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審判番号(事件番号) データベース 権利
昭和59行ケ7 判例 意匠
昭和45ワ507 判例 意匠
昭和48行ツ82 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  意匠公報に掲載 /  意匠の類似 /  動的意匠 /  秘密意匠(14条) /  登録意匠 /  権利濫用(権利の濫用) /  類似性(類否判断) / 
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事件 昭和 45年 (ワ) 5258号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1972/03/29
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
(原告)一、被告は原告に対し金五一万円およびこれに対する昭和四五年一〇月一四日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二、被告は別紙第一目録記載の謹罪広告を、同第二目録記載の各新聞に、表題ならびに被告および原告の各表示を二号活字、その他の文字を三号活字で各一回掲載せよ。
三、訴訟費用は被告の負担とする。
との判決および第一、三項につき仮執行の宣言。
(被告) 主文同旨の判決。
請求の原因
一、原告はつぎの登録意匠(以下、本件登録意匠という)権を有する。
意匠に係る物品 道路用安全さく出願日 昭和四三年四月二〇日登録日 昭和四五年五月二八日意匠登録番号 第三一六一三六号登録意匠の内容 別紙意匠公報に示されているとおりの形状二、本件登録意匠は、
(一) 標識板とこれをとりつける枠体とから成り立つており、
(二) この枠体は、
(1) 両端部に断面がL字形のアングル材を、その内角が内向きとなるようにして、あたかもA字形のごとくに開脚してその頂端部を固定し(支脚)、
(2) 右A字形の開脚状態を保持するため、中央よりやや上方に支脚の側面幅とほぼ同一幅の板状の支脚中段横架杆をもつて、下端よりやや上方に支脚中段横架杆のほぼ三分の一の幅の板状の支脚下段横架杆をもつてL字形アングル材に固定して組合せた支脚を形成し、
(3) 右A字形支脚の頂端部から頂端部へ、補強兼標識板吊り下げのための、アングル材支脚側面幅のほぼ二分の一の径のパイプ状の頂端部横架杆を両端の支脚の問隔が支脚の高さに対しほぼ二倍位の比率となるように固定し、
(4)支脚下段横架杆のやや上方に頂端横架杆と平行となるようにそれとほぼ同一径のパイプ状下段横架杆をそれぞれ短い接合筒管を介して支脚に固定して形成し、
(三) 頂端横架杆の両端部よりほぼ四分の一の位置に設けられた二個所の短筒管上の吊下部によつて交互に色違いの斜め縞模様
いわゆるトラ模様を表わした標識を表裏に施した横長方形(縦の長さが支脚の高さに対しほぼ四分の一、縦横の比率をほぼ一対七の比率とする)の標識板を吊り下げ、
(四)左右の両側面が対象となるように構成されている。
本件登録意匠は、以上のように構成されているので、機能的には非常に曲りにくいL字形アングル材を用いることにより衝撃などを受けると容易に曲つて変形するという欠点を解消するとともに、標識板を揺動するように構成して安定度を増大せしめ、かつデザイン的にもシンプルで極めて美しい形にまとめあげられている。なお、本件登録意匠にかかる道路用安全さくは工事現場等危険場所に設置し、仮設囲枠または一般通行者らに注意を換起させる目的等に使用されるものである。
三、被告は昭和四四年二月一〇日頃から同四五年七月一五日迄の間別紙(イ)号図面およびその説明書記載の道路用安全さく(以下、(イ)号物件という)を製造販売した。
(イ)号物件の構成は、
(一) 標識板とこれをとりつける枠体とから成り立つており、
(二) この枠体は、
(1) 両端部に断面がL字形のアングル材を、その内角が内向きとなるようにして、あたかもA字形のごとくに開脚(支脚)し、
(2) 右A字形の開脚状態を保持するため下端よりやや上方に中央部において折り畳みの機構を有する支脚下段横架杆をもつて固定して組合せた支脚を形成し、
(3) 右A字形支脚の頂端部から頂端部へ、補強兼標識板吊り下げのため、パイプ状の頂端横架杆を両端の支脚の間隔が支脚の高さのほぼ二倍位の比率になるように固定し、
(4) 支脚の下端よりやや上方に頂端横架杆と平行となるように下段横架杆を固定して形成し、
(三) 頂端横架杆に設けられた二個所の吊下部によつて、黄色と黒色とを交互に「ノの字」形に配色するいわゆるトラ模様を表わした危険標識を表裏に施した横長方形の標識板を吊下げ、
(四) 左右の両側面が対象となるように構成されている。
四、本件登録意匠と(イ)号物件とを対比すると、
