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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成18行ケ10156審決取消請求事件 判例 意匠
平成18行ケ10462審決取消請求事件 判例 意匠
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  意匠の説明 /  意匠公報に掲載 /  先願 /  新規性 /  記載された意匠 /  意匠の類似 /  意匠の類否 /  願書の記載 /  本意匠 /  登録意匠 /  類似範囲 /  差止請求(差止) / 
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事件 昭和 59年 (ワ) 6494号
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裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1988/12/22
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告は、別紙(一)の(1)及び(2)記載の釣竿を製造し、販売してはならない。
2 被告は、前項記載の釣竿を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金三〇〇〇万円及びこれに対する昭和五九年九月一五日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 仮執行の宣言二 請求の趣旨に対する答弁主文同旨
当事者の主張
一 請求原因1 原告は、左の(一)記載の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その意匠を「本件意匠」という。)及び本件意匠を本意匠とする左の(二)記載の類似意匠(以下「本件類似意匠」という。)の意匠権を有している。
(一) 出願日 昭和五二年一月一三日登録日 昭和五四年九月二七日登録番号 第五二〇四五五号意匠に係る物品 釣りざお登録意匠 別紙(二)(本件意匠の願書-手続補正書を含む-に添付した図面)記載のとおり(二) 出願日 昭和五二年一月一三日登録日 昭和五四年九月二七日登録番号 第五二〇四五五号の類似一号意匠に係る物品 釣りざお登録意匠 別紙(三)(本件類似意匠の願書-手続補正書を含む-に添付した図面)記載のとおり2 本件意匠及び本件類似意匠は、それぞれ次のとおりの構成の釣竿の意匠である。
(一) 本件意匠(イ) 手元側から穂先側に至り、第1セクシヨン(手元部分)、第2セクシヨン(中間部分)、第3セクシヨン(中間部分)、第4セクシヨン(先端部分)から成り、漸次先細状となる継竿である。
(ロ) 前記第1セクシヨン(手元部分)、第2セクシヨン(中間部分)、第3セクシヨン(中間部分)は、いずれも尾端近傍部から先端近傍部に至り外周面にあや巻状の螺旋模様を有する。
(ハ) 右螺旋模様のパターンは、別紙(四)に便宜上符号を付して示すように、
各セクシヨンを成すロツドRの外周面に表された、螺旋状に巻回した第1螺旋部1と、この第1螺旋部1と同ピツチで螺旋状に巻回しかつ第1螺旋部1に対して正面及び背面にてX状に交差する第2螺旋部2とを有する。
(二) 第4セクシヨン(先端部分)は、右のごとき螺旋模様を有しておらず(輪郭線により形状は示されているが、右輸郭線に囲まれた部分の模様、色彩については、願書及びこれに添付された図面のいずれにも格別の説明がない。)、竿の穂先を構成する。
(二) 本件類似意匠(イ) 手元側から穂先側に至り、第1セクシヨン(手元部分)、第2セクシヨン(中間部分)、第3セクシヨン(中間部分)、第4セクシヨン(先端部分)から成り、漸次先細状となる継竿である。
(ロ) 前記第1セクシヨン(手元部分)、第2セクシヨン(中間部分)、第3セクシヨン(中間部分)は、いずれも尾端近傍部から先端近傍部に至り外周面にあや巻状の螺旋模様を有する。
(ハ) 右螺旋模様のパターンは、別紙(四)に便宜上符号を付して示すように、
各セクシヨンを成すロツドRの外周面に表された、第1あや巻模様と第2あや巻模様とから成る。第1あや巻模様は、螺旋状に巻回した第1螺旋部1と、この第1螺旋部1と同ピツチで螺旋状に巻回しかつ第1螺旋部1に対して正面及び背面にてX状に交差する第2螺旋部2とを有する。第2あや巻模様は、前記第1あや巻模様に対して一八〇度位相をずらして配置され、螺旋状に巻回した第1螺旋部3と、この第1螺旋部3と同ピツチで螺旋状に巻回しかつ第1螺旋部3に対して正面及び背面にてX状に交差する第2螺旋部4とを有する。
