素が一体となった一つの意匠的なまとまりを有するものとして認識されるべきものである。
(2) 本件意匠は、連結金具を上方にわずかに突出した縦梁を横長のプレート本体の両端に固着した縦梁プレート方式に係るプレートであり、下端にテーパー状面を形成し、内面上面部を平坦にしたプレートの両端に、太い角柱である縦梁を固定した形状がすっきりした印象を与え、看者の注意を惹くものであるから、右形状が本件意匠の要部である。
(3)ア 控訴人が指摘する甲第一一号証(意匠登録第五五八一八三号公報)及び甲第八号証(被控訴人の「NTシーティングプレートシステム」パンフレット)の各意匠は、縦梁プレート方式における土留用プレートとして本件意匠の先行意匠となり得るものであるが、内面が平坦ではなく凹凸が階段状に表れた形態を有している。本件意匠は、これを改良し、下端にテーパー面を形成し内面を平坦にした形態としたものであり、その結果、先行意匠が有していた内面の複雑な印象が一新され、簡素ですっきりした印象を与えるものとなったのである。
なお、プレートの内外面が平坦であり、プレートの内面下方にテーパーが付されている形態は、土留用プレートとしての機能に関連するものであるが、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠ではない。
イ 控訴人が挙げる乙第一七号証(実開昭五四ー一二九一〇七号公報)、乙第二一号証の一、二(クリングス土留めシステムカタログ)、乙第三四号証の一、二(環境機材株式会社「Zシリーズ」カタログ等)に掲載されている「プレート」は、いずれも縦梁プレート方式の構成部材としての縦梁がないものであって、意匠創作の系統も異なることから、本件意匠の類似範囲を画定するに当たって、先行意匠として評価するに値しないものである。すなわち、「縦梁」は、甲第七号証(たて込み簡易土留設計施工指針)の4頁に「縦梁プレート方式の構成部材」としてAとして図示されたもの、すなわち、プレートの前後(左右)両端に固定した「柱状の角材」である。まず、縦梁プレート方式の土留め工法において、掘削した溝の土圧は、プレートの外面に、外方向から内方向に向けて分布して加わるが、縦梁は、この荷重(土圧)を受けているプレート本体を両端部で受け止めるための部材である。そのため、縦梁には、太い角材が用いられる。そして、縦梁は、
切梁をプレートに取り付けるための一手段である。次に、縦梁は、プレートを上下に連結するための手段である。プレート自体を上下に連結することは困難であり、
何らかの連結手段が必要であるが、縦梁は太い角材であってこの連結手段に適する。さらに、縦梁は、上方に連結した土留めプレートの荷重やたて込み時のバックホー等による上方からの押し込みの荷重を下で受けるようにしたもの、すなわち「柱」である(甲第七号証33頁Bの図及びBの説明参照)。そのため、その上方からの荷重に対応する強度が必要であり、角柱が用いられる。これに対し、控訴人が挙げた右各意匠は、プレートの内面に取り付けられた「切梁取付用のU字状レール金具」にすぎず、縦梁ではないから、縦梁固有のプレート本体の両端に固着した太い角柱という形態を有していない。
ウ 控訴人指摘のそれ以外の意匠は、スライドレール方式におけるプレート(乙第三九号証の一、乙第四一ないし四三号証)、又は切梁取付用のU字状レール金具を張り付けたプレート(乙第二一号証の一、二、第三九号証の三)であり、「縦梁」が存在しないから、プレート本体の両端に固着した太い角柱という縦梁プレート方式のプレート固有の形態が表出されていないものである。
すなわち、スライドレール方式におけるプレートは、細長い断面H字状のスライドレールにプレートを挟み込むものであって、スライドレールが細長く複雑な形態なため、弱々しく煩雑な印象を与えるのに対し、プレート本体の両端に固着した太い角柱という縦梁プレート方式の縦梁固有の形態は、安定的なしっかりした印象を与える。切梁取付用のU字状レール金具を張り付けたプレートも、パネル本体にU字状レール金具を張り付けた形態であって、張り付けられたU字状レール金具の形態が複雑であり、プレート本体の両端に固着した太い角柱が存在しないから、弱々しく煩雑な印象を与え、縦梁固有の形態が持つ安定的なしっかりした印象は与えない。
よって、右の各意匠は、縦梁プレート方式のプレートに係わる意匠である本件意匠の類似範囲を画定するための先行意匠としての意義を有しないし、これら各意匠の存在によって、連結金具を上方にわずかに突出しプレート本体の両端に固着した太い角柱からなる縦梁と、内面を平坦に、その下端をテーパー状面に形成したプレート本体から構成される外観の全体的構成態様に存する本件意匠の特徴を限定的に解すべき理由もない。
(二) イ号意匠の類似 (1) イ号意匠は、本件意匠と同じ縦梁プレート方式のプレートに係り、全体の態様が、(ア)横長長方形状薄幅のプレート、(イ)プレート本体の両端に固定され、上方にわずかに突出した連結金具を有する二本の角筒状の縦梁、(ウ)プレート下端のテーパー状面、(エ)平坦なプレート内面を有するなど本件意匠の特徴を具備している。
(2) イ号意匠は、吊下用Uリングを有していないこと、プレート内面の一本ないし三本の横線及び二本の縦線、切梁取付用の三個の角穴の点で本件意匠と相違するが、これらの相違点は、いずれもプレート内面や縦梁内面における表面の模様の微細な相違や極く小さい付加的部材の存否にすぎず、連結金具を上方にわずかに突出してプレート本体の両端に固着した太い角柱からなる縦梁と、内面を平坦に、その下端をテーパー状面に形成したプレート本体から構成される外観の全体的構成態様から生ずる本件意匠とイ号意匠とに共通な、簡素ですっきりした美感に影響を及ぼすものではない。
(3) 控訴人は、イ号意匠において、連結金具が縦梁に取り付られている時間は短い時間であるから、通常現れない意匠をもってイ号意匠とすることはできない旨主張するが、イ号意匠は、縦梁プレート方式の土留装置に用いられる土留用プレートであって、同方式においては、縦梁に固定された連結金具を介してプレートが上下に連結されるから、連結金具の存在はその使用時における必須の構成であり、必ず連結金具が縦梁に固定された状態が使用者に現認されるものである。したがって、イ号意匠も、連結金具が縦梁にボルトにより固定された一つの物件として特定されるべきものである。
(4) さらに、控訴人は、イ号意匠のプレート内面に「空洞」がある旨主張するが、右空洞は、形態としては、プレート内面のテーパー状面の中央部にわずかな切り欠け部が存する程度のものであり、このような開口部の存在によって、イ号意匠が本件意匠と異なる美感を生じているということはできないから、右空洞の存否にかかわらず、イ号意匠は本件意匠に類似するものである。
