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関連審決 不服2007-32686
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10051審決取消請求事件 判例 意匠
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平成21行ケ10083審決取消請求事件 判例 意匠
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  意匠公報に掲載 /  3条1項3号 /  記載された意匠 /  類似する意匠 /  意匠の類似 /  意匠の類否 /  願書の記載 /  本意匠 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10332号 審決取消請求事件
原告 三谷セキサン株式会社
訴訟代理人弁理士 山本典弘,涌井謙一,鈴木一永,鈴木正次
被告 特許庁長官
指定代理人 鍋田和宣,岩井芳紀,森山啓
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/01/27
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が不服2007-32686号事件について平成20年7月25日にした審決を取り消す 」との判決。
事案の概要
本件は,原告の下記1(1)の意匠登録出願(以下「本件意匠登録出願」といい,本件意匠登録出願に係る意匠を「本願意匠」という )の拒絶査定について,原告 。
が不服審判請求をしたところ,特許庁は,同審判請求は成り立たないとの審決をしたため,原告が,同審決の取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯(1) 本件意匠登録出願(甲第1号証)出願人:原告意匠に係る物品: 基礎杭」「出願日:平成18年4月4日(意願2006-8691号)本願意匠の構成:下記のとおり(2) 本件手続審判請求日:平成19年12月4日(不服2007-32686号)審決日:平成20年7月25日審決の結論: 本件審判の請求は,成り立たない 」 「。
審決謄本送達日:平成20年8月12日2 審決の要旨(1) 審決は,本願意匠は,昭和52年7月27日発行の意匠登録第453150号に係る意匠公報に記載された意匠(なお,意匠に係る物品は「コンクリート杭」である。以下,この意匠を「引用意匠」という )と類似する意匠であるから,意 。
匠登録を受けることができないとした。引用意匠の構成は下記のとおりである。
(2) 審決の理由は,以下の各項目中に引用するとおりである。
ア 本願意匠本件審判の請求に係る意匠(本願意匠)は,2006年(平成18年)4月4日に意匠登録出願をしたものであって,出願書類の記載によれば,意匠に係る物品を「基礎杭」とし,その形態を願書の記載および添付図面に示すとおりとしたものである 別紙 図面第1 参照 判 。(「 」(決注:上記1(1)の図面と同様のものである )。)イ 引用意匠原審(判決注:審査段階)において,本願意匠が類似するとして引用した意匠(引用意匠)は,昭和52年7月27日発行の日本国特許庁意匠公報に掲載された意匠登録第453150号の意匠であって,同意匠公報の記載によれば,意匠に係る物品は 「コンクリート杭」であ ,,。 (「 」 り その形態を同意匠公報に記載した図面に示すとおりとしたものである 別紙 図面第2参照(判決注:上記(1)の図面と同様のものである )。)ウ 本願意匠と引用意匠の対比本願意匠は基礎杭に係るものであり,引用意匠はコンクリート杭に係るものであるが,いずれも建造物の基礎工事等において,地盤強化のために使用する物品に係るから,両意匠は意匠に係る物品が共通し,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点および差異点が認められる。
なお,形態の対比上,本願意匠は,外径の太い部分を引用意匠と同様に上方に揃え,以下,それぞれの形態を認定する。
先ず,共通点として,全体は,縦長の略円筒状であって,内径のほぼ全体を同径とし,外径の上方部分を下方部分よりも太径とし,上方部分(以下 「太径部」という )と下方部分(以 ,。
下 「細径部」という )との間に段差部を形成した態様が認められ,具体的な態様において, ,。
太径部の外径を細径部の外径の約1.5倍としている点,内径を長さ方向のほぼ全長にわたり等径としている点および,段差部の側面がやや短い逆円錐台側面形状である点が認められる。
一方,具体的な態様における差異点として,(1)太径部と細径部の長さ方向の比について,本願意匠は,太径部が細径部よりも長く,その比率を約6対1としているのに対し,引用意匠は,太径部が細径部よりも短く,その比率を約1対2としている点,(2)細径部の外側面の先端寄り部分について,本願意匠は,無模様であるのに対し,引用意匠は,先端に近接して全周,, , , に一本の細線を現している点 そして (3)細径部の内側面の先端部分について 本願意匠は内径が等しいのに対し,引用意匠は,内側に向かってテーパ状とした態様である点が認められる。
エ 本願意匠と引用意匠の類似性についての判断以上の共通点および差異点を総合し,本願意匠と引用意匠が意匠全体として類似するか否かすなわち両意匠の類似性について以下考察する。
先ず,形態の全体について共通するとした態様は,両意匠のほかにも見受けられる点であるが,全体の骨格的な構成に係るものであり,太径部の直径を細径部の直径の約1.5倍としている点および,段差部の側面をやや短い逆円錐台側面形状に形成している点と相俟って,両意匠に共通する形態上の基調を呈し,形態全体として共通している印象を与えているから,共通点が相乗した意匠的な効果は,両意匠の類似性についての判断を左右しているといえる。
