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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 23年 (ワ) 247号 意匠権侵害差止等請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所 
判決言渡日 2012/06/29
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成24年6月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成23年(ワ)第247号 意匠権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日 平成24年5月24日

判 決

東京都中央区<以下略>

原 告 ラディウス株式会社

訴訟代理人弁護士 西 尾 孝 幸

同 水 村 元 晴

同 吉 岡 裕 貴

同 小 堀 優

同 辻 角 智 之

同 田 畠 宏 一

同 伊 村 健二朗

訴訟代理人弁理士 古 澤 俊 明

東京都府中市<以下略>

被 告 株式会社アベル

訴訟代理人弁護士 横 井 康 真

主 文

1 被告は,別紙物件目録記載の各製品を販売してはならない。

2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。

3 被告は,原告に対し,92万2950円及びこれに対する平成23

年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

5 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を

被告の負担とする。

6 この判決の第1項ないし第3項は,仮に執行することができる。



事実及び理由

第1 請求

1 主文第2項と同旨

2 被告は,別紙物件目録記載の各製品を製造,販売してはならない。

3 被告は,原告に対し,820万8162円及びこれに対する平成23年1月

20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 事案の要旨

本件は,意匠に係る物品を「エーシーアダプタ」とする後記2(2)の意匠権
(以

下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件登録意匠」という。)の意匠

権者である原告が,別紙物件目録記載の各製品(以下「被告製品」と総称し,

その意匠を「被告意匠」という。)を製造及び販売する被告の行為が原告の本

件意匠権の侵害に当たる旨主張して,被告に対し,意匠法37条1項及び2項

に基づき,被告製品の製造及び販売の差止め並びにその廃棄を求めるととも

に,本件意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

2 争いのない事実等(争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事

実)

(1) 当事者

ア 原告は,コンピュータのソフトウェア,本体及び周辺装置の開発及び販

売業務,電子部品の開発及び販売業務等を目的とする株式会社である。

イ 被告は,情報通信機器の周辺アクセサリー用品の企画・製造・卸等を目

的とする株式会社である。

(2) 原告の意匠権

原告は,次の意匠権(本件意匠権)の意匠権者である。

登録意匠番号 第1316224号

出願日 平成19年4月16日



登録日 平成19年11月2日

意匠に係る物品 エーシーアダプタ

登録意匠 別紙意匠公報のとおり

(3) 本件登録意匠の形態

ア 基本的構成態様

本件登録意匠の基本的構成態様は,別紙意匠公報記載の図面のとおり,

箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器

に接続されるUSBコネクタを設け,正面下部にランプを設けたものであ

る。

イ 具体的構成態様

(ア) 本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約

0.3倍の扁平な箱状である。本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2

分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その

正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状と

なっている。また,本体は,正面側と裏面側とに,垂直に二つ割りされ

た状態となっている。

(イ) 差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体

正面から見てやや右寄りに設けられている。プラグピンは背面の凹部に

折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用される。プラグ

ピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,

水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されている。

(ウ) ランプは,直径が縦(横)寸法の約0.05倍で,本体正面の右下

寄りに設けられ,充電時に点灯する。

(エ) USBコネクタが,底部の右寄りに設けられている。

(4) 被告の行為

被告は,業として,平成22年6月ころから同年11月末日ころまでの間,



被告製品を販売していた。

3 争点

本件の争点は,本件登録意匠と被告意匠の類否(争点1),本件登録意匠

意匠登録に無効理由があり,原告による本件意匠権の行使が意匠法41条にお

いて準用する特許法104条の3第1項の規定により制限されるか(争点2),

被告による被告製品の製造の有無及び原告主張の差止めの必要性(争点3),

原告の損害の有無及び被告が賠償すべき損害額(争点4)である。

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1(本件登録意匠と被告意匠の類否)について

(1) 原告の主張

ア 被告意匠の形態

(ア) 基本的構成態様

被告意匠の基本的構成態様は,別紙第1のとおり,箱状の本体の背面

に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるコ

ードを接続し,正面下部にランプを設けたものである。

(イ) 具体的構成態様

a 本体は,縦横の寸法が約50mm×約50mmの正四角形で,厚さ

が縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状である。本体の全周囲は,

厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,

本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の

1を半径とする四半球状となっている。また,本体の正面は,中央部

が周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出してい

る。本体は,正面側と裏面側に,垂直に二つ割りされた状態である。

b 差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体

正面から見てやや右寄りに設けられている。プラグピンは背面の凹部

に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用される。プ



ラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分

には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されている。

c ランプは,直径が縦(横)寸法の約0.05倍で,正面視の右下寄

りに設けられ,充電時に点灯する。

d コードは,底面部の右寄りに設けられ,断線防止部材を介在して,

本体内部の回路に接続されている。

イ 本件登録意匠の要部

本件登録意匠の本質的特徴を形成する形態構成要素である要部は,「本

体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取

りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約

2分の1を半径とする四半球状となっている」点にある。

この点の形態は,周知・公知の形態に見られない,新規な部分であり,

本件登録意匠の最も大きな美的特徴を表し,本件登録意匠全体に丸みを帯

びた印象を与えている。

上記形態が新規な部分であることは,本件登録意匠の意匠登録出願(以

下「本件出願」という。)前の従来のエーシーアダプタの形状は,「本体

は,縦横の寸法が略同一正方形か,やや長さの異なる長方形で,厚さが縦

又は横寸法の数分の1の扁平な箱状をなし,本体の表裏面の全周囲が小さ

な面取りをし,本体の四角隅部も単純な面取りをし,本体の四つの側面が

垂直面を形成している」ものであって(例えば,乙2の1ないし3),全

体が角張った印象を有していることから明らかである。

ウ 被告意匠の類似

本件登録意匠と被告意匠は,@全体の基本構成が,箱状の本体の背面に

折り畳み自在の差込みプラグを設け,正面下部にランプを設けた点,A本

体の構成が,縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.

3倍の扁平な箱状であって,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分



の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面

視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となって」

おり(本件登録意匠の要部),正面側と裏面側に,垂直に二つ割りされて

いる点,B差込みプラグが,本体正面から見てやや右寄りに設けられ,プ

ラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させ

て使用され,プラグピンを支持している弧状部分には,水平方向にほぼ等

間隔で5本の溝が形成されている点,Cランプが,本体正面の右下寄りに

設けられ,充電時に点灯する点で共通している。

以上のとおり,両意匠は,本件登録意匠の要部の形態を含む形態が共通

しているところ,これらの共通点は,意匠全体が丸みを帯びた印象を与え,

需要者に共通の美観を生じさせるものであるから,被告意匠は,本件登録

意匠と類似している。

一方で,本件登録意匠では,本体底面に周辺機器に接続されるUSBコ

ネクタが設けられているのに対し,被告意匠では,周辺機器に接続される

コードが断線防止部材を介在して,本体内部の回路に接続されている点,

本件登録意匠では,本体の正面が平坦であるのに対し,被告意匠では,本

体の正面が中央で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度

膨出している点で両意匠に差異があるが,これらの差異点は,間接対比観

察では見分けがつかないほどの構成上の微差であり,両意匠の類否を左右

するものではない。

エ 被告の主張について

被告は,後記のとおり,@エーシーアダプタ,充電器等の物品において,

その角を本件登録意匠と同程度の径で面取りをすることは公知であるこ

とからすると(乙3),本体の全周囲が半円弧状の面取りがされ,本体の

四角隅部は,その正面視において,いずれも四半球状となっている点のみ

が,ことさら需要者の注意をひくことはないから,この点のみが要部では



ない,A上記@の点のほかに,周辺機器との接続部分,本体の正面の形状

及びランプの位置を併せた本件登録意匠の正面形態全体が意匠的まとま

りとして要部を形成している,B両意匠につき,正面視した全体形状を意

匠的まとまりとして見た場合,需要者に共通の美観を生じさせるものでは

ないから,被告意匠は,本件登録意匠と類似していない旨主張する。

しかし,本体の構成が,縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)

