• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 審判1985-18421
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ36851意匠権侵害差止等請求事件 判例 意匠
平成5ワ8250 判例 意匠
平成16ワ17501債務不存在確認請求事件 判例 意匠
昭和57行ケ115 判例 意匠
昭和59ワ7459 判例 意匠
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  物品の形状 /  形状 /  模様 /  色分け /  モチーフ /  意匠に係る物品 /  類似の意匠 /  意匠の類似 /  意匠の類否 /  本意匠 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
事件 平成 1年 (行ケ) 129号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1990/03/07
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告は、「特許庁が、同庁昭和六〇年審判第一八四二一号事件について、平成元年四月一四日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めた。
二 被告は、主文同旨の判決を求めた。
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和五八年一一月一七日、意匠に係る物品を「包装用かん」とする別紙第一記載の意匠(以下、「本願意匠」という。)につき、登録第五九六二七九号意匠の類似意匠として、意匠登録出願をした(同年意匠登録願第四九六一二号)が、
昭和六〇年七月四日に拒絶査定を受けたので、同年九月九日、これに対し審判の請求をした。特許庁は、これを同庁同年審判第一八四二一号事件として審理した上、
平成元年四月一四日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年五月二四日原告に送達された。
二 本件審決の理由の要点1 本願の意匠は、昭和五八年一一月一七日に類似意匠登録出願したものであって(本意匠登録第五九六二七九号)、願書及び願書に添附した図面等の記載全体から、意匠に係る物品を「包装用かん」とし、意匠に係る形態を図面等によって表したものであり、その全体としての構成態様を別紙第一に示すとおりにしたものと認める。
2 原審において拒絶の理由とした引用の意匠(以下、「引用意匠」という。)は、昭和五三年八月二四日特許庁受入の外国雑誌「INDUSTRIAL DESIGN」一九七八年(昭和五三年)七〜八月号第四五頁所載の意匠であって(資料番号第五三〇三六二一八号)、同頁の記載全体から、意匠に係る物品を「包装用かん」とし、意匠に係る形態を写真版等で表したものであり、その全体としての構成態様を別紙第二に示すとおりにしたものと認める。
3 両意匠を比較するに、意匠に係る形態について、両者は、全体を細長円筒状とし、上下端周縁を玉縁状とした点、上下端周縁以外の容体全体を暗調子とし、その容体の上端から下端までの間に、ほぼ波形をした曲線状の模様複数本を明調子で表した点等、各部の基本的形状及びそれらによって構成された全体の基本的構成態様がほぼ一致しているものと認められる。更に全体の具体的構成態様についても、次の点につき差異が認められるのみであって、その余の点につきほぼ一致しているものと認められる。
4 即ち、両意匠は各部の具体的構成態様のうち、曲線状の模様につき、本願意匠は、上端の幅を最も太くし、下方へ向かって波形を描きつつ次第に細くなり、下端の玉縁直上では先端を尖らした態様のものとしているのに対し、引用意匠は、上端の幅を太くし、下方へ向かって波形を描きつつ次第に細くなり、ほぼ中央付近で最小幅となった後、再び下方へ向かって次第に太くなり、下端の玉縁直上では上端とほぼ同じ太さの幅とした態様のものとしている点に差異が認められる。
5 以上の一致点、差異点を総合して両意匠を全体として考察するに、前記差異点は、両者の具体的構成態様のうちのごく一部分における差異と認められるものである。
6 即ち、曲線状の模様の差異は、たとえ本願意匠が前記のように形成しているとしても、上下端の玉縁間の容体の高さ一杯に、ゆるやかな曲線で構成された波形の模様を、縦に、明調子で表したという点では酷似するものであり、かつ、この点が両意匠の要部と認められる。したがって、この両者に共通する特徴からみれば最小幅の部位の若干の差異は微差といわざるをえず、前記の要部における一致点を凌駕して看者に別異感を与えるまでには未だ到っていないから、全体の具体的構成態様を著しく変更したと認められるほどの差異ということはできない。