一方,各差異点について検討すると,差異点(1)については,この種物品分野において,太径部と細径部の長さ方向の比率に差異のあるものが多数見受けられ,施工方法や施工場所により選択的に行われる変更の範囲であって,施工方法やその効果において差異があるとしても,意匠の形態としては観る者の注意を惹くほどの格別のものではなく,さらに,本願意匠の出願前より,本願意匠のように太径部を細径部よりも大幅に長く形成した態様のものが,例えば,意匠登録第1150748号(意匠に係る物品: 基礎杭 )の意匠に見受けられる点も勘案す 「」ると,本願意匠のものが本願意匠のみに格別新規の態様に形成されたものとは言い難いから,。, その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱である 差異点(2)については細径部の先端に近接した部位における一本の細線の有無であって,意匠全体からみれば極めて限られた部分の態様についての軽微な差異にすぎず また 本願意匠の当該部分は無模様であっ ,,て何等特徴が認められない態様のものであるから,その差異が両意匠の類似性についての判断。, , に与える影響は微弱である 差異点(3)については 細径部の内側面の先端部分の態様に係り断面視態様の対比によって初めて認められる差異であり,形態全体からみれば限られた部位の態様についての軽微な差異にすぎないから,その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は評価できない。そして,これら差異点に係る態様が相まって生じる意匠的な効果を考慮したとしても,両意匠の類似性についての判断を左右するほどの影響を与えるものとはなり得ない。
したがって,本願意匠と引用意匠は,意匠に係る物品が共通し,形態については,差異点よりも共通点に係る態様が相まって生じる意匠的な効果のほうが両意匠の類似性についての判断に与える影響が大きいと言えるから,両意匠は,全体として類似するものと認められる。
審決取消事由の要点
審決は,いわゆる看者について「観る者」としか認定していないが,本願意匠及び引用意匠の看者は「建築物を構築する(基礎杭を埋設する)敷地の平面(隣接状況等)及び地盤の性状を把握し,建造物の荷重等の短期荷重,地震力,風力その他の長期荷重を把握し,これらに基づく最適な工法及び1本の構造,1本の杭が負担すべき荷重を把握した上,以上のような認定において,主に機能に基づいて造形された意匠を,形状から機能を想起しつつ,観る者が美感に基づき選定するという判断視点を持った者」であるから,審決の認定は誤りである。そして,審決は,このような看者の認定を誤ったために,以下のとおり,本願意匠と引用意匠の対比・判断を誤ったものであるから,審決は取り消されるべきである。
1 取消事由1(共通点の認定の誤り-その1)審決は,本願意匠と引用意匠の共通点として「外径の上方部分を下方部分よりも太径とし,上方部分(太径部)と下方部分(細径部)との間に段差部を形成した態様」が認められるとしている。
しかしながら,本願意匠の「太径部」の下端は形態全体の下端から6分の1付近の「下端部」に至っており,このような「太径部」を「上方部分」ということはできない。また,引用意匠の「細径部」の上端は形態全体の上端から3分の1の「上端部」に至っており 「細径部」を「下方部分」ということはできない。 ,したがって,審決の上記共通点の認定は「上から順に太径部と段差部と細径部とからのみ構成した態様」と認定されるべきであり,審決の認定は誤りであり,このように誤った共通点の認定を前提とする本願意匠と引用意匠の類否の判断も誤りである。
2 取消事由2(共通点の認定の誤り-その2)審決は,本願意匠と引用意匠の共通点として 「太径部の直径を細径部の直径の ,約1.5倍としている点」を認定しているが,細径部を1とした場合,本願意匠の太径部は1.38,引用意匠の太径部は1.64であり,約1.5倍と認定することはできないから,審決の認定は誤りである。
そして,このように誤った共通点の認定を前提として,本願意匠と引用意匠の類否を判断した審決は誤りである。
3 取消事由3(差異点の看過)ア 審決は,本願意匠と引用意匠の段差部の形状について 「段差部の側面がや ,や短い逆円錐台側面形状である点」を共通点としているが,段差部の形状については,以下のとおり,差異点として認定されるべきであり,共通点としてのみ認定した審決は誤りである。
イ 一般に,径の異なる2つの円筒部材をつなぐ場合,段差部を形成せずに端面同士をいわゆるドン付けする形状(徐々に径を変化させる斜面を形成しないで連結する形状)と緩やかに径を変化させる斜面を有する段差部を介在させて連結する形状の2つの形状がある。
ウ 本願意匠と引用意匠は,これらのうち後者の形状を採用したものであり,両者の段差部は通常の造形であるから,差異点に注目する必要があるところ,段差部外面の斜め部分は,基礎杭の軸方向に対して,本願意匠が18度,引用意匠が25度となっており,長さ方向全体を1としたときに段差部が占める長さの比率も本願意匠0.03,引用意匠0.05となっている。また,正面図に表れる段差部の形状についても,本願意匠では偏平な台形となっているのに対して,引用意匠は高い台形となっているため,全く異なる印象となっている。さらに,段差部の基礎杭上端からの位置についても,長さ方向全体を1としたとき,本願意匠では全体の0.85の位置,引用意匠では0.32の位置にある。
エ これらの段差部の形状の差異点は,意匠全体の類否判断において重要な位置を占めるものであり,上記差異点の看過は,審決における本願意匠と引用意匠の類否の判断に影響を与えるものである。
4 取消事由4(類否についての判断の誤り)(1) 差異点(1)についての判断の誤り,( , , ア 審決は 差異点(1) 太径部と細径部の長さ方向の比について 本願意匠は,,, 太径部が細径部よりも長く その比率を約6対1としているのに対し 引用意匠は太径部が細径部よりも短く,その比率を約1対2としている点)について,?@この種物品分野において,太径部と細径部の長さ方向の比率に差異のあるものが多数見受けられること,?A(太径部と細径部の長さ方向の比率の差異は)施工方法や施工場所により選択的に行われる変更の範囲であること,?B施工方法やその効果において差異があるとしても,意匠の形態としては「観る者」の注意を惹くほどの格別のものではないこと,?C本願意匠登録出願前より,本願意匠のように太径部を細径部よりも大幅に長く形成した態様のものが,例えば,意匠登録第1150748号の意匠(以下「参考意匠」という )に見受けられることから,?D本願意匠のものが 。