両者は、いずれも危険標識を施した標識板とこれを取付ける枠体とから構成されており、その枠体は、両端部に断面がL字形のアングル材をその内角を内向きとなるようにし、あたかもA字形のごとくに開脚した支脚を左右に向い合わせ、その間を標識板を吊り下げた頂端横架杆およびこれと平行する下段横架杆により支脚の頂端部および下段部を接続せしめていて、その構成および各構成部分の大きさや長さの比率はほぼ同一である。すなわち、両者の正面、背面、平面および底面の各形状は、頂端横架杆および下段横架杆と支脚との各結合態様および付設筒体の有無を除きほぼ同一である。
左右対象の側面形状における支脚横架杆の結合態様の差異は、本件登録意匠においては支脚横架が中段と下段とに各一本合計二本あるのに対し、(イ)号物件においては折畳み式横架杆が一本で、支脚頂端部が機構的に開閉自在に構成されている点である。しかし、支脚に横架杆が存在する道路用安全さくは多く見受けられ、この種の支脚横架杆は、支脚の開脚状態を保持するために支脚の下部または中段の位置に設けられている。支脚横架杆の形状にはパイプ状のものや細長い板状のものがあるが、これらには特に美的なデザインが施されていないのが一般である。本件登録意匠の支脚中段横架杆と同下段横架杆はともに極めてありふれた構成であり、他方(イ)号物件の支脚横架杆も極めてありふれたもので、特徴的な構成ではない。
したがつて、支脚横架杆の数、幅、位置などに多少の相異があつても本件登録意匠と(イ)号物件との類否判断に影響を及ぼす程の差異ではない。(イ)号物件の支脚が開閉自在の機構となつている点の差異も、右の点が(イ)号物件において特に美的に処理されているわけではなく、かつ本件意匠が動的意匠でもないから、類否判断に影響を及ぼす程の差異ではない。
また、本件登録意匠においては、頂端横架杆、下段横架杆が短い筒管を介して支脚に結合されているが、これは付加的部分に過ぎず特に著者の注意をひくことはない。このような結合方法をとらず、(イ)号物件のように下段横架杆においては支脚に熔接し、頂端部においては支脚の穿設孔に止め付けることにより頂端横架杆、
下段横架杆を支脚に結合しても、取り立てて看者の注意をひくことはない。したがつて、かかる両者の差異はその類否判断に影響を及ぼす程のものとはいえない。
なお、(イ)号物件にのみ存する付設筒体は単に付加的な構成に過ぎず、その有無が類否判断に影響を及ぼすことはない。
結局、本件登録意匠と(イ)号物件とは、全体的に観察すると外観上一般需要者をして混同誤認させる程に酷似している。本件登録意匠にかかる道路用安全さくが工事現場等に正面または背面を表示して工事現場であることを一般通行者に認識させ、注意を喚起させる目的のもとに設置使用されることにかんがみれば、正面および背面の形状が本件登録意匠中最も大きなウエートを持つ部分と考えるべきであるが、(イ)号物件はその正面および背面の形状において本件登録意匠と全く同一である。以上により(イ)号物件は、左右側面形状等に前記の如き微少な差異があるにもかかわらず本件登録意匠に類似していると認められる。
したがつて、(イ)号物件は本件登録意匠の権利範囲に属するから、本件登録意匠登録の日である昭和四五年五月二八日以降における被告のなした(イ)号物件の製造販売行為は、本件登録意匠権の侵害となる。
五、原告は本件登録意匠の道路用安全さくの製造を昭和四三年四月下旬より開始し、同年五月四日から販売((イ)号物件の如く脚部を折畳めるように改良したものは五月一一日から)している。被告は同四四年二月一〇日原告会社大阪出張所から原告製造にかかる道路用安全さくを購入し、その直後から本件登録意匠に類似した(イ)号物件の製造販売を開始し、本件登録意匠登録の日である昭和四五年五月二八日から同年七月一五日までの間に少くとも三、〇〇〇台の(イ)号物件を製造販売した。
(イ)号物件の販売価額は一台につき金一、四〇〇〇円から二、〇〇〇円と一定しないが、これを平均すると一台当り金一、七〇〇円となる。(イ)号物件の製造販売による純利益は販売価額の一〇パーセントであるから、右平均販売価額を基準に計算すると、被告は(イ)号物件三、〇〇〇台を販売したことにより合計金五一万円の利益を得、原告は右同額の損害を受けたものと推定される。
また、被告は本件登録意匠権を侵害する事実を知りながら、または過失により知らないで、自己の意匠に登録を有しないのは勿論、登録出願さえしていないにもかかわらず、登録ずみ、または登録出願中である旨詐称して、原告製品より粗悪品でありかつ一台当り、一、四〇〇円ないし二、〇〇〇円という一定しない価額で(イ)号物件を廉売した。このため市場は混乱し、原告の取引先が(イ)号物件と原告製品を混同して原告に対し(イ)号物件についての苦情を申出るという事態が続出し、これがため原告の業務上の信用は著しく害された。
六、本件登録意匠権の侵害について被告が故意または過失による責任を負わねばならない理由はつぎのとおりである。