(二) 第4セクシヨン(先端部分)は、右のごとき螺旋模様を有しておらず(具体的には本件意匠に同じ。)、竿の穂先を構成する。
3 被告は、別紙(一)の(1)及び(2)記載の釣竿(以下「被告製品」という。)を業として製造し、販売している。
4 被告製品の意匠(以下「被告意匠」という。)の構成は、次のとおりである。
(イ) 手元側から穂先側に至り、第1セクシヨンA(手元部分)、第2セクシヨンB(中間部分)、第3セクシヨンC(中間部分)、第4セクシヨンD(中間部分)、第5セクシヨンE(先端部分)から成り、漸次先細状となる継竿である。
(ロ) 前記第1セクシヨンA(手元部分)はほぼ中央から先端近傍部に至り外周面にあや巻状の螺旋模様を有し、第2セクシヨンB(中間部分)、第3セクシヨンC(中間部分)、第4セクシヨンD(中間部分)は、いずれも尾端から先端近傍部に至り外周部にあや巻状の螺旋模様を有する。
(ハ) 右あや巻状の螺旋模様のパターンは、別紙(四)に便宜上符号を付して示すように、各セクシヨンを成すロツドRの外周面に表された、第1あや巻模様と第2あや巻模様とから成る。第1あや巻模様は、平行に間隔を置いた2条の線1a及び1bを螺旋状に巻回した第1螺旋部と、平行に間隔を置いた2条の線2a及び2bをこの第1螺旋部と同ピツチで螺旋状に巻回しかつ第1螺旋部に対して正面及び背面にてX状に交差する第2螺旋部とを有する。第2あや巻模様は、前記第1あや巻模様に対して一八〇度位相をずらして配置され、平行に間隔を置いた2条の線3a及び3bを螺旋状に巻回した第1螺旋部と、平行に間隔を置いた2条の線4a及び4bをこの第1螺旋部と同ピツチで螺旋状に巻回しかつ第1螺旋部に対して正面及び背面にてX状に交差する第2螺旋部とを有する。
(二) 第5セクシヨンE(先端部分)は、右のごとき螺旋模様を有しておらず、
竿の穂先を構成する。
5(一) 本件意匠は、前記の構成(イ)ないし(二)のうち構成(ロ)ないし(二)(第4セクシヨン-先端部分-以外の部分にあや巻状の螺旋模様を付した)点を要部とするものである。
すなわち、本件意匠の構成(イ)は、釣竿(継竿)の形状に関するものであるが、右のごとき形状は、釣竿の形状としては従来より極めて周知のことであるから、この点に意匠の要部があるということはできない。これに対し、構成(ロ)ないし(ニ)において説明した構成は、新規な構成である。そして、本件類似意匠を参酌すると、螺旋模様を複合的に構成したものも本件意匠の類似範囲に含まれることが明らかである。すなわち、本件意匠が正面と背面においてX状に交差する二本の線を一組とするあや巻状の螺旋模様のものであるのに対し(本件意匠の構成(ハ))、本件類似意匠は、本件意匠のそれと同様の第1あや巻模様と、これに一八〇度位相をずらして配置された同様の第2あや巻模様により螺旋模様を複合的に構成してあり(本件類似意匠の構成(ハ))、その点に差異がある。しかし、それにもかかわらず本件類似意匠が本件意匠の類似意匠として登録されていることからすれば、本件意匠が、前記のごときあや巻状の螺旋模様を複合的に構成したものを類似範囲内に包含することは明らかである。
(二) 被告意匠は、以下のとおり本件意匠に類似する。
(イ) 被告意匠の構成(イ)は、本件意匠の構成(イ)と共通する。
なお、本件意匠が第1ないし第4セクシヨンから成る継竿としているのに対し、
被告意匠が第1ないし第5セクシヨンから成る継竿としている点は、細部の相違にすぎない。
(ロ) 被告意匠の構成(ロ)は、本件意匠の構成(ロ)と共通する。
なお、第1セクシヨン(手元部分)の外周面に関し、被告意匠はリール取付具を設けている結果、ロツドのほぼ中央部から先端近傍部に至る部分にのみあや巻状の螺旋模様を施しており、あや巻状の螺旋模様を第1セクシヨンの略全長にわたり表した本件意匠とはやや異なるが、被告意匠のごとくリール取付具を設けることは従来周知慣用のことであるから、この点も細部の相違にすぎない。
(ハ) 被告意匠の構成(ハ)は、本件意匠の構成(ハ)と共通する。
本件意匠が、螺旋模様を本件類似意匠に示されるような第1あや巻模様と第2あや巻模様とにより複合的に構成したものを類似範囲に含むことは前記のとおりである。しかるところ、被告意匠は、本件類似意匠の螺旋模様を更に若干展開し、本件類似意匠の螺旋部1ないし4がいずれも単一の線から成るのに対し、これらに相当する線をそれぞれ線1a及び1b、線2a及び2b、線3a及び3b、4a及び4bとしているが、その基本的パターンは、本件類似意匠のあや巻状の螺旋模様と共通であるから、結局、本件意匠に類似する。