本願意匠のみに格別新規の態様に形成されたものとは言い難いから,その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱である,と判断しているが,誤りである。
イ まず,上記?@の「この種物品分野」については 「全基礎杭の分野」という ,程度の認識であると推測されるが,より具体的に「太径部+段差部+細径部」という形状を備えた基礎杭との関連で判断されなければならない。
ウ 次に,上記?Aのような考え方によると,太径部と細径部の長さ方向の比率の,,。 差異により 異なる意匠登録は存在しないということになるが これは誤りであるエ また,上記?Bについては 「観る者」は具体的な施工方法や施工場所を認識 ,するが,仮に具体的な施工方法や施工場所を認識しないとしても 「観る者」は, ,外観形状を見れば,本願意匠の長い太径部と短い細径部を見れば,何らかの方法で太径に応じた分だけ地盤を掘らなければならないと認識するし,引用意匠の短い太径部と長い細径部を見れば,何らかの方法で長い細径部の分だけ,地盤に押し込まなければならないと認識するのであり,太径部が長いか細径部が長いかは 「観る,者」にとって重要な判断材料となるのであるから,意匠の形態として注意を惹くものであるというべきである。
オ そして,上記?@〜?Bについて,長さ方向全体を1としたときの太径部:段差部:細径部の比率は,本願意匠において0.84:0.03:0.13であるのに対し,引用意匠においては0.30:0.05:0.65である。また,太径部の径を1としたときの細径部の径は,本願意匠において0.73であるのに対し,引用意匠においては0.63である。このように,本願意匠が太くて長い太径部に重きを置いてデザイン設計されたものであるのに対して,引用意匠は細いけれども長い細径部に重きを置いてデザイン設計されたものと推定され,本願意匠と引用意匠は全く逆のプロポーションとして形成されているのであり,本願意匠からは全体に太めの印象・美感が看取されるのに対して,引用意匠からは全体に細めの印象・美感が看取される。
カ さらに,上記?Cについては,参考意匠は 「中径部+段差部+太径部+段差 ,部+細径部+段差部+太径部+段差部+細径部」で構成される基礎杭であり 「太,径部と段差部と細径部のみ」から構成される基礎杭ではないから,参考意匠の存在を根拠として,本願意匠のものが本願意匠のみに格別新規の態様に形成されたものとは言い難いとすることはできない。仮に,参考意匠から「段差部+太径部+段差部」を取り除いたとしても,上下に隣接する径が異なる部分の境界がどのような形状になるかは不明であり,参考意匠の長さ方向全体を1としたときの中径部の長さの比率も0.74であり,本願意匠の太径部における0.85とは大きく異なる。
キ 以上によると,本願意匠と引用意匠の差異が,両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱であるとの審決の判断は誤りである。
(2) 差異点(3)についての判断の誤りア 審決は,差異点(3)(細径部の内側面の先端部分について,本願意匠は,内径が等しいのに対し,引用意匠は,内側に向かってテーパ状とした態様である点)について,断面視態様の対比によって初めて認められる差異であり,形態全体からみれば限られた部位の態様についての軽微な差異にすぎないから,その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は評価できないと判断し,これらの差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果を考慮したとしても,両意匠の類似性についての判断を左右するほどの影響を与えるものとはなり得ないと判断しているが,誤りである。
,, , イ まず 先端をテーパ状とした杭は打ち込み杭として用いられるものであり一般に打ち込み杭は先端に金物を取り付けて補強しているので,引用意匠に係る物品は打ち込み杭として使用される物品である。
ウ そして,基礎杭の取引において,カタログやインターネット・サイトでは,通常,基礎杭の断面が記載された図面が添付され,断面形状が判断材料となっているのであるから,差異点(3)の差異は 「断面視態様の対比によって初めて認められ ,る差異」ではない。
エ したがって 「観る者」は断面形状,とりわけ重要な下端部の断面形状の差 ,異を見逃すことはないから,審決の上記判断は誤りである。
被告の主張の要点
原告は,具体的な取消事由を主張する前提として,審決による看者の認定が誤りであると主張するが,審決は差異点(1)の判断において 「施工方法 「施工場所」 ,」 ,及び「施工方法やその効果」について言及しているとおり 「観る者」の中に設計 ,,「」 , 者 施工者等のいわゆる 当業者 を含めて総合的に認定・判断しているのであり原告の主張は誤りである。
1 取消事由1(共通点の認定の誤り-その1)に対して原告は,審決による共通点の認定が誤りであると主張する。
,, , しかしながら 原告主張のとおり 太径部の下端が形態全体の下端寄りであるかあるいは,細径部の上端が形態全体の上端寄りであるかの差異があるとしても,本願意匠と引用意匠は,いずれも形態全体の上方を太径に,下方を細径にしている点において共通していることに変わりはないのであり,審決は差異点(1)として太径部と細径部の長さ方向の比を認定しているのであるから,審決の共通点の認定に誤りがあるということはできず,原告の主張は誤りである。