意匠法40条による過失の推定は、意匠公報が発行されていない段階においても適用がある。意匠の場合には、特許、実用新案等のような登録に先立つ公告手続は行われず、登録後に公告されることになつているが、意匠登録後は何人も登録意匠に関する願書、その添付図面等の出願関係書類の閲覧等をなして当該登録意匠の存在および内容を知り得る状態にあるから、意匠の設定登録がみなされた以上意匠公報が未発行でも法40条の過失の推定がなされるべきである。本件登録意匠は昭和四五年五月二八日に登録されたから、被告は右登録日以降前記侵害行為について過失があつたものと推定されるといわねばならない。
右過失推定規定の適用がないとしても、被告は(イ)号物件の製造販売行為が本件登録意匠権を侵害することを当初から知つていた。仮に、本件登録意匠登録日からの故意の事実が認められないとしても、原告は被告に対し、昭和四五年六月四日到達の内容証明郵便(乙第六号証)により、本件登録意匠の登録番号を明示してA型バリケードについて意匠登録を受けた旨および被告の(イ)号物件製造販売行為が原告の有する登録意匠権の侵害となる旨を通知した。当時当業界ではA型バリケードといえば如何なる構成のものであるかは何人も熟知していたものであるし、かつ被告が早急に本件登録意匠の内容を知ろうと思えば特許庁で調査し即日にもこれを把握できたにもかかわらず、被告は右の如き調査を怠り、漫然と調査日数がかかるという内容証明郵便を原告に対し送達したに過ぎない。したがつて、本件登録意匠権の侵害につき被告は遅くとも昭和四五年六月四日から、故意による責任を、仮に故意が認められないとしても少くとも過失による責任を負わねばならない。
七、よつて、原告は右損害金五一万円およびこれに対する本訴送達の日の翌日である昭和四五年一〇月一四日から支払ずみまで年五分の割合による遅廷損害金ならびに信用毀損に対する回復措置として謹罪広告の掲載を求める。
請求原因に対する被告の答弁および主張
一、請求原因一の事実は認める。
二、請求原因二の事実のうち、本件登録意匠が標識板とこれをとりつける枠体とから成り立つていることは認めるが、その余の構成はつぎのとおり表現すべきである。すなわち、本件登録意匠は、
(一) 断面L型をなす素材二枚を頂点で開股状に接合して山形の脚体(支脚)を構成し、
(二) 支脚の側面幅よりやや細い外径を有し、脚体の高さのほぼ二倍長の円管の両端をそれぞれ太く短い接合筒管を介して各支脚頂端部に止め付けて頂端横架杆とし、
(三) 支脚の下方に、その高さのほぼ八分の一の位置に右頂端横架杆よりやや細い外径を有し、これと同様の長さの円管を、その両端をそれぞれ短い接合筒管を介して止め付けて下段横架杆とし、
(四) 支脚の高さの約一四分の一の位置にその側面幅の約三分の一幅の細い支脚下段横架杆を、また支脚の高さの一〇分の六の位置(中央部よりやや高い位置)にその側面幅とほぼ同一幅の支脚中段横架杆を、それらの両端をそれぞれ対応する単位脚体に止め付けて、固定構造の枠体を構成し、
(五) 以上のように構成した枠体の頂端横架杆に跨設した二個の吊止め片の下部につき標識板を固定する。
(六) 標識板は横長形の板状材に二色とおぼしき濃淡調で各三本宛の斜線を交互に密接させて描出した模様から成る。
ことを特徴とする道路用安全さくの形状および模様の結合にかかる意匠である。
三、請求原因三の事実のうち、被告が昭和四五年七月一五日迄別紙(イ)号図面記載の道路用安全さく((イ)号物件)を製造販売した事実は認める。しかし、
(イ)号物件が標識板とこれをとりつける枠体とから成り立つていることは原告主張のとおりであるが、その余の構成はつぎのとおり表現すべきである。すなわち、
(イ)号物件は、
(一) 正面および側面が外側となるような側断面L型状をなす鉄板の上端縁を円弧状に形成した単位脚材の上端部の穿設孔の部分で開股状に接合して脚体(支脚)を構成し、
(二) 支脚上端部の穿設孔を用いて、脚体の正面幅とほぼ同一外径を有し、単位脚材の高さの一・五倍長の円管を左右の各支脚間に止め付けて頂端横架杆とし、
(三) 支脚の下方に、その高さの一〇分の一の位置に頂端横架杆とほぼ同一の直径と長さの円管を、左右支脚の各側面内側に熔着して下段横架杆とし、
(四) 支脚の高さのほぼ四分の一の位置に、その側面幅とほぼ同様の幅を有し、
中央部で折畳自在にピン止めし、外側片の端部上縁には係合突片を内方に曲折構成した折畳側板の端部をそれぞれ対応する単位脚材にピン止めして、枠体を構成し、
(五) 以上のように構成した枠体の頂端横架杆に跨設した二個の吊止め片の下部につぎの標識板を固定する、
(六) 標識板は横長形のいわゆるとら模様を描出し、
(七) 正面左側の支脚上部外側に携帯用灯具(懐中電灯)や手旗等を挿込み保持させる受容筒体を固定した、
ことを特徴とする道路用安全さくである。
四、請求原因四の(イ)号物件が本件登録意匠に類似する旨の主張事実は否認する。本件登録意匠形状模様の結合にかかるものであるから、(イ)号物件との類否を判断するに当つてはそれぞれの形状の類否、模様の類否を検討し、そのうえで全体としての意匠が相互に類似するかどうかを判断すべきである。