(ニ) 被告意匠の構成(ニ)は、本件意匠の構成(ニ)と共通する。
(ホ) 以上のとおり、被告意匠は、本件意匠の要部であるその構成(ロ)ないし(ニ)と同一の構成を有している。
したがつて、本件意匠があや巻状の螺旋模様をロツドの外周面にX状に連続して表すことにより、ロツドにリズミカルで装飾感に富んだ美感を呈するのに対し、被告意匠も全く同様の美感を起こさせるものであり、相互に美感の差異を有しない。
6 被告は、昭和五八年一一月九日から同五九年九月八日までの間に、被告製品を製造し、そのうち別紙(一)の(1)記載の釣竿を磯0号53F、磯1号53F、
磯2号53F、磯3号53Fと称し、別紙(一)の(2)記載の釣竿を磯4号53F、磯5号53F、磯6号53Fと称して別紙(五)販売利益計算書記載のとおり販売し、合計三億四二〇二万四〇〇〇円の粗利益を得た。被告が右製造、販売により得た純利益は、右粗利益の一割五分に当たる五一三〇万三六〇〇円である。
右利益の額が、被告の本件意匠権侵害行為によつて原告の被つた損害の額と推定される。
7 よつて、原告は、被告に対し、本件意匠権に基づき被告製品の製造、販売の差止め及び被告製品の廃棄並びに前記損害の内金三〇〇〇万円及びこれに対する不法行為の後で訴状送達の日の翌日である昭和五九年九月一五日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否1 請求原因1の事実は認める。
2 同2のうち、本件意匠及び本件類似意匠が釣竿の意匠であることは認めるが、
その構成は争う。
3 同3の事実は認める。
4 同4ないし6は争う。
三 被告の主張1 登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載された意匠に基づいて定めなければならない(意匠法24条)が、本件意匠の登録出願の願書(以下「本件願書」という。)及びこれに添付された図面(以下「添付図面」という。)により本件意匠の範囲を確定することは不可能である。すなわち、
(一) 本件願書とその添付図面(甲第四号証の一ないし三、別紙(二)参照)及びその内容を掲載した本件意匠公報(甲第二号証、別添公報参照)によれば、本件意匠は、添付図面に記載された正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図の各図とA-A部分拡大図、B-B部分拡大図、C-C部分拡大図、D-D部分拡大図(以上計一〇図)によつて表現されるものであることが明らかである。
そして、右各図のうち拡大図は、元来、立体を表す一組の図面すなわち正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図-昭和六〇年通商産業省令第七四号による改正前(以下、同じ)の意匠法施行規則2条、様式第5の備考8-だけでは意匠を十分表現することができないときに加えられるものであり(同備考12)、それが参考図である場合にはその図面の上部にその旨の表示がなされねばならない(同備考18)ところ、添付図面に記載された前記A-A部分ないしD-D部分の各拡大図については参考図である旨の表示がなされていないから、それらが単なる参考図でないことは明らかであり、これを無視ないし軽視することは許されない。
(二) しかるところ、右各拡大図によりその相互関係をみてみると、別紙(六)に示すとおり、A-A部分拡大図、C-C部分拡大図を正しいものとするとB-B部分拡大図、D-D部分拡大図とは異なるものとなり、B-B部分拡大図、D-D部分拡大図を正しいものとするとA-A部分拡大図、C-C部分拡大図とは異なるものとなり、相互間に矛盾が生じることが明らかである。
(三) さらに、本件意匠公報の正面図、背面図、平面図相互間にも、別紙(七)に拡大して示すように、各図面によつて対応する模様の位置及び数が異なるという矛盾がある。
(四) 以上のとおり、本件願書に添付された図面相互間に矛盾があり、本件意匠の範囲を確定することは不可能である。
2 また、右確定不能の点はしばらく措くとしても、本件意匠は、原告主張のごときあや巻状の螺旋模様を表しているものとはいえない。すなわち、
(一) 本件意匠に係る物品は、左右側面図において円形を示すテーパー状の「釣りざお」であつて、かかる物品にあや巻状を画くにはS字形の曲線を用いなければならないところ、本件意匠公報の正面図、背面図、平面図、底面図に示されている模様はいずれも直線で表されているから、本件意匠の模様は、到底、あや巻状の螺旋模様であるとはいえない。
