関連ワード | 形状 / 模様 / 部品 / 登録意匠 / 損害賠償 / |
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事件 |
昭和
41年
(ワ)
5900号
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 1969/03/07 |
権利種別 | 意匠権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び証拠別紙のとおり。 |
事実及び理由 | |
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全容
一、原告が別紙第一目録記載の登録意匠(登録第一二〇八七四号)の権利者であること、被告が別紙第二目録(一)ないし(三)記載の金銭登録機を原告主張の期間製造、販売していたことは、当事者間に争いがない。 二、そこでまず別紙第二目録(一)記載の金銭登録機の意匠が原告の登録意匠と類似するかどうかについて判断すると、成立に争いのない乙第九号証の一から四まで、同第一〇号証、被告製品であることに当事者間に争いのない検甲第一号証と鑑定人【A】の鑑定の結果を総合すれば、次のように認定することができる。 本件登録意匠は別紙第一目録表示のとおり、角台形の台箱の上に、後部を高く、 前部を低く構成し、前部の上面を前下りにしてこれと後部にまたがつてラツク状のキー列をやゝ右寄りに設けたキヤビネツトを載せ、かつ同キヤビネツトは全体を横三段階に形成し、第二段上面を前下りに傾斜させて前部とし、後部をカマボコ状に最上段として載置した形体をなしている。これに反して、別紙第二目録(一)記載の物件の意匠は、角台形の台箱上に前部と後部との縦二列に構成し、後部を高く、 前部を低くしてこれを前下りの傾斜面としたキヤビネツトを載せ、その傾斜面のやゝ右寄りにラツク状の刻みのあるキー列を設けた形体となつていて、両者はキヤビネツトの形体の構成方法に差異がある。のみならず、本件登録意匠のキヤビネツト後部最上段の高さは前部上段の高さの約一・五倍であるのに対して、別紙第二目録(一)物件のそれは約一・七倍であり、しかも本件登録意匠のキー列が後部前壁のほゞ全部にまたがつているためキー列の後は前壁を残さないのに対して別紙第二目録(一)物件の意匠では後部前壁がキー列の後に高く壁面となつている。これらの差異の結果本件登録意匠が全体として低く安定しやゝ繁雑な感じを与えるのに対し、別紙第二目録(一)物件の意匠は、立体的で軽快かつ簡明な印象を与えており、両者の意匠は見る者にそれぞれ別異のものとの印象を与える。したがつて、両者の意匠は類似していないということができる。 以上の認定に反する甲第四号証、同第五号証の見解は、前掲諸証拠と対比するときはとうてい採用することができない。 三、つぎに別紙第二目録(二)(三)記載の物件の意匠は同(一)物件の意匠と比較してほとんど同一で、その差異が極めて僅かなものであることは、当事者間に争いがない。そして、その差異は意匠構成の上で問題にするに当らないものと認められるから、(一)物件の意匠が本件登録意匠と類似しない以上、(二)(三)物件の意匠もまた本件登録意匠とは類似しないものというべきである。 四、よつて、別紙第二目録(一)ないし(三)記載の物件の意匠が本件登録意匠と類似するものであることを前提とする原告の本訴請求は、その余の判断をするまでもなく、失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
