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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行コ10002却下処分取消請求控訴事件 判例 意匠
平成21行ウ597却下処分取消請求事件 判例 特許
平成22行ウ65行政不服審査法による異議申立に対する決定取消請求事件 判例 特許
平成21行ウ540手続却下処分等取消請求事件 判例 特許
昭和52行ケ46 判例 特許
関連ワード 意匠の保護 /  物品 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  意匠登録を受ける権利 /  先願 /  一意匠一出願(7条) /  条約 /  承継人 /  新規性 /  類似の意匠 /  関連意匠(10条) /  秘密意匠(14条) /  先使用(29条) /  パリ条約 /  手続違背 / 
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事件 平成 20年 (行ウ) 82号 却下処分取消請求事件
スイス連邦フルリール<以下略>
原告パルミジャニフルリール エス.アー. 特許 管理人弁理士川崎仁
訴訟 代理人弁護士出縄正人
同 高橋祥子 東京都千代田区<以下略>
被告国 処分行政庁特許庁長官肥塚雅博
指定代理人福光洋子
同 青木明子
同 山内孝夫
同 門奈伸幸
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/06/27
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁長官が意願2006-026075号について平成19年1月15日付けでした手続補正書に係る手続を却下する処分及び同年3月27日付けでした優先権証明書提出書に係る手続を却下する処分をいずれも取り消す。
2第2事案の概要本件は,原告が意匠登録出願をした際,当初,パリ条約による優先権主張の手続をせず,その後,同日中に,優先権主張に必要な事項を追加する手続補正をし,さらに後日,優先権証明書提出書を提出したのに対し,特許庁長官が原告に対して前記の手続補正(書)に係る手続を却下する処分及び前記の優先権証明書提出書に係る手続を却下する処分をしたことから,原告が被告に対し,これらの処分について,意匠法15条1項で準用される特許法43条1項,意匠法60条の3の解釈及び運用を誤った違法がある旨主張して,その取消しを求める事案である。
1前提となる事実及び規定(1)当事者原告は,時計及びその付属品の設計,製造,販売を業とするスイス連邦所在の外国法人である。(争いがない)(2)出願と処分の経過ア基本出願原告は,平成18年3月29日,スイス連邦において,意匠に係る物品を「腕時計用側」とする意匠登録出願(出願番号132745,以下「基本出願」という。)をした。(甲4の1,弁論の全趣旨)イ本件出願原告は,平成18年9月28日午後3時49分,電子情報処理組織を使用して,意匠に係る物品を「腕時計用側」とする意匠登録出願(意願2006-026075号,以下「本件出願」という。)をした。(争いがない)本件出願の願書には,意匠法15条1項で準用される特許法43条1項所定の,?@パリ条約4条D(1) の規定により優先権を主張しようとする旨,?A最初に出願をしたパリ条約の同盟国の国名及び?B出願の年月日(以下?@3ないし?Bを併せて「所定事項」という。)が記録されていなかった。(争いがない)原告は,本件出願と同日の平成18年9月28日午後6時6分,基本出願に基づく優先権主張の効果を得る意図の下に,電子情報処理組織を使用して,本件出願の手続の補正として,基本出願に関する所定事項を含む次の内容を記録(以下,この記録を「本件補正」といい,これによって,その提出により行われたものとみなされた書面を「本件補正書」という。)した。(争いがない,甲2の1,甲3の2,弁論の全趣旨)「【手続補正1】【補正対象書類名】意匠登録願【補正対象項目名】パリ条約による優先権等の主張【補正方法】追加【補正の内容】【パリ条約による優先権等の主張】【国名】スイス【出願日】2006年3月29日【出願番号】132745」ウ優先権証明書の提出原告は,平成18年12月28日,スイス連邦知的財産権機関による優先権証明書と訳文を添付した優先権証明書提出書(以下「本件提出書」という。)を提出した。(争いがない,甲4の1・2)エ手続補正書に係る手続に関する処分(ア)特許庁長官は,平成18年10月4日,原告に対し,本件補正書に係る手続について,「パリ条約による優先権等の主張欄の追加する補正手続です。」「(注)本願は出願時にパリ条約による優先権主張の手続がなされておらず、本件補正書によりその主張の追加補正を目的とするも4のであり認められません(意匠法第15条第1項で準用する特許法第43条第1項参照)。」との理由によって却下するべきものと認められる旨の却下理由通知をした。