寸法の約0.3倍の扁平な箱状の本件登録意匠において,「本体の全周囲

は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,

本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を

半径とする四半球状となっている」点が,これまでにない新規な形態であ

り,本件登録意匠の最も大きな美的特徴を表しており,この点が看者に最

も強い印象を与える要部である。

他方で,周知・公知の形態は要部とはなり得ないところ,エーシーアダ

プタ,充電器等の物品において,周辺機器との接続部分に接続コードを有

する形態は,本件出願前に周知である(例えば,甲14)。このうち,充

電器に関しては,本体部分が共通していれば,接続部分が接続コードか,

USBコネクタかという差異があっても本意匠と関連意匠の類似関係に

あることは,意匠登録例(甲15の1,2,16の1,2)から明らかで

ある。

また,ランプの位置が相違しても,それ自体要部とならないことは,意

匠登録例から明らかであり,しかも,本件登録意匠と被告意匠のランプの

位置の差異は,ノギスで測らなければ判別することのできない微差であ

る。

さらに,本件登録意匠と被告意匠の正面形状の差異も,間接対比観察

は見分けがつかない微差である。

したがって,本件登録意匠の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状



及びランプの位置は要部を形成するものではなく,また,本件登録意匠

被告意匠が類似することは前記ウのとおりであるから,被告の上記主張

は,理由がない。

オ まとめ

以上によれば,被告意匠は,本件登録意匠類似する意匠に該当する。

(2) 被告の主張

ア 被告意匠の形態について

原告主張の被告意匠の形態については,本体が「扁平な」箱状であると

の点(前記(1)ア(イ)a)を除き,認める。

本体は,正面中央部が,その周辺部から約0.5mm程度膨らんでお

り,「扁平」ではなく,やや丸みを帯びた形状となっている。

イ 本件登録意匠の要部について

(ア) 意匠における要部は,当該意匠の支配的部分を占め,意匠的まとま

りを形成し,看者(需要者)の注意をひくものをいい,本件登録意匠

ごとく,周知・公知の部分を寄せ集めた意匠においては,その意匠に係

物品の性質等から需要者が注目する部分を支配的部分とした全体的

な意匠的まとまりを要部とすべきである。

しかるところ,本件登録意匠に係る物品が携帯電話等用のエーシーア

ダプタであって,その使用目的は携帯電話等と接続してこれを充電する

ことにあるから,需要者は,携帯電話等との接続部分に最も注目する。

また,通常の販売・流通形態(店頭,ウェブサイト)では,需要者は,

エーシーアダプタを正面又は正面やや斜めから見るのが普通であり,需

要者としては正面の形態に最も注目し,正面の全体的な形状及びランプ

の位置に注目する。

そうすると,本件登録意匠においては,携帯電話等の周辺機器との接

続部分,本体の正面の形状及びランプの位置の正面形態全体がひとまと



まりとして要部となり,特に接続部分が最重要の要部である。

(イ)a この点に関し,原告は,本体の全周囲が半円弧状の面取りがされ,

本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも四半球状となって

という構成態様のみが,本件登録意匠の要部である旨主張する。

しかし,通常の販売・流通形態では,需要者は本件登録意匠に係る

物品を正面又は正面やや斜めから見るのが普通であり,側面の形態に

は注目しない。

また,携帯電話等用のエーシーアダプタにおいて,正面視,正四角

形で薄い直方体形状となっているものはありふれている上,乙3(意

匠登録第1275942号公報)に示すように,エーシーアダプタ等

物品において,その角を本件登録意匠と同程度の径で面取りをする

ことは本件出願前に公知であり,上記構成態様のみがことさら需要者

の注意をひくことはない。

したがって,原告の上記主張は,理由がない。

b また,原告は,意匠登録例(甲15の1,2,16の1,2)を挙

げて,周辺機器との接続部分が異なっていっても,類似関係があるか

ら,本件登録意匠の接続部分は,要部とはなり得ない旨主張する。

しかし,原告が挙げる意匠登録例は,本件とは全く事例が異なり,

他の部分の形状が,需要者の注意を引き,要部となっているため,接

続部分が要部となっていない事例であり,原告の上記主張は失当であ

る。

ウ 被告意匠が非類似であること

(ア) 本件登録意匠の要部と被告意匠とを対比すると,次のとおりの差異

がある。

a 周辺機器との接続部分

接続部分の基本的構成態様について,本件登録意匠においては,本



体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設けているのに対

し,被告意匠においては,本体底面に周辺機器に接続されるコードを

接続しており,また,その具体的構成態様も,正面から見た場合,本

登録意匠においては,接続部分は本体底面部に設けられた長方形状

の凹部となっており,その底面はほぼ一直線で,すっきりとした意匠

的なまとまりを形成しているのに対し,被告意匠においては,本体底

面部左寄りの部分から本体部との長さ比で約25%にもなる高さを

有する略台形状(高さ約12mm,底辺約9mm,上辺約5mm)の

断線防止部材が設けられ,その先には本体部より長いコードが接続さ

れており,全体的にアンバランスで重たい印象の意匠的なまとまりを

形成している点。

b 正面の形状

正面ないしやや斜めから見た場合,本件登録意匠は完全な平坦であ

り,やや角張った印象を与えるのに対し,被告意匠は中央部が膨ら

み(正面中央部が,その周辺部から約0.5mm程度膨らんでいる。 ,


丸みを帯びた印象を与える点。

c ランプの位置

本件登録意匠におけるランプの位置は,底部と右側面部から等距

離,すなわち,本体正面の左上及び右下を結んだ対角線上に位置(ラ

ンプの中心が本体右側面と底面からそれぞれ約17mmの位置)し,

幾何学的な印象を与えるのに対し,被告意匠におけるランプの位置

は,ランプが右側面に比べて底面に近い位置(ランプの中心が本体右

側面から約16mmで,かつ,底面から約12mmの位置)にあり,

非対称でアンバランスな印象を与える点。

(イ) 以上を前提に,本件登録意匠及び被告意匠について,正面視した全

体的形状を意匠的なまとまりとして見た場合,本件登録意匠は,周辺機



器との接続部分が直線上で,ランプが本体正面の左上と右下とを結んだ

対角線上に位置し,正面の形状が平坦であることから,全体としてすっ

きりとし,幾何学的な,さらにはかっちりとした平面的な印象を与える

ものとなっているのに対し,被告意匠は,略台形状の接続部分が底部左

寄りに設けられ,ランプは対角線からずれたアンバランスな位置にあ

り,正面の形状が丸みを帯びていることから,全体としてバランスを欠

き,丸みを帯びた印象を与えるものとなっている。

したがって,本件登録意匠及び被告意匠は,需要者に共通の美感を生

じさせるものではなく,両意匠は全く類似していない。

エ まとめ

以上のとおり,被告意匠は,本件登録意匠類似する意匠に該当しない。

2 争点2(本件意匠権の権利行使の制限の成否)について

(1) 被告の主張

本件登録意匠は,以下のとおり,本件出願前に当業者に公然知られた形状

である乙5(DOS/V Magazine 2006年2月号,165頁)記載の

エーシーアダプタの形状(以下「乙5記載の意匠」という。)と乙3(意匠

登録第1275942号公報)記載の意匠及び乙4(意匠登録第12057

94号公報)記載の意匠に基づいて容易に本件登録意匠の創作をすることが

できたものであるから,本件登録意匠の意匠登録には意匠法3条2項に違反

する無効理由(同法48条1項1号)があり,意匠登録無効審判により無効

にされるべきものであるから,同法41条において準用する特許法104条

の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件意匠権を行使すること

ができない。

ア 本件登録意匠と乙5記載の意匠との共通点及び差異点

(ア) 乙5記載の意匠の形態は,別紙第2のとおり,本体が縦横の寸法が

同一の正四角形で扁平な箱状であり,本体の全周囲は面取りがされてお



り,差込みプラグが本体の上面部から背面部にかけ,本体正面から見て

やや左寄りに設けられ,プラグのピンは背面の凹部に折り畳まれた状態

から,後方又は上方に起立させて使用される態様であり,プラグピンの

支持部の外周は弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔

で複数本の溝が形成されて,さらに長方形状の凹部形状のUSBコネク

タを底部の左寄りに設けた形状からなっている。

(イ) 本件登録意匠と乙5記載の意匠とを対比すると,@本体の全周囲の

面取りの径が異なる点(以下「差異点1」という。),Aプラグピン及

びUSBコネクタの配置が異なる点(以下「差異点2」という。),B

乙5記載の意匠にはランプがない点(以下「差異点3」という。),C

縦・横・厚さの正確な寸法(以下「差異点4」という。),Dプラグピ

ン支持部の溝の本数(乙5記載の意匠の本数は不明である。 (以下
) 「差

異点5」という。)において差異があるが,その余の構成態様は共通す

る。

イ 本件登録意匠の創作容易性

(ア) 差異点1について

乙3記載の意匠は,別紙第3のとおりであり,縦(横)の約0.15

倍の長さを半径とする面取りをした形状を有している。

そして,乙5記載の意匠に乙3記載の意匠の上記形状を組み合わせ

て,その面取り径で乙5記載の意匠の角を落とせば,本体の全周囲が厚

さを基準としてその約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ

形状(差異点1に係る本件登録意匠の構成態様)となる。

(イ) 差異点2について

エーシーアダプタにおいてプラグピン及びUSBコネクタの配置を

適宜変更することは,当業者にとってありふれた手法にすぎない。

(ウ) 差異点3について



エーシーアダプタにおいては,乙4記載の意匠に示すとおり(別紙第

4参照),その正面部にランプを設けることは公知の形状である。

(エ) 差異点4及び5について

縦・横・厚さの正確な寸法及びプラグピン支持部の溝の本数について

は,本件登録意匠と乙5記載の意匠との間でそれほどの差異はなく,こ

れらの点は顕著な差異ではない。

(オ) 小括

以上を総合すると,当業者が乙5記載の意匠に乙3及び乙4記載の各

意匠を組み合わせ,さらには配置の変更をすることにより,容易に本件

登録意匠の創作をすることができたものである。

(2) 原告の主張

ア(ア) 本件登録意匠は,縦(横)を基準とすれば,その約0.15倍の長

さを半径とする面取りをしているが,本体の厚さが縦(横)寸法の約0.

