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関連ワード 意匠の利用 /  物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  新規性 /  類似する意匠 /  完成品 /  類似物品 /  非類似物品 /  登録意匠 /  差止請求(差止) /  損害賠償 /  専用実施権 /  通常実施権 /  利用関係 /  損害額 /  独占的通常実施権 / 
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事件 昭和 52年 (ワ) 1288号
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裁判所 神戸地方裁判所
判決言渡日 1981/12/25
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求める裁判
一 請求の趣旨1 被告は、別紙イ号図面表示の意匠にかかる鋸用背金を業として製造し、販売してはならない。
2 被告は、その保管中の別紙イ号図面表示の意匠にかかる鋸用背金を廃棄せよ。
3 被告は、別紙ハ号図面表示の意匠にかかる鋸を業として販売してはならない。
4 被告は、原告レザーソー工業株式会社に対し、金三〇〇万円及びこれに対する昭和五二年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は被告の負担とする。
6 仮執行宣言二 請求の趣旨に対する答弁主文同旨
当事者の主張
一 請求原因1 原告Aは、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その意匠を「本件意匠」という。)を有している。
(一) 登録番号 第四二〇四〇五号(二) 意匠に係る物品 鋸用背金(三) 出願年月日 昭和四三年一二月二三日(四) 登録年月日 昭和五〇年一一月二〇日2 原告Aは、原告レザーソー工業株式会社(以下「原告会社」という。)に対し、昭和四七年一二月二日ころ、本件意匠権につき独占的通常実施権を設定し、昭和五〇年一一月二〇日には、本件意匠権の全範囲につき専用実施権を設定し、昭和五三年一月三〇日に右専用実施権設定の登録をした。
3 本件意匠は、別紙意匠公報記載のとおりであり、その特徴は次のとおりである。
(一) 先端部は、日本刀の切先のように下方にむけて弧状となつている。
(二) 本体部は、その先端より後方に至るに従い漸次巾広となつている。
(三) 中子部は長い矩形である。
4 被告は、業として別紙イ号図面に示すとおりの形状の鋸用背金(以下「イ号物件」という。)を製造、販売している。
イ号物件の意匠(以下「イ号意匠」という。)の特徴は次のとおりである。
(一) 先端部は日本刀の切先のように下方に向けて弧状となつている。
(二) 本体部は、その先端より後方に至るに従い漸次巾広となつている。
(三) 中子部は長い矩形である。
5 本件意匠とイ号意匠を比較すると、本件意匠については中子部下面に凹陥部があるが、イ号意匠にはそれがないこと、イ号意匠には中子部に通し穴二個があるが、本件意匠にはそれがないことが異るのみで、他は全く同一である。
本件意匠とイ号意匠には、右のような部分的差異はあるが、右差異は視覚上の印象は弱く、また使用される際には把持柄内に挿入されて見えなくなるものであるから、意匠の要部に関する差異とはいえない。
これに反し、前記3(一)ないし(三)の形状は、視覚上強い印象を与える本件意匠の要部であり、イ号意匠はこの点において本件意匠と全く一致しているのであるから、イ号意匠は本件意匠に類似するものである。
6 仮に被告の製造、販売しているものが、被告の有する別紙ロ号図面表示のとおりの登録第五三七六三七号意匠(昭和五二年一〇月二九日出願、昭和五五年六月二六日登録。以下「ロ号意匠」という。)の実施品としての鋸の柄(以下「ロ号物件」という。)であり、または、別紙ハ号図面表示のとおりの意匠(以下「ハ号意匠」という。)にかかる完成品としての鋸(以下「ハ号物件」という。)であるとしても、右ロ号意匠、ハ号意匠は、その背金部分においていずれも本件意匠を利用する関係にあるから、本件意匠権を侵害するものである。
7 被告は、昭和五二年一月から昭和五三年一月二九日までは原告会社の本件意匠についての独占的通常実施権を、同月三〇日から現在に至るまで原告会社の本件意匠についての専用実施権を侵害することを知り、または知りえたにかかわらず過失により知らないで、イ号意匠を備えたイ号物件を製造し、これを付加したハ号物件を一万丁以上販売し(うち昭和五二年一月から昭和五三年一二月までの分は別表のとおりである。)、原告会社の右独占的通常実施権専用実施権を侵害した。