(二) また、本件意匠公報に示された前記A-A部分ないしD-D部分の各拡大図をみると、そこには曲線で表された模様があり、これらは「あや状」を表現しようとしているものと推測されるが、右拡大図相互間には前記のとおりの矛盾、不一致があつて、右模様は螺旋状に連続していないから、これによつても本件意匠の模様をあや巻状の螺旋模様であるということはできない。
(三) なお、本件願書の添付図面(甲第四号証の二)の「意匠の説明」欄には「綾状に繊維を織り込んだ釣竿」という記載があるが、それ自体、本件意匠があや巻状の螺旋模様のものであることを示すに十分なものではないのみならず、本件願書にはこのような記載はないから、添付図面の「意匠の説明」欄の右記載は、法律上無意味なものである。
(四) 以上の次第で、本件意匠は、原告が主張するように「あや巻状の螺旋模様」を有するとは到底いえない。
3 仮に、本件意匠の範囲が確定できるものであり、それがあや巻状の螺旋模様を有するものであるとしても、被告意匠は、本件意匠の類似範囲に入るものではない。すなわち、
(一) 概括的な態様において、あや巻状の螺旋模様といえる模様を有する釣竿はいくらでもあり、本件意匠以外に例えば登録第六四七〇一六号、同第六四七〇一七号、同第六四五九八一号、同第六六九三〇七号、同第六六八八二六号、同第六六八八三二号の各意匠(乙第一号証、第四号証、第七号証の一、二、第八、第九号証、
第一〇号証の一、二)が、それぞれ独立の意匠として意匠登録されている。もし、
原告が主張するように、単に概括的態様においてあや巻状の螺旋模様といえるもの全てが本件意匠の権利範囲に属するとすれば、右各意匠はそれぞれ独立の意匠として登録されなかつたはずである。
(二) そして、本件意匠と被告意匠の具体的な態様を比較対比してみると、被告意匠が本件意匠と異なることは明らかである。
(1) 本件意匠が太径で短い、テーパーのきつい牛蒡状の特殊な形状をした釣竿であるのに対して、被告意匠は、径に対して長い、テーパーのゆるい通常の釣竿であり、両者の形状は大きく異なる。
(2) そして、別添の本件意匠公報に表されている本件意匠の模様の具体的な態様と別紙(一)(1)、(2)に示されている被告意匠の模様の具体的な態様を対比してみると、直線で線模様を表している本件意匠と、連続した曲線で線模様を表している被告意匠とが全く異なるものであることは、るる説明するまでもなく、一目瞭然である。
(三) 現に、被告意匠は、昭和六二年七月三〇日、登録第七一八一三三号をもつて意匠に係る物品を運動用具用管として登録になつており、特許庁においても本件意匠とは類似しないと判断されている。
四 被告の主張に対する原告の反論1 被告の主張1について 本件意匠は、本件願書の添付図面に記載された正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図(六面図)によつて特定される意匠である。
(一) 被告は、添付図面のA-A部分拡大図、B-B部分拡大図、C-C部分拡大図、D-D部分拡大図相互間に矛盾があると主張する。しかし、意匠法6条1項は願書に図面を添付しなければならないと規定し、その記載方法の細則は同法施行規則2条に規定する様式第5に委ねており、右様式第5は、「立体を表す図面は、
正投象図により各図面同一縮尺で作成した正面図、背面図、左側面図、右側面図、
平面図及び底面図をもつて一組とし、一組の図面は1枚の用紙に記載しなければならない。」(備考8)、「8又は9の図面だけでは、その意匠を十分表現することができないときは、展開図、断面図、切断部端面図、拡大図、斜視図その他の必要な図面を加え、そのほか意匠の理解を助けるため必要があるときは、使用の状態を示した図面その他の参考図を加える。」(備考12)と規定し、一方において、
「部分拡大図を描くときは、その拡大個所を当該部分拡大図のもとの図に鎖線で示す。」(備考14)と規定している。したがつて、意匠の特定は、原則として前記のように正投象図により作成された正面図等の一組の六面図によつてなされるべきであり、その拡大図等は、元来、意匠の理解を助けるための補充的な図面である。
したがつて、拡大図等の図面が正確でないと認められる場合には、それに拘泥することなく基本図面である右一組の六面図によつて意匠を確定すれば足りる。部分拡大図等の補充的な図面に不一致がある場合でも、右六面図により特定できる限り、
意匠の範囲は確定できるというべきである。
しかるところ、本件意匠は、正面図等の六面図によつて明確に特定されている。
