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関連審決 審判1964-2489
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  意匠公報に掲載 /  頒布された刊行物 /  類似する意匠 /  通常の知識を有する者 /  類似の意匠 /  意匠の類否 /  登録意匠 /  無効審判 / 
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事件 昭和 41年 (行ケ) 167号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1970/01/29
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第一、当事者の求めた裁判 原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和四一年八月二六日、同庁昭和三九年審判第二四八九号事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求めた。
第二、請求原因一、特許庁における手続の経緯 被告は登録第二〇七七二〇号意匠(意匠に係る物品「可撓伸縮ホース」、登録出願昭和三六年三月二八日、登録昭和三六年一一月二七日。以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。原告は昭和三九年五月二一日特許庁に対し本件登録意匠につき登録無効審判を請求した(昭和三九年審判第二四八九号)。特許庁は右審判事件につき、昭和四一年八月二六日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年一〇月二〇日原告に送達された。
二、本件審決理由の要点 本件登録意匠は、ホースの周側に隆起筋条螺旋をやや間隔をおいて現わし、その隆起筋条の間を透明にして管肉内に介在させたメリヤス網目が透明部の表面に透して見えるようにしたものである(別紙第一図参照。)。これに対し、請求人(原告)が本件登録意匠の登録出願前公知であると主張する登録第一四六八三四号類似第一号の意匠(大正一〇年農商務省令第三二号意匠法施行規則第10条による指定物品第二四類ビニールホース、登録出願昭和三三年九月二〇日、登録昭和三四年四月九日。以下「引用意匠」という。)は、管体を透明にして管肉内に介在させたメリヤス網を表面に透かして表われるようにしたものである(別紙第二図参照。)。
そして両者を比較すると、両者は管肉内に介在させたメリヤス網模様が表面に透かして見えるようにした点では一致するが、引用意匠には螺旋状に現われた隆起筋条が全くない。本件登録意匠の前記隆起筋条は外観上強く現われているから、両意匠を全体として観察すれば、両意匠を類似した意匠と認めることはできない。
また、請求人(原告)の主張するように、螺旋状に隆起筋条の現われた可撓伸縮ホースが従来から公知であり、管体を透明にして管肉内に介在させたメリヤス網を表面に透かして見えるようにした引用意匠が本件登録意匠の登録出願前公知であるとしても、本件登録意匠はその外観上その何れとも相違する一つのまとまつた意匠を構成し、意匠的効果を異にしているから、本件登録意匠は右両者に基づいて容易に推考できる意匠とは認めることができない。
三、本件審決を取り消すべき理由 本件登録意匠および引用意匠の構成は審決が認定したとおりであるが、前者が後者に類似しないとした判断および容易に推考できる意匠ではないとした判断は誤りであるから、本件審決は取り消されるべきである。
すなわち、
(一) 本件登録意匠は、その登録出願前頒布された刊行物に記載された引用意匠に類似する意匠である。すなわち、ホースには従前から螺旋状の隆起筋条を備えたいわゆる蛇腹ホースと右のような筋条のない滑面円筒ホースの二種類があり、両者は形状は違つていてもホースとしては共通の物品であるから、両意匠の意匠に係る物品は同一である。そして、引用意匠は、円筒滑面ホースの管肉を透明にしてこれにメリヤス模様を現わしたものであり、本件登録意匠は蛇腹ホースの隆起筋条を除く管肉を透明にしてこれに右と同様のメリヤス模様を現わしたものに当るから、両者は類似する意匠である。
(二) 本件登録意匠は容易に創作することができる意匠である。すなわち、本件登録意匠の登録出願前、前述の蛇腹ホースの形状および引用意匠は日本国内において広く知られていた。そして、本件登録意匠は右蛇腹ホースの隆起筋条を除く管肉を透明にして引用意匠と同様管肉内にメリヤス網目を介在させたものに過ぎないから、本件登録意匠は、ホースの製造に関し通常の知識を有する者が蛇腹ホースの形状および引用意匠に基づいて容易に創作することができる意匠である。このことは、蛇腹ホースは、先ず円筒滑面ホース体を作つた後にその外周に金属芯入りの力筋を螺旋巻きして作るという製作順序を考えれば一層明瞭である。
第三、被告の答弁 本件の特許庁における手続の経緯、
本件登録意匠および引用意匠の構成ならびに本件審決理由の要点が原告主張のとおりであること、両意匠の意匠に係る物品が同一であること、本件登録意匠の登録出願前、引用意匠が頒布された刊行物に記載されていたこと、原告主張の蛇腹ホースの形状および引用意匠が日本国内において広く知られていたことは認めるが、原告のその余の主張は争う。
