• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 無効2005-88008
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19行ケ10180審決取消請求事件 判例 意匠
平成19行ケ10209審決取消請求事件 平成19行ケ10210審決取消請求事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  物品の形状 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  公然知られた(3条1項1号) /  3条1項2号 /  3条1項3号 /  頒布された刊行物 /  記載された意匠 /  類似の意匠 /  部品 /  意匠の類否 /  全体観察 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) /  無効審判 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 18年 (行ケ) 10388号 審決取消請求事件
原告株式会社日興インターナショナル
訴訟代理人弁護士後藤晴男
同弁理士原田信市,原田敬志
被告株式会社コスモレーザサイエンス
訴訟代理人弁護士平井昭光,原井大介
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/01/31
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2005-88008号事件について平成18年7月19日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,意匠に係る物品を「発光ダイオード付き商品陳列台」とする登録第1194646号意匠(別紙第1表示の意匠。平成14年12月13日出願〔以下「本件出願日」という。〕,平成15年11月28日設定登録。以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である(甲2)。
被告は,平成17年4月27日,本件登録意匠を無効とすることについて審判の請求をし,無効2005-88008号事件として特許庁に係属したところ,特許庁は,本件無効審判請求について審理した結果,平成18年7月19日,「登録第1194646号の登録を無効とする。」との審決をし,同月31日,その謄本を原告に送達した。
2審決の理由( ) 審決は,次のとおり,被告(請求人)が本件登録意匠の無効の理由として引1用した「浦江県誠興電子電器有限公司」の商品カタログ2冊(甲8の2,甲9の2。
なお,乙3,4の各2はそれぞれのカラーコピー。以下,それぞれ「引用刊行物1」,「引用刊行物2」といい,これらを「引用刊行物」と総称する。)に掲載された商品番号「CXDZ-3」の発光ダイオード付き商品陳列台の意匠(別紙第2表示の意匠。以下「引用意匠」という。)は本件出願日前に頒布された刊行物であるところ,本件登録意匠と引用意匠とを対比すると,意匠に係る物品において一致しており,その形態においても,相違点が両意匠の共通点を凌駕することはなく,共通点は圧倒的で,両意匠は全体として美感が共通するものとして類似するから,本件登録意匠は,意匠法3条1項3号に該当し,同条柱書きの規定により意匠登録を受けることができないとした。
( ) 本件登録意匠2「本件登録意匠は,・・・全体を略短円柱状とし,上方円周部をアール状に形成し,頂面に円形展示板を配し,それらの中央に円形凹部を形成して,7個の発光ダイオードを七曜様に凝縮させて配置し,周面にスイッチと電源コンセントを設け,底面に,三角形状頂点位置に三つの円形滑り止めと,中央部に略長方形状の枠部と,三個毎に三列に平行に並べた計9個の円形(審決9頁14行〜24行) 空気取り入れ孔を,設けたものである。」( ) 引用意匠3請求人が本件登録意匠の無効の理由として引用した意匠は,「浦江県誠興電子電器有限公司」の商品カタログ(判決注:本訴甲8の2,甲9の2)・・・に記載された型番「CXDZ-3」の意匠であるが,被請求人は,請求人提出の同カタログは,本件出願前に頒布された刊行物ではない旨,反論している。そこで,同カタログは,本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物であるかについて検討する。
(A)「浦江県誠興電子電器有限公司」が頒布したとする商品カタログ(判決注:本訴甲9の2)・・・は,「義鳥市金典広告有限公司」製作に係る商品カタログ(判決注:本訴甲8の2)・・・と同一であるのかについて〈1〉提出された両商品カタログを比べると,・・・商品カタログ(判決注:本訴甲8の2)は全8頁であるのに対し,・・・商品カタログ(判決注:本訴甲9の2)は全6頁と少なく,アダプターと変圧器の商品写真を掲載した2頁分が見あたらない。しかし,それ以外の頁はすべて同一であり,共に,型番「CXDZ-3」の商品写真が掲載された発光ダイオード付き商品陳列台の商品写真頁,及び,発光ダイオード付き商品陳列回転台の商品写真頁と,商品番号頁,そして,表紙頁,会社概要記載頁,裏表紙頁が存在する。それゆえ,請求人は,本件登録意匠にはあまり関わりのない商品写真頁を除いたものを,甲第2号証の2として提出したと推認され,両商品カタログは,同一のものと認められる。
(B)当該商品カタログは,本件登録意匠出願前の2002年10月25日に頒布されたのかについて〈2〉甲第8号証の1及び2(判決注:本訴甲13の1,2)によれば,2002年秋季の「広州交易会」が,2002年10月25日から10月30日まで開催されたこと,及び,その会期中,「浦江県誠興電子電器有限公司」は,他の会社の展示ブースを通して「広州交易会」に出展していたことが認められる。
〈3〉また,甲第9号証の1及び2(判決注:本訴甲14の1,2)によれば,2002年10月25日に,ドイツの企業「 」が,「広州交易会」会NEWCHINAIMPORTEXPORT場(中華人民共和国広州市流花路展示会場内)にて,「浦江県誠興電子電器有限公司」の「商品カタログ(訳語:製品目録)」3部を取得したと認められる。・・・(C)2002年10月25日に頒布された当該商品カタログは,型番「CXDZ-3」の意匠が掲載されたものであるのかについて〈4〉ドイツの企業が,商品カタログ(訳語:製品目録)3部を取得したことを証明する甲第9号証の1及び2には,商品カタログ(訳語:製品目録)自体,あるいは,そのカタログ写しは添付されていない。
しかしながら,・・・甲第9号証の1(判決注:本訴甲14の1,2)の証明書が示す商品カタログは,・・・商品カタログ(判決注:本訴甲8の2)と同一であると考えるのが,妥当である。したがって,ドイツ企業が商品カタログ(訳語:製品目録)を2002年10月25日に取得したことを証明する甲第9号証には,取得した商品カタログの添付はないものの,そのカタログは,甲第1号証の2として提出された商品カタログと同一であると推認される。
よって,2002年10月25日に頒布された商品カタログは,型番「CXDZ-3」の意(9頁26行〜11頁9行) 匠が掲載された商品カタログであると認められる。
( ) 両意匠の対比4本件登録意匠と引用意匠を対比すると,物品について,両意匠は発光ダイオード付き商品陳列台であるから一致し,形態においては,以下の共通点及び相違点が認められる。まず,両意匠は,全体を平たい略短円柱状とし,上方円周部をアール状に形成し,頂面に円形展示板を配し,展示板中央に,円形凹部を形成して中に7個の発光ダイオードを密着させて配置した,光照射用円形窓を形成した基本的態様,そして,具体的態様においては,全体の高さと直径の比率構成,並びに,陳列台本体と円形展示板と光照射用円形窓の直径の比率構成が,共通する。
一方,両意匠は,(あ)発光ダイオード配置部について,本件登録意匠は,円形凹部を開口状態とし,発光ダイオードを円形に7個配置したのに対して,引用意匠は,円形凹部の上部が開口状態のままなのか,あるいは透明な覆いがあるのかが不明で,発光ダイオードの具体的な配列も,斜視状態の写真によるので不明である点,(い)周面について,本件登録意匠はスイッチと電源コンセントを設けたのに対し,引用意匠は背面側が写っておらず,その有無が不明である点,(う)底面について,本件登録意匠は三つの円形滑り止めと,略長方形状の枠部,そして計9個の円形空気取り入れ孔を設けたのに対し,引用意匠は底面部は隠れていて,それらの有無が不明である点,(え)色彩について,本件登録意匠形状のみが表されたものであるのに対し,引用意匠は色彩を結合させており,また,(お)円形展示板について,本件登録意匠は透明と特定していないのに対して,引用意匠は透明あるいは透光性を有するものである点(11頁22行〜12頁5行) が,相違する。
