• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2000-12741
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  物品の形状 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  創作容易(容易の創作) /  一意匠一出願(7条) /  新規性 /  公然知られた(3条1項1号) /  意匠の属する分野 /  通常の知識を有する者 /  手続違背 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 16年 (行ケ) 491号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁理士 酒井正己
同 加々美紀雄
同 小松 純
同 小松秀岳
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 藤 正明
同 内藤弘樹
同 宮下正之
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2005/03/30
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が不服2000-12741号事件について,平成16年9月28日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成11年1月14日,意匠に係る物品を「花壇用ブロック」とし,その形態を別紙審決書添付の別紙第1「本願の意匠」記載のとおりとして,平成11年意匠登録願第748号の出願(以下「本件出願」といい,これに係る意匠を「本願の意匠」という。)をした。
特許庁は,平成12年7月6日,本件出願の登録について拒絶査定をした。
原告は,平成12年8月11日,この拒絶査定について不服の審判を請求し,特許庁は,これを,不服2000-12741号事件として審理した上,平成16年9月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同年10月7日,その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書のとおりである。要するに,本願の意匠は,その意匠登録出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められ,意匠法3条2項の規定に該当し,意匠登録を受けることができない,というものである。
3 審決が認定した本願の意匠の形態 「(1) 全体の形状を正面視横長凸字状とし,(2)その表面に上部に2個,下部に3個のレンガ積み模様を呈するように,目地部に相当する部分を細溝で形成しているもの」
原告主張の審決取消事由の要点
審決は,本願の意匠の認定を誤り,その結果,意匠法3条2項の判断(創作容易性)を誤ったほか,新たな引用例を用いたことについて,原告に何ら意見を申し述べる機会を与えないという手続違背を犯したものであるから,違法として取り消されるべきである。
1【本願の意匠の認定の誤り】 本願の意匠に係る物品(花壇用ブロック)は,ブロックの上下若しくは左右を交互に逆にして組み合わせ,直線延長,後(前)方屈曲延長できるばかりでなく,上(下)方に向かって屈曲させて三次元的にも配列し得る,特殊な形態を有している。このような形態を現出するために,切欠空間及び突出部をそれぞれ同じ大きさにした,というのが,本願の意匠の設計原理である。
また,本願の意匠は,ブロックの正面に5つのレンガ模様が等しく浮き上がるように配してある。そのため,ブロックの寸法としては,切欠空間と概念的に同じ大きさの立方体を上部に4個,下部に6個結合させた形となっている。単に,正面視横長凸字状という曖昧な表現をされるものでもない。
しかしながら,審決は,本願の意匠に係る物品が複数組み合わされて使用されるということを考慮せず,上記のような本願の意匠の形態上の特徴を看過している。
2【意匠法3条2項(創作容易性)の判断の誤り】 審決は「・・・本願の意匠は,(1)の全体形状(判決注・甲第3号証記載の物品の形状を指す。)に(2)の手法(判決注・甲第4号証及び第5号証に記載された手法を指す。)により,単に上部に2個,下部に3個のレンガ積み模様を呈するように,細溝で形成して表した程度にすぎないものであるから,何ら創作力を要しないものであり,当業者であれば容易に想到し得る形態であるといわざるを得ない。」とし,さらに「・・・本願の意匠は,これ(判決注・甲第6号証及び第7号証記載の従来例を指す。)に基づいて,横長長方形状のレンガ模様を呈するように,単に上部に2個及び下部に3個結合して,上下部ともに横長長方形状に形成したものであり,拒絶の理由で挙げた引用意匠1(判決注・甲第3号証記載の物品の意匠を指す。)の縦・横・奥行きの構成比を上記立方体の結合からなるブロックのように単に変更して表した程度にすぎないものであるから,この点も本願の意匠独自の創作として格別評価するほどの創作力を要したものといえないものである。」(審決書3頁)としている。しかし,この判断は誤りである。