7 以上のとおり、本願意匠は引用意匠と前記の点につき差異が認められるものであるが、その余において前記のとおり一致点が認められるものであり、全体として引用の意匠に類似するものと認められる。
8 したがって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に規定する意匠に該当するものであるから、意匠登録を受けることができない。
三 本件審決を取り消すべき事由 本願意匠及び引用意匠の構成が本件審決認定のとおりであること、両意匠の間に本件審決認定のとおりの一致点及び相違点が存在することは認める。ただし、「ほぼ波形をした曲線状の模様複数本を明調子で表した」点で一致するとの部分は争う。
本件審決は、本願意匠と引用意匠との対比において、その相違点を看過誤認したこと及び右誤認を前提として、両者を類似の意匠と判断した点に誤りがあるので、
違法として取り消されなければならない。
1 即ち、両意匠には、更に、次の点の相違がある。
(一) 全体の缶の形状が、本願意匠では縦長で、直径と高さの割合が約一対二・三二であるのに対し、引用意匠では幅広で、直径と高さの割合が約一対一・九二である。
(二) 本願意匠は地色が明るい青色であって、これに白の図形を配したものであるのに対し、引用意匠は地色と図形の色に特徴はない。
(三) 本願意匠における白図形は上部が幅広で下部が細くなった波形であるのに対し、引用意匠の白図形は中間部が細くなったリボン形である。
(四) 本願意匠には文字はないのに対し、引用意匠は図案化された英文字が模様となって意匠を構成している。
そして、両者の意匠としての要部も、それぞれ右の点にある。
2 本願意匠と引用意匠とは、右のような点において相違している結果、次のような美観の差異がある。
(一) 本願意匠の波形は、上部が幅広で下部が細くなった形状であるため、図形として上下非対称であって、完結した感を与える。これに対し、引用意匠のリボン形は、中間部が細くなっていて上下が点対称をなしているため、上下への連続性があり、長いリボンがねじれた形状を連想させるものであって、律動感がある。
引用意匠がリボンデザインであるということは、引用意匠の使用者であるコカコーラ社(ザ・コカ・コーラ・カンパニー)も自認している。即ち、本願意匠の基本形は、原告においてアイソトニック飲料(商品名ポカリスエット)の容器のデザインとして開発し、関連する多くの商標、意匠登録出願を行なったものであるが、その過程においてコカコーラ社との間で紛争を生じた。即ち、原告が本願意匠とほぼ同一の図形を商願昭五五|二〇七八八号として商標登録出願したのに対し、コカコーラ社から同社の保有する登録第一四九九八九二号商標及び商願昭五〇|一一七一六九号商標を引用例として、異議申立がされた。その理由の中で、コカコーラ社は自社のマークについて、その特徴図形から「リボン」マークと呼ばれるのが普通であると主張している。一方、米国においても、コカコーラ社は原告に対し訴を提起したが、結局両社の間で和解が成立し、コカコーラ社は右の異議申立を取下げた。
そして、右の和解契約書の中においても、原告及びコカコーラ社は、本願意匠の基本デザインを「波形デザイン」(WAVE DEVICE)、引用意匠の基本デザインを「リボンデザイン」(DYNAMIC RIBBON DEVICE)と称している。このように、引用意匠は客観的に見てリボン模様であるばかりでなく、
コカコーラ社自身もこれをリボン模様で、しかも「ダイナミック リボン デバイス」であると認めている。そして引用意匠のコカコーラの文字もこのダイナミック リボン デバイスの一形態なのであり、このイメージが引用意匠の特徴にほかならないのである。
なお、本願意匠の本意匠については、四件の類似意匠が登録されている。これらの類似意匠によって確認されている本願意匠の類似の範囲をみてみると、引用意匠とはその文字を除いて比較した場合においても、波型とリボン型という基本的モチーフの違いがある。したがって、本願意匠はその本意匠には類似するが引用意匠には類似しないのである。
(二) 本願意匠の明るい青色の地は夏の海を連想させ、白い波形はその海のゆったりとした波を連想させる。即ち、全体として夏の海を連想させ、清新な感じを与える。これに対し、引用意匠は、単に白黒であって、色彩感はなく、本願意匠のような清新さは全く感じられない。
被告は、ケーキ屋がケーキをパッケージするのに用いる紙箱を例に採り上げ、数種類の色替り品が存することを指摘している。そしてパッケージ業界においては、