(二) 被告は、本件願書の添付図面の六面図においても、正面図、背面図、平面図の相互に矛盾があり、ことに図面を拡大して見ると、各図面によつて対応する模様の位置及び数が異なると主張する。
しかし、本件意匠は、本件願書の添付図面やこれを掲載した本件意匠公報の六面図によつて十分特定されており、釣竿の周面にあや巻模様を施した点に特徴を有するものであることを容易に理解できる。被告は、本件意匠公報の図面を長さにして約八倍にも拡張し、そのわずかな不一致を指摘するものであるが、意匠図面を正しく理解しないものであつて適切でない。本件意匠公報の正面図、背面図、平面図、
底面図は、昭和五四年一月二〇日付手続補正書の添付図面から明らかなように、釣竿の全長を約一九センチに縮小して表したものの図面である。これは、添付図面の用紙が最大B列4番の寸法に限られ(前記様式第5備考1)、しかも余白を用紙の左に少なくとも二センチとらなければならず(備考2)、前述のように一組の図面を一枚の用紙に記載しなけれぱならないから(備考8)、意匠を実物大又は用紙を超える大きさに記載することができないためである。さらに、図面は濃墨又は黒色インキ等で描くものであるが(備考4)、通常の製図ペンは〇・二ミリ前後の太さのものが使用される。本件意匠は、右の縮尺において、釣竿の周面に表したあや巻模様のピツチが約二ミリ程度のものであり、実際に人手によつて右の太さの線が描かれる際に極めてわずかの誤差を生じることは不可避である。
したがつて、本件意匠の範囲は、本件願書(手続補正書を含む)添付の図面によつて常識的に判断して特定されるべきであり、被告のように無理に拡大してわずかな不一致を問題にすべきではない。
2 被告の主張2について(一) 被告は、本件意匠の線模様は直線で表されているから到底あや巻状の螺旋模様であるとはいえないというが、本件意匠においても線模様は曲線で表されている。ただ、添付図面の大きさ、記載の仕方につき前記のごとき制約があるために、
製図上、本件意匠の線模様を正確に曲線で表すことがほとんど不可能であり、一見、直線のように表されているにすぎない。
(二) そして、被告も認めるとおり、本件願書に添付した図面の「意匠の説明」欄には「綾状に繊維を織込んだ釣竿である。」との記載があり(なお、右記載は、
本件願書に添付された当初の図面に記載されているものであり、昭和五四年一月二〇日付手続補正書によつて補正された図面には記載されていないが、右手続補正書では平面図外七図を補正する旨明記しており、願書添付図面の「意匠の説明」を訂正する旨の何らの意思表示をしていないから、右「意匠の説明」の記載はそのまま効力を保持しているものである。)、これを併せて参酌すれば、本件意匠の釣竿外周の模様が「あや巻状」であることは明らかである。被告は右記載は願書になされていないから意匠の説明として効力がないと主張する。しかし、意匠登録出願に際して、図面は願書に添付され願書と一体の出願書類を成し、出願された意匠の内容を成しているものであるから、右記載も本件意匠の説明を成しているのである。
仮に、右記載が意匠法24条にいう「願書の記載及び願書に添付した図面」の記載に当たらないとしても、同条はそれ以外の記載を一切参酌してはならないと規定しているものではない。したがつて、意匠の範囲を決定するに際し、右の願書の記載及び図面に記載の意匠を基準としつつも、それらの記載のみによつては不明な事項がある場合は、右以外の記載をも参酌して合理的に意匠の範囲を決定すべきである。そうすると、本件願書に「意匠の説明」の記載が脱漏しているとしても、本件意匠は、願書添付の図面の意匠の説明欄を参酌することにより、あや巻状の螺旋模様を表しているものと解されなければならない。
3 被告の主張3について(一) 被告は、あや巻状の螺旋模様を有する釣竿はいくらでもあり、それらの意匠が、それぞれ独立に意匠登録になつているのであるから、右の点に本件意匠の要部を求めることは誤りであると主張する。
しかし、被告が引用する各意匠は、すべて本件意匠の出願後に出願されたものであり、本件意匠に対しては先願意匠でも公知意匠でもないから、右各意匠によつて本件意匠の類似範囲が何ら左右されるものではない。
なお、被告引用の右各意匠は、いずれも元竿又は元竿に収納した釣竿若しくは管材の意匠であつて、複数セクシヨンから成る継竿において、穂先のセクシヨンを除いて他のセクシヨンにあや巻状の螺旋模様を形成する意匠ではなく、釣竿における一部分のみの意匠として登録されたものであり、それぞれの螺旋模様が新規なものとして登録されたものではない。これらの意匠に表されている螺旋模様を、穂先を除く釣竿全体に適用すれば、本件意匠に類似することになる。