(1) 特許庁の審査基準には「創作容易な意匠というためには,当業者にとってありふれた手法によって創作されたという事実を要する。したがって,意匠法3条2項の規定により拒絶の理由を通知する場合は,原則,当業者にとってありふれた手法であることを示す具体的な事実を出願人に提示することが必要である。」と記載されているのに,審決では,そのような事実は何ら提示されていない。
(2) 甲第3号証(公開実用昭和52-128302号公報)に係る物品は,土留構造物であり,これは,主に法面の土留めとして用いられる物品である。本願の意匠に係る花壇用ブロックとは用途が異なる。審決は,それに,甲第4号証(公開実用平成1-125042号公報)の縁石ブロックや甲第5号証(公開実用昭和60-89331号公報)の煉瓦インテリヤブロツクにおけるレンガ模様を形成する手法を適用して創作容易性の検討をしており,これは,不適切である。
(3) 前記のとおり,審決は,「本願の意匠は,これに基づいて,・・・縦・横・奥行きの構成比を上記立方体の結合からなるブロックのように単に変更して表した程度にすぎない」としている。しかし,以下のとおり,本件の引用例からは,本願の意匠の縦・横・奥行きの構成比(以下,単に「本願の意匠の構成比」という。)は出てこない。
ア 1で述べたとおり,本願の意匠の構成比は,三次元的配列を可能にするという設計原理から生まれたものである。
しかし,甲第3号証ないし第7号証のいずれも,本願の意匠の特徴である三次元的配列を可能とする意匠(切欠空間と同じ大きさの立方体を上部に4個,下部に6個結合させた形)を開示するものはない。したがって,これらから,本願の意匠の構成比は容易に創作されない。
イ 甲第3号証記載の物品の形状(以下,単に「甲第3号証の意匠」という。)は,それに明記されている奥行きを考慮すると,本願の意匠の構成比が得られるものではない。その切欠空間は立方体ではなく,直方体状になるはずである。
ウ 甲第6号証(実開平3-21403号公報)において,ブロックの厚みについては言及されておらず,同号証は立方体を結合するという発想の意匠を開示するものではない。また,本願の意匠の設計原理である三次元的配列を開示するものでもない。
正面に等しい5つのレンガ模様を形成することも不可能である。
エ 甲第7号証(特開平9-78723号公報)記載の物品の形状は,その使用態様を見ると,立方体を集積したものとなることが想定されているとはいえない。その高さ方向の長さは不問である(例えば,高さ方向の長さを全て2分の1にしてもよい。)。同号証において,立方体の集積として表示されているのは,単に,そのようにした方が商品としての寸法バランスがよいからと考えたためと思われる。
また,同号証は,三次元的配列を開示するものでもなく,レンガ積み模様を形成することも不可能である。
(4) ある意匠の複数の特徴的部分について,それぞれ,物品の異なる公知意匠を際限なく引用して,どんなに創作性のある意匠であっても創作性なしとしてしまうのは妥当でない。
レンガ積み模様自体は古くから多用されているものの,文字通り一つずつレンガを積み重ね又は敷き並べることは相当の技能と手数を要する。そのため,本願の意匠の属する分野の製品である,複数のレンガを積み又は敷いたような外観になる単位ブロックが存在する。そして,この製品分野においては,「配列の自由性」及び「仕上がり外観をいかに本物のレンガ積みに近づけるか」という観点から,単位ブロック内の仮想レンガの配置方法を考案するものであり,そこに,この種意匠の創作性がある。
本願の意匠は,三次元的配列を実現するため,正面視横長凸字状,等しい5つのレンガ積み模様及び立方体の組み合わせを,不可分の構成要素とするものである。各構成要素に似た形状を開示する例が個別にあるとしても,それらを引用したのみでは,「当業者にとってありふれた手法により」創作できたとすることはできない。
(5) 本願の意匠と同様にブロックの一面に5つのレンガ模様が形成され,かつ屈曲配列できる花壇用ブロックに係る意匠が登録されている。特許庁の審査は一定の基準に即して行われるべきであるから,本願の意匠も登録されるべきである。
3【意匠法52条・特許法153条2項違反】 審決は,立方体を結合したブロックの形態として甲第6号証及び甲第7号証を挙げている。
ブロックの形態として立方体を結合してあるという点は,本願の意匠の本質に関わるものである。しかるに,原告は,この甲第6号証及び第7号証について,何ら意見を申し立てる機会を与えられていない。これは,意匠法52条が準用する特許法153条2項に違反する。
