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関連審決 無効2002-35184
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成10行ケ42審決取消請求事件 判例 意匠
平成20行ケ10251審決取消請求事件 判例 意匠
平成11行ケ275審決取消請求事件 判例 意匠
平成19行ケ10390審決取消請求事件 判例 意匠
平成17行ケ10227審決取消請求事件 判例 意匠
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  物品の形状 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  意匠の説明 /  公然知られた(3条1項1号) /  3条1項3号 /  頒布された刊行物 /  記載された意匠 /  類似の意匠 /  意匠の類否 /  全体観察 /  動的意匠 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) /  混同を生じるおそれ(混同を生ずるおそれ) / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 358号 審決取消請求事件
原告 ニプロ株式会社
同訴訟代理人弁護士 小松 陽一郎
同 宇田浩康
同訴訟代理人弁理士 小谷悦司
同 川瀬幹夫
被告 株式会社大塚製薬工場
同訴訟代理人弁理士 稲岡耕作
同 松井宏記
同 藤本昇
同 鈴木活人
同 薬丸誠一
同 中谷寛昭
同 大中実
同 岩田徳哉
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/03/31
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2002-35184号事件について平成15年7月1日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
前提事実(当事者間に争いがない。)
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,意匠に係る物品を「輸液バッグ」とする登録第1016887号の意匠(別紙第1参照。平成8年4月24日出願。平成10年5月22日設定登録。以下,この登録に係る意匠を「本件意匠」という。)について意匠権を有している (2) 被告は,平成14年5月10日,本件意匠について,その登録を無効とすることを求めて特許庁に審判請求をした。
(3) 特許庁は,被告の審判請求を無効2002-35184号事件として審理を行い,平成15年7月1日,「登録第1016887号の登録を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同月11日に原告に送達された。
2 本件審決の理由の要旨 (1) 本件意匠と「オーツカCEZ注-MC1gキット」のパンフレット(甲3。以下「引用例1」という。)に記載された意匠(別紙第2参照。以下「引用例1意匠」という。)との比較 ア 本件意匠と引用例1意匠は,いずれも,薬剤と薬液とを上半側の袋体と下半側の袋体とに別々に収納しておき,使用時には薬液側を押圧することにより両袋体が貫通する輸液バッグ(以下「本件輸液バッグ」という。)を意匠に係る物品とするものであり,意匠に係る物品が一致する。 イ 次に,その形態については,以下の共通点と差異点がある(以下「共通点@」ないし「共通点C」,「差異点@」ないし「差異点D」という。)。(両意匠を比較するに際しては,本件意匠については,その上下を逆にして比較する。) (共通点) @ 全体が縦長長方形袋体の上方に薬剤収納室を,下方に薬液収納室を設け,下端に注出口栓を形成した基本的な構成。 A 薬剤収納室は,袋体全体の略上半部を占める隅丸横長矩形状の密閉された袋体とし,その外周に帯状のシール部を形成し,該シール部上部中央に小円孔を設けている点。 B 薬液収納室は,袋体全体の略下半部を占める略矩形状の密閉された袋体とし,下辺に略帯状のシール部を形成し,シール部下端中央に略円筒状の注出口栓を設けている点。 C 薬剤収納室と薬液収納室との連結部について,縦長長方形袋体の中央部に帯状に形成し,使用時に薬液収納室を押圧することにより薬剤収納室と薬液収納室の連結部中央で両室が貫通するようになっている点。 (差異点) @ カバーシートの有無について,本件意匠は,薬剤収納室の正面側にカバーシートが貼られているのに対し,引用例1意匠には,カバーシートがない点。 A 薬剤収納室の態様について,本件意匠は,薬剤収納室の周囲の枠は一重であるのに対し,引用例1意匠は,二重になっているように見える点。
