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関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  意匠の説明 /  記載された意匠 /  完成品 /  意匠の類否 /  願書の記載 /  先使用(29条) /  登録意匠 /  差止請求(差止) /  通常実施権 /  類似性(類否判断) / 
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事件 昭和 49年 (ワ) 3436号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1977/02/16
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告(主位的請求)一 被告は別紙イ号図面表示の意匠にかかる車輪用ナツトを製造、販売、頒布してはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決(予備的請求)1 被告は別紙ロ号図面表示の意匠にかかる車輸用ナツトを製造、使用、販売、頒布してはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決二 被告 主文と同旨の判決
当事者の主張
一 原告の請求原因1 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件登録意匠」という。)を有している。
(一) 出願日 昭和四五年一〇月二八日(二) 登録日 昭和四七年二月二八日(三) 登録番号 第三四六三三二号(四) 意匠にかかる物品 車輪用ナツト(五) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「本件意匠公報」という。)記載のとおり2 被告は、業として別紙イ号図面記載の意匠にかかる車輪用ナツト(以下「イ号物品」という。)を製造、販売している。
3 本件登録意匠とイ号物品の意匠を対比する。
本件意匠公報の図面においてはナツト本体部の内周面及び外周面にねじ溝の記載がなく、また「意匠の説明」として右ねじ溝の記載が省略されている旨の記載もない。しかしながら、本件登録意匠にかかる物品は「車輪用ナツト」であり、「ナツト」とは、機械工学用語辞典によれば、めねじを持つ機械要素で、おねじを持つボルトなどと一緒にねじ締結に用いられるものを指称するから、このことと右車輪用ナツトの取付け使用状態を示す本件意匠公報の参考図の記載を総合すれば、本件登録意匠にかかるナツトが本体部の内周面及び外周面にねじ溝を備えていることは自明であつて、本件意匠公報の図面においては右ねじ溝の記載が当然のこととして省略されているものである。なお、意匠法施行規則の様式第五8、9、11は、意匠登録出願の願書に添付すべき図面の一部を省略しうる場合及び省略した場合は「意匠の説明」の欄にその旨記載すべきことを規定しているが、右法条はそれ以外の態様における図面の省略を一切許容しない趣旨ではないし、省略が自明の場合についてまでその旨特記すべきことを要求するものでもない。以上のとおり、本件登録意匠は、イ号物品の意匠と同様にナツト本体部の内周面及び外周面にねじ溝を備えた形状のものである。
そうすると、本件登録意匠とイ号物品の意匠とは、スパナ掛部端面の凹窪部の形状模様において差異があるものの、その余の部分はほとんど同一であり、しかも右の差異も単なる微差に過ぎず、意匠全体を左右するものではないから、両意匠は全体として類似するというべきである。
仮に、右の主張が認められず、本件登録意匠はナツト本体部の内、外周面にねじ溝を欠く形状のものであるとしても、右ねじ溝の有無は、前記スパナ掛部端面の差異と同じく単なる微差というべきであるから、両意匠が類似することに変りはない。
以上いずれにしても、イ号物品の意匠は本件登録意匠と類似し、かつ意匠にかかる物品も同一であるから、被告によるイ号物品の製造、販売は本件意匠権に対する侵害行為を構成する。
4 仮に、以上の主張が認められず、本件登録意匠はナツト本体部の内、外周面にねじ溝を有しない形状のものであつて、かつ右ねじ溝を備えたイ号物品の意匠との類似性が否定されるとしても、原告は予備的に次のとおり主張する。
被告は、業として別紙ロ号図面記載の意匠にかかる車輪用ナツト(以下「ロ号物品」という。)を自ら製造し、また訴外株式会社浅川製作所に製造させ、これにねじ切り、メツキ加工等を施してイ号物品に仕上げているところ、右ロ号物品もそれ自体として経済取引の対象となつているものである。