(別紙)第一、原告の申立一、被告は原告に対し金二、五〇〇万円とこれに対する昭和四一年七月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。 二、訴訟費用は被告の負担とする。 との判決と仮執行の宣言を求める。 第二、請求原因一、訴外【B】は次の意匠権を取得した。 出願昭和三一年四月七日登録昭和三一年七月二三日登録番号一二〇八七四号名称金銭登録機の形状登録請求の範囲別紙第一目録記載のとおり【B】は昭和三七年九月三〇日原告に対してこの意匠権を譲渡し、昭和三八年五月一七日その旨の登録をした。原告はその後この権利を実施して来た。 二、被告は昭和三八年五月一八日から昭和四一年七月二三日までの間、別紙第二目録(一)ないし(三)記載の手動式金銭登録機(NCR八〇号レジスター五型、同二型、同七型)を合計一一、一〇〇台製造販売した。 三、本件登録意匠の構成は、次のとおりである。 (一)下底に設けられた台箱1の形状は、平面形が奥行の長いほぼ矩形で、高さが横巾の約三分の一の角台形をなし、前面に矩形の枠縁10が形成されている。 (二)その台箱の上に載置されたキヤビネツト2の外形は、a、奥行の約三分の一の後部21で、その高さがキヤビネツトの前面26の高さの約三倍の高さに形成され、 b、その後部21の付根部分から前方が前下りの約二〇度弱の傾斜面25をなし、 c、両側面2324が台箱1の両側面より少し内方に位するほぼ垂直面をなし、 d、背面22が略矩形の僅かに前方に傾斜した垂直面をなしている。 (三)キヤビネツト2の前記傾斜面25のやや右寄りに矩形のかなり厚みのある枠を形成し、枠の両側部4142の上緑が孤状をなし、その両側部41、42間にキー列3が現われている。 (四)キー列3の各上縁は孤状の鋸歯形段階をなし、前記枠の両側部4142の上縁より僅かに突出している。 (五)キヤビネツト2の傾斜面25の右方端部に小さいだ円形穴7が設けられ左方部にはかなり大きな矩形の区画部8が設けられている。 (六)キヤビネツト2の右側方23に長い板状の腕をもつ大きなハンドル5と、 短い腕をもつ小さなハンドル6が突設されている。 (七)キヤビネツト2の左側面24には、大きな不等辺四辺形の区画部(蓋板)11が形成され、そのほぼ中央に円形摘み12が突設され、かつ小円形部13と斜線部14が表示されている。 (八)縁枠左側部42に接してハンドル15が設けられている。 (九)キヤビネツト2の前方に接して台箱1の上面に薄い矩形の板9が設けられている。 四、一方被告の製造販売した別紙第二目録(一)の金銭登録機(NCR八〇号レジスター五型)の意匠の構成は、次のとおりである。 (一)’下底に設けられた台箱1の形状は、平面形が奥行のやや長い矩形で、高さは横巾の約三分の一の角台形をなし、前面に抽出が入るように矩形の枠縁10が形成されている。 (二)’台箱1の上に載置されたキヤビネツト2の外形は、 a’、奥行の約三分の一の後部21でその高さがキヤビネツトの前面26の高さの約三倍弱の高さに形成され、 b’、 その後部21の付根部分から前方を前下りの約二〇度弱の傾斜面25となしc’、両側部2324が台箱1の両側面より少し内方に位する僅かに傾斜した垂直面をなし、 d’、背22がほぼ矩形の僅かに前方に傾斜した垂直面をなしている。 (三)’キヤビネツト2の前記傾斜面25の中央よりやや右寄りに、矩形のかなり厚みのある枠4を形成し、枠4の両側部4142の上縁が孤状をなし、その間にキー列3が現われている。 (四)’キー列3の各上縁は孤状の鋸歯形段階をなし、前記枠4の両側部4142の上縁より僅かに突出している。 (五)’キヤビネツト2の傾斜面25の右方部には、二つの小さい矩形の穴7が設けられ、左方部にはかなり大きい矩形の区画部8が設けられている。 (六)’キヤビネツト2の右側面23には長い板状腕をもつ大きいハンドル5が設けられ押上げ式の小さいハンドル6aがキヤビネツト2の前面26の左方部に設けられている。 (七)’キヤビネツト2の左側部24には、大きな不等辺四辺形の蓋板11が蝶着され、その一側部に小円形をなす錠孔13が設けられている。 (八)’傾斜面52の前方部に矩形孔から突出したハンドル6の先端とだ円形の機械番号表示板17が設けられている。 (九)’キヤビネツト2の後部の前面21と背面22には各矩形の窓孔1618が(本機による積算数値を表わすように)穿たれている。 五、また、被告の製造販売した別紙第二目録(二)の金銭登録機(NCR八〇号レジスター二型)の意匠構成は、同目録(一)の図面正面図中16の長方形の窓を欠くのみでその他は前記五型と同一である。