(両者の差異) 本件登録意匠と(イ)号物件とを対比すると、つぎの差異がある。すなわち、
(一) 支脚横架杆 本件登録意匠の支脚横架杆は上下の二本構成であり、上方のものが支脚中央部より著しく上方に位置し広幅であるのに対し、下方のものは上方のものの約三分の一の幅で支脚下端の上方に位置している。それに反し、(イ)号物件の支脚横架杆は支脚中央部よりやや上方に位置し、該杆の真中で二分屈折状の広幅構成となつている点において、両者は相違する。支脚横架杆における右の如き取付位置、側板幅、本数、および機能(屈折可能の点)上の差異により、両者は意匠の形状として大差あるものといわなければならない。
(二) 横架杆接合態様 本件登録意匠の頂端横架杆および下段横架杆はいずれも太く短い接合筒管を介して支脚に接合されるように構成されているのに反し、
(イ)号物件のそれらはいずれも支脚に直接固定されいる点において、両者は相違する。
(三) 受容筒体 (イ)号物件では支脚正面上方左外側に灯具や手旗等を挿込み保持させるための受容筒体を固定しているが、本件登録意匠はこれを欠如している点において、両者は外観上著しく相違する。
(公知意匠からみた本件登録意匠)つぎに、本件登録意匠の要部ないし新規な特徴を本件登録意匠出願当時の公知意匠に照して考える。本件登録意匠を構成する各部のうち、
(一) 山形支脚をアングル材により形成した道路用安全さくは乙第二号証の四および甲第六号証の二ないし四に、
(二) 山形支脚の頂端横架杆としてパイプ材を用いた道路用安全さくは甲第六号証の二、三に、
(三) 標識板を右頂端横架杆から吊り下げるようにした道路用安全さくは乙第二号証の四にそれぞれ本件登録意匠の出願前に明記されていたし、
(四) 右出願前、山形支脚の側面において支脚横架杆を附設することおよび該横架杆がパイプ材により構成されているものがあつたことは原告が採用する甲第四号証(【A】鑑定書)に明記されている。したがつて、本件登録意匠に新規な特徴があるとすれば、それは、
(一) 支脚横架杆が中段と下段に各一本設けられ、下段のものは支脚の高さの一四分の一の位置で支脚側面幅の約三分の一の幅とし、上段のものは支脚の高さの約一〇分の六の位置(中央部より著しく高い位置)に支脚の側面幅とほぼ同一幅とした構成(細太二本構成)と、
(二) 頂端横架杆および下段横架杆の両端を接合筒管を介して支脚に接合した構成とにあるという外はない。
(両者の類否)本件登録意匠における右新規な特徴をいずれも(イ)号物件は欠如していることは前記のとおりであるから、他の構成要素がいかに似ていようとも、(イ)号物件の形状は本件登録意匠に類似しないといわざるを得ない。(イ)号物件の枠体および標識板の構成、形状について原告が本件登録意匠のそれと同一または類似と主張する点はいずれも出願前公知のものであるから、これらの点においていかに類似していようとも、本件登録意匠と(イ)号物件との類否判断の根拠とすることはできない。
五、請求原因五の事実のうち、原告が本件登録意匠の道路用安全さくを製造販売した事実は不知、被告が(イ)号物件を昭和四五年七月一五日まで製造販売した事実は認めるが、その余の事実は否認する。
六、請求原因六の事実のうち、原告主張の内容証明郵便(乙第六号証)が被告に送達された事実は認めるが、その余の点は否認する。仮に、(イ)号物件が本件登録意匠に類似し、(イ)号物件の製造販売行為が本件登録意匠権の侵害行為となるとしても、被告にはその製造販売について故意または過失の責任はない。その理由はつぎのとおりである。
意匠法40条本文が侵害者の過失を推定していることは原告主張のとおりであるが、この推定は意匠が登録されたうえは意匠公報が一般に頒布されるという事実関係を当然の前提としているのである。このことは同条但書が意匠公報が頒布されないこととなつているいわゆる秘密意匠について右過失推定を除外していることからも明らかである。したがつて、意匠公報が発行されていない間は右40条本文の規定は働かないと解すべきであるから、本件登録意匠発行前になした被告の行為について過失が推定されるいわれはない。
また、原告は遅くとも右原告の内容証明郵便(乙第六号証)が被告に送達された昭和四五年六月四日以降は故意または過失責任を負担する旨主張するが、原告は本件登録意匠の意匠公報が発行されていない段階において、右内容証明郵便中で、本件登録意匠の内容に関し、わずかに『貴社がかねてより所謂「A型バリケード」と称されている道路用安全棚を製造販売されておりますがこれについては昭和四五年五月二八日付をもつて弊社が意匠登録第三一六一三六号として意匠権を取得致しました』とのみ記載しただけであつた。しかも右文書で原告が意匠権を取得したと主張している「A型バリケード」は本件登録意匠そのものではなく、その後約一年後の同四六年五月二九日本件登録意匠の類似第一号意匠として登録されたに過ぎないものであるから、右の文面は事実に反するものであつた。