3倍の扁平な箱状であり,しかも,全周囲が厚さを基準としてその約2

分の1を半径とする半円弧状の面取りをしている。そして,本件登録意

匠において,看者が最も注意を引かれる部分は,本体の全周囲が,厚さ

方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをし,本体の四

角隅部が,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径と

する四半球状となっている点にある。

他方で,乙3記載の意匠は,本体の厚さが縦(横)寸法の約0.6倍

であり,全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをし

ていないことは明らかである。

したがって,乙5記載の意匠に乙3記載の意匠を組み合わせても,本

体の全周囲が厚さを基準としてその約2分の1を半径とする半円弧状

の面取りされた形状(差異点1に係る本件登録意匠の構成態様)にはな

らない。



(イ) 次に,差異点4及び5については,乙5記載の意匠から,縦・横・

厚さの正確な寸法及びプラグピン支持部の溝の本数を明確に判断する

ことはできず,本件登録意匠と比較することはできない。

なお,差異点2及び3は,本件登録意匠の特徴的な部分ではない。

イ 以上によれば,本件登録意匠は,乙5記載の意匠と乙3及び乙4記載の

各意匠に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものとはいえ

ないから,本件登録意匠には,被告主張の無効理由は存在しない。

3 争点3(被告による被告製品の製造の有無及び差止めの必要性)について

(1) 原告の主張

被告は,業として,平成22年6月ころから,被告製品を製造及び販売し

ている。

そして,被告の上記製造及び販売は,原告の本件意匠権の侵害行為に当た

るから,その差止めの必要性がある。

(2) 被告の主張

原告の主張は争う。

被告が平成22年6月ころから被告製品の販売をしていたことは事実で

あるが,同年末をもって販売を停止している。また,被告が被告製品を製造

した事実はない。

4 争点4(原告の損害額)について

(1) 原告の主張

ア 意匠法39条1項損害額

(ア) 被告製品の譲渡数量

被告は,平成22年6月から同年11月までの間に,被告商品を合計

2万3246個販売した。

(イ) 単位数量当たりの利益額

原告が販売する本件登録意匠に係るエーシーアダプタ(検甲2。以



下「原告製品」という。)は,USBコネクタに携帯電話用の接続ケー

ブルを接続して使用することができるから,被告製品と市場において競

合し,被告による本件意匠権の侵害行為がなければ販売することができ

物品に該当する。

原告製品の販売により得られる1個当たりの利益額は,以下のとおり

341円を下らない。

a 原告製品の卸売販売価格 1個当たり607円

b 変動経費 1個当たり266円

(a) 原告は,原告製品を中国から輸入して販売しており,その1個

当たりの変動経費は,本体2.75ドル,説明書0.017ドル,

シール0.28ドル,ステッカー0.014ドルの合計3.187

ドルである。そして,本件訴訟提起時(平成23年1月7日)の為

替相場1ドル83.58円に基づいて計算すると,原告製品の変動

経費は1個当たり266円(小数点以下切捨て)となる。

(b) この点に関し,被告は,後記のとおり,原告製品の国内輸送費,

海上輸送費及び倉庫料を変動経費として考慮すべきである旨主張

する。

しかし,原告は,平成22年1月から平成23年12月にかけて

合計11万5140個の原告製品を仕入れて10万8801個出

荷しており,このような取引規模に照らせば,前記(ア)の譲渡数量

分の増加があったとしても国内輸送費及び海上輸送費の追加支出

は生じない。また,原告は,原告製品3万2400個を収容できる

20フィートコンテナを用いて,2ないし3か月に1度の頻度で仕

入れの海上輸送をしていることから,コンテナには十分な空きがあ

り,前記(ア)の譲渡数量分の増加について追加の海上輸送費は発生

しない。



したがって,被告の上記主張は,失当である。

c 利益額(a−b) 1個当たり341円

(なお,前記b(a)の原告主張の1個当たりの変動経費の合計金額

の算出過程に違算があり,ドル建ての合計金額は3.061ドルが正

しいが,1個当たりの利益の額としては341円と主張するものと解

する。)

(ウ) 「販売することができないとする事情」の不存在等

被告は,後記のとおり,被告製品及び原告製品の形態の違いにより両

製品の購買層が異なる,代替品が存在する,意匠が購入動機の形成に寄

与していないなどとして,原告製品は,被告製品との関係において「侵

害の行為がなければ販売することができた物品」(意匠法39条1項

文)に該当せず,また,被告製品の譲渡数量の全部に相当する原告製品

を原告において「販売することができないとする事情」(同項ただし書)

が存在する旨主張する。

しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。

a 形態の違い及び代替品の存在について

被告は,原告製品は,その接続口がUSBコネクタ(USBポート)

であり,主にiPodシリーズやiPhoneといった,USBケーブルの接続

により充電可能な製品に用いられるエーシーアダプタであるのに対

し,被告製品は,Docomo,SoftBankの携帯電話(iPhoneのようなスマ

ートフォンを除く。以下同じ。)の接続口に対応するケーブルが一体

となったエーシーアダプタであり,両製品は,市場において競合して

いないし,同携帯電話用の充電器と接続ケーブルがセットになった廉

価な代替品が存在するから,原告製品は,被告による「侵害の行為が

なければ販売することができた物品」に該当せず,また,被告製品の

譲渡数量の全部に相当する原告製品を原告において「販売することが



できないとする事情」がある旨主張する。

しかしながら,原告製品にDocomo,SoftBankの携帯電話用のUSB

ケーブルをつなぐことによって,原告製品もこれらの携帯電話のエー

シーアダプタとして使用することができるから,原告製品は,被告に

よる「侵害の行為がなければ販売することができた物品」に該当する。

また,原告製品と同種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタ

において,携帯電話用の接続ケーブルを利用して携帯電話の充電に用

いるのはごく一般的なことであり(甲36ないし38),需要者は,

デザインが優れたエーシーアダプタを用いるためであれば接続ケー

ブルを別途購入するし,接続ケーブルは600円より安価な料金で入

手可能であるから,被告製品の販売価格(約1280円)との隔たり

は大きなものではない。このことは,Docomo,SoftBankの携帯電話用

の充電器との接続ケーブルがセットになった代替品が存在するから

といって,同携帯電話用の接続ケーブルを必要とする原告製品を選択

しないことにはならないことを示すものといえる。

加えて,原告製品のようなUSBコネクタを有するエーシーアダプ

タは,ケーブルが一体となった被告製品のような携帯電話用のエーシ

ーアダプタと異なり,携帯電話のみならず,iPodのような携帯用音楽

プレーヤーやiPhoneのようなスマートフォン等の多様な製品の充電

が可能だという大きな利点があることからすると,Docomo,SoftBank

の携帯電話の利用者(ユーザー)である被告製品の需要者が,同携帯

電話用の接続ケーブルを必要とする原告製品を選択することも当然

にある。

さらに,被告は,原告製品のパッケージに「iPodシリーズ,iPhone3G

対応」と記載されている点をとらえ,原告製品がiPhone・iPodのエー

シーアダプタであるかのように主張するが,原告製品のパッケージ



の「充電可能機器」欄には携帯電話も記載されており,原告製品と被

告製品の間に被告が主張するような明確な棲み分けはない。

したがって,被告の上記主張は理由がない。

b 購入動機の形成に対する意匠の寄与について

被告は,被告製品が主にインターネットのショッピングサイトで販

売され,同サイト上には正面から撮影された写真しか掲載されていな

いし,また,被告製品がパッケージに入っているため,正面の形状

かみることができないなどとして,被告意匠は,被告製品の購入動機

の形成に寄与していない旨主張する。

しかし,被告製品(検甲1)がパッケージに入った状態であっても,

特有の丸みを帯びた形状は需要者において看取することができる。

また,インターネット店舗の被告製品のレビュー(利用者の感想)