被告の主張
1【本願の意匠の認定の誤り】に対して 本願の意匠は,全体としてみれば,表面に,目地部に相当する部分として細溝を形成してレンガ積み模様を表しているため,横長直方体状のレンガを上部に2個,下部に3個積んだようにした,正面視横長凸字状と認識するのが自然である。
原告の主張するように,立方体を上部に4個,下部に6個積んだ形状と認識するのは無理がある。
なお,審決は,本願の意匠の構成比の創作容易性を検討している。
2【意匠法3条2項(創作容易性)の判断の誤り】に対して (1) 特許庁の審査基準は「原則・・・出願人に提示する・・・」と定めているものである。当業者にとってありふれた手法であれば,例を示すまでもなく知っていると認められるから,具体的な事実をすべて示さなければならないというものではない。
(2) 本願の意匠は,花壇用ブロックであり,これは,土木構築用品分野に属するものである。
甲第3号証の物品が,本願の意匠に係る物品と使用場所が異なるとしても,ともに屋外で使用され,土留め等を使用目的とする土木用品であるから,共通する分野に属するといえる。これを創作容易性の判断の資料とするのは妥当である。
(3) 甲第3号証,第6号証及び第7号証に開示されている意匠についての原告の理解は,適切でない。
ア 甲第3号証の意匠は,一定の厚みを有するものであり,それは本願の意匠の厚みと格別かけ離れたものではない。
イ 甲第6号証には,そのブロックの厚みが具体的に表現されており(第4図),その厚みは,切欠空間の長さと同じであると認識するのが相当である。
ウ 甲第7号証には,実際に,立方体を結合して凸字状としたブロックが記載されており,このブロックは,敷設可能なものである。
甲第7号証は,立方体を結合したブロックの例として引用したものであり,それ自体に,レンガ積み模様を形成できるか否かは関係がない。
(4) 本願の意匠の創作容易性を肯定する理由は,次のとおりである。
本願の意匠に係る花壇用ブロックの属する土木構築用品分野において,ブロックの形態として,それを左右,前後,上下に組み合せられるように,立方体を基本単位としてそれらを複数個組み合せたものとすることは,本件出願当時周知であった。本願の意匠と厚みは異なるものの,全体の正面視形状が近似するもの(凸字状)もあった。
したがって,ブロックの三次元的配列から得られると原告が主張する本願の意匠の構成比も,当然ごくありふれたものとなる。そして,甲第3号証の物品の構成比も,本願の意匠のそれとかけ離れたものではなく,わずかに変更すれば前記ごくありふれた構成比になるものであり,その程度の変更を当業者が容易に推考できることは明らかである。
また,意匠の創作容易性の判断においては,公然と知られた各構成要素(形態)に基づいて当業者が容易に創作をすることができたかどうかが重要であって,それら構成要素の数に直ちに影響されるものではない。
3【意匠法52条・特許法153条2項違反】に対して 審決は,甲第6号証及び第7号証を,意匠法3条1項新規性の判断の引用意匠にしているものではなく,本願の意匠の構成比,すなわち立方体を基本単位としてそれを複数個結合した形状の構成比が,ありふれた,周知のものであることを示すための一例として挙げたものである。そして,周知のものである以上,当業者は当然了知しているものであるから,原告に提示して,意見を述べる機会を与えなければならないものではない。
当裁判所の判断
1【本願の意匠の認定の誤り】について 甲第2号証によれば,審決が認定するとおり,本願の意匠は,レンガ積み模様を呈するように細溝を形成しており,そのため,上部に2個,下部に3個の直方体状のレンガを積み重ねたような形状を有するものであって,全体の形状として正面視横長凸字状にみえるということができるから,この点の審決の認定そのものに誤りはない。
もっとも,審決の上記認定には,原告の主張する本願の意匠の形状,すなわち三次元的配列ができるように(なお,本願の意匠の意匠登録願(甲第2号証)には,原告が主張する配列のうち,上下方向のものを示す図はない。),凸字状の右上部及び左上部の切欠空間と,左下部及び右下部の突出部分を等しい大きさのものとし,切欠空間と概念的に同じ大きさの立方体を上部に4個,下部に6個結合させた形状であることは含まれていない。
しかし,審決は,原告の意見書(甲第9号証)の主張を受けて,請求人の主張として「(ア)本願に係る「花壇用ブロック」は,・・・上下左右に屈曲配列することができるのに対して,・・・」(審決書2頁)と摘示した上で,「請求人主張の(ア)の点については,本願の意匠のように上下左右に屈曲配列することができるのは,複数個の立方体を結合して構成されている必要があるが,上部に1個,下部に3個の立方体を結合して全体形状を凸状としたブロックが,本願の出願前に,広く知られていることから(例えば,公開実用新案公報所載の実用新案出願公開平3-21403号(判決注・甲第6号証)第4図に従来例として示されている「組み合せブロック」,公開特許公報所載の特開平9-78723号(判決注・甲第7号証)第1図〜第8図の「凸型コンクリートブロック」。)」(同3頁)として,続けて前記第3の2の冒頭後段において引用されたとおりの説示をしている。