被告は、原告から右内容証明郵便を受領後直ちに本件登録意匠の内容の調査を開始し、(1)、受領の翌五日事務員を発明協会関西サービス所(大阪)に出向かせ、原告から通知のあつた登録第三一六一三六号の意匠公報を請求させたが、未発行であたため購入することができず、(2)、翌々六日には事務員をして同発明協会に架電し、公報未発行の状態で意匠の内容を知る方法を相談させ、本件登録意匠の願書および図面または見本の調査依頼をし、(3)、右調査期間と被告の検討期間の合計を三〇日間と見積り、同月八日付内容証明郵便(乙第七号証)で本件登録意匠の内容が不明であるから調査する間三〇日間の回答期限猶予方を原告に申入れ、(4)、右(2)の調査結果を待つていたが、調査依頼申込後三週間を経過しても報告がなかつたため、同年六月二九日被告事務員が同発明協会に趣き担当係長に相談した結果まず登録出願日を調査する以外に方法がないという結論になり、その旨の調査依頼をし、(5)、右の調査結果を同年七月四日受取つたものの、判明したことは登録出願日のみであるから、右出願時以降原告が発行したカタログ、雑誌広告等を調査して本件登録意匠の内容を知るべく努力中であつたが、(6)、その内容を確知し得ないうち同月一四日午後原告申請にかかる証拠保全決定(当庁昭和四五年(モ)第二〇一二号)に基づく証拠調が行われたので、被告代理人内田弁護士に相談し同月一五日をもつて(イ)号物件の製造販売行為を中止したのである。
乙第六号証の警告を受けた後被告の執つた以上の措置は極めて誠実かつ適切なものであり、尽くすべき注意義務は十分尽したにもかかわらず本件登録意匠の内容を知り得なかつたのであるから、被告のなした(イ)号物件の製造販売行為が本件登録意匠権の侵害を構成するとしても、被告には故意は勿論責められるべき何等の過失も存しないといわざるを得ない。被告は原告から内容証明郵便を受取つた後直ちに本件登録意匠を知り得ないから調査する旨の通知(乙第七号証)を原告に対して出しているのであるから、原告としてはわずかの手数と費用でその内容を被告に開示できたにもかかわらずその挙に出ることなく、被告の責任のみを一方的に追求するという原告の態度こそ権利者として権利行使に当り正に尽すべき信義誠実の義務に悖るものであつて、権利の濫用そのものである。
被告の主張に対する原告の答弁
一、(イ)号物件の構成に関する被告の表現および被告が公知意匠として引用する乙第二号証の三掲載の写真に示される道路用安全さくが支脚にL字形アングル材を用いていることは認める。しかし、本件登録意匠と右公知の道路用安全さくとは、
右公知の道路用安全さくが@左右支脚のL字形アングル材を一方を内向き他方を外向きにしている点、A頂端角材を介して支脚および頂端横架杆を固定している点、
B下段横架杆が支脚アングル材の幅のほぼ四倍の広幅板である点において著しく相違している。意匠的見地からは、本件登録意匠に比し、右公知の道路用安全さくは左右支脚のL字形アングル材を一方を内向き他方を外向きとしているため、外向きアングル材の内角が露出し体裁が悪く、美的デザインとして極めて劣るものである。
二、被告主張のとおり、L字形アングル材をA字形の如くに開脚した支脚、その開脚状態を保持する支脚横架杆およびいわゆるトラ模様を施した横長方形の標識板を頂端横架に固定する構成は、いずれも道路用安全さくにおいて既に多くみられたところであり、本件登録意匠の構成要件を一つ一つ分析的に取り上げて観察すれば公知のものに似ている部分があることは否定できないが、本件登録意匠を全体として総合的に観察し判断すると、部分的な公知の要素を包摂しきつて新規な独自の意匠を構成しているといえる。すなわち、本件登録意匠は、枠体の形成資材であるアングル材、パイプ材、板をその機能に適合するように配し、かつ全体として屋根形の如く巧みに組み合わせて枠体を形成し、人間の視覚にも最も安定感を感じさせるよう枠体の縦横の比率をほぼ一対二とするとともにこの枠体形成資材の太さおよび幅を安全さく全体の大きさに対してバランスよく統一し、この枠体とほどよく調和のとれた、すなわち縦の長さを支脚の高さに対しほぼ四分の一の比率とし縦横の比率をほぼ一対七とした標識板を吊り下げることにより、道路用安全さくとしては従前のものに比し極めてシンプルでスマート、かつ安定感のある意匠に構成されているのである。
証拠関係(省略)
理 由一、原告が本件登録意匠権者であることおよび被告が昭年四五年七月一五日迄(イ)号物件を製造販売したことはいずれも当事者間に争いがない。
二、そこで本件登録意匠と(イ)号物件の意匠との類否について検討する。
1(本件登録意匠の構成) 成立に争いのない甲第七号証(本件登録意匠の公報)によれば、本件登録意匠は、標識板とこれを取り付ける枠体とから成り、正面と背面および左右の両側面形状が対称となるように構成され、
(一) この枠体は、