B 薬液収納室の態様について,本件意匠は,薬液収納室の下縁は大きく湾曲状にシールされ,両側縁はシールされていないのに対し,引用例1意匠は,周囲が隅丸矩形枠状にシールされている点。 C 両室の連結部中央の態様について,本件意匠は,薬液収納室内に突出した細幅のシートが透けて見える(カバーシートを取った状態では両室内に見える。)のに対し,引用例1意匠には突出部分がない点。 D 注出口栓の態様について,本件意匠は,先端に起立した小板が取り付けられているのに対し,引用例1意匠は,略繭状の薄板が口栓の面と平行に取り付けられている点。 ウ 以上の共通点と差異点を意匠全体として検討すると,両意匠に共通する基本的な構成である共通点@は,両意匠の形態全体を支配する骨格的態様に係り,薬剤収納室及び薬液収納室の態様についての共通点A及びBと相まって両意匠の基調が形成され,これに薬剤収納室と薬液収納室との連結部の態様についての共通点Cが加わることにより,両意匠に強い類似感をもたらしていると認められる。これに対し,差異点はいずれも類否判断上は微弱である。
すなわち,差異点@のカバーシートの有無については,カバーシートは,その主たる目的が薬剤の変質を防ぐという機能的なものであり,また,その形状も表面に貼られる極薄のシートであって,使用時には剥ぎ取られてしまうものであるから,その有無について意匠上特に評価することはできず,類否判断を左右するものとはなり得ない。差異点Aの薬剤収納室の態様については,引用例1意匠の2重枠は,薬剤収納室とシート部との間の折り目様筋の有無であって視覚的に特に目立つ程のものでないから,共通点Aに基づく薬剤収納室の共通性に優越するものではない。差異点Bの薬液収納室の態様については,下縁を大きく湾曲させたり隅丸矩形枠状にシールすること,また,両側縁にシール部を設けたり設けなかったりすること等は,この分野において常套的に行われる範囲の有り触れた改変であるから,類否判断に与える影響は微弱である。差異点Cの両室の連結部中央の態様及び差異点Dの注出口栓の態様については,局部的部分の差異であって,両意匠の共通点に埋没してしまうものであるから類否判断を左右するものではない。結局,上記差異点はいずれも類否判断上は微弱なものにとどまり,それらが相まって奏する効果を勘案しても,上記共通点を凌駕して両意匠を別異のものとする程の視覚的効果を認めることはできない。 したがって,本件意匠と引用例1意匠とは類似する。
(2) 本件意匠と「日本包装学会誌Vol.4 No.1」(1995)48〜50頁に掲載された技術報告「溶解液付き注射用固形抗生物質キット製剤のキット有用性に関する実験的研究」(甲4。以下「引用例2」という。)ののFig.1,Fig.2に記載された意匠(別紙第3参照。以下「引用例2意匠」といい,これと引用例1意匠をまとめて「本件引用例意匠」という。)との比較 引用例1意匠と引用例2意匠を比較すると,引用例2意匠は,薬剤収納室の周囲の枠が一重になっている点及び注出口栓の態様が若干異なる以外は,両意匠の態様はほぼ共通していると認められる。該相違点は,本件意匠と引用例2意匠の類否判断上格別影響のある部分ではないから,本件意匠と引用例2意匠の類否判断は,上記判断と基本的に異なるところはない。
したがって,本件意匠と引用例2意匠とは類似する。 (3) 以上のとおりであって,本件意匠は,意匠法3条1項3号に該当し,意匠登録を受けることができない意匠であるにもかかわらず意匠登録を受けたものである。
当事者の主張
(原告の主張) 本件審決は,本件輸液バッグについて,正面視及び背面視のいずれも平面的な共通点の評価を重視しすぎるあまり,公知意匠にはなく,しかも美感及び美的印象を与え意匠的効果を有するアルミカバーシート(以下「カバーシート」という。)の剥離の前後で変化する本件意匠の特徴的な要部に関する評価を誤り,その上,正面図及び背面図のみならず側面図においても膨らみの有無によって全体の印象が変わってくることを軽視若しくは看過し,その結果,本件意匠と本件引用例意匠との類否判断を誤ったものである。
1 本件意匠と本件引用例意匠との差異であるカバーシートの有無について意匠上特に評価することはできないとした本件審決の判断は誤りである。
(1)ア 登録意匠とその出願前公知意匠とを対比して両者が類似するか否かの判断をなす際,登録意匠の側に,当該出願前公知意匠のみならず,同じダブルバッグタイプの本件輸液バッグに関する公知意匠(甲5ないし11)にも存在しない看者の注意を強く引く特徴部分が存するか否かも的確に判断することが求められる。本件意匠におけるカバーシートの存在は,本件引用例意匠のみならず,原告が提出した公知意匠(甲5ないし11)にもない本件意匠において創作された新たな要素であり,何よりも美感ないし美的印象を与え意匠的効果をもたらすものである。