また、同目録(三)の金銭登録機(NCR八〇号レジスター七型)の意匠構成は、同目録図面左側面図中12の直線状枠の突設されているほかは、前記五型と同一である。 六、そこで本件登録意匠と被告製品とを対比すると、本件登録意匠の要部である前記(一)ないし(七)は、別紙第二目録表示の各意匠の要部である(一)’ないし(七)’に対応し、それぞれその主要部が同一である。 ただ、微細な点では被告主張のように差異があるとしても、それらはいずれも意匠構成の要部ではなく、金銭登録機全体の形状、模様として視覚による美感上の区別を与えるものではない。したがつて、別紙第二目録表示の各意匠は、本件登録意匠と類似する。 七、(一)被告は、昭和三八年五月一八日から昭和四一年七月二三日まで別紙第二目録(一)ないし(三)の金銭登録機を合計一一、一〇〇台販売し、その売上金額は五億七二〇〇万円に達するものであるが、利益率は販売額の五%であるから、 被告は販売により二八六〇万円の利益を得た。 (二)被告は前記金銭登録機の製造販売により故意または過失をもつて本件意匠権を侵害するものであり、原告はこの侵害により被告のあげた利益二八六〇万円の得べかりし利益を喪失し、同額の損害を被つたことになる。そこで、原告は被告に対して、損害賠償として内金二五〇〇万円を請求するとともに、これに対する本件訴状送達の翌日である昭和四一年七月六日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 第一、被告の申立一、原告の請求を棄却する。 二、訴訟費用は原告の負担とする。 第二、答弁一、認める。 二、認める。 (一)認める。但し正確に表現すれば、 a、奥行が横巾の一・二倍強高さは横巾の〇・三六倍弱である。 b、前壁は両側から略四分の一位まで彎曲させて出張らせ、その出張つた頂点を直線で結んだ形状となつている。 a、高さの点を除き認める。高さは約三倍ではなく約二・六五倍であり、又キヤビネツトは三段階に横に区画された状態に形成され、その区面線36、37も直線をもつてなされており、後高部21の前面屈折線も直線をもつてなされ、屈折も鋭角である。 b、認める。ただし、第三段階21の台箱1からの高さが前面の高さの二・六倍で第二段階の前方傾斜部は第三段階の高さの台箱からの高さの約三分の二強の高さを基点として前下りの側斜面となつている。 c、ほぼ垂直面たる点を除き認める。ほぼではなく垂直である。すなわち、第三段階の両側面は前方傾斜部の両側面2324より少し内側に位した垂直面をなしている。 d、認める。 (三)認める。しかし、両側枠4142とその前部43とが一体ではなく、組合わされ、両側枠4142の形状は一つの大きな孤状を形成してある。又、キー3の前部において、その半分を櫛状に形成し、上面を孤状に形成してなる枠体45を該櫛状部をキー間に挿入し、他半分を前枠43に載置した如く設けその後方部において第三段階21の前面の上部屈折面に横長の窓孔20aを有する横長方形の枠体20がその上縁を折曲げて第三段階の上面に載置された如く取付けてある。 (四)認める。 (五)だ円形穴及び区画部の点を除き認める。だ円形穴ではなく、両側が円孤状をなす長穴であり、又区画部ではなく窓孔を有する区枠部である。なお、キヤビネツト2の傾斜面25のキー枠の左に残した部分において、その中央部に縦長方形の窓孔8を形成し、その窓孔に縁枠が設けてあり、該窓孔の後部に直立板28を斜めに取付けてある。 (六)認める。しかし、これを詳記すれば、 a、第一段階と第二段階との境界線のほぼ中央部にハンドル5を軸着し、 b、ハンドル5の形状は腕部を平たく軸部から先端に行くに従つて漸次巾狭く形成し、その先端部を屈曲させその先端部に先太りの握手を付した形状に形成し、 c、第三段階の屈折上面下方位置にホイール32’を取付けd、第二段階の前方部に、扁平な腕部でその先端部に握手を取付けたハンドル6を軸着してある。 (七)斜線部の点を除き認める。斜線部ではなく、縦斜状の狭い間隙である。