関連ワード | 物品 / 形状 / 線図 / 意匠に係る物品 / 公然知られた(3条1項1号) / 類似の意匠 / 部品 / 意匠の類否 / 先使用(29条) / 登録意匠 / 損害賠償 / 通常実施権 / 類似性(類否判断) / |
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事件 |
平成
9年
(ワ)
4986号
損害賠償請求事件
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原告 コロナ産業株式会社右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 川田敏郎 被告 株式会社ドウシシャ右代表者代表取締役 【B】 右訴訟代理人弁護士 藤田一伯 右補佐人弁理士 【C】 被告 トステムビバ株式会社右代表者代表取締役 【D】 右訴訟代理人弁護士 井口寛二 同 瀬川健二 同 手島康子 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 1999/08/27 |
権利種別 | 意匠権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
一 原告の請求をいずれも棄却する。 二 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
一 被告株式会社ドウシシャ(以下「被告ドウシシャ」という。)は、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成九年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 被告トステムビバ株式会社(以下「被告トステムビバ」という。)は、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成九年三月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 |
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当事者の主張
一 請求原因1 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件意匠」という。)を有している。 出願年月日 昭和六〇年五月八日登録年月日 平成二年五月一七日登録番号 第七九三六八九号意匠に係る物品 装飾用電球ソケット登録意匠 別添の意匠公報記載のとおり2 本件意匠の構成は、次のとおりである。 (一) 基本的構成態様全体として筒状に構成されている。 上部側は、外面を円筒状に形成した円筒部である。 円筒部の下側には、角筒部が連続している。 全体の高さと最大幅の比率は、約一・〇対〇・三八である。 (二) 具体的構成態様円筒部は、高さと幅(外径)の比率が、約一・〇対一・三である。 円筒部の上隅部は、九〇度をなす角部に形成されている。 角筒部の側面は、上部から下部に進むにつれて徐々に細くなる傾斜面である。 角筒部は、その外面が断面正六角形状に形成されている。 角筒部の高さと幅(反対側に位置する面同士の間隔)の比率は、角筒部の上端において約一・〇対〇・五一であり、角筒部の下端において約一・〇対〇・三〇である。 角筒部の高さと幅(反対側に位置する辺同士の間隔)の比率は、角筒部の上端において約一・〇対〇・五九であり、角筒部の下端において約一・〇対〇・五一である。 3 被告らは、別紙物件目録記載の装飾用電球ソケット(以下「被告ソケット」という。)により構成されるライトセットを収納したクリスマスツリーセットを、業として販売しており、原告は、本件意匠を実施している。 4 被告ソケットの意匠(以下「被告意匠」という。)の構成は、次のとおりである。 (一) 基本的構成態様全体として筒状に構成されている。 上部側は、外面を円筒状に形成した円筒部である。 円筒部の下側には、角筒部が連続している。 全体の高さと最大幅の比率は、約一・〇対〇・四七である。 (二) 具体的構成態様円筒部は、高さと幅(外径)の比率が、約一・〇対一・四である。 