本件登録意匠が視覚を通じて美感を起させるのは、蛇腹ホースの隆起した螺旋状筋条に当る無地模様の個所と谷になつた螺旋状の網目模様の個所とが隣り合つていて、高く浮き出した無地模様から成る斜縞と低く沈んだ網目模様から成る斜縞とが長手方向に沿つて交互に現出されている特異な段違い縞模様をなしているからである。したがつて、網目模様のみで美感を起させている引用意匠とは、その意匠の内容およびそれに随伴する意匠効果が大きく相違しているから、両者は類似する意匠ではない。
本件登録意匠は、前述のとおり、外観上、蛇腹ホースの形状および引用意匠のいずれとも相違する一つのまとまつた意匠を構成しており、その意匠的効果は全く特異のものであるから、容易に創作できる意匠ではない。このことは引用意匠が昭和三四年一一月九日意匠公報に掲載されてから本件登録意匠が登録出願されるまで約一年半の間、本件登録意匠と同一または類似の意匠が考案されたことがなく、そのような商品が市場に出たことも全くなかつた事実からみても明らかである。
第四、証拠(省略) 理 由一、本件の特許庁における手続の経緯、本件登録意匠および引用意匠の構成ならびに本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
二、引用意匠が本件登録意匠登録出願前頒布された刊行物に記載されていること、
本件登録意匠と引用意匠の意匠に係る物品が同一であることは、当事者間に争いがない。ところで、二個の意匠の類否は、意匠に係る物品の製作方法や内部構造の類否とは無関係に、出願された意匠そのものの外観を全体的に観察し、その意匠的効果、すなわち視覚を通じて美感を起させる態様の類否によつて決すべきである。そこで、本件登録意匠と引用意匠および従来から公知であつたことについて当事者間に争のない螺旋状に隆起筋条の現われた可撓伸縮ホースと対比するのに、当事者間に争のない本件登録意匠および引用意匠の構成によれば、両意匠は、ホースの管肉内に介在させたメリヤス網目模様が表面に透かして見えるという点では共通するが、本件登録意匠には隆起した螺旋状筋条があるのに反し、引用意匠には全くこれがないこと、また、公知の可撓性伸縮ホースも本件登録意匠もホースに螺旋状に隆起筋条が現われているという点では共通するが、本件登録意匠でホースの管肉内に介在させたメリヤス網目模様が表面に透かして見えるのに反し、公知の可撓性伸縮ホースではこのようなものが見られないことがいずれも明らかである。そして、右の事実に成立に争いのない甲第一号証および第三号証を併せ考えれば、本件登録意匠は、右の隆起した螺旋状筋条が高く浮き出した無地の斜縞をなし、筋条と筋条との間が低く沈んだ網目模様から成る斜縞をなし、両者が長手方向に沿つて交互に現出し、そのコントラスト(対比)とリピート(繰返し)により看者の視覚を通じて美感を与えるものであり、引用意匠および前記の可撓性伸縮ホースのいずれとも全く異なつた意匠的効果を有するものと認めるのが相当である。他に右認定を動かすに足りる証拠はない。したがつて、登録意匠が叙上の二者と類似の意匠であるという原告の主張は採用しがたい。
三、次に、原告は、本件登録意匠は前述の可撓性伸縮ホースおよび引用意匠に基づいて容易に創作することができる意匠である旨主張する。ところで、意匠は意匠に係る物品について実施されるものであり、物品と一体をなしているものである点で発明、考案と異なるから、意匠法第3条の規定は、これに対応する特許法第29条または実用新案法第3条とはいささか趣を異にし、第一項、第二項ともに意匠の登録要件として出願意匠に創作性(オリジナリテイ)があることを要求する規定であると解するのを相当とする。すなわち、意匠法第3条第1項は同一または類似の物品の公知意匠との関係で創作性を欠く意匠、すなわち同一または類似の意匠の登録を防止し、同条第二項は、同一または類似の物品以外の物品と一体をなした周知の意匠あるいは周知の形状模様もしくは色彩またはこれらの結合との関係で創作性のない意匠、すなわちいわゆる転用意匠(たとえば、米国の自由の女神の像をかたどつたラジオ受信機のごとし。昭和四二年七月二五日言渡の当庁昭和三七年(行ナ)第一八七号事件判決参照)の登録を防止しようとするものである。したがつて、同一分野の物品(本件登録意匠、引用意匠、前記可撓性伸縮ホースの形状は、
いずれもホースという同一分野に属する物品にかかるものである。)の関係において本件登録意匠が登録要件を備えるかどうかを判断するには、もつぱら同条第一項によるべきであつて、同条第二項の適用はないものと解するのが相当である。そして、本件登録意匠が同条第一項の登録障碍事由に該当するものでないことは先に判示したとおりである以上、同条第二項に該当することを主張してその登録を争う原告の主張は、当裁判所の採用しえないところである。
四、よつて、本件審決には原告主張の違法はないから、その取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 服部高顕
裁判官 石沢健
裁判官 滝川叡一
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