形状模様が同一で色彩だけが相違するデザインは、新規な創作と認めないのが常識である旨主張している。原告としても、色違いの類似した意匠が存在することを否定するわけではないが、それは色彩に特徴のない場合であり、色彩及び色彩の組み合わせに特徴のある場合にはそのことは当たらない。意匠法自体も、意匠の定義として、「物品の形状模様若しくは色彩又はこれらの結合……」としているのであって、形状模様が類似し、色彩が違うだけの場合全体として常に類似であるとまではいえない。
次に、被告は、意匠の類似判断の基準の一つとして「色彩は明度を中心としたトーンにより判断される」との原則をあげ、これは経験則上、定立されたものであると主張している。そこで、この前提に立って、本願意匠の色分けトーンをみてみると、明調子部分が白色で、暗調子部分が鮮やかな青色を構成しているところから、
両者は際立った対照をなしている。そしてこれは、看者に明瞭な配色の特徴を印象づけるものであり、これこそまさに、本願意匠の創作者が企図した夏の海に浮かぶ白い波形のイメージを表現したものである。これに対し、引用意匠の色分けトーンについて検討してみると、引用意匠自体は白黒であって、このようなイメージは生じない。もっとも、引用意匠の場合、そのコカコーラの表示からコカコーラの意匠であると認識されており、赤色で使用されていることが知られている。そこで、引用意匠から文字部分を除き、リボンの部分以外を赤色としても、赤は暖色であってリボン部分との明度の差は本願意匠ほど顕著ではない。まして、本願意匠のイメージは生じない。
更に、本願意匠と引用意匠は単なる色違いではなく、模様自体も異なるものであって、模様の類似を前提とする被告の指摘は当たらない。
(三) 引用意匠は、COKEの部分はともかくとして、Coca-Colaの文字をちょうど新体操におけるダイナミックなリボンのような形で、しかも大きく表示しており、模様の一部をなしていて、看者をしてコカコーラの意匠であることを認識させている。このダイナミックなリボン模様が、コカコーラのデザインの特徴である。
(四) また、全体のプロポーションとしても、本願意匠はスリムであるのに対し、引用意匠は太くてずんぐりしている。
(五) 以上のとおり、本願意匠は青い海と白い波をモチーフとしたものであるのに対し、引用意匠はリボンの形状を図案としたものであって、その創作思想が全く異なる。そして、その結果、看者に与える美的感覚が全く異なっており、両者は非類似の意匠である。
請求の原因に対する認否及び主張
一 請求の原因一、二の事実は認める。同三の主張は争う。
二 本件審決の認定判断は正当であり、原告主張のような違法はない。
1 原告が主張する相違点のうち、直径と高さの割合の相違、色彩の相違、文字の有無の相違は、以下に述べる理由により、意匠の類否判断の要素として、採り上げるべきでないもの又は採り上げるに足りないものである。
(一) 文字の有無について 両意匠は、共に、飲物を密閉して販売する缶に係るものであって、この種の缶は、スーパーマーケット等のおびただしい商品の中に並べられ販売されるものであり(又は自動販売機等で販売されている)、購買者は缶の外周面に表示されている商品名、商標等を頼りにして商品(内容物)を購入している。したがって、この種の缶の外周面には内容物を表示する商品名又は商標等の文字が表されているのが通常である。
また、この種の缶の登録意匠の多くは文字が表されていないが、その実施品のほとんどのものに文字が表されている。現に、本願意匠の図面には文字等が表されていないが、原告が販売している商品の缶の外周面にはPOCARY SWEATのローマ字とポカリスエットというカナ文字が表されている。
そして、引用意匠におけるCoca―Colaの文字とCOKEの文字は、前者はかなり図案化されているが、いずれも英文字を読むための普通の配列方法で配列されており、看る者をして十分に読みとることができるものであるから、いまだ前記文字が模様に変化して文字本来の機能を失っているとはいえない。したがって、
前記文字は意匠法2条1項で規定する意匠の構成要素である模様と認めることができない。
以上述べたとおり、原告は、意匠の構成要素と認められないところのものを意匠の構成要素であると誤認し、本件審決がそれを看過したと主張しているにすぎないものである。したがって、原告の右主張は失当である。
(二) 色彩の相違、直径対高さの比の相違について(1) 株式会社パッケージ中澤発行のカタログ「カラーハンドボックス」(乙第一号証の一、二)によれば、ケース販売者及び製造者は何種類かの色替わりのもの及び容量に応じたサイズのケースを用意していることは顕著な事実である。そして、色替わりのもの及び大小のケースが用意されていること、用意されてきたことは、パッケージデザイナーのみならず、パッケージ業界に関係する人達にとってごく初歩的な常識である。