において,「かわいいです。 (甲41) 「おしゃれな充電器」 「か
」 , ,

わいいけれど」(以上,甲42)というデザイン(意匠)の面に多く

の注目が集まっており,性能は重視されていないし,被告製品は 「か


わいいのに」ハイパワー」とのタイトルで売り出されており(甲41

ないし45),そのデザインは大きな購入動機となっている。一方,

原告製品のレビュー(甲46,47)においても,「デザインが個人

的に好きですね。丸みがあり,艶々しています。」,「丸みを帯びた

デザイン,他機種と比較してかなり質感が高いです。」,「そのデザ

インと小ささ,軽さに大変満足しています。」,「iPodにマッチした

デザインも気に入っている。」などの記載があり,原告製品において

本件登録意匠が大きな購入動機となっており,原告製品と被告製品は

意匠が極めて類似しており,被告製品においても,被告意匠が大きな

購入動機となっていることがうかがえる。

以上によれば,本件登録意匠に類似する被告意匠が被告製品の購入



動機となっていることは明らかであり,被告の上記主張は,理由がな

い。

(エ) 小括

以上を総合すれば,被告が平成22年6月から同年11月までの間に

被告製品を販売して本件意匠権を侵害したことにより,意匠法39条

項に基づいて算定される原告の損害額は,合計746万1966円を下

らない。

イ 弁護士費用

被告の本件意匠権の侵害行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用

相当の損害額は,前記アの損害額の1割に相当する74万6196円を下

らない。

ウ まとめ

以上によれば,原告は,被告に対し,本件意匠権侵害の不法行為に基づ

損害賠償として820万8162円(前記ア及びイの合計額)及びこれ

に対する平成23年1月20日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで

民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

(2) 被告の主張

ア 意匠法39条1項損害額について

(ア) 被告製品の譲渡数量の主張に対し

原告主張の被告製品の譲渡数量(前記(1)ア(ア))は認める。

(イ) 単位数量当たりの利益額の主張に対し

a 原告製品は,その接続口がUSBコネクタ(USBポート)であり,

主にiPodシリーズやiPhoneといった,USBケーブルの接続により充

電可能な製品に用いられるエーシーアダプタであるのに対し,被告製

品は,Docomo,SoftBankの携帯電話の接続口に対応するケーブルが一

体となったエーシーアダプタであり,両製品は,充電の対象となる製



品がそれぞれ異なることから,市場において競合せず,仮に被告製品

が販売されなかった場合,需要者は,被告製品と同じDocomo,SoftBank

の携帯電話用のエーシーアダプタを購入するのであって,原告製品を

購入するというような関係にはない。

したがって,原告製品は,被告製品との関係において,被告によ

る「侵害の行為がなければ販売することができた物品」(意匠法39

条1項本文)に該当しない。

b 原告主張の原告製品の卸売販売価格,変動経費の額及び利益額(前

記(1)ア(イ))は,いずれも争う。

(a) 原告は,原告製品の卸売販売価格は1個当たり607円である

と主張するが,卸売先が不明であり,また,原告製品の市場での販

売価格が900円前後であることからすると,その卸売販売価格が

607円であるというのは極めて高額であり,措信できない。

(b) 原告製品の変動経費に係る費用のドル円換算に際しては,原告

製品本体が主に仕入れられた平成21年11月や平成22年1月

の為替相場である1ドル約90円を基準とすべきであり,この基準

によれば,原告主張の変動経費は,1個当たり286.83円とな

る。

そして,原告による原告製品の仕入れ数量は1000ないし30

00個程度と少量のロット(甲22の1,2)であることからする

と,原告製品の販売数量の増加に応じてその国内輸送費(7.58

円),海上輸送費(11.77円)及び倉庫料(24.9円)の追

加支出が生じるというべきであるから,上記286.83円にこれ

らの費用を加えた金額を,原告製品の変動経費として,その単位数

量当たりの利益額の算出に当たり控除すべきである。

(ウ) 「販売することができないとする事情」の存在



以下のとおり,被告製品の譲渡数量の全部に相当する原告製品を原告

において「販売することができないとする事情」(意匠法39条1項

だし書)が存在する。

a 形態の違い

(a) 前記(イ)aのとおり,原告製品はパソコンのUSBポートを用

いるiPhone等用のエーシーアダプタであり,被告製品はDocomo,

SoftBankの携帯電話用の接続ケーブルを有するエーシーアダプタ

であることから,両製品は実質的な競合品とはいえないものの,あ

えて,原告製品に上記携帯電話用の接続ケーブルを接続することに

より,原告製品も上記携帯電話用のエーシーアダプタとして使用す

ることができる。

しかし,この場合,原告製品に加えて,別途上記携帯電話用の接

続ケーブルを用意する必要があるところ,上記携帯電話用のエーシ

ーアダプタが必要な需要者は,当該機器が充電できればよいから,

ケーブルが一体となっている製品を選択し,あえて,原告製品のよ

うなケーブルのない製品を選択することはないのに対し,他方で,

多種の機器の充電に用いるエーシーアダプタが必要な需要者は,原

告製品を選択することになるから,原告製品と被告製品とでは,そ

もそも購入対象者が異なる。

すなわち,原告製品のようなUSBコネクタを有するエーシーア

ダプタは,基本的にiPhoneやiPod等の機器の充電用,被告製品のよ

うな携帯電話用のケーブルが一体となったエーシーアダプタは,携

帯電話の充電用というように,対象となる周辺機器の種類によっ

て,明確に棲み分けがされている。このことは,原告製品のパッケ

ージに「iPodシリーズ,iPhone3G対応」,被告製品のパッケージに

は,「docomo」,「SoftBank」とそれぞれ記載されていることから



も明らかである。

したがって,被告製品が販売されなかった場合,需要者がそれに

代えて原告製品を購入するという関係にはなく,かかる両製品の形

態の違いは,「販売することができないとする事情」に該当する。

(b) この点に関し,原告は,甲36ないし38を挙げて,原告製品

と同種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタにおいて,

Docomo,SoftBankの携帯電話用の接続ケーブルを利用して携帯電話

の充電に用いるのはごく一般的なことである旨主張する。

しかし,甲36ないし38記載のエーシーアダプタは,iPod,

iPhone等用のUSBポートでの充電が予定された機器のエーシー

アダプタであるところ,これらの機器には,そもそもUSB接続用

のケーブルが別に用意されており,携帯電話の充電のためにエーシ

ーアダプタを購入しようとする者が,原告製品を選択する理由には

ならない。

したがって,原告の上記主張は,理由がない。

(c) また,原告は,原告製品は,被告製品と異なり,多様な周辺機

器の充電が可能になるというメリットがある旨主張する。

しかし,原告主張の原告製品のメリットは,原告製品と被告製品

は,対象となる周辺機器が明確に異なり,そもそも購入対象者が違

うことを示すものであり,被告製品が存在しない場合に,原告製品

が需要者に購入されるという理由にならない。

b 代替品の存在

被告製品が販売されていた平成22年当時,被告製品と同種の

Docomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタ及び原告製品と同

種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタが数多く販売されて

いたところ,被告製品と同種の上記携帯電話用のエーシーアダプタは



おおよそ800円前後で販売されているのに対し,原告製品と接続ケ

ーブルを併せて購入すると,1500円程度(原告製品は900円前

後,接続ケーブルは600円前後)になることから,仮に被告製品が

販売されなかったとした場合には,需要者は被告製品と同種のエーシ

ーアダプタと接続ケーブルの一体型の廉価な製品を代替品として購

入するはずである。

c 意匠が購入動機の形成に寄与していないこと

需要者が被告製品の購入に当たり被告意匠に注目しているという

事実はなく,被告意匠が被告製品の購入動機の形成に寄与していな

い。

すなわち,被告製品は,主にインターネットのショッピングサイト

で販売され,一体に接続されているケーブルを含めた全体について,

正面から撮影された写真が掲載されているのみであり,また,被告製

品は,ほとんどその正面形状しか見えない状態でパッケージに梱包さ

れており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはない。むし

ろ,インターネットのショッピングサイトでは,主に「携帯電話ドコ

モ/ソフトバンク用」という用途のほかに,「充電ランプ付」,「2

40V対応で海外でも使用可能」,「ハイパワー出力」といった商品

の性能について説明がされており,かかるサイトを見た需要者として

は,専ら,どのような携帯電話に使用できるのか,その性能はどのよ

うなものかということに注目するものといえる。

また,「とにかくピンクがかわいいです」(甲41),「見た目は

真っ赤でおしゃれです」(甲42)といったインターネットのショッ

ピングサイトにおける被告製品のレビューに照らしても,被告製品の

購入動機となっているのは,被告意匠ではなく,色であるといえる。

以上のように,被告意匠が被告製品の購入動機の形成に寄与してお



らず,仮に被告製品が販売されなかったとしても,それに代えて,本

登録意匠に係る原告製品が購入されるという関係にはない。

d 小括

以上のとおり,被告製品及び原告製品の形態の違い,被告製品の代

替品の存在,意匠が購入動機の形成に寄与していないことは,被告製

品の譲渡数量の全部又は一部に相当する原告製品を原告において「販

売することができないとする事情」(意匠法39条1項ただし書)に

該当する。

イ 弁護士費用について

原告の主張は争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(本件登録意匠と被告意匠の類否)について

登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさ

せる美感に基づいて行うものとされ(意匠法24条2項),その判断に際して

は,両意匠を全体的観察により対比し,意匠に係る物品の性質,用途,使用態

様,更には登録意匠における公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌し

て,登録意匠について需要者が視覚を通じて注意をひきやすい特徴的部分(要

部)を把握し,この特徴的部分を中心に両意匠を対比した上で,両意匠が全体

的な美感を共通にするか否かによって類否を決するのが相当であると解され

る。

以上を前提に,被告意匠が本件登録意匠類似する意匠に該当するかどうか

判断する。

(1) 本件登録意匠及び被告意匠の形態等

ア 本件登録意匠の形態

本件登録意匠は,「エーシーアダプタ」に係る意匠であり,その形態は,

別紙意匠公報記載の図面のとおりである。



本件登録意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様は,前記第2の2

(3)のとおりである。

すなわち,本件登録意匠においては,@箱状の本体の背面に折り畳み自

在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを

設け,正面下部にランプを設けている,A本体は,縦横の寸法が同一の正

四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状であり,正面側

と裏面側とに,垂直に二つ割りされた状態となっている,B本体の全周囲

が,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,

本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を

半径とする四半球状となっている,C差込みプラグは,本体の平面部(上

面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや右寄りに設けられており,

プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立さ

せて使用され,プラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,

この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されている,

Dランプは,直径が縦(横)寸法の約0.05倍で,本体正面の右下寄り

に設けられ,充電時に点灯する,EUSBコネクタが,底部の右寄りに設

けられている。

イ 被告意匠の形態

被告意匠は,「携帯電話用エーシーアダプタ」に係る意匠であり,その

形態は,別紙第1のとおりである。

被告意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様が,前記第3の1(1)ア

のとおりであること(ただし,同(イ)の本体が「扁平な」箱状であるとの

点を除く。)は,争いがない。

そして,上記争いのない事実と証拠(甲50,検甲1)によれば,被告

意匠においては,@箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設

け,底面に周辺機器に接続されるコードを接続し,正面下部にランプを設