また、控訴人は、空洞に対応してプレート内面に二本の縦線が入っている旨主張するが、プレート内面に表れた二本の細い縦線がイ号意匠全体に力強い印象を与えているとは到底いえないし、土留装置の構成部材として使用される「土留用プレート」において、板の継ぎ目から生ずるプレート内面のわずかな模様から、土留用プレート全体の統一的美感が生ずることも有り得ない。
(三) まとめ したがって、本件意匠とイ号意匠とは、要部である全体の態様及び各部の態様の主な構成を共通にし、いずれも連結金具を上方にわずかに突出した太い角柱である縦梁を横長のプレート本体の前後両端に固着し、プレート本体の内面を平坦に、その下端をテーパー状面にそれぞれ形成していることにより、看者に簡素ですっきりした共通の美感を与えるものであるから、両意匠は類似するものである。
(四) 控訴人主張の無効理由の存在(後記二6(三))は争う。
7 損害額 (一) 控訴人は、平成四年七月一日から平成九年八月三一日までの間、イ号物件を四二五〇枚以上製造・販売した。
イ号物件一枚当たりの平均販売価格は金六万円、利益率は通常約三〇%であるから、イ号物件一枚当たりの利益は少なくとも金一万八〇〇〇円である。
そうすると、控訴人の利益は合計金七六五〇万円(一万八〇〇〇×四二五〇)を下らない。
(二) 仮に右(一)が認められないとしても、控訴人は、平成四年一〇月から平成九年五月までの間、少なくともイ号物件を五二二二枚製造・販売し、売上高三億一五七九万二八〇〇円、粗利益四三五六万九〇三一円を上げた。
被控訴人が新たな人件費、一般管理費、製造管理費等を支出することはないから、控訴人の前記の粗利益もって控訴人の利益とみることができる。
その場合、イ号物件の粗利益率は少なくともその旧型の二二・六六%はあり、控訴人の利益は合計六七五〇万円を下らない。
二 請求原因に対する認否及び控訴人の主張 1 請求原因1の事実(当事者)は認める。
2 請求原因2の事実(本件意匠権)は認める。
3 請求原因3の事実(本件意匠の構成)は認める。
4 請求原因4の事実(イ号物件の製造・販売)は争う。
控訴人が製造・販売しているイ号物件は、原判決別紙物件目録三及び当判決別紙物件目録五記載のとおりである。
なお、イ号意匠は、中央の縦梁の上部にプレート吊下用の穴があり、プレート内面の三本の横線がなく、スポット溶接をした跡が列状に並んでいる新型(原判決別紙物件目録三の二枚目及び当判決別紙物件目録五第2図)と、このような構成のない旧型(原判決別紙物件目録三の一枚目及び当判決別紙物件目録五第1図)とがあるが、すべてのプレートには内側に入ってきた土等を留まらせないようにプレート中央の二本の縦線間の部分の下部が空洞になっている(甲第五号証、乙第二七、第三二、第三七、第三八号証)。
被控訴人は、甲第六号証及び甲第一九号証を引用して、空洞がないタイプが存した旨主張するが、これらが上面と内面下段のテーパー面に存した空洞の口が何者かによって塞がれ塗料を塗られたものであることは、その塗料の色が他の部分と異なっていることから明らかである。
5 請求原因5の事実(イ号意匠の構成)は争う。
上下のプレートを連結するための連結金具及び縦梁上端の蝶ボルトは脱着可能な付加的別売品であり、また、意匠の観点からみると、この連結金具がプレートと共に見えるのはプレートを接続する作業をしている際の極く短い時間であり、外から見えるのは、蝶ボルトだけである。また、運搬する場合においても、連結金具及び蝶ボルトは取り付けられていない。そして、本件意匠に係る物品は土留用プレートにすぎないから、イ号意匠はプレートのみに特定される。
6 請求原因6の事実(本件意匠とイ号意匠との対比)は争う。
(一) 本件意匠の要部について (1) 周知意匠や公知意匠に含まれている部分、すなわち新規ではない部分は、看者の目を強く惹くことができず、取引者・需要者に誤認・混同を起こさせることが少ないのであるから、そのウェイトを小さく、新規な部分は看者の注意を強く惹き、そこが類似する意匠があれば、物品の誤認・混同を生ずるのであるから、
そのウェイトを高く認識するのが妥当である。
なお、本件意匠は、その意匠に係る物品を「土留用プレート」とするものであるから、その先行意匠となるものは、縦梁プレート方式のプレートのものに限定されないものである。
また、意匠法5条3号は、「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」は、登録適格を有しない旨規定しているが、その趣旨は、単に技術的要請にのみに基づく意匠は、看者の注意を惹く部分が一切ないので、このような意匠の登録を認めないという趣旨である。この規定の趣旨からすると、機能を確保するために不可欠な形状は意匠の要部となり得ないことは明白である。
(2) 次の(3)、(4)のとおり、本件意匠に類似する先行意匠があり、また、
機能上不可避の形状があるから、プレート本体内面の板の継ぎ目の三本の水平な線、プレート内面中央上端に吊下用のUリングが表れている形状が本件意匠の要部である。
(3) 全体的構成について ア 横長長方形状の薄幅のプレート本体及びプレート本体の両端に固定され、上方にわずかに突出した連結金具を有する二本の角筒状の縦梁は公知である。すなわち、甲第一一号証意匠は、意匠登録され(登録第五五八一八三号意匠。
昭和五六年八月二六日意匠公報発行)、かつ、原告により実施されているが(甲第八号証)、この甲第一一号証意匠は、本件意匠にそっくりである。本件意匠が甲第一一号証意匠と相違する点は、プレートの内側が凹凸のある階段状でなく平面になっていること、プレート内面にプレート移動用の吊り金具がないこと、吊下用のUリングがあることの三点のみである。
イ そして、環境機材株式会社の「Zシリーズ」(乙第三四号証の一、
二)は、本件意匠の出願以前から発売されていたが、プレート内面の上部が平面であり、かつ、内面の下部がテーパー状になっていて、プレート内面の左右両端に二本の縦梁を有しているものである。
なお、プレート内面の上部が平面であるとの構造は、機能的要請から来るものである。内面が階段状になっていると、管埋設工事が終わってプレートを地中から引き抜く際に、階段の上に載った土砂がプレートの引き抜きに対して大きな抵抗となるものである。
また、内面の下部がテーパー状になっている点も、機能的要請から来るものであって、縦梁を切梁で組み立てたプレートを溝に押し込む際には、先端が刃状になっている必要がある。刃状になっていないと、土砂の抵抗を受けて、プレートを溝に押し込むことができないし、プレートを地中に一段埋めた後更に掘り進むこともできないものである。