すなわち,審決は,本願の意匠が,原告が主張する三次元的配列を可能にするためのものであることと,そのために立方体を組み合せた形状からなる特定の構成比を持つ必要があることを前提に,その創作容易性の判断をしているのである。したがって,原告の主張するとおりに本願の意匠の認定をしていないことは,それ自体としては創作容易性の判断の誤りをもたらすものとはいえないから,原告の主張は採用できない。
2【意匠法3条2項(創作容易性)の判断の誤り】について (1) 甲第3号証の意匠は,土留構造物についての実用新案に係るものであり,甲第4号証は縁石ブロックに係る公開実用新案公報(この公報には「この考案は,花壇まわりをかこう,1段積の連結する土留用縁石ブロックに関するものである。」(1頁)との記載がある。),甲第5号証は煉瓦インテリヤブロツクに係る公開実用新案公報(この公報には「本考案は・・・花壇等の周り縁を素人でも容易に構築し得ることを特徴とするものである。」(2頁)との記載がある。)である。
甲第3号証ないし第5号証は,いずれも,土留めに用いるブロックに関するものであるという点で,製品の分野が共通するといえる。したがって,各公報で想定されている用途が多少異なるとしても,土留めブロックの意匠を創作しようとする当業者が,これらのものを相互に参酌するのは自然なことである。審決が,甲第3号証に,甲第4号証及び第5号証の手法を適用する形で創作容易性の検討をしたことは,適切さに欠けるものではない。
そして,甲第3号証の意匠に係る物品の用途を花壇用ブロックとしつつ,それに,美感を高める見地から甲第4号証及び第5号証に係るレンガ積み模様を付与することは,容易に創作できることといえる。
(2) 本願の意匠の構成比を備えさせることの創作容易性について検討する。
ア 本願の意匠に係る製品分野に限らず,横長凸字状という形状そのものは,ありふれたものである。また,凸字状の形態のものを,複数個を積み重ね,あるいは並べて用いる場合に,原告のいう三次元的配列(上下を交互に逆さまにして組み合わせて直線状に配置する,前後方向に屈曲配置する,あるいは上下方向に屈曲配置する,という3種類の配列)をするということは,当業者はもちろんのこと,そうでない一般の人でも,極めて容易に思いつく,公知の事実ともいえると認められる(現に,甲第7号証の図5には,上記直線状の配列や前後方向への屈曲配列の例が開示されている。)。そして,この公知の三次元的配列を,凸字状の土留めブロックに適用することに,何ら阻害事由はない。
イ 原告のいう三次元的配列のように,凸字状のブロックを積み重ね,並べる場合に,正確に直線上に延ばせず,あるいは前後方向ないし上下方向に90度屈曲させられず,また突出した部分やへこんだ部分があると,美感を損ねることがあるから,そのようなことがないように各部の寸法を調整することは,当業者が当然なすことであるといえる。そして,凸字状の物体(ブロック)を上記のとおり三次元的に配列するに際し,接合させるのは凸字状の右上ないし左上の切欠空間と,左下及び右下の突出部であるから,これらを同一の大きさの立方体とすれば,切欠空間にぴったり突出部が収まることになって,出っ張りやへこみもなく,接合の方向次第で,きちんと直線状に延ばせ,あるいは前後方向ないし上下方向に正確に90度屈曲させられるということは,当業者であれば容易に思いつくことであると認められる。実際に,甲第7号証には,凸字状のブロックでそのような切欠空間及び突出部を持つものが開示されている(甲第7号証は凸型コンクリートブロツクに係る公開特許公報であり,同公報には「本発明はコンクリートブロックで構築する塀,防火構築物の外壁の耐震性を高め,壁面に凹凸を設け草花による緑化を可能にするコンクリートブロックに関するものである。」(1頁左欄),「その他本発明の凸型コンクリートブロック(1)を一列に並べるだけで露地花壇の縁枠ができ,平面に敷き詰めることにより街の歩道を簡単に構築することができる効果がある。」(4頁右欄)との記載がある。甲第7号証の物品は,甲第3号証ないし第5号証の物品と製品分野が共通するものであり,甲第3号証の意匠の改変に際し参酌できることは明らかである。)。
そして,横長凸字状のブロックの上の部分の長さを切欠空間4個分,下の長さを6個分とすることは,一つのブロックの長さをどの程度のものにするかという観点から,当業者が適宜設定し得ることに過ぎない(その長さがどのようなものであっても,上記切欠空間及び突出部が,等しい大きさの立方体であれば,原告のいう三次元的配列は可能である。)。
