審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成19ネ10097損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 意匠 |
平成21ネ2110損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 意匠 |
平成17行ケ10135審決取消(意匠)請求事件 | 判例 | 意匠 |
平成17ネ617損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 意匠 |
平成22行コ10004異議申立棄却決定取消請求控訴事件 | 判例 | 意匠 |
関連ワード | 形状 / 組物の意匠(8条) / 一意匠一出願(7条) / 3条1項3号 / 頒布された刊行物 / 類似する意匠 / 損害賠償 / 権利濫用(権利の濫用) / |
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事件 |
平成
14年
(ネ)
4093号
損害賠償請求控訴事件
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控訴人 株式会社コム 訴訟代理人弁護士 相葉和良 補佐人弁理士 重信和男 同 清水英雄 被控訴人 エスエムシー株式会社 訴訟代理人弁護士 渡邊敏 補佐人弁理士 林宏 同 川添 不美雄 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2003/02/25 |
権利種別 | 意匠権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 本件控訴を棄却する。 2 当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 控訴人 (1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,金1億4223万5333円及びこれに対する平成12年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 (4) 仮執行の宣言 2 被控訴人 主文と同旨 |
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事案の概要
本件は,バルブ用筺体に係る意匠権を有している控訴人が,バルブを製造販売している被控訴人に対し,その製品が同意匠権を侵害すると主張して,損害の賠償を求める事案である。 当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」の欄及び「第3 争点に関する当事者の主張」の欄記載のとおりであるから,これを引用する(以下,「本件意匠権」,「本件意匠」,「本件カタログ」,「本件アングルバルブ」,「本件アングルバルブ意匠」及び「セテック社」との語を,原判決の用法に従って用いる。)。 1 控訴人の当審における主張の要点 原判決は,本件カタログが1988年9月以前に印刷され,発行されており,本件意匠は,本件カタログに記載された本件アングルバルブ意匠に類似するから,本件意匠の登録には無効理由が存在することが明らかである,と認定判断し,これを理由に,控訴人の請求を権利の濫用であるとして棄却した。しかし,本件意匠の登録に無効理由が存在することが明らかであるとする原判決の認定判断は,誤っている。 (1) 本件意匠と本件アングルバルブ意匠とが類似しているかどうかは,不明である。 本件カタログ(乙第3号証の1,第6号証の3)中の本件アングルバルブの写真は,円筒状管継手部を右手前方向に向けた形状を撮影したものにすぎない。 この写真からは,本件アングルバルブの背面部(写真に撮影されていない反対側の部分)の具体的形状を確認することができない。原判決は,本件アングルバルブの背面部の形状について,十分な資料がないままに,これを認定する,という誤りを犯したものである。 (2) 本件カタログが,1988年9月以前に印刷され,発行されたものかどうかは,不明である。 (ア) 原判決が,本件カタログの印刷・発行年月を1988年9月以前であると認定するに当たりその有力な根拠とした証拠である宣誓供述書(スイスのフィテック株式会社の代表者であるAを供述者とするもの。乙第6号証の1。以下「A供述書」という。)は,証拠としての価値のないものである。 A供述書には,本件アングルバルブ意匠が1992年4月28日以前に公知となったこと,本件カタログの印刷が最終的に行われたのは1989年3月より前であったこと,本件アングルバルブは1986年2月14日にデザインされ,それから一般に販売されたこと,BKF社は,セテック社のドイツの卸売業者であり,1988年9月以前にその契約を解消したことが記載されている。しかし,Aは,1968年11月生まれで,セテック社(フィテック株式会社の旧商号)に入社したのは1992年12月ころであり,1999年1月26日に共同で署名をする取締役に就任したにすぎない者である。A供述書が供述者をこのような人物とするものである以上,そこに記載された上記内容は,いずれも同人が直接体験した事実ではあり得ない。したがって,A供述書の内容は,信用することができないものである。 (イ) 原判決は,本件カタログには,「シリーズ12 アングルバルブ」という名称の商品としては,本件アングルバルブの写真のみが記載されており,同シリーズ12のアングルバルブについての1989年当時の請求書があることから,本件アングルバルブがそのころに販売された,との事実を認定している。 しかし,甲第22号証のフィテック株式会社のカタログによれば,シリーズ12のアングルバルブには,複数の異なる形状の製品が存在することが明らかである。そうである以上,上記請求書記載のアングルバルブが本件アングルバルブであると認定することはできないはずである。 2 被控訴人の当審における反論の要点 (1) 本件アングルバルブ意匠は,極めて簡単な構成から成るものである。これを理解するには,本件カタログに掲載された写真で十分である。 (2) 甲第22号証のカタログは,フィテック株式会社の現在におけるカタログであって,本件カタログが発行されてから10数年後のものである。このような甲第22号証のカタログを,前記請求書に記載されたシリーズ12のアングルバルブの形状を把握するのに,ふさわしい資料とすることはできない。 |