( ) 類否判断5そこで,以上の共通点と相違点を総合して,両意匠の類否を全体として検討すると,この種の意匠においては,需要者は形態全体を観察して意匠を認識するが,特にその使用目的上,上面の態様について関心を持つものである。したがって,共通するとした点は両意匠の形態全体に係り,意匠全体の骨格を決定していると共に,需要者の関心の高い上面の態様にも及んでいるから,意匠全体として需要者に共通する美感を起こさせるものである。これに対し,相違点は,両意匠の共通する美感を変更するものではない。すなわち,(あ)発光ダイオード配置部について,開口状態であるか否かは,通常の使用態様である点灯状態の引用意匠を見ても明らかなように,上部の覆いの有無は視認し難く,また,その部位は展示板の中央にあるから,上に商品が展示されてしまえば視認し難く,それはそこに配された発光ダイオードの配列についても同様であるから,これらの相違は看者の注意を惹かず,共通する全体の美感を変更するものではない。(い)周面については,本件登録意匠のスイッチと電源コンセントはそれ自体小さく,視覚効果上格別なものはなく,また,ありふれた形状及び配置でもあり,看者の注意を惹かず,共通する全体の美感を変更するものではない。(う)底面については,通常の使用態様で目にする部分ではなく,看者の注意を惹くことはなく,共通する全体の美感を変更するものではない。(え)色彩については,引用意匠の態様も,一面に色彩を施すだけのありふれた彩色の態様であり,また,(お)円形展示板の透明か否か等の相違についても,同様に,透明あるいは透光性としたり,不透明としたりすることは,灯部周辺部位においてありふれた態様であり,その点が相違するとしても,圧倒的な形状の共通性に希釈されてしまい,両意匠の共通する全体の美感に影響を及ぼすことはない。また,これら相違点の相まった効果を勘案しても,相違点が両意匠の共通点を凌駕することはなく,共通点は先に述べたとおり圧倒的で,両(12頁7行〜下から4行) 意匠は全体として美感が共通するものであるから類似する。
( ) むすび6以上のとおりであって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し,同条の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから,意匠法第48条第1項第1号に該当(12頁下から2行〜13頁1行) する。
第3原告主張の取消事由審決は,引用刊行物の公知性の認定を誤り(取消事由1),本件登録意匠と引用意匠との類否に関する認定判断を誤り(取消事由2),その結果,本件登録意匠が意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するとの誤った結論を導いたものであって,違法であるから取り消されるべきものである。
1取消事由1(引用刊行物の公知性の認定の誤り)( ) 審決は,甲8の1(以下「甲8の1証明書」という。),甲9の1(以下1「甲9の1証明書」という。)などを根拠にして,引用刊行物1及び2は,本件出願日前の平成14年(2002年)10月25日に頒布された刊行物であると認定するところ,甲8の1,甲9の1証明書及び引用刊行物の原本が存在することは争わないが,次のとおり,民訴法228条4項の推定の働かない刊行物であるから,本件において,意匠法3条1項2号記載の公知の刊行物とすることはできないものであるから,審決の上記認定は誤りである。
ア甲8の1証明書に記載された社名は,「義烏市金典広告有限公司」とされているが,活字印刷されているにすぎないから,その社名を含む印影が同社の正しい印章に基づくものであるか不明である。
また,甲8の1証明書の翻訳には「住所,電話番号およびファックス番号」の記載があるのに,甲8の1証明書にはこれがないから,甲8の1証明書の作成者である義烏市金典広告有限公司,その翻訳の作成者であるAは,被告と何らかの利害関係を有する間柄にある者であって,被告の依頼に基づき,事実を確認することなく安易に作成された可能性が高い。
さらに,甲8の1証明書の翻訳には,「法人代表:A」,「住所:●●●●●」と記載されているが,烏市金典広告有限公司の登記簿謄本(甲21の1)によれば,同社の法定代表者は「B」であり,住所は「●●●●●」であって,義烏市金典広告有限公司に関する甲8の1証明書の翻訳の記載及び被告の主張と同社登記簿謄本の記載が大きく食い違っているものである。
イ甲9の1証明書は,「浦江県誠興電子電器有限公司」の代表「C」が,同有限公司が2002年10月25日に「広州交易会会場内の同社ブース」でドイツ企業「 」に対し,甲9の2刊行物を3部配布したこと NEW CHINA IMPORT EXPORTを証明しようとするものであるが,ハンブルグ区裁判所が2006年11月21日に発行した申請書原本返却書(甲25の1,2)及びハンブルグ区裁判所が2006年12月8日に発行した証明書(甲26の1,2)によると,1982年1月1日以後今日に至るまでの間に,「 」という名称で登NEW CHINA IMPORT EXPORT録された会社は,ハンブルグに存在していない。したがって,甲9の1証明書は,虚偽の内容を記載するものであって,信用性がない。
( ) 被告は,コムネット株式会社(以下「コムネット」という。)の代表取締役2であるD(以下「D」という。)が,平成13年(2001年)10月,中華人民共和国の広州市において開かれた第90回中国輸出商品交易会(以下「第90回広州交易会」という。)を訪れ,引用刊行物に掲載された商品番号CXDZ-3の発光ダイオード付き商品陳列台(以下「型番CXDZ-3の商品陳列台」という。)Shanghai Shenhong Topwin を見つけて,これを上海申宏運通進出口有限公司(。以下「トップウィン」という。)から輸入したのであるから,Imp&Exp Co.,Ltd引用刊行物は本件出願日前の平成14年(2002年)10月25日に頒布されていた旨主張するが,誤りである。
ア型番CXDZ-3の商品陳列台が第90回広州交易会で展示されていないことトップウィンの上申書(乙9)には,「丸型ディスプレイライトにつき,弊社は,2001年4月15日から30日にかけて,広州にて開催されたホーCanton Fairルにて(第89回中国輸出物産展)において初めて展示したものであることを認めます。」との記載があるが,トップウインは,2001年8月29日に設立された会社であるから(甲28の1,2),その設立以前に開催された第89回中国輸出商品交易会(以下「第89回広州交易会」という。)に出展することは,不可能であったはずである。現に,第90回広州交易会への出展社(企業)名簿である「中国輸出商品交易会出展社名簿大全」(甲31の1)の出展所属管理区域「上海」の欄には,「上海申宏運通進出口有限公司」というトップウィンの名称が中国語名でも英語名でも掲載されていない。また,トップウィンの上申書には,「丸型ディスプレイライト」を展示したと記載しているが,いかなる意匠に係る物品であるかが特定されていないから,「LED回転台」である本件物品と同一であるかが不明であり,むしろ,その名称の違いからして別の物品と認められる。
(イ) 被告は,トップウィンは,元々「上海申宏有限公司」という会社の一部門として出発しており,2001年春の第89回広州交易会には,「上海申宏有限公司」として出展し その後に,親会社の上海申宏有限公司から子会社として独立し,た旨主張し,乙16を提出する。
しかし,まず,乙16は,作成日が記載されていないから,その記載内容に疑義がある。また,トップウィンが第89回中国輸出商品交易会に展示していたとのこれまでの被告の主張と矛盾する。さらに,乙16の1は,被告の依頼に基づいて作成された作文にすぎないと認められるとともに,立証しようとする内容についての言及もきわめて不十分であり,しかも,その各記載内容を事実であると認めるに足る関係資料の添付も全くされていない。
イコムネットが輸入した型番CXDZ-3の商品陳列台が引用商標に係る物品とはいえないこと(ア) コムネットがトップウィンから型番CXDZ-3の商品陳列台を輸入する際に発行されたとされる甲15の1,2のインボイス及びパッキングリスト(以下「甲15インボイス等」ということがある。)は,輸出元の名称が記載されていない不自然なものであるのに,被告は,その輸出元を明らかにしていない。したがって,甲15インボイス等によって,型番CXDZ-3の商品陳列台が日本に輸入された事実が立証されているということはできない。
