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関連審決 不服2002-22870
関連ワード 意匠の実施 /  意匠の創作 /  美的形態 /  物品 /  形状 /  意匠に係る物品 /  3条1項3号 /  類似の意匠 /  意匠の類否 /  全体観察 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 171号 審決取消請求事件
原告 住友重機械工業株式会社
訴訟代理人弁護士 村田哲哉
同 尾関孝彰
同 弁理士 長谷川 芳樹
同 佐藤英二
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 伊勢孝俊
同 藤正明
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/11/29
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2002-22870号事件について平成16年3月9日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成13年10月16日,意匠に係る物品を「射出成形機」とし,その形態を別添審決謄本写し別紙第1記載のとおりとする意匠(以下「本願意匠」という。なお,以下,本願意匠に関する左右,上下等の方向は,上記別紙第1記載の【正面図】を基準とする。)につき意匠登録出願(意願2001-30409号,以下「本件出願」という。)をしたが,平成14年10月28日,拒絶の査定を受けたので,同年11月27日,これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は,同請求を不服2002-22870号事件として審理した結果,平成16年3月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月22日,原告に送達された。
2 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願意匠は,雑誌「Design Engineering」1990年11月30日号所載の写真に現された射出成形機の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HB03020296号,その形態は同審決謄本写し別紙第2記載のとおり。以下「引用意匠」という。乙12参照)に類似するから,意匠法3条1項3号に該当し,意匠登録を受けることができないものであるとした。
原告主張の審決取消事由
審決は,本願意匠と引用意匠との差異点を看過した(取消事由1)上,両意匠の類否の判断を誤った(取消事由2)結果,本願意匠は引用意匠に類似するとの誤った結論に至ったものであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(差異点の看過) (1) 審決が認定した本願意匠と引用意匠との差異点(イ)〜(ニ)のほか,両意匠は,「本願意匠の射出部は,台座の上面右半部に載置された略横長直方体状筺体の右端部に,上部に傾斜面を有する小型の凸状筺体部を形成しているのに対し,引用意匠には,そのような構成がない点」(以下「差異点(ホ)」という。)においても差異を有するものと認められるべきである。
(2) 被告は,差異点(ホ)に係る本願意匠の構成態様について,本件出願前,射出部の右端部分を変形する例が多数知られていたとし,本願意匠の当該構成態様は,ありふれた手法により,略横長直方体状筺体から成る射出部の構成態様をわずかに変形したものにすぎない旨主張する。
しかしながら,差異点(ホ)に係る本願意匠の射出部右端部の構成態様は,上側に傾斜面を有し,かつ,前後幅を狭くした小型凸状部であって,被告が援用する射出部右端部の構成態様(甲16,32,38,乙1の2枚目,乙2)とは明らかに異なる特徴的態様であるから,本願意匠のものが,ありふれた手法によるものであるとは到底いうことができない。本願意匠の当該構成態様は,本願意匠に係る射出成形機の右側の視認性をよくし,デザインをすっきりしたものとするという特徴を表すものであるから,類否判断に当たり,これを無視することはできないものである。
2 取消事由2(類否判断の誤り) (1) 共通点の評価の誤り ア 審決は,本願意匠と引用意匠との共通点(1)として認定した,「全体が,左半部に略直方体状空洞部を設けた略横長直方体状の台座の上面左半部に,正面視略横長方形状の型締め部を載置し,その台座の上面右半部に,略横長直方体状筐体の射出部を載置し,その射出部の左側面に水平状に略円柱状ノズルを突設し,ノズルの基部上部に逆円錐形の成形材料供給筒体を取り付けた基本的な構成態様のものである点」(審決謄本2頁第2段落,以下「共通点(1)」という。)について,「全体の基本的な構成態様であって,形態全体の基調を決定付けて,両意匠に係る形態の強い共通感をもたらしている」(同頁下から第3段落)と評価した。
しかしながら,上記認定に係る基本的構成態様は,この種の射出成形機においては周知のものである(甲3-1〜7,甲4-1〜6,甲5-1〜6,甲6-1〜5,甲7,10,14,16,19,21,23,25,27,30〜34)から,支配的な特徴ということはできない。
イ 審決は,本願意匠と引用意匠との共通点(2)として認定した,「型締め部について,正面視方形縁枠の内側に方形状の透明窓を設けた引き違い扉を台座の前後に突出する態様で2枚並設している点」(審決謄本2頁第2段落,以下「共通点(2)」という。)について,「全体の中でかなり大きな面積を占め,且つ注視される部分の態様に係り,また従前のものと比べて特徴的な態様であ」る(同頁下から第3段落)と評価した。
しかしながら,この種の射出成形機において,型締め部について,正面視方形縁枠の内側に方形状の透明窓を設けた引き違い扉を設けたものは周知であり(甲3-1〜7,甲4-1〜6,甲5-1〜6,甲6-1〜5,甲7,12〜17,19,21,23〜27,29〜35),また,その透明窓を有する引き違い扉を2枚並設したものも周知である(甲11,〜13,17,19,23,24)から,こうした構成態様をもって支配的な特徴ということはできない。
ウ 審決は,本願意匠と引用意匠との共通点(3)として認定した,「台座の正面前端の略左右中央部位に縦長方形板状の操作パネルを立設している点」(審決謄本2頁第2段落,以下「共通点(3)」という。)について,「操作時において注視される部分の位置と形態の共通点であって,大きな部分ではないが,両意匠の共通感をもたらして」いる(同頁下から第3段落)と評価した。
しかしながら,この操作盤の点は,意匠の部分に係るものであり,かつ,この種の射出成形機ではありふれた構成態様である(甲3-1〜7,甲4-2〜4,甲5-1〜6,甲6-1〜5,甲7,10〜12,14,16,19,23〜27,29〜35)から,類否判断に与える影響は微弱である。
エ 審決は,本願意匠と引用意匠との共通点(4)として認定した,「射出部について,背の低い横長直方体状の基台の上に略横長直方体状筐体が取り付けられている点」(審決謄本2頁第2段落,以下「共通点(4)」という。)について,「射出部の稍大きな部分の構成の共通感をもたらすものである」(同頁下から第3段落)と評価した。
