• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2003-18367
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18行ケ10492審決取消請求事件 判例 意匠
平成17行ケ10227審決取消請求事件 判例 意匠
平成14ワ26828損害賠償請求事件 判例 意匠
平成16ワ5644意匠権侵害差止等請求事件 判例 意匠
平成10ワ11674意匠権及び実用新案権侵害差止等請求事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  部分意匠 /  意匠に係る物品 /  一意匠一出願(7条) /  3条1項3号 /  意匠の類否 /  類似性(類否判断) / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 17年 (行ケ) 10253号 審決取消請求事件
原告 株式会社ブリヂストン
訴訟代理人弁理士 水野尚
同 永芳太郎
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 樋田敏惠
同 藤木和雄
同 藤正明
同 宮下正之
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2005/05/23
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求める裁判
1 原告 (1) 特許庁が不服2003-18367号事件について平成16年12月24日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成14年7月26日,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,別紙審決書写し添付の別紙第1の意匠(部分意匠。以下「本願意匠」という。)の意匠登録出願(意願2002-20126号,以下「本件出願」という。)をしたところ,平成15年8月22日,拒絶査定を受けたので,同年9月19日,これに対する不服の審判を請求した。特許庁は,これを不服2003-18367号事件として審理した結果,平成16年12月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,平成17年1月7日,その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由 別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願意匠は,別紙審決書写し添付の別紙第2の意匠登録第906671号意匠(平成6年9月9日発行の意匠公報)のうち本願意匠に相当する部分(以下「引用意匠」という。)と類似し,意匠法3条1項3号に該当するので,意匠登録を受けることができない,とするものである。
審決がその判断の前提として認定した本願意匠と引用意匠との共通点及び差異点は,次のとおりである。
(共通点) (1) トレッド全体に大型のブロックを形成したランド比の高い自動車用タイヤにおいて,左右のトレッドエッジ部をやや角張らせ,トレッド中央に右下に傾斜した同形の中央ブロックを一列状に形成し,その両側に,前記中央ブロックの両側に突出する角部間に嵌合するように略多角形状のショルダブロックをそれぞれ1列形成した,全体の基本的な構成。
(2) 中央ブロック列の態様について,略40度程度傾斜させた横長のブロックであって,上下の間隔を詰めて配列している点。
(3) ショルダブロック列の態様について,中央ブロックに隣接する側を三角形状とし,ショルダ部からサイド部に掛けて帯状に形成し,相対する左右のショルダブロックをブロック半分程度上下にずらせて配列し,隣接する上下のショルダブロック間に太幅の横溝を形成した点。
(以下,順に「共通点(1)」などという。) (差異点) (1) 中央ブロック列の態様について,本願意匠においては,中央部がわずかに膨出した略俵形状のブロックで,隣接する上下のブロック間にごく細幅の溝が形成されているのに対し,引用意匠においては,扁平6角形状のブロックで,上下のブロック間にやや幅広の溝が形成されている点。