すなわち,本件意匠においては,カバーシートが本件輸液バッグ全体の袋体の半分をしめる薬剤収納室の大半を,かつ,上記バッグ全体の約4割以上の面積に相当する部分を覆っており,カバーシートによって透視窓を有する薬剤収納室が一切隠れてしまうのであって,カバーシートはそれが袋体を覆う面積の程度からして全体観察上看者の注意を引く顕著な意匠的効果を発揮している。また,薬剤収納室及び薬液収納室の袋体が透明であるのに対し,カバーシートはアルミ箔ラミネートフィルムからなり不透明である。したがって,カバーシートが貼付されている状態においては,全体が不透明な薬剤収納室側袋体と全体が透明な薬液収納室側袋体のコントラストが強調されるのであるから,カバーシートの有無によってその外観は大きく異なる。
要するに,カバーシートは,意匠上変化を及ぼさない単なる機能的なものでもなければ,意匠上変化を及ぼさない極薄シールでもない。本件意匠におけるカバーシートは,販売状態から患者に注薬する直前までの間正面に大きく貼られた状態で看者の眼に強く印象付ける意匠的効果を有しているものである。
イ さらに,看者である医師・医療関係者が本件輸液バッグを購入する際に,カバーシートを有することが購買の動機の判断要素となることは看過できない。
すなわち,本件輸液バッグにおいて,カバーシートの存在により,防湿性は勿論のことカバーシートの存在により光が遮断され,薬剤の変質を防止することができる。これら防湿性を備えかつ遮光性を具備することにより,本件意匠に係る物品はどこにでも保管することができ,その上,収納される薬剤の安定した品質を保持することができる。また,医師・医療関係者は,カバーシートの有無によって薬剤と溶解液とが混合未了かどうかを判断することができ,これを混合未了のまま患者に投入する医療ミスを防止することができる。
このような機能上の利点が品質・安全を最大限に追求する医療現場のニーズに合致するのであり,購買者である医師・医療関係者の動機付けにもなるのであり,したがって,これらの者はカバーシートの存在に十分に注意を払って本件輸液バッグを購入,選択するものと考えられる。
(2)ア また,意匠の類否は看者が類似と考えるか否かにより判断されるべきところ,看者が誰かをまず確定する必要がある。本件意匠における看者は本件意匠に係る物品である本件輸液バッグを購入し実際使用するところの医師若しくは看護師である。
製造された本件輸液バッグは医療関係機関に納入された後,患者に使用されるまで保存され,医師若しくは看護師が患者に使用する際に剥離して使用される。まず,本件輸液バッグはカバーシートが付けられた状態で,しかも外からカバーシートが見える状態で収納袋に収納されている。その後,実際に剥離する医師若しくは看護師が,保存されている本件輸液バッグを持ってきて,使用時に,薬剤に異常が無いかどうかチェックするために,目の前でカバーシートを注視しながら剥離する。そして,カバーシートの剥離によって表われた透視窓から薬剤の異常のチェックを行う。
本件輸液バッグは,人体に重大な影響を与える医薬品に関するものであり,しかも粉状薬剤を収納する薬剤収納室側袋体と,薬液を収納する薬液収納室側袋体とを患者に注入する直前において,必ず医師または看護師が薬液収納室側袋体を押圧して弱シート部を押し開き,粉状薬剤と溶解液とを十分混合させてから患者に投与することを励行することが要請されるものである。
すなわち,シングルバッグの輸液バッグを使い慣れている医師や看護師がダブルバッグタイプの本件輸液バッグにおいて上記混合作業を忘れて患者に注入すると,混合前の下部袋体に収納されている薬液のみが患者に注入される結果となり,一刻を争う治療効果の出現が遅れたり,患者の安全性に問題を生じかねない事態に陥ってしまう。そのような作業の誤りを防ぐために,混合する際にはカバーシートを剥離して確認することが必ず求められているのであり,逆に言えば,カバーシートを貼っていれば混合未了の状態であること,カバーシートが剥離されていれば混合完了の状態であることが確認でき,カバーシートの有無によって一目でわかるようになっている。
このように,本件輸液バッグの場合,医師若しくは看護師により,使用時にカバーシートを剥離して薬剤と溶解液との混合作業が行われることからカバーシートの視認性こそ使用時に最も求められる要素といえるものである。そして,以上のことは当事者にとって自明のことである。
イ しかるに,本件審決は,本件輸液バッグの使用時を特定することなく,単にそのカバーシートが使用時に剥離されるにすぎないとして意匠上評価できないとし,しかも,本件輸液バッグの特質を全く勘案することなく判断している。
そればかりか,本件意匠は本件意匠に係る公報(甲14)の図面及び意匠の説明に記載のとおり,カバーシートを貼った正面図と,カバーシートを剥離した状態を表わす正面図の双方をいずれも必要図として記載して出願しており,意匠法6条4項に規定する動的意匠(意匠に係る物品形状,模様又は色彩がその物品の有する機能に基づいて変化する場合において,その変化の前後にわたる形状に関し,権利を要求するもの)として出願し,登録されているものである。したがって,変化の前後にわたる形状部分は正に本件意匠の要部に関するものである。薬剤収納室の透視窓をカバーシートで全面的に覆う本件輸液バッグの意匠は本件意匠の創作部分でもあるのである。本件審決は,本件意匠が動的意匠であるとする要部に関する判断を欠いており,適切ではない。 (3) 以上のように,本件審決は,本件意匠におけるカバーシートの存在についての評価を誤っている。カバーシートの存在は,公知意匠にはない新たな要素であり,しかも看者に美感及び美的印象を与え,意匠的効果をもたらすのであって,本件審決は,この点について評価を誤ったものである。