ウ 乙第一七号証(実開昭五四ー一二九一〇七号公報)にも、これらの特徴を備えた意匠が示されている。被控訴人は、この乙第一七号証のものは縦梁プレート方式のものではない旨主張するが、乙第一七号証のガイドレールは、パネルに固定されていて切梁を取り付けるためのものであり、「縦梁プレート方式」という場合の縦梁に該当する(乙第三五号証)。また、「縦梁」は、パネルに固定されていて、切梁を取り付け、プレート両側からかかる押圧を支えるものであるから、
U字状であっても差し支えないものである。
エ さらに、雑誌TIEFBAU一九七八年(昭和五三年)二月号の五七頁記載の表(乙第二四号証)は、当時知られていた土留用プレートを紹介しているが、そうのち、同頁中央の「縁部で支持」と記載されているものは、縦梁をプレートの両端に持つ縦梁プレート方式のものである。これによれば、当時すでに六社から八種の縦梁方式の土留用プレートが世界的に販売されていたことが明らかである。また、同雑誌の一九八一年(昭和五六年)八月号(乙第三六号証)をみると、
エムンズ ウント シュタウディンガー社とアウグスト・グローテ社の製品が本件意匠の出願以前から販売されていたものであり、また、クリングス社の一九七七年(昭和五二年)一一月のカタログ(乙第二一号証の一、二)に掲載された製品も、
本件意匠の出願以前から販売されていたものである。これらは、いずれも前記の機能的要請から、プレートの内面上部は平面であり、下部にはテーパー状面があり、
プレートの両端に縦梁を有するものであった。
オ さらに、乙第三九号証の三は、控訴人が発売した縦梁プレート方式の土留用プレートのカタログである。乙第四◯号証(日本下水道新聞の昭和五五年七月二一日号)には、乙第三九号証の一のカタログのスライドレール方式用の土留プレートが掲載されている。乙第四一号証は、H・S技研工業株式会社の「HSシステム」のカタログであるが、これもスライドレール方式用の土留用プレートである。乙第四二号証は、環境機材株式会社のスライドレール方式用の土留用プレート「SKタイプ」のカタログである。乙第四三号証は、日鐵金属工業株式会社のスライドレール方式用の土留用プレート「トレンチシステム」のカタログである。これらは、本件意匠の出願前に公知となった意匠である。
カ 以上によれば、プレート内面の上部が平面であり、かつ、内面の下部がテーパー状になっていて、プレート内面の左右両端に二本の縦梁を有している構成は、周知の形態であり、機能的にも不可避の構成であるから、看者の注意を惹くものではないことは明らかである。
キ 被控訴人は、「縦梁」とは、プレート本体の両端に固着した太い角柱である旨主張しているが、甲第七号証(たて込み簡易土留設計施工指針)に、
「縦ばりプレート方式」とは「前後の縦ばりに切りばり4本を取付け、あらかじめ掘削された溝にたて込み、箱状の内側を掘削して縦ばりを押し込み、この作業を繰返して所定の深さに沈設する土留である」(一頁下から二行以下)と記載され、また、「切りばり」とは「スライドレール又は縦ばりの間隔を保持して左右の土圧に抵抗する部材である」(二頁下から七行以下)、「縦ばりプレート」とは「縦ばりと切りばり及びプレートの合成で土圧を支える部材である」(二頁下から五行以下)と定義されているように、「縦梁」は、プレートに取り付けられ、縦梁に取り付けられた切梁によりプレートの外側から内方に向かう土圧を支える梁をいう。よって、切梁を取り付けることができるものであって、プレートに取り付けられるものは、すべて縦梁といえる。また、その機能から考えて、縦梁は四角柱である必要はなく、四角筒でも足りるし、U字状のものであっても差し支えない。したがって、乙第一七号証等に記載されている縦方向の梁は、いずれも縦梁プレート方式における縦梁であり、先行意匠としての価値があるものであり、被控訴人の右主張は妥当でない。
(4) 各部の態様について プレート本体については、(ア)一枚の外板で構成した平坦な横長長方形状の外面、(イ)両端を両縦梁の両内側面に接して板を継ぎ合わせた平坦かつ横長長方形状の内面、(ウ)内面の上端から下端のやや上方にわたる平坦な横長長方形状の上面部、(エ)上面部下端から外板下端へ向けて緩やかに傾斜した横長長方形状のテーパー状面、(オ)内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境界の水平な稜線は公知である。
縦梁については、(ア)プレート本体の上下端に一致した高さ、(イ)プレート本体の板厚より大きい幅を有する角筒状、(ウ)プレート本体の外板に接して固定された外面、(エ)プレート本体の内面より内方に張り出した前方部、(オ)内面に表れた切梁取付用の上下二個の角穴及び下端に表れたボルト取付用の丸穴、(カ)上方にわずかに突出して設けられた半角筒状の小さな角形連結金具、(キ)連結金具の内外面に表れたボルト取付用の丸穴及び吊下用の角穴は公知である。
(二) イ号意匠との対比 (1) イ号意匠は、プレート本体の内面に板の継ぎ目である二本の水平な横線とテーパー状面の上端と上面部との境界の水平な稜線しかないこと(旧型)、プレート本体の内面の上面部に横線が全くないこと(新型)、吊下用のUリングがないこと、上面と正面の中央に表れた空洞という形状及びプレート内面中央部に二本の縦線がある点で、本件意匠の前記要部と相違している。この空洞等がない本件意匠では、簡素ですっきりとした美感を与えるが、イ号意匠ではこの空洞等があるために力強い機能的な美感を与える。したがって、イ号意匠は本件意匠と類似しない。
(2) 仮に角形連結金具の部分を本件意匠の要部であると見ても、本件意匠では、筒形状を有せず縦梁を三方から抱いた形状をしており、かつ上端が尖った三角形状であるのに対し、イ号意匠においては、縦梁の中に設けられ、かつ上端が平らに形成されている点で、本件意匠と異なっている。
(三) 無効理由の存在と類似範囲 本件意匠は、プレート内面中央上端の吊下用のUリング及び上方にわずかに突出した連結金具を除き、先行意匠と類似しており、登録されるべきものではなかったから、本件意匠に類似するとされるものは、前記意匠公報に記載された構成を有するものに限定すべきである。
そして、イ号意匠が右に述べた本件意匠の類似範囲にないことは明らかである。
7 請求原因7の事実(損害額)は争う。
(一) イ号物件の利益率は三〇%もなく、また、粗利益が直ちに税引前利益になるわけでもない。
(二) 控訴人の平成四年一〇月から平成九年五月までの間のイ号物件の売上高は、イ号物件の旧型が一億七六二〇万二一〇〇円、新型が一億三九五九万〇七〇〇円であるところ、イ号物件が控訴人の平成五年以降の販売額の大部分を占め、控訴人全体の過去五年間の平均税引前利益率はマイナス〇・七四%であるから、イ号物件の税引前利益は合計二三万三六八七円の損失となる。
実用新案権侵害について
一 請求原因 1 当事者 前記第三、一1と同じ。