(1) 断面L字形の単位脚体(アングル材等)二枚を、その内角が内向きとなるようにして、項点で接合固定し下端を開いて山形の開股状の脚体(支脚)となし、
(2) 右山形の脚体中央よりやや上方に単位脚体の側面幅とほぼ同一幅の板状の支脚中段横架杆を、脚体下端よりやや上方にその約三分の一の幅の板状の支脚下段横架杆を、それぞれ単位脚体に接合して、一見A字形の支脚となし、
(3) 二つのA字形支脚をそのL字の内角がそれぞれ内向きになるようにして、
その各頂端部に、支脚単位脚体の側面幅のほぼ二分の一の径を有し、支脚の高さのほぼ一・八倍の長さの細長い円管の両端を、それぞれ短い接合筒管を介して固定して頂端横架杆とし、
支脚下端のやや上方に頂端横架杆と平行にそれとほぼ同径、同長の細長い円管をそれぞれ前後支脚単位脚体に接合筒管を介して固定して下段横架杆として構成し、
(二) 頂端横架杆の両端部よりほぼ四分の一の位置に設けた二個所の短筒管に跨設した二個の吊下片の下部に、交互に色違いの斜縞模様、いわゆるトラ模様を表裏に表示した横長方形(縦横の比率をほぼ一対七とする)の標識板を吊り下げたものであると認められる。
2((イ)号物件の意匠)(イ)号物件の図面であることに争いのない(イ)号図面および検証の結果(証拠保全)によると、(イ)号物件の意匠は、標識板とこれを取り付ける枠体とから成り、下記(三)の筒体を除けば正面と背面および左右の両側面形状が対称となるよう構成され、
(一) この枠体は、
(1) 断面L字形の鉄アングル材二枚を、その内角か内向きとなるようにして、
頂点で接合(但し、開閉自在)し下端を開いて山形の開股状の脚体(支脚)となし、
(2) 右山形脚体の高さのほぼ四分の一の位置に単位脚体の側面幅とほぼ同一幅の鉄板二枚を中央部で折畳自在ピン止めし、その外側片の右ピン止め付近端部上縁には係合突片を内方に曲折構成した折畳可能の支脚横架杆の各端部を単位脚体にピン止めし(回動自在)、一見A字形の支脚となし、
(3) 二つのA字形支脚をそのL字形アングル材の内角がそれぞれ内向きになるようにして、その各頂端部に、支脚単位脚体の側面幅とほぼ同一径を有し、支脚の高さのほぼ一・五倍の長さの細長い円管の両端を接合して頂端横架杆とし、支脚の下端のやや上方に頂端横架杆と平行にそれとほぼ同径、同長の細長い円管をそれぞれ前後支脚単位脚体に接合して下段横架杆として構成し、
(二) 頂端横架杆の両端部よりほぼ四分の一の位置に跨設した二個の吊下片の下部に、交互に黒と黄の斜め縞模様、いわゆるトラ模様を表裏に表示した横長方形(縦横の比率をほぼ一対七とする)の標識板を吊り下げ、
(三) 正面左側支脚上部外側に筒体を固着したものであると認められる。
3(両者の類否) そこで、本件登録意匠と(イ)号物件とを対比して両者の類否を検討するに、両者は、いずれも、道路用安全さくの意匠であつて、標識板とこれを取り付ける枠体から成り、(イ)号物件の支脚外側の筒体を除けば正面と背面および左右の両側面形状が対称となつており、枠体は、断面L字形の単位脚体(アングル材)二枚をその内角が内向きとなるようにして頂点で接合し下端を開いて山形の開股状の脚体とし、山形の脚体の中間部に単位脚体の側面幅とほぼ同一幅の板状の支脚横架杆を単位脚体に接合して一見A字形の支脚を構成し、二つのA字形支脚をそのL字の内角がそれぞれ内向きになるようにして、その各頂端部に支脚の高さよりも相当長い細長い円管の両端を固定して頂端横架杆とし、支脚下端のやや上方に頂端横架杆と平行にそれとほぼ同形、同長の細長い円管をそれぞれ前後支脚単位脚体に固定して下段横架杆とし、頂端横架杆の両端部よりほぼ四分の一の位置に跨設した二個の吊下片の下部に交互に色違いの斜模様、いわゆるトラ模様を表裏に表示した横長方形(縦横の比率をほぼ一対七とする)の標識板を吊り下げた点において、基本的に一致している。
もつとも、本件登録意匠と(イ)号物件の意匠とは、被告主張のとおり、@支脚横架杆の取付位置、横架杆幅、本数および屈折可能の構造の有無の点、A頂端および下段横架杆の接合態様、すなわち接合筒管の有無の点およびB受容筒体の有無の点において相違はしているが、右の如き差異あるため両者が看者に異つた審美感ないし印象を与えるものとは認め難いから、いずれも類否判断に影響を及ぼす程の差異とはいい得ない。
したがつて、右の如き差異があるにもかかわらず、(イ)号物件の意匠は全体として本件登録意匠に類似していると認めざるを得ず、被告のなした(イ)号物件の製造販売行為は本件登録意匠権の侵害を構成する。
なお、被告は、本件登録意匠出願当時の公知意匠に照して考えると、本件登録意匠は支脚横架杆の細太二本構成の点と頂端および下段横架杆を接合筒管を介して支脚に接合した点のみに限定される旨主張するが、被告が公知意匠として引用する甲第六号証の二ないし四(いずれもカタログ)に掲載されている公知の意匠は、左右支脚のL字形アングル材を一方を内向き、他方を外向きにして山形支脚に形成しており、下段横架杆が支脚アングル材の幅の約四倍という極端な広幅板であつて(下段横架杆のないものもある)、しかも支脚横架杆が一本もない道路用安全さくであるし、また乙第二号証の四(カタログ)に掲載のものも山形支脚ではあるが支脚横架杆が一本もない道路用安全さくであるから、本件登録意匠の要部を右の如く限定的に解すべき資料とはなし難く、他に被告の右主張を支持するに足りる資料もないので、被告の右主張は採用できない。