けていること,A本体は,縦横の寸法が53mm×53mmの正四角形で,

厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状であり,正面側と裏面側に,

垂直に二つ割りされた状態となっており,また,本体の正面は,中央部が

周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出していること,

B本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の

面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さ

の約2分の1を半径とする四半球状となっていること,C差込みプラグ

は,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや右

寄りに設けられており,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態か

ら,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周は,

本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5

本の溝が形成されていること,Dランプは,直径が縦(横)寸法の約0.

05倍で,正面視の右下寄りに設けられ,充電時に点灯すること,Eコー

ド(接続コード)は,底面部の右寄りに設けられ,断線防止部材(正面視,

略台形(高さ約12mm,底辺約9mm,上辺約5mm)で,約1.5m

mの溝を均等間隔で4本有する形状)を介在して,本体内部の回路に接続

されていることが認められる。

(なお,「扁平」とは,「平たいこと。また,そのさま。」を意味し(甲

19) 必ずしも完全に平坦であることを意味するものではないと解され


る。そして,被告意匠は,本体が縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが

縦(横)寸法の約0.3倍の箱状であることからすれば,正面の中央部が

周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出している点を

考慮しても,「扁平な」箱状と認められる。)

ウ 両意匠の共通点及び差異点

(ア) 本件登録意匠と被告意匠は,@箱状の本体の背面に折り畳み自在の

差込みプラグを設け,正面下部にランプを設けた点,A本体が,縦横の



寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱

状であり,また,正面側と裏面側に,垂直に二つ割りされている点,B

本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の

面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの

約2分の1を半径とする四半球状となっている点,C差込みプラグが,

本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや右寄

りに設けられている点,Dプラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態

から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周

は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間

隔で5本の溝が形成されている点,Eランプは,直径が縦(横)寸法の

約0.05倍で,本体正面の右下寄りに設けられ,充電時に点灯する点

において共通する。

(イ) 他方で,両意匠は,@本件登録意匠では,本体底面に周辺機器に接

続されるUSBコネクタが設けられているが,被告意匠では,周辺機器

に接続されるコードが断線防止部材を介在して,本体内部の回路に接続

されている点,A本件登録意匠では,本体の正面の形状が平坦であるが,

被告意匠では,中央部で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5m

m)程度膨出している点,B本件登録意匠では,ランプの中心が本体右

側面と底面からそれぞれ約17mmの均等な位置にあるのに対し,被告

意匠では,ランプの中心が本体底面から約12mmで,かつ,本体右側

面から約16mmの位置にあり,本件登録意匠に比べて底面に寄った位

置に設けられている点において差異がある。

(2) 本件登録意匠の特徴的部分(要部)

ア エーシーアダプタの性質,用途及び使用態様

別紙意匠公報記載の「意匠に係る物品の説明」及び証拠(乙1の1ない

し4,検甲1)によれば,@本件登録意匠意匠に係る物品であるエーシ



ーアダプタは,携帯電話,スマートフォン,携帯用音楽プレーヤー,携帯

用ゲーム機等の周辺機器の充電に用いられる機器であること,A充電の際

には,本体の背面に折り畳まれている差込みプラグを90度ないし180

度起こした状態で商用電源のコンセントに差し込むと,本体の正面下部の

USBコネクタ(USBポート)に接続され接続用のケーブルを介した周

辺機器にコンセントからの交流電圧を所定の直流電圧に変換して供給す

ること,B充電をしないときは,周辺機器から接続用のケーブルを抜き,

差込みプラグを折り畳んで収納した状態で保管し,あるいは,この状態で

身の回りに置いたり,外出時に携行するなどすることが認められる。

エーシーアダプタは,これらの周辺機器を充電するために用いるもので

あるから,これらの周辺機器を利用する者が需要者となる。

イ 公知意匠

(ア) 本件出願前(出願日平成19年4月16日)に頒布された刊行物

ある乙5(DOS/V Magagine 2006年2月号,165頁)には,

エーシーアダプタに係る意匠が記載され(別紙第2参照),「箱状の本

体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続

されるUSBコネクタを設ける」構成,「本体は,縦横の寸法が同一の

正四角形で扁平な箱状をなしており,本体の全周囲は面取りがされてい

る」構成,「差込みプラグが本体の平面部(上面部)から背面部に設け

られ,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方

に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周は弧状をなしてい

る」構成及び「USBコネクタは,底部に設けられている」構成が示さ

れている。

(イ) 本件出願前に頒布された刊行物である乙3(意匠登録第12759

42号公報)には,充電器に係る意匠が記載され(別紙第3参照),縦

横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍の箱状



の本体において,「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径とする

面取りをしている」構成が示されている。

また,本件出願前に頒布された刊行物である乙4(意匠登録第120

5794号公報)には,電子ゲーム機用充電器に係る意匠が記載され(別

紙第4参照),本体の「正面下部にランプを設ける」構成が示されてい

る。

ウ 検討

(ア) 前記ア認定のエーシーアダプタの性質,用途及び使用態様によれ

ば,エーシーアダプタは,携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であ

ると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯するなど,日常

生活において目に触れる機会の多い製品であるといえる。

そして,前記イの認定事実によれば,エーシーアダプタの意匠におい

ては,本件登録意匠の構成態様に係る「箱状の本体の背面に折り畳み自

在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタ

を設ける」構成(前記(1)ア@),「本体は,縦横の寸法が同一の正四

角形で扁平な箱状であり」(前記(1)アA),「本体の全周囲は面取り

がされている」構成及び「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径

とする面取りをする」構成,「差込みプラグが本体の平面部(上面部)

から背面部に設けられ,プラグのピンは背面の凹部に折り畳まれた状態

から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周

は弧状をなしている」構成(前記(1)アC),本体の「正面下部にラン

プを設ける」構成(前記(1)アD),「USBコネクタは,底部に設け

られている」構成(前記(1)アE)は,本件出願時にいずれも公知であ

ったものといえる。

他方で,本件登録意匠の構成態様のうち,「本体の全周囲は,厚さ方

向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四



角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする

四半球状となっている」点(前記(1)アB)は,公知意匠には認められ

ない構成態様であり,この構成態様により,需要者に対し,本体全体が

丸みを帯びた柔らかな印象を与えると同時に,本体正面視の四角隅部が

四半球状となっていることにより整った印象も与えるものとなってお

り,上記構成態様は,他の公知意匠にはみられない新規な創作部分であ

るといえる。

すなわち,前記イ(イ)のとおり,乙3には,充電器に係る意匠におい

て,縦横の寸法が同一の正四角形の箱状の本体において,「縦(横)の

寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをしている」構成が示さ

れているが,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍であって,これは本件登

録意匠の2倍に当たり,縦(横)の長さと厚さとの比が異なり,さらに

は厚さに対する面取り径の比が本件登録意匠よりも小さく,本件登録意

匠のような全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取り

をしておらず,また,本体の四角隅部が,正面視において,いずれも,

厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっているものともいえず,

本件登録意匠のような本体全体が丸みを帯びた柔らかな印象を与える

ものとはいえない。他に本件登録意匠の上記構成態様が本件出願前に公

然知られた形状であったことを認めるに足りる証拠はない。

以上を総合考慮すると,本件登録意匠において,需要者の注意を引き

やすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1

を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視にお

いて,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」

点を含む,本体部全体の形態であると認められる。

(イ) これに対し被告は,通常の販売・流通形態(店頭,ウェブサイト)

では,需要者は,エーシーアダプタを正面又は正面やや斜めから見るの



が普通であり,需要者としては正面の形態に最も注目するから,本件登

録意匠においては,携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面の

形状及びランプの位置の正面形態全体がひとまとまりとして要部とな

り,特に接続部分が最重要の要部である旨主張する。

しかしながら,意匠の特徴的部分の把握に際しては,意匠に係る物品

の販売・流通時において視認し得る形状のみを前提にするのではなく,

意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等も考慮すべきであるところ,

前記(ア)認定のとおり,エーシーアダプタは,需要者が実際に手にとっ

て携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であると同時に,身の回りに

置き,あるいは,外出時に携帯するなどされるものであることからする

と,需要者が本件登録意匠の正面の形態にのみ注目するとはいえない。

また,被告が主張する携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面

形状及びランプの位置は,前記イのとおり,いずれも本件出願前に公

知の形状であることからすると,本件登録意匠においては,携帯電話等

の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置の正面形

態全体がひとまとまりとして需要者の注意を引きやすい特徴的部分(要

部)を形成しているとはいえないし,ましてや接続部分が最重要の要部

であるとはいえない。

したがって,被告の上記主張は,採用することができない。

(3) 被告意匠の類似

前記(2)ウ(ア)認定のとおり,本件登録意匠において,需要者の注意を引

きやすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を

半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,

いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点を含む,

本体部の形態全体である。

そこで,この特徴的部分を中心に本件登録意匠と被告意匠を対比した上



で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かについて判断するに,前記(1)

