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関連ワード 意匠の実施 /  物品 /  意匠に係る物品 /  登録意匠 /  差止請求(差止) /  損害賠償 /  損害額 / 
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事件 平成 10年 (ワ) 15700号 意匠権侵害差止等請求事件
原告 河淳株式会社右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 安江邦治
被告 株式会社太幸右代表者代表取締役 【B】 右訴訟代理人弁護士 深井 潔
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1999/10/29
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告は、別紙イ号目録記載の物件の製造、販売、販売の申出又は販売のための展示をしてはならない。
二 被告は、原告に対し、二四〇六万四〇四七円及びこれに対する平成一〇年九月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告のその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は、これを一〇分し、その一を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
五 この判決の第一項及び第二項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
一 被告は、別紙イ号目録記載の物件を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。
二 被告は、原告に対し、二七一四万六八八九円及びこれに対する平成一〇年七月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
一 争いのない事実等1 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件意匠」という。)を有する。
意匠に係る物品 実演用ワゴンテーブル 出願日 昭和六三年二月五日 登録日 平成四年五月一四日 登録番号 第八四五五六九号2 被告は、別紙イ号目録記載の物件(以下「イ号物件」という。)を、キョーラク株式会社に委託して、製造させ、それを、大阪物産プラスチック販売株式会社を通じて仕入れ、別に岩崎工業株式会社から仕入れたゴミ箱(商品名レッツカンスリム、以下「レッツカンスリム」という。)とセットで販売していた(以下、イ号物件とレッツカンスリムがセットになった製品を「被告製品」という。)。
3 イ号物件の意匠は本件意匠に類似する。
4 原告は、本件意匠の実施品を「セールスヘルパー八八R」という商品名で製造販売している(以下、この製品を「原告製品」という。)。
(右1及び3は争いなく、右2は、証拠(甲九、一〇、乙一、二、乙五の一ないし四)と弁論の全趣旨により認め、右4は、証拠(甲六、七)と弁論の全趣旨により認める。)二 本件は、原告が被告に対し、イ号物件の製造販売等が本件意匠権を侵害するとして、イ号物件の製造販売等の差止めとともに、イ号物件の販売を理由とする不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。
損害額に関する当事者の主張1 原告の主張(一) 被告は、平成八年二月から平成一〇年九月までの間に、被告製品を平均販売価格二万円で合計二七〇九台販売したから、その売上総額は、五四一八万円となる。
20,000×2,709=54,180,000(二)(1) 被告の販売した被告製品一台当たりの仕入原価は、次のとおりである。
イ号物件 八九三〇円レッツカンスリム 二四九円 したがって、被告製品の仕入総額は、二四八六万五九一一円となる。
(8,930+249)×2,709=24,865,911(2) 被告製品の販売に係る運賃は、一台当たり平均八〇〇円を超えないから、運賃総額は二一六万七二〇〇円となる。
800×2,709=2,167,200(3) イ号物件の金型代は、四〇万円を超えない。
(4) 以上を合計すると、被告製品の売上原価の総額は、二七四三万三一一一円となる。
24,865,911+2,167,200+400,000=27,433,111(三) したがって、被告は、イ号物件の販売により、右売上総額から売上原価の総額を控除した二六七四万六八八九円の利益を上げ、原告は同額の損害を被った。
54,180,000・27,433,111=26,746,889 2 被告の主張(一) 被告製品の販売総数が二七〇九台であること、平均販売価格が二万円であることは否認する。被告製品の販売総数は二六四九台である。また、そのうち、一五八六台の売上額は合計三〇五五万〇六〇一円(一台の平均販売価格一万九二六二円)であり、残りの一〇六三台の平均販売価格は、右一五八六台と同じであるから、売上総額は、五一〇二万六一〇七円となる。
30,550,601+19,262×1,063=51,026,107(二) イ号物件の販売により被告が得た利益の額の算定に当たり、売上総額から次の(1)ないし(3)の合計金額を売上原価として、(5)の金額を販売費・一般管理費としてそれぞれ控除すべきである。
(1) 仕入総額 イ号物件の仕入総額は、二七八五万五五七〇円である。
レッツカンスリムの仕入原価が二四九円であることは認める。レッツカンスリムの仕入総額は、六五万九六〇一円である。
249×2,649=659,601 したがって、被告製品の仕入総額は、二八五一万五一七一円となる。
27,855,570+659,601=28,515,171(2) 運賃総額 被告製品の販売に係る運賃は一台当たり平均一二〇〇円を下回らないから、運賃の総額は、三一七万八八〇〇円である。
1,200×2,649=3,178,800(3) 金型代 イ号物件の金型代は、七七二万五〇〇〇円である。