(二) 被告は、本件意匠に係る「釣りざお」はテーパーのきつい形状であるのに対し、被告意匠の釣竿はゆるいテーパーを成している釣竿であると主張する。
しかし、「きつい」又は「ゆるい」といつても、両者がテーパーを有していることに変わりはなく、単なる程度の差異にすぎない。そのうえ、従来より釣竿がテーパーを有することは極めて周知のことであり、そのテーパーの度合についても、ロツドの長短等により様々であることが需要者の間に周知のことになつている。
したがつて、右のテーパーの度合の差異は、意匠に本質的なものではなく、それにより看者に別異の美感を生じさせるものではないから、被告意匠が本件意匠に類似することを妨げない。
被告は、本件意匠の線模様が直線であるのに対し、被告意匠は曲線模様であると主張する。
しかし、被告意匠の線模様が曲線に現れるのは、断面円形のロツドの周面に模様が施されていることの当然の結果である。本件意匠がロツドの断面を円形とし、あや巻状の模様を該ロツドの周面に沿つて螺旋状に巻回していることは既に主張したとおりである。したがつて、本件意匠においても、線模様は曲線に現れるのであり、被告意匠と異ならない。
仮に、本件意匠の模様を直線模様とみるとしても、本件意匠と本件類似意匠に照らすと、釣竿の正面、背面、平面、底面のすべてにX模様を表しているものが本件意匠の類似範囲に含まれることは明らかなところ、被告意匠も右の各面のすべてに同様のX模様を表しており、そのX模様の線がロツドの周側部に近づくに従つてわずかに曲線を呈するか否かの程度の相違は、意匠の細部の相違にすぎない。右相違は、全体としてX模様が連続するという共通の美感を左右する程のものではなく、
被告意匠は、本件意匠に類似する。
(三) 被告主張の意匠登録出願は、意匠に係る物品を運動用具用管とするものであつて、釣竿にも適用されるとの説明があるとしても、この意匠の全体からみて継竿における単一セクシヨンに用いられることは明白である。したがつて、前記(一)で述べたのと同じく、右意匠が登録になつたからといつて、そのことは、何ら被告意匠が本件意匠に類似するとすることの妨げにはならない。
証拠(省略)
理 由一 請求原因1の事実(原告が本件意匠及び本件類似意匠の意匠権を有すること)は、当事者間に争いがない。
二 そこで、請求原因2(本件意匠と本件類似意匠の構成)についてみるに、本件意匠及び本件類似意匠が釣竿の意匠であることは当事者間に争いがないところ、被告は、本件意匠の範囲を確定することは不可能であるから、本件意匠と被告意匠との類否を判断することはできない旨主張するので、まずこの点から検討していくこととする。
1 成立に争いのない甲第四号証の一ないし三によれば、本件意匠の意匠登録出願の願書に添付した図面は、当初、平面図、正面図、底面図、背面図、拡大平面図、
拡大正面図、拡大底面図及び拡大背面図から成つていたこと、ところが、昭和五四年一月二〇日付手続補正書により右各図面が補正され、原告主張の別紙(二)記載のとおりの内容の図面になつたことが認められる。
2 そして、右別紙(二)を子細に観察すれば、被告が主張するように、A-A部分拡大図(平面図の一部拡大図)、C-C部分拡大図(底面図の一部拡大図)に基づいて想定されるB-B部分拡大図(正面図の一部拡大図)、D-D部分の拡大図(背面図の一部拡大図)が実際のB-B部分拡大図、D-D部分拡大図と一致せず、その逆もまた同様であり、部分拡大図相互間に矛盾のあることが認められる(このことは、本件意匠公報記載の図面どおりに被告が試作した模型であることに争いのない検乙第一号証の一、二によつても肯認できる。)。また、成立につき争いのない甲第二号証と弁論の全趣旨に照らすと、本件意匠公報に掲載された正面図、背面図、平面図を拡大して子細に観察すれば、これらの図面相互間にも被告が指摘するような矛盾、不一致の存することが窺える(なお、背面図は、他の図面と対比すると一八〇度逆向きに誤つて記載されたものと認められる。)。
3 しかしながら、そのことから直ちに被告主張のごとく本件意匠の範囲を確定不能とするのは相当でない。少なくとも、本件のような侵害訴訟の場において登録意匠の内容ないしその類似範囲を検討する場合には、当該登録意匠の願書及び願書に添付した図面の記載相互間に多少の矛盾ないし不一致がみられても、そのことから直ちに当該意匠の範囲を確定不能とするのではなく、願書及び添付図面の記載内容並びに当該意匠に係る物品の性状を総合的に勘案し、当該意匠の創作者が意図した意匠の具体的な構成がどのようなものであつたかを当業者の立場から合理的、客観的に判断し、かかる観点から判断した場合に、右矛盾ないし不一致が、願書やその添付図面作成上の誤記や不手際ないし作図上の制約から生ずるものであることが理解され、具体的に構成された統一性ある意匠を想定しうる場合には、右のごとき観点から合理的に想定される意匠をもつて当該登録意匠の内容をなすものと認めるのが相当である。