2 取消事由2(共通点の認定の誤り-その2)に対して原告は,審決が,本願意匠及び引用意匠の共通点として「太径部の直径を細径部の直径の約1.5倍としている点」を認定したことが誤りであると主張する。
しかしながら,原告が主張する比率は,小数点第2位の数値を四捨五入すれば,それぞれ1.4と1.6になるものであり,審決が太径部の直径が細径部の直径の約1.5倍であるとした認定が直ちに誤りであるということはできない。
そして,両意匠の類似性を意匠全体として考察すると,意匠に係る物品が建造物等の基礎杭であることから,その直径に比して全長が顕著に大きく,かつ,施工条件等によって採用される寸法仕様等は適宜選択されるのが通常である点を勘案すると,この寸法についての差異は目視上微弱なものというほかない。
したがって,原告が上記共通点を含む本願意匠と引用意匠の共通点が相乗した意匠的な効果が,両意匠の類似性についての判断を左右しているといえるとしたことに誤りはなく,原告の主張は誤りである。
3 取消事由3(差異点の看過)に対して原告は,審決が,本願意匠と引用意匠の段差部について「段差部の側面がやや短い逆円錐台側面形状である点」を共通点として認定したことに関し 「段差部外面 ,の斜め部分は,基礎杭の軸方向に対して,本願意匠が18度,引用意匠が25度となっており,長さ方向全体を1としたときに段差部が占める長さの比率も本願意匠0.03,引用意匠0.05となっている」から,審決の上記認定は誤りであると主張する。
しかしながら,本願意匠と引用意匠の段差部の基礎杭の軸方向に対する角度である18度と25度の差異は,いずれもやや緩やかな角度の範囲であって,軽微な差異にとどまるものであり,基礎杭の長さ方向全体に占める長さの比も,極めて微差というべきであるから,これらの差異が本願意匠と引用意匠の段差部の態様に与える影響は微弱であるというべきである。
そして,両意匠の段差部は,いずれもやや短い逆円錐台側面形状に形成しているということができるものであり,このような段差部の態様は,両意匠の形態全体に影響を与える要素であり,このほかの形態の共通点と相俟って,両意匠に共通する形態上の基調を呈し,形態全体として共通している印象を与えるのであり,上記段差部についての共通点の認定を前提とする審決の判断に誤りはない。
したがって,原告の主張は誤りである。
4 取消事由4(類否についての判断の誤り)に対して(1) 差異点(1)についての判断の誤りア 原告は,差異点(1)について,審決が,その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱であると判断したことは誤りであると主張するが,以下のとおり,原告の主張は誤りである。
イ 原告は,差異点(1)については 「太径部+段差部+細径部」という形状を備 ,えた基礎杭との関連で判断されなければならないと主張する。
しかしながら,審決が認定した「この種物品分野」とは,日本意匠分類[平成17年1月1日施行版]に表示した意匠分類記号L2-2100に分類する「基礎工事用品」及びL2-2110に分類する「基礎杭等」に含まれる物品として例示している基礎杭,ケーソン,鋼管杭,境界杭の分野を指すものであり,これら物品の意匠の形態には様々な構成のものがあるから 「この種物品」を「太径部+段差部 ,+細径部」により構成されたものに限定する理由はない。
ウ 原告は,太径部と細径部の長さ方向の比率の差異は施工方法や施工場所により選択的に行われる変更の範囲であるとの審決の認定を前提とすると,太径部と細径部の長さ方向の比率の差異により,異なる意匠登録は存在しないことになってしまうと主張するが,この種物品分野において,施工条件等によって採用される寸法仕様が適宜選択されることが通常であり(乙第2号証の1,2 ,太径部と細径部 )の長さ方向の比率に差異のあるものは周知である(乙第3〜第6号証)から,審決の認定に誤りはない。そして,太径部と細径部の長さ方向の比率の差異が施工方法や施工場所により選択的に行われる変更の範囲であるからといって 「太径部と細 ,径部の長さ方向の比率の差異により,異なる意匠登録は存在しない」ということにもならない。
エ 原告は,太径部が長いか細径部が長いかは,観る者にとって重要な判断材料,,, となり 意匠の形態として注意を惹くものであると主張するが 本願意匠の物品は杭の上端に同径の杭を連結して使用することを想定したものであり,施工時には必然的に同径の外側面が連続することになるため,観る者は,太径部と細径部のプロポーションの違いよりも,杭の下方の変形部分,すなわち,直径を変更して勾配を施した段差部(逆円錐台側面形状)に着目するのが普通であって,本願意匠のように太径部を細径部よりも大幅に長く形成したものは周知の態様でもある(乙第7〜第9号証)から,この点が観る者の注意を格別喚起するものではない。
オ 原告は,参考意匠は 「中径部+段差部+太径部+段差部+細径部+段差部 ,+太径部+段差部+細径部」で構成される基礎杭であり 「太径部と段差部と細径 ,部のみ」から構成される基礎杭ではないから,参考意匠の存在を根拠として,本願意匠のものが本願意匠のみに格別新規の態様に形成されたものとは言い難いとすることはできないと主張する。
しかしながら,参考意匠は太径部と細径部との段差部及び細径部のやや先端よりの2か所に,それぞれ環状の鍔状に突出した部分を形成し,当該部分は,参考意匠の形態全体から見れば,極めて細幅に形成した部分であるから,太径部と細径部と,。 の段差部というよりも 鍔状に突出した部分を形成しているというべきものであるそして,本願意匠と参考意匠は,鍔状に突出した部分の有無の相違があるとしても,形態全体の骨格的な構成態様については,太径部を細径部より大幅に長く形成した態様である点において共通するものであり,審決が,本願意匠のように太径部を細径部よりも大幅に長く形成した態様のものとして参考意匠を摘示したことに誤りはない。
(2) 差異点(3)についての判断の誤り原告は,観る者は断面形状,とりわけ重要な下端部の断面形状の差異を見逃すことはないと主張する。
