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施しようとしている意匠が意匠権を侵害するかどうかについて紛争を生じている場合において、その紛争が登録意匠(およびこれに類似する意匠)の範囲の争いに起因しているときでも、その紛争を解決するためには、意匠権にもとづく差止もしくは損害賠償の請求またはこれらの請求権の不存在確認の訴を提起する必要があり、かつ、それで足りるのであつて、このほかに意匠権のいわゆる権利範囲確認の訴を認めることはできず、またこれを認める必要もないのである 該当部分へ
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
昭和41オ1360意匠権侵害排除、損害賠償請求 判例 意匠
昭和33オ817意匠登録拒絶査定抗告審判審決取消請求 判例 意匠
平成14受1100損害賠償,商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
昭和47オ395特許権の通常実施権設定登録等請求 判例 特許
平成10受153医薬品販売差止請求事件 判例 特許
関連ワード 類似する意匠 /  登録意匠 /  差止請求(差止) /  損害賠償 / 
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事件 昭和 46年 (オ) 410号 意匠権不侵害等確認請求
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裁判所 最高裁判所第一小法廷
判決言渡日 1972/07/20
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 上告人の本訴請求中主位的請求に関する部分につき原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
右部分につき上告人の訴を却下する。
予備的請求に関する部分につき本件上告を却下する。
訴訟の総費用は、上告人の負担とする。
事実及び理由
全容
上告代理人野島達雄、同大道寺徹也の上告理由は、別紙のとおりである。
職権をもつて上告人の被上告人に対する主位的請求に関する訴の適否についてみるに、その請求の趣旨は、「(第一審判決添付)別紙第一目録表示の意匠は第二一六、六七一号登録意匠の権利範囲に属しないことを確認する。」というのであつて、右訴が被上告人の意匠権にもとづく差止請求権不存在確認の訴ではなく、右登録意匠の権利範囲の消極的確認を目的とするいわゆる権利範囲確認の訴であることは、本件記録にあらわれた上告人の主張に徴し明らかである。そして、右訴の利益として上告人が主張するところの要旨は、「被上告人は、上告人に対し、上告人が本訴において確認を求めている意匠が被上告人の右登録意匠の範囲に属するとして、製造販売の中止を求め、これを理由なしとして拒絶する上告人との間で紛争を生じている。」というのである。
しかし、意匠権者と第三者との間で、第三者が実施しまたは実施しようとしている意匠が意匠権を侵害するかどうかについて紛争を生じている場合において、その紛争が登録意匠(およびこれに類似する意匠)の範囲の争いに起因しているときでも、その紛争を解決するためには、意匠権にもとづく差止もしくは損害賠償の請求またはこれらの請求権の不存在確認の訴を提起する必要があり、かつ、それで足りるのであつて、このほかに意匠権のいわゆる権利範囲確認の訴を認めることはできず、またこれを認める必要もないのである。その理由は、つぎのとおりである。
すなわち、右訴は権利範囲確認とはいうものの、その目的とするところは、ある意匠が美的印象の点から判断して登録意匠(およびこれに類似する意匠)の範囲に入るか否かということであるから、その判断は法律上の判断ではなく事実上の判断であり、判断の対象は、権利または法律関係ではないといわなければならない。このことは、登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲の判定権限が行政官庁である特許庁に与えられている(意匠法25条)がその判定の結果について不服申立の途がひらかれていないことからもうかがえるところである。したがつて、右訴は権利または法律関係の確認を目的としないものとして不適法といわなければならない。のみならず、右訴が本件のように第三者が実施しまたは実施しようとしている意匠についてその意匠が意匠権を侵害するか否かの紛争を解決する方法として適切有効といえるかどうかについてみるに、このような紛争が存する場合には、権利者側からすれば第三者の侵害(またはそのおそれ)の排除が必要であり、また第三者からすればその実施を妨害されないことが必要であるが、いわゆる権利範囲確認の訴によつては、ある意匠が登録意匠(およびこれに類似する意匠)の範囲に入るか否かを確定するだけであるから、右の紛争解決目的を果すうえにおいて適切有効とはいいがたく、その目的達成のためにさらに差止請求権の存否を問題としなければならないのである。
したがつて、上告人の主位的請求に関する訴は、不適法として却下すべきであるから、右請求について本案の判断をした第一審判決は失当であり、これを是認した原判決は、本件上告理由に対する判断をするまでもなく、破棄を免れず、第一審判決中主位的請求に関する部分を取り消し、同部分につき訴を却下することとする。
なお、上告人は、原判決のうち、上告人の予備的請求に関する部分については、上告の理由を記載した書面を提出しないから、同部分に関する上告を却下することとする。
よつて、民訴法408条1号396条386条399条の3399条398条96条89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 藤林益三
裁判官 岩田誠
裁判官 大隅健一郎
裁判官 下田武三
裁判官 岸盛一