(争いがない,甲5)(イ)原告は,平成18年12月13日,本件補正書に係る手続について,「本件の補正書は、出願と同日に提出されたものでありますから、出願と同時と同視することができるものと思料します。また、そのように取り扱われることが、プロパテントによる発明、意匠の保護につながるものと考えます。」との内容の弁明書を提出した。(争いがない,甲6の1・2)(ウ)特許庁長官は,平成19年1月15日,本件補正書に係る手続について,平成18年10月4日付けの却下理由通知書に記載した理由によって却下する旨の処分(以下「本件処分1」という。)をした。(争いがない,甲7,弁論の全趣旨)(エ)原告は,平成19年3月23日,本件処分1を不服として,行政不服審査法に基づく異議申立てをした。(争いがない,甲8,弁論の全趣旨)(オ)特許庁長官は,平成19年8月10日,本件処分1について,異議申立てを棄却する旨の決定をし,この決定書が同月13日に原告に送達された。(争いがない,甲9,弁論の全趣旨)オ優先権証明書提出書に係る手続に関する処分(ア)特許庁長官は,平成19年2月15日,原告に対し,本件提出書に係る手続について,「出願時にパリ条約による優先権主張の手続がなされていない出願に対する優先権証明書の提出手続です。」「(注)本願は出願時にパリ条約による優先権主張の手続がなされていないため、意匠法第15条第1項で準用する特許法第43条第1項の規定に違反します。」との理由によって却下するべきものと認められる旨の却下理由通5知をした。(争いがない,甲10)(イ)原告は,平成19年3月23日,本件提出書に係る手続について,「本願の,平成18年9月28日付提出の手続補正書は手続却下(平成19年1月19日発送)となっていますが、この手続却下に対しましては、行政不服審査法に基づく異議申立てを行っておりますので、本願は、
出願時にパリ条約による優先権主張の手続がなされたものとみなされる可能性があります。」「従いまして、本願が出願時にパリ条約による優先権主張の手続がなされたものとみなされた場合には、平成18年12月28日付けの優先権証明書提出書は受理されるべきものであると思料します。」との内容の弁明書を提出した。(争いがない,甲11の1・2)(ウ)特許庁長官は,平成19年3月27日,本件提出書に係る手続について,平成19年2月15日付けの却下理由通知書に記載した理由によって却下する旨の処分(以下「本件処分2」といい,本件処分1と併せて「本件各処分」という。)をした。(争いがない,甲12,弁論の全趣旨)(エ)原告は,平成19年5月31日,本件処分2を不服として,行政不服審査法に基づく異議申立てをした。(争いがない,甲13,弁論の全趣旨)(オ)特許庁長官は,平成19年11月28日,本件処分2について,異議申立てを棄却する旨の決定をし,この決定書が同月29日に原告に送達された。(争いがない,甲14)(3)原告の出訴原告は,平成20年2月12日,本件各処分の取消しを求める本件訴訟を提起した。(顕著な事実)(4)パリ条約の規定6パリ条約(「工業所有権の保護に関するパリ条約」, なお,正文はフランス語である。)4条(優先権)には,次の規定(ただし,特許庁国際課による参考仮訳)がある。
「A(1) いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案,意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継人は,他の同盟国において出願することに関し,以下に定める期間中優先権を有する。
(2) 各同盟国の国内法令又は同盟国の間で締結された二国間若しくは多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は,優先権を生じさせるものと認められる。
(3) 正規の国内出願とは,結果のいかんを問わず,当該国に出願をした日付を確定するために十分なすべての出願をいう。
Bすなわち,A(1) に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は,その間に行われた行為,例えば,他の出願,当該発明の公表又は実施,当該意匠に係る物品の販売,当該商標の使用等によつて不利な取扱いを受けないものとし,また,これらの行為は,第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。優先権の基礎となる最初の出願の日前に第三者が取得した権利に関しては,各同盟国の国内法令の定めるところによる。」「D(1) 最初の出願に基づいて優先権を主張しようとする者は,その出願の日付及びその出願がされた同盟国の国名を明示した申立てをしなければならない。各同盟国は,遅くともいつまでにその申立てをしなければならないかを定める。」(5)関係法規の規定本件事案に関係する法規の規定は,次のとおりである。