2 本件実用新案権 (一) 被控訴人は、次の実用新案権(以下、「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有する。
(1) 実用新案登録番号 第一五六四三一五号 (2) 考案の名称 土留装置 (3) 出願年月日 昭和五五年一〇月 六日 (4) 出願公告年月日 昭和五八年一〇月二七日 (5) 登録年月日 昭和五九年 八月二九日 (二) 本件実用新案権の登録請求の範囲 掘削した溝内壁面にシーティングプレートを夫々当接すると共にそれらの対向するシーティングプレートを伸縮自在の切梁で連結し、かつ最下端のシーティングプレートに対して型枠シーティングプレートを着脱可能に連結し、該型枠シーティングプレートは、その外面がシーティスグプレートの外面と同一平面をなしかつ内面はテーパー状面に形成し、該テーパー状面を利用して埋設される管体の下部周面にコンクリート基礎を打設するようにしたことを特徴とする土留装置。
(三) 本件考案の構成要件の分説 (1) 掘削した溝内壁面にシーティングプレートを夫々当接すること (2) 対向するシーティングプレートを伸縮自在の切梁で連結すること (3) 最下端のシーティングプレートに対して型枠シーティングプレートを着脱可能に連結すること (4) 型枠シーティングプレートは、その外面がシーティングプレートの外面と同一平面をなすこと (5) 型枠シーティングプレートは、その内面がテーパー状面に形成されていること (6) テーパー状面を利用して埋設される管体の下部周面にコンクリート基礎を打設するようにしたことを特徴とする土留装置 (四) 本件考案の作用効果 型枠シーティングプレートは、土留装置を溝に設置するときに一体として設置することが可能であり、かつ、これによりコンクリート打ちができ、また、コンクリート打ちが終わった後、土留装置全体として引き抜くことができるため、木枠を不要として掘削及び型枠設置の作業を簡略化することができる。
3 ロ号物件の製造・販売 (一) 控訴人は、業として、原判決別紙物件目録二記載の土留装置(以下「ロ号物件」という。)を製造し、「クリングススーパーツインパネル・ライト」の名称で販売している。
(二) ロ号物件の構成は、次のとおりである。
(1) 掘削した溝内壁面の中央下部に空洞のないシーティングプレートをそれぞれ当接すること (2) 対向するシーティングプレートを伸縮自在の切梁で連結すること (3) 最下端のシーティングプレートに対し、型枠シーティングプレートを着脱可能に連結すること (4) 型枠シーティングプレートは、その外面がシーティングプレートの外面と同一平面をなすこと (5) 型枠シーティングプレートは、その内面がテーパー状面に形成されていること (6) テーパー状面を利用して埋設される管体の下部周面にコンクリート基礎を打設するようにした土留装置 4 ロ号物件の属否 (一) 本件考案の技術的範囲 (1) 本件考案は、型枠シーティングプレートの内面にテーパー状面を形成することにより引き抜き時の抵抗を少なくすることを目的とするところ、コンクリート打ちの高さがテーパー状面より高い場合も低い場合もコンクリートを引き抜くことができ、また、埋設する管体の大きさも制限されていないから、型枠シーティングプレートの内面の一部にテーパー状面が形成されていれば、内面全体がテーパー状面ではなくその上部が平坦のものであっても、本件考案の技術的範囲に含まれる。
(2) 縦梁の内面の面積は、型枠シーティングプレートの内面の面積に比して極く狭いから、縦梁の内面がテーパー状面になっていなくともその抵抗はわずかで無視できる程度のものであり、型枠シーティングプレートの内面のテーパー状面による引き抜き時の抵抗の軽減を阻害するということもないから、縦梁の内面がテーパー状面になっていないものも、本件考案の技術的範囲に含まれる。
本件考案の登録請求の範囲では、上段のシーティングプレートについては、その形状を何ら規定していないから、シーティングプレートと型枠シーティングプレートとの両者の形状が異なっている場合も、同一である場合も、本件考案の技術的範囲に含まれる。
(3) また、型枠シーティングプレートに切梁を取り付けるかどうかも本件考案の構成とは関係がない事項であり、ロ号物件のように、テーパー状面の上に平坦なプレート部分を高く形成した型枠シーティングプレートにおいては、切梁を取り付けることとしても差し支えはない。
(4) さらに、本件考案は「下水管とくに大口径の管体を埋設する際に使用される土留装置に関する。」(甲第四号証一欄二七行、二八行)ものであるから、
中口径や小口径の管体に用いられることを特に排除するものでもない。
(二) 本件考案とロ号物件との対比 (1) ロ号物件は、型枠シーティングプレート内面が平坦面及び約二〇〇ミリメートルのテーパー状面により形成され、コンクリート打ちがテーパー状面より高いか低いかにかかわらず、これにより引き抜き時の抵抗を少なくし、直接コンクリート打ちができる。
(2) ロ号物件は、型枠シーティングプレート最下部の切梁取付用及び蝶ボルト用の穴があるが、これらは本件考案の構成要件に付加されたものにすぎない上、これらをテープ等で塞げば、コンクリートは侵入しないし、このような措置を執らなくても、コンクリートがある程度養生した状態であれば、コンクリートが折損してプレートを引き抜くことができる。
(三) まとめ したがって、ロ号物件は、本件考案の構成要件をすべて充足し、本件考案と同一の作用効果を有するから、本件考案の技術的範囲に属する。
(四) 控訴人の全部公知の主張(後記二4(四))は争う。
縦梁プレート方式において、本件考案に類似した技術は従来存在せず、また、被控訴人も、「カッティングプレート」及び「ミニ・カッティングプレート」を利用した「NTカッティングプレートシステム」を本件考案の出願前に製造・販売したことはないから、本件考案は全部公知ではない。
(五) 控訴人の実施不能の主張(後記二4(五))は争う。
本件考案は、実施不可能なものではない(甲第二〇号証)。なお、引き抜きを容易にするために剥離剤等を使用することは、本件考案の実施例においても認められている(甲第四号証三欄一行ないし四行)。
5 損害額 (一) 控訴人は、少なくとも平成四年七月一日から平成五年一〇月二七日までの間、ロ号物件を一〇〇〇台製造・販売した。
(二) ロ号物件一台当たりの平均価格は三〇万円、利益率は三〇%であるから、ロ号物件一台当たりの利益は少なくとも九万円である。
(三) よって、控訴人の利益は九〇〇〇万円(九万×一〇〇〇)を下らない。
二 請求原因に対する認否及び控訴人の主張 1 請求原因1(当事者)の認否は、前記第三、二1のとおり。
2 請求原因2の事実(本件実用新案権)は認める。