(2) ショルダブロック列の態様について,本願意匠においては,隣接する中央ブロックとの間にごく細幅の溝が形成されているのに対し,引用意匠においては,太幅の溝が形成されている点。
(以下,順に「差異点(1)」などという。)
原告主張の取消事由の要点
審決は,本願意匠と引用意匠との共通点の評価を誤るとともに,構成態様の主要な点を看過し,その結果,本願意匠と引用意匠とが類似するとの誤った結論に至ったものであるから,取り消されるべきである。
1 共通点の評価について 審決が認定した,全体の基本的な構成についての共通点(1),中央ブロック列の態様についての共通点(2),ショルダブロック列の態様についての共通点(3)は,いずれも甲3ないし7号証(そのうち甲3ないし6号証は引用意匠の出願前に意匠登録されている。)などの公知意匠において明らかなように,普通に見受けられるものであって,何らの特徴のないものである。
したがって,審決が強い類似感をもたらしているとした共通点(1)ないし(3)は,いずれも普遍化している構成態様であって,看者の注意をさほど惹かないものであるから,類否判断の要素として評価すべきではないものである。
2 主要な構成態様について (1) 本願意匠と引用意匠には,ブロック状に現れる凸出部(以下「凸出部」という。)と溝からなる凹陥部(以下「凹陥部」という。)とがあり,凸出部と凹陥部との間には,認知の場における図と地の関係があり,心の構え方によって,凸出部が主体となったり,凹陥部が主体となったりするものである。そして,凹陥部の態様を観察すれば,両意匠では太幅の溝が表出する一つのまとまった凹陥図柄として現れ,この凹陥図柄は視覚的に強く印象付けられ,それによって凸出部の態様も顕在化するものであるから,両意匠の凹陥部は,その類否を左右する主要素をなすものである。しかるに,審決は,凸出部の態様の一面のみを認定判断し,凹陥部について明確な認定判断をしていない。
(2) すなわち,本願意匠の中央ブロック列の周縁には,ごく細幅で条線状の溝が形成され,ショルダブロックの間には,中央ブロックの両側角部に接する部位を先細とした太幅の溝が形成されているものであって,全体として,溝によって形成された凹陥部は,中央ブロック列周縁が条線状の溝であるため,さほど目立たないことから,トレッドの両側端寄り部の各ショルダブロック間のみに,内側に向かって先端部を先細とした直線状で太幅の溝が等間隔で上下に並列した凹陥図柄として現れているものである。また,その凹陥図柄によって,凸出部である中央ブロックとショルダブロックによって形成される凸出図柄は,斜状の略俵形区画が上下に略密着して連続する中央ブロック列の左右に,ショルダブロックの万年筆のペン先様をなす内方先端部が略密着して,あたかもきつく編み込んだ網代編状を呈するものである。
一方,引用意匠においては,全体として,溝によって形成された凹陥部は,中央ブロック列の両側端から外側に向け内側頂部(中央ブロックに接する部位)を三角状とする,変形倒「コ」字状繋ぎ様の同一太さで極めて広幅な溝が縦に連続し,左右の該縦溝に,中央ブロック列間に斜平行して設けられた細溝が連通した網状を呈する凹陥図柄として現れているものである。また,その凹陥図柄によって,凸出部である中央ブロックとショルダブロックによって形成される凸出図柄は,変形六角形区画が,上下に細幅の間隔を空けて連接する中央ブロックの左右に,変形扇面形様のブロック単体を,上下に広幅な間隔を空けて縦帯状に並設させたショルダブロックが,広幅の九十九折り状溝部を介して現されて,あたかも縄目状に認識される中央ブロックの縦帯と,左右のショルダブロックによる扇面繋ぎ様縦帯とが,完全に分離並列した態様を呈するものである。
このように,両意匠における凹陥図柄及び凸出図柄は,ともに形態認識の主体をなすもので,その相違は極めて顕著であって,全体に与える影響は大きく,両意匠の構成態様を支配して全体の印象を異にさせるものであるから,類否判断を左右する主要素をなすものであるところ,審決は,類否の判断において,この主要な構成態様における顕著な相違を看過しているものである。