ア特許法43条(パリ条約による優先権主張の手続)1項〔意匠法15条1項による準用〕7「パリ条約第4条D(1) の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし〔省略〕たパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。」イ特許法施行規則27条の4(発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとする場合の手続等)1項〔意匠法施行規則19条3項による準用〕「特許出願について特許法〔省略〕第四十3条第1項(〔省略〕)の規定により優先権を主張しようとする者は、当該特許出願の願書にその旨及び必要な事項を記載して〔省略〕同法第四十3条第1項に規定する書面の提出を省略することができる。」ウ意匠法施行規則2条(願書の様式)1項「願書(次項から第四項までの願書を除く。)は、様式第二により作成しなければならない。
〔省略〕」エ意匠法施行規則様式第2(第2条関係)「【書類名】意匠登録願〔省略〕〔備考〕〔省略〕32第19条第3項において準用する特許法施行規則第27条の4第1項の規定により、パリ条約による優先権〔省略〕を主張しようとする旨等を願書に記載してその旨等を記載した書面の提出を省略するときは、「【代理人】」(〔省略〕)の欄の次に「【パリ条約による優先権等の主張】」の欄を設け、その欄に「【国名】」及び「【出願日】」を設けて、国名及び出願日を記載する。これらの優先権の主張8の基礎とされた出願の番号を記載するときは、「【出願日】」の次に「【出願番号】」の欄を設けて、その番号を記載する。〔省略〕〔省略〕」オ工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(以下「特例法」という。)3条(電子情報処理組織による特定手続)「手続をする者は、〔省略〕特許庁長官〔省略〕に対する特許等関係法令の規定による手続であって経済産業省令で定めるもの(以下「特定手続」という。)については、経済産業省令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して行うことができる。
2前項の規定により行われた特定手続は、前条第一項の特許庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイル〔省略〕への記録がされた時に特許庁に到達したものとみなす。
3第一項の規定により行われた特定手続については、当該特定手続を書面の提出により行うものとして規定した特許等関係法令の規定に規定する書面の提出により行われたものとみなして、特許等関係法令の規定を適用する。」カ特例法施行規則10条(特定手続の指定)「法第3条第1項の経済産業省令で定める手続は、次に掲げる手続(〔省略〕以下「特定手続」という。)とする。
〔省略〕三意匠登録出願〔省略〕十二特許法第四十3条第1項(〔省略〕意匠法第十5条第1項〔省略〕において準用する場合を含む。)の規定による書面の提出〔省略〕五十二〔省略〕意匠法第六十条の三〔省略〕に掲げる手続の補正〔省9略〕〔省略〕」キ特例法施行規則12条(発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとする場合の手続等)「電子情報処理組織を使用して〔省略〕特定手続を行う者は、次の表の上欄に掲げる手続の区分に応じ、同表の中欄に掲げる書面の提出に代えて、特許出願、実用新案登録出願、意匠登録出願、商標登録出願若しくは防護標章登録出願の願書又は登録料納付書に同表の下欄に掲げる記載事項その他必要な事項を記録しなければならない。
〔省略〕〔表上欄「手続の区分」〕「第十条第十二号に規定する手続」〔表中欄「書面」〕「特許法第四十3条第1項(〔省略〕意匠法第十5条第1項〔省略〕において準用する場合を含む。)に規定する書面」〔表下欄「記載事項」〕「特許法第四十3条第1項(〔省略〕意匠法第十5条第1項〔省略〕において準用する場合を含む。)に規定する優先権を主張しようとする旨」〔省略〕」ク意匠法60条の3(手続の補正)「意匠登録出願、請求その他意匠登録に関する手続をした者は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができる。」2争点本件の争点は,本件各処分の違法性の有無,すなわち,?@意匠法15条1項10で準用される特許法43条1項,?A意匠法60条の3の解釈及び運用を誤った違法事由の有無である。
第3争点に関する当事者の主張〔原告の主張〕1意匠法15条1項で準用される特許法43条1項の解釈及び運用を誤った違法事由(1)「同時に」の法律上の意味特許法43条1項の「同時に」とは,パリ条約による優先権主張の趣旨や特許法における期限の趣旨からみて,「1日」を基準として判断されると解釈すべきであり,同日中に行われれば,「同時」といえるものであって,わずかの時間のずれすらも許さない趣旨ではない。
パリ条約4条D(1) は,「各同盟国は,遅くともいつまでにその申立てをしなければならないかを定める。」と規定し,各同盟国において,出願の際における当該出願との関係での「優先権主張自体の申立時期」についての終期を定めるものとしており,外国では,その時期を出願日から数か月後あるいは最終処分までと定める例もある。我が国の特許法43条1項は,優先権の主張を「出願」と「同時に」する必要があると定めており,これは,?@権利関係の安定,?A先願主義との関係からの要請に基づくものであると考えられる。