3 請求原因3の事実(ロ号物件の製造・販売)は争う。
控訴人が製造・販売しているロ号物件は、原判決別紙物件目録四記載のとおりであり、縦梁内面が下端まで垂直でテーパー状面がなく、プレート内面より前方に約六七ミリメートル突出している上、プレート内面下部に約二〇ミリメートルのテーパー状面が形成されている。
4 請求原因4の事実(ロ号物件の属否)は争う。
(一) 本件考案の技術的範囲 本件考案においては、最下段の型枠シーティングプレートとそれより上のプレートとは形状が異なる。すなわち、最下段の型枠シーティングプレートは、コンクリートとの剥離がうまくできるように内側全面がテーパー状になっているのに対し、
それより上のプレートはそのような形状をしていない。
そして、それらから理解できるように、本件考案においては型枠シーティングプレート内面全体がテーパー状になっており、また、これを使用した工事で現実に施工する際にコンクリートに巻き込まれないように切梁を取り付けることは一切考慮しておらず、また、切梁取付用の穴は一切設けられていない。
したがって、縦梁も含めて内面全体がテーパー状面であり、切梁取付用の穴が設けられていないもののみが、本件考案の技術的範囲に含まれる。
また、本件考案は、大口径の管を埋設する際に使用されることを前提としているから(甲第四号証一欄二七行、二八行)、ロ号物件のように二◯◯ミリメートルのコンクリート打ちしかできないものでは、本件考案の技術的範囲には属さない。
(二) 本件考案とロ号物件との対比 (1) ロ号物件は、プレート下部の極く一部に約二〇〇ミリメートルのテーパー状面があるにすぎず、コンクリート打ちをするのに十分な高さがないところ、
テーパー状面より高くコンクリート打ちをすると、コンクリートの固化により、プレートを引き抜くことができない。
被控訴人が行った実験(甲第二〇号証)は、テーパー面の付されている部分の高さより故意に低い高さにコンクリートを打ったもので、本件考案が対象とする大口径管には合わない、単なる誤解を与えるための実験でしかない。
(2) ロ号物件は、コンクリート打ちをした場合、テーパー状面より低い位置にあるプレート中央の縦梁の下部の穴やパネルエッジ取付用の穴から縦梁の中にコンクリートが侵入して固まる上、最下部のパネルエッジを取り付けるのに必要な蝶ボルトを包んでコンクリートが固化し、抵抗が大きくなるから、プレートを引き抜くことができない。
(3) ロ号物件は、縦梁がプレートの下端まで垂直でテーパー状面がない上、プレート内面より六七ミリメートル前方へ突出し、コンクリートが縦梁を包んで固化するから、プレートを引き抜くことができない。
(三) まとめ したがって、ロ号物件は、本件考案の構成要件を充足せず、木枠や剥離剤の利用、テープ等で穴を塞ぐこと、蝶ボルトや切梁を利用しないこと等をしない限り、
固化したコンクリートからプレートを引き抜く際にコンクリートの接着力によりコンクリートの破壊やコンクリートの移動による管体の移動が発生し、本件考案の作用効果を有しないから、本件考案の技術的範囲に属しない。
(四) 全部公知 本件考案は、その出願時に、被控訴人がその実施品である「NTシーティングプレート」を既に製造・販売し、また、類似した物品が既に存在したから、全部公知であり、その技術的範囲は実施例に記載された構成に限定される。
(五) 実施不能 本件考案は、固化したコンクリートからプレートを無理に引き抜こうとすると、
コンクリートの接着力によりコンクリートの破壊やコンクリートの移動による管体の移動が発生するおそれがあり、構成要件外の手詰作業や剥離剤の塗布をしない限りコンクリート打ちができず、また、対向するプレート間が狭いため、直径の大きい管体を埋設することができないから、その実施が不可能であり、本件実用新案権は無効とされるべきである。
5 請求原因5の事実(損害額)は争う。
控訴人のロ号物件による利益は、イ号物件と同様、多くの利益があるわけではない。
理 由
本件意匠権侵害について
一 当事者 請求原因1の事実(事実第三、一1)は当事者間に争いがない。
二 本件意匠権 請求原因2の事実(本件意匠権)及び同3の事実(本件意匠の構成)は当事者間に争いがない。
三 イ号意匠 1 空洞部分の有無 (一) 甲第五、第六及び第一九号証、乙第二〇、第二六ないし第二八、第三〇、第三七及び第三八号証、並びに原審における控訴人代表者尋問の結果によれば、控訴人は、平成四年一〇月から、業として、「クリングススーパーツインパネル・ライト」の名称で、原判決別紙物件目録三の一枚目及び当判決別紙物件目録五第1図記載の土留用プレート(旧型。乙第三八号証)を製造・販売し、平成六年七月ころから、同じく原判決別紙物件目録三の二枚目及び当判決別紙物件目録五第2図記載の土留用プレート(新型。乙第二〇、第二八、第三七号証)を製造・販売していることが認められる。
(二) 控訴人が原判決別紙物件目録一第1図記載の土留用プレート(旧型で空洞のないタイプ)を製造・販売していることを認めるに足りる証拠はない。
すなわち、被控訴人がその現物の写真であるとして提出する甲第六及び第一九号証の写真には、旧型でプレート内面下部に形成されたテーパー状面中央部の縦梁に空洞が形成されていないものが撮影されているが、その空洞が製造時ではなく後に鉄板で塞がれたものであることは、空洞部分を塞いだ部分の塗装の色が周囲の部分のそれと異なっていることから明らかであるところ、控訴人がそれらの土留用プレートを販売してから撮影時までの経過を明らかにする証拠はないから、右甲第六号証及び甲第一九号証の撮影された土留用プレートのみから、控訴人がそれらの空洞のない土留用プレートを製造、販売したものと認めることはできない。
また、甲第五号証によれば、旧型土留用プレートの説明書添付のパンフレットの部品図中には、最下端の土留用プレートに空洞がないことを疑うことの可能な図示部分があるが、同図には、上段の土留用プレート内面中央部に設けられた縦梁が空洞となっていることが示されているところ、甲第五号証の説明書の他の箇所(1/6頁)には、最下端の土留用プレートと上段の土留用プレートでは空洞の有無の相違があることをうかがわせる記載がなく、また、土留用プレート内面中央部にも縦梁を設けた旨の記載があり、その縦梁が空洞になっていることが図示されていることからすると、右部品図の図示部分のみから、最下端の土留用プレートには空洞がないと認定することはできない。
(三) 原判決別紙物件目録一第3図記載の土留用プレート(新型で空洞のないタイプ)については、それを撮影した写真の提出もなく、控訴人がこれを製造・販売していることを認めるに足りる証拠はない。