そして、本件登録意匠とロ号物品の意匠を対比してみると、両意匠は、前記のとおり微差というべきスパナ掛部端面の凹窪部の形状模様における差異を除けばほとんど同一であるから、全体として類似していることは明らかであり、意匠にかかる物品も同一である。したがつて、被告によるロ号物品の製造、加工等は本件意匠権を侵害するものである。
5 よつて、原告は、本件意匠権に基づく妨害排除請求として被告に対し、主位的にイ号物品につき製造、販売、頒布の、予備的にロ号物品につき製造、使用、販売、頒布の差止を求める。
二 請求原因に対する被告の認否及び主張1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実は認める。
3 同3の事実のうち、本件意匠公報の図面にはナツト本体部の内、外周面にねじ溝の記載がなく、「意匠の説明」として右ねじ溝の記載を省略した旨の記載もないことは認め、その余は否認する。
本件登録意匠にかかる物品とイ号物品とは物品としての同一性がない。すなわち、イ号物品は、本体部の内周面に刻設されたねじ溝をボルトに螺合し、かつ本体部の外周面のねじ溝にナツトを螺合することにより、ナツト兼ボルトとして自動車の複輪取付のために使用されるものであるのに対し、本件登録意匠にかかる物品は後に詳述するとおり本体部の内、外周面にねじ溝がないから、イ号物品のように他のボルト、ナツトとの螺合が不可能であり、したがつて、両者は使用の方法、態様を異にし、物品としての同一性を欠くものである。
仮に、物品としての同一性が肯定されるとしても、本件登録意匠とイ号物品の意匠は類似しない。すなわち、本件登録意匠と基本的形状を同じくする車輪用ナツトは右登録出願前公知、公用であつたから、本件登録意匠の要部はナツトとしての右基本的形状そのものにはなく、ナツト本体部の内周面及び外周面にねじ溝を形成しない点及び全体として正方形状(但し、隅部を除いてある。)のスパナ掛部端面に角錐台状の凹窪部を形成した点にあるというべく、特に右スパナ掛部端面はナツトの取付け使用時において外部から観察しうる唯一の部分であつて、最も看者の注意を引くところであるから、この部分の相違は看者をして意匠全体に全く異つた美的切象を与えるものというべきである。ところで、原告は、本件登録意匠は「車輪用ナツト」に関するものであるから、ナツト本体部の内、外周面はねじ溝を備えていることは自明であつて、本件意匠公報の図面上は右ねじ溝の記載が当然のこととして省略されている旨主張する。そして、意匠法施行規則の様式第五8、9、11は、意匠登録出願の願書に添付すべき図面の一部を省略しうる場合を列挙するとともに、省略した場合はその旨「意匠の説明」の欄に記載すべきことを規定しているが、原告主張のようなねじ溝の記載の省略を許容するものとは解されず、また「意匠の説明」として右ねじ溝の記載を省略した旨の記載もない。したがつて、原告の右主張は失当であり、本件登録意匠は、本件意匠公報の図面どおり、ナツト本体部の内、外周面にねじ溝を有しない形状のものというべきである。そうすると、本件登録意匠とイ号物品の意匠は車輪用ナツトとしての基本的形状において類似してはいるが、ナツト本体部の内、外周面につき、前者がねじ溝を欠くのに対し、後者がこれを備えていること及びスパナ掛部端面の凹窪部の形状につき、前者が角錐台状であるのに対し、後者は円錐台状であることの差異があり、これらはいずれも看者の注意を引くべき意匠の要部であるから、両意匠が全体として類似しないことは明らかである。
4 同4の事実のうち、被告が業としてロ号物品を製造し、また株式会社浅川製作所をして製造させ、これにねじ切り、メツキ加工等を施してイ号物品に仕上げていることは認め、その余は否認する。
被告は、イ号物品を製造する中間工程として、素材としてのロ号物品を製造、加工しているに過ぎず、ロ号物品自体を製造、使用の目的としているものではなく、
またロ号物品を車輪用ナツトとして販売、領布したこともない。
5 同5は争う。
三 被告の抗弁 仮に、イ号物品及びロ号物品の意匠が本件登録意匠と類似し、またロ号物品の製造、加工等が本件意匠権に基づく差止請求の対象となりうるとしても、被告は、本件登録意匠の登録出願前である昭和四〇年春頃から善意で素材としてのロ号物品を製造し又は第三者をして製造させ、これにねじ切り加工等を施してイ号物品に仕上げたうえ販売し、右登録出願の際もこれを継続していたから、その範囲内において、本件意匠権につきいわゆる先使用による通常実施権を有するものである。
四 抗弁に対する原告の認否 抗弁事実は否認する。
証拠(省略)