しかしこれを詳記すれば、 a、第二段階と第一段階に跨り、傾斜部の側面に不等辺四辺形の区画板11を設けてあり、該区画板も第一段階と第二段階との境界線に沿つた区画線が設けられており、上縁の突出片35は第二段階の傾斜縁に沿わせており、区画板の略中央部にホイール12を取付け、ホイールの右下寄りに鍵穴のある円形座盤13を設け、区画板の左側部に縦斜状の狭い間隙14が設けられその間隙に直立板28が挿入されており、 b、第三段階の屈折下面の側面には小さい丸窓孔32’が形成されている。 (八)認める。 (九)認める。ただし、キヤビネツトの前方台箱の上面において横巾が台箱の〇・七倍強、 奥行が台箱の〇・二倍高さが台箱の高さの〇・〇六倍強の台板9が載置された如く取付けてある。 (一)’認める。しかし、奥行は横巾の約一・二倍弱、高さは横巾の約〇・三二倍弱であり、前壁は扁平面である。 a’、奥行の約三分の一の点を除き認める。後高部21と前方の傾斜部52とが、 縦に区画された状態に形成され、その区画線が孤状に出張つた線となつており、後高部21の高さが、前面の高さの三倍で、前方傾斜部が後高部21の前面26の約二分の一強の高さを基点として前下りの傾斜面となつている。 b’、約二〇度弱の点を除き認める。二〇度弱ではなく二〇度強である。 c’、認める。ただし、後高部21の両側面は前方傾斜部の両側面2324より少しはみ出し、台箱1の両側面より少し内方に位し、上方に行くに従つて孤状に傾斜した面をなしている。 d’、認める。 (三)’枠4の両側部4142の上縁が弧状をなしている点を除き認める。枠4の両側部4142の上縁は単なる弧状ではなく大小二個の連続弧状である。しかも本件意匠が両側枠4142と前枠43とが一体ではなく組合わされているのに反して一体に形成されているのみならず、キー列3の間にはその前部において前枠43と一体となつた薄い隔壁がキーより低く設けてある。 (四)’認める。 (五)’認める。しかし、後高部21の前面でキーの右側上部に細長い横長方形の窓孔16が形成され、キヤビネツト2の傾斜面25のキー枠4の左に残した部分において縦長方形の窓孔を形成し、これに押枠86が横設されている。又矩形穴7と云つてもこれはキー枠4の右に残つた傾斜面に横長方形の小さい窓孔とホイールを四分の一位顕出させて並置させたものである。 (六)’認める。詳細には、 a、後高部21の下方端にハンドル5を軸着し、 b、ハンドル5の形状は腕の部分を平たく少々先細りでしかも弧状に彎曲させ、その先端に先端部を膨出させた握手を直角に取付けてあり、 c、後高部21の上部には小さい丸窓31が形成され、 d、キヤビネツト前低部右側面のほぼ中央部に鍵穴のある円形座盤33が形成されている。 (七)’認める。 しかし、 a、傾斜部にその側面により少々小さ目の不等辺四辺形の扉板11をその後縁において蝶番をもつて取付け、前縁の近くに鍵穴のある円形座盤13とその上下に一つづつ鋲を設けてある。 b、しかし、本件登録意匠のような丸窓32’はない。 (八)’認める。しかし、本件登録意匠のように、キー枠4左側枠42の下方部には小形のハンドル15は設けられていない。 (九)’認める。更に、キヤビネツト2の前壁下方に扁平で屈折した操作枠6aが設けられ、その頂部に前高傾斜状の握部を取付けてある。又本件登録意匠の如く、キヤビネツトの前方の台箱の上面において台板9が設けられてはいない。 五、認める。 六、原告の本件登録意匠のうち、(1)恰も安楽椅子をなすように長方形の角台形の台箱の上に後部をかなり高く形成し、前部を一段低く、前部の上面を前下りの傾斜面に形成した形状と(2)更に前下りになつた傾斜面に設けたキーが、上縁部が段階をなして側壁の上縁よりも弧状に高くなつていて、少しずつ間隔を置いて並列した形状、模様の二点については金銭登録機において本件登録出願前すでに当業者間において公知、公用の形態であるが、本件登録意匠と被告製品とを審美感の点より比較してみる。 (一)正面からみた場合本件登録意匠は台箱の前壁が両側から略四分の一位まで彎曲させて出張らせ、その出張つた頂点を直線で結んだ形状になつていて、該台箱の上にキヤビネツトを三段階に構成し、第三段階は第二段階の約三分の一後方部に設置し、台箱からの高さが前壁の高さの二・六五倍でその前面は「く」の字状に届折させて出張つた面にしてあるので、前壁も段状になつており、第三段階も段状の感じを与え、キヤビネツトの第二段階の傾斜面に第三段階に接してキー枠とキーを配設し、キーの高いところは第三段階の高さに近くなつており、しかもキーの後方部で第三段階の屈折上面に横長窓孔を有する横長方形の枠体がその上縁を折曲げて第三段階の上面に載置したように取付けられてあり、キー枠の左には先太りの握手を直角に取付けた扁平のハンドルが取付けられ、第三段階の屈折下面の左側部には横長の窓孔が、第二段階の斜面左側部が縦長の窓孔を有する枠体が取付けられ、その後方部に直立板が装設されてあり、右側部には縦長で両端が丸形をなす窓孔を設け、キヤビネツトの左右両側面にホイールが取付けられ、又第二段階と第一段階の境界線の路中央にはその先端部を先太にした握手を取付けた扁平の大きいハンドルが、第二段階の前方部には扁平でその先端部に先太りの握手を取付けた小型ハンドルが、それぞれ軸着されており、キヤビネツトの前方の台箱の上には台板が載置された如く取付けられているのであり、このように多数の部品と窓孔が取付け配設され、段階稜線及びこれらの縁、線の鋭角などと相まつて複雑なしかもずんぐりとした粗野で男性的かつ野暮つたい感を与えている。これに対して被告の意匠は、台箱の抽出枠が一種の模様を構成し、該台箱の上に約二分の一後方部を前面の高さの三倍に、しかも前面を弧状に前に出張つた面とし、その弧状は前面の側面に続いた段状の稜線をなして台箱まで下降させ、その側面もやや上細りの傾斜をもたせ、前部は後高部の約二分の一の高さから前下りの傾斜面として形成したキヤビネツトを載置し、その傾斜面に後高部に接してキー枠キーを配設し、また傾斜面の左前部に縦長方形の窓孔が穿設され、その窓孔には大小のプラスチツク製窓が間隔を設けて配設されており、左傾斜面に横長方形の小さい窓孔とホイールをその上部を僅かに顕出させて並設し、キヤビネツトの前部傾斜面の部に菱形長方形状の押扞が設けられ、後高部の前面でキーの右側上部に細い横長方形の窓孔が、キヤビネツトの前壁の左側下方に扁平で屈折した操作扞が、その頂部に前高傾斜状の握部を取付けてあり、キヤビネツトの右側に先端部を膨出させた握手を直角に取付けて成る扁平なハンドルを取付けてある程度で、複雑かつ多数の部品及び窓孔が施されておらず、台箱、キヤビネツト、キー枠等の円味と相まつてスマートでふつくらとした女性的暖か味があり、かつ明るく近代的な単純化された美しさを感じさせる。 (二)平面的に見た場合原告の本件登録意匠は前方に出張りを有する縦長方形の中に段階式に形成し、しかも傾斜区画線が明瞭な構成をもつキヤビネツトを配設し、数多くの部品が至るところに取付けられ、また数多くの窓孔が穿設され、これに窓枠が設けられているので平面から見た感じと同様繁雑で野暮つたい感じである。 これに対し被告の意匠は縦長方形の中に下から上方に従つて少々細くなつているキヤビネツトを配設し、これに取付けられた部品も少く、穿設された窓孔なども少ないので平面から見た感じと同様簡素ですつきりした落着いた感じを与える。 (三)右側方から見た場合原告の本件登録意匠は右側辺に出張りのある横長方形上に段状のキヤビネツトが載置され、第三段階の屈折下面から大きく弧状に彎曲し下方が流れたような形状のキー枠が設けられ、この彎曲線状に段状のキーを配設し、その下方に弧状に彎曲した前枠が配置され、第三段階の屈折上面下方部にホイールが、第二段階の左方部に小ハンドルがそれぞれ取付けられ、第一段階と第二段階の境界線上の略中央部に先細りでその先端部が屈曲しこれに握手が取付けられているハンドルが軸着され、キヤビネツトの左方の横長方形上に平板が載置された如く配設されているので、キヤビネツトの各段階線が明瞭であり、かつその線が直線で屈曲点などと結ばれている如くなつており、その模様を形成する部品の数が多く、したがつて繁雑でずんぐりした感じを与える。