2 本件審決の意匠の類否判断は,立体的な視点,すなわち正面図及び背面図のみならず側面図も考慮に入れた斜視的視点を全く欠いており,特に側面図に対する判断が一切なされていないものであり,誤りである。
(1) 本件意匠は立体的な物品を対象とするものであり,立体的な物品は平面的な物品と異なり質量を伴うものであるから,本件意匠と本件引用例意匠との類否を判断するに当たっては,当然立体的な視点から検討されるべきものである。
(2) 薬液収納室側袋体の下縁のシール部の形状及び両側縁がシールされていない点(差異点B)について ア 使用時において下半側の薬液収納室側袋体の下縁のシール部の形状及び側縁の各シールの有無は,薬液が行き渡り膨らむかどうかの限界を画するので,外観に大きな影響を与えるものである。薬液を充填した状態では,左右両側端がシールされていないチューブ状の袋体を有する本件意匠では,全体が横断面略細長楕円形状に膨らむのに対して,両側端がシールされた袋体からなる本件引用例意匠は,シール線に隣接する部分が鋭角になった2つの円弧を上下合わせた形状に膨れ,シール部の部分は膨らむことがない。
本件引用例意匠は,いずれも下縁及び側縁のシールがなされていることから,薬液収納部分の表面積が小さくなってしまい,薬液収納部分の膨らみはより大きくなる。そして,薬液収納室側袋体の両側縁のシール部は直線状となって表われ,その上,全体に縦長であることもあって,全体の形状は砲弾状の鋭い印象を看者に与える。これに対して,本件意匠は,下縁のシール部は小さくかつ側縁のシールがなされていないことから,薬液収納部分の膨らみは小さく,かつ実際の製品においては内側に湾曲していることから,丸みを帯びた安定感のある印象を看者に与える。
イ このように,両者から受ける印象は極めて異なるのであって,類否に与える影響は微弱であるとは到底いえない。
(3) 側面形状について ア 本件意匠に係る物品である本件輸液バッグは,右側面図からわかるように,薬液と薬剤の混合用のものである。薬剤収納室側袋体は,薬剤しか入っていないことから,側面視において極めて薄い形状になっている。そのため,カバーシートのつまみ部分が外側にめくれている点も特徴点となっている。
これに対して,特に引用例2意匠の側面図において,上側袋体は薬液が入っているかのように膨らんでいる。引用例1意匠は定かではないが,被告が本件引用例意匠は実質的に同一としていることからも,同様に,上側袋体は膨らんでいると考えられる。
イ 本件意匠は,薬剤収納室側袋体は極めて薄い一方で,薬液収納室側袋体は膨らんでいるのに対し,本件引用例意匠はいずれも上下の袋体が直線状に表われている連結部分を介して上下2段階に膨らみが生じている。
それに加え,前述したように,本件引用例意匠はともに両側端がシールされているために薬液収納室側袋体の膨らみが大きくなっているため,側面視においては全体的に重たい印象を与えている。一方,本件意匠は薬剤収納室側袋体は極めて薄く,しかも薬液収納室側袋体の膨らみが小さくなっているため,側面視においては全体的に軽い印象を与える点で大きく異なる。
ウ このように,本件意匠と本件引用例意匠は側面図において大きく異なっており,強い類似感をもたらすものではない。それにもかかわらず,本件審決は,正面視及び背面視のいずれも平面的な視点での判断のみに走るあまり立体的な視点を看過し,その判断を誤ったものである。
(被告の主張) 本件意匠と本件引用例意匠とが類似するとした本件審決の判断は相当であり,その誤りをいう原告主張はいずれも理由がない。
1 カバーシートの有無について意匠上特に評価することはできないとした本件審決の判断は誤りである旨の主張について (1) カバーシートの意義 カバーシートは,本件輸液バッグを輸送および保存する時に酸素や水分の 透過を防いで薬剤の劣化を防止するために取り付けられているだけであり,使用時(薬剤と溶解液とを混合する時)には,当然に剥離することが前提となっているものである。このことは,本件意匠に係る公報に「薬剤収容室は薬剤を湿気から防ぐために剥離可能なアルミ箔ラミネートフィルムからなるカバーシートによって被覆されている。本物品は,カバーシートを剥離することにより内容が確認可能になっており」と記載されていることからも容易に理解できる。
そうすると,本件輸液バッグにおけるカバーシートは,あくまで本件審決認定のとおり,薬剤の変質を防止するという機能的なものであり,意匠上格別評価できる物品の形態ではないのである。