この点,権利関係の安定の要請については,出願時期と優先権主張の時期とが乖離すればするほど,優先期間中に行われた第三者の行為の権利関係が確定せず,不安定となる。しかし,優先権主張が出願と「同日中」に行われる場合には,当該出願日中にパリ条約上の第二国の国民との間でも,権利関係が確定するから,優先権主張による混乱を招くことはない。
また,先願主義との関係については,意匠法9条(先願)1項は,「同一又は類似の意匠について異なつた日に二以上の意匠登録出願があつたときは、
11最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。」と規定しており,先願主義の運用は,意匠法上も特許法上も「日」単位でされている。そうすると,先願主義との関係で設けられた「同時に」との要件についても,日単位で考えて何ら不都合は生じないし,実際に,特許,意匠の出願の運用において,同日に2つ以上の同一内容の出願があった場合,時間を単位として早い出願が優先して遅い出願が劣後するのではなく,1日を総体として判断するものである。出願日と優先権の主張日が同一日である場合には,当該日のうちに優先権主張が明確になり,先後願の関係,新規性,進歩性等の判断に関して第一国の出願時に出願されたものと同じ扱いを受けることから,仮に,当該時的間隙に第三者が出願したとしても,当該第三者が予測不可能な不利益を受けるなどとの事態は考えられない。
したがって,特許法43条1項の「同時に」とは,「同一時点に」ではなく,「同一日に」と解釈されるべきであり,パリ条約4条D(1) に基づく優先権主張の申立時期の終期としては,これを「出願日」と規定したものというべきである。
(2)パリ条約との関係パリ条約の優先権主張は,工業所有権について,地理的条件や出願制度も言語も異なる多数の国において,同時に出願することが実質的に困難であり,他方,時間をずらして各国ごとに出願すると,出願人が新規性等の判断において不利益を受けることになることから,いずれかの同盟国においてされた出願の対象物を他の同盟国に出願するにつき猶予期間を設けることにより,他の国に対する出願を容易にし,もって,出願人の工業所有権の国際的保護を図るために設けられたものである。
このような優先権の趣旨からすれば,特許法43条1項パリ条約の条項を明示して引用している以上,優先権主張の可否の判断においても,第二国における第三者の具体的利益を害しない限り,出願人の工業所有権の国際的12保護を没却するような解釈がされてはならない。
なお,パリ条約4条D(1) のフランス語の正文で使用された「moment」について,英語の公定訳の「date」,スペイン語の公定訳の「plazo 」は,いずれも「日」の概念を基礎としていることを示すものであり,期限を日単位で判断することはその忠実な解釈である。
(3)このように,特許法43条1項の「同時に」とは,出願日と優先権主張日とが同一であれば足り,同日中の時間のずれは何ら同時性を否定するものではないから,原告において,本件出願の後,同日中に本件補正の手続をした以上,適法に本件出願と同時にパリ条約による優先権の主張をしたことになる。
したがって,本件各処分については,いずれも,意匠法15条1項で準用される特許法43条1項の解釈及び運用を誤った違法がある。
(4)被告の主張に対する反論ア「同時に」の意味(ア)パリ条約の文言パリ条約4条D(1) の「moment」は,「時,時期,期間【必ずしも短くない】」としての「一定の継続期間」の意味をも有し,英語やスペイン語の公定訳の語もこれを反映したものであるから,特許法43条1項の「同時に」についても,例えば,「同じ時期に」「同一日に」など一定の継続期間を包含する意味で解するのがパリ条約に忠実な解釈である。
(イ)「同時に」の規定の趣旨出願時刻の後の優先権の主張であっても,それが同日中,すなわち,出願日の24時までにされている限り,権利関係は即日確定することから,出願と優先権の主張が同じ時刻にされた場合と比較しても,権利関係が不安定となるとはいえない。また,日単位で判断されている先後願の判断にも全く影響を与えない。
13にもかかわらず,「同時に」の文言を「まさにその時刻に」との意味に限定し,意匠出願と同日中の優先権の主張を認めないことは,特許法43条1項パリ条約に由来することを無視するものであり,法律の趣旨を超えた過剰な規制である。
(ウ)「同時に」に係る社会通念一般社会において,「同時に」との文言が「・・するとすぐに」「・・するやいなや」のように,時間的な幅を認める意味で用いられることもあることから,例えば,「同じ時期に」「同一日に」などとの意味に解したとしても,社会通念上の意味からかけ離れることはない。
(エ)許容される時間的幅の限界パリ条約4条D(1) の「moment」の文言が国際的に日単位で理解されていること,出願と優先権主張とが別の日であるのに「同時に」されたものと解してしまうと,出願の優劣が出願日の先後以外で判断されることとなって先願主義と矛盾し,権利関係も不安定となること,別の日の行為が「同時に」されたとは社会通念上もいえないことからすれば,時間的な幅は,出願日内である限りにおいてのみ許容されると解される。