3 類否判断について 前記のとおり,審決が共通点としている点は,類否判断の要素として高く評価することはできないものであるのに対し,本願意匠と引用意匠の具体的な構成態様には,凹陥部及び凸出部の態様,すなわち,凹陥部による凹陥図柄とそれによって顕在化する凸出図柄に顕著な相違があることのほか,審決認定の差異点(1)及び(2)がある上,ショルダブロックについて,本願意匠は,中央ブロックに接する先端部を先太とした万年筆のペン先様として,該ブロックの残余部を水平状に形成しているのに対し,引用意匠は,変形扇面形様でそれぞれのブロックは右上に傾斜した斜状に形成されている点においても顕著な相違が見られるものであり,これらの顕著な相違が相まった相違感は,審決が認定した共通点を凌駕するに充分なものである。したがって,両意匠を全体として観察すると,明らかに類似しないものであり,これを類似するとした審決の判断は誤りである。
被告の反論の要点
1 共通点の評価について 審決が認定した共通点が仮に周知の形態であったとしても,それが両意匠の支配的部分を占め,意匠的まとまりを形成し,看者の注意を惹くときは,なお要部たり得ることは,過去の判例の示すところである。本件においても,共通点は,タイヤの支配的部分を占めるトレッドの全域に及ぶ基本的な構成であり,人目を惹きやすい中央部のブロック列や,該ブロックに噛み合うように形成された左右のショルダブロック列によって,意匠的まとまりを形成している部分であるから,看者の注意を惹き,要部となり得ているものであって,類否判断の要素として評価すべきでないとする原告の主張は,失当である。
また,本願意匠と引用意匠の中央ブロックの外形状が,鞍部のない,俵あるいはビヤ樽状の膨出した形であり,その中央ブロックを,上下の間隔を詰め,中央列の上下連続性を強めて配列しているという点は,原告が指摘する甲3ないし7号証には見受けられないものであって,両意匠に特徴的な共通点であり,このことによって,目に付きやすい中央ブロック列の連続性を強く印象づけ,両意匠の共通性に大きく貢献しているものであるから,この点においても,原告の主張は失当である。
2 主要な構成態様について (1) トレッドパターンにおける溝とブロックの関係は,原告主張のとおり,いわば図と地の関係に相当するのであり,それは表裏一体のものであるから,凸出部側に焦点を当てて形状をとらえたとしても,凹陥部についても,当然認定していることになる。現に,審決は,両意匠を「トレッド全体に大型のブロックを形成したランド比の高い自動車用タイヤ」として,凸出部の割合が高いことを認定した上で,ブロック形状の認定をし,その配列状態やブロック相互の間隔の認定を行っている。
(2) 原告は,本願意匠と引用意匠とでは,その凹陥図柄も凸出図柄も著しく相違していると主張する。
しかし,凹陥図柄については,本願意匠の溝も,途切れなく連続している点で引用意匠との間に本質的な差はなく,ただ溝の太さにおける程度の差があるに過ぎないものである。また,仮に,本願意匠の溝の特徴が,原告主張のように太幅の溝が並列した点にあるとすれば,そのような溝の図柄は,本件の物品分野にあっては古くから見られるものであって,特徴となるものではない(乙4号証2図,3図,5号証1図)。そして,凸出図柄については,最も目に付く中央部のブロック列は,本願意匠も引用意匠も,俵あるいはビヤ樽形状を斜めに連続させたことによる縄目状を呈するものであるから,共通しており,また,それに石垣状に嵌合するようにショルダブロックを配列した全体の視覚的印象においても,両者は共通している。
したがって,本願意匠と引用意匠の凹陥図柄及び凸出図柄に本質的な差異はなく,原告の主張は失当である。
3 類否判断について (1) 本願意匠と引用意匠の中央ブロックの形状は,俵あるいはビヤ樽状の膨出した同種の形状といえるものであり,共に点対称性をなす形状であることにおいても共通している。そして,上下の隣接するブロック本体の接触部分は,本願意匠も引用意匠も,共に30〜40度程度傾斜し,ショルダブロックと噛み合うその両側部分は,三角状に角張ってジグザグ状を呈しているので,全体として,撚った麻縄状の連続状態が強く印象付けられている点で共通している。また,上下のブロック間の溝幅の差異はごく僅かであり,溝幅の大小という程度の差にとどまるものであって,類否判断に影響を及ぼす程のものではない。