ウ(ア)@ないしE認定のとおり,両意匠は,この特徴的部分において共通す

るのみならず,それ以外の基本的構成態様及び具体的構成態様の多くの部分

においても共通しており,需要者に対し,全体として共通の美感を生じさせ

るものと認められる。

他方で,前記(1)ウ(イ)認定のとおり,両意匠には,@本件登録意匠では,

本体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタが設けられているが,被告

意匠では,周辺機器に接続されるコードが断線防止部材を介在して,本体内

部の回路に接続されている点,A本件登録意匠では,本体の正面の形状が平

坦であるが,被告意匠では,中央部で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約

0.5mm)程度膨出している点,B本件登録意匠では,ランプの中心が本

体右側面と底面からそれぞれ約17mmの均等な位置にあるのに対し,被告

意匠では,ランプの中心が本体底面から約12mmで,かつ,本体右側面か

ら約16mmの位置にあり,本件登録意匠に比べて底面に寄った位置に設け

られている点において差異があるが,これらの差異点は,需要者の注意をひ

きやすい部分とはいえない上,差異点から受ける印象は,両意匠の共通点か

ら受ける印象を凌駕するものではない。

したがって,本件登録意匠と被告意匠は,上記差異点を考慮しても,需要

者の視覚を通じて起こさせる全体的な美感を共通にしているものと認めら

れるから,被告意匠は,本件登録意匠に類似している。

これに反する被告の主張は,採用することができない。

(4) まとめ

以上のとおりであるから,被告意匠は,本件登録意匠類似する意匠に該

当する。

2 争点2(本件意匠権の権利行使の制限の成否)について

被告は,本件登録意匠は,以下のとおり,本件出願前に当業者が公然知られ



形状である乙5記載の意匠と乙3及び乙4記載の各意匠に基づいて容易に

本件登録意匠の創作をすることができたものであるから,本件登録意匠の意匠

登録には意匠法3条2項に違反する無効理由(同法48条1項1号)があり,

意匠登録無効審判により無効にされるべきものであるから,同法41条におい

て準用する特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本

件意匠権を行使することができない旨主張する。

(1) 乙5記載の意匠の形態

乙5によれば,乙5記載の意匠は,エーシーアダプタに係る意匠であり(別

紙第2参照),@箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,

底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設けていること,A本体は,

縦横の寸法が同一の正四角形で,扁平な箱状であり,本体の全周囲に面取り

がされていること,B差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部

にかけ,本体正面から見てやや左寄りに設けられており,プラグピンは背面

の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用されるこ

と,CUSBコネクタは,底部左寄りに設けられていることが認められる。

(2) 本件登録意匠と乙5記載の意匠との対比

ア 本件登録意匠と乙5記載の意匠とは,@箱状の本体の背面に折り畳み自

在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを

設けている点,A本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で,扁平な箱状で

あり,本体の全周囲に面取りがされている点,B差込みプラグは,本体の

平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや左寄りに設け

られており,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は

上方に起立させて使用される点,CUSBコネクタは,底部に設けられて

いる点において共通する。

イ 他方で,両意匠は,@本件登録意匠では,本体の全周囲は,厚さ方向に

厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部



は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状

となっているのに対し,乙5記載の意匠では,縦・横・厚さの正確な寸法

が不明であり,厚さに対する面取り径の比及び面取りの具体的形状も明ら

かでない点,A本件登録意匠では,正面下部にランプを設けているのに対

し,乙5記載の意匠では,ランプを設けていない点,B本件登録意匠では,

プラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分に

は,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されているのに対し,乙5記

載の意匠では,プラグピンの支持部の外周が本体と同形の弧状をなしてい

るかどうか不明であり,溝の本数も不明である点,C本件登録意匠では,

USBコネクタは,底部の「右寄り」に設けられているのに対し,乙5記

載の意匠では,底部の「左寄り」に設けられている点において差異がある。

(3) 創作容易

被告は,乙3記載の意匠は,別紙第3のとおりであり,縦(横)の約0.