しかしながら,意匠の創作を奨励するという意匠法の目的から考察すると,引用意匠は,細径部の内側面の先端部分を内側に向かってテーパ状とした態様が認められるのに対して,本願意匠は,細径部の内側面の先端部分の内径を単に等しく形成したものであって,この種物品の意匠として例を挙げるまでもなく多数見受けられる極めてありふれた態様にすぎず,細径部の内側面の先端部分について,新規の創作が何ら認められないものである。また,形態全体からみれば限られた部位(引用意匠では形態全体の全長に対して約22分の1の部分)の態様についての軽微な差異にすぎないから,その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は評価できない。
したがって,審決の判断に誤りはなく,原告の主張は誤りである。
当裁判所の判断
1 看者の認定の誤りについて原告は,取消事由の主張の前提として,本願意匠及び引用意匠の看者は「建築物を構築する(基礎杭を埋設する)敷地の平面(隣接状況等)及び地盤の性状を把握し,建造物の荷重等の短期荷重,地震力,風力その他の長期荷重を把握し,これらに基づく最適な工法及び1本の構造,1本の杭が負担すべき荷重を把握した上,以上のような認定において,主に機能に基づいて造形された意匠を,形状から機能を想起しつつ,観る者が美感に基づき選定するという判断視点を持った者」であり,看者を「観る者」としか認定していない審決は誤りであると主張する。
原告の上記主張は,審決の看者についての理解が,審決がした共通点及び差異点の認定・評価に誤った影響を与えている旨を主張するものと理解することができることから,取消事由についての判断に先だって,原告の上記主張について検討しておくこととする。
意匠法3条1項3号にいう「類似」の判断主体は,意匠に係る物品についての一般の需要者・取引者であると解すべきところ,本願意匠及び引用意匠の意匠に係る物品である「基礎杭」及び「コンクリート杭」の一般の需要者・取引者とは,これらの建築用の杭を購入して使用する建設業者やそのような建設業者との間でこれら物品の売買を仲介する者などであるから,このような需要者・取引者は,建築用の杭の機能やその施工方法及び効果等を理解し,購入しようとする者であるということができる。
原告が本願意匠と引用意匠の看者として主張するところは,上記の「建築用の杭の機能やその施工方法を理解し,購入しようとする者」と一致するものと理解することができるから,その限度において正当であるということができる。
他方,審決は,本願意匠と引用意匠の類否についての判断主体を明示的に認定してはいないものの,差異点(1)の検討において 「この種物品分野において,太径部 ,と細径部の長さ方向の比率に差異のあるものが多数見受けられ,施工方法や施工場所により選択的に行われる変更の範囲であって,施工方法やその効果において差異があるとしても,意匠の形態としては観る者の注意を惹くほどの格別のものではなく・・・」と説示していることからすると,類否の判断主体としての「観る者」として,建築用の基礎杭やコンクリート杭の施工方法や施工場所を理解する者であって,基礎杭やコンクリート杭の形態の相違に応じて,施工方法やその効果において差異があることを認識し得る者を想定しているものと認められる。
そうすると,審決は,実質的に,建築用の基礎杭やコンクリート杭の機能や施工方法及び効果等を理解し,購入しようとする者を本願意匠と引用意匠の類否を判断する主体(看者)としたものということができるから,審決が上記類否の判断主体の認定を誤ったものということはできない。
したがって,審決が看者を「観る者」としか認定していないとの原告の主張を採用することはできない。
以下,具体的な取消事由について,順次判断する。
2 取消事由1(共通点の認定の誤り-その1)について原告は,審決が,本願意匠と引用意匠の共通点として「外径の上方部分を下方部分よりも太径とし,上方部分(太径部)と下方部分(細径部)との間に段差部を形成した態様」が認められるとしたことについて 「本願意匠の『太径部』の下端は ,『』 , 『』 形態全体の下端から6分の1付近の 下端部 に至っており このような 太径部を『上方部分』ということはできない」し「引用意匠の『細径部』の上端は形態 ,全体の上端から3分の1の『上端部』に至っており 『細径部』を『下方部分』と ,いうことはできない」から,審決の上記共通点の認定は「上から順に太径部と段差部と細径部とからのみ構成した態様」と認定されるべきであり,審決の認定は誤りであると主張する。
しかしながら,審決が「上方部分」としたのは,意匠に係る物品の全長を上下方向に見た場合の「相対的に上方の部分」という意味であり,反対に「下方部分」としたのは,同様に「相対的に下方の部分」という意味であることは,審決が両意匠における「太径部」と「細径部」の長さの比の違いを差異点として別途検討していることからも明らかであって,審決による上記共通点の認定は,原告が共通点として主張する「上から順に太径部と段差部と細径部とからのみ構成した態様」と異なるところはないものというべきである。
したがって,原告の主張は審決を正解しないものであり,失当であるから,取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(共通点の認定の誤り-その2)について原告は,審決が,本願意匠と引用意匠の共通点として 「太径部の直径を細径部 ,の直径の約1.5倍としている点」を認定したことについて 「細径部を1とした ,場合,本願意匠の太径部は1.38,引用意匠の太径部は1.64であり,約1.5倍と認定することはできないから,審決の認定は誤りである」と主張する。