(イ) また,インターネットで「CXDZ-3」又は「CXDZ3」を検索すると,これらが社名又はURLの一部として,あるいは製品型番号として,枚挙にいとまがないほどに使用されているのが分かる。「CXDZ」,「CXDZ-3」,「CXDZ3」等の表示は,中国においてはもちろん日本においても,社名,URLの一部,又は製品型番号として普通に多用されているものであるから,甲15インボイス等に「CXDZ-3」の記載があるからといって,それが引用刊行物の「CXDZ-3」が表す物品の意匠と結びついているなどと短絡的なことをいうことはできない。
(ウ) 被告は,原告のウェブサイトにおいて「NKLS-3SL」,「NKLS-3B」の品名で掲載されている2種類の商品陳列台について,その商品陳列台の写真には,それぞれ「CXDZ-3sl」「CXDZ-3b」という名称が付されているから,原告が引用刊行物の「CXDZ-3」を模倣して自らの製品を作成し,これを意匠出願して登録を受けたことを示唆する旨主張する。
しかし,被告の指摘する「」,「」の名称は,ウェブサイcxdz-3sl.jpgcxdz-3b.jpgト上のファイル名であって,注文用の商品(製品)番号ではないのであって,被告は,ウェブサイトの読み方を誤解している。
ウ審決取消訴訟における主張立証上の制約等意匠登録無効審判の審決に対する訴訟においては,もっぱら当該審判手続において現実に争われ,かつ,審理判断された特定の無効原因に関するもののみが審理の対象とされるべきで,それ以外の無効原因については,審決の違法事由として主張することは許されないところ(最判昭和51年3月10日民集30巻2号79頁参照),型番CXDZ-3の商品陳列台に関する,本件出願日前において中国で製造販売されたという公知事実,我が国へ輸入されたという事実は,本件に係る審判手続において現実に争われものでも,審理判断された特定の無効原因でもないから,審決の結論を是認,維持事由として主張することはできない。
エD証言の信用性等(ア) Dは,当初,同人の陳述書(乙13)において,2002年3月に中国の広州市へ行って広州交易会を見た旨記載していたが,証言では,正しくは2001年10月で,上記陳述書の記載は記憶違いであった旨述べている。しかし,記憶違いを理由に広州交易会に行った日を訂正又は変更する主張は,時期に遅れたものであって,失当である。また,仮に,Dが2001年10月14日に中国に入国し,同月17日に出国している事実(乙14)があるとしても,それだけでは,実際に広州交易会に行ったことにはならない。
(イ) Dは,原告代理人の反対尋問において,トップウィンの中国語による名称を答えることはできなかったことからすると,そもそも,トップウィンは,第90回広州交易会に出展していなかったためであると推察される。また,Dは,上記広州交易会の入場手続について,社員にチケットを購入する金員を渡しているかもしれないが,その他のものは渡していないと思う,詳しくは覚えていない旨証言したが,上記広州交易会への入場は当初から無料であり,しかも,その入場手続は厳格を極めているのであるから,Dの証言は不自然であって,信用できない。
(ウ) Dは,第90回広州交易会で,「LED回転台」を見つけ,輸入したと証言するが,「LED回転台」という以上,それは文字どおり回転するものであるはずであるが,型番CXDZ-3の商品陳列台は回転しないタイプであるから,Dは,本件でいう「CXDZ-3」とは異なるものを述べているものである。
(エ) Dは,甲15インボイス等に関して,原告代理人の問いに対し,「インボイスは基本的にはこれはコムネットのほうが作っていると思います。」(速記録15頁)などとと答えているが,インボイスやパッキングリストは輸出業者が作成するもので,輸入業者において作成するものではなく,上記証言は,取引慣行,経験則に全く反する証言である。また,Dが,甲15インボイス等中の手書きの部分等について懸命に弁解に努め,その正当性を強弁しているのは,証人の単なる思い違いによるのか,意図的であるのか不明であるが,いずれにしても,Dの証言は信用するに足りない。
(オ) その他,D証言は,前後の証言の辻褄が合わないなど,全般的に不自然であって,中国広州交易会に展示されていた商品についての記憶によるものではなく,後に引用刊行物を見た上で推測に基づいて証言している可能性が高く,信用性がない。
2取消事由2(本件登録意匠と引用意匠との類否に関する認定判断の誤り)( ) 本件登録意匠と引用意匠との相違点の誤認1ア審決は,前記第2の2( )のとおりに本件登録意匠と引用意匠とを対比し, 4共通点,相違点を抽出したが,誤りである。
イまず,本件登録意匠は,意匠に係る物品「発光ダイオード付き商品陳列台」に係り,その態様は,中央開口を有する円形上面部とその周囲に湾曲肩部を経て連続する垂下外周壁部とからなる覆枠体の下面円形開口に円形底板を嵌着して形成した内空で所要の高さ(厚み)のある扁平円盤体で,?@その中央部に収容した上向き拡開型反射円筒の上側開口の縁を,上記円形天板部の中央開口に一致させ,?A中央に上記上側開口に一致する丸窓を有するとともに辺縁にテーパー部を有する円形乗載板を,上記円形天板部に同心重合し,?B上記上向き拡開型反射円筒内に,7個の発光ダイオードを中心の1個の回りに6個を取り囲む状態にして配置し,?C上記垂下外周壁部の一側に,スイッチとプラグを表していると推認できる比較的小さな横長四角図形と二重丸図形を表し,?D上記円形底板の下面には,その中央に比較的大きな横長四角の図形を描くとともに,その図形を囲む仮想三角形の各頂点部位に円形片を突設配置し,かつ,該図形の横長側方には9個の小円を縦横列にして描いているものである。上記において,当該各部すなわち扁平円盤体の高さ(厚み)と,同直径,円形乗載板の直径,同厚さ及び丸窓の直径との比は,およそ,1:5:4.2:0.1:1.3である。
ウそして,本件登録意匠と引用意匠とは,任意の商品(透明装飾体)を乗載設置し,それを発光ダイオードで照光するのに使用する発光ダイオード付き商品陳列台に係るものであることにおいて,意匠に係る物品を共通にする。また,本件登録意匠と引用意匠とは,前者が,扁平円盤体の円形上面部に,中央に丸窓を有する円形乗載板を同心にして重合するとともに,上向き拡開型反射円筒内に発光ダイオードを配置し,当該各部,すなわち,扁平円盤体の高さ(厚み)と,同直径,円形乗載板の直径,同厚さ及び丸窓の直径との比が,およそ,1:5:4.2:0.1:1.3であるのに対し,後者が,黒色円形扁平体の上面に,中央開口を有する乳白色円形展示板を同心状態にし重合するとともに,凹部内に発光ダイオードを配置し,当該各部すなわち黒色円形扁平体の高さ(厚み)と,同直径,乳白色円形展示板の直径,同厚さおよび中央開口の直径との比が,およそ,1:5:4.4:0.09:1.6であることにおいて,両者の態様を共通とする。
エ一方,両意匠は,次の点で差異がある。
(ア) 前者の扁平円盤体が,中央開口を有する円形上面部とその周囲に湾曲肩部を経て連続する垂下外周壁部とからなる覆枠体の下面円形開口に円形底板を嵌着して形成した内空をなしているのに対し,この扁平円盤体に対応する後者の黒色円形扁平体の内部の形状が特定できない,すなわち,該黒色円形扁平体が下面円形開口を有するか,円形底板を嵌着して成るか,内空であるかなどが認定できない点で差異がある(以下「相違点(ア)」という。)。
意匠法24条によれば,登録意匠の範囲は,願書及び願書に添付した図面に記載された意匠に基づいて定めなければならないとされているところ,物品の使用状態を考慮して登録意匠の範囲を認定することが正しいとすれば,本体に組み込まれた状態では外部から視認できないものである部品の意匠は登録できないこととなるのが道理である。しかし,従来からの意匠法の実務ではそのようなことは全く通用していない。なお,商品陳列台の通常の使用状態とは,審決のいう「展示板」上に所望の商品を載置した状態と解するのが自然であり,単に「点灯している状態」だけでは通常の使用状態には該当しない。
(イ) 前者の円形乗載板が,文字どおり円形をなし,中央に丸窓を有するとともに辺縁にテーパー部を有するのに対し,この円形乗載板に対応する後者の乳白色円形展示板が,後半外縁周を前半外縁周に比し大きくした変形をなしている点で差異がある(以下「相違点(イ)」という。)。
(ウ) 前者の扁平円盤体が,その上向き拡開型反射円筒内に,7個の発光ダイオードを中心の1個の回りに6個を取り囲む状態にして配置しているのに対し,後者の黒色円形扁平体が,凹部内に3個の発光ダイオードを1列に配置しているにすぎない点で差異がある(以下「相違点(ウ)」という。)。なお,当該カタログの「CXDZ-3」の写真横には「LED:7pcs」という記載があるが,その写真からは7個のLEDが配置されていることを看取できない。
(エ) 前者の扁平円盤体が,垂下外周壁部の一側にスイッチとプラグを表していると推認できる比較的小さな横長四角図形と二重丸図形を表しているのに対し,後者の黒色円形扁平体が,そのような図形を表していない点で差異がある(以下「相違点(エ)」という。)。