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当裁判所の判断
当裁判所は,控訴人の請求は,いずれも理由がないから,棄却すべきものである,と判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の「第4 争点に対する判断」のとおりであるから,これを引用する。 1 控訴人は,本件カタログ中の本件アングルバルブの写真からは,本件アングルバルブの背面部の具体的形状を確認することができない,と主張する。 しかし,一般に,カタログにおいて商品の写真を掲載するときは,商品の特徴的な形状が分かるように撮影するものであり,写真に撮影されていない背面部等は,他と同一又はありふれた形状であるために省略されることが多いこと,したがって,通常の場合は,カタログの写真自体から商品の全体的形状を理解し,推認することができることが一般的であることは,当裁判所に顕著である(商品のカタログとしては,1枚の写真で商品の全体的形状が理解できる場合は1枚の写真を掲載するだけですむであろうし,2枚以上の写真でなければ,商品の全体的形状が理解困難であれば,2枚以上の写真が掲載されることが一般的であろう。)。本件カタログに掲載された本件アングルバルブの写真についていえば,アングルバルブという商品の通常の形状から,その写真に写っていない部分(背面部)の形状を推認することは容易であり,本件カタログに掲載された写真自体から,そのアングルバルブの全体的形状を十分に理解し,推認することができる(乙第3号証の1,第6号証の3)。控訴人の主張は採用することができない。 2 控訴人は,本件カタログが,1988年9月以前に印刷され,発行されたものかどうかは,不明である,と主張する。 しかし,証拠(乙第3号証の1,第6号証の1・2,第6号証の3,第6号証の4の1ないし4,第8号証,第9号証の1・2)によれば,本件カタログには,印刷年月日も発行年月日も記載されていないものの,その裏表紙には,ドイツ連邦共和国のBKF社の社名と住所・電話番号等が印刷されており,そのBKF社の社名,住所等の印刷部分を覆うようにして,セテック社のシールが貼ってあること,BKF社は,セテック社のドイツにおける卸売業者であったものの,セテック社は,1988年9月以前にBKF社との契約を解消したため,上記のシールを貼った本件カタログを使用していたこと,セテック社は,1989年において,少なくとも4社に対して,アングルバルブ(シリーズ12)を販売し,その請求書を発行していることが認められる。上記認定事実によれば,本件カタログは,BKF社との契約を解消した1988年9月より前に印刷されたものであり,セテック社は,1989年当時,本件カタログに記載されている本件アングルバルブを既に販売していたものであることが認められ,本件カタログは,遅くとも1989年以前に印刷され,発行されていたものであると認められる。 控訴人は,原判決が認定根拠の一つに採用し,当裁判所も認定根拠の一つとしているA供述書(乙第6号証の1)の内容について,信憑性がない,と主張する。しかし,Aがフィティク社に入社したのが,控訴人が主張するとおり,1992年12月ころであったとしても,BKF社との契約が1988年9月以前に解消されたとの事実,及び,本件アングルバルブの販売が開始された時期など,A供述書の記載内容となっている上記各事実は,同社の取引関係書類等で容易に確認することができる性質の事実であるから,Aが,本件アングルバルブに関連する事実で同人が入社する以前の事実をA供述書において供述したからといって,直ちにその供述書の内容の信憑性がなくなるというわけのものではないことは,当然である。 宣誓供述書の内容の信憑性は,他の客観的な証拠と併せて検討した上で,その内容が全体的にみて合理的であるか,あるいは,不合理ないし不可思議な事由が存在するかなどの点を総合的に勘案して,その採否を決すべきである。本件においては,BKF社の社名が印刷された本件カタログ及び1989年当時の複数の請求書(乙第6号証の4の1ないし4)等と併せて総合的に判断してみても,A供述書の内容の信憑性について,これを疑うべき不合理ないし不可思議な事由を見いだすことはできない。 控訴人は,甲第22号証のフィテック株式会社のカタログによれば,シリーズ12のアングルバルブには,複数の形状の製品があるから,上記請求書記載のアングルバルブが本件アングルバルブと認定することはできない,と主張する。しかし,甲第22号証のカタログは,フィテック株式会社の現在のカタログであって,少なくとも前記請求書が発行された1989年から10数年を経過した後に用いられているものであるから,このカタログにおいて,アングルバルブの形状が複数あるからといって,そのことが,前記の請求書に記載されたアングルバルブが本件アングルバルブであるとの認定を左右することになるものではないことは,明らかである。 3 以上によれば,本件カタログは,遅くとも1988年9月以前に発行されたものであるから,本件意匠は,本件意匠権の出願日以前に頒布された刊行物である本件カタログに記載された本件アングルバルブ意匠に類似する意匠であり,その登録は,意匠法48条1項1号,3条1項3号により無効になるべきものであることが明らかである,というべきである(なお,本件意匠権について,上記と同様の理由により,これを無効とする審決が平成14年11月19日になされている(乙第12号証))。 4 よって,控訴人の主張はいずれも理由がなく,控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。そこで,本件控訴を棄却することとして,当審における訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山下和明 |
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裁判官 | 設樂隆一 |
裁判官 | 阿部正幸 |