ところで 本願意匠に係る物品である基礎杭 と引用意匠に係る物品である コ ,「」 「ンクリート杭」は,いずれも地中に埋設して使用し,埋設後は人の目に触れることがない地盤改良用の建設資材として使用されるものであり,甲第19号証(株式会社三谷セキサンの平成12年7月1日現在の仕様を示した「SUPER ニーディング」と題するカタログ)によると,その外径が300〜700ミリメートルであ,, るのに対して 杭長は4〜13又は15メートルに及ぶものと認められることからそのように寸法が全体的に大きく,かつ,直径方向よりも全長方向に相当程度長い,。 ものであることは 需要者・取引者が一般的に認識しているものというべきであるさらに,甲第14号証(2006(平成18)年4月社団法人コンクリートパイル建設技術協会発行の「既製コンクリート杭の施工管理 第4版 ,甲第18号証 」)特許第3531099号公報 甲第19号証並びに本件意匠登録出願に係る 使 () ,【用状態を示す参考図1】及び同【使用状態を示す参考図2】によると,本願意匠に係る基礎杭は 「プレボーリング拡大根固め工法」に使用され得るものであると認 ,められるところ,甲第14号証によると,同工法における基礎杭の「杭外径」については300〜1000ミリメートルのものが最適とされ,さらに,1200ミリメートルのものについても検討は要するものの不適とはされていないことからすると,基礎杭の需要者・取引者は,基礎杭の直径及び杭長について,上部構造からの条件,地盤条件,施工条件等によって相当な幅があり得るものであることを認識しているものというべきである。
そうすると,そのような基礎杭の細径部の直径に対する太径部の直径の比率が,1.38倍か1.64倍かということについて,需要者・取引者が格別厳密に意識しなければならないものとは考えられないから,細径部の直径を1としたとき,本., . , 願意匠の太径部が1 38 引用意匠の太径部が1 64であることを前提として太径部が細径部の「約1.5倍」と認定したとしても,上下1割の範囲内(1.35倍〜1.65倍)に含まれるものであることからすると,審決の認定に係る「約1.5倍」との用語が適用され得る範囲を逸脱しているということはできない。
以上によると,原告が主張する細径部に対する太径部の比率の違いを差異点とせず 「約1.5倍」の限度で共通するとした審決の認定・判断に誤りがあるという ,ことはできないから,取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(差異点の看過)について(1) 原告は,審決が,本願意匠と引用意匠の段差部の形状について 「段差部の,側面がやや短い逆円錐台側面形状である点」を共通点として認定したことに関し,本願意匠と引用意匠の段差部は通常の造形であるから,差異点に注目する必要があ,,,, るところ 段差部外面の斜め部分は 基礎杭の軸方向に対して 本願意匠が18度引用意匠が25度となっており,長さ方向全体を1としたときに段差部が占める長さの比率も本願意匠0.03,引用意匠0.05となっているほか,正面図に表れる段差部の形状についても,本願意匠では偏平な台形となっているのに対して,引用意匠は高い台形となっているため,全く異なる印象となっているのであり,段差部の基礎杭上端からの位置についても,長さ方向全体を1としたとき,本願意匠では全体の0.85の位置,引用意匠では0.32の位置にあるから,これらを差異点として認定すべきである旨主張する。
確かに,本願意匠と引用意匠を比較すると,原告が主張するとおりの差異が存在することが認められる。
しかしながら,以下のとおり,これらの差異の存在は審決の結論に影響を与えるものとは認められない。
(2) 乙第7号証(実開昭57-105334号公報のマイクロフィルム)には,「パイル本体の下端付近にテーパー部とこれに続く小径部とを形成し,該小径部にこれと同径の下くいを連結するよう構成したことを特徴とするコンクリートパイル (実用新案登録請求の範囲)の考案が記載されており 「・・・テーパー部1c 」,により徐々に径を小さくしたのは,パイル本体1の頭部に打撃力を与えてこれを地中に埋込む際,ここに集中応力が発生してパイル本体1が破損してしまうことを防止するとともに衝撃力を無理なく下方に伝達させるためであり,また,大径部1bと小径部1dを形成したのは,大径部1bにおいて水平抵抗に対応せしめ,水平抵抗のほとんど発生しない下方には,後述のように小径部1dと同径の下くいAを連結せしめるためである (明細書2頁下から2行〜3頁8行)との記載があること 。」が認められる。ここで,上記考案における「テーパー部」は本願意匠及び引用意匠の「段差部」に相当する部分であると認められる。
,( )「 【】 そして 乙第8号証 特開2000-178967号公報 には 従来の技術地震等が発生した場合,地盤中に打設した基礎杭のうち地表面から比較的浅いところに位置する部分に最も大きな水平加重がかかることは知られている (段落【0。」002 「本願の第1発明は,基礎杭における下杭との継手部を,杭本体部の径 】),より小さな小径部で形成するとゝもに,前記杭本体部と継手部との連接部を軸心方向へ向け約30〜45度で傾斜する傾斜面で連接し,前記杭本体部に複数本の非緊張筋を前記基礎杭に埋設した緊張PC鋼棒の外側においてこれと平行に配置したことを特徴とする基礎杭にある。また,本願の第2発明は,節杭を下杭とし,該下杭の胴部及び節部とそれぞれ同径とした継手部及び杭本体部とからなる請求項1記載の基礎杭を上杭とし,両杭をそれぞれ同径とした前記継手部の下端と前記胴部の上端とを連結することを特徴とする基礎杭と節杭の連結工法にある (段落【000 。」7 【0008 「 発明の効果】本発明は上記のような構成であるから,第1 】,】 ),【の発明にあっては,水平加重に対する耐力が増加した安全な基礎杭を,コンクリート鋼管複合杭を使用する場合より廉価に造成することができる。又第2の発明にあっては,基礎杭と節杭との連結作業が容易であるとゝもに,鉛直支持力と水平耐力とのバランスがとれた安全な基礎を造成することができるとゝもに,杭周固定液等の充填量が少なくてすむ,といった諸効果がある (段落【0016 )との各 。」】記載があることが認められる。