三、故意、過失について1(故意責任について)(イ)号物件の製造販売の最終日である昭年四五年七月一五日迄に被告が本件登録意匠の内容を知つていたという事実を認めるに足りる証拠はない。したがつて、被告が本件登録意匠権の侵害について故意に基づく責任を負担するいわれはない。
2(意匠法40条の推定について) 意匠法40条本文は、他人の意匠権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する旨規定している。過失による意匠権の侵害とは、他人の意匠権を侵害している事実を知ることができ、かつ知るべきであるのに、注意義務を怠り、権利侵害の事実を知らなかつた場合をいうが、右権利侵害の事実を知るべきであつたというためには、侵害者が他人の意匠権の内容を知つていたか、少なくとも知り得べきであつたことが前提となる。特許庁は意匠権の設定登録があつたときは、意匠法20条に則り所定の事項を意匠公報に掲載して公告する。これは、意匠の設定登録があれば、特許庁備付の登録原簿を閲覧し、意匠登録出願の年月日番号等の登録事項を手掛りに調査し、登録意匠の内容を知ることができるけれども、
一般人が登録意匠を知るためには右の手続をとるの外ないとすれば、通常著しい負担を蒙ることになるので、特許庁において公報発行による公告手段をとることにしている反面、
右公告後はこれにより一般人は公報掲載の意匠内容を知つたものとの効果を生ぜしめる法意であると解せられるのである。果してそうだとすれば、意匠法40条本文は、右擬制ができることを前提としていると解すべきであるから、意匠公報が未だ発行せられていない場合の侵害については、それを適用することができないと解すべきである。ところで、被告の(イ)号物件製造販売行為が本件登録意匠意匠公報に掲載される迄の間のものであることは原告が自認するところであるから、被告の右侵害行為について意匠法40条本文の適用を求める原告の主張は採用できない。
なお、原告は、意匠登録後は何人も登録意匠に関する願書、その添付図面等の出願関係書類の閲覧等により当該意匠の存在および内容を知り得る状態になるから、
40条本文の推定規定の適用がある旨主張するが、意匠法が一般第三者に対し特許庁においていかなる意匠登録がなされたかを毎日注意して調査することを期待しているものとはとうてい考えられないから、原告の右主張は採用できない。
3(過失責任について) 本件において、原告が被告に対し乙第六号証の内容証明郵便を差出し、同書面が昭和四五年六月四日被告に送達されたことは当事者間に争いがない。
原告は右書面中に本件登録意匠の登録番号を明示し、A型バリケードについて意匠登録を受けた旨および被告の(イ)号物件製造販売行為が原告の有する本件登録意匠権の侵害となる旨を通知したこと、A型バリケードといえば如何なる構成のものであるかは当業界では何人も熟知していたことおよび被告は特許庁で調査すれば即日にでも本件登録意匠の内容を知ることができたことをもつて、少なくとも被告は右内容証明郵便受領日以降責任を免れ得ない旨主張する。
しかし、成立に争いのない乙第六号証によれば原告の主張する右内容証明郵便には「貴社はかねてより所謂『A型バリケード』と称されている道路用安全柵を製造販売されておりますがこれについては昭和四十五年五月二十八日付を以て弊社が意匠登録第三一六一三六号として意匠権を取得致しました。
従つて右期日後は弊社の許可なくどなたもこれを製造販売することは出来ませんので念の為ご警告を申し上げます。」と記載されているのみで、他に本件登録意匠の図面の送付もなく、また右書面では被告の製造販売するいわゆるA型バリケードについて意匠登録を受けた旨の記載があるが、このA型バリケードと指称されているものは(イ)号物件そのものであることは明らかであるから、本件登録意匠に類似するとはいうもののこれとは種々の相違点がある(イ)号物件の意匠について意匠登録があつたという右の記載は事実に反する。結局、右内容証明郵便の内容から本件登録意匠の内容を確知することは不可能であつたといわざるを得ない。
それでは、被告は原告から右内容証明郵便による警告を受けた後直ちに上京し、