(オ) 前者の円形底板が,その下面中央に比較的大きな横長四角の図形を描くとともに,その図形を囲む仮想三角形の各頂点部位に円形片を突設配置し,かつ,該図形の側方には9個の小円を縦横列にして描いているのに対し,後者が係る図形を表していない点で差異がある(以下「相違点(オ)」という。)。
( ) 相違点の判断の誤り2ア審決は,前記第2の2( )のとおり,「特にその使用目的上,上面の態様に 5ついて関心をもつものである」とする一方で,「発光ダイオード配置部について,開口状態であるか否かは,通常の使用態様である点灯状態の引用意匠を見ても明らかなように,上部の覆いの有無は視認し難く,また,その部位は展示版の中央にあるから,上に商品が展示されてしまえば視認し難く,それはそこに配された発光ダイオードの配列についても同様であるから,(これらの相違は)看者の注意を惹かず」と判断するが,誤りである。
イ発光ダイオード付き商品陳列台について,実際の使用状態における意匠を認定すべきものであるとした場合には,本件登録意匠にあっては,円盤体が重要な地位を占めることとなるはずであるが,当該円盤体の形状は,本件出願日前に日本国内及び外国において周知の形状であるから,この周知の形状を基にして商品陳列台の形状をやや高さ(厚み)のある円盤体とすることは,当業者にとって容易に創作し得たことであるので,この部分には,創作された意匠としての特徴がなく,したがって,当該意匠の要部とはいえない。
一方,本件登録意匠の特徴は,扁平円盤体の円形上面部に覆いのない中央開口,この中央開口に丸窓を一致させた円形乗載板,同中央開口に上側開口を一致させた上向き拡開型反射円筒内における7個の発光ダイオードの配置状態等と,その他の要素との有機的結合構成にあり,当該上部の「覆いの有無」,「開口状態」,「発光ダイオードの配列状態」等の要素との結合にその特徴があるものというべきであり,これらの点を度外視した本件登録意匠の認定判断は,意匠の全体観察を看過するものである。
また,本件登録意匠に係る商品陳列台は,内部に彫刻を有する透明装飾体に使用する場合であっても,当該透明装飾体の彫刻の施されている位置や大きさとも密接に関連し,また,内部に彫刻を有しない透明装飾体についても使用できるものであって,その置物の外周の色彩や彫刻等にマッチしたものに着目するときは,発光ダイオードの数及び配置は,極めて重要な要素を占めることが明らかであり,審決は,これらの点も看過したものである。
本件登録意匠に係る商品陳列台にクリスタルグラス等の透明装飾体を乗載し,発光ダイオードが点灯している状態,すなわち,審決のいう通常の使用態様においては,その透明性を通じ,上側開口の状態や発光ダイオードの配置状態を明瞭に視認することができるものであり(検甲1,2参照),取引者,需要者は,その点に注意を引かれて購入意欲がそそられることも少なくない。
そうすると,本件登録意匠と引用意匠とは,上記( )ウのような共通点があると1しても,上記( )エの各点を異にしていることから,両者が,発光ダイオード付き 1商品陳列台が属する分野における取引者,需要者の視覚を通じて起こさせる美感が全く異なったものとなるから,本件登録意匠と引用意匠とは,互いに非類似の意匠というべきである。
第4被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(引用刊行物の公知性の認定の誤り)に対して( ) 甲8の1,甲9の1証明書の信用性について1原告は,甲8の1,甲9の1証明書,及び,引用刊行物及び公知の刊行物について争ったことがあるが,これらの原本は,被告が本件に係る審判手続中で特許庁に証拠として提出しているため,その原本を本件訴訟において提出することができない。そこで,被告は,念のため,甲8の1,甲9の1証明書,引用刊行物の原本のカラーコピーを乙3の1,2及び乙4の1,2として提出するものである。
ア原告は,甲8の1証明書に記載された社名が活字印刷されているにすぎないから,その社名を含む印影が同社の正しい印章に基づくものであるか不明である旨主張する。
しかし,甲8の1証明書中の「義烏市金典広告有限公司」の文字は,手書きではなくワープロ印刷であるところ,一般に,ビジネス文書において自らの社名をワープロ印刷することが多い実務慣行に照らすと,社名がワープロ印刷であるからといって,その社名を含む印影が同社の正しい印章に基づくものであるか不明であるとの経験則は成り立たず,むしろ,近時は,社名をワープロ印刷し,これに押印することがほとんどである。したがって,作成者の名称のワープロ印刷の存在と,その名称に跨る印影が存在すれば,「私文書は,本人またはその代理人の署名または押印がある時は,真正に成立したものと推定する」(民訴法228条4項)との要件を満たすものである。
原告は,甲8の1証明書とその翻訳とを対比して,甲8の1証明書の作成者と,その翻訳の作成者とが被告と何らかの利害関係を有する間柄にある者であって,被告の依頼に基づき,事実を確認することなく安易に作成された可能性が高い旨主張するが,憶測等によるものであって,拠って立つ証拠と事実に乏しいものである。
NEW CHINA IMPORTイ原告は,甲9の1証明書に記載されたドイツ企業「」はハンブルグに存在していない旨主張する。
EXPORTしかし,日本でもドイツでも,中小の事業には様々な形態があり,ある程度の規模になり税務上のメリットが享受できるようになれば,法人化を指向するようになるが,それ以下の事業規模の場合には,個人事業としている場合がほとんどであり,甲9の1証明書に記載されたドイツ企業もそのような個人事業であると認められる。
ちなみに,乙11によれば,ドイツ企業「」は,自NEW CHINA IMPORT EXPORTらのウエブサイトを有しているから,個人事業又は民法上の団体として営業を行なっていることが明らかである。
( ) 審決における引用刊行物の公知性認定を裏付けるものとして次の事実がある。
2コムネットは,パソコン用CADソフトの開発及び販売,コンピューター関連機材の製造及び販売等を行っている神戸市に本社を置く会社であり,その業務の1つとして3Dクリスタル彫刻機及び「神戸クリスタル」という3D立体彫刻を販売しているところ,コムネットの代表取締役であるDは,平成13年(2001年)10月,中華人民共和国の広州市において開かれた第90回広州交易会を訪れ,そこで3D加工されたクリスタル及び型番CXDZ-3の商品陳列台を見つけ,これらをトップウィンから輸入したのであり,その輸入した型番CXDZ-3の商品陳列台が,引用刊行物1に掲載された型番CXDZ-3の商品陳列台であったのである。
トップウィンは,2001年4月30日,初めて第89回広州交易会に展示したものであり,甲15インボイス等は,上記の経緯によってコムネットが型番CXDZ-3の商品陳列台を仕入れたことを示すものであり,具体的には,インボイス(甲15の1)が,2002年(平成14年)11月25日に,上海から型番CXDZ-3の商品陳列台が輸入されたことを,パッキングリスト(甲15の2)が上記輸入貨物の明細を示している。このように,本件出願日前に,中国において,本件登録意匠を備える製品が広く製造販売されており,これを見た日本の会社が当該製品を中国より日本へ輸入していたのであるから,これらの事実に照らせば,引用刊行物は,真正に成立しており,かつ,本件出願日前の平成14年10月25日に頒布されていたものと認められる。
( ) 原告の主張に対して3ア型番CXDZ-3の商品陳列台が第90回広州交易会で展示されていないとの主張に対して原告は,第90回広州交易会への出展社(企業)名簿にトップウィンの名称が中国語名でも英語名でも掲載されていないことを理由に,トップウィンの上申書の信用性を争っている。
しかし,トップウィンは,元々「上海申宏有限公司」という会社の一部門として出発しており,2001年春の第89回広州交易会には,「上海申宏有限公司」として出展していたのである。その後の2001年8月29日に,トップウィンは,親会社の上海申宏有限公司から子会社として独立し,「上海申宏運通進出口有限公司」となったが,同年10月の第90回広州交易会には親会社の名前で申し込んでいたため,同交易会には,「上海申宏有限公司」の名義のままで出展し,なお,交易会のブース看板には,新会社名である「上海申宏運通進出口有限公司( )」を表示したのである。
SHANGHAI SHENGHONG TOPWIN IMP&EXP CO.,TDイコムネットが輸入した型番CXDZ-3の商品陳列台が引用商標に係る物品とはいえないことに対して(ア) 原告は,コムネットがトップウィンから型番CXDZ-3の商品陳列台を輸入する際に発行されたとされる甲15インボイス等は,輸出元の名称が記載されていない不自然なものであるのに,被告は,その輸出元を明らかにしていない旨主張する。