上記の各記載によると,本件意匠登録出願時において,一般に,基礎杭に求められる水平方向の耐力(抵抗力)は地表の比較的浅いところにおいて最も強く要求され,鉛直(垂直)方向の支持力を得るために地表から比較的深いところまで基礎杭を到達させなければならない場合があるため,地表に近い部分に径の太い基礎杭を用い,その下端により径の細い基礎杭を連結するという方法により基礎杭を施工しなければならない場合があることは,基礎杭の施工に関する基礎的な技術的事項としてよく知られていたものと認められる。
また,そのような施工方法による場合,地表の比較的浅いところに相対的に太い径の基礎杭を使用することにより,埋込穴に充填するセメントミルクの量を相対的に少なくすることができるというメリットがあること,太い径の基礎杭と細い径の基礎杭を連結する場合において,連結部をテーパー状とすることにより,連結部分に集中応力が発生してパイル本体(基礎杭又はコンクリート杭本体)が破損することを防止することができることについても,同様に基礎的な技術的事項として知られていたものと認められる。
そして,本願意匠や引用意匠に係る物品である基礎杭やコンクリート杭を売買する主体となる需要者・取引者は,少なくとも,上記のような基礎的な技術的事項について知悉しているものというべきである。
(3) 本願意匠や引用意匠の段差部には,上記(2)のような技術的意義が存するものと認められるところ,本件意匠登録出願時において,段差部をテーパー状とし,正面図において逆円錐台側面形状としているものは多数存在しており,軸方向との角度についても,甲第7号証(意匠登録第1080991号)のものでは約33.5°,第16号証の1(特公昭36-18824号公報)のものでは約7°,同号証の4(実公昭37-32954号公報)のものでは約7.5°,乙第4号証(大韓民国特許庁意匠登録第30-0313667号)のものでは約11.5°,乙第5号証(意匠登録第1251848号)のものでは約16°,乙第6号証(意匠登録第1252617号)のものでは約31°,乙第7号証のものでは約7.5°,乙第8号証のものでは約35°,第9号証(特開2004-3324号公報)のものでは約61°と様々であることが認められる。また,長さ方向全体を1としたと,, きの段差部が占める長さの比率は 具体的には杭長及び太径部と細径部の直径の差軸方向との角度によって定まるものであるところ,これらの要素のうち,軸方向との角度については,上記(2)のとおり,テーパー部(段差部)が集中応力を回避するために設けられるものであり,その必要性に応じて,上記のとおり,様々な角度のものが存在する。そして,上記3のとおり,杭長については少なくとも4〜13メートルのものが存在するのであるから,基礎杭における長さ方向全体を1としたときに段差部が占める長さの比率についても,様々なものがあり得るというべきである。
さらに,正面図における逆円錐台側面形状が偏平な台形となるか高い台形となるかについては,軸方向との角度及び太径部と細径部の直径の差によって定まる事項であるところ,このうち,軸方向との角度が集中応力を回避する必要性に応じて定まるものであることは上記のとおりである。そして,上記(2)のとおり,基礎杭に求められる水平方向の耐力(抵抗力)は地表の比較的浅いところにおいて最も強く要求されるのに対し,鉛直(垂直)方向の支持力を得るためには地表から比較的深いところまで基礎杭を到達させなければならない場合があるのであるから,太径部と細径部の関係は,施工場所の地盤条件等に応じて求められる水平方向の耐力と鉛直方向の支持力によって変化し得るものであることも明らかである。そうすると,太径部と細径部の直径の関係にも様々なものがあり得るというべきであるから,結局,正面図における逆円錐台側面形状の形態については,施工条件等の技術的な要請に応じて様々なものがあり得るものというべきである。
そして 「建築用の杭の機能やその施工方法を理解し,購入しようとする者」で ,ある基礎杭やコンクリート杭の需要者・取引者は,これらのいずれの点についても認識しているものと考えなければならない。
(4) 上記(2),(3)によると,基礎杭やコンクリート杭の需要者・取引者は,段差部の形状に様々なものがあり得ることを知っているだけでなく,それが施工条件等に応じたものとして定まる機能的な側面から決定される事項であることを認識しているというべきであるから,原告主張に係る段差部の形状の差異は,需要者・取引者にとって,基礎杭等が必要な機能を果たすために必要となる形状の差異にほかならないから,このような差異が意匠的な観点から需要者・取引者の注意を惹くものということはできない。
したがって,これらの点を差異点として認定したとしても,意匠全体の類似性の判断に影響を与えないものというべきであり,審決の結論に影響を及ぼすものではないから,取消事由3は理由がない。
5 取消事由4(類否についての判断の誤り)について(1) 差異点(1)についての判断の誤りア 原告は,審決が,差異点(1)(太径部と細径部の長さ方向の比について,本願意匠は,太径部が細径部よりも長く,その比率を約6対1としているのに対し,引用意匠は,太径部が細径部よりも短く,その比率を約1対2としている点)について,その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱であると判断したことは誤りであると主張する。
イ しかしながら,本件意匠登録出願時において 「太径部+段差部+細径部」 ,を基本的な構成態様とする基礎杭において,太径部と細径部の長さ方向の比について,太径部を相対的に短く,細径部を相対的に長くしたもの(乙第4〜第6号証)だけでなく,太径部を相対的に長く,細径部を相対的に短くしたもの(乙第7,第8号証)も知られていたことからすると,本願意匠と引用意匠における太径部と細径部の長さ方向の比が異なる点が,本願意匠において新規の形態であるということはできない。