イ意匠を受ける権利及び優先権を制限する合理的理由(ア)原告の意匠登録を受ける権利と優先権の要保護性特許法43条1項の「同時に」を「まさにその時刻に」の意味に解し,「同じ時期に」や「同一日に」の意味に解さないのであれば,本件出願において,出願時刻から2時間17分後に本件補正により優先権の主張を行った原告の意匠登録を受ける権利と観念的潜在的に発生している優先権の利益を制限するものであるから,そのような制限に値するほどの第三者の不利益があるかを検討する必要がある。
(イ)第三者の被る不利益優先権を主張しようとした出願人の出願より前に出願を行った第三者14については,優先権の主張が出願と同時刻にされた場合でも生じる不利益であって,出願日中に優先権の主張をすることを認めることによって新たに生じる不利益ではない。
問題は,優先権を主張しようとした出願人の出願より後であって,優先権の主張がされる前に出願を行った第三者に不利益が生じるか否かである。
この点,意匠法9条2項によれば,出願が同一日中に複数存在した場合,時間的な先後にかかわらず,協議が成立しない限り,意匠登録を受けることができないから,優先権を主張しようとした出願人が出願の日と同一日中に優先権の主張を行う限り,同日中に出願をした第三者は,もともと意匠登録を受ける地位を有しない。優先権を主張しようとした出願人の出願日中に出願を行った第三者の被る不利益は,優先権の主張が出願時刻と同時刻にされた場合であっても生じる不利益であって(特許庁の事務処理上煩雑であるという理由によって同日中の複数の出願に優劣を認めないこととしたが故に生じる不利益である。),出願人が出願時刻後の同日中に優先権の主張をすることを認めることによって新たに生じる不利益ではない。
(ウ)したがって,「同時に」を「同一日に」と解することによって,第三者が予測不可能な不利益を被ることはおよそ考えられないから,「同時に」の意味を「まさにその時刻に」と限定的に解して,原告の意匠登録を受ける権利及び優先権を制限する合理的な理由はない。
2意匠法60条の3の解釈及び運用を誤った違法事由(1)本件における優先権の主張については,意匠法60条の3(手続の補正)の「意匠登録に関する手続」に関するものであって,同法68条2項で準用される特許法17条3項2号の「手続がこの法律〔省略〕に違反しているとき。」に該当するから,特許庁長官が補正を命ずることのできる場合であり,15また,通常の出願内容に追加的に法定事項を記載,記録するものであって,従前の出願内容を何ら変更するものではなく,意匠法17条の2(補正の却下)1項の「要旨を変更するもの」に該当しないから,補正が却下される場合でもない。
(2)このように,本件出願と同一日に行われて「同時に」された本件補正による優先権主張について,補正を認めない法律上の根拠はない。もとより,原告のした本件補正による優先権の主張の手続について,意匠法施行法2条1項に従った記録がされて原告の優先権主張に何ら形式的な不備はなく,要式性を充たすものであるから,原告は,意匠法60条の3にいう「意匠登録に関する手続をした者」である。
したがって,本件各処分については,いずれも,意匠法60条の3の解釈及び運用を誤った違法がある。
3よって,原告は,被告に対し,本件各処分の取消しを求める。
〔被告の主張〕1意匠法15条1項で準用される特許法43条1項の解釈及び運用に誤りがないこと(1)優先権主張の手続と本件出願意匠登録出願について優先権を主張しようとする者は,所定事項を記載した書面(以下「主張書面」という。)を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出しなければならないのであり(意匠法15条1,特許法43条1項),意匠登録出願と「同時に」主張書面を提出することで,当該優先権は初めて効力を生じる。他方,優先権を主張しようとする者は,意匠登録出願の願書に所定事項を記載して,主張書面の提出を省略することができ(意匠法施行規則19条3項,特許法施行規則27条の4第1項),提出を省略する場合,様式を指定して願書に所定事項を記載することを明確にしている(意匠法施行規則2条1項,様式第2備考32)。つまり,意匠登録出願について優先16権の主張をしようとする者が意匠法施行規則様式第2の願書の所定欄に所定事項の記載をすることで意匠登録出願と同時に主張書面が提出されたことになり,そうして,初めて当該優先権の効力が生じるものである。
また,電子情報処理組織を使用して主張書面の提出を行う者は,主張書面の提出に代えて,願書に所定事項を記録しなければならない(特例法施行規則10条12号,12条)。つまり,電子情報処理組織を使用して意匠登録出願について優先権を主張しようとする場合にあっては,願書に所定事項を記録することにより,意匠登録出願と同時に主張書面が提出されたとするものであって,これにより,当該優先権の効力が生じることなる。