しかしながら,この点も,この種の射出成形機ではありふれた構成態様である(甲3-1,4〜6,甲4-2,4,甲5-1,2,4〜6,甲6-1〜5,甲7,11,14,19,23,25,30,34,35)から,支配的な特徴ということはできない。
オ 審決は,共通点(1)〜(4)について,「それらが纏まって著しい共通感を奏するものであるから,全体の類否に影響を及ぼすと評価されるものである」(審決謄本2頁下から第2段落)と判断した。
しかしながら,上記のとおり,共通点(1)〜(4)に係る構成態様は,いずれも周知又はありふれたものであって,これらを全体として見た場合も,この種の射出成形機の一般的,標準的な構成態様の域を出ない(なお,甲19及び甲23に現されたものは,審決の認定に係る共通点(1)〜(4)のすべてを備えている。)から,支配的な特徴ということはできず,本願意匠と引用意匠との類否を決するような影響を及ぼすものではない。したがって,審決の共通点(1)〜(4)に関する上記判断は誤りである。
これに対し,被告は,共通点に係る構成態様が周知のものであっても,両意匠の強い共通感をもたらしている旨主張するが,共通点に係る構成態様が周知のありふれたものであれば,看者の注意をひかないから,意匠の類否判断において重視することはできないというべきである。
(2) 差異点の評価の誤り ア 審決は,本願意匠と引用意匠との差異点(イ)として認定した,「台座の壁面の垂直角部について,本願意匠は,角丸状に丸められているのに対して,引用意匠は,角張っている点」(審決謄本2頁第3段落,以下「差異点(イ)」という。)について,「本願意匠のその態様が格別珍しくない一般的な態様に過ぎず,大きく評価できないものであり,その影響は,軽微に止まるものである」(同頁最終段落〜同3頁第1段落)とした。
しかしながら,この種の射出成形機において,本願意匠のように,その台座の垂直角部を角丸状に丸めたものが従来存在しなかったことは,証拠(甲3〜39〔枝番を含む〕)上,明らかであるから,審決の「格別珍しくない一般的な態様に過ぎず」という判断は誤りである。
従来の射出成形機に係る意匠では,台座周りにはほとんどデザイン処理を施してこなかったが,本願意匠は,そうした従来の通念に反して,台座部分に丸みを付けるというデザイン処理を施すことによって,デザインとしての付加価値を付けようとしたものであり,台座の垂直角部に丸みを持たせることによって,作業者の怪我を防ぎ,作業環境に配慮するということが,その重要なデザインコンセプトとなっている。そのため,この丸みを帯びた台座部分は,本願意匠に係る物品である射出成形機の取引者,需要者の注意をひくものである(甲40,41参照)。
したがって,本願意匠の台座部に係る上記の構成態様は,本願意匠独自の特徴として,全体の美感やデザインイメージに与える影響は大きく,支配的な特徴の一つであるということができる。
これに対し,被告は,本件出願前,この種物品の属する分野において,物品の壁面の垂直角部を角丸状に丸めたものは,普通に知られているところであった旨主張する。しかしながら,被告が援用する例のうち,乙3のものは,台座の一部が角丸状にすぎず,台座の全体についてその角部を角丸状に統一的にデザインした本願意匠とは大きく異なる。また,乙4及び乙5の意匠に係る物品は,マシニングセンタであり,乙6の意匠に係る物品は,タブレット成形機であって,いずれも,本願意匠に係る物品である射出成形機とは全く分野を異にする。したがって,射出成形機の分野において,台座部の全体の各角部を角丸状に統一的にデザインした構成態様は,普通に知られていたということはできない。
イ 審決は,本願意匠と引用意匠との差異点(ロ)として認定した,「台座の空洞部について,本願意匠は,台座の左寄り位置にあって,空洞部の左側面の壁が存在せず,台座の左端まで空洞状となっているのに対して,引用意匠は,台座の中央寄り位置にあって,空洞部の左側面が壁で閉じられている点」(審決謄本2頁第3段落,以下「差異点(ロ)」という。)について,「本願意匠のその態様は,本願物品の使用時において何らかの利便性があるかとも思われるが,美的形態処理の観点から見るとさほど特徴的な態様でもなく,その影響は,軽微に止まるものである」(同3頁第1段落)とした。
しかしながら,台座の空洞部が左端までつながっている点は,本願意匠を始め,原告製の射出成形機に固有の特徴である(甲6-1,甲8,9)。
また,この点は,差異点(ニ)に係る型締め部筺体の凸弧状膨出部の構成ともあいまって,独自の使い勝手の良さと形態上の特徴を表している。すなわち,本願意匠に係る射出成形機の使用状態においては,この空洞部は,金型温調器等の成形時に必要な周辺機器を収納するスペースとなるものであり,当該空洞部に底板がないために周辺機器を出し入れしやすく,かつ,周辺機器を含めた射出成形装置全体の設置スペースが小さくて済む等の,作業環境に配慮したデザイン思想が表現されている。さらに,当該射出成形機が工場等に設置される場合には,この空洞部の左端部が工場の通路側に面することが普通であるので,外観上も目立つものである(甲40,41参照)。
これに対し,被告は,差異点(ロ)に係る台座の空洞部の設置部位は,射出成形機全体から見れば,下方の台座の奥まった部位であるから,その部位を注視した場合はともかく,通常は見え難いものである旨主張するが,当該空洞部の構成態様が看者の注意をひくものであることは,上記のとおりである。
また,被告は,台座の空洞部の左側壁を設けない例として甲6-4,甲9及び乙7を援用するが,甲6-4及び乙7のものは,空洞部の前後壁がないため,柱だけが目立つものであって,本願意匠のものとは全く異なる態様であるし,甲9のものは,原告製の射出成形機であって,むしろ,この態様が原告製の射出成形機に固有のものであることを示すものである。
ウ 審決は,本願意匠と引用意匠との差異点(ハ)として認定した,「型締め部の右端側面について,本願意匠は,壁部が存在せず開放状であるのに対して,引用意匠は壁部によって閉鎖されている点」(審決謄本2頁第3段落,以下「差異点(ハ)」という。)について,「大きく,且つ目に付く部分の態様の明らかな差異であるとしても,壁部が存在しない開放状としたものが見受けられないわけではないから,本願意匠のその態様に格別の特徴を見出せず,その影響は,軽微に止まるものである」(同3頁第1段落)とした。
しかしながら,この部分は,使用状態において目をひく部分であるので,開放状か閉鎖状かの違いは無視できないものである。
エ 審決は,本願意匠と引用意匠との差異点(ニ)として認定した,「型締め部の左側面について,本願意匠は凸弧状に左方に膨出しているのに対して,引用意匠は,膨出していない点」(審決謄本2頁第3段落,以下「差異点(ニ)」という。)について,「さほど大きな部分ではなく,またその膨出態様もさほど珍しいものでなく,その影響は,軽微に止まるものである」(同3頁第1段落)とした。
しかしながら,本願意匠における上記型締め部筺体の左側面における凸弧状膨出部の構成態様は,本願意匠の最大の特徴であり,この種の射出成形機に関する従来の意匠に当該構成態様が存在しなかったことは,証拠(甲3〜39〔枝番を含む〕)上,明らかである。
