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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 実施権の設定 /  差止請求(差止) /  通常実施権 / 
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事件 平成 12年 (ワ) 12774号 販売差止請求事件
原告 株式会社ラビットデザインアンドクリエイティブオフィス 右代表者代表取締役 A右訴訟代理人弁護士 後藤寛
被告 株式会社モーリス右代表者代表取締役 B右訴訟代理人弁護士 吉川知宏
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/01/30
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は、別紙目録記載の意匠を使用した製品を販売してはならない。
事案の概要
一 争いのない事実 1(一) 原告は、釣具、釣用品等の企画開発、製造販売等を目的とする株式会社である。原告の登記簿には、A(以下「A」という。)が、平成一二年二月一五日に原告の代表取締役に就任した旨記載されている。
(二) 被告は、釣具の販売を目的とする株式会社である。
2 原告は、別紙目録記載の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その意匠を「本件意匠」という。)を有している。
3 被告は、「グラッパー」の名称で、本件意匠を使用した製品を販売している。
二 本件は、原告が被告に対し、通常実施権その他本件意匠を使用する何らの権利も有しない被告が、本件意匠を使用した製品を販売しているとして、本件意匠権に基づいて、右製品の販売差止めを求める事案である。
これに対して、被告は、@本件訴えは、代表権を有しない者によって提起されたものであるから、不適法な訴えである、A被告は原告から本件意匠権について通常実施権を設定されていると主張している。
三 本件の争点 1 Aに原告を代表して訴訟を遂行する権限があるかどうか 2 被告が本件意匠権について通常実施権を有するかどうか
争点に関する当事者の主張
一 争点1について (原告の主張) 1 原告は、平成一二年二月一五日午前一〇時から臨時株主総会を開催した(以下「本件総会」という。)。本件総会においては、従前の役員全員が、同年一月三一日をもって任期満了により退任していることが確認され、新たな取締役として、A、C(以下「C」という。)、D(以下「D」という。)を選任する旨の決議がされた。
また、同日午前一〇時一五分、右三名の取締役出席のうえ、取締役会が開催され、Aが代表取締役に選任された。
2 本件総会の招集通知は、被告代表者B(以下「B」という。)に対してされていないが、Bは、原告の株主ではない。
また、原告の株主であり、代表取締役であったE(以下「E」という。)は、平成一一年四月一五日に死亡した。本件総会開催に先立って、Eの相続財産管理人であるF(以下「F」という。)の代理人G弁護士(以下「G弁護士」という。)に対して、総会開催の事実を電話で伝えた。
3 以上のとおり、Aは、原告代表者に適法に選任されている。
(被告の主張) 1 本件総会が開催された事実はない。
2 Bは、原告の株主であるが、本件総会の招集通知を受けていない。
また、Eの相続財産については、現在限定承認手続が進行中であり、その所有株式の処分も未了である。
3 以上によると、Aの取締役選任については、商法所定の手続が採られておらず、Aは原告の代表権を有しないというべきであって、本件訴えは、代表権を有しない者が原告の代表者として提起した不適法なものである。
二 争点2について (被告の主張) 被告は、原告から、本件意匠権について、通常実施権の設定を受けている。
(原告の主張) 右事実は否認する。
当裁判所の判断
一 争点1について 1 証拠(甲四ないし八、乙一ないし三、Aの尋問結果)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。
(一)(1) 原告は、平成九年三月一二日、設立登記がされた。
(2) 原告の設立当時の定款の概要は、以下のとおりである。
@ 発行済株式総数は、二〇〇株であり、Eが一〇〇株、Bが四〇株、
Aが二〇株、H(以下「H」という。)が二〇株、Cが二〇株をそれぞれ引き受ける。
A 最初の取締役は、E、B、A、Hとし、監査役は、Cとする。
B 取締役は、株主総会において、発行済株式総数の三分の一以上に当たる株式を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。
C 最初の取締役の任期は、就任後一年内の最終の決算期に関する定期株主総会の終結の時までとする。
その後の取締役の任期は、就任後二年内の最終の決算期に関する定期株主総会の終結の時までとする。
D 株式を譲渡するには、取締役会の承認を受けなければならない。
E 取締役会招集の通知は、各取締役に対し、会日の三日前に発するものとする。ただし、緊急の必要があるときは、この期間を短縮することができ又全員の同意あるときは省略することができるものとする。