また、色彩につき、デザイン製作の過程から考察するに、パッケージデザイナーにとって、形状模様等が第一義的に創作の中心であり、これらがほぼでき上がった後、色見本帳のなかから数種類の色を指定して印刷業者に依頼するのが一般的なやり方である。
以上述べた事実により、パッケージデザイナーにとって、色を替えることは最も容易な創作であるといえる、また、それは、塗り絵の範囲内の創作にとどまるものともいえる。
なお、意匠の類否判断の基準の一つに、「色彩は明度を中心としたトーンにより判断される」とあるが、これは、前記の点及び従来からの経験則を基盤として定立されたものである(前記基準に則った至近な例として、本願意匠の本意匠である登録第五九六二七九号意匠(乙第二号証)及び類似第二意匠(乙第三号証)参照。)。
以上の事実と基準に照らし、意匠の創作を保護する意匠制度における類否判断の要素として、青色の点の相違点は採り上げて論じる必要がない程度のものである。
(2) 直径対高さの割合の相違についても、主として缶の容量差に起因するものであり(内容物の注入機及び缶運搬具、販売機等の制約から缶の高さはほぼ同じ高さであるので、直径の大小は缶の容量によって定まるといえる。)、しかも、ほぼ同じ態様のもののシリーズとして段階的に品揃えすることも包装(パッケージ)業界の常識であることを勘案すれば、この程度の相違は類否判断の要素たりえない微差にすぎない。
2 原告主張のリボン模様について 引用意匠は、丸みのある凹凸のついた曲線状の模様を複数本間隔をおいて表した態様であり、それは波又は波形、水面等を想定させるに十分なものであり、その一模様を「ほぼ波形をした曲線状の模様」と認定するのは合理的である。したがって、それと同旨の本件審決の認定は正当である。
また、本件は意匠登録出願に関する事件であるにもかかわらず、原告は、本件とは事案を全く異にする案件である登録商標に関して、コカコーラ社が述べたことを根拠としてリボン形であると主張しているにすぎず、原告の主張は根拠がなく不合理である。更に、米国内で締結されたと称する和解契約書ごときものに記載された条項及び語句によって、本件が制約を受けるものではない。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の本件審決を取り消すべき事由について判断する。
1 本願意匠と引用意匠の各構成が本件審決認定のとおりであることは原告の認めるところであり、両意匠を対比すると、本件審決認定のとおり請求の原因二4に示される差異があることも原告の認めるところである。そして、本願意匠及び引用意匠を表したものであることが当事者間に争いのない別紙第一及び第二によれば、両意匠には、請求の原因三1(一)、(二)及び(四)で原告の主張する差異があることが一応認められる。
原告は、本件審決が右の点を相違点として摘示しなかったことをもって、相違点の看過誤認がある旨主張するので更に判断する。
(一) 請求の原因三1(一)(直径と高さの割合の相違)について 直径と高さの割合の相違が主として缶の容量差に起因するものであり、しかもほぼ同じ態様のもののシリーズとして段階的に品揃えすることが包装(パッケージ)業界の常識であることは、原告の明らかに争わないところである。そうすると、本件における両意匠の直径と高さの割合の相違は、両意匠の意匠に係る物品がいずれも包装用缶である(当事者間に争いがないことは前示のとおり。)ことを考慮すると、右の相違は、両意匠の類否判断の要素として採り上げるに足りないものというべきである。したがって、本件審決が右の点を相違点として適示しなかったことをもって、類否の判断に影響を及ぼすべき相違点の看過誤認があるということはできない。
(二) 請求の原因三1(二)(色彩の相違)について成立に争いのない乙第一号証の一、二(株式会社パッケージ中澤発行のカタログ「カラーハンドボックス」)によれば、ケース販売者及び製造者は何種類かの色替わりのもの及び容量に応じたサイズのケースを用意していることが認められる。右事実によれば、色替わりのもの及び大小のケースが用意されていることは、パッケージ業界において常識とされていると認めることができる。そして、そのような場合においては、色彩そのものに意匠の類否判断の対象となるほどの創作性は、認められないものといわなければならない。