本件出願は,平成18年9月28日に電子情報処理組織を使用してされた出願であり,その願書には,所定事項が一切記録されていないから,本件出願においては,パリ条約4条D(1) の規定による優先権の主張がされていないものである。
(2)優先権主張の要式行為性意匠法15条1項によって準用される特許法43条1項は,優先権の主張を要式行為として規定しており,出願と同時に主張書面が提出されなくても,あるいは,願書に所定事項が記載されていなくてもよいということにはならない(東京高裁平成8年(行コ)第115号平成9年4月24日判決・甲18)。
本件出願については,全く優先権主張の手続が行われていないから,意匠法15条1項によって準用される特許法43条1項に規定する優先権の主張の手続が適法にされたものとはいえない。
(3)「出願と同時に」と「出願の日と同日に」とが全く異なることパリ条約4条D(1) の「各同盟国は,遅くともいつまでにその〔優先権の主張の〕申立てをしなければならないかを定める。」との規定に基づいて,意匠法15条1項によって準用される特許法43条1項は,特許出願につい17て優先権を主張しようとする者は,その主張書面を「特許出願と同時に」特許庁長官に提出しなければならない旨を規定している。
原告は,「同日に行われれば同時といえる」と主張する。しかしながら,原告の主張は,次のとおり,根拠がない。
ア文理上,「出願と同時に」との文言と「出願の日と同日に」との文言とは,それが「いつ」されたかという点において,全く意味が異なる。
先願主義として,同日出願の場合に,時間の先後により決するのではなく,協議制度が規定されている(特許法39条2項,意匠法9条2項)のは,「同日中の時間の先後の関係も審査の対象とすることは手続が極めて複雑になるとして採用されなかった」という事務処理上の効率を考慮したものにすぎない。先願主義が日単位で規定されているとしても,「出願と同日に」された優先権の主張を「出願と同時に」されたものとして取り扱う余地はなく,これらの間に何ら関わりがない。
パリ条約29条(1) (c) は,「これらの条約文の解釈に相違がある場合には,フランス文による。」と規定する。条約のフランス文では「a quel moment」であって,英語やスペイン語の公定訳にかかわらず,「moment」は,「日」という意味を含まないものである。
(4)第三者を害する可能性原告は,権利関係の安定性について,出願と同日にされた優先権の主張が権利関係を混乱させることは全くないと主張する。
しかし,優先権の主張は,主張書面を出願と同時に提出するという「要式行為」がされることでその効力が生じるものであり,このほか,意匠法9条1項,2項の規定を踏まえると,出願と同日とはいえ,出願の後にされた優先権の主張を認めると,当該優先権の主張が認められた出願より前に出願を行った第三者,あるいは,当該優先権の主張が認められた出願と同日に出願を行った第三者が多大な不利益を被る事態は十分に想定される。
18また,本件出願において,本件補正の手続との間の2時間17分の当該時的間隙に出願をした者に限定して第三者を想定することは,合理性に欠ける。
すなわち,仮に,原告の優先権が認められると,当該優先権の基礎となる最初の基本出願の出願日である平成18年3月29日より前にされた第三者による出願だけが先願となり,同日にされた第三者による出願は,原告の出願と同日出願となり,同日より後にされた第三者による出願は,本件出願の出願日における上記当該時的間隙にされた第三者による出願も含め,すべて原告の出願より後の出願となるから,原告の優先権の成否によって,極めて広い範囲の第三者の出願と原告の出願との間で,先後関係が変動することになる。
さらに,意匠法には,出願等の手続と「同時に」行うこととされている手続がパリ条約による優先権主張の手続以外にも規定されており(同法4条(意匠の新規性の喪失の例外)3項,14条(秘密意匠)2項),特許法,実用新案法,商標法にも同様の規定がある。原告のように,「同時に」を「同日に」の意味として解釈すれば,これらの規定についても,出願より後であっても同日内で行われた場合であれば,すべて許容すべきこととなり,法律上の安定性を無視した著しく不適切な解釈になる。
(5)このように,意匠法15条1項で準用される特許法43条1項の解釈及び運用に誤りはない。
2意匠法60条の3の解釈及び運用に誤りがないこと(1)優先権の主張は,それ自体が1つの意匠法60条の3にいう「意匠登録出願に関する手続」であるから,同条により,優先権の主張の手続の補正をするためには,既に,適法な優先権の主張の手続がされていることが必要であるところ,原告においては,本件出願と同時に優先権の主張をしていないから,同条の「意匠登録出願に関する手続をした者」に該当しない。
また,電子情報処理組織を使用して,意匠登録出願について優先権を主張19しようとする場合,願書に所定事項を記録することによって,意匠登録出願と同時に主張書面が提出されたことになる。本件出願には,所定事項が記録されておらず,事後にされた補正によって,本件出願と同時に優先権の主張があったとすることはできない。
