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関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  色分け /  意匠に係る物品 /  間接対比観察 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) / 
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事件 昭和 44年 (行ケ) 110号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1970/11/17
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和四四年八月二九日、同庁昭和四〇年審判第七、三九一号事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。
請求の原因
原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和四〇年一一月一〇日、被告を被請求人として、被告の権利に属する登録第二五〇、八一二号意匠(意匠に係る物品「ボーリング用手袋」、登録出願昭和三九年五月八日、登録昭和四〇年八月五日)につき、登録無効の審判を請求し、
昭和四〇年審判第七、三九一号事件として審理された結果、昭和四四年八月二九日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は、同年九月一〇日原告に送達された。
二 本件登録意匠 形状を普通の形の手袋から、親指の出る部分を根本から削除し、残り四本の指に相当する部分をそれぞれ第二関節の下あたりで切り取つたような形とし、その表面(甲の側)の態様は、中指の部分から手首にかけて垂直に二分し、小指の側を褐色で表わし、その他の部分を白色とし、なお中指と薬指の直下に当る手首の部分に逆U字形の切り込みを設け、その左側より手首の右側方に達する褐色のバンドを取りつけ、なお褐色部の甲部に上下二本のジグザグ状ミシン目を施してしぼつてひだを作り、また、人差し指の部分には手首まで、他の指部には甲部までに亘り縦に一列に多数の小孔を設け、更に裏面(掌の側)の態様は、全体を白色とし、小孔を各指部及び手首上方部に表わし、中央部には直角の両辺を端部に於て円弧状で結んだ形のものを小指下から親指方向に向つて下辺が円弧状になるように凸出して取り付け、手首部下辺寄りにジクザク状ミシン目を入れてしぼり上下にひだを設けた態様のもの(本件登録意匠の図面代用実物見本のカラー写真である別紙第一参照)。
三 本件審決理由の要点 本件登録意匠(意匠に係る物品ボーリング用手袋、昭和三九年五月八日登録出願、昭和四〇年八月五日登録)は、前項のとおりである。他方、米国特許第三、〇三一、六八〇号明細書添付の図面の意匠(以下「引用意匠」という。)は、形状を普通の手袋の形から、親指の出る部分を根本から削除し、残り四本の指に相当する部分をそれぞれ第二関節の下あたりで切り取つたような形とし、その表面(甲の側)においては、人差し指の右寄りから手首にかけて垂直に継ぎ目を表わし、なお親指の根本部に相当する部分に別に帯状の補助片を縫い付け、更に残る三本の部分は、人差し指の垂直縫合部から甲部上部において平に区切り、その下方の甲部を濃調子で表わし、更にその表面には二本並列してなる筋条を間隔をおいて縦に平行して手首下端部まで表わし、手首から甲部中央にかけてU字形の切り込みを設け、下辺寄りの一方に丸いボタン状のものを表わし、甲部濃調子の部分以外を明調子に表わしており、裏面(掌の側)には中央部に直角の両辺を端部に於て円弧で結んだ形を小指下から親指方向に下辺を円弧状になるよう凸出して取り付け、直角の辺の周囲に沿つて数個の小孔を表わし、手首部にジクザクにミシン目を入れてしぼり上下にひだを設けた態様のものである(引用意匠の特許明細書の添付図面である別紙第二参照)。そこで、両者を比較すると、本件登録意匠も引用意匠も、普通の手袋の指部を削除した形のボーリング用手袋である点で物品を同じくし、その裏面において直角の両辺を端部において円弧で結んだ形の凸出部を設けた点を特徴とする態様において共通するところが認められる。しかし、その表面においては、引用意匠では、四つの区画からなる前記のような態様のものであるのに対し、本件登録意匠は、左右二色の色分けからなり、甲部濃調子部の態様にも顕著な差異が認められ、
両者は全く趣きを異にし、全体としての両者は、前記のような共通点があつても、