原告会社は、被告が右侵害行為により受けた利益の額を原告会社の損害額として主張するものであるが、被告は完成品である鋸一丁につき金三〇〇円以上の利益を得、これを一万丁以上製造、販売したものであるから、少なくとも金三〇〇万円の利益を得たものであり、原告は少なくとも同額の損害を被つた。
8 よつて、原告Aは、被告に対し、本件意匠権に基づき、イ号意匠にかかる鋸用背金を業として製造、販売することの差止及び被告保管中の右鋸用背金を廃棄することを求めるとともに、ハ号意匠にかかる鋸を業として販売することの差止を求め、原告レザーソー工業株式会社は、被告に対し、不法行為による損害賠償として、金三〇〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和五二年一二月二三日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び被告の主張1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実中、原告両名の間で、原告ら主張の独占的通常実施権が設定されたことは不知。
3 同3の事実中、本件意匠が別紙意匠公報のとおりであること、その構成が原告主張のとおりのものを含むことは認める。
本件意匠の特徴は、右の外に、中子部下面に凹陥部があることにある。
4 同4の事実中、被告がイ号物件を製造、販売している事実は否認し、イ号意匠に原告主張のとおりの構成を含むことは認めるが、右の外、中子部に通し穴二個を設けていることがイ号意匠の特徴である。
5 同5の事実中、本件意匠とイ号意匠の相異点、共通点が原告主張のとおりであることは認めるが、その余の主張は争う。
原告らが本件意匠とイ号意匠を対比するのは失当である。すなわち、被告は、イ号物件を独立の取引対象として製造、販売したことはなく、被告が製造、販売しているのは、部分品であるイ号物件またはロ号物件を備えた完成品としての鋸(ハ号物件)である。そしてハ号物件の背金は把持柄に固定されて取外しできず、互換性のないものであるから独立物品ではない。したがつて、本件意匠と対比されるべきはイ号意匠ではなくハ号意匠であるが、ハ号意匠は鋸の意匠であつて、本件意匠とは異る物品についてのものであるから、非類似物品である。
また本件意匠の特徴は、いずれも要部に関するものではない。すなわち、先端部を日本刀の切先のように、下方に向けて弧状とし、本体部を先端から後方に至るにしたがい漸次巾広となすことは公知のものであり、中子部を長い矩形とすることは、広く知られ、または容易に創作することができるものだからである。
さらに、本件意匠とイ号意匠の相違点である中子部下面部の凹陥部も、美感を起させるものではなく、機能上の目的により設けられたものにすぎないから、新規性を欠き意匠の要部とはいえないものである。
6 同6の主張は争う。
被告は前記のとおり、ハ号物件を製造、販売しているのであるが、ロ号意匠またはハ号意匠は本件意匠を利用するものではない。すなわち、意匠法26条にいう「利用」とは、他人の権利の内容である創作等を、そつくり自分の権利の内容にとり入れている場合をいうのであり、したがつて自分の権利を実施すると他人の権利を全部実施することとなるが、他人の権利を実施しても、自分の権利の全面実施にはならない関係をいうのであるから、自分の権利を実施しても、他人の権利の一部の実施にしかならない場合は、利用関係は成立しないものである。したがつて、被告がロ号意匠またはハ号意匠を実施しても本件意匠の一部の実施にすぎないのであるから、ロ号意匠またはハ号意匠は本件意匠を利用するものではない。
7 同7の事実中、被告がハ号物件を販売したことは認めるが、その余の事実は否認する。
なお、本件意匠にかかる物品は鋸用背金のみであるから、完成品である鋸の販売により得た利益が原告の損害と推定されるべきではない。
8 同8は争う。
証拠(省略)
理 由一 請求原因1の事実は当事者間に争いがなく、原告A本人尋問の結果によれば、
昭和四七年一二月二日ころ、原告Aが原告会社に対し、本件意匠権につき独占的通常実施権を設定したことを認めることができ、昭和五〇年一一月二〇日に、原告Aが原告会社に対し、本件意匠権の全範囲につき専用実施権を設定し、昭和五三年一月三〇日にその旨登録された事実は、被告において明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。
二 まず、イ号意匠にかかる鋸用背金の製造、販売の差止及び廃棄の各請求について判断する。