この点については,乙15の1,2によれば,トップウィンが作成したものであることが明らかである。
(イ) 原告は,インターネットで「CXDZ-3」又は「CXDZ3」を検索すると,これらが社名又はURLの一部として,あるいは製品型番号として,枚挙にいとまがないほどに使用されている旨主張する。
しかし,「CXDZ-3」又は「CXDZ3」の文字列が広く用いられているとしても,そのことから,「CXDZ-3」という名称を共通し意匠を異にする商品陳列台が多数存在するということはできない。
なお,原告のホームページ(乙18の1,2)には,引用刊行物2と同一意匠の2種類の商品陳列台が「NKLS-3SL」,「NKLS-3B」の品名で掲載されているが,当該商品陳列台の写真には,それぞれ「CXDZ-3sl」「CXDZ-3b」という名称が付されている。これは,原告が当該製品の販売を開始するに当たって,いずれからか既存の「CXDZ-3」の画像を入手し,それをそのまま自社のホームページ上に貼り付けたことを強く示唆し,このことは,原告が引用刊行物2の「CXDZ-3」を模倣して自らの製品を作成し,これを意匠出願して登録を受けたことを強く示唆するものである。
ウ審決取消訴訟における主張立証上の制約等原告は,本件出願日前において中国で製造販売されたという公知事実,我が国へ輸入されたという事実は,本件に係る審判手続において現実に争われたものでも,審理判断された特定の無効原因でもないから,審決取消訴訟において審決の結論を維持する事由等として主張することはできない旨主張する。
しかし,本件出願日前において中国で製造販売されたという公知事実,我が国へ輸入されたという事実は,すでに被告が審判段階でも,主張立証していたものであって,無効原因をめぐって攻防が行われたということができるものであり,また,少なくとも原告に反論の機会が与えられていたものであるから,審決取消訴訟においてこれを主張することは,当事者間における手続保障には何らの問題はなく,最高裁昭和51年判決に違反するものではない。
なお,被告主張の上記事情によれば,本件出願日前に,中国において本件登録意匠が公然知られており,本件登録意匠を備える物品が広く製造販売されていたものであるから,意匠法3条1項1号,3号によって,本件登録は無効である。
エD証言の信用性等(ア) 原告は,Dは,被告代理人後藤の反対尋問において,トップウィンの中国語による名称を答えることはできなかったことからすると,そもそも,トップウィンは,本件広州交易会に出展していなかったためであると推察される旨主張する。
しかし,Dがトップウィンの中国語による名称を覚えていないという事実それ自体は何ら不自然ではないし,トップウィンが確かに問題の交易会に出展していたことは前記ア(ア)のとおりである。
(イ) 原告は,Dが本件広州交易会で「LED回転台」を見つけて輸入したとの証言を捉えて,「LED回転台」という以上,それは文字どおり回転するものであるはずであるから,本件でいう「CXDZ-3」とは異なるなどと主張する。
確かに,証人は,「回転しているものと・・・していなかったものがあったというふうに記憶している」(速記録18頁)と述べており,展示品に回転するタイプが含まれていたか否かについて,証言に混乱がみられる。しかし,また,Dは,「回転台」と呼ぶものの中には回転しないものも含まれると述べ,さらには,「展示していたのは回転していなかったと思います。」(同13頁)とも証言しているのである。これらのどこから,Dの見た回転台が回転するものであるはずであるとの推論が成り立つのか,被告としては理解に苦しむものである。
(ウ) 原告は,Dは,甲15インボイス等に関して,原告代理人の問いに対し,「インボイスは基本的にはこれはコムネットのほうが作っていると思います。」(速記録15頁)などとと答えているが,インボイスやパッキングリストは輸出業者が作成するもので,輸入業者において作成するものではなく,上記証言は,取引慣行,経験則に全く反する証言であり,信用できない旨主張する。
確かに,インボイスは,取引慣行からも,レターヘッド(乙15の1)から,トップウィン社が作成したものであることは疑いなく,Dがなにゆえ原告の指摘するような証言をしたのか,被告にも不明である。おそらくは慣れない証人席に座って緊張したためではないかと想像されるが,いずれにせよ単純な思い違いにすぎず,証人の証言全体の信用性に影響するような事柄ではない。
2取消事由2(本件登録意匠と引用意匠との類否に関する審決の認定判断の誤り)に対して( ) 本件登録意匠と引用意匠との相違点の誤認に対して1ア原告主張の相違点(ア)は,意匠内部に関する相違であり,外観の相違ではないから,両意匠の共通する全体の美感を変更するものではない。
原告は,意匠法24条を持ち出し,さらに部品の意匠の登録性に言及しているが,両意匠の類否判断の手法が問題となっているにすぎないのであって,理解に苦しむものである。
仮に,原告が物品の使用状態を考慮して類否判断することが許されないと主張しているとしても,意匠の類否判断においては,例えば,壁面にはめ込まれて使用されるクーラーの意匠では,正面以外の面はほとんど無視され,正面が大きなウエイトをもって判断されるなど,意匠の類否判断をする上で,物品の性質や用途と共にその使用形態や使用状態を予測して要部を認定する手法は通常のものであるから,意匠法24条を根拠とする原告の主張は失当である。
ところで,引用意匠の形状は,斜視状態の写真であるため不明な点があるのは事実であるが,意匠法3条1項に規定する刊行物に記載された意匠としての物品の形状とは,そこに掲載されている物品の写真,図面を通じて,そして,その説明文があるときはそれを参酌して認識される物品の形状をいうのであって,必ずしも認識の素材たる写真,図面そのままの形状をいうのではない(東京高等裁判所平成元年5月30日,昭和63年(行ケ)235号事件判決参照)。
イ原告主張の相違点(イ)の「この円形乗載板に対応する後者の乳白色円形展示板が,後半外縁周を前半外縁周に比し大きくした変形をなしていること。」との主張は,にわかに理解し難いものであり,引用意匠が斜視状態の写真であることを考慮してみれば,本件登録意匠及び引用意匠の円形展示板は,外縁周において相違しないことが明らかである。
ウ原告主張の相違点(ウ)についてみると,たとえ,引用意匠の斜視状態の写真では3個の発光ダイオード(LED)が一列に配置されたように見えるとしても,引用意匠の写真の横にある「LED:7pcs」の説明を参照すれば,実際には7個あるということを容易に理解することができる。そして,7個という奇数個の発光ダイオードを円形窓部に合わせて円内に配列しようとすれば,中心となる1個の回りに6個を取り囲むという周知のいわゆる七曜紋様のありふれた配列となるのが自然であり,むしろそれ以外の配置とすることは困難であるから,引用意匠の形状と「LED:7pcs」の説明とから,本件登録意匠の発光ダイオードと同様の配置状態に取引者,需要者が想到することが容易である。
エ原告主張の相違点(エ),(オ)についても,わずかな相違であって共通する全体の美感を変更するほどのものではない。
オしたがって,相違点についての審決の認定に誤りはない。
( ) 相違点の判断の誤りに対して2引用意匠から認識される物品の形状を基に類否判断を行う場合には,審決にあるように両意匠の上記共通点は,「圧倒的で,両意匠は全体として美感が共通する」ものということができる。
原告は,審決が「上に商品が展示されてしまえば視認し難く,それはそこに配された発光ダイオードの配列についても同様であるから,(これらの相違は)看者の注意を惹かず」と判断したことを論難し,本件登録意匠に係る商品陳列台にクリスタルグラス等の透明装飾体を乗載し,発光ダイオードが点灯している状態,すなわち,審決のいう通常の使用態様においては,その透明を通じ,上記開口の状態や発光ダイオードの配置状態を明瞭に視認することができる旨主張する。
しかし,本件登録意匠の通常の使用態様は,原告自身も認めるように,発光ダイオード付商品陳列台上にレーザーによって内部に彫刻を与えられたクリスタルグラスを載置するものであって,かつ,発光ダイオードが点灯している状態であり,審決は,このような通常の使用状態を認識した上で,上部の覆いの有無及び発光ダイオードの配列については視認し難く,看者の注意を引かず,共通する全体の美感を変更するものではないとしたのである。
したがって,審決の判断は,首尾一貫した合理的なものであって,原告の主張は,失当である。
第5当裁判所の判断1取消事由1(引用刊行物の公知性の認定の誤り)について( ) 審決は,甲8の1,甲9の1証明書,甲13及び甲14を根拠にして,引用1刊行物は,本件出願日前の平成14年(2002年)10月25日に頒布された刊行物であると認定するのに対し,原告は,引用刊行物は民訴法228条4項の推定の働かない刊行物である旨主張するので,検討する。