さらに,上記4(2)に説示したところに照らすと,水平方向の耐力を担う太径部と鉛直方向の支持力を担う細径部の長さをどのように設定するのがよいかは,主として施工場所の地盤の状況に応じて決定されるものであると認められ,杭長全体のどの部分に段差部を設けるかについても,このような技術的な検討に基づいて決定されるべきものであるところ,上記3のとおり,基礎杭の杭長は少なくとも4〜13メートルの範囲ものがあり得るのであるから,需要者・取引者は,個別具体的な施工場所の施工条件に応じた杭長や段差部の設定,又は,一般的な施工条件に適合しやすい杭長や段差部の設定に関心を払うものと認められるが,その主たる関心は意匠のもたらす美感よりも,形態のもたらす機能的側面に向けられたものである。
以上によると,審決が差異点(1)について両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱であると判断したことが誤りであるということはできない。
ウ(ア) 原告は,審決が差異点(1)についての判断に際して 「この種物品分野」 ,という範囲で評価し,判断したことについて非難し 「太径部+段差部+細径部」 ,という形状を備えた基礎杭との関連で判断されるべきであると主張するが,上記のとおり 「太径部+段差部+細径部」を基本的な構成態様とする基礎杭についてみ ,ても,差異点(1)に係る形態が本願意匠に新規の形態であるということはできないのであるから,原告の主張は失当である。
(イ) 原告は,太径部と細径部の長さ方向の比率の差異について 「施工方法や施 ,工場所により選択的に行われる変更の範囲である」との考え方によれば,太径部と細径部の長さ方向の比率の差異により,異なる意匠登録は存在しないことになる旨,, 主張するが 他の新規な形態を含む意匠が登録されることはあり得るのであるから原告の主張は失当である。
(ウ) 原告は,太径部が長いか細径部が長いかは,需要者・取引者にとって重要な判断材料になり,意匠の形態として注意を惹く旨主張するが,この点についての需要者・取引者の主たる関心が形態のもたらす機能的側面に向けられたものであることは上記のとおりであり,意匠の形態として注意を惹くものであるということはできないから,原告の主張は失当である。
(エ) 原告は,長さ方向全体を1としたときの太径部:段差部:細径部の比率は,本願意匠において0.84:0.03:0.13であるのに対し,引用意匠においては0.30:0.05:0.65であり,太径部の径を1としたときの細径部の径は,本願意匠において0.73であるのに対し,引用意匠においては0.63であり,本願意匠が太くて長い太径部に重きを置いてデザイン設計されたものであるのに対して,引用意匠は細いけれども長い細径部に重きを置いてデザイン設計されたものと推定され,本願意匠と引用意匠は全く逆のプロポーションとして形成され,, ているのであり 本願意匠からは全体に太めの印象・美感が看取されるのに対して引用意匠からは全体に細めの印象・美感が看取されると主張する。
しかしながら,上記4(3)のとおり,需要者・取引者は,長さ方向において段差部の占める比率や太径部と細径部の関係について,いずれも施工条件に応じて様々なものがあり得ることを認識しているのであるから,これらの点についての本願意匠と引用意匠の差異を取り上げて両意匠の美感の相違を主張することはできないというべきである。
そして,原告の上記主張のうち,残る要素である太径部と細径部の長さ方向の比率の差異については,上記イのとおり,本願意匠において新規の形態ということはできないのであるから,原告の主張は失当である。
(オ) 原告は,参考意匠が「太径部+段差部+細径部」から構成される基礎杭に係る意匠ではないから,参考意匠を根拠として差異点(1)に係る形態を新規でないということはできないと主張するが,上記に説示したとおり 「太径部+段差部+細 ,径部」を基本的な構成態様とする意匠との対比において,差異点(1)に係る形態が本願意匠において新規な形態ということはできないのであり,原告の主張は,審決の結論に影響を及ぼすものであるということはできないから,失当である。
エ 上記のとおり,原告の主張はいずれも失当であり,差異点(1)が本願意匠と引用意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱であるとの審決の判断に誤りはない。
(2) 差異点(3)についての判断の誤りア 原告は,審決が,差異点(3)(細径部の内側面の先端部分について,本願意匠は,内径が等しいのに対し,引用意匠は,内側に向かってテーパ状とした態様である点)について,本願意匠と引用意匠の類似性についての判断を左右するほどの影響を与えるものとはなり得ないと判断したのは誤りであると主張する。
イ そもそも,差異点(3)は,引用意匠の先端部分の内側にわずかに形成されたテーパ状部の有無に関するものであり,意匠全体に与える影響は小さいといわざるを得ない。
仮に差異点(3)に係る「引用意匠の形態」が特徴的なものであるとしても,本願意匠がそのような特徴的な形態を排除し,意匠的に何ら特徴のない単純な断面形状を採用したことをもって,本願意匠において新規の形態ということができないことは明らかである。
ウ 原告は,引用意匠に係る物品は打ち込み杭として使用するものである旨,カタログやインターネット・サイトでは断面が記載された図面が添付され,断面形状が判断材料となっている旨を主張するが,原告の主張するとおりであるとしても,上記イに説示したところからすると,差異点(3)に係る形態の差異は審決の結論に影響を及ぼすものとは認められないから,原告の主張は失当である。
エ 上記のとおり,原告の主張はいずれも失当であり,差異点(3)が本願意匠と引用意匠の類似性についての判断を左右するほどの影響を与えるものとはなり得ないとの審決の判断に誤りはない。
(3) 以上のとおり,審決の差異点(1),(3)についての判断に誤りはなく,取消事由4は理由がない。
結論
以上の次第で,取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求を棄却すべきであるから,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 榎戸道也
裁判官 杜下弘記
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