類似した意匠とは認めがたく、結局、本件登録意匠は、引用意匠から容易に実施できるものとはいいがたく、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
四 本件審決を取り消すべき事由 本件登録意匠および引用意匠の構成、両者が普通の手袋の指部を削除した形のボーリング用手袋で物品を同じくし、かつ、その裏面において直角の両辺を端部で円弧で結んだ形の凸出部を設けたことを特徴とする態様で共通することおよび表面では、引用意匠が四つの区劃からなる態様のものであつて、本件登録意匠が左右二色の色分けからなるものであることについての本件審決の判断を争わないが、その余を否認する。
本件登録意匠は、引用意匠と類似するのにかかわらず、これを否定した審決は判断を誤つた違法があり、取り消さるべきである。すなわち、
(一) 本件登録意匠は、形状模様および色彩の結合に係るものであるところ、
1 形状の点において、本件登録意匠は、ボーリング用手袋として、引用意匠とは全く同一であつて、僅かに、表面の甲側において手首部にバンドを取り付けた点とジクザク状ミシンを施した点で相違するにすぎない。
2 模様および色彩の点において、本件登録意匠では、表面(甲の側)の態様は、
中指と人差し指との中間部分から手首にかけて垂直に二分し、小指の側を褐色で表わし、その他の部分を白色で表わしているのに対し、引用意匠では、人差し指の中指寄りの部分から手首にかけて垂直に縫目を施し、小指の側を濃調子すなわち白色以外の明度の低い彩色をなし、その他の部分を白色で表わしている。もつとも、引用意匠では、甲側に、親指の根本部に相当する部分に別に帯状の補助片を縫付け、
更に残る三本の部分は人差し指の垂直縫合部から甲部上部において、平に区切つているのに対し、本件登録意匠は、これを備えてはいないが、この部分の甲側の全体に占める割合は僅少である。また、本件登録意匠は、小指の側以外の部分は、引用意匠と同様に白色であるが、僅かにこの白色部分において縦方向に一二個の小孔が等間隔をもつて穿たれている点で相違するだけである。
裏面(掌の側)の態様は、親指の付根部分に補助片がない点を除くと、その模様と色彩の点で、両者は、全く同様である。
3 そもそも、ボーリング用手袋は、手の平でボールを放る場合に手の平に負傷することを防止すること及びもつとも効果的にボールを目的のピンに衝当てることを重要な目的とする。このために、手袋の裏面(掌の側)の中心に取り付けた直角三角形の一片を円弧で結んだ形状の凸片の形状がこの種手袋の生命でもあり、同時に意匠の必須要素である。ところで、本件登録意匠においては、このもつとも象徴的な凸片を掌の側においてもつとも顕著に備えているばかりでなく、全体の形状模様および色彩の各点では、前述のように、引用意匠と微差があるにとどまり、全体的観察においてそれと類似するものである。とくに、表面すなわち甲側においては、本件登録意匠は、縦の半面を褐色に表わすのに対し、引用意匠では、これを濃調子すなわち明度の低い不特定色で表わす点が相違するのみで、したがつて、色は相違しても、明度の低い色を同様に施している以上、観念的な類似があるばかりでなく、隔離観察ないし間接対比観察において、両者の混同を来たすおそれがある。
以上のように、両者の相違点は、いわば、表面甲側における特定の着色の点のみであるからかかる特定のみでは、両者の混同をまぬかれず、結局、本件登録意匠は引用意匠に類似するものであることは明らかである。よつて、これを非類似と認定した審決は違法なものというべきである。
被告の答弁
被告訴訟代理人は、答弁として、次のとおり述べた。
原告主張事実中、本件に関する特許庁における手続の経緯、本件登録意匠の構成および本件審決理由の要点が、いずれも、原告主張のとおりであることは認めるが、本件審決を取り消すべき事由については、否認する。本件審決は正当であり、
原告主張のような違法はない。
そもそも、ボーリング用手袋のような手袋は、その表面すなわち甲の側が裏面に比し人の目をひきやすいものである。
ところで、この部分について本件登録意匠と引用意匠の各表面を比較すると、本件登録意匠では、中指の部分から手首にかけて垂直に区分し、小指の側を褐色にその他の部分を白色にし、いかにも若々しいスポーテイな美感を呈するが、かかる意匠は引用意匠には見られない。
また、本件登録意匠は、手首にバンドを設け、褐色部に上下二本の横方向のジクザクミシン縫目を施すとともに多数の小孔を備えるのに対し、引用意匠は、丸ボタンを設けるとともに黒い色彩の濃調子部には二本の縦方向の筋条を施しており、また小孔を具備していない点で、両者はその態様を著しく異にする。