ア原告は,平成19年3月7日の第4回口頭弁論期日において,「甲第8号証の1乃至3及び同9号証の1乃至3の各文書につき,原本が存在することについては争わない。」旨陳述したから,甲8の2,甲9の2刊行物の原本が存在することは当事者間に争いがなく,引用刊行物1には,浦江県誠興電子電器有限公司の製品である各種の発光ダイオード付き商品陳列台,アダプター,変圧器が,引用刊行物2には,同有限公司の製品である各種の発光ダイオード付き商品陳列台が掲載されていること,これらの引用刊行物の各種の発光ダイオード付き商品陳列台の中に,型番CXDZ-3の商品陳列台が含まれていることが認められる。
イまた,上記アのとおり,甲8の1,甲9の1証明書の原本が存在することも当事者間に争いがないところ,甲8の1証明書には,「浦江県誠興電子電器有限公司(注1)の下記の製品(注2)目録(注3)は当社が2002年4月10日に上記会社のためにデザインし,製作したものであることを証明する。」との記載があり,「注2」に掲げる製品の中には,型番CXDZ-3の商品陳列台が含まれており,「注3」に記載されている目録についての記載は,引用刊行物2と一致している。
甲9の1証明書には,「当社(浦江県誠興電子電器有限公司)は義烏市金典広告有限公司が2002年4月10日にデザインし製作した当社の製品カタログ(添付)を2002年12月13日以前に多数の客先に配布したことを証明いたします。
証明するために配布先を下記のように列挙します。」との記載があり,同記載の下には,2002年4月27日,広州交易会会場内当社展示ブースで,アメリカのロスアンゼルス所在の会社に2部,同年9月5日,同社工場内で,日本の埼玉県所在の会社に3部,同年10月25日,広州交易会会場内当社展示ブースで,ドイツのハンブルグ所在の会社( )に3部,それぞれ配布しNEW CHINA IMPORT EXPORTた旨の記載があるとともに,引用刊行物2が添付されている。
ウ証拠(甲9の1,甲15の1,2,甲28,乙2,乙3,4の各1,2,乙5〜7,乙13,14,乙15の1,2,乙16,証人D)によれば,次の事実が認められる。
(ア) コムネットは,パソコン用CADソフトの開発及び販売,コンピューター関連機材の製造及び販売等を営業目的として平成3年6月18日に設立された資本金7500万円の株式会社であり,神戸市に本社及び事業所を置き,代表取締役にはDが就任しており,その業務の1つとして,光学ガラス,クリスタルガラス等を彫刻するための高精度の3Dクリスタル彫刻機,クリスタルガラスの中に3D立体彫刻を施したクリスタル製品を販売している。
(イ) Dは,平成13年(2001年)10月14日から同月17日までの間,訪中して第90回広州交易会を訪れ,トップウィンのブースに展示されている型番CXDZ-3の商品陳列台を見た。
(ウ) コムネットは,2002年10月か11月ころ,トップウィンとの間で,型番CXDZ-3の商品陳列台等を中国から輸入する契約を締結した。
(エ) トップウィンは,コムネットに対して,同年11月25日付けの甲15インボイス等を送るとともに,同月29日,上海から神戸に向けて船便で注文を受けた型番CXDZ-3の商品陳列台等を送った。
(オ) コムネットは,その後も,型番CXDZ-3の商品陳列台の輸入を継続している。被告は,コムネットの販売代理店であるところ,本件登録意匠の存在を知り,平成17年4月27日,本件無効審判の請求をした。
エ上記認定の事実によれば,トップウィンは,本件出願日前である平成14年11月29日に型番CXDZ-3の製品を日本に送っており,その契機となったのは,Dが第90回広州交易会で型番CXDZ-3を見たことであって,トップウィンは,第90回広州交易会において,すでに型番CXDZ-3の商品陳列台を展示していたものというべきであり,このように中国から同国外へ輸出用として型番CXDZ-3の商品陳列台を展示している以上,特段の事情の認められない本件においては,その当時,型番CXDZ-3の商品陳列台に係るカタログが存在し,かつ,これを配布していたものと推認される。
オ上記アないしエを総合すると,浦江県誠興電子電器有限公司は,義烏市金典広告有限公司に対して,型番CXDZ-3の製品を含む自社の製品を紹介するカタログの製作を依頼し,これを2002年4月10日に完成させた上,同年4月27日ないし10月25日までの間に,少なくとも,アメリカ,日本,ドイツの会社に対して,型番CXDZ-3の製品を含む各種の発光ダイオード付き商品陳列台のカタログである引用刊行物2を8部配布したことが認められる。
( ) 原告の主張について2アまず,原告は,上記( )ア及びイ認定の事実を争って,甲8の1,甲9の1 1証明書の信用性を弾劾する。
(ア) 甲8の1証明書には,「義烏市金典広告有限公司」という社名があり,その社名の上に重ねて同社の印影があるものであって,本人の押印が存在することが明らかである。また,甲9の1証明書には,「浦江県誠興電子電器有限公司」,「法人代表:C」という社名と代表者名があり,それらに重ねて同社の印影があるものであって,本人の押印が存在することが明らかである。そうすると,甲8の1と甲9の1証明書が,真正に成立されたものと認定するについて,原告主張の事柄がそれ自体として格別阻害的な事由を構成するわけではない。
(イ) 原告は,甲8の1証明書に記載された社名は,「義烏市金典広告有限公司」とされているが,活字印刷されているにすぎないから,その社名を含む印影が同社の正しい印章に基づくものであるか不明である旨主張する。
しかし,民訴法228条4項は,本人又はその代理人の署名又は押印があるときに私文書の真正な成立を推定するものとしているところ,上記のとおり,本人の押印がある以上,その上に代表者の署名を必要とするものではないから,原告の上記主張は,失当である。
(ウ) また,原告は,甲8の1証明書の翻訳が不自然であるなどとして,同証明書の真正な成立を争う。
しかし,甲8の1証明書の翻訳は,あくまでも翻訳であって証拠ではない。たとえ甲8の1証明書の翻訳に不自然なところがあるとしても,成立の真正の推定とは無関係である。
(エ) 原告は,甲9の1証明書には,浦江県誠興電子電器有限公司が2002年1NEW CHINA IMPORT 0月25日に広州交易会会場内の同社ブースでドイツ企業「」に対して甲9の2刊行物を3部配布したとの記載があるが,甲25,2EXPORTNEW6の各1,2によれば,1982年1月1日から今日に至るまでの間に,「」という名称で登録されている会社は,ハンブルグに存CHINA IMPORT EXPORT在していない旨主張する。
しかし,甲9の1証明書が述べているのは,甲9の2刊行物2部をドイツ企業の「 」と称する会社の関係者に配布したということでNEW CHINA IMPORT EXPORTあって,「 」という名称で登録されている会社が実 NEW CHINA IMPORT EXPORT際にハンブルグに存在していたかどうかとは直接関係がない。なお,乙11によれば,「 」は,2007年3月16日現在,ウエブサNEW CHINA IMPORT EXPORTイトを有していることからすると,架空の会社であるとはいえず,原告主張のとおNEW CHINA IMPORTり,1982年1月1日から今日に至るまでの間に,「」という名称で登録された会社がハンブルグに存在していないとすれば,EXPORT同社は,個人事業または民法上の団体として営業を行っているものと推認される。
(オ) その外,甲8の1,甲9の1証明書の信用性を左右するような証拠は,これを見いだすことができない。
イ原告は,上記( )エ認定の事実を争うので,検討する。
1(ア) 型番CXDZ-3の商品陳列台が第90回広州交易会で展示されていないとの主張についてa上記( )エのとおり,トップウィンは,第90回広州交易会において,型番1CXDZ-3の商品陳列台を展示していたものと認められる。
ところで,原告は,反証として,甲32の1,甲33の1を提出するところ,甲32の1には,「証明書」と題し,「私は,2001年秋の第90回中国輸出商品交易会に行きました。そして上海申宏有限公司のブースに立ち寄りました。そこには,CXDZ-3のLED台座は出品されていなかったことを証明します。」との記載があり,甲33の1もほぼ同文である。しかし,上記記載は,内容に具体性がないばかりか,その信用性を裏付けるものも何もないから,にわかにこれを信用することはできない。
b原告は,トップウィンの上申書(乙9)を弾劾して,トップウインは,2001年8月29日に設立された会社であるから(甲28の1,2),その設立以前に開催された第89回広州交易会に出展することは,不可能であったはずであり,現に,第90回広州交易会への出展社(企業)名簿にも,トップウィンの名称が中国語名でも英語名でも掲載されていない旨主張する。