(4) 以上を合計すると、被告製品の売上原価の総額は、三九四一万八九七一円となる。
28,515,171+3,178,800+7,725,000=39,418,971(5) 販売費・一般管理費 イ号物件の販売費・一般管理費は、売上高の二〇パーセントに当たる一〇二〇万五二二一円である。
51,026,107×20/100=10,205,221(一円未満切捨て)(三) したがって、被告がイ号物件を販売して得た利益の額は、右売上総額から売上原価の総額及び販売費・一般管理費を控除した一四〇万一九一五円となる。
51,026,107・39,418,971・10,205,221=1,401,915
当裁判所の判断
差止請求について 前記第二の一の事実によると、被告は、イ号物件の製造、販売、販売の申出又は販売のための展示をするおそれがあるものと認められるところ、イ号物件は本件意匠に類似するから、被告による右の各行為は、本件意匠権の侵害となものである。
しかし、被告が、イ号物件について、本件意匠権の実施に当たる他の行為を行い又は行うおそれがあることを認めるに足りる証拠はない。
したがって、原告の差止請求は、イ号物件の製造、販売、販売の申出又は販売のための展示の差止めを求める限度で理由がある。
損害賠償請求について 被告は、イ号物件を販売して本件意匠権を侵害したことについて過失があったものと推定されるから、イ号物件の販売により原告が被った損害を賠償する責任がある。
そこで、右損害額について判断する。
1 証拠(甲九、一〇)と弁論の全趣旨によると、キョーラク株式会社は大阪物産プラスチック販売株式会社を通じて被告に対し、平成八年二月二〇日から平成一〇年七月二三日までの間にイ号物件を合計二七二七台納入したことが認められ、これに反する証拠はない。この事実と弁論の全趣旨によると、被告は、平成八年二月から平成一〇年九月までの間に、イ号物件を少なくとも二七〇九台販売したものと認められる。
また、証拠(甲八)と弁論の全趣旨によると、被告は、販売先に応じて、被告製品を一台当たり一万八七七六円、二万円、二万六〇〇〇円、二万八二〇〇円、三万円、四万四二〇〇円などといった金額で販売していたこと、販売量の多い販売先に対する一台当たりの販売価格は、右のうち一万八七七六円及び二万円であったこと、被告が有する帳簿に記載されている被告製品一五八六台の売上額は合計三〇五五万〇六〇一円であって、一台の平均販売価格は一万九二六二円となること、以上の事実が認められ、以上の事実によると、右二七〇九台の平均販売価格は一万九二六二円を下回らないものと認められるが、これを超えるとまでは認められない。
以上によると、被告が販売した被告製品の売上総額は、五二一八万〇七五八円であると認められる。
19,262×2,709=52,180,7582 被告のレッツカンスリムの仕入原価が二四九円であることは当事者間に争いがなく、証拠(乙一、乙五の三)と弁論の全趣旨によると、被告のイ号物件の仕入単価は八九三〇円であることが認められるから、被告製品の仕入総額は、二四八六万五九一一円であると認められる。
(8,930+249)×2,709=24,865,9113 証拠(乙三、四)によると、被告は販売した被告製品の運送を西濃運輸株式会社に委託して行っていたところ、同社では被告製品の運賃を五〇キログラム相当に換算して計算しており、同社の運賃表では、五〇キログラム相当の貨物の運賃は、
運送距離に応じて一一〇〇円から二八〇〇円までに設定されていることが認められ、以上の事実に弁論の全趣旨を総合すると、被告製品の販売に係る運賃の額は、
一台当たり平均一二〇〇円を下回らないと認められる。したがって、運賃総額は三二五万〇八〇〇円であると認められる。
1,200×2,709=3,250,800なお、原告は、原告製品の運賃の額は、右の額よりも低いと主張し、それに沿う証拠(甲六、七、一一)を提出しているが、原告製品の運賃の額から被告製品の運賃の額を直ちに推認することはできないから、これらの証拠は右認定を覆すに足りるものではない。
4 被告は、イ号物件の販売により被告の得た利益の算定に当たり、売上総額からイ号物件の金型代及び販売費・一般管理費を控除すべきであると主張する(前記第二の三2)。
意匠法39条2項にいう「利益」とは、権利者が現実に意匠権を実施しており、
かつ、設備投資や従業員の雇用を新たに必要としない状態で製造、販売等が可能な範囲内では、侵害行為者の製品の売上額からその製造、販売等のための変動経費のみを控除した額をいうものと解するのが相当である。
しかるところ、前記第二の一4のとおり、原告は原告製品の製造販売をしていたものと認められるから、原告が、原告製品を二七〇九台製造販売するために、新たに金型を製作して金型代を支出する必要があったとは認められない。したがって、
金型代は控除しないこととする。
また、被告は、イ号物件の販売費・一般管理費は、売上高の二〇パーセントに当たる金額であると主張するが、イ号物件の販売に関する販売費・一般管理費の額を認めるに足りる証拠はない。したがって、販売費・一般管理費の額も控除しないこととする。
5 以上によると、被告がイ号物件の販売により得た利益の額は、右1の売上総額五二一八万〇七五八円から右2の仕入総額二四八六万五九一一円及び右3の運賃総額三二五万〇八〇〇円を控除した金額である二四〇六万四〇四七円となり、これが原告の被った損害額であると推定される。
52,180,758・24,865,911・3,250,800=24,064,047 したがって、原告は被告に対し、二四〇六万四〇四七円の損害賠償を請求することができるから、原告の損害賠償請求は右金額の限度で理由がある。
なお、原告は、本訴状送達の日の翌日である平成一〇年七月二五日からの遅延損害金の支払を求めているところ、右二四〇六万四〇四七円の利益は、平成八年二月から平成一〇年九月までの間にイ号物件を合計二七〇九台販売したことにより得た利益であるから、右二四〇六万四〇四七円に対する遅延損害金の起算日は、最も遅い平成一〇年九月三〇日とするものとする。
三 よって、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 榎戸道也
裁判官 岡口基一