各成立に争いのない乙第一五号証、第一九、二〇号証、イ号物件であることに争いのない検甲第一号証、被告の製造販売する換刃鋸(ハ号物件)であることに争いのない検甲第二号証、証人Bの証言および被告本人尋問の結果によれば、被告はロ号意匠(登録第五三七六三七号意匠)の意匠権を有し、昭和五十二年一〇月ごろから、イ号意匠にかかる鋸用背金(イ号物件)を把持柄に挿入固定した鋸の柄であるロ号物件を製造販売するとともに、別個にロ号物件に自由に交換装着できる換刃を製造して、ロ号物件に換刃を装着した換刃式鋸であるハ号物件として、あるいは換刃のみを付属品として「チエンジソー」の名称で販売しているものであることが認められるところ、本件意匠は、成立に争いのない甲第一、第五号証によれば審決(昭和四四年第九九四五号)により、物品の性質上、完成品としての鋸への附加を考慮しつつ、独立して創作の対象となる、いわば附属品ともいうべき物品であるから、独立した使用価値を有する独立した物品であるとして、登録すべきものとされたものであつて、本件意匠の構成は、(一)上辺は、先端部、本体部、中子部を通じて直線状であり、(二)先端部下辺は、下方にゆるやかな弧を描き、本体部に至るにしたがい徐々に直線状となり、本体部下辺は、これに連続する直線であつて、
本体部は中子部に至るに従い太くなるテーパ状を呈し、(三)中子部は、本体部より一段と太く、等幅で末端は上、下辺の直角の直線であるが、下辺中央からやや先端よりに小さく台形状の凹陥部が設けられていることが認められるが、被告のロ号意匠は、前記乙第一五号証、第一九、二〇号証、検甲第一、二号証、によれば、別紙ロ号図面表示のとおりであつて、イ号物件、すなわち、(一)上辺は、先端部、
本体部、中子部を通じて直線状であり、(二)先端部下辺は、下方に弧を描き、本体部下辺はこれに連続する直線であつて、本体部は中子部に至るに従い太くなるテーパ状を呈し、(三)中子部は、本体部より一段と太く、等幅で、末端は、上、下辺と直角の直線であり、中子部中央からやや先端よりの位置及び末端付近に、計二個の穴がある鋸用背金の、中子部を把持柄に挿入、固定したものであることが認められる。したがつて、本件意匠と被告のロ号意匠とを全体的に対比観察すると、本件意匠は単なる鋸用背金の意匠であるのに対し、被告のロ号意匠は把持柄に鋸用背金を挿入固定して一個の物品となした鋸の柄の意匠であつて、両者の意匠にかかる物品は同一性がなく、被告のロ号意匠は単なる鋸用背金とは異なる審美感を惹起せしめるものと認められるから、意匠全体を比較すれば、両者は非類似であるというべきである。
そうすると、ロ号物件に挿入固定したイ号物件のイ号意匠のみを本件意匠と対比して両者の類否を論じて、イ号意匠にかかる鋸用背金の製造、販売の差止及び廃棄を求める原告の各請求は理由がない。
三 次に、原告Aのハ号物件の販売差止請求について判断する。
本件意匠は鋸用背金についての意匠であり、ハ号意匠は完成品としての鋸についてのものであるから、両者は異る物品についての意匠であつて、類似関係にないことは既に説示したところからも明らかである。したがつてハ号意匠が本件意匠に類似するとの原告の主張は失当である。
そこで、ハ号意匠が本件意匠を利用するものであるか否かにつき検討する。
意匠の利用とは、ある意匠がその構成要素中に他の登録意匠またはこれに類似する意匠の全部を、他の部分とは区別しうる状態で含み、したがつて、他の登録意匠を実施することなしにその意匠を実施できない関係にある場合をいうものと解するのが相当であるから、ある意匠を実施しても他の登録意匠またはこれに類似する意匠の一部の実施にしかならない場合には、利用関係はないというべきところ、本件意匠とハ号意匠の背金部分を対比すると、ハ号物件であることに争いのない検甲第二号証、によれば、ハ号意匠は、別紙ハ号図面表示のとおりであり、ハ号意匠の背金部分の中子部は把持柄中に挿入固定されているため、外部からは見えない状態になつているのであつて、本件意匠の一部である先端部、本体部を構成要素とするものであつても、中子部を構成要素とするものではないから、ハ号意匠を実施しても、本件意匠の全部を実施する関係にはないことが明らかである。したがつて、ハ号意匠は本件意匠を利用するものではないというべきである。
そうすると、原告Aの、ハ号意匠にかかる鋸の販売の差止を求める請求も、また、理由がない。
四 よつて、原告らの本訴各請求は、その余の点を判断するまでもなく、失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条を適用して主文のとおり判決する。
別表(省略)<12266-001><12266-002><12266-003><12266-004><12266-005>
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