このように、本件登録意匠は、もつとも人目を引きやすい手袋の表面部(甲部)において、引用例と趣きを異にするから、たとい、その裏面の意匠が一致するとしても、全体として類似するものとはいえない。
証拠関係(省略)
理 由(争いのない事実)一 本件における特許庁における手続の経緯、本件登録意匠の構成および本件審決理由の要点がいずれも原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無)二 本件登録意匠と引用意匠とは、いずれも、普通の手袋の指部を切除した形のボーリング用手袋である点において、その対象物品を同じくするものであることは、
当事者間に争いがない。そして、その手袋の裏面(掌の側)についてみると、直角の両辺を端部において円弧で結んだ形の凸出部を設けた点を特徴とする態様において、本件登録意匠と引用意匠とに共通するものがあることは、被告の認めて争わないところである。
ところで、ボーリング用手袋においては、手の平でボールをほうる場合に手の平に負傷することを防ぎ、ボールを目的のピンに最も効果的に当てることが極めて重要であり、そのため手袋の裏面(掌の側)の中心に、前述のような直角三角形の長辺を円弧状で結んだ形状の凸片様のものを取り付けることが、この種の手袋として最も大切であることが原告の主張するとおりであるとしても、ボーリング遊技にあつては、手の動きが比較的激しく、その手の動きを示すボーリング用手袋の外観(とくに手の甲の部分である表側の外観)、形相、とくに色彩による模様形状は、その手袋を着用するボウラーの服装、姿勢等とともに、ひときわ目立つものであり、しかもボーリングがスポーツ的遊技である関係上、若さ、軽快さおよび明朗さの雰囲気をもたらすように配意することが同様に重要であることは、何びとにも明白なところである。したがつて、ボーリング用手袋について、単にその裏側(掌の側)のみならず、その表側(手の甲の側)の形状模様、色彩およびその組み合せは、その意匠上ゆるがせにすることのできないものであることは、いうまでもない。
本件についてみるのに、本件登録意匠にかかる手袋と引用意匠の手袋とが、その裏側(掌の側)の形状構成において類似することは前記のとおりであるが、同時に他方、当事者間に争いのない事実ならびに成立に争いのない甲第一、第三号証および成立に争いがなく、かつ、原告主張のような実物見本のカラー写真であることにつき争いのない甲第四号証の一、二によると、本件登録意匠のボーリング用手袋の表側の態様は、人差し指と中指との間の指のつけ根部分から手首部分にかけて垂直に二分し、小指側の部分(表側全体の約三分の二)を褐色で表わし、その他の部分を白色とし、しかも手首に褐色のバンドを取り付けると共に、褐色部の中間、手の甲の部分には横方向に上下二本のジクザク状ミシン目を施してしぼつてひだを作り、人差し指の部分には上端から手首部まで、他の指部には上端から甲部までにわたつて縦に一列の小孔を穿つているのに対し、引用意匠の表面の態様は、四つの区画からなり、人差し指部分のうちの右寄り(中指寄り)の箇所から手首にかけての垂直の継ぎ目と、この継ぎ目の上部、指のつけ根やや下寄りの箇所から小指にかけての甲部上部の水平に区切る線で囲んだ右下方区画を濃調子で表わし、その他を白色で示し、しかも手首に丸いスナツプを取り付けると共に、濃調子部には縦方向に左右二本の平行の筋条を表わした態様であることが認められる。
叙上の認定によると、本件登録意匠の表側(手の甲の側)の構成、とくに人差し指と中指の間に引いた垂直線により約一対二の割合をもつて白色部分と褐色部分とを単純簡明に色分けし、かつ、褐色部分の甲に当る部分に上下のジクザクミシン目によつてたてひだを設けた構成は、引用意匠と一見して異なつており、かつ、引用意匠にみられない、近代的スポーツ用品にふさわしい若々しさ、軽快さおよび明朗さを感じさせるものがあると認めるのが相当である。
そうであるとすると、裏側(掌の側)の類似にもかかわらず、全体としてみるときは、本件登録意匠は、引用意匠とは異なる創作性を有するものというべく、これをもつて引用意匠に類似するものということはできない。
したがつて、両者の間に類似性なしとした本件審決には、原告主張のような違法はない。
(むすび)三 以上のとおりであるから、その主張の点に違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないものというほかない。よつて、これを棄却することとし、行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を適用し、主文のとおり判決する。
裁判官 服部高顕
裁判官 石沢健
裁判官 奈良次郎
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