特許庁で原告が権利者となつたと主張している意匠登録第三一六一三六号の意匠内容を調査する義務があつたであろうか。一般に、登録意匠権者であると主張する者が、該登録意匠が意匠公報に未だ記載されていない段階で、登録意匠の図面ないしその写しを示すことは極めて容易であるにもかかわらずこれを示さず、唯単に意匠登録番号のみを示して、相手方に対し相手方が製造販売する物品の意匠について意匠登録したから相手方のその製造販売行為が該意匠権の侵害となると主張して来た場合、右の主張を受けたという一事によつて相手方は直ちに上京し特許庁において右意匠の内容を調査する義務を負担するに至ると解することは著しく公平に反すると考えられるから、侵害者と主張された相手方において右の如き重い調査義務が課せられているとはとうてい解し得ない。このような場合には、侵害者と主張された相手方は、直ちに特許庁に出向いて調査することが容易でありこれが期待されるような場合を除き、速に、郵便、電話等によりまたは発明協会等の取扱代行機関に依頼して、特許庁に出願関係書類の謄抄本の請求をし、右手続によつて得た書類によつて該登録意匠の内容を知るのが通常期待し得べきところであり、この種の調査義務をも怠つたため該登録意匠の内容を知らなかつた場合は過失の責を免れることができないと解すべきである。
証人【B】および同【C】の各証言、被告代表者尋問の結果ならびに成立に争いのない乙第七号証および乙第一一号証の一ないし四を総合して考えると、被告は、
原告から右内容証明郵便による警告を受領後直ちに本件登録意匠の内容の調査を開始し、(1)、右受領の翌五日事務員【D】を発明協会関西サービス所(大阪)に出向かせ、原告から通知のあつた登録第三一六一三六号(本件登録意匠)の意匠公報を請求させたが、未発行であつたため購入することができず、(2)、翌々六日には電話で事務員【C】をして同発明協会に対して公報未発行の状態で登録意匠の内容を知る方法を相談させた結果、同発明協会に本件登録意匠にかかる願書および図面または見本の調査依頼をすることが最適の方法であることが判明したので、直ちにその旨の調査依頼をし、(3)、他方、原告に対しては、右調査期間と被告の検討期間の合計を三〇日間と見積り、同月八日付内容証明郵便(乙第七号証)で本件登録意匠の内容が不明であるから調査する期間三〇日間の回答期限猶予方を申入れ、(4)、右(2)の調査結果を待つていたが、調査依頼申込後三週間を経過しても同発明協会から調査結果の報告がなかつたので、同年六月二九日右【C】が同発明協会に赴き担当係長に事情を聴取したところ、同発明協会を通じてなした(2)の調査は折悪しく本件登録意匠意匠公報に掲載するため一件書類が印刷所に回されているために、閲覧、謄写が不可能であるという事実が判明した。そこで本件登録意匠の内容を知る一つの手がかりとしてその登録出願日を調査することとし、即時その旨の調査依頼をし、(5)、右の調査結果は同年七月四日受取つたものの、判明したことは出願日のみであつたから、右出願日以降原告の発行したカタログ、雑誌広告等を調査して本件登録意匠の内容を知るべく努力中であつたが、その内容を確知し得ないうち同月一四日午後原告申請にかかる証拠保全決定に基づく証拠調が行なわれたので、同月一五日をもつて(イ)号物件の製造販売行為を中止した事実が認められる。
右事実によれば、被告が原告から前記警告を受けた後、直ちに本件登録意匠の内容を知るため、特許庁所在地より遠隔の地に所在する者として一般に期待されている注意義務を尽して努力したが、本件登録意匠にかかる一件書類が意匠公報掲載のために印刷所に回されていたという被告の責に帰すべからざる事由によりその内容を知り得なかつたのであるから、(イ)号物件の製造販売により本件登録意匠を侵害したことにつき、被告に過失の責があるということはできない。
四、以上のとおり、被告のなした(イ)号物件の製造販売行為は、本件登録意匠権の侵害を構成すると認められるけれども、右侵害につき被告に故意または過失があつたとは認められないから、原告の被告に対する本訴請求を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
追加
(別紙)<11713-001><11713-002><11713-003>第一目録謝罪広告当社は、貴社が左記登録意匠の権利者であるにもかかわらず、右登録意匠と類似する道路用安全さく(A型バリケード)の製造販売をなし、貴社の右登録意匠権を侵害すると共に営業上の信用を著しく害し、貴社並びに需要者各位に多大の迷惑を及ぼし、大変申訳なく存じております。以後貴社の意匠権を侵害するような行為は一切しないことを誓約し、ここに深く陳謝の意を表します。
意匠に係る物品道路用安全さく登録年月日昭和四五年五月二八日登録番号第三一六一三六号昭和年月日大阪府大阪市<以下略>株式会社大阪燈具製作所右代表取締役【E】東京都文京区<以下略>東阪神点灯株式会社殿第二目録一、日刊建設工業新聞東京都中央区<以下略>株式会社日刊建設工業新聞社一、日刊建設産業新聞東京都板橋区<以下略>株式会社日刊建設産業新聞社(イ)号説明書別紙図面に示すような形状および模様を有する道路用安全さく・別紙図面右側面図と左側面図は対称である。
裁判官 大江健次郎
裁判官 近藤浩武
裁判官 庵前重和
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