15倍の長さを半径とする面取りをした形状を有しているところ,乙5記載

の意匠に乙3記載の意匠の上記形状を組み合わせて,その面取り径で乙5記

載の意匠の角を落とせば,本体の全周囲が厚さを基準としてその約2分の1

を半径とする半円弧状の面取りされた形状(前記(2)イ@の差異点に係る本

登録意匠の構成態様)となる旨主張する。

しかしながら,前記1(2)イ(イ)認定のとおり,乙3には,充電器に係る

意匠において,縦横の寸法が同一の正四角形の箱状の本体におい

て,「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをしている」

構成が示されているが,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍であって,これは

本件登録意匠の2倍に当たり,縦(横)の長さと厚さとの比が異なり,さら

には厚さに対する面取り径の比が本件登録意匠よりも小さく,本件登録意匠

のような全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをして

いる構成や,本体の四角隅部が,正面視において,いずれも,厚さの約2分



の1を半径とする四半球状となっている構成は示されていない。

また,乙4記載の意匠は,本体の「正面下部にランプを設ける」構成が示

されており(前記1(2)イ(イ)),この点において本件登録意匠と共通する

ものの,本体の長さ,厚さ及び面取りの径に関して本件登録意匠と共通する

構成を有するわけではない。

そして,本体が正方形又は長方形の箱状のエーシーアダプタに係る意匠に

おいては,縦(横)の長さと厚さの比率,面取りの有無,厚さに対する面取

り径の比,面取りの具体的形状等により,当該意匠全体が需要者に与える美

感を異にすることがあり得るところ,本件登録意匠においては,縦横の長さ

と厚さの比及び厚さに対する面取り径の比率等を工夫することにより,「本

体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とす

る四半球状となっている」構成としたものであり,このような構成には,当

業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性が認められる。

そうすると,乙3ないし5記載の各意匠に接した当業者といえども,乙5

記載の意匠において「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径

とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,いず

れも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」 (前記(2)
構成

イ@の差異点に係る本件登録意匠の構成態様)を採用し,本件登録意匠を創

作することが容易であったものと認めることはできない。

(4) まとめ

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,当業者が乙5記

載の意匠と乙3及び乙4記載の各意匠に基づいて容易に本件登録意匠の創

作をすることができたものとは認められないから,本件登録意匠の意匠登録

には意匠法3条2項に違反する無効理由があるとの被告の主張は,理由がな

い。

3 争点3(被告による被告製品の製造の有無及び差止めの必要性)について



原告は,被告は,業として,平成22年6月ころから,被告製品を製造及び

販売しており,被告の上記製造及び販売は,原告の本件意匠権の侵害行為に当

たるから,その差止めの必要性がある旨主張する。

そこで検討するに,被告が平成22年6月ころから被告製品を製造していた

ことは,争いがない。他方で,被告が被告製品を製造していた事実については,

これを認めるに足りない。

次に,被告は,被告が平成22年末をもって被告製品の販売を停止した旨主

張するが,仮にそうであるとしても,被告がその販売を停止するまでの半年程

度被告製品を販売していたこと,被告が本件訴訟において本件登録意匠と被告

意匠の類否を争っていることなどに照らせば,被告においては,なお被告製品

を販売することにより本件意匠権を侵害するおそれがあるものと認められる。

以上によれば,原告の上記主張は,被告による被告製品の販売行為の差止

の必要があるとの限度で理由がある。

4 争点4(原告の損害額)について

(1) 意匠法39条1項損害額

ア 被告製品の譲渡数量

被告が平成22年6月から同年11月30日までの間に合計2万32

46個の被告製品を販売したことは,争いがない。

イ 原告製品の「侵害の行為がなければ販売することができた物品」該当性

(ア) 原告製品は,周辺機器との接続のためのUSBコネクタ(USBポ

ート)を有するエーシーアダプタであり,このUSBコネクタにUS

Bケーブルを接続して周辺機器の充電を行う製品であり(検甲2ない

し5),原告製品に携帯電話用のUSBケーブルを接続することがで

きることからすると,原告製品は,被告製品と市場において競合し,

被告による本件意匠権の侵害行為がなければ販売することができた物

品に該当するものと認められる。



(イ) これに対し被告は,原告製品は,その接続口がUSBコネクタで

あり,主にiPodシリーズやiPhoneといった,USBケーブルの接続に

より充電可能な製品に用いられるエーシーアダプタであるのに対し,

被告製品は,Docomo,SoftBankの携帯電話の接続口に対応するケーブ

ルが一体となったエーシーアダプタであり,両製品は,充電の対象と

なる製品がそれぞれ異なることから,市場において競合しない旨主張

する。

しかしながら,Docomo,SoftBankの携帯電話の接続口に対応する充

電用のUSBケーブル製品が単体で販売されていること(甲39,乙

6,弁論の全趣旨)に照らすならば,原告製品にこのようなUSBケ

ーブルを接続することにより上記携帯電話の充電に原告製品を用いる

ことができるものと認められる。

そうすると,原告製品の充電の対象となる周辺機器には,Docomo,

SoftBankの携帯電話も含まれるといえるから,被告の上記主張は,そ

の前提を欠くものであり,採用することができない。

ウ 単位数量当たりの原告製品の利益額

(ア) 原告製品の卸売販売価格

証拠(甲31ないし33)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品の卸

売販売価格は1個当たり607円であることが認められ,これに反する

証拠はない。

(イ) 変動経費

原告は,原告製品の1個当たりの変動経費は,本体2.75ドル,説

明書0.017ドル,シール0.28ドル,ステッカー0.014ドル

の合計額であり,これを本件訴訟提起時(平成23年1月7日)の為替

相場1ドル83.58円に基づいて計算すると,原告製品の変動経費は

1個当たり266円となる旨主張する。



これに対し被告は,原告製品の1個当たりの変動経費には,上記合計

額に国内輸送費,海上輸送費及び倉庫料を加えるべきであり,また,ド

ル円換算に際しては平成21年11月あるいは平成22年1月の為替

相場1ドル約90円を基準にすべきである旨主張する。

a 原告主張の1個当たりの各変動経費(本体2.75ドル,説明書0.

017ドル,シール0.28ドル,ステッカー0.014ドル)を合

算すると,3.061ドルとなる。

上記ドル建ての経費を円換算するに当たっては,被告製品の販売期

間である平成22年6月から同年11月30日までの換算レートの

平均値を基準にするのが相当と認める。

しかるところ,甲51及び弁論の全趣旨によれば,上記期間のドル

円換算レートの月平均値は,平成22年6月が91.31円,同年7

月が89.09円,同年8月が86.37円,同年9月が84.66

円,同年10月が83.42円,同年11月が81.39円であるこ

とが認められ,これらを平均すると1ドル当たり86.04円となる。

これを基準に上記ドル建ての経費を円換算すると,263.36

円(小数点3位以下切捨て)となる。

b 被告は,原告製品の1個当たりの変動経費には,上記aの金額に国

内輸送費,海上輸送費及び倉庫料を加えるべきである旨主張する。

これに対し原告は,原告の取引規模に照らせば,被告製品の譲渡数量

分が増加しても,国内輸送費,海上輸送費及び倉庫料について追加支

出は生じないから,これらの経費を控除する必要はない旨主張する。

そこで検討するに,証拠(甲22ないし24,28,52, (枝
53

番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,@原告

製品の1個当たりの国内輸送費は7.58円,海上輸送費は11.7

7円,倉庫料は24.90円であること,A原告は,平成22年1月



から平成23年12月までの間に9万3960個の原告製品を仕入

れて10万8801個出荷したこと,B上記仕入れに際しては,原告

製品3万2400個の収容が可能な20フィートコンテナを用いて

2か月ないし3か月に1度の海上輸送をしたことが認められる。

上記認定事実によれば,海上輸送費については,上記コンテナには

前記ア記載の譲渡数量分に相当する原告製品を収容するのに十分な

空き容量があったことが認められるから,上記譲渡数量分が増加して

も追加支出が生じないというべきである。

他方で,国内輸送費及び倉庫料については,追加支出が発生しない

ことを示す具体的な根拠をうかがわせる証拠はない。

したがって,被告の上記主張は,上記aの金額に国内輸送費7.5

8円及び倉庫料24.90円を加えるべきであるとする限度で理由が

ある。

c 以上によれば,原告製品の単位数量当たりの利益を算出するに当た

っては,変動経費として,263.36円(前記a)に国内輸送費7.

58円(前記b)及び倉庫料24.90円(前記b)を加えた295.

84円を控除すべきことになる。

(ウ) 単位数量当たりの利益額

以上を総合すると,原告製品の単位数量当たりの利益は,1個当たり

の卸売販売価格607円(前記(ア))から,1個当たりの変動経費29

5.84円(前記(イ)c)を控除した311円(小数点以下切捨て)と

認められる。

エ 「販売することができないとする事情」の存否等

被告は,@Docomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタが必要な

需要者は,当該機器が充電できればよいから,被告製品のようなエーシー

アダプタと接続ケーブルとが一体となっている製品を選択し,仮に被告製



品が販売されなかったとした場合には,被告製品と同種の廉価の代替品を

購入するはずであり,あえて,別途上記携帯電話用のUSBケーブルを必

要とする原告製品を選択することはないのに対し,他方で,多種の周辺機

器の充電に用いるエーシーアダプタが必要な需要者は,原告製品を選択す

ることになるから,原告製品と被告製品とでは,そもそも購入対象者が異

なり,明確に棲み分けがされており,A被告製品は,主にインターネット

のショッピングサイトで販売され,一体に接続されているケーブルを含め

た全体について,正面から撮影された写真が掲載されているのみであり,

また,被告製品は,ほとんどその正面形状しか見えない状態でパッケージ

に梱包されており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはなく,

むしろ,インターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレビュ

ーに照らしても,被告製品の購入動機となっているのは,被告意匠ではな

く,色であり,このような被告製品及び原告製品の形態の違い,被告製品

の代替品の存在,意匠が購入動機の形成に寄与していないことは,被告製

品の譲渡数量の全部又は一部に相当する原告製品を原告において「販売す

ることができないとする事情」(意匠法39条1項ただし書)に該当する

から,これらの事情に相当する数量に応じた額を控除すべきである旨主張

する。

(ア) 被告製品

a 被告製品は,Docomo,SoftBank又はauの携帯電話の接続口に対応す

る接続ケーブルが一体となった携帯電話用エーシーアダプタであ

り(別紙物件目録記載の品番がET−T511で始まるものはauの携

帯電話用,ET−T512で始まるものはDocomo,SoftBankの携帯電

話用の製品である。),入力はAC100V−240V,出力は5V

/1000mA,重さは約52グラム,本体部分の寸法は縦横が53

mm,高さ17mmである(甲6,50,乙7の1,弁論の全趣旨)