そうすると、無限ともいえる色彩の中からどのような色彩を組み合わせるかという点に創作の余地があるとしても、前示のとおり包装用缶を意匠に係る物品とする本願意匠においては、色彩の相違は、類否判断の要素として採り上げるに足りないものというべきである。したがって、本件審決が色彩の相違を両意匠の相違点として摘示しなかったことをもって、類否の判断に影響を及ぼすべき相違点の看過誤認があるということはできない。
(三) 請求の原因三1(四)(文字の有無の相違)について 意匠法2条1項の規定によれば、「意匠」とは、物品の形状模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起させるものをいうとされていることは明らかである。したがって、意匠中に文字が存在する場合、その文字が模様と認められる場合を除き、文字は意匠の構成要素と認めることができないものである。
そこで、引用意匠についてみるに、引用意匠を表したものであることが当事者間に争いのない別紙第二によれば、引用意匠中に認められるCoca―Colaの文字及びCOKEの文字は、前者は原告指摘のとおりかなり図案化されていることは認められるけれども、両文字とも、コカコーラ及びコークと十分読みとることができ、未だ模様に変化したとは認めることができない。したがって、引用意匠中の文字部分は、意匠の類否判断の要素として採り上げるべきでないものというべきであるので、本件審決が文字の有無について相違点として適示しなかったことをもって、相違点の看過誤認があるということはできない。
2 次に、原告は、本願意匠における白図形は波形であるのに対し、引用意匠の白図形はリボン形であるとし、その相違点を本件審決は看過誤認している旨主張する。
本願意匠と引用意匠との間に、本件審決認定のとおり相違点(請求の原因二4)があることは、前示のとおり原告の認めるところである。そして、原告が引用意匠についてリボン形であると主張する点は、前掲別紙第一及び第二によれば、前記請求の原因二4の相違点の認定のうちの、引用意匠の曲線状の模様を指しているものと認められる。そうすると、原告がリボン形と主張する点は、同じ模様について、
本件審決とは異なる言葉を用いて表現しているにすぎないといわざるをえない。
原告は引用意匠の曲線状の模様がリボン形であることは、引用意匠の使用者であるコカコーラ社が自認していることを、その理由にあげるが、意匠における模様は、当該意匠に示された構成態様により客観的に判断すべき事柄であるから、コカコーラ社がリボン形であることを自認していたとしても、そのことにより、本件審決の前記認定判断が左右されるものではない。
したがって、本件審決には、原告指摘の点に相違点の看過誤認はない。
3 更に、原告は、本願意匠と引用意匠とは看者に与える美的感覚が全く異なっており、両者は非類似の意匠であると主張する。
前掲別紙第一及び第二によれば、本願意匠と引用意匠との間には本件審決認定のとおりの一致点(請求の原因二3)が存在することが認められる(右一致点の認定のうち、ほぼ波形をした曲線状の模様複数本を明調子で表したとの点を除き、原告の認めるところである。)。そして、両意匠の間に本件審決認定のとおりの相違点が存在することは前記1のとおりであり、その他にも、請求の原因三1(一)及び(二)記載のとおりの相違点が存在することも前記1のとおりである。
そこで、右一致点及び相違点を総合して、両意匠を全体として考察すると、本件審決が相違点として取り上げた具体的構成態様のうちの曲線状の模様の差異は、上下端の玉縁間の容体の高さ一杯に、ゆるやかな曲線で構成された波形の模様を縦に明調子で表した点で両意匠とも酷似するものであって、この点が両意匠について看者の最も注意をひくところと認められるのであって、両意匠は美感を共通にするといわなければならない。
両意匠の右波形模様の最小幅部分の位置が異なる点、直径と高さの割合の相違点(請求の原因三1(一))及び色彩の相違点(請求の原因三1(二))等原告指摘の相違点は、未だ、両意匠の右共通点を凌駕して看者に別異の印象を与えるとは認めることができない。
なお、原告は、本願意匠の本意匠について四件の類似意匠が登録されていることを引用して本願意匠は引用意匠には類似しない旨主張するが、右事実があることをもって直ちに本願意匠は引用意匠には類似しないとはいえないから、原告の右主張は採用できない。
4 以上のとおりであるから、本願意匠が全体として引用意匠に類似するものとした本件審決の判断は正当であり、本件審決には原告主張の点にこれを取り消すべき違法はない。
三 よって、その主張の点に判断を誤った違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 元木伸
裁判官 西田美昭
裁判官 木下順太郎
  • この表をプリントする