(2) 看者(医師,看護師,薬剤師)の注意力 本件輸液バッグを取り扱う,いわゆる看者は,原告も主張するとおり,医師,看護師,薬剤師等医療関係者(いわゆる当業者)である。これらの者にとって,この種複数の輸液を混合するダブルバッグタイプの本件輸液バッグにおいて,最も注意を喚起せしめられる構成は,カバーシート剥離後の混合時における,上方の薬剤収納室と下方の薬液収納室並びに両室の連結部の全体形態並びに薬剤と溶解液とが混合する状態を視認できる面(本件意匠のカバーシートを剥離した状態の正面図)にあり,該面が最も注意を喚起せしめられるのである。
このことは,例えば引用例1においては薬剤と溶解液とが連通して混合している状態の写真が拡大して掲載され,また,引用例1の2頁の「使用上の注意」の欄の(11)の項に,「2)調製時:本品の使用に当っては,完全に溶解したことを確認して使用すること。」と注意書きされているほか,引用例2の50頁の(3)調製方法の項に,「袋を開封した後,作業台等の上に置き,手掌で溶解液側を加圧して隔壁を開通させ,薬剤と溶解液を混合する。加圧操作を2〜3回繰り返し薬剤を完全に溶解する。」と記載されていることから明らかなように,本件輸液バッグにおいては,薬剤を溶解液によって完全に溶解してから使用しなければ医療ミスとなることから,前記看者にとっては薬剤と溶解液の混合状態を視認することが必須不可欠で最重要な事項であるのである。
したがって,カバーシートを剥離した後の作業が最重要となるため,カバーシートは看者にとって重要な視認形態ではなく,むしろ薬剤収納室や連結部等の形態がこの種物品にとっては主要な形態となるのである。
いずれにしても,ダブルバッグ式の本件輸液バッグにとって,カバーシートは,前記のように防湿性という機能から仮着されたものであって,これ自体は使用時には剥離されて捨てられるものであるため,看者にとって該シートの存在は格別な意義を有するものではなく,むしろ剥離後の形態が最重視されるものであるのである。
(3) カバーシートの形態 本件意匠のカバーシートは,吊り下げ部直下の薬剤収納室を覆うものではあるが,その形態は該収納室にそった略四角形状の極めてありふれた形態であるほか,該シート自体もありふれた極薄のアルミシートであるため何ら看者の注意を喚起せしめるほどの形態ではないのである。
なお,原告は,「外からカバーシートが見える状態で収納袋に収納されている。」と主張しているが,これは事実に反し収納袋に収納されている状態ではカバーシートは外から見えないものである。
(4) 動的意匠について 原告は,本件意匠において,カバーシートを貼った状態の正面図と剥離後の正面図が必要図面となっているため,本件意匠は剥離の前後によって変化する動的意匠であり,該動的意匠が本件意匠の要部であると主張するが,意匠法上の動的意匠の意義を正解しない失当な主張である。けだし,動的意匠とは動くもの,開くものなどの意匠であって,その動きなどの意匠が変化することをいうものであって,本件意匠のように仮着されたシートを剥離する前後をとらえて動的意匠とは決していうものではない。しかも,該シートは剥離することを前提として仮着されているものであって,剥離の前後によって意匠の形態が変化するものでは決してないのである。
したがって,動的意匠を根拠に本件意匠の創作部分であるとか,意匠の要部であると主張する原告の主張は明らかに失当である。
(5) 本件意匠は,原告主張の如き薬剤収納室の透視窓を覆うカバーシートに創作部分や意匠の要部があるのではなく,例えば原告提出の甲5ないし11等を参酌すれば明らかなように,その創作部分や要部は,本件意匠と引用例1意匠との共通点である基本的構成態様にあると判断できる。すなわち,本件意匠は,全体が縦長長方形状で,上方に薬剤収納室を,下方に薬液収納室を設け,下端に注出口栓を突設し,しかも薬剤収納室の上方に吊り下げ部を形成するとともに該吊り下げ部中央に小円孔を設けてなり,且つ薬剤収納室は隅丸横長矩形状で,さらに薬液収納室は略矩形状の袋体で下端に略帯形状のシール部を形成し,該シール部下端中央に略円筒状の注出口栓を設け,しかも前記上下の収納室間の連結部は袋体の中央部に帯状として形成してなる,全体の形態にその創作性があり,該全体形状は前記公知意匠にはない,まとまりのあるスッキリとコンパクトな輸液バッグを構成しているのである。したがって,本件意匠はその全体の形状に意匠の要部があるのである。
以上のとおり,本件意匠と引用例1とはカバーシートの有無において相違するが,本件審決認定のとおり,該カバーシートは看者の格別注意を喚起せしめる構成要素とはなり得ないため,意匠上両意匠の差異点として格別な評価はできないものであり,全体として意匠を観察した場合には細部的な事項である。