また、乙第二六号証によれば、新型土留用プレートのパンフレットの部品図中には、最下端の土留用プレートに空洞がないことを疑うことの可能な図示部分があるが、同図には、上段の土留用プレート内面中央部に設けられた縦梁が空洞になっていることが示されているところ、乙第二六号証の他の箇所には、最下端の土留用プレートと二段目以降の土留用プレートでは空洞の有無の相違があることをうかがわせる記載がないことからすると、右部品図の図示部分のみから、最下端の土留用プレートには空洞がないと認定することはできない。
2 イ号旧型意匠 右認定のイ号旧型意匠は、次のとおり分説することができる。
(一)(1) 全体の態様 ア 横長長方形状の薄幅のプレート本体 イ プレート本体の両端に固定された二本の角筒状の縦梁 (2) 各部の態様のうち、プレート本体 ア 一枚の外板で構成した平坦な横長長方形状の外面 イ 中央の縦梁、並びに両端に設けられた縦梁の内側面及び中央の縦梁に両端を接して板を継ぎ合わせて構成した面からなる、ほぼ平坦かつ横長長方形状の内面 ウ 内面の上端から下端やや上方にわたる平坦な横長長方形状の上面部 エ 上面部の下端から外板下端へ向けて緩やかに傾斜した横長長方形状のテーパー状面 オ 内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境界の水平な稜線及び板の継ぎ目の二本の水平な横線、並びに中央の二本の縦線 カ 上面中央と中央の縦梁の下端(テーパー状部)に表れた空洞 (3) 各部の態様のうち、両端の縦梁 ア プレート本体の上下端に一致した高さ イ プレート本体の板厚より大きい幅を有する角筒状 ウ プレート本体の外板に接して固定された外面 エ プレート本体の内面より内方に張り出した前方部 オ 内面に表れた切梁取付用の上下三個の角穴、上端と下端に表れたボルト取付用の丸穴 カ 外側面上端に表れた吊下用の角穴 (二) 連結金具について 被控訴人は、イ号意匠においても、着脱可能な連結金具は蝶ボルトにより縦梁に固定され、土留用プレートと一体となったものとして特定することができる旨主張するが、甲第五号証及び乙第三〇号証によれば、イ号物件においては、上下のプレートを連結するための連結金具及び蝶ボルトは着脱可能な別売品であり、また、運搬する場合においても、連結金具及び蝶ボルトは取り付けられておらず、施工時においても、一段目のプレートに二段目の土留用プレートを接続する際に連結金具が一段目の左右両端の縦梁に蝶ボルトで連結されるが、すぐに二段目の土留用プレートが接続されるため接続作業完了後に外から見えるのは蝶ボルトだけであることが認められるから、連結金具及び蝶ボルトをイ号物件又は縦梁の一部として認定することはできず、被控訴人の右主張は採用することができない。
3 イ号新型意匠 右認定のイ号新型意匠は、次のとおり分説することができる。
(一)(1) 全体の態様 ア 横長長方形状の薄幅のプレート本体 イ プレート本体の両端に固定された二本の角筒状の縦梁 (2) 各部の態様のうち、プレート本体 ア 一枚の外板で構成した平坦な横長長方形状の外面 イ 中央の縦梁、並びに両端に設けられた縦梁の内側面及び中央の縦梁に両端を接して一枚板(中央の縦梁の左右各一枚)で構成した面からなる、ほぼ平坦かつ横長長方形状の内面 ウ 内面の上端から下端やや上方にわたる平坦な横長長方形状の上面部 エ 上面部の下端から外板下端へ向けて緩やかに傾斜した横長長方形状のテーパー状面 オ 上面部に表れた水平な五列のスポット溶接をした跡 カ 上面中央と中央の縦梁の下端(テーパー状部)に表れた空洞 キ 中央の縦梁上端に表れたプレート吊下用の角穴 (3) 各部の態様のうち、両端の縦梁 ア プレート本体の上下端に一致した高さ イ プレート本体の板厚より大きい幅を有する角筒状 ウ プレート本体の外板に接して固定された外面 エ プレート本体の内面より内方に張り出した前方部 オ 内面に表された切梁取付用の上下三個の角穴、上端と下端に表れたボルト取付用の丸穴 カ 外側面上端に表れた吊下用の角穴 (二) 連結金具について 前記2(二)に記載のとおりである。
四 本件意匠の要部 1 甲第一一号証、乙第一七号証、乙第二一号証の一、二、乙第三四号証の一、二、乙第三六号証、乙第三九号証の二、三、乙第四◯号証及び乙第四三号証によれば、前記三の構成のうち、本件意匠において看者の注意を惹く点、すなわち要部は、横長長方形状の薄幅のプレート本体の両端に二本の角筒状の縦梁を固定した土留用プレートにおいて、プレート内面に板の継ぎ目の三本の水平な横線とテーパー状面上端と上面部との境の水平な稜線を表した点にあると認められる。
2 被控訴人は、下端にテーパー状面を形成し、内面を平坦にしたプレートの両端に太い角柱である縦梁を固定した形状がすっきりした印象を与え、看者の注意を惹くから、右形状が本件意匠の要部である旨主張する。
確かに、甲第一一号証(意匠登録第五五八一八三号公報)によれば、プレートの内面が凹凸のある二段の階段状に表され、内面中央に補強材が縦方向に設けられ、
その上下に正面形状が四角で、その中央に縦長長方形状の切梁挿着孔が表され、吊下用のUリングがない点が本件意匠と異なるが、他の点では共通している意匠が本件意匠権の出願前に公知であったことが認められるが、横長長方形状の薄幅のプレート本体の両端に二本の角筒状の縦梁を固定した基本的構成態様を有する土留用プレートにおいて、内面を平坦にしたものが本件意匠権の出願前に公知であったことを認めるに足りる証拠はない。
しかしながら、右の横長長方形状の薄幅のプレート本体の両端に二本の角筒状の縦梁を固定した基本的構成態様を有する土留用プレートに限らず、広く土留用プレートの内面について検討すると、乙第一七号証(実開昭五四ー一二九一〇七号公報)、乙第二一号証の一、二(クリングス社の一九七七年(昭和五二年)一一月のカタログに掲載された製品)、乙第三四号証の一、二(環境機材株式会社の「Zシリーズ」、昭和五四年一一月八日公知)、乙第三六号証(雑誌TIEFBAU一九八一年(昭和五六年)八月号、エムンズ ウント シュタウディンガー社とアウグスト・グローテ社の製品)、乙第三九号証の二、三(控訴人のクリングスシステムコンビパネルKCP型、昭和五六年一二月二四日公知)、乙第四◯号証(日本下水道新聞の昭和五五年七月二一日号、控訴人らのクリングスシステムたて込み簡易土留工法)、乙第四三号証(日鐵金属工業株式会社の「トレンチシステム」、昭和五五年七月二一日公知(乙第四〇号証))によれば、縦梁プレート方式かスライドレール方式かを問わず、土留用プレートにおいて内面を平面にすることや内面下端部をテーパー状に形成することは極くありふれたことであることが認められるから、
