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関連審決 審判1979-2381
審判1979-3506
関連ワード 意匠の実施 /  物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  公然知られた(3条1項1号) /  意匠の類否 /  意匠の要旨 /  差止請求(差止) /  類似性(類否判断) /  無効審判 / 
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事件 昭和 59年 (行ケ) 94号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1985/11/28
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和五九年一月三一日、同庁昭和五四年審判第二三八一号事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。
請求の原因
原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯 原告は、意匠に係る物品を「アーチトラス」とする別紙図面(一)の意匠(以下「本件意匠」という。)について意匠登録(昭和五〇年二月二二日意匠登録出願、
昭和五三年一月二三日設定登録、意匠登録第四七六三八五号。以下「本件意匠登録」という。)を受けた意匠権者であるところ、被告は、昭和五四年三月九日、特許庁に対し、本件意匠登録無効の審判を請求し(昭和五四年審判第二三八一号)、
昭和五九年一月三一日、「本件意匠登録を無効とする。」旨の審決(以下「本件審決」という。)があり、その謄本は、同年三月一日原告に送達された。
二 本件審決理由の要点 本件意匠の要旨は、水平梁の上方に孤状梁を架設し、両者を左右端で合致させ、
両者の間に、中央の束及びその左右に三本ずつの束を、ほぼ等間隔に直立させ、隣接する束の上端と下端を斜状に結ぶように三本の斜材を中央の束の左右に、対称の位置に配し、左方の三本の束の左方及び右方の四本の束の右方に隣接してネジ付ボルトを直立させ、部材はすべて断面角型とした態様と認められ、他方、請求人(被告)の昭和五四年三月九日付審判請求書添附の別紙(2)の明細書記載の一二番及び二一番の建物(以下「A建物」及び「B建物」という。)は、【A】の依頼を受け、昭和四五年以前に【B】(以下「【B】」という。)により建造されたもので、その屋根裏には、同人の創作になる別紙図面(二)の木造アーチトラスの意匠(以下「引用意匠」という。)が使用され、これを特に秘密とすべき理由も認められないから、少なくとも昭和四六年には公知となつた事実を認めることができるところ、引用意匠は、意匠に係る物品を木造アーチトラスとし、その要旨は、水平梁の上方に孤状梁を架設し、両者を左右端で合致させ、両者の間に、中央の束及びその左右に二本ずつの束を、ほぼ等間隔に直立させ、隣接する束の上端と下端を斜状に結ぶように二本の斜材を中央の束の左右に、対称の位置に配し、左方の二本の束の左方及び右方の三本の束の右方に近接してボルトを直立させ部材はすべて断面角型とした態様と認められる。
そこで、両意匠を対比するに、両者は、束数が七本であるか五本であるかの差異、ボルトのネジの有無及びボルトの束の隣接の程度に差異があるほかは、主要な構成については前記のとおり全く共通しており、かつ、この共通点によつて全体的なまとまりとしての意匠的特徴が形成されているということができるから、この共通点が要部と認められ、差異点とした前記の三点は全体からみればごくわずかな点に関するもので、部分的なものと認められる。
以上に述べたとおりであるから、両意匠を全体として観察した場合においては、
要部において共通している以上、部分的な点について差異があつても、両意匠は、
類似しているものというほかない。
したがつて、本件意匠は、その意匠登録出願前国内において公然知られた意匠と類似しているというべく、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し、同規定に違反して登録されたものとして、その意匠登録を無効とする。
三 本件審決を取り消すべき理由1 被告は、本件審判を請求するについて法律上正当な利益を有しないものであり、請求人適格ないしは請求の利益を有しないものであるから、被告に請求人適格ないしは請求の利益があることを前提として、被告の本件審判の請求を認容した本件審決は、違法として取り消されるべきである。すなわち、意匠法第48条は、無効審判を請求し得る者の範囲について、旧法のように明確な制限はしていないが、