蓋し、そのように解したとしても、当該意匠の創作者の意図を離れて不当に広い権利を認めることにはならないし、「登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載され又は願書に添付した写真、ひな型若しくは見本により現わされた意匠に基づいて定めなければならない。」とする意匠法24条の規定にも反せず、むしろ、当該意匠が現に登録されているという事実に即する反面、当該意匠が登録されていることを前提として行動する第三者の地位や利益を不当に脅かしたり害したりすることもないと考えられるからである。
4 そこで、右のごとき観点から本件意匠をみるに、意匠に係る物品が釣竿であることについては当事者間に争いがなく、前掲甲第二号証、第四号証の一ないし三によれば、右釣竿は、左右側面図において円形状で、手元側から穂先側に漸次先細状となる第1ないし第4セクシヨンから成る継竿であることが明らかなところ、本件願書の添付図面やこれを掲載した本件意匠公報に記載されている各拡大図をみると、そこには曲線で表された模様があり、これらをみれば、本件意匠は「あや状」を表現しようとしていると推測できることは、被告も認めるところである。かかる事実を参酌して、本件願書の添付図面や本件意匠公報に記載されている正面図、背面図、平面図、底面図に表されている模様を総合的に考察すると、前記各拡大図相互間の矛盾、不一致は、創作者が考えていた意匠に内在するものではなく、添付図面作成の際の誤記から生じたものであることが理解され、本件意匠が釣竿の周面にあや巻状の螺旋模様を施したものであることは容易に看取できるというのが相当である。そして、被告が本件意匠公報を拡大した図面によつて指摘する正面図、背面図、平面図相互間の不一致についても、意匠登録出願の願書に添付すべき図面の寸法や記載方法は原告主張のとおりであつて、こうした作図上の制約から多少の誤差が生じることはやむを得ないと考えられることや、そこに示されている不一致の内容ないし態様に照らすと、それは、前記のごとくあや巻状の螺旋模様を表すことを意図しつつも、作図の際の不手際ないしは制約から生じることになつたものであると認めるのが相当である。
5 このようにみてくると、本件意匠の願書に添付された図面には、多々、杜撰な点があるといわざるをえず、そうした観点からの批判は免れないであろうが、そのことの故に、本件意匠の範囲を確定できないというのは相当でなく、本件意匠の範囲が確定できないという被告の主張は採用できない。
6 そして、以上のことを前提として、別紙(二)記載の各図面を総合すれば、本件意匠は、原告が主張する請求原因2(一)の(イ)ないし(二)記載のように説明することができる構成のものであると認められる。また、本件類似意匠についても、これを表した図面であることにつき争いのない別紙(三)の図面によれば、本件類似意匠の構成は、同2(二)の(イ)ないし(二)記載のとおりであると認められる。
三 請求原因3(被告が被告製品を業として製造し、販売していること)については、当事者間に争いがない。
四 そして、請求原因4(被告意匠の構成)についてみるに、被告製品を表したものであることにつき争いのない別紙(一)の(1)及び(2)によれば、被告意匠の構成は、原告主張の請求原因4の(イ)ないし(二)記載のごとく説明しうるものであることが認められる。
五 そこで、請求原因5(本件意匠と被告意匠の類否)について検討するが、被告製品が本件意匠に係る物品と同じ「釣りざお」であることについては争いがないので、以下、専らその意匠の類否について考える。
1 本件意匠の構成が原告主張の構成(イ)ないし(二)のごとく説明しうるものであることは前示のとおりである。
しかるところ、右構成のうち、構成(イ)(手元側から穂先側に漸次先細状となる第1ないし第4のセクシヨンから成る継竿の形状)が周知のものであることは、
原告の自認するところであり、一般通常人である我々の日常経験に照らしても十分に肯認できるところである。したがつて、この点は、本件意匠の要部となるものではないというのが相当である。しかし、その余の構成(ロ)ないし(ニ)(第4セクシヨン-先端部分-以外の部分にあや巻状の螺旋模様を付したこと)については、これと対比、比較すべき公知意匠は、本件証拠上何ら提出されておらず、本件で提出された証拠でみる限り、この点を新規な構成であるとする原告の主張を排斥すべき理由は認められない。そして、本件類似意匠を参酌すれば、螺旋模様を複合的に構成したものも本件意匠の類似範囲に含まれるとする原告の主張も肯認できるというべきである。