b 被告製品の市場における販売価格は,1279円から1453円で

ある(甲7の1ないし4,乙7の1)。

c 被告製品のパッケージ表面(甲5の@の写真)には,被告製品が対

応する携帯電話の機種名,「180°回転するプラグ」,「コードも

コネクタも同じカラーコーディネート」 「携帯電話用充電器」 「か
, ,

わいいのにハイパワー」,「スピーディに充電できる1000m

A」 「充電中お知らせLEDランプ付き」
, との記載があり, (甲
裏面

6)には,対応する携帯電話(Docomo,SoftBank又はau)に使用がで

きる旨及び「充電が終了すると消灯するお知らせLEDランプ付き。

出力1000mAなのでスピーディに充電できます。入力100V〜

240V対応で,海外でもご使用になれます。コンセントプラグが1

80°回転し邪魔になりません。」などの記載がある。

d インターネットのショッピングサイトの被告製品のページで

は,「携帯電話充電器LED付きかわいいのにハイパワー」,「かわ

いいのにハイパワー!!スピーディに充電できる1000mA。充電

お知らせLEDランプ付き」などと記載されている(甲5,6,甲7

の1,3,4)。

(イ) 原告製品

a 原告製品は,USBコネクタ(USBポート)を有するエーシーア

ダプタであり,スマートフォンであるiPhone3G,携帯用音楽プレーヤ

ーであるiPod等の各種周辺機器の充電に用いられ,使用の際には,当

該周辺機器に対応したUSBケーブルが別途必要とされ,入力はAC

100V−240V,出力はDC5V1A(最大),重さは約37グ

ラム,寸法は縦横が53mm,高さ17mmである(甲34,46,

47,50,弁論の全趣旨)。

b 原告製品の市場における販売価格は,880円から1595円であ



る(甲46,47,甲55の1,乙1の3,1の4)。なお,周辺機

器との接続用のUSBケーブルの市場における販売価格は,480円

から600円程度である(甲39,乙6,乙7の1)。

c 原告製品のパッケージ表面(乙1の1)には,「iPodシリーズ,

iPhone3G対応」,「USB ACアダプター」,「海外でも使える」

との記載があり,裏面(乙1の2)には,「充電可能機器:iPod第4

〜5世代,…その他,USB接続による充電に対応するオーディオプ

レーヤー,携帯電話,ゲーム機など」などの記載がある。

d 原告製品について原告のウェブサイト(甲34)上には,「小さい。

軽い。そして可愛い。 ,
」 「これなら,どこへでも連れて行ける。 ,
」 「パ

ソコン 無しで コンセントから iPodシリーズの充電 ができます。

iPhone3Gや各種オーディオプレーヤー,携帯電話…にお使いいただけ

ます。」,「普段のお出かけにも気軽に持ち運べて,さらに海外旅行

先でも使える,便利なUSB ACアダプターです。」,「まるで石

けんのような優しいカラーを取り揃えています。などの記載がある。


また,インターネットのショッピングサイト上の原告製品のページ

には,「ワンランク上の高級感を演出する美しいラウンドフォルムデ

ザイン」,「まるで石けんのような優しいカラーを取り揃えていま

す。」,「通電中に青くきらめく青色LEDが,さらに美しさを際立

たせます。」などの記載がある(甲47,55の1,乙1の1ないし

4)。

(ウ) 代替品

被告製品の販売期間である平成22年6月ないし同年11月当時,原

告製品と同種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタ(原告製品の

競合品)は,880円から1320円程度の価格帯で市場において販売

され(甲36,38,乙7の1),被告製品と同種のDocomo,SoftBank



等の携帯電話用の接続ケーブルが一体となったエーシーアダプタは,7

73円から980円程度の価格帯で市場において販売されていた(乙7

の1ないし3)。

(エ) 検討

a 以上を前提に検討するに,被告製品は,Docomo,SoftBank等の携帯

電話用のエーシーアダプタであり,一方,原告製品は,USBコネク

タ(USBポート)を有するエーシーアダプタであり,上記携帯電話

の充電に使用する際には,上記携帯電話の接続口に対応したUSBケ

ーブルが別途必要とされるものである。

ところで,エーシーアダプタが,携帯用の周辺機器の充電に用いる

実用品であると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯す

るなど,日常生活において目に触れる機会の多い製品であること(前

記1(2)ウ(ア))に照らすならば,需要者は,エーシーアダプタの選

択に当たっては,充電可能な製品の種類,その他の性能,価格,大き

さ,重さのほか,デザイン,色などの諸要素を考慮するものと考えら

れる。

しかるところ,原告製品と被告製品は,いずれもDocomo,SoftBank

等の携帯電話の充電に利用することができ,寸法,出力も概ね同じで

あり,また,重さは原告製品の方が軽いが,ケーブルの有無が異なる

から,ほぼ同程度と評価することができる。

さらに,原告製品とDocomo,SoftBank等の携帯電話用の接続ケーブ

ルを合わせた価格(1360円から1753円)と被告製品の価格(1

279円から1453円)は,同じ価格帯に属するといえる。

そして,原告製品の本体の独特の丸みを帯びた印象を与えるデザイ

ンは,このようなデザインを好む需要者が原告製品を選択する動機付

けになるものといえる。



他方で,@Docomo,SoftBank等の携帯電話のみを充電することがで

きればよいと考える需要者にあっては,価格面でより安価であり,ケ

ーブルが一体であって使い勝手のよい,被告製品の代替品を選択する

可能性が高いこと,A被告製品は,本体と一体となった接続ケーブル

が本体と同色であるのに対し(甲50,乙7の1,弁論の全趣旨),

原告製品の本体の色によっては,市販されている接続用のUSBケー

ブルと同色とはならないことから,この点を美観上好まず原告製品を

選択しない可能性があることが認められる。

b 次に,被告製品には,ピンク,レッド,ホワイト,ブルー,ブラッ

ク等の色のバリエーションがあり(甲41ないし45,乙7の1),

原告製品にも,ホワイト,ブラック,シアンブルー,ピンク,バイオ

レットの色のバリエーションがある(甲34)。

しかるところ,被告製品を購入した者が記載したインターネットの

ショッピングサイト上のレビュー(利用者の感想)においては,「と

にかくピンクがかわいいです。」(甲41),「見た目は真っ赤でお

しゃれです。」,「赤なら自分の充電器かどうかわかりやすいのでは

ないかという点にひかれて購入し」(以上,甲42)との記載がある

ように,色が購入動機になっていることがうかがわれる。

c 前記a及びbの認定事実を総合すると,仮に被告による被告製品の

販売がされなかった場合には,被告製品の購入者の多くは,Docomo,

SoftBank等の携帯電話用の被告製品と同種の接続ケーブルが一体と

なった代替品を選択した可能性が高いものと認められる。

また,本件登録意匠と類似する被告意匠は,被告製品の購入動機の

形成に寄与していることが認められるものの,その購入動機の形成に

は,被告意匠のほか,被告製品がDocomo,SoftBank等の携帯電話用の

専用品であることが大きく寄与し,被告製品の色彩等(本体と接続ケ



ーブルが同一色である点を含む。 も相当程度寄与しているものとう


かがわれるから,被告意匠の購入動機の形成に対する寄与は,一定の

割合にとどまるものと認められる。

以上によれば,原告製品と被告製品の形態の違い,被告製品と同種

の代替品の存在,被告製品の購入動機の形成に対する被告意匠の寄与

が一定の割合にとどまることは,被告製品の譲渡数量の一部に相当す

る原告製品を原告において「販売することができないとする 事

情」(意匠法39条1項ただし書)に該当するものと認められる。

そして,上記認定の諸点を総合考慮すると,意匠法39条1項ただ

し書の規定により控除すべき上記「販売することができないとする事

情」に相当する数量は,被告製品の販売数量(前記ア)の9割と認め

るのが相当である。

(オ) 被告の主張について

a 被告は,Docomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタが必要

な需要者は,当該機器が充電できればよいから,被告製品のようなエ

ーシーアダプタと接続ケーブルとが一体となっている製品を選択し,

仮に被告製品が販売されなかったとした場合には,被告製品と同種の

廉価の代替品を購入するはずであり,あえて,別途上記携帯電話用の

USBケーブルを必要とする原告製品を選択することはないのに対

し,他方で,多種の周辺機器の充電に用いるエーシーアダプタが必要

な需要者は,原告製品を選択することになるから,原告製品と被告製

品とでは,そもそも購入対象者が異なり,明確に棲み分けがされてい

る旨主張する。

しかしながら,前記(エ)aに説示したとおり,両製品に共通する需

要者は,原告製品の丸みを帯びたデザインを重視するなどして,原告

製品を購入する可能性があるものと認められるから,被告の上記主張



は,採用することができない。

b 次に,被告は,被告製品は,主にインターネットのショッピングサ

イトで販売され,一体に接続されているケーブルを含めた全体につい

て,正面から撮影された写真が掲載されているのみであり,また,被

告製品は,ほとんどその正面形状しか見えない状態でパッケージに梱

包されており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはなく,

むしろ,インターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレ

ビューに照らしても,被告製品の購入動機となっているのは,被告意

匠ではなく,色である旨主張する。

しかしながら,被告製品が主にインターネットのショッピングサイ

トで販売されていることを認めるに足りる証拠はないのみならず,被

告製品の梱包の態様(甲5,検甲1)やインターネットのショッピン

グサイトの表示の態様(甲43ないし45)に照らすならば,需要者

は,被告製品を購入するに当たり,被告製品の丸みを帯びたデザイン

を看取することができるものと認められ,その意匠が需要者の購入動

機に寄与することがないとはいえない。

また,原告製品のレビューにおいて,「デザインが個人的に好きで

すね。丸みがあり,艶々しています。」,「丸みを帯びたデザイン,

他機種と比較してかなり質感が高いです。」(以上,甲46),「そ

のデザインと小ささ,軽さに大変満足しています。」,「iPodにマッ

チしたデザインも気に入っている。」(以上,甲47)との記載があ

り,これらの記載は,原告製品において,デザイン(意匠)が購入動

機となっていることを示すものといえる。加えて,被告意匠と本件登

録意匠と類似していることに照らすならば,被告意匠においても,色

のみならず,デザイン(意匠)も購入動機に寄与しているものと認め

られる。



したがって,被告の上記主張は,採用することができない。

オ 小括

以上によれば,意匠法39条1項により算出される原告の損害額は,被

告製品の販売数量(前記ア)に単位数量当たりの原告製品の利益額(前記

ウ(ウ))を乗じて得られた額である722万9506円から,「販売する

ことができないとする事情」に相当する数量(上記販売数量の9割)に応

じた額を控除した後の72万2950円となる。

(2) 弁護士費用

本件事案の性質,審理の経過等諸般の事情を総合考慮すると,被告による

本件意匠権の侵害行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損

害は,20万円と認めるのが相当である。

(3) まとめ

よって,原告は,被告に対し,本件意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠

償請求として92万2950円(前記(1)オ及び(2)の合計額)及びこれに対

する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成23年1月20

日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求

めることができる。

5 結論

以上によれば,原告の請求は,被告に対し,被告製品の販売の差止め及び廃

棄並びに92万2950円及びこれに対する平成23年1月20日から支払

済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,これ

を認容することとし,その余の請求は,理由がないから棄却することとし,主

文のとおり判決する。



東京地方裁判所民事第46部





裁判長裁判官 大 鷹 一 郎




裁判官 高 橋 彩




裁判官 石 神 有 吾





(別紙) 物 件 目 録

下記の携帯電話用エーシーアダプタ



1 品番

ET−T511WT,ET−T511BK,ET−T511PK,ET−T5

11VP,ET−T512WT,ET−T512BK,ET−T512BL,E

T−T512RE,ET−T512PK,ET−T512VP,ET−T512

PU

2 形態

別紙第1のとおり(全品番に共通)






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