本願意匠のデザインコンセプトは,上記アのとおり,全体的に丸みを帯びたデザインとすることによって,独自の美感を表現するとともに,作業者の安全を考慮した作業環境に優しいデザインとすることにある。そのコンセプトが端的に表現されているのが,上記の凸弧状膨出部の構成態様であり,その丸みを帯びた態様によって,本願意匠独自の美感が表現されており,かつ,全体の丸みを強調することで,本願意匠全体の美感に決定的な影響を与えているものである。
また,実際上も,この種の射出成形機は,需要者であるプラスチック加工業者の工場等において,その作業場に複数台を併設して設置するのが通常であるところ,そうした通常の使用状態において,この型締め部筺体の凸弧状膨出部は工場の通路側に面することになるから,他の射出成形機と区別する上での外観上の目安として,取引者,需要者の目をひくものである。さらに,この凸弧状膨出部は,上記差異点(ロ)に係る台座の空洞部から周辺機器を出し入れする場合等において,作業者の怪我を防ぐという安全面の配慮にも基づいており,そうした使い勝手の良さからも,看者の注意をひくことになるのである(甲40,41参照)。
これに対し,被告は,本件出願前,この種物品の属する分野において,型締め部の左側面を凸弧状又は凸状としたものは,各種のものが知られているところであったことをも勘案すれば,本願意匠における当該凸弧状部分は,ありふれた手法により,型締め部の左側面をわずかに変形したにすぎない旨主張する。しかしながら,被告が援用する例のうち,乙3のものの型締め部左端部は直線的にとがった態様であり,乙9及び甲33のものの型締め部左端部は単に傾斜しているだけであるから,いずれも,本願意匠の型締め部左端部の構成態様とは全く異なる。さらに,乙8のものについては,曲線や曲面を取り入れている点で本願意匠と共通するものがあるが,本願意匠と同様,この種の射出成形機の意匠としては,かなり特異なデザインの部類に属するものであって,被告主張のように,ありふれた手法によるものであるということはできない。加えて,本願意匠と乙8のものとでは,型締め部左端部の凸弧状部の曲率において大きく異なり,審美的効果において大きな差があることなどからすれば,乙8のものの存在によっても,本願意匠における型締め部左端部の凸弧状膨出部の構成態様が,他の意匠との違いを示す最大の特徴であることは否定されない。
また,被告は,本願意匠の上記凸弧状膨出部について,射出成形機全体の幅から見れば,ごく小さな部分にすぎないなどとして,射出成形機全体を見た場合には,格別,看者の注意を引くものとはいい難い旨主張する。しかしながら,本願意匠においては,全体の基本的構成態様が周知又はありふれた構成であることから,看者は,そのような周知の構成態様には注意をひかれず,本願意匠に特有の個性的なデザインが表されている部分に注意をひかれるものである。そして,本願意匠における上記凸弧状膨出部が,本願意匠に係る射出成形機の使用状態に即して,看者の注意をひくものであることは上記のとおりであり,被告が主張するように,特徴的部分の物理的大きさが,デザインとしての顕著性を決定する本質的要素となるものではない。
オ 審決は,差異点(イ)〜(ニ)について,「これらが纏まって相乗的な効果を発揮する余地を考慮したとしても,その全体の類否に及ぼす影響は,軽微の域を出るものと評価することができないものである」(審決謄本3頁第2段落)と判断した。
しかしながら,本願意匠の主な特徴は,差異点(ニ)に係る型締め部筺体の凸弧状膨出部の構成態様と,差異点(イ)に係る台座の垂直角部の角丸状の構成態様であって,これらが従来の射出成形機にはなかった丸みを帯びたデザインとして,本願意匠の統一されたデザインイメージや美的印象を表し,意匠全体の美感に決定的な影響を及ぼしている。また,差異点(ホ)に係る射出部カバーの右端部の小型の凸状筺体部の構成態様も,本願意匠に係る射出成形機の右側の視認性を良くし,デザインをすっきりしたものとするという特徴を表している。これらに,差異点(ロ)に係る台座の空洞部の構成態様と差異点(ハ)に係る型締め部右端の開放部の構成態様とが加わって,本願意匠と引用意匠とを全体として観察した場合,共通点(1)〜(4)に係る周知の構成態様を超えた差異感ないし美感の違いを,本願意匠にもたらしているというべきである。
したがって,審決の差異点に関する上記判断は誤りである。
(3) 両意匠の類否について ア 本願意匠及び引用意匠に係る射出成形機は,いずれも,いわゆる横型射出成形機のカテゴリーに属するものであり,その基本的な構成は,横長の台座部(フレーム及びベッド)上に,型締め装置と射出装置とを水平方向に配するというものである。そして,台座部内には,油圧駆動装置や電気制御装置が内蔵され,それを筺体のカバープレートで外装したものが多い。また,型締め装置についても,作業の安全のために,筺体のカバープレートで外装したものが一般的である。以上のような基本的構成を有する横型射出成形機は,成形品が取り出しやすく操作が簡単であること,金型の交換が容易であること,高速成形が容易であること,機械の高さが低くまとまっているため,保守点検がしやすく,成形材料の供給も都合よくできること等の機能面での特徴を有しており,上記の基本的構成も,そうした機能面での特徴に由来するものである(以上につき,甲42の38頁,48頁参照)。
この種の射出成形機は,横型射出成形機という名称が付されていることからも明らかなとおり,射出成形機の一種として典型的なものであり,そのため,上記の基本的構成も一般化されたものである。また,射出成形機という物品自体が,産業財として機能性が重視されるものであるため,造形の自由度が低く,その意味において意匠創作の余地は小さいということができる。以上のような背景から,この種の射出成形機の意匠創作においては,台座部の外装並びに型締め装置及び射出装置の外装(筺体部分)にデザイン処理を施すこと,すなわち,上記各外装の具体的構成態様が重視されてきたものである。
射出成形機におけるデザインの流れ(甲43,44参照)の中では,審決が共通点(1)として認定した基本的構成態様は,昭和60年〜平成2年当時において,既に一般化しており,また,同じく共通点(2)に係る構成態様も一般的なものであった。反面,この種の射出成形機の意匠においては,型締め部や射出部の外装(筺体部分)の具体的態様に,同業各社の特徴や個性が表現されてきたものである。特許庁の意匠審査においても,登録第866581号意匠(甲45,甲43のB-3に相当,以下「甲45意匠」という。),登録第891118号意匠(甲46,甲43のI-2に相当,以下「甲46意匠」という。),登録第948015号意匠(甲47,甲43のK-2に相当,以下「甲47意匠」という。),登録第866783号意匠(甲48,甲43のM-2に相当,以下「甲48意匠」という。)及び登録第961756号意匠(甲49,甲43のL-3に相当,以下「甲49意匠」という。)が,それぞれ非類似の意匠として登録されてきた経緯がある。
さらに,このような同業各社の意匠の分布状況を見れば,本願意匠の特徴である型締め部筺体の凸弧状膨出部や台座部の丸みを帯びた構成態様が,他社の意匠にはない際立った特徴を有するものであることは,一目りょう然である。