理 由一 請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、本件登録意匠とイ号物品意匠の類否につき判断する。
本件意匠公報の図面においてはナツト本体部の内周面及び外周面にねじ溝の記載がなく、また「意匠の説明」として右ねじ溝の記載が省略されている旨の記載もないことは当事者間に争いがない。
原告は、本件登録意匠にかかる物品が「車輪用ナツト」であること及びその取付け使用状態を示す本件意匠公報の参考図の記載から、本件登録意匠にかかるナツトがその本体部の内周面及び外周面にねじ溝を備えていることは自明であり、本件意匠公報の図面では右ねじ溝の記載が当然のこととして省略されている旨主張するので、先ずこの点につき判断する。
本件登録意匠にかかる物品が車輪用ナツトであることは当事者間に争いがなく、
成立に争いのない甲第二号証によれば、ナツトとは、めねじを持つ機械要素で、おねじを持つボルトなどと一緒にねじ締結に用いられるものであることが認められる。しかしながら、物品がナツトであるということからは、通常その中空部(内周面)にねじ溝を有するとはいえるにしても、当然にその外周面にもねじ溝を有するとはいえない。また登録意匠の範囲は願書の記載及び願書に添付した図面に記載された意匠に基づいて定めなければならないものであるところ(意匠法第24条参照)、成立に争いのない甲第一号証、第三号証の四ないし六によれば、本件登録意匠の意匠登録出願の題書に添付した図面のすべてについて一切ねじ溝の記載がないことが認められ、かつ右甲号各証から認められる右添付図面中の参考図に示された本件登録意匠にかかるナツトの使用状態によつても、右ナツトは本体部の内、外周面にねじ溝があるのが省略されているものであると認めることは困難であるから、
本件登録意匠が本体部の内、外周面にねじ溝を有するナツトにかかるものであるとはいえない。さらに、ねじ溝といつても、その形状、寸法等が多様でありうることはいうまでもないから、仮に原告の主張するように本件登録意匠がナツト本体部の内、外周面にねじ溝を備えた形状のものとしても、右ねじ溝の形状、寸法等は特定できないことになり、本件登録意匠は不特定の部分を含むという不当な結果になる。したがつて、原告の右主張はいずれにしても理由がなく、本件登録意匠は、本件意匠公報の図面どおり、ナツト本体部の内、外周面にねじ溝を欠く形状のものというべきである。
右に述べたことを前提として、本件登録意匠とイ号物品の意匠を対比してみると、両意匠は車輪用ナツトとしての基本的形状においてはほとんど同一であるけれども、反面前者がナツト本体部の内周面及び外周面にねじ溝を欠いているのに対し、後者はこれを備えているという差異があり、右の差異は、看者をしてナツトの意匠につき著しく異つた印象を懐かしめるものであつて、到底微差といえないことは明らかであるから、両意匠は全体として類似しないといわなければならない。したがつて、イ号物品の意匠が本件登録意匠の範囲に含まれることを前提とする原告の主位的請求は理由がない。
三 進んで、原告の予備的請求の当否につき判断する。
被告が業としてロ号物品を製造し、また株式会社浅川製作所をして製造させ、これにねじ切り、メツキ加工等を施してイ号物品に仕上げていることは当事者間に争いがない。
しかしながら、ロ号物品自体が完成品として経済取引の対象とされていることを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、右争いのない事実に弁論の全趣旨を総合すれば、被告は、イ号物品の製造を目的とし、その中間工程として素材としてのロ号物品を製造しもしくは製造させ、これにねじ切り加工等を施してイ号物品に仕上げていることが明らかである。
そして、製造途上にある中間加工品ないし半製品であつてそれ自体独立して経済取引の対象となつていない物品につき意匠権の侵害を論ずる余地のないことはいうまでもないから、前述のとおり中間加工品ないし半製品に過ぎないロ号物品につき製造、使用(加工)等の差止を求める原告の予備的請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がない。
四 以上の次第であつて、原告の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訟訴費用の負担につき民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 高林克巳
裁判官 清永利亮
裁判官 安倉孝弘
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