以上のとおりであるから,甲第3号証の意匠に,本願の意匠の構成比を備えさせる創作は容易である,と認められる。
ウ 原告は,甲第3号証及び第7号証の実際の形状及び意図された形状をもとに,本願の意匠の三次元的配列や構成比が,それらから出てこない旨主張する。
しかし,三次元的配列が極めて容易に思いつくものであること,その発想に基づく構成比も容易に創作できることは,上記のとおりである。
甲第3号証の意匠それ自体が,本願の意匠の構成比を備えていないとしても,そのことは問題とならない。本件で問題となるのは,それに当該構成比を備えさせる創作の容易性だからである。
甲第7号証のブロックが,使用態様上その高さ方向の長さが不問とされるものであったとしても,そのことは,現に同号証に立方体を結合させたと認められる凸字状のブロックが図示されている以上,問題となるものではない。また,それが,レンガ積み模様を呈することができないものであるとしても,立方体を結合させたものであると認識することの支障となるものではない。
(3) 以上述べたとおり,本願の意匠は,甲第3号証の意匠を出発点として,これに美感の見地から周知のレンガ積み模様を付与することとし,次に,公知ともいえる発想である凸字状ブロックの三次元的配列を可能にするために,切欠空間及び突出部の寸法を変更し,当業者が適宜なす長さの設定をしたというものであるから,当業者が容易に創作できたものであるといえる。
審決も,その説示によれば,単に公知の形態を個別に引用しただけではなく,上記のとおり,ブロックにおける凸字状の形態の周知性,レンガ積み模様の周知性とその適用を検討し,これを肯定した上で,原告の主張する三次元的配列を可能にするための形状の周知性を認定し,それに基づき本願の意匠の構成比となるよう変更することは容易である,としているものであり,三次元的配列を思いつくことの容易性については明言していないものの,それは引用例に言及するまでもないありふれた手法であるとして,当然の前提としていると思われるから,その本願の意匠の創作容易性の論理構成は,本判決のものと同趣旨と理解できる。そして,これは,本願の意匠を当業者がありふれた手法により創作できたとするための具体的な事実に十分該当するものといえる。
なお,審決は,土留め用の凸字状ブロックを基にして,これに,細溝によりレンガ積み模様を呈する土留めブロックの引例と,構成比の微調整をするための立方体を結合させた形態のブロックの2種類の実例を挙げているに過ぎず(なお,この2種類の実例は,後記のとおり,周知の形状を示すものとして例示されているに過ぎない。),これをもって,際限なく公知の引例を用いているとはいえない。
これらの物品が異なる分野のものでないことは,既に述べたところから明らかである。
したがって,意匠法3条2項の判断の誤りをいう原告の主張も,採用できない。
(4) なお,原告が挙げる甲第19号証及び第20号証の花壇用土留めブロックは,レンガ積み模様を呈する部分が,単なる細溝部ではなく,八角錐台様の形状をしており,また,そのレンガ積み模様を呈し凸字状に見える面が正面になるようにした場合の,奥行き方向の寸法と,幅や高さ方向との寸法の比が,本願の意匠のそれと比較してずっと大きい(奥行き方向の寸法が長い)ものである。本願の意匠とは形状が大きく異なるから,それらが登録されたことは,本件の判断の参考になるものではない。
3【意匠法52条・特許法153条2項違反】について 1で引用した審決の説示からは,甲第6号証及び第7号証は,凸字状のブロックの縦・横・奥行きの構成比を,本願の意匠のような複数の配列ができるようにするために変更する創作の容易性を補強する資料の一つ,すなわち三次元的配列を可能とする形状(立方体の結合)が本件出願前から広く知られており,ありふれたものであることを示すものとして例示されているに過ぎないと認められるのであって,このことをもって,審判体が,当事者の申し立てない理由について審理したことになるといえないことは明らかであり,意匠法52条において準用する特許法153条2項の手続違反をいう原告の主張は採用できない。なお,原告の主張が意匠法52条において準用する特許法150条5項の手続違反の主張をも含む趣旨であるとしても,上記のように,審決の周知の形状であることを示すものとして文献を引用したことをとらえて,職権で証拠調べをしたことに当たるとすることもできないから,同条項の手続違反があるということもできない。
4 結論 以上のとおりであるから,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく,その他,審決を取り消すべき事由は認められない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久
  • この表をプリントする