イ 本願意匠に係る射出成形機の看者である取引者,需要者は,当該射出成形機を購入するプラスチック加工業者等の購買担当者,工場において当該射出成形機を使用する生産担当者,作業員などである。本願意匠に係る射出成形機は中型のものであるが,それでも相当に大きな装置であるから,取引者,需要者は,当該射出成形機の各部を十分に注視するものであり,そのため,本願意匠の特徴である差異点(ニ)に係る型締め部筺体の凸弧状膨出部の構成態様,差異点(イ)に係る台座の垂直角部の角丸状の構成態様,差異点(ホ)に係る射出部カバーの右端部の小型の凸状筺体部の構成態様,差異点(ロ)に係る台座の空洞部の構成態様及び差異点(ハ)に係る型締め部右端の開放部の構成態様は,いずれも看者の注意をひくことになる。さらに,工場に設置された状態においては,本願意匠の最大の特徴である型締め部筺体の凸弧状膨出部は,特に看者の注意をひくものである。
これに対し,被告は,看者は,まず,形態の全体を観察し,次に各部の形態を観察するというが通常の見方であり,意匠の類否判断においても,全体観察を基本にすべきである旨主張するが,本願意匠全体の中でも特に特徴的な部分(とりわけ,差異点(ニ)及び(イ)に係る構成態様)が,その使用状態に即して注目して観察され,それが全体の美感に影響を与えることは当然というべきである。
ウ 本願意匠のデザインコンセプトは,上記のとおり,全体に丸みを帯びたデザインとすることによって,独自の美感を表現するとともに,作業者の安全を考慮した作業環境に優しいデザインとすることである。原告は,本願意匠に係る射出成形機のカタログ(甲50,53)及び雑誌広告(甲51,54,55)においても,本願意匠の主な特徴である型締め部筺体の凸弧状膨出部や台座部の角丸状部が目立つような写真を掲載し,かつ,「高性能をデザインした斬新なフォルム」というキャッチコピーを記載すること等により,本願意匠をアピールしている。
そして,業界誌である平成15年2月10日アーイン社発行「プラスチックス インフォ ワールド」2003年2号(甲51,以下「甲51雑誌」という。)では,本願意匠に係る射出成形機においてはデザインの斬新さも魅力であるとして,「この機能的な高性能をデザインでも表現した斬新なフォルムもその注目に大きく寄与した」,「全体が丸みをおびたフォルムになっていることも見逃せないデザイン上の変革だ」,「これはカバーだけではなく,機械フレームのコーナー部も丸状で形成し,これによって,工作機械特有の『無機質で近寄り難い』といったイメージを払拭し,『作業者の安全を十分配慮した,環境に優しい』イメージをもたせ,遠くからでも一目で住友重機械のSE-Dシリーズとわかる斬新なフォルムとなっている」(4枚目中央,第2段落)と記載され,最大限の意匠的評価がされている。このように,本願意匠の特徴は,市場において,取引者,需要者に十分認識され,評価されているものである。なお,原告のプラスチック射出成形機の国内シェアは,本願意匠に係る射出成形機が販売された平成14年度に順位を上げている(甲52)が,それには,本願意匠のデザインとしての価値も寄与している。
エ 以上のとおり,審決が認定した共通点(1)〜(4)に係る構成態様は,いずれも周知又はありふれたものであって看者の注意をひかないものであるから,これが「全体の類否に影響を及ぼす」(審決謄本2頁下から第2段落)との審決の判断は誤りである。他方,差異点(ニ)に係る型締め部筺体の凸弧状膨出部の構成態様と差異点(イ)に係る台座の垂直角部の角丸状の構成態様とは,支配的特徴として全体の美感に決定的な影響を及ぼすものであり,さらに,全体観察した場合において,上記差異点(ニ)及び(イ)に加えて,差異点(ロ)に係る台座の空洞部の構成態様,差異点(ハ)に係る型締め部右端の開放部の構成態様及び差異点(ホ)に係る射出部カバーの右端部の小型の凸状筺体部の構成態様があいまった視覚的効果によって,本願意匠は引用意匠と全体の美感において相違するものであるから,これを「全体の類否に及ぼす影響は,軽微の域を出るものと評価することができない」(同3頁第2段落)とする審決の判断も誤りである。
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似するものではなく,「両意匠は・・・形態についても,共通点の及ぼす影響が差異点の及ぼす影響を凌駕しており,結局,両意匠は,意匠全体として観察すると,類似するものといわざるを得ない」(同3頁下から第3段落)とした審決の判断は誤りである。
被告の反論
審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(差異点の看過)について (1) 意匠の類否判断に当たっては,細部にわたる両意匠の差異点のすべてを認定する必要はなく,類否判断に必要な範囲において,両意匠の基本的形態と主要な具体的形態における共通点と差異点を認定した上で,総合的にその類否についての判断をすれば足りると解すべきである。
原告主張に係る差異点(ホ)は,審決が共通点(1)として認定した,台座の上面右半部に載置される略横長直方体状筐体の射出部の,更に一部分である右端部分が凸状であるか否かの差異であるが,当該右端部分は,射出部の左右幅の約3分の1程度,射出成形機の全体幅から見れば,その十数分の1を占めるにすぎない小さな部分である。原告が主張するように,その右端部分が,前後幅において射出部本体よりもやや狭い,上部に傾斜面を有する凸状筐体から成っているとしても,本件出願前,この種物品の属する分野において,射出部の右端部分を変形する例が多数知られていたこと(甲16,32,38,乙1の2枚目,乙2)を勘案すれば,上記右端部分の構成態様は,ありふれた手法により,略横長直方体状筐体から成る射出部の構成態様をわずかに変形したにすぎないと評価できるものであり,それほど特徴的であるということはできない。審決は,差異点(ホ)に係る差異は,意匠全体から見れば,部分的でささいな差異にすぎず,看者の印象に及ぼす影響もごく軽微なものであるから,本願意匠と引用意匠との差異点として,殊更採り上げるまでもないとしたものであり,審決に原告主張の差異点の看過はない。
(2) なお,原告が本願意匠の実施物であると主張する射出成形機(甲50)は,その射出部の右端部分が,本願意匠のものとは明らかに相違する形状であり,当該部分は実施に当たり変形されたものであると考えられるが,にもかかわらず,当該部分の構成態様が,本願意匠の特徴の一つであるとする原告の主張は整合性を欠くというべきである。
2 取消事由2(類否判断の誤り)について (1) 共通点の評価の誤りについて ア 共通点(1)について,原告は,当該基本的構成態様は,この種の射出成形機においては周知のものであるから,支配的な特徴ということはできない旨主張する。
しかしながら,意匠が類似するか否かは,全体観察に基づいて両意匠が看者に対して異なる美感を与えるか否かによって判断すべきであり,両意匠に共通する構成態様の中に,当該物品において一般的な形状が含まれているとしても,そのことから当然に,意匠を観察する場合にその一般的な形状を過小評価して意匠の類否を判断すべきであるということにはならない。意匠法にいう意匠とは,意匠の創作として秩序立てられた一つの全体形態としてのまとまりをいうのであるから,たとえ,当該物品に一般的な形状であっても,全体としての両意匠の構成態様を対比し,類否の判断を行うべきである。