2 本件審決の判断は,立体的な視点,すなわち正面図及び背面図のみならず側面図も考慮に入れた斜視的視点を全く欠いており,特に側面図に対する判断が一切なされていない点で誤りである旨の主張について (1) 薬液収納室側袋体の下縁のシール部の形状及び両側縁のシールについて(差異点B)について ア 薬液収納室側袋体の下縁のシール部の形状 本件審決が認定したように,本件意匠の下縁のシール部は,本件引用例意匠の下縁のシール部よりやや大きく湾曲状に形成されてはなるが,いずれも該袋体の下縁両角部は斜めカットされ全体としての下端形状の格別な差異はなく,しかも,原告提出の甲7の第1図等からも明らかなように,本件輸液バッグにおいては,湾曲形状は一般的な形状であり,本件意匠にのみ特有の形態ではないのである。
よって,薬液収納室側袋体の下縁のシール形状の大小の差異は格別看者に注意を喚起せしめる程の差ではない。
イ 薬液収納室側袋体の両側縁のシールの有無について 原告は,両側縁のシールの有無によって,薬液収納部分の膨らみの形状に差異が生じ,その結果看者に与える印象を異にする旨を主張するが,元来この種袋体の製造においてシールするか否かは,本件審決認定のとおり,一般常套手段であり,例えば原告提出の甲7,8及び10に記載の袋体は両側縁をシールしてなるが,甲9の図2や図10の袋体の側縁はシールされていないのである。
しかも,シールの有無は,これによって原告主張の如き看者に与える印象を異にするほどのものではない。けだし,本件輸液バッグにおいて薬液収納室に薬液が収納されると必然的に該収納室側袋体は外方に膨らむことは,本件意匠の出願前から周知の事項であるからである(例えば甲9,10参照)。
ウ そうすると,看者の注意力は,前記両側縁のシールの有無に喚起させられるものでは決してなく,したがって,両意匠を全体観察した場合,シールの有無の差異がその類否判断に与える影響は微弱である。
(2) 薬剤収納室側袋体の側面形状について ア 原告の主張のように引用例2意匠の薬剤収納室の側面形状と本件意匠の薬剤収納室の側面形状とは,その膨らみの大小において差異があることは認めるが,本件引用例意匠においても,薬剤収納室は薬剤のみしか封入しないもので,しかも通常薬剤は抗生物質等の粉末であるため,引用例2のFig.1やFig.2の側面図は薬剤収納室の側面形状としてはやや大きく膨らみて図示してなるが,実際上は甲12から推察でき得るように側面視は全体として扁平形状でやや膨らみを有する程度であり,格別な差はないのである。
イ 次に原告は,側面視において薬剤収納室と薬液収納室の膨らみの相違から本件意匠は全体的に軽い印象を与えるのに対し,本件引用例意匠は全体的に重い印象を与えると主張するが,両意匠は,薬液収納室側の袋体が薬剤収納室側の袋体より大きく膨らみてなる点で共通するため,全体としてみれば,その差異は看者に強く印象づける程の差異では決してなく,しかも側面視形態は看者にとって周知形態であるため,看者は格別該側面視に注意が喚起せしめられるものではない。
ウ したがって,原告が側面視の形態を軽視した本件審決の判断の誤りをいう原告の主張は理由がない。
当裁判所の判断
1 意匠と物品とは一体をなすものであるから,登録出願前に日本国内若しくは外国において公然知られた意匠又は登録出願前に日本国内若しくは外国において頒布された刊行物記載された意匠と同一又は類似の意匠であることを理由として,意匠法3条1項により登録を拒絶するためには,まずその意匠に係る物品が同一又は類似であることを必要とし,さらに,意匠自体が同一又は類似と認められるものでなければならない。そして,意匠自体の類否の判断は,一般の需要者が普通の注意力をもって当該意匠に係る物品の購買を選択するに当たって,対比されるべき両意匠に係る物品形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合から看取される美観により,両意匠について混同を生ずるおそれがあるか否かによって判断すべきであり,その場合には当該物品の性質,目的,用途,使用態様などからその需要者の注意を強く引く部分がどこにあるかを考慮すべきものと解される。
2 そこで,上記の観点に立って,本件意匠と本件引用例意匠が類似するか否かについて判断する。
(1) 証拠(甲3,4,14)及び弁論の全趣旨によれば,本件意匠及び本件引用例意匠に係る物品はいずれも本件輸液バッグであり,両意匠は意匠に係る物品が一致することが認められ,また,両意匠が共通点@ないしCにおいて共通し,差異点@ないしDにおいて相違していることは当事者間に争いがない。
(2) 本件意匠に係る物品である本件輸液バッグの意匠の看者となる者は,医療に従事する医師,看護師のほか,薬剤師等医療関係者(以下「医療関係者」という。)であるところ,本件輸液バッグが薬剤と溶解液を混合するダブルバッグタイプのものであることを考慮すれば,医療関係者が患者に本件輸液バッグによる治療を施す際に留意する点は,薬剤収納室の薬剤と薬液収納室の薬液とが両室の連結部の隔壁を解放することにより適切に混合された状態になるか否かであり,このような医療行為の性質からすれば,医療関係者が,本件輸液バッグを取り扱う際に最も注意を引かれるその形状等の意匠構成は,薬液の混合時における形態等,すなわち,上方の薬剤収納室と下方の薬液収納室及び両室の連結部の全体形態並びに薬剤と溶解液とが混合する状態を視認できる正面にあると考えられる。