無効審判の請求人は、法律上正当な利益を有することを要するものと解すべきところ、右の法律上正当な利益を有するとは、積極的に法律上正当な利益を有するばかりか、消極的にその請求に当たり他人の権利を不当に害する意図ないしは悪意のないことを意味するものというべきである。ところで、被告(請求人)は、【B】の引用意匠の使用をもつて公知とするものであるところ、【B】は、本件意匠について設定登録がされた日の後である昭和五三年二月一七日、原告に対し、原告に本件意匠権が帰属することを認め、これを前提として本件意匠を原告との共有にすることに同意しているのであつて、このことは、【B】において、本件意匠権が原告に帰属していることを承認しているにとどまらず、【B】が引用意匠を使用していることを理由として無効審判請求をすることのできる地位を放棄したことを意味するものであり、また、仮に、【B】と原告との共有関係の成立のみによつては、右の地位の放棄が認められないとしても、【B】は、更に進んで原告との間において本件意匠権を失効させるいかなる行為もしない旨合意し、しかも、合意前に失効させるような行為をしたときは、速やかにその行為の取下げをするとの合意をもしている(甲第三五号証)のであるから、【B】は、本件意匠権について無効審判の請求をすることのできる地位を喪失しているものというべきである。そして、被告は、
【B】が右のような地位にあることを知悉しながら、そのことを秘匿して【B】の引用意匠の使用を援用しているのであるから、【B】と同一の地位にあるか、又は【B】と同視し得る地位にあるものということができ、したがつて、原告は、本件審判について請求人適格ないしは請求の利益を有しないものといわなければならない。
2 引用意匠は、「公然知られた」意匠ではないから、これを公然知られた意匠であるとした本件審決は、この点についての認定を誤り、その結果、本件意匠は「公然知られた」引用意匠に類似しているとの誤つた結論を導いたものであるから、違法として取り消されるべきである。すなわち、本件審決は、「A建物及びB建物は、……その屋根裏には、引用意匠が使用されこれを特に秘密とすべき理由も認められない」との理由のもとに、引用意匠の公然性を是認しているが、意匠法第3条第1項第1号の規定にいう「公知」とは、単に不特定多数の人に知られ得べき状態になつただけでは足りず、これらの人に知られたことを要するものと解すべきところ(東京地裁昭和四八年九月一七日判決・判例時報七三六号六三頁参照)、引用意匠が使用されているのは、A建物及びB建物の「屋根裏」部分であり、また、
【B】が訴外【A】の依頼によつてA建物及びB建物を建造するに際し、右新宅に対し引用意匠について特段の説明をしたとか、アーチトラスを閲覧展示に供したとの事実を証する証拠もなく、更に、建物建造後においては、屋根の基礎構造体であるというアーチトラスの使用方法自体からみて、これが公知の状態に置かれたとは断じ難いところである。何故ならば、特別の関心、興味をもつて見るのであれば格別、そうでない限り、わざわざ屋根の構造がどのようになつているかを見ることはなく、しかも、その屋根の下で作業をし、又は居住している者は、通常上を向いて生活することはないのであるから、単にA建物及びB建物にアーチトラスを設置したというだけでは、当然には、引用意匠が知られたとはいえないからである。更に、「公知」というには、不特定多数の人に知られ得べき状態となつたことで足りると解するとしても、前記アーチトラスの使用状態によると、引用意匠が不特定多数の人に知られ得べき状態にあつたともいえない。なお、たとえ【B】及びその従業員がA建物及びB建物の建造によつて引用意匠の実施をしたものであるとしても、【B】以外の実施者は、【B】の手足として働いたものであつて、引用意匠の実施については【B】と別個独立の人格とは認めるべきではなく、【B】と同一視すべきであるから、従業員をもつて「不特定」の者とはいえず、したがつて、引用意匠が不特定の者に知られ得る状態にあつたとはいえない。また、仮に、【B】の従業員が「不特定」の者に該当するとしても、「公知」とは、前述のとおり、知られ得べき状態になつただけでは足りず、知られたことを要し、更に、使用をもつて公知というためには、引用意匠の内容を知悉している者が、その引渡しを受け、その後秘密を守るべき義務を負わずに使用を開始することを要する(東京高裁昭和四九年六月一八日判決・判例タイムズ三一一号一六二頁)ところ、豚舎や作業場の建築を依頼した者が引用意匠の内容を知悉していたという事情はないから、引用意匠が使用されていたとしても、このことから直ちに引用意匠が公知となるものでもない。