そして,共通点(1)に係る基本的構成態様は,原告主張のとおり周知のものであるとしても,この種物品が成立するために必要な基本的な構成態様として,意匠を観察する際に看者が把握する形態全体の骨格を成すものであって,形態全体を対比観察する際に欠くことのできないものというべきであるから,本願意匠と引用意匠との類否判断に際し,共通点(1)について,その周知性も斟酌した上で,「形態全体の基調を決定付けて,両意匠に係る形態の強い共通感をもたらしている」(審決謄本2頁下から第3段落)と評価した審決の判断に誤りはない。
イ 共通点(2)に係る型締め部の構成態様は,形態全体の中に占める大きさ及び位置において顕著に目立つものであり,この種物品の主要な部分の構成態様として看者の注意をひくものである。また,透明窓を有する引き違い扉を2枚並設した態様のものは,原告が甲号各証に示された多数の例の中から,少数の該当例を選別していることからも明らかなとおり,比較的その数が少ないものであり,さらに,その少数選別された該当例の中においても,本願意匠と引用意匠とに共通する,方形縁枠の内側に大きめの方形状の透明窓を設けてその前面を平坦面状に形成した態様としたものは,ほとんど見当たらず,その構成態様は特徴的なものというべきであるから,共通点(2)について,両意匠の共通感をもたらしているものと評価した審決の判断に誤りはない。
ウ 共通点(3)に係る操作パネルは,この種物品の使用者にとって,その配置位置,形状及び設置態様が操作性に影響するものであるから,重要な部分であり,十分に看者の注意をひくものである。原告主張のように,操作パネルの構成態様自体はありふれたものであるとしても,本願意匠及び引用意匠の操作パネルは,配置位置が台座上部の正面ほぼ中央という点で同一であり,形状も縦長方形板状という点で同一であり,かつ,設置態様も立設されているという点で同一であるから,酷似しているといわざるを得ない。したがって,共通点(3)について,両意匠の共通感をもたらしているものと評価した審決の判断に誤りはない。
エ 共通点(4)に係る射出部の構成態様については,形態全体の中に占める大きさと,射出部が基台上を左右に可動するものとされた構成が比較的目立つものであり,この種物品の主要な部分の構成態様として看者の注意をひくものである。原告主張のように,当該構成態様自体がありふれたものであるとしても,背の低い横長直方体状の基台の上に略横長直方体状筐体が取り付けられている点で,本願意匠と引用意匠とは酷似しているといわざるを得ないから,共通点(4)について,両意匠の共通感をもたらしているものと評価した審決の判断に誤りはない。
オ 原告は,共通点(1)〜(4)に係る構成態様は,いずれも周知又はありふれたものであって,支配的な特徴ということはできず,本願意匠と引用意匠との類否を決するような影響を及ぼすものではない旨主張する。
しかしながら,共通点(1)〜(4)に係る構成態様の中に,周知のものが含まれているとしても,上記のとおり,共通点(1)は,形態全体の基調を決定付けて,両意匠に係る形態の強い共通感をもたらしているものであり,共通点(2)〜(4)は,両意匠の共通感をもたらしているものと評価すべきであるから,「それらが纏まって著しい共通感を奏するものであるから,全体の類否に影響を及ぼすと評価されるものである」(審決謄本2頁下から第2段落)とした審決の判断に誤りはない。
(2) 差異点の評価の誤りについて ア 差異点(イ)に係る台座の垂直角部の構成態様については,本件出願前,この種物品の属する分野において,物品の壁面の垂直角部を角丸状に丸めたものは,普通に知られているところであった(乙3の2枚目,乙4〜6)上,一般に,台座様の物品の角部を角丸状に丸めることは,ごく普通に行われることであるから,本願意匠における台座の垂直角部を角丸状に丸めた当該構成態様は,台座の垂直角部という,ごく限られた部分を,ありふれた手法により,ごくわずかに丸めた程度のものにすぎず,格別,看者の注意をひくとはいえないものである。そうすると,形態全体から見れば,差異点(イ)に係る差異が,本願意匠と引用意匠との類否判断に及ぼす影響は軽微なものにとどまるといわざるを得ない。
イ 差異点(ロ)に係る台座の空洞部の構成態様については,従来,台座の空洞部の左側に壁を設ける例も,設けない例(甲6-4,甲9,乙7)も,ごく普通に知られていたところであって,左側壁の有無は,使用目的に応じて適宜選択されるべきものにすぎない上,その設置部位は,射出成形機全体から見れば,下方の台座の奥まった部位であるから,その部位を注視した場合はともかく,通常は見え難いものである。また,空洞部の位置の違いの点については,わずかな位置の変更にすぎず,それほど看者の注意をひくものではない。そうすると,形態全体から見れば,差異点(ロ)に係る差異が,本願意匠と引用意匠との類否判断に及ぼす影響は軽微なものにとどまるといわざるを得ない。
ウ 差異点(ハ)に係る型締め部の右端側面の構成態様については,従来,型締め部の右端側面を開放状とする例も,閉鎖状とする例も,ごく普通に知られていたところである。さらに,型締め部の右端側面を開放状とするか,閉鎖状とするかは,台座の上面中央の操作パネルの後方,型締め部の右端に,やや突出して位置する固定プラテン(甲50参照)の大きさによるものであることをも勘案すると,差異点(ハ)に係る本願意匠の構成態様に格別の特徴を見いだすことはできない。
そうすると,形態全体から見れば,当該差異が,本願意匠と引用意匠との類否判断に及ぼす影響は軽微なものにとどまるといわざるを得ない。
エ 差異点(ニ)に係る型締め部の左側面の構成態様については,本願意匠における凸弧状の膨出部分は,型締め部の左右幅との対比でも,たかだか十数分の1の幅を占めるにすぎず,さらに,射出成形機全体の幅から見れば,ごく小さな部分にすぎないものである。原告主張のように,当該凸弧状部分が,丸みを帯びたものであるということができるとしても,本件出願前,この種物品の属する分野において,型締め部の左側面を凸弧状又は凸状としたものは,各種のものが知られているところであったこと(甲33,乙3の3枚目,乙8,9)をも勘案すれば,本願意匠における当該凸弧状部分は,ありふれた手法により,型締め部の左側面をわずかに変形したにすぎないものである。差異点(ニ)に係る差異は,その部分を側方から注視したり,あるいは,使用状態において当該部分の直近で見た場合などには看者の注意をひくとしても,この種物品は全体が相当に大きいものであることからすれば,射出成形機全体を見た場合には,格別,看者の注意をひくものとはいい難い。そうすると,形態全体から見れば,当該差異が,本願意匠と引用意匠との類否判断に及ぼす影響は軽微なものにとどまるといわざるを得ない。
オ 原告は,審決が認定した差異点(イ)〜(ニ)に,原告主張の差異点(ホ)を加えた上で,差異点(イ)〜(ホ)について,本願意匠と引用意匠とを全体として観察した場合,共通点(1)〜(4)に係る周知の構成態様を超えた差異感ないし美感の違いを,本願意匠にもたらしているというべきである旨主張する。