円筒部の上隅部は、円弧状に形成されている。 角筒部の側面は、上部から下部にかけて同じ太さである。 角筒部は、その外面が断面正六角形状に形成されている。 角筒部の各側面には、山形突状が形成されており、山形突状は、下方に進むにつれて徐々に小さくなる。 角筒部の高さと幅(反対側に位置する面同士の間隔)の比率は、約一・〇対〇・六〇である。 角筒部の高さと幅(反対側に位置する辺同士の間隔)の比率は、約一・〇対〇・六八である。 5(一) 本件意匠の要部は、本件意匠の構成のうち、全体として筒状に構成されている点、上部側は、外面を円筒状に形成した円筒部とされている点、円筒部の下側には、角筒部が連続している点、角筒部は、その外面が断面正六角形状に形成されている点であり、被告意匠の要部も、同様の点である。 (二) 本件意匠の要部と被告意匠の要部は、同一である。 (三) 本件意匠の構成と被告意匠の構成は、本件意匠の角筒部の側面が、上部から下部に進むにつれて徐々に細くなる傾斜面であるのに対し、被告意匠の角筒部の側面が、上部から下部にかけて同じ太さである点、本件意匠の円筒部の上隅部には、 九〇度をなす角部が形成されているが、被告意匠の円筒部の上隅部は、円弧状に形成されている点、本件意匠の角筒部の各側面には山形突状が存在しないのに対し、 被告意匠の角筒部の各側面には山形突状が形成されており、山形突状は、下方に進むにつれて徐々に小さくなる点が異なる。また、全体の高さに対して円筒部の高さの占める割合は、本件意匠の方が被告意匠よりも大きい。 しかし、本件意匠の構成と被告意匠の構成の右の差異は、微細な部分の差異であり、要部の差異とはいえないから、右の差異は、本件意匠と被告意匠が類似することを妨げるものではない。 (四) したがって、本件意匠と被告意匠は、類似する。 6 よって、被告らが、被告ソケットにより構成されるライトセットを収納したクリスマスツリーセットを、業として販売する行為は、本件意匠権を侵害する行為である。 7(一)(1) 被告ドウシシャは、平成六年三月一日から平成九年二月二八日までの間に、被告ソケットにより構成されるライトセットを収納したクリスマスツリーセットを一セットの販売価格一〇〇〇円で三〇万セット販売した。 (2) クリスマスツリーセットにおける被告ソケットの寄与率は二〇パーセントである。 (3) 被告ドウシシャによるクリスマスツリーセットの販売における利益率は、二〇パーセントである。 (4) 被告ドウシシャが右(1)の販売により得た利益の額は、販売価格一〇〇〇円に寄与率二〇パーセント、利益率二〇パーセント及び販売数三〇万セットを乗じた一二〇〇万円である。 (5) 仮に、販売数が三〇万セットに満たないとしても、被告ドウシシャは、クリスマスツリーセットを少なくとも六万七九九二セット販売したから、被告ドウシシャがクリスマスツリーセットの販売により得た利益の額は、販売価格一〇〇〇円に寄与率二〇パーセント、利益率二〇パーセント及び販売数六万七九九二セットを乗じた二七一万九六八〇円である。 (6) 右一二〇〇万円(少なくとも二七一万九六八〇円)は、原告が受けた損害の額と推定される。 (二)(1) 被告トステムビバは、被告ソケットにより構成されるライトセットを収納したクリスマスツリーセットを被告ドウシシャから仕入れ、これを平成六年三月一日から平成九年二月末日までの間に、一セットの販売価格一九八〇円で一〇万セット販売した。 (2) クリスマスツリーセットにおける被告ソケットの寄与率は二〇パーセントである。 (3) 被告トステムビバによるクリスマスツリーセットの販売における利益率は、販売価格の三〇パーセントである。 (4) 被告トステムビバが右(1)の販売により得た利益の額は、販売価格一九八〇円に寄与率二〇パーセント、利益率三〇パーセント及び販売数一〇万セットを乗じた一一八八万円である。 (5) 仮に、販売数が一〇万セットに満たないとしても、被告トステムビバは、クリスマスツリーセットを少なくとも一万九〇三九セット販売したから、被告トステムビバがクリスマスツリーセットの販売により得た利益の額は、販売価格一九八〇円に寄与率二〇パーセント、利益率三〇パーセント及び販売数一万九〇三九セットを乗じた二二六万一八三三円である。 (6) 右一一八八万円(少なくとも二二六万一八三三円)は、原告が受けた損害の額と推定される。 8 以上の次第で、原告は、不法行為による損害賠償請求として、被告ドウシシャに対し、右損害の一部である五〇〇万円及びこれに対する不法行為の後である平成九年四月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告トステムビバに対し、右損害の一部である五〇〇万円及びこれに対する不法行為の後である平成九年三月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二 請求原因に対する認否(被告ごとに認否を書き分けない場合は、認否は被告らに共通である。)1 請求原因1の事実は認める。 2(被告ドウシシャ) 同2(一)、(二)の主張は認める。 (被告トステムビバ) 同2(一)、(二)の主張は争う。 3 同3の事実は認める。 4(被告ドウシシャ) 同4(一)、(二)の主張は認める。 (被告トステムビバ) 同4(一)、(二)の主張は争う。 5(被告ドウシシャ) (一) 同5(一)の主張について、本件意匠の構成のうち、全体として筒状に構成されている点、上部側は、外面を円筒状に形成した円筒部とされている点、円筒部の下側には、角筒部が連続している点、角筒部は、その外面が断面正六角形状に形成されている点が本件意匠の要部であることは認めるが、その余は争う。 本件意匠の要部は、右の部分にとどまらない。装飾用電球ソケットにおいて、普通は、組立時に、コード挾持片でコードを挾持した端子板がソケット内に装着されるから、ソケットの意匠図面に端子板が表されることはないが、本件意匠においては、対をなすコード挾持片が開いた状態のままで端子板がソケット内に装着されていることが明示されている。この点は、公知意匠に該当しない新規な部分であり、 看者の注意を引く部分であるから、対をなすコード挾持片が開いた状態のままで端子板がソケット内に装着されていることも本件意匠の要部とすべきである。 (二) 同5(二)の主張は争う。 被告意匠は、対をなすコード挾持片が開いた状態のままで端子板がソケット内に装着されているという本件意匠の要部と同一の構成を備えていないから、被告意匠の要部は、本件意匠の要部と同一ではない。 (三) 同5(三)の主張は争う。 (四) 同5(四)の主張は争う。 被告意匠の要部は、本件意匠の要部と異なるので、被告意匠は本件意匠と類似しない。 (被告トステムビバ) 同5(一)ないし(四)の主張は争う。 6 同6の主張は争う。被告らが販売しているのは、クリスマスツリーセットであるから、被告らは、本件意匠に係る物品である装飾用電球ソケットを販売していない。 7(被告ドウシシャ) 同7(一)のうち、被告ドウシシャが、平成六年三月一日から平成九年二月二八日までの間に、被告ソケットにより構成されるライトセットを収納したクリスマスツリーセットを六万七九九二セット販売したことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。 (被告トステムビバ) 同7(二)のうち、被告トステムビバが、被告ソケットにより構成されるライトセットを収納したクリスマスツリーセットを被告ドウシシャから仕入れ、平成七年一一月一日から平成八年三月三一日までの間に、仕入れた数量一万九二三二セットの九九パーセントに当たる一万九〇三九セットを販売したことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。 クリスマスツリーセットにおける被告ソケットの寄与率は、〇・三ないし〇・三七パーセント程度であり、僅少である。 クリスマスツリーセットを購入する動機を決定するのは、ツリーの高さと価格であり、電球ソケットのデザインは関係がない。被告トステムビバの売上げは、適正な価格の設定などの営業努力によるところが大きく、電球ソケットの意匠権の侵害とすべて因果関係があるわけではない。 8 同8の主張は争う。 三 抗弁 1 先使用に基づく通常実施権(一) 被告ソケットの製造者である昇宇企業有限公司又は昇宇企業有限公司の代表者である【E】は、本件意匠権の出願日の前である昭和五九年七月二五日ころ、本件意匠に類似した意匠の電球ソケットにより構成されたライトセットにつき、電気用品取締法に基づく電気用品型式認可を受けるために、財団法人日本電気用品試験所に対し、試験の申請を行ったが、これは、右電球ソケットを輸入する事業の準備に当たる。 (二) 先使用に基づく通常実施権は、先使用権者が現に実施又は準備をしていた意匠だけではなく、その意匠と類似の意匠にも及ぶ。 被告意匠は、昇宇企業有限公司又は【E】が現に事業の準備をしていた右(一)の電球ソケットの意匠と類似するから、昇宇企業有限公司又は【E】は、被告意匠の範囲において、本件意匠権について通常実施権を有する。 (三) 被告ドウシシャは、昇宇企業有限公司から、被告ソケットにより構成されたライトセットを収納したクリスマスツリーセットを輸入し、販売しており、被告トステムビバは、被告ドウシシャから右クリスマスツリーセットを仕入れ、販売しているものであるから、被告らの右販売は、本件意匠権の侵害とはならない。 2 出願前公知意匠の存在 本件意匠は、その出願前に日本国内において公然知られた意匠(以下「出願前意匠」という。)に類似するものであるから、本件意匠登録は無効とされるべきものである。 (一) 出願前意匠はコード付き装飾用電燈器具のソケットに係る意匠であって、その基本的構成は、全高の略三分の一を円筒状部とし、残りを六角柱状部とした柱状体をなし、直径と高さの比率を略一対二としたものである。その各部の具体的態様は、六角柱状部は上下略同じ大きさとし、該部の側面は平坦面をなし、円筒状部の頂部に形成された電球支持具用嵌合凹部の下端面にH字状端子板挿入孔を備え、六角柱状部の下端面に倒凸状コード孔を左右対称に備えたものである。そして、右記載した構成・態様は意匠の類否判断を左右する要部であると認められ、この要部において本件登録意匠と出願前意匠とは一致しているのであるから、両者は類似している。 (二) 電気用品取締法23条1項によると、甲種電気用品である装飾用電燈器具の輸入の事業を行う者は、型式の区分に従い、通商産業大臣の認可を受けることになっていて、かつその27条により型式認可番号の表示されているものでなければ、 販売し又は販売目的で陳列してはならないとされている。 株式会社山七商店(以下「山七商店」という。)は、出願前意匠に係る装飾用電燈器具について、昭和五六年一一月一三日に電気用品型式認可を取得し、遅くとも昭和五七年のクリスマスころには販売していたから、出願前意匠は公然知られる状態になっていたものということができる。 四 抗弁に対する認否1(一) 抗弁1(一)の事実は不知であり、主張は争う。 (二) 同1(二)の主張は争う。 (三) 同1(三)の事実は不知であり、主張は争う。 2 抗弁2の事実は否認し、主張は争う。 被告らが、出願前意匠に係る装飾用電燈器具について、輸入甲種電気用品型式認可を取得する際における申請関係書類の原本であると主張する書類(乙一九ないし二一の各一ないし六)は、その一部にホッチキスで止めた痕跡があり、一部にはホッチキスで止めた痕跡がないこと、財団法人日本電気用品試験所の受理印が押されている書類が申請によって一致していないこと、昭和五六年一〇月二八日付けの申請に対して認可されているのに同日の日付の入った申請書がないことからすると、 被告らが主張する型式認可の際に現実に用いられた書類とは考えられない。 したがって、山七商会が、被告らが主張する製品について型式認可を取得したということはなく、出願前公知の主張はその前提が誤っている。 理 由一 請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。 二 証拠(甲一)及び弁論の全趣旨によると、本件意匠の構成は、次のとおりであると認められる。 1 基本的構成態様全体として筒状に構成されている。 上部側は、外面を円筒状に形成した円筒部である。 円筒部の下側には、断面正六角形状の角筒部が連続している。 全体の高さと最大幅の比率は、約一・〇対〇・四である。 全体の高さと円筒部の高さの比率は、約一・〇対〇・三一である。 2 具体的構成態様円筒部は、高さと幅(外径)の比率が、約一・〇対一・三である。 円筒部の上隅部には、九〇度をなす角部が形成されている。 角筒部の側面は、上部から下部に進むにつれて徐々に細くなる傾斜面である。 