上記した本件輸液バッグの取扱いの実情に照らして本件意匠と本件引用例意匠とを対比するに,両意匠は,全体が縦長長方形袋体の上方に薬剤収納室を,下方に薬液収納室を設け,下端に注出口栓を形成した基本的な構成(共通点@)を共通にしており,この基本的構成に薬剤収納室の態様についての共通点A及び薬液収納室の態様についての共通点B,薬剤収納室と薬液収納室との連結部の態様についての共通点Cが加わることにより,両意匠は,その共通点が医療関係者に意匠的に強い印象を与えるものと考えられる。
(3)ア 原告は,本件意匠におけるカバーシートの存在は,本件引用例意匠はもちろん,公知意匠にはない新たな要素であり,しかも美感及び美的印象を与え,意匠的効果をもたらすのであり,意匠の類否の判断に当たってこの点を看過した本件審決の判断は誤りである旨主張する。ところで,カバーシートは本件輸液バッグの表面に貼付されて,本件輸液バッグと一体をなすものと認められるから,カバーシートの意匠的効果の点は本件輸液バッグの中でカバーシートが果たす機能,その占める位置を考慮して判断すべきである。
そこで検討するに,証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば,カバーシートは,本件輸液バッグを輸送及び保存する時に酸素や水分の透過を防いで薬剤の劣化を防止するために貼付されているものであり,その使用時,すなわち,医療関係者において薬剤と溶解液とを混合し,患者に輸液を注入する際には,当然剥離することが予定されているものであることが認められる。
一方,本件輸液バッグの医療上の性質からすれば,医療関係者にとっては,薬剤と溶解液の混合状態を視認することが必須不可欠の事項というべきであり,このことに引用例1(甲3)の2頁の「使用上の注意」の欄の(11)の項に,「2)調製時:本品の使用に当っては,完全に溶解したことを確認して使用すること。」と注意書きされているほか,引用例2(甲4)の50頁の(3)調製方法の項に,「ピロータイプ包装(JIS Z0108番号1031)袋を開封した後,作業台等の上に置き,手掌で溶解液側を加圧して隔壁を開通させ,薬剤と溶解液を混合する。加圧操作を2〜3回繰り返し薬剤を完全に溶解する。」と記載されていることを考え併せれば,医療関係者は,本件輸液バッグを使用する場合,本件輸液バッグを包装袋から取り出し,カバーシートを外し,その後,薬剤収納室内の薬剤の劣化がないかどうかを確認し,薬液収納室側を加圧して,連結部の隔壁を解放し,薬液収納室の薬液と薬剤収納室の薬剤と混合させ,薬剤が薬液に完全に溶解したかどうかを確認した上,本件輸液バッグの輸液を患者に注入する措置をとるという手順を経るものと認めるのが相当である。
なお,この点に関し,原告は,カバーシートを貼っていれば薬液と薬剤とが混合未了の状態であること,カバーシートが剥離されていればそれらが混合完了の状態であることが確認でき,カバーシートの有無によってその点が一目でわかるようになっている旨主張するが,本件輸液バッグの使用時には,上記認定の手順がとられるものと認められ,カバーシートの貼付の有無だけで,使用できる状態にあるかどうかを確認するとの原告の主張は実際の医療実務に沿わないものであって,たやすく採用できない。 しかして,本件輸液バッグの医療上の性質及びその使用手順からすれば,医療関係者は,本件輸液バッグの選択,購入に当たって,薬剤の劣化を防ぐことを目的として一時的に装着され,使用時に剥離されるカバーシートに着目するとは考えにくく,むしろ,本件輸液バッグの使用時において注視の対象となる薬剤収納室,薬液収納室及びその連結部とその全体の形態等がどのようなものかに着目してその選択,購入を行うものと考えられ,また,その使用時において,カバーシートが剥離された後の薬剤収納室等の形態等に注意が向くことは当然のことである。このように,ダブルバッグ式の本件輸液バッグにとって,カバーシートは,薬剤の劣化防止という機能から一時的に装着されたものであってそれ自体は使用時には剥離されて捨てられるものであるため,看者である医療関係者にとって該シートの存在は意匠的には格別な意義を有するものではないというべきである。
イ 原告は,本件意匠において,カバーシートを貼った状態の正面図と剥離後の正面図が必要図面となっているため,本件意匠は剥離の前後によって変化する動的意匠であり,該動的意匠が本件意匠の要部であると主張する。
しかしながら,動的意匠とは,意匠に係る物品形状,模様又は色彩が,その物品の有する機能,構成に基づいて変化するように仕組まれていて,静止した状態をとらえただけでは,その変化の状態をとらえられないものをいうと解されるところ,本件輸液バッグにおいて,カバーシートは薬剤の劣化防止という機能を果たさせるべく一時的に貼付され,その使用時には剥離することが予定されているものであり,これを剥離した場合には仮の形態から本来の形態が現れるにすぎないとみるべきであり,当該物品の形態等にこのような変化が生ずることをもって,動的意匠ということはできない。しかも,本件意匠に係る公報(甲14)の正面図とカバーシートを剥離した状態を表す正面図とを対比しても,カバーシートの剥離の前後で意匠的に格別の変化があるとは考えられない。