しかしながら,上記のとおり,差異点(イ)〜(ニ)に係る本願発明の構成態様は,格別の特徴を見いだせないものであるか,又は,部分的な細部の差異をもたらすものにすぎないものであり,格別,看者の注意をひくものとはいい難いから,「これらが纏まって相乗的な効果を発揮する余地を考慮したとしても,その全体の類否に及ぼす影響は,軽微の域を出るものと評価することができないものである」(審決謄本3頁第2段落)とした審決の判断に誤りはない。
(3) 両意匠の類否について ア 原告は,射出成形機という物品自体が,産業財として機能性が重視されるものであるため,造形の自由度が低く,その意味において意匠創作の余地は小さい旨主張する。
しかしながら,原告主張のように,射出成形機という物品が,産業財として機能性が重視されるものであるとしても,本件出願前,この種物品の属する分野において,種々の形態の射出成形機が見受けられること(乙1の3枚目,乙8,10,11)に照らせば,造形の自由度が低く,意匠の創作の余地が小さいものであるとは一概にいい難い。
イ 原告は,本願意匠に係る射出成形機は中型のものであるが,それでも相当に大きな装置であるから,取引者,需要者は,当該射出成形機の各部を十分に注視するものであるとした上,差異点(イ)〜(ホ)に係る本願意匠の構成態様は,いずれも看者の注意をひくことになる旨主張する。
しかしながら,使用状態においてその部分を直近で見た場合には原告主張のようにいい得るとしても,看者は,まず,形態の全体を観察し,次に各部の形態を観察するというが通常の見方であり,意匠の類否判断においても,全体観察を基本にすべきであるから,原告の主張は,独自の見解であるといわざるを得ない。
ウ 上記(1)及び(2)のとおり,本件においては,共通点(1)〜(4)については,周知の構成態様を含むものであるとしても,それらの共通点がまとまって著しい共通感を奏するものである一方,差異点(イ)〜(ホ)については,それらの差異点がまとまったとしても,全体の類否に及ぼす影響は軽微の域を出ず,視覚的効果を発揮するとはいい難いものである。
したがって,「両意匠は・・・形態についても,共通点の及ぼす影響が差異点の及ぼす影響を凌駕しており,結局,両意匠は,意匠全体として観察すると,類似するものといわざるを得ない」(審決謄本3頁下から第3段落)とした審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(差異点の看過)について 原告は,審決が認定した本願意匠と引用意匠との差異点(イ)〜(ニ)のほか,両意匠は,差異点(ホ),すなわち,「本願意匠の射出部は,台座の上面右半部に載置された略横長直方体状筺体の右端部に,上部に傾斜面を有する小型の凸状筺体部を形成しているのに対し,引用意匠には,そのような構成がない点」においても差異を有する旨主張するところ,本願意匠と引用意匠とを比較すれば,両者の間に差異点(ホ)に係る差異が存すること自体は明らかであり,被告もその点は争わないものと解される。
しかしながら,差異点(ホ)が,台座の上面右半部に載置された略横長直方体状筺体の射出部の更に右端部という,ごく限られた部分に関する差異であること等からすれば,審決が,差異点(ホ)を両意匠の差異点として認定しなかったことが,審決の結論に影響を及ぼすべきものであるか否かは,両意匠の差異点として,差異点(ホ)を加えた上で,両意匠の類否を検討しなければ明らかにならないというべきであるから,進んで,取消事由2(類否判断の誤り)について検討する。
2 取消事由2(類否判断の誤り)について (1) 本願意匠と引用意匠とを比較すると,共通点(1)〜(4)及び差異点(イ)〜(ニ)が認められることは,当事者間に争いがなく,さらに,両者の間に差異点(ホ)が存在することも上記1のとおりであるから,これを前提に,以下,両意匠の類否について検討する。
(2) まず,共通点について検討すると,共通点(1)は,両意匠の形態全体に及ぶ基本的構成態様に係るものであって,形態全体の基調を形成するものであり,また,台座の上面左半部全体を占める型締め部の具体的な構成態様に係る共通点(2)も,意匠全体の中で大略4分の1を占める大きな部分に関するものであって,透明窓を設けた引き違い扉を2枚並設することにより,型締め部の内部機構が外部から観察できるようにされている点で,看者の注意を強くひくものであると認められる。これらは,その他の共通点(3)及び(4)によってもたらされる共通感とあいまって,両意匠に強い共通感を与え,全体としての類否判断に大きな影響を及ぼすものというべきである。
これに対し,原告は,共通点(1)〜(4)に係る構成態様は,いずれも周知又はありふれたものであって,これらを全体として見た場合も,この種の射出成形機の一般的,標準的な構成態様の域を出ないから,支配的な特徴ということはできず,本願意匠と引用意匠との類否を決するような影響を及ぼすものではない旨主張する。しかしながら,共通点(1)〜(4)に係る構成態様が周知ないし公知のものであるとしても,意匠の類否判断は,意匠に係る物品の外観の全体にわたって,その形態を観察する全体的,視覚的な判断であるから,当該意匠を全体的に観察した場合に,それが意匠全体の支配的部分を占め,意匠としてのまとまりを形成し,看者の注意をひくときは,なお当該部分は意匠上の要部となり得るものというべきである。そして,本件において,上記各共通点,中でも,共通点(1)及び(2)に係る構成が,本願意匠及び引用意匠を全体的に観察した場合に,看者の注意を強くひく,意匠上の要部となり得るものであることは上記のとおりであるから,原告の主張は採用の限りではない。
(3) 次に,両意匠の差異点(イ)〜(ホ)について検討する。
ア 台座の壁面の垂直角部に関する差異点(イ)については,そもそも,台座の角部という局部的かつ微細な部分に係る差異である上,台座の垂直角部を角丸状に丸めるという本願意匠に係る構成態様自体,この種の工作機械の台座における常とう手段ともいうべきものであるから,看者に与える影響はそれほど大きなものではない。
これに対し,原告は,この種の射出成形機において,本願意匠のように,その台座の垂直角部を角丸状に丸めたものは従来存在しなかった旨主張する。
しかしながら,射出成形機においても,垂直角部を角丸状に丸めた例は本件出願前にも存在すると認められる(乙3の2枚目)上,一般に,工作機械の意匠において,台座等の垂直角部を角丸状に丸めたものが周知の態様であることは明らかである(乙4〜6)から,仮に,射出成形機の分野に限ってみれば,本願意匠のように,台座の垂直角部を角丸状に丸めた例が多くはないとしても,そのこと自体は上記の判断を左右するものではない。
また,原告は,本願意匠は,従来の通念に反して,台座部分に丸みを付けるというデザイン処理を施すことによって,デザインとしての付加価値を付けようとしたものであり,台座の垂直角部に丸みを持たせることによって,作業者の怪我を防ぎ,作業環境に配慮するということが,その重要なデザインコンセプトとなっているとし,本願意匠の上記の構成態様は,本願意匠独自の特徴として,全体の美感やデザインイメージに与える影響は大きく,支配的な特徴の一つである旨主張する。しかしながら,当該構成態様が,台座の角部という局部的かつ微細な部分に関するものであること等からすれば,本願意匠を全体として観察した場合,それが看者に与える印象は微弱なものにとどまり,格別の美感を感得させることはできないものというほかはないから,原告の主張は採用することができない。