(2) 原告が主張するショルダブロックの先端部についての差異は,当該部分を他から切り離して比較する場合においていえることであって,個々の要素が緊密に結合されたトレッドパターンの比較においては,微弱なものである。また,帯状胴部(残余部)についても,中央部に比して注目されにくい部位であるなど,原告が主張する差異が視覚に及ぼす影響は微弱なものといわざるを得ない。
原告は,ショルダブロックと中央ブロックとの間の溝について,本願意匠と引用意匠で顕著な相違がある旨主張するが,本願意匠のそれも,その幅員の程度の差はあれ,視覚的にも溝と認識されるものであるから,引用意匠とその態様において共通するものである。そして,その溝を周辺の溝より幅狭としたものは,本件出願前にも既に見られる態様であるから(乙2,3号証),特に新規なものではなく,トレッド全体の中で観察すれば,中央ブロックとショルダブロックを区画し,周方向にジグザグ状の縦溝を形成している点で共通しており,その差異は両意匠の類否判断を左右する程のものではない。
原告の主張は,ブロック間の溝のみ,あるいは,トレッドパターンの一部を過大に評価し,両意匠の支配的部分を占め,両意匠の特徴と基調を形成している共通点を過小評価するものであって,失当といわざるを得ず,本願意匠と引用意匠が類似するとした審決の認定判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 共通点の評価について 原告は,審決が認定した共通点(1)ないし(3)は,いずれも公知意匠において普通に見受けられるものであって,何らの特徴のないものであり,類否判断の要素として評価することはできないと主張する。
甲3ないし6号証によれば,自動車用タイヤに係る意匠において,トレッド中央に傾斜した同形の中央ブロックを一列に配するとともに,その両側に略多角形のショルダブロックをそれぞれ一列配した構成とし,その中央ブロックを横長のブロックとし,ショルダブロックを中央ブロックに隣接する側が三角状である帯状のものとし,その列を上下にずらせて配列している形態のもの(以下「公知意匠」という。)が引用意匠及び本願意匠の出願前に意匠登録(昭和58年3月23日登録第602628号(甲3号証),昭和63年7月13日登録第745549号(甲4号証),平成3年8月30日登録第823147号(甲5号証),平成4年1月30日登録第836506号(甲6号証)。甲5号証以外のものは,いずれも原告が意匠権者である。)されていたことが認められる(なお,原告引用の甲7号証は,引用意匠及び本願意匠の各出願後に意匠登録されたものである。)。
そうすると,本願意匠と引用意匠の構成態様のうち,上記のような形態はその出願前公知のものであったということができるが,意匠は,各構成部分が有機的に結合して,全体的に一つのまとまった美感を奏するものであるから,意匠の構成態様のうちのある部分が公知のものであることは,必ずしもそれが意匠の特徴を示す要素となり得ないことと結びつくものではない。また,上記公知意匠が,取引者,需要者にとって普通に見られる周知のものとなっていたとまでいえるかどうかはともかく,仮に周知であったとしても,それが当該意匠全体の支配的部分を占め,意匠的まとまりを形成し,見る者の注意を強く惹くものであるときは,なお意匠上の要部と認められるのであって,意匠のうち周知の部分は当然に意匠の要部となり得ないということもできない。
そして,本願意匠及び引用意匠における,中央ブロックの具体的な形状(略俵形状あるいは偏平六角形状)や配列(上下の間隔を詰めて配列していること)は,上記公知意匠にはみられない特徴であり,これら中央ブロック列の態様と,これに嵌合するように配列されたショルダブロック列の態様は,意匠の支配的部分を占め,見る者の注意を惹きやすい部分を構成するものとして,公知意匠にみられる構成態様と密接に絡まって意匠全体としての美感を形成しているということができるのであって,審決が認定した両意匠の共通点は,全体的なまとまりを持った意匠的特徴を示しているものとして,両意匠の類否判断において重要な要素として評価せざるを得ないものというべきである。
したがって,審決認定の共通点は,見る者の注意を惹かないものであり,類否判断の要素として評価することができない旨の原告の主張は,採用することができない。
2 主要な構成態様について (1) 原告は,審決は,本願意匠と引用意匠の凸出部の態様の一面のみを認定判断し,凹陥部について明確な認定判断をしていないと主張する。