右甲第一一号証の意匠の内面を、単に下端をテーパー状面に形成し、内面上面部を平坦にしたことのみによって、看者の注意を強く惹く意匠が構成されたものとは認め難い(なお、右土留用プレートのうち、少なくとも乙第二一号証の一、二(クリングス社の一九七七年(昭和五二年)一一月のカタログに掲載された製品)、乙第三六号証(雑誌TIEFBAU一九八一年(昭和五六年)八月号)中のアウグスト・グローテ社の製品及び乙第三九号証の三(控訴人のクリングスシステムコンビパネルKCP型)記載のものは、たて込み簡易土留設計施工指針(甲第七号証)にいう縦梁プレート方式に属するものと認めるべきである。)。しかも、本件意匠の内面は、単に平坦で何ら横線、縦線等のないものとして意匠登録されたものではなく、飽くまで内面に四本の横線が表れたものとして意匠登録され、右のように横線の配された内面の形状は、縦梁と比べて面積が大きく、かつ、プレート背面とは異なり、管埋設工事の施工時においても常時工事関係者等看者の目に触れるものと認められる。
したがって、横線等の有無にかかわらず内面の平坦にした点及び下端をテーパー状とした点を本件意匠の要部であるととらえるべきである旨の被控訴人の主張は採用することができない。
五 本件意匠とイ号意匠との類否 1 イ号物件旧型の意匠 (一) 本件意匠とイ号物件旧型の意匠との類否について検討すると、弁論の全趣旨によれば、イ号旧型意匠は土留用プレートに係るものであると認められるから、両者は、いずれも意匠に係る物品を共通にするものである。
(二) そして、前記認定の本件意匠及びイ号旧型意匠の構成によれば、両者の共通点、相違点は次のとおりである。
(1) 全体の態様 両者は、横長長方形状の薄幅のプレート本体の両端に二本の角筒状の縦梁を固定したとの全体の態様において共通している。
(2) 各部の態様のうちプレート本体の態様 両者は、
ア 一枚の外板で構成した平坦な横長長方形状の外面、
イ ほぼ平坦かつ横長長方形状の内面、
ウ 内面の上端から下端やや上方にわたる平坦な横長長方形状の上面部、 エ 上面部の下端から外板下端へ向けて緩やかに傾斜した横長長方形状のテーパー状面の点で共通しているが、
オ 本件意匠は、内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境の水平な稜線及び板の継ぎ目の三本の水平な横線を有するのに対し、イ号旧型意匠は、
中央に縦梁を有するため、内面中央に二本の縦線を有し、さらに、内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境界の水平な稜線及び板の継ぎ目の二本の水平な横線を有する点、
カ 本件意匠は、プレート本体の上面中央と内面下端(テーパー状部)に空洞を有しないのに対し、イ号旧型意匠は、これを有する点、
キ 本件意匠は、内面中央上端の吊下用のUリングを有するのに対し、
イ号物件旧型の意匠では、これを有しない点で相違する。
(3) 各部の態様のうち両端の縦梁の態様 両者は、
ア プレート本体の上下端に一致した高さ、
イ プレート本体の板厚より大きい幅を有する角筒状、
ウ プレート本体の外板に接して固定された外面、
エ プレート本体の内面により内方に張り出した前方部で共通するが、
オ 本件意匠は、内面に表れた切梁取付用の上下二個の角穴及び下端に表れたボルト取付用の丸穴を有するのに対し、イ号旧型意匠では、内面に表れた切梁取付用の上下三個の角穴、上端と下端に表れたボルト取付用の丸穴を有する点、
カ 本件意匠は、上方にわずかに突出して設けられた半角筒状の小さな角形連結金具を有し、連結金具の内外面に表れたボルト取付用の丸穴及び吊下用の角穴を有するのに対し、イ号旧型意匠は、半角筒状の小さな角形連結金具を有しないが、外側面上端に表れた吊下用の角穴を有する点において相違するものである。
(三) 以上検討した本件意匠とイ号旧型意匠との共通点及び相違点を総合して、両者の類否を判断すると、横長長方形状の薄幅のプレート本体の両端に二本の角筒状の縦梁を固定したとの全体の態様、並びに、プレート本体の態様において、
平坦な外面、ほぼ平坦な内面、内面下端のテーパー状面の点で共通するものであるが、右全体の態様を共通にする点は、本件意匠の要部に関しないものである。そして、本件意匠は、内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境の水平な稜線及び板の継ぎ目の三本の水平な横線を有することによって、横方向に長い、すっきりした印象を与えるものと認められるのに対し、イ号旧型意匠は、内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境界の水平な稜線及び板の継ぎ目の二本の水平な横線に加え、内面中央の縦梁の存在により二本の縦線を有し、かつ、プレート本体の中央部縦梁の上面及び内面下端(テーパー状部)に空洞を有することによって、縦梁が三本あって頑丈な印象を与えるものであり、本件意匠とイ号旧型意匠とは、全体として見る者に与える美感を異にし、類似しないものというべきである。
2 イ号新型意匠 (一) 本件意匠とイ号物件新型の意匠との類否について検討すると、弁論の全趣旨によれば、イ号新型意匠は土留用プレートに係るものであると認められるから、両者は、いずれも意匠に係る物品を共通にするものである。
(二) そして、前記認定の本件意匠及びイ号新型意匠の構成によれば、両者の共通点、相違点は次のとおりである。
(1) 全体の態様 両者は、横長長方形状の薄幅のプレート本体の両端に二本の角筒状の縦梁を固定したとの全体の態様において共通している。
(2) 各部の態様のうちプレート本体の態様 両者は、
ア 一枚の外板で構成した平坦な横長長方形状の外面、
イ ほぼ平坦かつ横長長方形状の内面、
ウ 内面の上端から下端やや上方にわたる平坦な横長長方形状の上面部、 エ 上面部の下端から外板下端へ向けて緩やかに傾斜した横長長方形状のテーパー状面で共通しているが、
オ 本件意匠は、内面を板を継ぎ合わせて構成した平坦かつ横長長方形状とし、内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境の水平な稜線及び板の継ぎ目の三本の水平な横線を有するのに対し、イ号新型意匠は、内面中央に縦梁を有するため、内面中央に二本の縦線を有し、さらに、両端に設けられた縦梁の内側面及び中央の縦梁に両端を接して一枚板(中央の縦梁の左右各一枚)で構成した内面の上面部に水平な五列のスポット溶接をした跡を有する点、
カ 本件意匠は、プレート本体の上面中央と内面下端(テーパー状部)に空洞を有しないのに対し、イ号物件新型の意匠は、これを有する点、
キ 本件意匠は、内面中央上端の吊下用のUリングを有するのに対し、
イ号物件新型の意匠では、これを有せず、中央部の縦梁の上端に表れたプレート吊下用の角穴を有する点で相違する。
(3) 各部の態様のうち両端の縦梁の態様 両者は、