イ 台座の空洞部に関する差異点(ロ)について検討すると,@空洞部の配置位置が,本願意匠は台座の左寄りの位置にあるのに対し,引用意匠は台座の中央よりの位置にあるとの点は,それ自体,わずかな位置の差にすぎない上,台座の上面左半部に載置された型締め部の右半部分の下に位置するという点では一致しているから,その程度の差異が,看者の注意をひくものとは到底考えられないし,A本願意匠は,空洞部の左側面の壁が存在せず,台座の左端まで空洞状となっているのに対し,引用意匠では,空洞部の左側面が壁で閉じられているとの点については,そもそも,当該差異に係る構成態様は,台座の下部の奥まった部分に関するものであるから,本願意匠及び引用意匠を全体的に観察した場合に,看者の注意をひく部分であるとは認め難く,そうした差異が,看者に与える影響も限定的なものにとどまるというべきである。
これに対し,原告は,台座の空洞部が左端までつながっている点は,本願意匠を始め,原告製の射出成形機に固有の特徴であり,差異点(ニ)に係る型締め部筺体の凸弧状膨出部の構成ともあいまって,独自の使い勝手の良さと形態上の特徴を表している旨主張する。しかしながら,台座の空洞部に左側面の壁が存在せず,台座の左端まで空洞状となっているという,本願意匠と同様の構成態様を,原告が,本件出願前(甲6-1,甲9)及び本件出願後(甲8)に使用したことは事実であるとしても,そのことだけで,当該構成態様が原告製の射出成形機に固有の特徴として,取引者,需要者の間で周知となっていたと認めるに足りる証拠はない。また,そもそも,射出成形機に係る意匠である本願意匠及び引用意匠において,看者である取引者,需要者が第1に注目するのは,台座の空洞の構成態様などではなく,台座上に載置された機械部分に係る構成態様であることは明らかであるから,差異点(ニ)に係る型締め部筺体の凸弧状膨出部の構成との相乗効果を考慮しても,台座の空洞部に係る上記構成態様をもって,意匠全体の支配的部分を占める意匠上の要部となるものとは認められない。そうすると,原告の上記主張を考慮しても,差異点(ロ)が看者に与える影響が限定的なものにすぎないことは明らかというべきである。
ウ 型締め部の右端側面に関する差異点(ハ)については,比較的大きく,かつ,台座上部の中央部という目につく部分の差異であるということはできるものの,型締め部の右端側面に壁部が存在しないことが,全体としての本願意匠に格別の美感を生じさせているとまでは認め難いから,やはり,当該差異が看者に与える影響はそれほど大きなものではないというべきである。
エ 型締め部の左側面に関する差異点(ニ)については,そもそも型締め部の左側面という局部に関する差異であって,本願意匠における凸弧状の膨出部分は,射出成形機全体の幅から見れば,数十分の1というごくわずかな部分を占めるものにすぎない上,その膨出態様も,全体としての本願意匠に格別の美感を生じさせるようなものとは認め難いから,当該差異が看者に与える影響は比較的軽微なものにとどまるというべきである。
これに対し,原告は,大略,@本願意匠における型締め部筺体の左側面における凸弧状膨出部の構成態様は,本願意匠の最大の特徴である,A本願意匠のデザインコンセプトは,全体的に丸みを帯びたデザインとすることによって,独自の美感を表現するとともに,作業者の安全を考慮した作業環境に優しいデザインとすることである,B上記Aのコンセプトが端的に表現されているのが,凸弧状膨出部の構成態様であり,その丸みを帯びた態様によって,本願意匠独自の美感が表現されているなどと主張する。しかしながら,本願意匠を全体として観察した場合,型締め部の左側面の当該凸弧状膨出部の構成態様が看者に与える印象はそれほど強いものではなく,当該構成態様のみで見た場合はもちろんのこと,差異点(イ)に係る台座の壁面の垂直角部の構成態様の影響等を加味しても,全体としての本願意匠から,「丸みを帯びたデザイン」ないし「作業環境に優しいデザイン」といった格別の美感を感得することはできないものというほかはない。
この点について,さらに,原告は,この種の射出成形機は,需要者であるプラスチック加工業者の工場等において,その作業場に複数台を併設して設置されるのが通常であるところ,そうした通常の使用状態において,この型締め部筺体の凸弧状膨出部は工場の通路側に面することになるから,他の射出成形機と区別する上での外観上の目安として,取引者,需要者の目をひくものである旨主張する。
しかしながら,共通点(3)のとおり,本願意匠及び引用意匠に係る射出成形機おいては,台座の正面前端の中央部位に操作パネルが立設されており,その操作に当たっては,作業員が正面に位置することが予定されているものである(甲40)から,むしろ,正面側こそが看者に注視される部分であるというべきである。加えて,原告提出に係る各社の射出成形機の広告等(甲3〜39〔枝番を含む〕)を見ても,射出成形機の左端側(型締め部側)ではなく,正面あるいは右端側(射出部側)から撮影した写真の例の方が多数であること(甲3-2〜7,甲4-1,2,4〜6,甲5-1〜3,6,甲6-2,3,甲7,甲10,11〜15,17,19,21,22,24〜27,30,31〜39)等の事情をも考慮すれば,原告主張に係る射出成形機の設置状況(甲40,41参照)を前提としたとしても,そこから直ちに,型締め部の左側面の構成をもって,本願意匠の要部となるとまでは解することができないというほかはない。そして,本願意匠を全体として観察した場合,型締め部に係る当該構成態様が格別の美感を生じさせるものでないことは上記のとおりであるから,結局,原告の上記一連の主張は採用の限りではない。
オ さらに,射出部の右端の態様に関する差異点(ホ)についても検討すると,本願意匠の射出部右端に見られる,上部に傾斜面を有する小型の凸状筺体部は,そもそも,射出成形機の全体幅から見れば,その10分の1にも満たない小さな部分にすぎない上,この種の射出成形機の意匠において,射出部の筺体の右端部分を垂直壁とせずに,その態様に変化を加える例は少なくないこと(甲16,32,38,乙1の2枚目,乙2)をも考え併せれば,差異点(ホ)が,看者に与える影響は軽微なものにとどまるといわざるを得ない。
これに対し,原告は,本願意匠の射出部右端部の構成態様は,本願意匠に係る射出成形機の右側の視認性をよくし,デザインをすっきりとしたものとするという特徴を表すものである旨主張する。しかしながら,射出部右端部の高さを幾らかでも低くすること等によって,射出成形機の右側の視認性をよくするという機能面での効果があることは格別,本願意匠の当該構成態様が,本願意匠に格別の美感を生じさせるようなものであるとは認められないから,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 以上のとおり,審決が認定した差異点(イ)〜(ニ)に,原告主張の差異点(ホ)を加えても,両意匠の間に見られる各差異点は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は強いものではなく,これらがまとまって相乗的な効果を発揮する可能性を考慮したとしても,共通点(1)〜(4)によって形成された全体の基調ないし強い共通感をしのぐものではなく,両意匠は,看者に異なった美感を与えるものということはできない。