しかし,審決は,本願意匠と引用意匠との対比において,ブロックの形状,その配列の態様と共に,ブロック相互の間隔や各ブロック間に形成された溝の幅等についても着目して,両意匠の共通点,差異点を認定しているものであり,原告が主張する凸出部と凹陥部を,ブロックと溝という表現で認定していることは明らかであって,凹陥部について認定判断していないものではなく,原告の上記主張は失当である。また,本件のような自動車用タイヤにおけるブロックと溝の関係が,いわば図と地の関係にあることは,原告主張のとおりであるから,ブロックの形状や配列についての認定は,とりもなおさず各ブロック間の溝の形状等を示すものでもあるし,しかも,意匠の類否の判断においては,見る者の注意を強く惹く部分を中心に,両意匠を全体的に観察してその視覚的印象の異同により,類否を判断すべきものであるところ,本件のような多数のブロックが配列された自動車用タイヤにおいては,通常,溝によって区画され図形化されたブロック(凸出部)の方が,細長の溝部(凹陥部)よりも見る者の注意を惹くものというべきであるから,本件において,審決が,ブロック(凸出部)の態様等を中心に意匠の形態を検討しているとしても,意匠の類否の判断の方法として何ら適切さを欠くものではないというべきである。
(2) 原告は,本願意匠の凹陥部は,中央ブロック列周縁が条線状の溝で目立たないことから,各ショルダブロック間のみに,直線状で太幅の溝が等間隔で上下に並列した凹陥図柄として現れているのに対し,引用意匠は,左右の縦溝に,中央ブロック列間に斜平行して設けられた細溝が連通した網状を呈する凹間図柄として現れているとして,両意匠における凹陥図柄の相違は極めて顕著である旨主張する。
しかし,本件出願に係る意匠登録願に添付された図面(甲2号証,乙1号証)によると,本願意匠における溝(凹陥部)も,各ブロックの間に連続して形成されており,この溝があることによって,上下に連続した中央ブロック(凸出部)と,その左右両側に三角状をなして嵌合する形で配列されたショルダブロック(凸出部)とを形成し,これらがまとまりを持った意匠的効果を生みだしているものであることは否定できず,たとえ細幅の溝であっても,ブロックを画する形で形成されている以上,ブロックと共にこれを見る者の注意を惹く部分であることは明らかであり,中央ブロック周縁の溝は目立たないものとして凹陥図柄を構成しないとすることはできない。本願意匠及び引用意匠において,各ブロックと溝との関係から醸し出される全体的な視覚的印象は,その溝幅の大小という差異にかかわらず強い類似性を呈しているというべきであり,原告の主張は,本願意匠の全体に連続して形成された溝を,ショルダブロックの上下の太幅の部分のみに限定した図柄としてとらえ,細幅の部分を無視するものであって,採用することができない。
また,原告は,本願意匠の凸出図柄は,中央ブロック列の左右にショルダブロックの先端部が略密着して,きつく編み込んだ網代編状を呈するものであり,引用意匠のそれは,縄目状の中央ブロックの縦帯と左右のショルダブロックによる扇面繋ぎ様縦帯とが,完全に分離並列した態様を呈すると主張する。
しかし,本願意匠と引用意匠において,凸出部である中央ブロック列とショルダブロック列との関係は,これを全体的に観察した場合,いずれも横長の胴部が膨出した俵状ないしはビヤ樽状のブロックが上下一列に密着,連続して形成されている中央ブロック列と,その両側に中央寄りを三角状にしたショルダブロックが嵌合するように形成され,中央ブロックの左右両側にジグザグ状の模様を呈するに至っている点で共通しているものであり,そこから醸し出される美的印象を共通にしているというべきであって,中央ブロックとショルダブロック間の溝幅の点に差異があるとしても,両意匠の凸出部の態様として,原告が主張するように,本願意匠がきつく編み込んだ網代編状で,引用意匠は完全に分離並列した態様を呈するというほどの明瞭な印象差を生じているとはいえず,原告の上記主張も採用できない。
以上のとおり,本願意匠と引用意匠について,原告が主張する凹陥図柄及び凸出図柄に着目して観察しても,両意匠のそれらの図柄に顕著な相違があるということはできず,前記のとおり,審決は,凸出部だけでなく凹陥部についても着目して共通点及び差異点を認定し類否判断をしているのであるから,原告が主張するように,審決が主要な構成態様を看過して類否判断をしているということはできない。