3 本件審決は、引用意匠には「ボルト」(締付棒)が存在しないのに、これが存在するものと誤認し、その結果本件意匠と引用意匠との対比において両意匠は類似するとの誤つた結論を導いたものであるから、違法として取り消されるべきである。すなわち、【B】は、昭和四三年一〇月、引用意匠に係る木造アーチトラスを考案し、昭和四四年九月二八日、右アーチトラスを用いた建物の模型である「レインボーハウス」を第五回石川県発明くふう展に出展したというのである(甲第六号証ー本件審判請求書)が「レインボーハウス」のアーチトラスには、「ボルト」が用いられていないのであるから、引用意匠には「ボルト」が存在しないものというべきである。また、【B】は、別件審判において、証人として、昭和四一年から昭和四三年にかけてアーチトラスの構造に関する考案をし、考案の名称を「木造建築に於ける彎曲梁」として実用新案登録出願をしたところ、その出願代理人である【C】弁理人から右のアーチトラスの模型を発明くふう展に出展するよう勧められ、前記「レインボーハウス」を出展した旨供述している(甲第三一号証ー別件審判における証人【B】の証人調書の写)が、右実用新案登録出願の書類等(甲第二七号証ないし第二九号証)をみても、引用意匠と構成を同じくする右実用新案登録出願に係るアーチトラスには、「ボルト」が存在する形跡は全くないから、もともと引用意匠には「ボルト」は存在しなかつたものというべきである。この点について、【B】は、別件審判において、同人が考案したアーチトラスには「ボルト」があるが、「レインボーハウス」ではこれを省略した旨供述している(甲第三一号証)が、叙上の事実に照らし、右供述は、虚偽であることが明らかである。また、
別件審判における【B】の証言(甲第三一号証)によると、前記実用新案登録出願は拒絶されたものと認められ、このことは、実質的には、考案に係るアーチトラスと基本的形状において同一である引用意匠の意匠登録出願も、拒絶されたことを意味するものというべきであるのに対し、本件意匠は登録されているのであるから、
両意匠は、「ボルト」の存否という基本的形状において異なるものといわなければならない。
4 仮に、引用意匠に「ボルト」が存在するとしても、本件意匠と引用意匠とは、
類似しないというべきであつて、両意匠の対比において両意匠は類似するとした本件審決は、類否判断を誤つたものであるから、違法として取り消されるべきである。すなわち、本件意匠の特徴は、ボルトの存在、その形状及びそのトラス全体における配置具合にあるので、本件意匠の構成については、単にボルトらしきものが存在する旨漫然と判断することは許されないところ、本件審決は、ボルトの形状及びそのトラス全体における配置具合について全く触れることなく、「ボルトのネジの有無及びボルトと束の隣接の程度に差異がある」との漫然とした判断をしたのみで、両意匠は「要部において共通している」と結論付けているものであつて、本件意匠の特徴たる構成について深い認識のないままに両意匠は類似しているとの誤つた判断を導いたものである。
被告の答弁
被告訴訟代理人は、請求の原因に対する答弁として、次のとおり述べた。
一 請求の原因一及び二の事実は、認める。
二 同三の主張は、争う。本件審決の認定判断は正当であり、原告の主張するような違法の点はない。すなわち、
1 原告は、被告は本件審判の請求について請求人適格ないしは請求の利益を有しない旨主張するが、右主張は、本件審判時において、原告が何ら主張せず、したがつて、本件審決において、審理判断されなかつた事項であるから、本訴においてこれを主張することは許されないものというべく、また、被告は、原告に対し本件無効審判請求権を放棄するなどの約束をした事実は全くないのであるから、単に【B】との間のある利害関係を根拠にして右のような主張をすることは、失当である。
2 原告は、引用意匠には公知性がない旨主張するが、意匠法第3条第1項第1号の規定にいう「公然知られた」とは、「不特定多数の人に知られ得る状態におかれた」ことをもつて足り、必ずしも不特定多数の者によつて現実に知られたことを要しないものであり、また、意匠は公然使用(実施)されることによつて公知となるものであるところ、引用意匠が使用されているA建物及びB建物は、【B】及びその従業員のほか、その手伝人らによつて建築施工されたであろうし、更に、建築依頼者、その家族、近隣の人及び道路の通行人など多くの人が、引用意匠に係るアーチトラスの外観形状を見たであろうし、又は見ることができた状態にあつたものと思われる。本件審決が援用する証拠をみても、右の建築施工が【B】及びその従業員のみによつて秘密裏に行われたとの事実はなく、かえつて、豚舎や作業場などの木造建築物にアーチトラスが用いられる場合には、その製造、販売、又は販売のための組立て、建築現場までの運搬、更に、屋根をかぶせるに至るまで、これらは公然と行われるのであつて、本件審決のいうとおり、引用意匠を特に秘密とすべき理由もないのである。