証拠(甲28の1,2,甲31の1,乙16)によれば,第90回広州交易会への出展社(企業)名簿である「中国輸出商品交易会出展社名簿大全」の出展所属管理区域「上海」の欄には,「上海申宏有限公司」の名が掲載されており,トップウィンの社名はないこと,トップウィンは,元々「上海申宏有限公司」という会社の一部門であったところ,2001年8月29日に,親会社の上海申宏有限公司から子会社として独立し,「上海申宏運通進出口有限公司」となったこと,2001年春の第89回広州交易会には,「上海申宏有限公司」として出展したが,同年10月の第90回広州交易会にも,親会社の名義のままで出展しつつ,交易会のブースSHANGHAI 看 板に は ,新 会 社名 で ある 「 上 海申宏 運通 進出 口有 限公 司()」を表示したことが認められる。そうSHENGHONG TOPWIN IMP&EXP CO.,LTDすると,トップウインが第90回広州交易会に出展したと認めることに何ら不自然なところはなく,トップウインが出展することはあり得なかったとする原告の主張は,失当である。
c原告は,被告が原告による弾劾への反論として提出した乙16を弾劾して,乙16には不明瞭な点がいろいろとあり,信用することができないなどと主張するが,上述のとおり,トップウインが第90回広州交易会に出展したと認めることに何ら不自然なところはなく,トップウインが出展することはあり得なかったとする原告の主張は,失当である。
(イ) コムネットが輸入した型番CXDZ-3の商品陳列台が引用商標に係る物品とはいえないことについてa原告は,甲15インボイス等は,輸出元の名称が記載されていない不自然なものであるのに,被告が,上海から輸入されたと主張するだけで,その輸出元を明らかにしていないから,甲15インボイス等によって,CXDZ-3が日本に輸入された事実が立証されているとはいえない旨主張する。
しかし,甲15インボイス等は,その写し自体から文章の一部が伏せられていて,抄本であることが明らかであるところ,Dに対する尋問における原告代理人の指摘に沿って被告が提出した完全なインボイス及びパッキングリスト(乙15の1,Shanghai Shenhong 2)には,輸出元として「上海申宏運通進出口有限公司()」,すなわち,トップウィンの名称,所在地,電話番号Topwin Imp&Exp Co.,Ltd等の記載があるから,原告の上記主張は,その前提を欠くものである。
b原告は,「CXDZ」,「CXDZ-3」又は「CXDZ3」の表示は,中国,日本において,社名,URLの一部又は製品型番号として普通に多用されているものであるから,甲15インボイス等に「CXDZ-3」の記載があるからといって,それが引用刊行物の「CXDZ-3」が表す商品(物品)の意匠と結びついているなどと短絡的なことをいうことはできない旨主張する。
しかし,本件で問題となっているのは,引用刊行物に記載されている型番CXDZ-3の商品陳列台と,コムネットのDが第90回広州交易会で見て輸入した型番CXDZ-3の商品陳列台とが同じ商品であるか否かということであって,およそ,同一業者において,型番が同じである以上,特段の事情のない限り,同一商品であるのが通常であり,これを覆すような特段の事情は認められない。単に,一般的に,中国あるいは日本で,社名,URLの一部又は製品型番号として「CXDZ-3」の記号が使用されているか否かということとは全く無関係である。
(ウ) D証言の信用性等についてa原告は,記憶違いを理由にDが広州市へ行って広州交易会を見た年月日を変更したことを捉え,記憶違いを理由に広州交易会に行った日を訂正又は変更する主張は,時期に遅れたものであって,失当であり,また,同証人が,2001年10月14日に中国に入国し,同年同月17日に出国している事実(乙14)があるとしても,それだけでは,実際に広州交易会に行ったことにはならない旨主張する。
しかし,Dは,その証言において,「陳述書を書いたときには私の純粋な記憶に頼って,大体春か秋だなというのがあったので,3月か9月くらいかなと思いました。それで書かしていただいたのがこの2002年3月だと思います。」,「広州の天気にしてはそんなに暑くなかったような記憶があったので,まあ多分3月か9月くらいかなというふうに思ったので,陳述書にはそのようにまず書きました。その後,証拠の書類でもあることなので日付を明確にしなきゃいけないなと思ったからパスポートをめくって,日付を特定しました。そのために一応私のほうの日付を変えさせていただいたということです。」,「私はこの物産展には1回しか行ってないんです。その1回が,先ほどのパスポートの日付の日程です。」と述べているところ,そのパスポートからはDが平成13年(2001年)10月14日から同月17日までの間訪中していたことが認められるのであり,Dの上記証言は自然かつ合理的であり,十分に信用することができる。そうすると,Dは,当初の陳述書の誤りを訂正して喚起した記憶に沿った証言をしているのである。このような事実に関する訂正を時期に遅れたなどという原告の主張は,独自の見解にすぎない。
また,上記のとおり,パスポートからはDが平成13年(2001年)10月14日から同月17日までの間訪中していたことが認められるのみであるが,これとDの証言とを総合して,Dがその間第90回広州交易会を訪問したことを認定することができるのである。
b原告は,D証言は,前後の証言の辻褄が合わないなど,全般的に不自然であって,中国広州交易会に展示されていた商品についての記憶によるものではなく,後に引用刊行物を見た上で推測に基づいて証言している可能性が高く,信用性がない旨主張する。
確かに,D証言には,中国の広州市へ行って広州交易会を見た日付けを誤ったり,インボイスやパッキングリストをDが作成したかのように述べたりして,あいまいな部分があるが,その証言全体を観察すると,故意に事実を偽っているような形跡はなく,5年前の印象の薄れた事柄を思い出しつつ,誠実に証言しているものというべきである。
そして,前記( )エのとおり,トップウィンは,本件出願日前である平成14年111月29日に型番CXDZ-3の商品陳列台を日本に送っているのであり,本件は意匠法3条1項1号,3号の無効事由を審理の対象としているわけではないが,トップウィンが本件出願日前に中国で型番CXDZ-3の商品陳列台を販売していることは明らかである。
( ) 以上のとおりであるから,本件刊行物2が本件出願日前の2002年(平成314年)10月25日に多数頒布されていた刊行物であるとの審決の認定に誤りはない。
なお,原告は,型番CXDZ-3の商品陳列台が本件出願日前において中国で製造販売され,我が国へ輸入されたという被告主張に係る事実は,本件に係る審判手続において現実に争われたものでも,審理判断された特定の無効原因でもないから,審決の結論を是認,維持事由として主張することができない旨主張するが,被告の上記主張事実は,意匠法3条1項2号を前提とする同条1項3号に基づく無効原因を構成する事実として主張立証されたものであって,同条1項1号を前提とする同条3号に基づく無効原因を構成する事実として主張立証されたものではないから,被告が上記事実を主張立証することに手続上の問題はない。この点について,被告は,被告主張の事実によれば,本件出願日前に,中国において本件登録意匠が公然知られており,本件登録意匠を備える物品が広く製造販売されていたものであるから,同条1項1号,3号によって,本件登録は無効であるとも主張するようであるが,本件訴訟において,本件審判手続の経緯からして,被告は,同条1項1号,3号に基づく無効原因を主張立証して,本訴請求の棄却を求めることは許されない。
2取消事由2(本件登録意匠と引用意匠との類否に関する審決の認定判断の誤り)について( ) 本件登録意匠と引用意匠との相違点の誤認について1ア原告は,本件登録意匠の認定の誤りを主張するが,本件登録意匠の認定は,結局は,本件登録意匠と引用意匠との共通点,相違点の認定に帰着するので,共通点,相違点の認定の当否について検討することとする。なお,原告は,本件登録意匠,引用意匠の構成態様につき審決とは異なる表現を用いているが,必要のない限り審決の表現に従う。
イ本件登録意匠公報(甲2)の本件登録意匠と引用刊行物2(甲9の2,そのカラーコピーである乙4の2)記載の型番CXDZ-3の商品陳列台の写真を対比すると,両意匠は,審決が認定するとおり,「全体を平たい略短円柱状とし,上方円周部をアール状に形成し,頂面に円形展示板を配し,展示板中央に,円形凹部を形成して中に7個の発光ダイオードを密着させて配置した,光照射用円形窓を形成した基本的態様,そして,具体的態様においては,全体の高さと直径の比率構成,並びに,陳列台本体と円形展示板と光照射用円形窓の直径の比率構成が,共通する。」ことが認められる。