さらに,優先権の主張をするか否かは,出願人が任意に決めることであり,意匠法68条2項によって準用される特許法17条3項2号の規定(「手続がこの法律又はこの法律に基づく命令で定める方式に違反するとき。」)に該当するものではなく,特許庁長官がその補正を命ずる余地はない。
また,意匠登録の願書に所定事項を追加する補正が意匠法17条の2(補正の却下)1項の適用を受けないことは明らかであって,本件出願についても,この規定を根拠に挙げることはできない。
(2)このように,意匠法60条の3の解釈及び運用に誤りはない。
3以上のとおり,本件出願にあっては,優先権の主張が適法にされていないことが明らかであるから,本件処分1は適法である。また,本件提出書に係る優先権証明書の提出は,その前提を欠く不適法な手続であるから,本件処分2も適法である。
第4当裁判所の判断1パリ条約による優先権主張の手続パリ条約4条D(1) の規定により意匠登録出願について優先権を主張しようとする者は,その旨並びに最初に出願をしたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日(所定事項)を記載した書面(主張書面)を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない(意匠法15条1項による特許法43条1項の準用)。もっとも,この主張書面の提出については,意匠登録出願の願書にこの所定事項を記載することにより,その提出を省略することができる(意匠法施行規則19条3項による特許法施行規則27条の4第1項の準用)。この省略をする場合の意匠登録出願の願書については,意匠法施行規則様式第220に定める様式に従い(同規則2条1項),「【代理人】」の欄の次に,「【パリ条約による優先権等の主張】」の欄を設け,「【国名】」,「【出願日】」などの所定事項が記載されることになる(同規則様式第2〔備考〕32)。
そして,電子情報処理組織を使用して行うことができる特定手続(特例法3条)として,意匠登録出願(特例法施行規則10条3号)の手続のほか,意匠法15条1項において準用する特許法43条1項の規定による主張書面の提出(特例法施行規則10条12号)の手続が掲げられ,電子情報処理組織を使用して,パリ条約による優先権を主張することができる。ただし,この場合には,主張書面の提出に代えて,意匠登録出願の願書に所定事項を記録することが必要であるとされている(特例法施行規則12条)。
なお,優先権の主張をした者が所定の手続をしないときは,優先権の主張は,その効力が失われることになる(意匠法15条1項による特許法43条4項の準用)。
2パリ条約による優先権の効力と手続違背ところで,パリ条約による優先権とは,パリ条約の同盟国の第一国に出願した者が他の同盟国(第二国)において出願するについて,一定期間に限り,先後願の関係,新規性等の判断の基準日としての出願日を第一国出願の日に遡らせることができる特別な利益である。この優先権は,第一国における最初の出願によって,観念的,潜在的に発生するといえるものの,優先期間内に第二国において出願する際に,優先権を主張することによって,初めて現実的な効力を生ずるものであると解される。
このように,パリ条約による優先権は,先願主義の例外事由となり,新規性等の判断の基準日を遡らせるなど,その効果が第三者に与える影響は大きく,第二国における出願の際に主張することによって,現実的な効力が生じるものであることから,優先権主張の手続については,前記1のとおりの方式が要求されるものである。
21そうすると,出願の際の優先権主張の手続において,要求される方式を充たしていない場合には,その主張に係る優先権の効力が生じていないものといわざるを得ない(東京高裁平成8年(行コ)第115号平成9年4月24日判決参照)。
3本件出願と本件補正による優先権主張(1)原告によって電子情報処理組織を使用して行われた本件出願の願書には,「【パリ条約による優先権等の主張】」の欄が設けられておらず,「【国名】」,「【出願日】」などの所定事項が一切記録されていないものであるから(甲1の1),原告による出願の際の手続においては,前記1のとおりの要求される方式を充たしていないことが明らかである。
ところが,原告は,本件出願と同日で本件出願から2時間17分後に,本件出願の手続の補正として,電子情報処理組織を使用してパリ条約による優先権の主張に必要な所定事項を追加する本件補正の手続を行っているため,これによって優先権の主張の手続が適法に行われたものということができるか否かが問題となる。
(2)特許法43条1項の「同時に」の意味ア原告は,意匠法15条1項で準用する特許法43条1項の「同時に」とは「同一日に」と解すべきであり,「同一日に」手続が行われれば,特許法43条1項の「同時に」といえるのであって,これを,「まさにその時刻に」として時間的なずれを許さないものと解することは失当である旨主張する。
しかしながら,「同時に」とは,「二つ以上のことがほとんど同じ時に行われるさま。まさにその時。いちどきに」(広辞苑第六版)を意味する言葉であり,言葉の通常の用法において,「同一日に」とは異なる意味で用いられていることは明らかである。意匠法及び特許法においても,「同一日に」を意味する場合には「同日に」の文言が用いられている(意匠法229条2項,特許法39条2項)。