3 原告は、「レインボーハウス」のアーチトラス及び【B】の実用新案登録出願に係る「木造建築に於ける彎曲梁」に「ボルト」が存在しないことを理由として、
引用意匠には「ボルト」が存在しない旨主張するが、たとえ「レインボーハウス」等にボルトが存在しなかつたとしても、本件審決が認定の対象としたA建物及びB建物のアーチトラスには「ボルト」が存在することは、本件審決が援用する検証調書及び証人調書等の証拠上明白であつて、原告の右主張事実は、引用意匠には「ボルト」が存在するとした本件審決の認定を妨げるものではなく、本件審決に矛盾を来すものでもない。ボルトのあるアーチトラスとボルトのないアーチトラスとは、
併存し得るものであるところ、被告の右主張は、ボルトのないアーチトラスの存在を理由として、ボルトのあるアーチトラスの存在を否定しようとするものであつて、失当である。
4 原告は、引用意匠に「ボルト」が存在するとしても、本件審決のように、単に引用意匠にボルトらしきものが存在するといつた漫然とした判断のみからは、本件意匠は引用意匠に類似するとの判断をすることはできない旨主張するが、両意匠の構成上、両意匠は類似するとした本件審決の判断は、相当である。
証拠関係(省略)
理 由(争いのない事実)一 本件に関する特許庁における手続の経緯及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いがないところである。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)二 本件審決の認定判断は正当であり、原告の主張は、次に説示するとおり、いずれも理由がないものというべきである。
1 本件審判請求に関する被告の請求人適格ないし請求の利益の有無について 意匠登録の無効の審判について定める意匠法第48条の規定は、右審判の請求人適格について明文の規定を設けていないが、右審判は、同規定に定める意匠登録の無効を求めるについて法律上正当の利益を有する者に限り、請求することができるものと解するを相当とするところ、これを本件についてみるに、原本の存在及び成立について争いのない甲第三六号証及び第三七号証によれば、被告は、畜舎、木造倉庫及び住宅の建築請負並びに建築材料の販売を業とする会社であり、昭和五二年五月頃以降、【B】から同人の製作に係る木造アーチトラスを買い受け、これを建築を請け負つた畜舎や倉庫等に使用したり、あるいは他の建築業者に転売したりしていたところ、同年一二月頃、原告から本件意匠権に基づき右行為の差止めを求められ、また、被告が木造アーチトラスを転売した南建設株式会社も、原告から本件意匠権侵害禁止の仮処分を受けたことが認められ、右事実関係によると、本件意匠権の存否、すなわち本件意匠登録の有効無効は、被告の法律上の地位に直接影響を及ぼすものというべきであるから、被告が本件審判請求により本件意匠登録の無効を求めるについて法律上正当の利益を有することは、明らかであるといわなければならない(なお、被告は、原告は、本件審判時において、被告の請求適格について何ら主張するところがなく、本件審決においても審理判断されなかつたのであるから、本訴においてこの点の主張をすることは許されない旨主張するが、本件審決は、被告に請求適格があるものと認めて、実体の審理に入り判断したものとみるを相当とするから、被告の請求適格については、判断がなされたものというべきであるのみならず、意匠登録無効の審決の当否を争う審決取消訴訟において、この種訴訟の特殊性を考慮に入れても、審判請求人の請求適格を争うための新たな主張立証を妨げる理由は存しないから、被告の右主張は、採用の限りでない。)。原告は、
【B】は本件意匠登録の無効審判を請求することのできる地立を喪失したものであるところ、被告は、そのことを知悉しながら、秘匿して【B】の引用意匠の使用を援用しているものであつて、【B】と同一又は同視し得る地位にあるから、本件審判請求について請求人適格ないし請求の利益を有しない旨主張するが、仮に、原告の主張するような事情があつたとしても、そのことから直ちに被告が【B】と同一又は同視し得る地位にあるということはできず、かえつて、被告は、前認定のとおり、【B】とは取引関係に立つ第三者であるところ、被告が【B】の地位を承継したとの事実について主張立証はないから、原告の右主張は、その前提を欠き失当である。