なお,原告は,本件登録意匠が,扁平円盤体の高さ(厚み)と,同直径,円形乗載板の直径,同厚さ及び丸窓の直径との比が,およそ,1:5:4.2:0.1:1.3であるのに対し,引用意匠が,黒色円形扁平体の高さ(厚み)と,同直径,乳白色円形展示板の直径,同厚さ及び中央開口の直径との比が,およそ,1:5:4.4:0.09:1.6であることにおいて共通する旨主張するが,これは,審決が,「具体的態様においては,全体の高さと直径の比率構成,並びに,陳列台本体と円形展示板と光照射用円形窓の直径の比率構成が,共通する。」(前記第2の2( ))としているのを表現を変えて説明するにすぎない。
4ウ原告は,相違点(ア)として,本件登録意匠においては,平たい略短円柱状の陳列台本体が内空となっているのに対し,引用意匠では内空であるか否かが不明である点で差異がある旨主張する。
確かに,本件登録意匠の断面図によれば,本件登録意匠において陳列台本体は内空であるが,当該断面図によれば,陳列台本体の内側は,いわゆる閉じられた空間となっており,当該物品を分解しない限り,陳列台本体が「内空」であることが分からないものである。意匠法にいう「意匠」とは,物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるものをいうのであるところ,対象となっている物品を分解しなければ見えないような部位は,視覚を通じて美感を起こさせるものとはいえない。
この点について,原告は,意匠法24条には,登録意匠の範囲は,願書及び願書に添付した図面に記載された意匠に基づいて定めなければならないと規定されているから,本体に組み込まれた状態では外部から視認できない部品の意匠であっても登録意匠の範囲に含まれる旨主張する。
しかし,上述したとおり,本体に組み込まれた状態では外部から視認できない部品の意匠は,視覚を通じて美感を起こさせる余地がないのである。原告の上記主張は,独自の見解であって,当裁判所の採用の限りでない。
エ原告は,相違点(イ)として,本件登録意匠の陳列台本体が文字どおり円形をしているのに対し,引用意匠のそれは斜視図であるので,円形展示板が文字どおり円形をしているかどうか不明である旨主張する。
しかし,遠近感覚を有する取引者,需要者であれば,斜視図を見たとき,それが斜視図であることを勘案して,平面図,正面図に置き換えた場合を想定して理解するのが通常である。そして,そのようにして引用意匠をみれば,斜視図の円形展示板が略楕円形をしていても,陳列台本体は円形をしているものと理解するのが通常である。
また,原告は,本件登録意匠の陳列台本体の辺縁がテーパー部であるのに対して,引用意匠のそれは,斜視図であるので,円形展示板が文字どおり円形をしているかどうか不明であり,斜視図からは後半外縁周を前半外縁周に比し大きくした変形をしているようにみえる旨主張する。
しかし,本件登録意匠の陳列台本体における辺縁のテーパー部は,末端の些細な形状であって,一種の面取りのようなものと認められ,その有無は,意匠上,考慮するまでもない。
オ原告は,相違点(ウ)として,引用意匠の展示板中央の円形凹部には3個の発光ダイオードを1列に配置しているにすぎず,引用刊行物2の「CXDZ-3」の写真横には「LED:7pcs」なる記載があるが,その写真からは7個のLEDが配置されていることを看取できない旨主張する。
確かに,引用意匠の斜視図を見たとき,明確に発光ダイオードであると認識できるものの個数は3個である。しかし,1列に並んだ3個の発光ダイオードの手前は見えにくいが,奥には3個の発光ダイオードと同様の輝きを持った物の存在が認識し得るとともに,当該カタログにおける引用意匠の写真の横には,「LED:7pcs」との記載があるのであって,斜視図とその物品の説明をも勘案すれば,7個の発光ダイオードを密着させて配置したものと認めるのが相当である。
原告は,引用刊行物2の「CXDZ-3」の写真横には「LED:7pcs」という記載があることを認めつつ,当該写真のみを観察すべきであるとしているようである。
しかし,引用刊行物2の「CXDZ-3」の写真は,斜視図であって,上記のとおり,発光ダイオードの全容を正確に把握することは困難であり,それゆえにこそ,当該写真横に「LED:7pcs」という説明の記載があるのである。したがって,引用意匠は,引用刊行物2の「CXDZ-3」の写真及びその説明を併せて理解することは当然に許されるものと解すべきである。
カ原告は,相違点(エ)として,本件登録意匠では,陳列台本体の側面にスイッチとプラグを表していると推認できる比較的小さな横長四角図形と二重丸図形を表しているのに対し,引用意匠では,そのような図形を表していない旨主張するが,これは,審決が相違点(い)として,「周面について,本件登録意匠はスイッチと電源コンセントを設けたのに対し,引用意匠は背面側が写っておらず,その有無が不明である点」を挙げているのを,表現を変えて述べているにすぎない。
キ原告は,相違点(オ)として,本件登録意匠では,陳列台本体の底部の中央に比較的大きな横長四角の図形を描くとともに,その図形を囲む仮想三角形の各頂点部位に円形片を突設配置し,かつ,該図形の側方には9個の小円を縦横列にして描いているのに対し,引用意匠では,そのような図形を表していると認めることができない旨主張する。
しかし,これは,審決が相違点(う)として「底面について,本件登録意匠は三つの円形滑り止めと,略長方形状の枠部,そして計9個の円形空気取り入れ孔を設けたのに対し,引用意匠は底面部は隠れていて,それらの有無が不明である点」としているのを,原告が,表現を変えて述べたにすぎないものというべきである。
クその外にも,原告は,引用意匠の展示板を「乳白色円形展示板」,陳列台本体を「黒色円形扁平体」などと称しているが,本件登録意匠は,形状のみを表した意匠であるから,審決が,相違点(え)として,「色彩について,本件登録意匠形状のみが表されたものであるのに対し,引用意匠は色彩を結合させており」と認定していることに誤りはない。
ケ以上を総合すると,審決の相違点(あ)ないし(お)の認定に誤りはない。
( ) 相違点の判断の誤りについて2ア原告は,本件登録意匠の特徴は,扁平円盤体の円形上面部に覆いのない中央開口,この中央開口に丸窓を一致させた円形乗載板,同中央開口に上側開口を一致させた上向き拡開型反射円筒内における7個の発光ダイオードの配置状態等と,その他の要素との有機的結合構成にあり,当該上部の「覆いの有無」,「開口状態」,「発光ダイオードの配列状態」等の要素との結合にその特徴があるものというべきであり,これらの点を度外視した本件登録意匠の認定判断は,意匠の全体観察を看過している旨主張する。
しかし,審決は,「展示板中央に,円形凹部を形成して中に7個の発光ダイオードを密着させて配置した,光照射用円形窓を形成した」構成が共通するとし,相違点として,「発光ダイオード配置部について,本件登録意匠は,円形凹部を開口状態とし,発光ダイオードを円形に7個配置したのに対して,引用意匠は,円形凹部の上部が開口状態のままなのか,あるいは透明な覆いがあるのかが不明で,発光ダイオードの具体的な配列も,斜視状態の写真によるので不明である点」(相違点(あ))で相違するとしており,陳列台本体の上部の「覆いの有無」,「開口状態」,「発光ダイオードの配列状態」等の要素の一致点,相違点を正しく摘示しているのであるから,これらの点を度外視して審決の認定判断を論難する原告の主張は,誤った前提に基づくものである。
そして,相違点(あ)については,審決が,「発光ダイオード配置部について,開口状態であるか否かは,通常の使用態様である点灯状態の引用意匠を見ても明らかなように,上部の覆いの有無は視認し難く,また,その部位は展示板の中央にあるから,上に商品が展示されてしまえば視認し難く,それはそこに配された発光ダイオードの配列についても同様であるから,これらの相違は看者の注意を惹かず,共通する全体の美感を変更するものではない。」(前記第2の2( ))としていると5おりであって,本件登録意匠の特徴的な部分といえないことが明らかである。
イ原告の上記主張の骨子は,本件登録意匠において,発光ダイオードを円形に7個配置したことにあると思われるが,上記のとおり,引用意匠においても,7個の発光ダイオードを密着させて配置したものと認められるから,原告の上記主張は,その前提を欠くものである。
ウしたがって,本件登録意匠が意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するとした審決の認定判断に誤りはない。
3以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却を免れない。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
  • この表をプリントする