そうすると,「両意匠は,意匠全体として観察すると,類似するものといわざるを得ない」(審決謄本3頁下から第3段落)とした審決の判断に誤りはないというべきである。
(5) これに対し,原告は,大略,@共通点(1)に係る基本的構成態様は,いわゆる横型射出成形機の機能面での特徴に由来するものであり,当該構成態様は一般化されたものである,A射出成形機という物品自体が,産業財として機能性が重視されるものであるため,造形の自由度が低く,意匠創作の余地は小さい,Bこの種の射出成形機の意匠創作においては,台座部の外装並びに型締め装置及び射出装置の外装(筺体部分)にデザイン処理を施すことが重視されてきたものであり,そのことは,射出成形機のデザインの流れにおいても明らかである,C同業各社の意匠の分布状況を見れば,本願意匠の特徴である型締め部筺体の凸弧状膨出部や台座部の丸みを帯びた構成態様が,他社の意匠にはない際立った特徴を有するものであることは,一目りょう然であるなどと主張する。
しかしながら,上記@の点については,意匠の類否判断は,意匠に係る物品の外観の全体にわたって,その形態を観察する全体的,視覚的な判断であるから,当該意匠を全体的に観察した場合に,それが意匠全体の支配的部分を占め,意匠としてのまとまりを形成し,看者の注意をひくときは,なお当該部分は意匠上の要部となり得るものであることは,上記(2)において判示したとおりであり,共通点(1)に係る基本的構成態様の多くが,いわゆる横型射出成形機の機能面での特徴に由来すること(甲42)は原告主張のとおりであるとしても,そのことから直ちに,当該構成態様を意匠上の要部と解することができなくなるものではないというべきである。また,上記A及びBの点については,射出成形機という物品が産業財であり,機能性が重視されるとの点は原告主張のとおりであるとしても,そのことから直ちに,射出成形機について,造形の自由度が低く,意匠創作の余地が小さいものであるとまではいうことができないし,従来,射出成形機の意匠創作において,外装部にデザイン処理を施すことが重視されてきたとの主張は,一応,首肯し得るにしても,外装部のデザイン処理によっても,看者に対し,他と異なった格別の美感を感得させるような意匠を創作し得ることも明らかというべきである(乙8参照)。そして,上記Cの点については,原告主張に係る同業各社の意匠の分布状況(甲43,44)を前提としたとしても,型締め部筺体の凸弧状膨出部や台座の垂直角部の丸みを帯びた構成態様が,全体としての本願意匠に格別の美感を生じさせるようなものであるとは認め難いというほかはなく,以上によれば,原告の上記主張は,いずれも上記(2)〜(4)の判断を左右するものではないというべきである。
なお,この点に関連して,原告は,甲45意匠〜甲49意匠がそれぞれ非類似の意匠として登録されてきた経緯がある旨主張する。しかしながら,そもそも,甲45意匠〜甲49意匠は,本願意匠と引用意匠とに強い共通感を与え,全体としての類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる,共通点(1)及び(2)のすべてを備えるものではない(特に,共通点(2)については,いずれの意匠も備えていない。)から,甲45意匠〜甲49意匠が本件意匠や引用意匠とは別に意匠登録されていることは,本件における類否判断を左右するものではない。
(6) また,原告は,本願意匠に係る射出成形機は中型のものであるが,それでも相当に大きな装置であるから,取引者,需要者は,当該射出成形機の各部を十分に注視するものであり,そのため,本願意匠の特徴である差異点(イ)〜(ホ)に係る構成態様は,いずれも看者の注意をひくことになる旨主張する。しかしながら,本願意匠に係る射出成形機が相当に大きな装置であることを考慮したとしても,差異点(イ)〜(ホ)に係る構成態様が,看者に対し,格別の美感を与えるものであるとは認められないから,やはり,原告の主張は,上記(2)〜(4)の判断を左右するものではない。
なお,原告は,工場に設置された状態においては,本願意匠の最大の特徴である型締め部筺体の凸弧状膨出部は,特に看者の注意をひくものであるとも主張するが,この主張を採用することができないことは,上記(3)エにおいて判示したとおりである。
(7) 原告は,さらに,@本願意匠のデザインコンセプトは,全体に丸みを帯びたデザインとすることによって,独自の美感を表現するとともに,作業者の安全を考慮した作業環境に優しいデザインとすることであり,本願意匠に係る射出成形機のカタログ及び雑誌広告においても,本願意匠の主な特徴である型締め部筺体の凸弧状膨出部や台座部の角丸状部が目立つような写真を掲載し,かつ,「高性能をデザインした斬新なフォルム」というキャッチコピーを記載するなど,本願意匠をアピールしている,A業界誌である甲51雑誌において最大限の意匠的評価がされているように,本願意匠の特徴は,市場において,取引者,需要者に十分認識され,評価されている,B原告のプラスチック射出成形機の国内シェアは向上しており,それには,本願意匠のデザインとしての価値も寄与しているなどとも主張する。
しかしながら,まず,上記@の主張については,原告が,主観的に,本願意匠にいかなる位置付けを与え,どのような広告,宣伝を行っているかは,本件における類否判断とは何ら関係がないといわざるを得ないから,採用の限りではないというべきである。上記Aの主張については,甲51雑誌に,原告主張に沿う内容の記事(4枚目中央,第2段落)が掲載されていることは認められるものの,当該記事は,「この機能的な高性能をデザインでも表現した斬新なフォルムもその注目に大きく寄与した」という原告の担当者の発言をそのまま記載していることからも明らかなとおり,原告の担当者による説明に基づいて,原告製の射出成形機を好意的に紹介する趣旨のものであると理解されるから,その内容をもって,市場における取引者,需要者の本願意匠に対する客観的な認識ないし評価を示すものであるとまでは認めるに足りない。さらに,上記Bの主張については,プラスチック射出成形機の市場における原告のシェアが,平成14年度には前年の3位から2位に順位を上げた(甲52)としても,シェア向上の要因としては,製品に係る意匠の良し悪しのほか,製品の性能や価格等,様々な要因があり得るから,市場での商業的成功が,本願意匠の意匠としての価値ないし創作性の高さを直ちに推認させるものでないことは明らかである。したがって,結局,原告の上記主張は,いずれも上記(2)〜(4)の判断を左右するに足りないというべきである。
(8) 以上によれば,本願意匠と引用意匠とは類似するとした審決の判断に誤りはないから,原告の取消事由2の主張は理由がなく,また,そうとすれば,取消事由1に係る差異点(ホ)の看過の点は,審決の結論に影響するものではないから,原告の取消事由1の主張も理由がないことに帰する。
3 以上のとおり,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 古城春実
裁判官 早田尚貴
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