被告の意匠は横長方形の上にキヤビネツトが載置され、これがその約二分の一右方部をキヤビネツトの高さの三倍の高さに形成し、その右側線が上方に従つて内側に傾斜し、左側線が弧状に出張つた線となつていて上縁が右下りになつており、後高部の該弧状線の約二分の一の高さの位置から左傾した傾斜線となり、該斜線上に大小二つの弧状輪廓があつて、その大きい輪廓線上に段状の線廓が配置され、後高部の下辺部中央に少々先細りで弧状に彎曲したハンドルを軸着し、該後高部の上部に小さい丸窓孔を、傾斜部の略中央部に鍵穴のある円型座盤をそれぞれ設け、キヤビネツトの前壁の左側下方に扁平で屈折した操作扞がその頂部に握部を取付けて装設されていて、それぞれの輪廓線が脹らみを持つており、しかも模様を形成するような部品、穴などが少く、清楚にしてスマートな落着いた印象を与える。 (四)左側面から見た場合ともに台箱、キヤビネツト、キーおよびキー枠の形状は同じであるが、原告の本件登録意匠は、キヤビネツトの第二段階と第一段階に跨り、その境界線に沿つた区画線を設けた不等辺四辺形の区画板をその上縁を第二段階の傾斜線に沿わせて取付け、右区画板の略中央にホイールを取付けて、その右下寄りに鍵穴のある円形座盤を設け左側部に縦斜状の狭い間隙を設けてこれに直立板を挿入し、キー枠の側面に取付けられた小型ハンドルが右直立板の向側にあつて、第二段階の前方側面に取付けられた小型ハンドルの三分の一上部を眺見でき、キヤビネツトの明瞭な段階線、 屈曲点間が直線で結ばれていて数多い部品などと相まつて複雑かつ野暮つたい印象を受ける。 これに対して被告の意匠は傾斜部にこれより少々小さめの不等辺四辺形の扉板がその左辺において蝶着され、右辺の近くに鍵穴のある円型座盤を設け、右側面に取付けられているハンドルが後高部の左にその三分の一位上部を眺見でき、前壁の操作扞も右側面から見た場合と同様に眺見されて、その感じも清楚な中に暖か味のある印象を受ける。 (五)背面から見た場合原告の本件登録意匠は、横長方形の台箱の上に、三段階にしかも上部第三段階は、下方第一、第二段階よりも巾狭く構成したキヤビネツトを載置し、各段階の境界線が明瞭であり、第二段階の下方右側と第三段階の上方左側にはホイールが突出した如く取付けられ、第一段階と第二段階の境界の右側には先太りの握手を直角に取付けてある大きいハンドルが軸着されてあり、また第二段階の右側にも同様形状の小さいハンドルが軸着され、第三段階の上面にはキー後方部の窓孔枠の上縁が屈曲して載置してあるので、その複雑な形状及び模様から野暮つたい印象を受ける。 これに対し被告の意匠は、横長方形の台箱の上に少々丸味を持つた略梯形状のキヤビネツトの後高部が載置され、その上面が前高傾斜状になつているため該上面が少少眺見でき、その背面は扁平で右上部には横長方形の窓孔が穿設されており、左側部には先端の膨出している握手を直角に取付けたハンドルが軸着されていて、このほかには何らの模様もなく、簡潔にしてスマートな中にふつくらとした暖か味のある印象を受ける。 以上のような各方向より見た差異と相まつて、両者を全体的に見た印象は、原告の本件登録意匠が繁雑で野暮つたい印象を受けるとともに、ずんぐりとしていて男性的で、粗野な感じを受けしかもスマートさがないのに反して、被告の意匠は清楚かつ簡潔な印象の中にふつくらとした女性的な暖か味を感じさせ、しかも洗練され近代的なスマートさの中に落着きのある審美的趣味感をいだかせるものである。このように、意匠構成と美感において格段の差異を有するものであるから、別紙第二目録表示の金銭登録機の意匠は原告の本件登録意匠に類似するものではない。 七、(一)認める。 (二)否認する。 証拠(省略)第一目録添付図面A・B及び説明書に示すごとき金銭登録機の形状、模様の結合(但しB図は便宜上A図の部分に番号を付したもの。)<11534-001><11534-002>説明書機の下に設けられた台箱の形状を、平面形が奥行の長い略長方形で高さが横巾の約3分の1の角台形とし、その前面に枠縁を設け、その台箱の上に、台面の前部を広く左右部と後部とを少し残してキヤビネツトを載置し、キヤビネツトは奥行の約3分の1の後部において、その高さをキヤビネツトの前面の高さの約3倍弱の高さに形成し、傾斜面部より高く出ている部分の付根部から上の周囲を一段小さくし、 