角筒部の高さと幅(反対側に位置する面同士の間隔)の比率は、角筒部の上端において約一・〇対〇・五一であり、角筒部の下端において約一・〇対〇・四である。 角筒部の高さと幅(反対側に位置する辺同士の間隔)の比率は、角筒部の上端において約一・〇対〇・五九であり、角筒部の下端において約一・〇対〇・五である。 三 請求原因3の事実は、当事者間に争いがない。 四 証拠(乙一の一ないし三、検甲一)及び弁論の全趣旨によると、被告ソケットの構成は、次のとおりであると認められる。 1 基本的構成態様全体として筒状に構成されている。 上部側は、外面を円筒状に形成した円筒部である。 円筒部の下側には、断面正六角形状の角筒部が連続している。 全体の高さと最大幅の比率は、約一・〇対〇・五である。 全体の高さと円筒部の高さの比率は、約一・〇対〇・二四である。 2 具体的構成態様円筒部は、高さと幅(外径)との比率が、約一・〇対一・八である。 円筒部の上隅部は、円弧状に形成されている。 角筒部の側面は、上部から下部にかけて同じ太さである。 角筒部の各側面には、山形突状が形成されており、山形突状は、下方に進むにつれて徐々に小さくなる。 角筒部の高さと幅(反対側に位置する面同士の間隔)の比率は、約一・〇対〇・六である。 角筒部の高さと幅(反対側に位置する辺同士の間隔)の比率は、約一・〇対〇・六八である。 五1 証拠(乙一七、乙一八の一ないし四、乙一九ないし二一の各一ないし六、乙二二の一、二、乙二三、乙二四、乙二五ないし二七の各一、二、乙二八)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。 (一) 甲種電気用品である装飾用電燈器具の輸入販売を業とする山七商会は、昭和五六年一一月一三日、「92─419」、「92─420」及び「92─421」の認可番号で、それぞれ「100V、0.14A、直列及び並列接続」、「100V、0.07A、直列接続」及び「100V、0.56A、直列及び並列接続」の型式で、装飾用電燈器具についての電気用品型式認可を取得した(以下、右型式認可を「本件型式認可」という。)。 (二) 山七商会が、本件型式認可を取得した装飾用電燈器具は、クリスマスツリーの装飾用ライトセットである。右ライトセットのソケットの基本的構成態様は、全高の略三分の一を円筒状部とし、残りを断面正六角形状の柱状体とし、直径と高さの比率を略一対二としたものである。その各部の具体的構成態様は、六角形状の柱状体は上下略同じ大きさとし、該部の側面は平坦面をなし、円筒状部の頂部に形成された電球支持具用嵌合凹部の下端面にH字状端子板挿入口を備え、六角柱状部の下端面に倒凸状コード孔を左右対称に備えたものである。 (三) 山七商会は、昭和五七年三月一九日付けの書簡で、台湾の東仰産商股・有限公司に対し、本件型式認可を受けたクリスマスツリーの装飾用ライトセットの製造注文を行い、台湾のKFK INDUSTRIAL co.,LTD.から、山七商会に対して、同年四月一六日付け注文確認書が送付された。右ライトセットは、同年九月二四日及び同年一〇月八日付けで京都税関支署によって輸入を許可されて通関し、右ライトセットのソケットの形態は、遅くとも同年のクリスマスシーズンにおいては、日本国内において公然知られたものとなった。 2(一) 原告は、前記第二(当事者の主張)四2のとおり、乙一九ないし二一の各一ないし六が、本件型式認可の申請関係書類とは考えられない旨主張する。 (二) 右各号証は、@「輸入甲種電気用品に係る型式認可申請書」、A「輸入甲種電気用品に係る試験申請書」、B「申請書別紙(型式の区分)」、「申請書別紙(製造(販売)しようとする甲種電気用品の構造、材質及び性能の概要)」、写真、「構成部品一覧表」、「回路配線図」、C「試験依頼書」、D「合格証」、E「甲種電気用品の型式の認可について」によって構成されている。 @(乙一九の一)又はA(乙二〇、二一の各一)及びC(乙一九ないし二一の各四)には、昭和五六年七月二八日付けの財団法人日本電気用品試験所の受理印が押され、受理番号(第一一八八ないし一一九〇号)が付されており、これらの書類は、同日同財団法人によって受理されたものと認められる。