原告の上記主張は採用できない。
ウ したがって,カバーシートの存在に関する本件審決の判断に誤りがあるということはできない。
(4) 原告は,本件審決の意匠の類否判断は,立体的な視点,すなわち正面図及び背面図のみならず側面図も考慮に入れた斜視的視点を全く欠いており,特に側面図に対する判断が一切なされていないものであり,誤りである旨主張するので,以下,この点について検討する。
ア 薬液収納室側袋体の下縁のシール部の形状及び両側縁がシールされていない点(差異点B)について (ア) 本件意匠と本件引用例意匠とが差異点Bで相違することは前記(1)に認定したとおりであり,本件意匠の下縁のシール部は,大きめに湾曲させた形状に形成されているものと認められる。しかしながら,両意匠とも,該袋体の下縁両角部は斜め方向にカットされており,全体としてみれば,下縁部の形状に格別の差異があるとはいえず,また,証拠(甲7の第1図)及び弁論の全趣旨によれば,本件輸液バッグにおいては,下縁シール部の湾曲形状は一般的な形状であると認められるのであって,このことをも考慮すれば,差異点Bは,看者である医療関係者の注意を引くような意匠的差異とは認めがたい。
(イ) また,弁論の全趣旨によれば,この種袋体の製造においてシールを用いるか否かは,当業者が適宜選択し得る事項であると認められるところ,シールを用いるにしろ,シールを用いないにしろ,そのことにより生ずる形態は,この種袋体の製造方法に付随して生ずるありふれたものということができ,本件意匠においてシールが存在しないのは薬液収納部の両側縁に限定されていることをも考慮すれば,両側縁のシールの有無により生ずる意匠的効果の差異は格別のものではないと考えられる。
さらに,本件輸液バッグにおいて薬液が収納されると該収納室が外方に膨らむことは明らかであり,その両側縁がシールされているか否かにより,膨らみ具合に程度の差があるとしても,その差異は,看者である医療関係者に異なった美観を生じさせるほどのものとまで認めることはできない。
イ 側面形状について 証拠(甲4,14)によれば,引用例2意匠の薬剤収納室の側面形状と本件意匠の薬剤収納室の側面形状とは,その膨らみの大小において差異があることが認められる。
しかしながら,弁論の全趣旨によれば,引用例2意匠においても,薬剤収納室は薬剤のみしか封入しないものであり,しかも,通常薬剤は抗生物質等の粉末であると認められるから,引用例2(甲4)のFig.1やFig.2の側面図は薬剤収納室の側面形状としてはやや大きく膨らんだ形状で図示されているものの,薬剤収納室に薬剤を収納した際のその形状を示すためやや誇張的に図示したものとも解され,その膨らみの程度に,看者である医療関係者の注意を引くほどの意匠的効果があるとは認めがたい。 また,引用例1(甲3)の薬剤収納室の側面形状を明らかにする証拠はないが,引用例1に記載の本件輸液バッグの形状に照らしてみれば,薬剤収納室は全体としてみれば扁平形状でやや膨らみを有する程度のものであると推察され,本件意匠と格別の差異があるとは認められない。
(5) 以上検討したところからすれば,本件意匠と本件引用例意匠とは,その各形態において共通点@ないしCを有し,本件輸液バッグにおいては,その使用時にこれらの共通点が最も医療関係者の注意を引くところであり,また,機能上も重要な要素を構成するものであるから,医療関係者は,これらの点に注意を配り,各種の本件輸液バッグのうちから一定のものを選択するものと考えられる一方,カバーシートは,前記のように薬剤劣化の防止という機能から一時的に装着されたものであってそれ自体は使用時には剥離されて捨てられるものであるため,看者である医療関係者にとって該シートの存在は意匠的には格別な意義を有するものではないというべきである。また,両意匠の対比において,側面におけるシールの有無や側面の形状の差異はさほど大きなものではなく,差異点A,C,Dを考慮に入れても,これらは,看者である医療関係者が異なった美観を看取するほどに格別の差異であるとは認められない。
してみると,医療関係者がその普通の注意力を基準として本件輸液バッグの選択,購入をする場合,本件意匠と本件引用例意匠とを混同するおそれがあると認められるから,両意匠は類似するというべきである。
3 以上によれば,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決には他にこれを取り消すべき瑕疵は見あたらない。
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青蜉]
裁判官 清水節
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