そうである以上,特許法43条1項の「同時に」の文言を,原告の主張するように「同一日に」と解釈することは,そのように解すべき特別の事情が認められない限り許されないというべきである。
イ原告は,その解釈の根拠として,パリ条約の文言や,特許法43条1項が優先権の主張を出願と「同時に」しなければならないと定めた趣旨(権利関係の安定,先願主義との関係)を挙げる。
(ア)すなわち,原告は,パリ条約4条D(1) の文言について,フランス語正文では「moment」の語が,英語の公定訳では「date」の語が,スペイン語の公定訳では「plazo 」の語がそれぞれ使用されており,これらの文言は,優先権の主張の期限を日単位で判断することが条約に忠実な解釈であることを示している旨主張する。しかしながら,パリ条約4条D(1) は,「最初の出願に基づいて優先権を主張しようとする者は,その出願の日付及びその出願がされた同盟国の国名を明示した申立てをしなければならない。各同盟国は,遅くともいつまでにその申立てをしなければならないかを定める。」と規定し,各同盟国に優先権主張の時期的な終期の定めを委ねており,その結果,我が国においては,特許法43条1項で「同時に」と定めたものであるから,その解釈は,あくまで国内法の問題である。終期の定めを各同盟国に委ねた条項であるパリ条約4条D(1) のフランス語正文,英語訳やスペイン語訳の文言からは,各同盟国が優先権の期限を日単位で定めることを妨げるものではないとの趣旨を読み取ることはできても,我が国の特許法43条1項の「同時に」を「同一日に」と解釈すべきであるとの趣旨まで読み取ることはできない。
(イ)原告は,実質論として,原告の意匠登録を受ける権利及び優先権と,想定される第三者の被る不利益との間の考量をした上,原告がこれらの23権利や利益の制限を受けるに値するような第三者の不利益はない旨主張する。
しかしながら,当該優先権による基準時より後の日で,当該出願より前の日までに同一発明の出願を完了した第三者は,出願と「同時に」されなかった優先権主張の手続が事後的に適法な手続と扱われることによって,優先順位が覆ることになる不利益を被ることになる。当該出願の後,同一日中に当該優先権主張の手続がされる前に出願した第三者も,同日出願人の地位(協議成立により特許を受け得る地位)が,出願と「同時に」されなかった優先権の主張が事後的に適法な手続と扱われることによって,失われることになる不利益を被ることになる。
第三者の被るこれらの不利益は,到底看過し得るようなものではなく,原告の主張する実質論は,特許法43条1項の「同時に」を「同一日に」と解釈することの根拠とはなり得ないことが明らかである。
(ウ)原告は,意匠法や特許法における先願の定め(意匠法9条,特許法39条)を援用して,「日」単位で先願主義が運用されているから,日単位で考えても不都合はない旨指摘する。
しかしながら,上記先願の定めが,同日の出願について時間の先後によることなく協議制度を定めているのは,時間の先後関係をも審査の対象とすることにより手続が煩雑になることを避けるという事務処理上の効率を考慮したことによるものにすぎず,このような取扱いをしていることと,特許法43条1項の「同時に」の文言を「同一日に」と解釈することとの間には,何らの関連性も見出すことができない。
(エ)仮に,原告の主張のとおり特許法43条1項の「同時に」を「同一日に」と解釈すると,「同時に」と定める他の規定(例えば,意匠法4条3項,14条2項,17条の3第3項など)との関係において,整合的な理解をすることが困難となる。
24(オ)(ア)ないし(エ)で述べたところによれば,原告の上記主張はいずれも採用することができず,特許法43条1項の「同時に」を「同一日に」と解釈すべき特別の事情があると認めることはできない。
ウ以上のとおりであるから,本件補正によって優先権の主張の手続が適法にされたものということはできず,本件出願については,全く優先権の主張の手続が行われていないといわざるを得ない。
したがって,本件各処分につき,意匠法15条1項で準用される特許法43条1項の解釈及び運用の誤りがあるということはできない。
(3)意匠法60条の3の意匠登録に関する手続本件出願について,前記(2)のとおり,本件補正によって優先権の主張がされたものということはできないから,原告はパリ条約による優先権主張の手続を適法にしていないというほかはない。
そうすると,原告は,優先権の主張に係る意匠登録に関する手続をした者に当たらず,同手続の補正を行い得る者には当たらない。
したがって,本件各処分につき,意匠法60条の3の解釈及び運用の誤りがあるということはできない。
(4)まとめ以上によれば,本件各処分には,?@意匠法15条1項で準用される特許法43条1項及び?A意匠法60条の3の解釈及び運用を誤った違法事由は認められない。
4結論以上のとおりであるから,原告の請求は,いずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。