その付根部から下方に、横状の線を表わし、その線はキヤビネツトの周側まで続いて表わし、キヤビネツトの後部の高くなつた部分の前方(キヤビネツトの奥行の約3分の2の部分)を前下りの傾斜面(約二十度弱)とし、その傾斜面において前部と右部を稍広く残し、左部をより広く残し、後部に接して、キーとキーを囲んだ枠を設け、その枠の両側壁をかなり厚味のあるものとし、その上縁部を弧状に形成し、両側壁の間には間隔を少しずつ置いて、七列にキーを並列し、そのキーの上縁部を段階状として側壁の上縁部よりも少し高く弧状に形成し、前枠の側面を小さい弧状とし、その前枠にはキーの間に入りこんだ隔壁を突設し、キーの枠部の高くなつている傾斜面に、横長の区画部を設け、キーの側壁の右に残した傾斜面には小さいだ円形部を表わし、キーの側壁の左に残したかなり広い傾斜面には、大きい長方形の区画部等を設け、キヤビネツトの右側面においては、中央稍下と左方上部に軸を設けて、これにハンドルを取り付け、ハンドルの腕部は平たく先を漸次せまく形成しその先端に先が太くなつた握棒を取り付け、キヤビネツトの左側面においては、大きな不等辺四辺形の区画部を設け、区画部の面には円形突出部と円形部並びに斜線等を表わし、キヤビネツトの前に接して台箱の上に、低い台盤を設けたもの第二目録の(一)添付図面及び説明書に示すごとき形状、模様をなした金銭登録機<11534-003><11534-004><11534-005>説明書機の下に設けた台箱の形状を、奥行の稍長い略長方形で、高さが横巾の3分の1位の角台形とし、その前面に枠縁を設け、その台箱の上に、台面の前部を広く、左右部と後部を少し残してキヤビネツトを載置し、キヤビネツトは、奥行の約3分の1後方部を、キヤビネツトの前面の高さの約3倍弱の高さに形成し、その高い部分の上面を稍前高とし、高い部分の前面を稍弧状に反つた面とし、その弧状はキヤビネツトの側面に続いて段状のリヨウ線をなして台箱まで下降し、後部の高い部分の背面は、上方に至るに従つて漸次前方に稍傾斜した扁平面とし、その上部に横長の窓を設け、キヤビネツトの後部の高くなつた部分の前方(キヤビネツトの奥行の約3分の2の部分)を前下りの傾斜面(約二十度弱)とし、その傾斜面において前部と右部を稍広く残し、左部をかなり広く残して、キーとキーを囲んだ枠を設け、その枠の両側壁をかなり厚味のあるものとし、その上縁部を大きい弧状部から続いてその前方に小さい弧状部を形成した態様とし、両側壁の間に、間隔を少しずつ置いて七列にキーを並列し、そのキーの上縁部を段階状として側壁の上縁部よりも少し高く弧状に形成し、キーの間には前枠から突出した隔壁を、後方まで通して設け、 キーの枠部の後方の高い部分の面の右上に、横長形の窓を設け、キーの側壁の右に残した傾斜面には、小さい長方形の区画を設け、側壁の左に残した傾斜面には稍大きい長方形の区画を設け、前に残した傾斜面には左に小さい長方形輪廓の窓を、中央に両端が丸形をなす長い形状のプレートを取り付け、キヤビネツトの右側面においては、後方の高くなつた部分の下寄りに軸を設けて、これにハンドルを取り付け、そのハンドルは腕の部分を平たく、先に至るに従つて弧状をなして細く形成し、その先端に先が太くなつた握棒を取り付け高い方の上部と傾斜面部の方の中央に丸形の孔を設け、キヤビネツトの左側面においては、大きな不等辺四辺形に区画部を設け、その後辺にそつて蝶番を設け、前辺の近くに円形の座板等を設けたもの第二目録の(二)添附図面および説明書に示す形状、模様をなした金銭登録機<11534-006><11534-007><11534-008>説明書第二目録の(一)における「キーの枠部の後方の高い部分の面の右上に設けた横長形の窓」に相当するものを欠くだけで、その他の形状、模様は第二目録の(一)と同じ。 第二目録の(三)添附図面および説明書に示す形状、模様をなした金銭登録機<11534-009><11534-010><11534-011>説明書第二目録の(一)の左側面の大きな不等辺四辺形の区画部に更に領収証紙又は認証伝票の差込口を有する斜めの直線状枠が突設されている。 その他の形状、模様は第二目録の(一)と同じ。 |
裁判官 | 古関敏正 |
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裁判官 | 吉井参也 |
裁判官 | 宇井正一 |