ア プレート本体の上下端に一致した高さ、
イ プレート本体の板厚より大きい幅を有する角筒状、
ウ プレート本体の外板に接して固定された外面、
エ プレート本体の内面により内方に張り出した前方部で共通するが、
オ 本件意匠は、内面に表れた切梁取付用の上下二個の角穴及び下端に表れたボルト取付用の丸穴を有するのに対し、イ号新型意匠では、内面に表れた切梁取付用の上下三個の角穴、上端と下端に表れたボルト取付用の丸穴を有する点、
カ 本件意匠は、上方にわずかに突出して設けられた半角筒状の小さな角形連結金具を有し、連結金具の内外面に表れたボルト取付用の丸穴及び吊下用の角穴を有するのに対し、イ号新型意匠は、半角筒状の小さな角形連結金具を有しないが、外側面上端に表れた吊下用の角穴を有する点において相違するものである。
(三) 以上検討した本件意匠とイ号新型意匠との共通点及び相違点を総合して、両者の類否を判断すると、前記本件意匠とイ号旧型意匠との相違点に加え、本件意匠は、内面を板を継ぎ合わせて構成した平坦かつ横長長方形状とし、テーパー部との境の水平な稜線及び板の継ぎ目の三本の水平な横線を有するのに対し、イ号新型意匠は、内面を一枚板(中央の縦梁の左右各一枚)で構成し、内面の上面部に水平な五列のスポット溶接をした跡を有するとの相違点を有するものであるから、
本件意匠は、内面に表れたテーパー状面の上端と上面部との境の水平な稜線及び板の継ぎ目の三本の水平な横線を有することによって、横方向に長い、すっきりした印象を与えるものと認められるのに対し、イ号新型意匠は、縦梁が三本あって頑丈な印象を与えるものであり、本件意匠とイ号新型意匠とは、イ号旧型意匠の場合以上に、全体として見る者に与える美感を異にし、類似しないものというべきである。
六 意匠権侵害についての結論 よって、被控訴人の意匠権侵害に基づく請求は理由がない。
本件実用新案権侵害について
一 本件実用新案権 請求原因2の事実(事実第四、一)は当事者間に争いがない。
二 本件考案の構成要件(5)の解釈について 1 型枠シーティングプレートは、その内面がテーパー状面に形成されていることとの本件考案の構成要件(5)について検討すると、この要件は、型枠シーティングプレートの内面のうち打設されるコンクリートの厚さ以上の高さにおいて、テーパー状面に形成されていることを規定していると認められる。
2 すなわち、構成要件(5)は、「内面はテーパー状面に形成し、」と規定し、
さらに、構成要件(6)は、「該テーパー状面を利用して埋設される管体の下部周面にコンクリート基礎を打設するようにした」と規定しているものであるから、この実用新案登録請求の範囲の記載からは、型枠シーティングプレートの内面が打設されるコンクリートの厚さ以上の高さにおいてテーパー状に形成されている必要があると認めるのが相当である。
3 そして、この解釈は、考案の詳細な説明の記載とも整合する。すなわち、
甲第四号証によれば、本件考案の考案の詳細な説明には、「本考案は、下水管とくに大口径の管体を埋設する際に使用される土留装置に関する。」(一欄二七行、二八行)、「本考案は、・・・コンクリート打ちして基礎固めするために木枠の使用を不要にして木枠設置のための余分の掘削を不要にした土留装置を提供するにある。」(二欄六行ないし一〇行)、「該(型枠)シーティングプレート5、5は、・・・内面はテーパー状面6、6に形成され、全体として楔形状になっていることである。」(二欄二五行ないし二九行)と記載され、第1図の実施例の図を見ても、型枠シーティングプレート5、5は、内面全体がテーパー状に形成され、打設されるコンクリートの厚さ以上の高さにおいてテーパー状に形成されていることが認められる。この考案の詳細な説明及び図面の記載は、打設されるコンクリートの厚さ以上の高さにおいて内面がテーパー状に形成されていることを前提としたものであり、他に内面のうちコンクリートの厚さの一部についてのみテーパー状面が形成されていれば足りることをうかがわせる記載はない。
4 さらに、右のように解しないと、本件実用新案権は無効理由を有することになる。すなわち、本件考案の構成要件(5)を内面全体がテーパー状になっていることは必要ではなく、打設されるコンクリートの高さがテーパー状面の高さを超えるものも含むと解すると、乙第一七及び第三五号証によれば、本件実用新案権の出願前に出願公開された実開昭五四ー一二九一〇七号公報に記載されたものは、「パネル4・・・の下端部は、第3図、第4図および第8図に示すように、内面下端部が上方に行くに従って対向するパネル4側に傾斜する斜面に形成され、パネル4の沈降に支障がないように構成されている」(乙第三五号証六頁七行ないし一一行)ものであって、パネルの下端部のみがテーパー状に形成されていることが認められ、
被控訴人主張のように解した場合の本件考案の構成要件をすべて充足する考案が記載されていることが認められる(なお、本件実用新案権は、その実用新案登録請求の範囲の記載によれば、被控訴人の定義にいう縦梁プレート方式のものに限らず、
少なくとも乙第一七号証の属するUレール方式のものを含むものと認められる。また、乙第一七号証のものが、一段のものに限らず、シーティングプレートを二段以上上下に重ねるものを含むことは、乙第三五号証の「溝の掘削深さが大で、パネル4の上端が地表近くに達した場合には、新たに同形のパネル4を上方に追加し、掘削深さに追随させる。」(一〇頁一四行ないし一六行)との記載から明らかである。)。
三 ロ号物件の形状 乙第二七号証によれば、ロ号物件のテーパー状面の高さは、パネル全体の高さ一〇〇センチメートルのうち約二〇センチメートルであることが認められるところ、
弁論の全趣旨によれば、この程度のテーパー状面の高さでは、全体の高さが一〇〇センチメートルであるパネルが想定する程度の基礎コンクリート打ちに使用した場合、コンクリートの高さが右約二〇センチメートルのテーパー状面の高さを超える場合が多いものと認められる。
実用新案権侵害についての結論 よって、ロ号物件は、本件考案の構成要件(5)を充足しないから、被控訴人の本件実用新案権侵害を理由とする請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
結論
よって、被控訴人の請求はいずれも理由がなく、これと異なる原判決は一部失当であるから、本件控訴を認容することとし、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成一一年九月三〇日)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 市川正巳
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