なお、受理印が押されている書類は右のとおり@又はAであって、一致していないが、これは、一連の書類を提出したときに最も上にあった書類に押されたものと推認することができるから、格別不自然ではない。 B(乙一九ないし二一の各三)は、定格値の記載がC中の「依頼品の型(定格)」の記載と一致しており(乙一九については「100V 0.24A 24W さし込み形 ペッパー形 0.5mm2コード」、乙二〇については「100V 0.12A 12W さし込み形 ペッパー形 0.5mm2コード」、乙二一については「100V 0.6A 60W さし込み形 ペッパー形 0.5mm2コード」)、B中の写真で示されたソケットの数と、B中の「構成部品一覧表」における「ソケット外かく」の個数も一致している。その他、Bの内容、体裁を総合すると、Bは、一体として@及びAの申請書の別紙であると認められる。 D(乙一九ないし二一の各五)には、@(乙一九の一)又はA(乙二〇、二一の各一)、C(乙一九ないし二一の各四)と同一の受理番号が付され、合格証の番号として五六第四五八八ないし四五九〇号の連番が付されており、Aの申請に対する財団法人日本電気用品試験所の合格証であることが明らかである。そして、その日付が昭和五六年一〇月二七日であることからすると、その翌日付けで型式認可の申請がされ、E(乙一九ないし二一の各六)において、認可されたものと推認することができる。Eにおいても、番号として、第九二─四一九ないし四二一号の連番が付されている。 以上のとおり、右@ないしEの書類は、本件型式認可の申請関係書類であることを合理的に説明することができる。 (三) 乙一九ないし二一号証の各一ないし六の一部にホッチキスで止めた痕跡があり、一部に痕跡がないとしても、それは、右各書類の保管方法の問題に過ぎないということができるから、そのことから直ちにこれらの書類が本件型式認可の申請関係書類ではないということはできない。 (四) したがって、原告の右主張は採用できない。 六1 ところで、前記五のとおり、本件意匠登録出願前である昭和五七年のクリスマスころには、全高の上部側略三分の一を円筒状部とし、残りを断面正六角形の柱状部とし、直径と高さの比率が略一対二である基本的構成態様を有するソケットは、公然知られたものとなっていたところ、本件意匠の各基本的構成態様のうち、 全体として筒状に構成されていること、上部側は、外面を円筒状に形成した円筒部であること、円筒部の下側には、断面正六角形の角筒部が連続していることは、いずれも右出願前公知の意匠と同じである。また、本件意匠の基本的構成態様のうち、全体の高さと円筒部の高さの比率が、約一・〇対〇・三一であることも、右出願前公知の意匠とほとんど変わらないということができるし、全体の高さと最大幅の比率が、約一・〇対〇・四であることも、右出願前公知の意匠とさほど大きな差ではない。 そうすると、本件意匠の要部としては、基本的構成態様のみならず、具体的構成態様をも含んだものとして考えなければならないというべきである。 2 そこで、基本的構成態様及び具体的構成態様について、本件意匠と被告意匠とを対比すると、本件意匠の角筒部の側面が、上部から下部に進むにつれて徐々に細くなる傾斜面であるのに対し、被告意匠の角筒部の側面が、上部から下部にかけて同じ太さである点、本件意匠の円筒部の上隅部には、九〇度をなす角部が形成されているが、被告意匠の円筒部の上隅部は、円弧状に形成されている点、本件意匠の角筒部の各側面には山形突状が存在しないのに対し、被告意匠の角筒部の各側面には山形突状が形成されおり、山形突状は、下方に進むにつれて徐々に小さくなる点、全体の高さに対して円筒部の高さの占める割合は、本件意匠の方が被告意匠よりも大きい点が異なっているから、本件意匠と被告意匠は、その要部において異なるものであり、右両意匠が類似するものとは認められない。 七 以上のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がない。よって、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 森義之 |
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裁判官 | 榎戸道也 |
裁判官 | 杜下弘記 |