取締役会の決議は、過半数の取締役が出席し、その出席取締役の過半数をもって行う。
(3) E、B、A、Hの各取締役及びC監査役は、平成一〇年一月二〇日重任された。
(二) Eは、原告の設立以来唯一の代表取締役であったが、平成一一年四月一五日死亡した。その後、後記(四)までの間に、原告において、代表取締役を選任する手続はされていない。
(三) 原告は、平成一一年九月、原告の本店所在地であった【<以下略>】の事務所から退去した。その後、会社の施設、看板等はなく、原告としては何らの活動もしていなかった。
(四) 平成一一年一二月ころ、Aは、Cと相談し、原告の取締役等を決定するために、平成一二年二月一五日午前一〇時、【東京都江東区<以下略>】のAの自宅において、株主総会を開催し、原告の従前の取締役はすべて任期満了により、
監査役は辞任により退任したことを確認したうえ、新たな取締役として、A、C、
Dを、監査役としてIをそれぞれ選任することを決め、司法書士に依頼して、その旨を記載した臨時株主総会議事録の原稿を作成した。
また、Aは、右株主総会に引き続き、右Aの自宅において、取締役会を開催し、原告の代表取締役としてAを選任すること、原告の本店をAの右自宅所在地に移転することを決め、司法書士に依頼して、その旨を記載した取締役会議事録の原稿を作成した。
そして、AとCは、平成一二年二月一五日、右Aの自宅に集まり、同日、右株主総会及び取締役会を開催したものとし、右の各議事録を完成させて、同月二二日、原告に関する登記簿の記載を変更する手続を行った。
(五) Aは、Eの相続財産管理人であるFの代理人であるG弁護士に対して、電話で、予め、右株主総会開催の事実を伝えたが、Bには、右株主総会開催の事実を通知しなかった。
また、右株主総会の招集に関しては、事前に原告の取締役会決議はされていない。
2(一) 原告の株主及び株式数について、Aは、尋問において、(1)設立当時におけるBの原告株式四〇株及びHの原告株式二〇株は、原告への出資ではなく、Bから借り入れた三〇〇万円、Hから借り入れた二〇〇万円に対する担保という趣旨であった、(2)原告設立後、原告がBに対し、右借入金三〇〇万円を返済して、右四〇株を取得したが、更にその後、Aは、原告がBから取得した右四〇株を未払給与との相殺で取得した、(3)原告設立後、AがHに対し、右借入金二〇〇万円を返済し、Hから右二〇株を取得した、(4)Aは、Eの原告株式のうち四〇株についても譲り受けて取得した、(5)Aが、右のとおりBらから原告の株式を譲り受けることに関しては、原告の取締役会における承認手続がされている、(6)その結果、Aの原告株式持株数は、一二〇株となった、(7)Bは、原告の株主ではないと供述する。
しかしながら、Aの右供述は、不明確、不自然な部分が多いうえ、右供述内容を裏付ける証拠は、甲八(H作成に係る「原告ラビットデザインアンドクリエイティブオフィスの設立に二〇〇万円を出資し、同社設立後、私保有の株式の売却を求められたので、同社を通じて売却しました。その対価として、平成九年四月三日に二〇四万円を受け取りました。」と記載した書面)を除いては何ら提出されていないから、甲八に符合する事実、すなわち、Hが有していた原告株式二〇株を譲渡した事実を除いては、Aの右供述を信用することができない。甲八には、Aが、Hが有していた原告株式二〇株を取得した旨の記載はないから、Aが、Hが有していた原告株式二〇株を取得したとまで認めることはできない。
(二) 右1認定の事実に、右(一)で述べたところを総合すると、平成一二年二月一五日時点における原告の株主及び持株数は、Eの法定相続人が一〇〇株、Bが四〇株、Aが二〇株、Cが二〇株であったことが認められ、Hが有していた株式二〇株については、この時点では既に譲渡されていた事実が認められるが、それをAが取得したとまで認めることはできない。
3 以上認定した事実からすると、本件総会は、その招集に関して取締役会の決議を経ていないうえ、原告の代表取締役によって招集されたものでもないこと、
原告の株主であったBには、招集の手続が全く行われていないこと、本件総会に出席した株主の株式総数は四〇株にすぎず、定款が定める取締役選任に必要な株主総会の定足数を大幅に下回るものであったこと、以上の事実が認められる。右事実からすると、本件総会は、何ら適法な手続によって招集されたものではなく、かつ、
出席した株主も、定款が定める取締役選任に必要な株主総会の定足数を大幅に下回る一部の株主にすぎないから、本件総会におけるA、C、Dを新たな取締役に選任する旨の決議は、法律上の意義における株主総会の決議ということはできない。したがって、A、C、Dを新たな取締役に選任する旨の本件総会における決議は存在しないこととなるから、これらの者がAを代表取締役として選任した取締役会決議も法律上は存在しないものというほかない。よって、Aは、原告を適法に代表する者とはいえない。
二 以上の次第で、本件訴えは、原告の代表権を有しない者によって提起された不適法な訴えであるから、却下を免れない。よって、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 内藤裕之
裁判官 岡口基一