3 類否判断について (1) 本願意匠と引用意匠を対比すると,両意匠の共通点は,審決が共通点(1)ないし(3)として認定しているとおりであり,両意匠に係る物品が自動車用タイヤであることからすると,意匠としての支配的部分を占め,視覚的に見る者の注意を惹きやすい中央部のブロック列や,該ブロックに嵌合するように配列された左右のショルダブロック列の態様等は,それによって一つのまとまりを持った意匠的効果を奏する部分であり,そのうちでも特に中央ブロックの配列が上下の間隔を詰めた連続性のある形を示している点は,前記のとおり,公知意匠にみられない特徴的な部分といえる。そして,それら両意匠に共通する中央ブロック列及びショルダブロック列の配列上の態様は,各ブロック全体の基本的な配置構成の共通性と相まって,両意匠の強い類似性を示しているものということができる。
(2) これに対し,両意匠の差異点は,審決が差異点(1)及び(2)として認定しているとおりであると認められるところ,その差異点(1)のうち,中央ブロックの形状については,本願意匠のそれは胴部がやや膨出した略俵形状をなしており,引用意匠のそれは胴部が角張った偏平六角形状をなしている点で,仔細に観察すると相違しているものの,全体的な形状としては,いずれも横長の胴部が膨出した俵状ないしビヤ樽状を呈しているものとみることもでき,その形状に大きな相違はないといえる。
次に,差異点(1)のうち,中央ブロックの上下ブロック間の溝幅が,本願意匠がごく細幅であるのに対し,引用意匠はやや幅広のものである点については,ある程度離れた位置から観察した場合や斜めから観察した場合には,その溝幅の相違はさほど目立つものとは認められない程度のものであり,本願意匠と引用意匠における中央ブロックの配列の態様は,いずれも俵状ないしビヤ樽状のブロックが上下一列に密着,連続した外観を呈するという点で,見る者に類似した印象を与えるものということができ,両意匠における上記溝幅の違いは,その全体的な印象の中でごく微細な差異にとどまるものということができる。
また,差異点(2)については,本件出願に係る意匠登録願に添付された図面(甲2号証,乙1号証)によると,本願意匠におけるショルダブロックと中央ブロックとの間の三角状部分における溝幅は,中央ブロックの上下に形成された溝よりさらに細いことが認められるが,そのようなごく細幅の溝であっても,その溝の存在によって,ショルダブロックの形状が区画され,その中央寄りを三角状として中央ブロックと嵌合するような形を形成し,中央ブロックの左右両側にジグザグ状の模様を呈するに至っている点で,引用意匠と共通しているものであり,両意匠を全体的かつ離隔的に観察した場合,上記溝幅の差異は,両意匠の前記の全体的な共通点から受ける美感を異ならせるものとまでは認めることができない。
なお,原告は,本願意匠のショルダブロックは,中央ブロックに接する先端部を万年筆のペン先様とし,その残余部を水平状に形成しているのに対し,引用意匠のショルダブロックは,変形扇面形様で,右上に傾斜した斜状に形成されている点で相違しているとも主張しているが,その点は,中央ブロックに隣接する三角状の先端部を有し,ショルダ部からサイド部にかけて帯状に形成されているという点で共通する中での差異であり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにとどまるといわざるを得ない。
(3) 以上のとおりであり,本願意匠と引用意匠に共通する中央ブロック列及びショルダブロック列の配列上の態様は,各ブロック全体の基本的な配置構成の共通性と相まって,視覚的印象としての両意匠の強い類似性を示しているものということができるのに対し,その差異点はいずれも微弱なものであるから,両意匠は類似するというべきであり,本願意匠が意匠法3条1項3号に該当するとした審決の認定判断に誤りはない。
4 したがって,原告主張の取消事由は理由がなく,その他,審決に,これを取り消すべき誤りは認められない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 若林辰繁
裁判官 沖中康人
  • この表をプリントする