2 本件意匠登録の無効原因の有無について 本件意匠が、意匠に係る物品を「アーチトラス」として、昭和五〇年二月二二日意匠登録出願、昭和五三年一月二三日設定登録された別紙図面(一)に示すとおりの意匠であることは、当事者間に争いがなく、その構成が本件審決の認定のとおりであることは、原告の明らかに争わないところであり、他方、引用意匠が、本件意匠登録出願前公知であり、また、その構成中「ボルト」が存在するとした本件審決の認定事実を除き、【A】の依頼を受け、昭和四五年以前に建造されたA建物及びB建物に使用された別紙図面(二)に示すとおりの木造アーチトラスの意匠であるとした本件審決の認定事実及びその構成が本件審決の認定のとおりであることは、
原告の明らかに争わないところである。
そこで、まず、引用意匠が、本件意匠登録出願前公知であつたか否か、その構成中「ボルト」が存在したか否かについて審案するに、原本の存在及び成立について争いのない甲第二一号証(家屋番号二五番建物(A建物)表示登記申請書の写)、
第二二号証(家屋番号二六番建物(B建物)表示登記申請書の写)、第三一号証(昭和五四年審判第三五〇六号事件における証人【B】の証人調書の写)及び第三四号証(小松簡易裁判所昭和五七年(サ)第二五九号証拠保全申立事件の証拠調調書中、証拠調調書(二)の検証調書、証人【A】の証人調書及び申立人【B】の本人調書(五枚もの)の写)を総合すると、【B】は、遅くとも昭和四五年暮頃には、【A】の依頼によりA建物及びB建物を建築したものであるところ、右建築に際し、引用意匠に係る木造アーチトラスを工場で製作し、これを建築現場に運搬してA建物及びB建物に用いたこと、右アーチトラスには、建築当初から別紙図面(二)に示されているとおり、左方の二本の束の左方及び右方の三本の束の右方に近接してボルト(鉄製の丸棒)が直立させて設けられていること、そして、このことは、建築関係者の知るところであつたこと、並びにA建物及びB建物の内部に入つて上を向くと、容易に右アーチトラスを実見し得ることが認められ(右認定に反する甲第三二号証(昭和五四年審判第三五〇六号事件における被請求人【D】の本人調書の写)中の供述記載部分は、前掲各証拠に照らし借信し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。)、右認定の事実に徴すると、引用意匠は、前認定の構造の「ボルト」が存在するものとして、本件意匠登録出願前において、公然知られた意匠であると認めるのが相当である。
次に、右認定の本件意匠と引用意匠との類否について検討するに、右認定の両意匠の構成を対比すると、両意匠の共通点及び相違点は、本件審決認定のとおりであることが認められるところ、両意匠の右相違点は、全体からみれば部分的なものであつて、特に看者の注意を惹くほどのものとはいえず、両意匠を全体として観察するときは、前認定の両意匠の共通点をなす構成が最も看者の注意を惹く特徴的な形状として両意匠の要部をなすものということができ、したがつて、両意匠は右要部において共通しており、その余の差異は両意匠の類否を左右するほどのものとはいえないから、両意匠は、その美感において類似するものというべきである。原告は、「レインボーハウス」のアーチトラス及び【B】の実用新案登録出願に係る「木造建築に於ける彎曲梁」にボルトがないことを理由として、引用意匠にはボルトが存在せず、したがつて、両意匠は類似しない旨主張するが、たとえ原告主張のレインボーハウスのアーチトラス等にボルトが存在しないとしても、A建物及びB建物のアーチトラスの意匠、すなわち、本件審決が認定の対象とした引用意匠にボルトが存在することは、前認定のとおりであるから、引用意匠にボルトが存在しないことを前提とする原告の右主張は、その前提において既に失当である。また、原告は、本件審決は本件意匠の特徴たる構成について深い認識のないままに両意匠は類似しているとの誤つた判断を導いたものである旨主張するが、叙上の判断に照らせば、本件審決の判断に原告主張のような誤りがあるとは認められず、したがつて、原告の右主張も、採用することができない。
(結語)三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。
よつて、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法第7条及び民事訴訟法第89条の規定を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 武居二郎
裁判官 清永利亮
裁判官 川島貴志郎
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