2 一方、被告意匠が原告主張の構成(イ)ないし(ニ)のごとく説明しうるものであることも前示のとおりである。
3 そこで、以下、以上のことを前提として、本件意匠と被告意匠を対比、検討する。
(一) 物品(釣竿)の形状を示す本件意匠の構成(イ)と被告意匠の構成(イ)を対比すると、いずれも手元側から穂先側へ漸次先細状(テーパー状)となる形状であり、その意味では両者共通であるということができる。ただ、右テーパー状の程度、度合については、本件意匠の方が強く、被告意匠の方が弱いという差があるが、その差は、複数のセクシヨンから成る継竿の普通に見られる形状の中での差異の域を出るものとは認められず、その差の故に、直ちに看者に異なつた美感を与える程のものであるとは認められない。
(二) 模様の概括的態様を示す本件意匠(ロ)の構成と被告意匠(ロ)の構成は、穂先部を除く各セクシヨンの尾端から(ただし、被告意匠の第1セクシヨンAについてのみ略中央から)先端近傍部に至り外周面にあや巻状の螺旋模様を有する点で共通である。
(三) しかし、模様の具体的な態様を示す本件意匠(ハ)の構成と被告意匠(ハ)の構成は、顕著に異なつている。すなわち、本件意匠のあや巻状の螺旋模様は、各セクシヨンを成すロツドRの外周面に螺旋状に同ピツチで巻回した第1螺旋部1と第2螺旋部2とが正面及び背面でX状に交差するものであり、あや巻状の螺旋模様としてはシンプルな印象を与えるものである。また、本件類似意匠は、あや巻状の螺旋模様が互いに一八〇度位相をずらして配置される第1あや巻模様と第2あや巻模様の二つのあや巻模様から成るものであり(各あや巻模様のバターンは本件意匠のそれと同じ。)、その結果、各螺旋部がX状に交差する箇所が本件意匠に比して多くなり、正面及び背面のみならず、平面及び底面にも現われ、そのためあや巻状の螺旋模様がより密に施されている外観を呈するけれども、各螺旋部の交差がX状であることには変わりがなく、あや巻状の螺旋模様の基本パターンは同一である。これに対し、被告意匠のあや巻状の螺旋模様は、本件類似意匠と同様第1及び第2の二つのあや巻模様から成るが、各あや巻模様のパターンは、本件意匠及び本件類似意匠とは異なり、各螺旋部が平行に間隔を置いた2条の線から構成されているため、各セクシヨンのロツド外周面に現れる螺旋部の交差の模様が単なるX状ではなく、いわばダブルX状ないしは井桁を斜めにしたような模様になる。その結果、同じくあや巻状の螺旋模様といつても、被告意匠のそれは、本件意匠や本件類似意匠のそれに比べてはるかに複雑かつ重厚な印象を与えるものとなつている。被告意匠は、本件意匠と右のとおり顕著に相違する態様のあや巻状の螺旋模様が穂先部のセクシヨンを除く継竿のほぼ全体に施されていることにより、全体として本件意匠とは異なつた美感を生じ、看者に別異の印象を与えるものとなつていると認められる。
なお、いずれも成立に争いのない乙第一、第二号証、第三号証の一、二、第四、
第五号証、第六、第七号証の各一、二、第八、第九号証、第一〇号証の一、二によれば、本件意匠より後願ではあるが、意匠に係る物品を釣竿又は釣竿の元竿等として、外周面にあや巻状の螺旋模様を形成した釣竿ないしはその元竿の意匠が各種意匠登録になつていることが認められ、右事実によれば、特許庁においても、釣竿の外周面にあや巻状の螺旋模様を有するというだけでは意匠が類似するとは判断しておらず、螺旋模様の具体的態様によつて新規性の有無を判断していることが窺われる。釣竿の意匠において、釣竿の穂先部を除くほぼ全長にわたつて施されるあや巻状の螺旋模様が、その具体的態様のいかんによつて看者に異なつた美感を与えることは、見易いところであるというべきである。
(四) 先端部分にあや巻状の螺旋模様のないことを示す本件意匠(二)の構成と被告意匠(二)の構成は、共通である。
(五) 以上、本件意匠と被告意匠の共通点及び相違点を彼比総合判断するに、右にみた模様の具体的な態様が異なつていることから生ずる美感の相違を無視することはできず、この相違点に照らすと、被告意匠は、本件意匠に類似するとは認められない。
六 以上のとおりとすると、原告の請求は、その余の判断をするまでもなく、いずれも理由がないというべきであるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 上野茂
裁判官 小松一雄
裁判官 青木亮
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